これまで急速な科学技術の発展・深化によって知識は高度化する一方で専門化・細分化を起こしてきたと言えるが、異分野融合による科学技術の発展や異分野融合への社会の要請は21世紀の科学技術の潮流である。
このような背景のもと、新興・融合領域は、画期的な応用可能性や革新的技術などのブレークスルーをもたらすとともに、関連領域の研究開発を相乗的に発展させうるものとして重要であり、機動性を持って的確に対応する。
近年、急速な知識の蓄積やナノテクノロジーなど重点分野の進展が新たな領域を発展させているが、新興・融合領域に的確に対応できるよう、研究者の自由な発想に基づく研究を支える基幹的な制度である科学研究費補助金においては学際・複合・新領域の審査体制の充実を図る。
また、将来の大きな成長や高い応用可能性が予想される領域に対しては、関係機関の調査分析能力や優れた研究者の知見を活用しつつ、機動的に資源配分を行うことや、重点領域を改定していく中で重要な領域を的確に取り込むことが必要である。
一方、経済社会ニーズに基づく課題を設定し、積極的に異分野融合を図りつつ基礎的段階から研究を展開することで画期的な領域を形成していくことも必要である。このため、先端的な融合領域において優秀な人材の結集による積極的な分野融合を図った時限的・弾力的な組織編成で技術革新を狙って基礎的段階からの研究を展開する方式(先端融合領域拠点形成事業(仮称))を推進する。
さらに、科学技術に関する知識が高度化、細分化していることが、課題の解決や国民の理解を得ることを難しくしているとも考えられることから、知識の統合化・融合化を進めることが重要である。
(参考)
第2期基本計画時の重点化手法を基に、より広範かつ詳細な調査分析を行うことにより以下のとおり重点領域の例を抽出した。
高齢化社会に向けた医療・創薬、ポストゲノム研究、ゲノム創薬研究、オーダーメイド医療などの新規医療技術、再生医療、脳研究、新興・再興感染症研究、食糧・環境問題に関する植物研究、分子イメージング
ナノ計測・分析・造型技術、ナノレベル構造制御・新規物質材料創製技術、量子による情報通信原理、高度次世代エレクトロ二クス
大規模・高信頼・高安全・強固なソフトウエア技術、超大規模情報処理、ユニバーサルコミュニケーション技術
地球温暖化研究、地球規模水循環研究、循環型社会システム設計研究
光・光量子科学技術(ナノ/IT)、環境・エネルギーナノ材料(ナノ/環境)、分子・バイオ・スピンエレクトロ二クス(ナノ/ライフ/IT)、ナノ・バイオロジー(ナノ/ライフ)、バイオインフォマティクス/システムバイオロジー(ライフ/IT)、量子ビーム(ナノ/ライフ)
ロボット技術、燃料電池、衛星基盤技術
○ 人類社会を自然災害や地球環境問題から守る基盤となる地球規模の統合観測・監視システム
○ エネルギー自立に向けた高速増殖炉サイクル技術
○ 資源安定確保・地震防災対策のための海洋探査システム
○ 宇宙開発利用の基盤となる宇宙輸送システム
○ 将来のエネルギー・環境問題克服のための核融合技術(核融合エネルギー実用化に向けたITER(イーター)計画等の推進) 等
○ 世界最高水準の次世代スーパーコンピューティング技術(ペタフロップス超級スーパーコンピュータ/系全体最適シミュレーション)
○ 世界最高性能の光分析技術(X線自由電子レーザー)
○ 世界最高性能の分子イメージング技術(超高機能分子イメージング・コンプレックス)
○ 世界最高性能のタンパク質構造・機能解析・合成技術(超高速タンパク質ファクトリー)
○ ポストナノ時代の基盤的ツールとなる世界最先端の計測・分析技術(3次元超高圧電子顕微鏡) 等
科学技術・学術政策局計画官付