科学技術関係人材の養成・確保 若手研究者の自立性の向上
若手研究者の自立性の向上 1
主な意見の概要
○ 若手研究者は独立できていない。/科研費にも若手枠ができ自立性は高まっているのでは。
○ 若手研究者には資金とポジションが必要。研究組織をマネージメントでき、Principle Investigatorとなるよう育成すべき。
○ 自立できない若手が増えている。博士課程学生等の学力低下が著しい。学生の意欲が不十分。
意見の例
● 若手研究者の自立の現状
- 現状では、大学のヒエラルキーのため、若手は独立できていない。
- (若手研究者を自立させるためには)研究組織はフラットにして、研究者は実力主義で扱われるべき。(大学助教授/専門分野;ロボット工学)
- 昔と比べ、JSTのさきがけ研究など、若手の研究者にとっても選択肢が広がってきていて、若手にも自立的な研究活動ができるようになった。(大学教授/専門分野:材料科学)
- 研究所内でも、競争的なシステムに変わり、科研費にも若手枠が出来たため、自立性は高まってきているのではないか。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ナノテクノロジー・材料)
- 若手の研究能力・研究活動のピークが雑用のピークにならないよう、きちんと成功モデルのある制度設計をしてほしい。(大学の若手研究者/専門分野:農学、工学、理学)
● 若手研究者の自立性の向上
- 研究者が独立して研究をするには研究組織をマネージする必要がある。マネージメントができPrinciple Investigatorとなるように、研究者を育成するという観点が重要。(大学助教授/専門分野:科学技術政策)
- 若手研究者には資金とポジションが必要。資金は、個人に配分する額を増やせばよい。ポジションは、競争的資金を取ってきたら、定員と別枠で用意して、独立させれば良い。(ベンチャー経営者/専門分野:ライフサイエンス)
- 若手研究者に対して、あまり小粒な研究とならないよう、研究にはある程度のいわばキングダムを形成して、企業等との対応ができることが必要である。講座の伝統がいい影響を与えることもある。
- 従来の硬直した講座組織から今は変わりつつある。今では、教授の一声で講座が動くのではなく、評価を受けているので、しっかりと研究しなければならなくなっている。(大学教授/専門分野:材料科学)
● 若手研究者の養成
- 大学は教育をしっかりやってほしい。若者の課題設定能力等の低下が著しい。(公的研究機関チームリーダー/専門分野:ナノテクノロジー・材料)
- 自立できない若手が増えている。博士課程学生等の学力低下が著しい。誰でも大学院に進学できるようになったことが原因か。
- 教えられるべきことが教えられておらず、大学で以前の高校レベルの内容が教えられているような状況。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ナノテクノロジー・材料)
- ドクター学生へのファンディングを望む。COEの資金で若手だけの研究会を開いたがとても活発で有意義なものとなり、現在でもやり取りが続いている。(大学の若手研究者/専門分野:農学、工学、理学)
- 若手研究を終了した時には既に海外特別研究員の対象外となっていることが多いため、海外特別研究員の年齢制限の引き上げを検討して欲しい。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ナノテクノロジー・材料)
- 学生の側のモチベーションにも問題がある。最近では、年齢が上がるごとにやる気が出てくる。修士課程の学生でもまだ意欲が不十分。(大学教授/専門分野:材料科学)
若手研究者の自立性の向上 2
(主な意見の概要)
○ 若いときはじっくり研究する機会が必要。
○ 研究以外の事務・雑務に若手が忙殺されている。
○ 研究支援の充実が必要。
<意見の例>
● 研究への専念
- 若いときは(人を雇ったり金を取ってきたりせずに)研究に専念したい。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ライフサイエンス)
- プロジェクト研究や任期付任用も重要だが、研究者の養成には若いときにある程度時間をとってじっくり研究する機会が必要。(公的研究機関チームリーダー/専門分野:ライフサイエンス)
● 事務・雑務の負担
- 若手は研究費獲得の面では確かに優遇されているが、しかし大きな予算を折角もらってもそれに伴う事務・雑費の負担も同時に負ってしまうことになる。知的生産のピークである30代に雑用もピークになる現状。人員削減の際まず事務員に手をつけたのが誤り。必要性の低い研究分野から削減すべきだった。事務の効率化が図られないまま事務量ばかり増え、これを助手などが担っているのが現実。事務員でなく助手の仕事になってしまっているのは遺憾。
- ポスドクから助手になったとたん雑用に追われ自分の研究ができなくなる。平日の昼間は全て雑用で、自分の研究は夜と土日に進めている。本来事務部が行うべき業務(例えば学生の進路調査のアンケート収集)や経理処理等も含まれる。「若手の登用」という言葉が無節操に使われており、ますます研究以外の業務に忙殺される傾向が顕著になってきている。(大学の若手研究者/専門分野:農学、工学、理学)
- 日本の大学の教官は研究以外の雑用も多いため非常に忙しく、特に助手にしわ寄せがいっている。助手の環境の改善を図ることが必要。(公的研究機関チームリーダー/専門分野:ナノテクノロジー・材料)
- 数学の場合、従来より助手くらいで独立した研究を行うことができ、若手の自立は既に実現できていた。逆にここ10年で雑用が増え、事務量増加に伴い若手が使われる傾向。これは事務ポストの削減と関連した問題である。(大学教授/専門分野:数理解析学)
- 若手を研究に専念させるためには事務を一元的に処理できる人が必要。事務処理員は正規職員でなくても、競争的資金等の外部資金で雇用できればよいのだが、外部資金による場合雇用形態に制限が多過ぎる。
- 助手→助教授→教授と無条件に昇格することによるアクティビティの低下。雑用に忙殺されることにより助手の業績が不足し、昇格人事に対応できず、いつまでも助手のまま昇進できないという閉塞感。博士課程・ポスドク後に助手職を得ることに対して魅力が感じられない。(大学の若手研究者/専門分野:農学、工学、理学)
● 研究支援の充実
- 大学の研究者は、学生の教育や地域・産業界との連携等、仕事が増える一方。これを支えるには研究支援の充実が必要。(大学教授/専門分野:憲法)
- 特許などに必要な事務的な文書を作成する研究支援者が不足している。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ライフサイエンス)
- (支援者について)非常勤雇用の期限は3年だが、トレーニングして漸く仕事を覚えさせた頃に期限が終了してしまう。(大学教授/専門分野:数理解析学)
- テクニシャンといった研究支援者の地位を確立させ、欧米並みに引き上げるべき。そうすればポスドクも研究職から堂々と移ることができるのではないか。研究というものは支援がうまくいってこそうまくいく。現在のところテクニシャンは外部資金等により雇用されることが多いが、外部資金が途絶えると終わってしまい、技術の流出も起きる。一時的な雇用で済ませるのではなく、テニュアとして採用すべきであり、また各機関に任せるのではなく国も支援者の雇用について支援していくべき。(公的研究機関の若手研究員/専門分野:ナノテクノロジー・材料)