3.知の時代を先導するイノベーションの創出 3.地域イノベーション・システムの構築と豊かで活力ある地域づくり

 地域における科学技術振興は、当該地域特有の高い研究開発ポテンシャルを活用した先端的な研究開発、将来ブレークスルーをもたらし得る独創的・革新的な研究開発または伝統工芸、伝統産業や文化を含む地域の特色や資源を活かした多様な研究開発の実施により、我が国全体の科学技術の高度化・多様化を実現するものである。
 また、地域における科学技術活動は、イノベーションを通じた産業の国際競争力の強化による地域経済の活性化、地域住民の質の高い安全・安心な生活の実現及び創造的で魅力ある地域社会と文化形成に寄与する。
 さらに、地域の大学、公的研究機関や企業といった科学技術活動主体と地域住民との対話の促進や、産学官連携活動による研究開発成果の地域社会への還元を通じ、「社会のための科学技術」の政策展開にとっても重要な役割を果たす。

国と地域の協力

 国と地方公共団体の関係が見直されつつある中で、今後、地方公共団体には、より自主的、主体的な科学技術活動の展開が求められており、国は地方公共団体の自主性や主体性をより重視した施策を講じることが必要である。国は、地方公共団体をはじめとする地域の関係者による自主的、主体的な活動を支援していく。特に、地球規模のボーダレス化に伴い、国は、国際競争力の強化に繋がる地域独自の戦略的な活動を積極的に支援することを通じて、我が国全体の競争力強化を図っていく必要がある。
 今後、国から地域への支援という関係を越えて、国と地域が各々の目的を達成すべく協力する又は相互に補完し合うという関係が一層重要性を増していくものと考えられる。

地域科学技術振興の戦略的な推進

 国は、地方公共団体と協力して地域科学技術の振興を図っていく上で、地域のポテンシャルを活用した重点課題の研究開発の実施や技術開発の多様な選択肢の確保など各分野の研究開発戦略との整合性を確保するとともに、我が国全体のイノベーション・システムを構成する重要な要素の一つと認識して施策を講じていく必要がある。
 なお、国際的な競争が避けられない技術分野等については、研究成果の実用化に当たって、国や地方公共団体が初期需要者として公的な市場を提供するなど、研究から実用化・普及までの一貫した戦略をもって、地域における研究開発等に取り組んでいくことが重要である。

(1)地域クラスターの育成

 我が国全体のイノベーション創出を促進するために、知的クラスターをはじめとする国際競争力のある地域クラスターの育成を図る。このため、国は、地域のイニシアティヴの下で行われているクラスター形成活動を競争的環境の下で支援するとともに、一定期間が経過した後、各地域の国際優位性を評価し、世界レベルのクラスターとして実現可能な地域に戦略的・重点的な支援を行う。また、世界レベルのクラスターとともに、小規模でも地域の特性を活かした強みを持つクラスターを各地に育成する。
 その際、地方公共団体と関係府省がクラスターの育成に資する各種の施策において連携と協調を図るとともに、クラスター形成活動の広域化・多重化や海外も含む地域同士のネットワーク交流等を積極的に促進する必要がある。なお、クラスターの形成・発展は長期間を要することに鑑み、その持続性に重点を置いた施策の実施や評価を行うよう留意する必要がある。

(2)地域における科学技術施策の円滑な展開

1.関係府省の連携強化

 地域における科学技術振興施策の企画・実施に当たっては、地域の特性やニーズを踏まえた上で、その目標を効果的・効率的に達成するため、府省間の縦割りを排除して施策間の連携を図りつつ、人材養成、基礎研究から実用化・普及に至るまで政府一体の取組がなされることが重要である。また、研究開発のみならず、公的市場の提供や規制緩和、国際標準化等を視野に入れた施策を展開する。さらに、地域の研究機関や企業等の関係者がそのニーズに応じて適切な施策の選択ができるよう、利用可能な施策の全体像を示すとともに、関係府省の地方機関間の連携の強化や関係府省が地域に展開している研究開発資源を活用することが重要である。

2.大学の役割

 地域の大学において、新産業の創出を含めた将来の糧となる優れた技術の種を生み出すための基礎研究や特色ある研究を実施することは地域の科学技術振興の基盤となる。近年、大学の地域連携活動が活発化しつつあるが、今後とも大学の教育研究能力や人材を活用した施策や大学の地域活動に対する支援を行うことにより、大学が人材養成を含めた地域科学技術の振興のためにその役割を積極的に果たしていける環境を整備する。なお、大学における知的財産戦略と地方公共団体等による地域の知的財産戦略との整合を図っていくことが重要である。

3.地域の研究開発資源の活用と充実

 地方公共団体の科学技術関係経費は減少しているが、地域の研究開発資源の活用の観点から、地方公共団体による科学技術関係経費の確保や科学技術活動の積極的な実施を促す。
 筑波研究学園都市及び関西文化学術研究都市については、関係機関が連携し、研究機関、大学の集積及びそれぞれの地域の特色を生かし、世界的な科学技術都市への発展を目指す。また、公設試験研究機関(公設試)は、地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導等に重要な役割を担っている。地方公共団体が、公設試と大学との連携、公設試間の連携等を図るとともに、公設試を活性化する施策を講ずることが期待される。

4.コーディネート機能の強化

 地域においても、コーディネーターの活動は、産学官連携の成否の鍵を握るものであり、その活動を支援する体制の強化や次世代を担う若手人材の養成・確保を図っていくことが必要である。また、コーディネーターが所属する組織の枠を超えて連携し、地域内外を自由に活動できる環境を醸成するとともに、コーディネーター間の連携を促進するためのネットワークの形成活動を支援する。

5.地域の科学技術人材の養成・確保

 地域の社会・産業ニーズに沿った人材を養成するため、人材養成に係る地域の産学官の連携を強化する必要がある。このため、国はインターンシップや社会人の再教育等の人材養成の取組を含めた地域の幅広い産学官連携活動を支援するとともに、地域の産学官連携を牽引するコーディネーターや研究者などの養成・確保のための取組を推進する。また、次世代を担う地域の科学技術人材を育て、住民と研究者等の対話を促進するため、地域における理解増進活動を推進する。

6.地域間の戦略的な国際活動の推進

 クラスター形成活動などに関係し、地域においては自らの産業競争力の強化などを目的として、直接海外の地域や組織との協力関係を模索する動きが増加している。国は、このような戦略的な地域間協力を支援し、地域の科学技術活動の国際化を推進する。

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(科学技術・学術政策局計画官付)