3.知の時代を先導するイノベーションの創出 4.創造的で質の高い研究開発システムの構築

(1)競争的資金の拡充と制度改革の推進

1.競争的資金制度の充実

 これまでの競争的資金の拡充により、研究者の競争的資金に対する認識も高まり、外部資金による研究が相当程度定着しているが、競争的資金の採択率は依然として低く、研究者のニーズに対応し切れていない。また、間接経費も着実に伸びているものの、全ての競争的資金制度で30パーセントの間接経費を措置するには至っていない。さらに、研究者のキャリアパスにおいて重要な時期である若手研究者を対象とする制度の充実が必要である。
 このため、競争的資金については、政府研究開発投資全体の拡充を図る中で、基盤的経費を確実に措置しつつ、その一層の拡充を目指す。
 競争的資金には様々な制度が存在するが、それぞれの制度においては、趣旨や目的を明確にするとともに、研究費規模、研究期間、研究体制、評価法、推進方策等がその制度の趣旨に応じ最適になるよう設計すべきである。

2.競争的資金のマネジメントの強化

(a)プログラムオフィサー(PO)(※6)、プログラムディレクター(PD)(※7)の充実強化

 PO、PDの登用に当たり、能力ある研究者を確保できるよう処遇に配慮する。PO、PDが研究者のキャリアパスとして位置づけられるよう、研究機関等においては、PO、PDとしての経歴を適切に評価する。また、優秀なPO、PDの養成・確保が重要であり、海外研修、国内セミナー等を充実する。
   
※6 プログラムオフィサー(PO):各制度の個々のプログラムや研究課題の選定、評価、フォローアップ等の実務を行う研究経歴のある責任者
※7 プログラムディレクター(PD):競争的資金制度の運用について統括する研究経歴のある高い地位の責任者

(b)独立した配分機関への移行

 各競争的資金制度の趣旨に応じ、本省の配分機能を独立した配分機関へ着実に移行していく。その際、配分機関が独立行政法人であるがゆえの予算上の制約がないようにする。
 一方、我が国の技術戦略や国際貢献等の政策的観点を重視した制度設計を行う必要があることなどにより、国が直接実施する場合には、その効率的・弾力的な運用に努める。
 PO、PDのみならず、その活動を支援するための調査分析機能や審査・交付・管理等の実務機能の充実・強化が不可欠であり、競争的資金予算の一定割合をその体制強化のために確保することなどにより、着実に体制整備を行う。なお、日本学術振興会や科学技術振興機構は、その調査分析能力を一層強化することが重要である。

3.公正で透明性の高い評価システムの確立

 課題の審査・評価を充実するため、審査・評価体制を抜本的に強化する。
 課題の審査に当たっては、審査員等の増員と研究計画書の充実、審査基準や審査の観点の見直し等により、研究者の地位や肩書きに拠らない、申請書の内容と実施能力の観点をより重視した審査を行う。また、様々な角度・視点から評価を行うため、各競争的資金制度の趣旨に応じて民間人、若手研究者、外国人等多様な審査員の登用に努める。
 評価過程や評価結果の適切な開示は、評価システムの透明性の確保に加え、研究者の資質向上にも繋がるため、今後とも推進する。特に、評価結果の内容等をできる限り詳細に被評価者に伝えることを積極的に推進することにより、研究計画の充実や改善が図られるとともに、研究者(特に若手研究者)の表現力等資質の向上に寄与することが期待される。
 上述の審査・評価の充実に当たっては、そのために必要な体制を整備し、研究者(申請者及び評価者)の過大な負担にならないよう十分配慮する必要がある。

4.その他の制度改革の推進

(a)間接経費の拡充

 間接経費は、競争的資金を獲得した研究者の研究環境の改善や研究機関全体の機能の向上のための経費であるが、資金を獲得できる研究者の価値を高め、研究者及び研究者の属する研究機関の競争促進を図る観点からも極めて重要である。
 競争的資金の拡充を図っていく中で、全制度において、第2期基本計画で掲げられた30パーセントの間接経費の措置を実現する。その際、直接経費への影響がないようにすることが重要である。
 間接経費は、基本的には、研究機関が全体を取りまとめて機関として研究開発環境の整備等幅広く活用することが適当であり、各研究機関それぞれの自主的判断のもと、間接経費を活用した魅力ある研究環境の構築や、競争的資金を獲得した研究者に対する適切な評価・処遇等により、研究機関・組織間で競争が行われ、更なる競争的資金の獲得に結びつくというサイクルが構築されることが重要である。

(b)若手研究者等の活性化

 テニュア・トラックにある若手研究者を対象とした競争的資金を重点的に拡充し、若手研究者の自立性や流動性を高める。
 若手研究者の育成の観点から、制度の趣旨に応じ、審査員等への積極的な登用を図る。
 女性研究者等がその能力を最大限発揮することができるようにするため、競争的資金において、出産・育児に伴い受給の一定期間の中断や期間延長を認めるなど出産・育児等への配慮を行う。

(c)制度運用の改善

 引き続き研究者の視点に立った使いやすい制度とするため、制度及びその運用の改善を進める。なお、競争的資金には、公募に当たって、研究費規模や研究期間等が種目毎に設定されている場合が多いが、研究内容に応じた適切な研究費規模や研究期間での研究実施を促進するとの観点からも、制度や運用の改善を継続的に進める。

(d)電子システムの導入

 政府研究開発データベースを充実するとともに、研究者の利便性向上及び業務の効率化等のため、申請書の受付や評価結果の開示等への電子システムの導入を図る。

(e)研究費の過度の集中・不合理な重複への対応

 過度の集中や不合理な重複が生じないよう、関係府省等の共通指針を定めて対応する。

(f)不正使用への対応

 競争的資金の不正使用については、研究者に申請資格の制限を課す等厳格に対処する。また、研究者の所属する研究機関においても、適切な執行を確保するための体制や効率的な執行システムの整備に努める。

(g)社会との関わり

 競争的資金を獲得した研究者が、自らの研究内容や研究成果等について、国民に分かりやすく説明するための活動(アウトリーチ活動(60ページ参照)を含む)を行う場合に、これに対し競争的資金から一定規模での支出を可能とするなど、これらの活動を促進するための仕組みを導入する。
 競争的資金による研究開発の成果については、国や独立した配分機関、研究機関においても、積極的に社会に発信するなど社会への普及・還元に努める。
 競争的資金により実施された研究成果の公開を促進するため、各研究者が研究成果を公開できるようなインターネット上のポータルサイトや研究成果の検索サイトの構築について検討する。

5.基盤的経費の確実な措置

 研究者の自由な発想に基づく研究は、研究者が旺盛な知的好奇心により、思考、仮説、検討・検証のサイクルを繰り返すことから無限の可能性を秘めた芽が育つ萌芽段階に始まり、成長期、発展期の段階に至ると考えられる。
 我が国の大学においては、基盤的経費が研究組織の存立(人材の確保、研究環境の整備等)を支え、多様な芽を育むことを前提とした上で、競争的資金が研究目標の明確な優れた研究計画を優先的・重点的に支援するような二本立て(デュアルサポートシステム)によって研究体制が構築されている。このデュアルサポートシステムは、大学への公的支援の在り方として英国でかねてから採られてきたものであるが、米国を含む諸外国においても、高度な研究を行うための前提である大学の基盤の整備は公的資金が支えてきている。
 基盤的経費と競争的資金とは相互補完的な関係にあり、多様な芽を伸ばすための競争的資金が有効に機能するためには、まず基盤的経費を確実に措置して、研究の裾野を広げ、学問領域の確立や研究の新たな展開に必要な「多様性の苗床」の肥沃化を図る必要がある。
 基盤的経費は、日常的な教育研究活動を支える資金として、研究者や研究支援者の人件費、最低限の研究費、研究基盤の整備費(施設整備費、設備費等)として支弁される。
 このような基盤的経費は、着想したときにすぐ研究活動に取りかかれるための資金(機動性)であり、競争的資金の獲得に至らない構想段階の研究も開始・続行できるための資金(継続性)として、必要不可欠である。また、発展期のプロジェクトの推進においても、大学附置研究所、研究センターの整備等、基盤的経費の果たす役割は大きい(持続発展性)。
 一方、競争的資金は、個人に着目し、優れた研究を成長・発展させることに重点を置いた研究費である。競争的資金が獲得できる研究は、個人中心の研究になじむ分野で研究計画や研究目標が見通せている段階のものであるため、競争的資金制度のみでは研究の多様な芽が生み出されてこない。
 すなわち、基盤的経費の役割は、萌芽期から、成長期、発展期までの研究段階を一貫・継続して支えることであり、競争的資金制度(間接経費を含む)で代替することはできない。このため、国立大学法人・大学共同利用機関法人に関しては、運営費交付金を確実に措置するとともに、私立大学に関しては、私学助成の充実を図っていく必要がある。

(2)評価システムの改革

 評価については、研究開発資金制度の趣旨や目的、課題の特性、研究の発展段階等に応じて行うことが基本である。
 第2期基本計画において重点的に進められてきた研究開発評価システムの改革の一層の推進に加え、所要の研究資源の中でより優れた成果の創出を図る観点から、
   
●  「研究者を励まし、優れた研究開発を積極的に見出し、伸ばし、育てる」ような評価の実施
●  評価の実効性を上げるために必要な資源の確保や評価支援体制の整備
●  評価に関連して発生している具体的な課題の克服
    に重点を置いて改革を進める。
 なお、国立大学法人や独立行政法人等の自主性を配慮すべき法人においては、法人化の趣旨を踏まえた適切な研究開発の評価が可能となるよう、国は十分配慮することが重要である。また、大学等においては、研究開発活動と教育活動が密接な関連をもって推進されているなどの特性に十分配慮した評価を実施する。

1.「研究者を励まし、優れた研究開発を積極的に見出し、伸ばし、育てる」ような評価の実施

 研究開発課題の評価については、評価者、被評価者が、各研究開発資金制度の趣旨や目的等を十分に理解するとともに、研究開発資金制度や課題の性格、研究目的、研究の発展段階等に応じて行う。
 具体的には、
● 研究者の自由な発想に基づく研究については、数量的指標に拘泥することなく、ピアレビューによる研究内容の質の面からのきめ細かな評価を行うことにより評価の実効性を確保する。また、必要に応じて、長期的・文化的なインパクトなどの多様な観点も踏まえた評価を行う。
● 国家的・社会的課題に対応した研究開発については、科学的・技術的な価値のみならず、経済的価値、社会的・公共的価値が十分尊重・考慮されるような評価項目、評価体制を構築する。なお、安全・安心に資する科学技術など評価法が十分に確立されていないものについては、適切な評価法を検討する。
 また、中間評価においては、必要に応じ新しい研究展開を指摘するような評価を実施する。例えば、進展の著しい領域の研究開発の中間評価においては、柔軟に研究計画を見直すことを提言する。
 事後評価においては、その評価結果に応じて、研究者がさらにその研究を発展させ、より一層の成果を上げることができるよう考慮するとともに、直後評価のみならず追跡評価等による適切な成果把握に努める。
 この際、必要に応じて、審査・採択、評価において一貫性を保つため、評価実施主体は、事前評価を行った者を中間及び事後評価等に加えるなどの工夫を行う。
 詳細な評価結果の開示は、研究計画の充実や改善及び研究者の表現力等資質の向上に寄与することから、評価実施主体は、被評価者に対し、評価結果の内容等をできる限り詳細に伝えるよう努める。
 また、研究機関の評価に関し、研究機関の運営は機関長の裁量で行われることから、研究機関評価の結果は、運営責任者である機関長の評価に繋げる。
 さらに、研究開発課題、研究機関、研究者の業績等の評価について、研究費の資源配分に直結することを志向するような単年度評価は、長期的な研究や重要であるが成果が現れにくい研究を敬遠させ、また、困難な課題に挑戦する姿勢を萎縮させる。このため、短期的な評価が必要なものを峻別し、例えば、長期的な研究等については、画一的な単年度評価は実施せず、定期的なモニタリングによる進捗把握等を実施する。
 また、知的基盤(研究用材料、計量標準、計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器、データベース)が研究者の研究活動に不可欠であることを踏まえ、知的基盤の整備への貢献についても適切に評価する。

2.評価の実効性を上げるために必要な資源の確保や評価支援体制の整備

(a)研究開発システムの強化

 競争的資金配分機関においては、プログラムオフィサー(PO)の配置が進められているが、今後は、各制度の趣旨や目的等に応じて、POを最大限に活用した効率的かつ的確に評価を行うための方法や評価に関係する者の役割分担を検討した上で、POの充実強化を図る。
 競争的資金以外の大規模プロジェクト等においては、恒常的に当該プロジェクトに関与し、円滑な推進のために助言等を行う者を配置することを検討する。

(b)研究開発評価事務局の強化

 国・大学・公的研究機関の事務局における人的拡充も含めた研究開発評価体制の構築や職員等の評価実施能力の向上を図ることは、評価に係る各種作業を円滑に行う上で必要不可欠である。このため、職員等を対象とした研修等の開催、評価に係る相談窓口の設置、研究開発評価専門研究者等の派遣、評価のために必要な調査分析等の取組を進める。

(c)評価者等の評価スキル向上の支援

 評価者やPOは、評価結果の信頼性を確保する上で重要な役割を担っていることから、資質向上のための研修等を行う。

3.評価に関連して発生している具体的な課題の克服

(a)「評価疲れ」問題

 評価の実施による研究者や職員への作業負担が過重となる傾向を踏まえ、既存の評価結果の活用等による作業の合理化を引き続き進めるとともに、複数の評価が並立する現行の評価システム自体の整理・合理化を図る。そのため、類似する評価に当たっては、その目的・役割を一層明確にし、評価の重複による不要な作業を回避する。
● 評価実施主体は、評価の必要性の高いものを峻別して評価活動を効果的・効率的に実施する。例えば、萌芽的な研究、比較的小規模な研究、大学等における基盤的経費を財源とする基礎研究等は、必要に応じて中間及び事後評価を簡素化・省略化する。
● 特に、外部評価は、評価者、被評価者ともに大きな負担を強いるため、外部評価を実施すべき課題を峻別し、適切に評価を実施する。例えば、小規模な研究開発や、適切な評価を行い得る専門家が非常に少ない研究開発については、外部評価は実施しない。
 我が国では、評価に従事する者が質・量ともに不足しているため、競争的資金については、資金配分機関における評価体制の整備を図るとともに、評価業務の集約による評価体制の効率化を図ることが重要である。大学・公的研究機関における教育や研究活動と兼任している評価者やPOについては、過重な作業が原因で本来の教育や研究活動に支障が生じることのないよう、評価実施主体による所属機関に対する適切な支援策や所属機関における評価者、POに対する適切な措置などを検討することが必要である。
 また、研究者コミュニティにおいては、研究者の評価業務への参画が研究者のキャリアパスにおいて、十分意義あるとの認識の醸成を一層図っていくことが必要である。

(b)外部評価、第三者評価の例外事項

 外部評価等の活用は、評価における公平性と透明性を確保する観点から積極的に取り組むべきものであるが、国民の安全確保の観点等から公開することが不適切な場合については、外部評価等の例外事項とすべきである。更に、今後、外部評価等の例外事項について、より明確にする必要がある。

(c)数量的指標に係る問題

 数量的指標は、評価実施主体が使用目的を曖昧にしたまま安易に使用すると、被評価者の健全な研究活動を歪めてしまうことが懸念されることから、使用目的を被評価者に明示した上で慎重に使用する。特に、インパクトファクターは論文誌等の注目度を示す指標であり、必ずしも掲載論文の質を示す指標ではないことから、国内の論文誌等の育成との政策課題にも配慮しつつ、その使用について十分留意する。

(d)人文・社会科学の視点の配慮

 生命倫理に関する問題のように、科学技術が人間と社会に与える影響が広く深くなりつつあることを踏まえ、人文・社会科学の視点に配慮した評価体制の構築を進める。

(3)公的研究機関、民間企業の役割

1.公的研究機関の役割

 公的研究機関には、政策目的の達成を使命とし、我が国の科学技術の向上に繋がる基礎的・先導的研究及び政策的ニーズに沿った具体的な目標を掲げた体系的・総合的研究を中心に重点的に研究開発を行うとともに、大学や産業界との連携を強化しつつ、創出された研究成果を効果的に普及・実用化し社会に還元することが求められている。また、公設試験研究機関は、地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導等に重要な役割を担っている。
 独立行政法人研究機関においては、各機関の長のリーダーシップの下、自らの経営責任において、人事システムの構築、研究資金の柔軟かつ弾力的な運用等、自律的な運営・改革に取り組むことが必要である。また、機関の機能を高めるという観点から、外部資金の獲得等による研究開発を行うことも推奨されるが、機関の使命達成のためには必要な運営費交付金が措置されることがまず重要である。さらに、機関の活動内容や成果について、積極的に社会への説明責任を果たしていくことが求められる。
 国は、各機関がその特性や機能を踏まえつつ、選択と集中を図り、効果的・効率的な研究開発活動を柔軟かつ機動的に行えるよう、各機関の研究開発活動を適切に評価し、研究費等の資源配分の増減に反映させる。その際、法人制度の趣旨を最大限尊重し、独立行政法人研究機関や特殊法人研究機関に対して一律の基準に基づく評価を下すことにより、各法人による柔軟な研究開発活動が妨げられることのないよう配慮する。特に、競争的資金の拡充を図っていくためには、競争的資金の配分機関について、独立行政法人であるがゆえに、直ちに予算上の制約が課されることのないようにする必要がある。

2.民間企業の役割

 我が国が経済社会のあらゆる局面で知識を基にした価値創造と生産性向上を実現していくためには、大学や公的研究機関が、イノベーション・システムの枢要な要素として機能するよう、その能力を高めていくことが必要であるが、研究開発の成果から新しい製品・サービスの形で市場価値を創造し、最終的にイノベーションを実現するのは民間企業であり、民間企業に期待される役割は大きい。
 我が国民間企業の研究開発について、成果が社内に埋もれ事業化に繋がっていない事例が多いとの指摘があるが、民間企業には、研究開発戦略と市場価値の見極めを的確に整合させ、より効率良くイノベーションを実現していけるよう、研究開発の投資効率を高めていくことが求められる。
 また、個々の企業が選択と集中を進め、全ての研究開発を自社内部で完結させる自前主義の限界が指摘される中、国全体としてイノベーションの創出を相乗的に加速するためにも、民間企業には、経営・研究開発戦略において、大学との共同研究や技術移転等の産学官連携を柱の一つとして明確に位置付けるなど、大学等の外部の研究開発能力や成果を最大限活用し、市場価値の創出に繋げていく柔軟な技術経営が求められる。
 さらに、人材の養成においても、今後は、産官学が積極的な対話を通じてそれぞれの特徴を十分発揮し、協力関係を築いて人材の養成に取り組むことが必要である。産業界は、大学に対する自らのニーズを明確かつ具体的にするとともに、博士号取得者について、年齢に関わらず、専門応用能力等の実力を評価して人材の採用を行うなど、今後の知識基盤社会における国際競争に耐えられる職務体制や人材の配置などの構造改善に向けた努力が求められる。また、優れた外国人研究者の活躍を拡大するため、大学や公的研究機関にはその登用に係る取組を明確にすることが求められるが、企業においても、優れた外国人研究者を登用することや、インターンシップ活動において留学生等の外国人が従事する機会を提供することが期待される。
 また同時に、様々な分野で知的活動を行う人材が流動し、我が国全体の知的な基盤を構成していくことが重要であり、産業界には、大学をはじめとして、人材の受入れと送り出しを他の様々な機関との間で一層活発に行うことや、社会人の大学院等への進学・再入学を積極的に支援することが重要である。とりわけ、雇用関係を一旦離れてから進学・再入学し学位を取得した者に対して十分な処遇を用意することが期待される。産学の人材交流の観点からは、企業から大学・公的研究機関に派遣され共同研究に取り組む例は多いが、今後は、企業が、大学・公的研究機関の研究者を共同研究などで一定期間受入れる形で人材交流が進むことが期待される。なお、サービス経済化が進展し国内総生産に占める第3次産業の割合が増加しているが、我が国全体の生産性向上のためには、サービス産業の生産性の向上が不可欠である。サービス産業は、製造業と異なり、基本的に、研究開発成果に基づく知的財産権により競争優位を維持することが難しいと考えられるが、自然科学のみならず人文・社会科学の各分野で得られた知識を統合して生産性向上を果たしていく視点が重要である。

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