資料2 「知的基盤整備の推進」 参考資料

■知的基盤とは

 研究者の研究開発活動、広く経済社会活動を安定的かつ効果的に支える、以下の4つのもの。

  1. 研究用材料
    例:生物遺伝資源(ヒト幹細胞等)、新材料(生体適合性新材料等)
  2. 計量標準
    例:物理標準(長さ、質量、時間、電気量等)、標準物質(濃度等)
  3. 計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器
    例:生物・生態の計測方法・機器(タンパク質構造の解析)、材料・物質の計測方法・機器(材料物性の試験評価)
  4. 上記1~3に関連するデータベース

■計量標準とは

 物差しの目盛りが物差し毎に異なっていると、計量・計測値の信頼性に疑問が生じることとなる。このため、科学的に信頼性のある計量・計測を行うには、共通の計量・計測ルールを持つとともに、標準となる物差しを決めることが必要不可欠となる(これを計量標準という)。

 この標準となる物差し(計量標準)を用いて、それぞれの物差しと比較することにより、科学的信頼性のある計量・計測が可能となり、ひいては、国民生活の安心・安全の確保や、国内外における経済社会活動を安定的かつ効果的に支えることが可能となる。

■「知的基盤整備計画」における2010年の戦略目標及び現在の状況

1.研究用材料

2004年 2010年の目標
微生物(株数) 約29万 約60万
動物細胞(株数) 約34,600 約3万
動物
(マウス、系統数)
約3,050
(マウス胚:約6万5千)
約4千
(マウス胚:約24万)
植物遺伝資源
・作物遺伝資源
・シロイヌナズナ

約34万7千
約9万9千

約60万
約9万

2.計量標準

2004年 2010年の目標
物理標準 179種 約250種
標準物質 184種 約250種

3.計測方法・計測機器

2004年 2010年の目標
ライフサイエンス分野の計測方法・機器 海外に多くを依存している 国際競争力があり最高水準の性能を有するものの供給を可能とする

4.上記1~3に関連するデータベース

2004年 2010年の目標
ゲノム配列等のデータベース(塩基対数) DDBJに平成15年10月~平成16年9月に登録された塩基配列データ数:1040メガビット・パー・セコンド DDBJに1年間に登録された塩基配列データ数:6000メガビット・パー・セコンド
タンパク質構造の解析データに関するデータベース(データ数) タンパク3000プロジェクトによるPDB登録970(平成16年5月現在) 2005年までにタンパク質全ファミリー構造(約10,000~12,000種類)の1/3以上
人間特性データベース 男女34,000人の178項目の寸法データと3次元画像データ 体型等が時代とともに変化すことを踏まえて、基本的な寸法データの更新を推進
材料物性データベース 約1,150,000 約1,800,000
化学物質の安全性データベース(データ数) 約10,800 約4,500
地理情報データベース(GIS) 2002年度末にインターネットを通じて提供・実証実験を行った 2005年までにインタネットを通じて流通利用する仕組みを構築
地質データベース ・ 20万分の1地質図幅 105図幅
・ 5万分の1地質図幅 921図幅
・ 20万分の1地質図幅全124図幅の整備とシームレス化
・ 5万分の1地質図幅全1274図幅中956図幅の整備と地質情報データファイル化

■知的基盤整備の日米比較

 我が国における知的基盤の整備は米国に比較して大きく遅れており(表1、2)、今後、我が国オリジナルな技術の開発が促進され、国際市場を獲得していくためには、効率的な研究開発を支援する知的基盤の整備に加え、その研究開発成果の価値を評価するための評価分析手法とともに、計量標準(物理標準、標準物質)の整備が必要。このため、戦略的な知的基盤整備に取り組んでいくことが重要。

表1 知的基盤整備の日米比較

日本(2004年) 米国(2001年)
物理標準 179種類 約300種
標準物質 184種類 約250種
生物資源整備
中核機関の規模
生物資源保存
約40,000
(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)
ATCC約78,000株

表2 知的基盤(計量標準)整備体制の日米比較(2004年度)

日本
独立行政法人 産業技術総合研究所
計量標準総合センター(NMIJ)
米国
National Institute of Standards and Technology(NIST)
職員数 約270人 約3,000人
予算 約80億円 約770百万ドル

経済産業省産業技術環境局知的基盤課より

■知的基盤整備のための各省庁の取り組みの事例(生物遺伝資源、計量標準)

○ 文部科学省「ナショナルバイオリソースプロジェクト(平成14年度開始)」において、バイオリソースのうち、国が戦略的に整備することが重要なものについての体系的な収集・保存・提供等を行うための体制整備を推進している。

  1. 中核的拠点整備プログラム:14機関、24リソース
  2. 情報センター整備プログラム:情報・システム研究機構国立遺伝学研究所

○ 厚生労働省・国立医薬品食品衛生研究所「細胞バンク事業」において、培養細胞の収集・品質管理・分譲を開始し、毎年約50種を目標に新規資源の収集を行う。また、「薬用植物資源保存供給事業」において、薬用植物資源250種(前年比増減なし)2,600株(同、増減なし)を収集・同定・保存・分譲している。

○ 農林水産省・独立行政法人農業生物資源研究所「ジーンバンク事業」において、植物23万点(前年比増減なし)、動物896点(同、増減なし)、微生物2.0万株(同、増減なし)、DNA23.1万点(同、7.8万点増)を収集保存、提供しており、新たにゲノム情報を活用したコアコレクションの作成、公開に関する事業を加えた。

○ 農林水産省林野庁・独立行政法人林木育種センター「森林・林業に関するジーンバンク事業」において、林木遺伝資源の探索・収集、保存を推進し、林木29,000点(前年比1,000点増)を保存している。

○ 農林水産省水産庁・独立行政法人水産総合研究センター「水産生物の遺伝資源保存事業」において、遺伝資源の収集・保存を推進し、アマノリ類97点、コンブ類67点、その他の大型海草類74点、微細藻類51点、微生物類1,562点を保存している。また、通常と異なる性質を示す水生生物17点を遺伝子抽出が可能なアルコール固定し保存している。

○ 経済産業省・独立行政法人製品評価技術基盤機構(生物遺伝資源部門)において、欧米並み(2010年までに10万の生物遺伝資源)に生物遺伝資源を整備することを目指し、2005年までに約5万の有用微生物等、微生物を中心とした生物遺伝資源の探索、収集、分離、同定、保存、提供に取り組んでいる。

○ 環境省・独立行政法人国立環境研究所「環境微生物、試験用生物の整備」において、環境微生物、試験用生物の収集・保存・提供に取り組み、環境微生物1,400株を保存している。

○ 経済産業省・独立行政法人産業技術総合研究所(計量標準総合センター)において、欧米並み(2010年までに物理標準250種類程度、標準物質250種類程度)に計量標準を整備することを目指している。

■知的基盤整備のための各省庁の取り組み

(計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器)

○ 文部科学省「先端計測分析技術・機器開発プロジェクト(平成16年度開始)」において、先端的な計測方法・機器の開発を進めている。その実施方針を決定する「先端計測分析技術・機器開発小委員会」においては、計測分析技術・機器に関する、次期基本計画を見据えた政策の方向性について以下のようにまとめている。(平成16年12月)

(計測分析技術・機器の重要性・必要性)

  1. 世界最先端の研究データや独自の研究データは、独創的で超高精度な計測分析技術・機器から生み出されるもので、真に革新的な最先端の研究開発の推進に当っては世界最高水準の技術・機器が不可欠である。

(現状・課題)

  1. 我が国の計測分析技術・機器においては、電子顕微鏡やX線回折装置等、国内市場におけるシェアが高く、国際的にも高く評価され広く利用されているものもある。他方、研究開発の進展が早い先端分野、特にライフサイエンス分野においては、計測分析機器の外国企業のシェアが大きく(「キャピラリータイプのDNAシーケンサ」では99%)、多大な研究費が海外企業の計測分析機器購入のために海外流出しているのが現状である(分野によっては研究費の6~7割)。
  2. かかる現状の背景には、我が国の国産機器は一部の要素に優れているものの、全体としてのシステム性能は海外の機器より劣っていることがあり、今後とも、前処理、試薬類、データハンドリング等を含めたシステム全体の観点から、操作性、信頼性等を含め世界最高水準にまで改善していかなくてはならない。

(戦略的開発と実用化に向けた取組み)

  1. これら問題に対応していくため、平成16年度から、我が国オリジナルで世界最高水準の計測分析機器・技術を目指した産学官連携開発事業が開始されている。当面は右事業を通じ、引き続き戦略性を強化し、トータルで独創的な機器・技術開発に取り組むこととするが、今後は特に重点分野の研究者(ユーザー)との連携を強化する等実用化を念頭において進めることが重要である。

(異分野協力と中核的機関)

  1. 革新的な計測分析機器・技術は、異分野間の相互協力と相乗効果により生み出され(計測装置化技術とコンピューター情報技術の融合等)、新しい研究分野を切り開く役割を果たすことがある。また、先に述べたようなシステム全体の視点からの取組み、研究者とメーカーによる一体的な協力体制が必要である。そのためには、異分野の産学官関係者が「計測分析機器・技術に関する中核的機関」において関連技術・情報を蓄積・共有しながら、機器・技術の開発・事業化に取り組むことが効果的である。このような中核的機関においては、計測分析機器・技術分野の人材育成機関としての機能も期待される。

■体制の構築(研究者・技術者の評価)(PDF:17KB)(※下記参照)

■体制構築(利用者の利便性の向上:「中核的センター」)(PDF:18KB)(※下記参照)

■理化学研究所バイオリソースセンター(理研BRC)(PDF:269KB)(※下記参照)

■製品評価技術基盤機構(NITE)生物遺伝資源部門(NBRC)(PDF:28KB)(※下記参照)

■国際的な取組みへの参画

  • 生物多様性条約
     生物多様性の保全、生物資源の持続的な利用、生物資源の利用に基づく利益の公正で公平な分配を目的とする条約。ラムサール条約、ワシントン条約などの特定の地域・種の保全の取組だけでは生物多様性の保全は図れないとの認識から、保全のための包括的な枠組みとして提案された。
  • VAMAS(ベルサイユサミットに基づく新材料と標準に関する国際共同研究)
     先進材料の標準に関する国際協力プロジェクトであり、先端技術製品の貿易を活性化し、国際標準化を促進するものである。金属、無機、高分子、生体材料などの広範な材料の試験評価を対象としている。現在、18の技術作業分野が活動しており、そのうち4分野において日本が国際議長を務めている。
  • GBIF(地球規模生物多様性情報機構)
     生物多様性に関するデータを各国・各機関で分散的に収集し、ネットワークを通じて全世界的に利用することを目的とする国際協力による科学プロジェクト。現在、動物、植物、微生物、菌類等広範な生物種の生物標本データ及び生態系データ等の相互運用を進めており、将来的には遺伝子配列情報、蛋白質データも含めた利用が可能になることが期待される。
  • GTI(世界分類学イニシアチブ)
     生物多様性の保全とその持続的利用のため、その基礎となる分類学情報を整備しようとする世界的な事業。生物多様性の保全のためには、「どんな生物がどれくらいすんでいるのか」を知ることが必要であるが、分類学は、このための基礎であり、生物を命名し、同定し、分類することである。

 アジア・コンソーシアムの設立(2004年10月)(PDF:30KB)(※下記参照)

■2010年に世界最高水準を目指した整備(PDF:19KB)(※下記参照)

■医療機器の国内市場規模と輸入額の推移(PDF:288KB)(※下記参照)

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