資料1 第7期 人材委員会提言 骨子(案)
1.はじめに
2.我が国を取り巻く環境の変化
- 少子高齢化社会が進展する一方、世界全体がグローバル化し、高度人材の獲得競争が一層激化。さらに、知識基盤社会が進展するとともに、オープンイノベーションも進展しており、その対応が適切に行われない場合には、日本が世界の後塵(こうじん)を拝するという危機感を持って対応することが不可欠。
3.科学技術・学術を担う人材育成の基本的考え方と我が国が抱える課題
- 上述の環境変化の中、社会・経済を持続的に発展・維持するためには、一人一人の生産性を向上させるとともに、これまで活躍の場が限定されていたあらゆる人材が活躍できる環境を構築することが必要。
- 科学技術・学術分野においても、若手・シニア、男性・女性及び外国人研究者の全ての人材が、自由な競争環境の下、研究分野・技術分野にとどまらず、社会の様々な場で活躍できるチャンスとしっかりとしたキャリアパスを構築することが必要。
- そのような仕組みを考えるに当たり、我が国は様々な課題を抱えている。
-流動性における世代間格差
-研究者の評価と処遇の関係性
-国を越えた人材の流動性の低さ
-博士課程への進学者の減少
-産業界との需給のアンバランス、将来を見据えた人材育成(分野別人材育成)
-博士課程修了者の多様なキャリアパスの未整備とセクター間の人材流動性の低さ
-若手研究者の自立研究環境の未整備
-女性研究者、外国人研究者等のダイバーシティの不足
-研究支援人材の育成不足 等
4.これまでの科学技術・学術を担う人材の育成関係施策
- 過去の科学技術基本計画、人材委員会提言の経緯
- 過去及び現在の施策の紹介
5.今後の施策の方向性(案)
(1)基本的方向性
- 少子高齢化、それに伴った地域社会の担い手の減少が進む一方、グローバル化が進展する中で、どのような人材がどの程度必要とされるか、常に社会の需給を念頭に置いた育成・養成を図ることが必要。
- ただし、社会の変遷・変化が急速に進む現代社会において、研究分野のサイクルも個人のライフサイクルを上回って進展し、その結果、20年後には、現存する多くの業種が様相を異にするという報告もある。また、大学における研究機能と教育機能とは分離し難いが、ある分野においては時代の変遷に伴い、求められる機能の割合には変化があり、それに伴う人材需要の変化もある。したがって、一定の需給バランスを念頭においた育成を必要としつつも、学んだ学問の分野間移動や業種転換等セクター間の移動、クロスボーダーを容易にする環境と教育システムの構築が必要。そのためには、大学等の学問分野、企業の求める分野、及び現在の世界・我が国の科学技術動向を常に透明化し、学問及び業種選択を容易にすることが必要。
- 加えて、少子高齢化による若年人口の減少や、国際的な頭脳獲得競争の激化という状況を踏まえると、一人一人の研究者の持つ能力を最大限に引き出すとともに、異なる知識、視点、発想等を有する多種多様な人材が活躍できる環境を整備していくことが重要である。
- その上で、3.に述べた我が国が抱える各種課題を解決すべく以下に課題内容と今後の方向性を検討し、まとめることとする。
(2)個別課題の内容と方向性
ア.流動性の高い人材システムの構築と若手研究者の活躍支援
(課題)
- 博士課程に進学する学生へのインセンティブの不足
- 若手が安定的に研究できる環境の不足、若手研究者の自立環境不足
- シニア研究者と若手研究者との間の流動性に関する世代間格差
- 適正な評価とそれに見合った処遇がなされていない
- 若手研究者の国際性が不十分
- 博士課程修了者の多様な場における活躍の促進(キャリアパスの構築、グローバル教育)
- 競争的研究資金による雇用を背景とする、若手研究者の自立した研究の実施に対する制約
(方向性)
- 博士課程及び修了者への経済的支援(生活費、研究費及び研究環境)の充実
- ポスドクの位置づけの明確化(労働力ではなく、主体的に研究を行い、独立するための必要なスキルを身に付ける段階)、PIとしての育成
- テニュアトラック制等、自立して研究を行うことのできる教育研究環境整備
- シニア研究者による若手の支援など適切にサポートする体制の整備
- グローバルに活躍できる人材の育成(研究者が海外での活動後、円滑に日本国内で活躍できるための支援を含む)
- キャリアパスの多様化(知財専門職、サイエンスライター、起業等)
- 年俸制、クロスアポイントメント等大学等の人事・給与制度とリンクした人材育成システムの構築
- 全研究者に対する適正な評価の仕組みの構築
- 複数機関が連携した人事制度を採用することによる一定的な安定雇用の下での競争環境の構築(複数機関のコンソーシアムによる拠点形成)
- 複数機関での人材育成システムの構築
- 企業に出る、又は起業する際の若手研究者への支援の仕組みの構築(スタートアップ等の支援)。産業界人材の学び直しの推進
- 学部・博士課程段階を通じ、専門知識をベースとしつつ、幅広い視野と課題発見・解決、起業家精神の慫慂(しょうよう)等の教育の実施。あわせて、中長期のインターンシップやワークプレイスメントの取組も推進
- 競争的資金改革との連携
イ.女性研究者が活躍できる環境の整備
(課題)
- 女性研究者数は年々増加傾向、ただしOECD諸国に比して少ない状況。企業での割合の増加も必須(全体:14.4%、大学等:25%、企業:8%)
- また、大学等では、上位職の女性研究者の割合が低い
(方向性)
- 女性研究者が継続して研究の最前線で活躍できるよう、研究とライフイベントとの両立支援等を実施する大学等への重点支援の充実。女性研究者リーダーの活躍促進、ロールモデルの構築
- 企業における活躍促進の支援
- 学び直しの推進
- 女子児童生徒及びその進路選択に強い影響を与える教員・保護者等への情報提供、ロールモデルの提示
ウ.外国人研究者が活躍できる環境の整備
(課題)
- 我が国における大学本務教員に占める外国人割合は漸増傾向にあるものの、3~4%にとどまっている。また、我が国の高等教育機関における留学生割合はOECD加盟国平均を下回っている。
(方向性)
- 世界の第一線の研究者を招へいするための大胆な環境整備
- 優秀な外国人研究者の戦略的な招へいを通じた国際研究ネットワークの強化
- 海外からの優秀な留学生の受入れ拡大と就労の促進
エ.研究支援人材の充実・育成
(課題)
- 我が国の研究支援人材の数は減少傾向となっており、研究者一人当たりの研究支援人材数は主要各国と比較しても低い値
- 求められるスキル、キャリアパスも明確になっていない
(方向性)
- 研究者と協働できる研究支援人材を高度専門職として位置付け、育成・確保
- 文部科学省がリサーチアドミニストレーターについて作成したスキル標準、研修・教育プログラムの活用
- 複数の機関が連携して、多様な研究支援人材(プログラム・マネージャー、リサーチアドミニストレーター等)を育成、確保することで、能力と希望に応じた多様なキャリアパスを構築
オ.各教育段階における体系的・戦略的な科学技術人材の育成
1 大学学部~博士課程段階
(課題)
- 修士段階で身につけるべき能力や知識が明確となるような体系的な教育が十分に提供できていないという指摘
- 一方、企業や官庁等、社会において学歴・専門性が適正に評価されておらず、修士・博士の学位取得者を使いこなせていない。昇進や給与などの処遇にも結びついていない
(方向性)
- 高度な専門性に加えて、俯瞰(ふかん)力と独創性を備え、産学官にわたり活躍する人材を育成するため、体系的な大学院教育を確立
2 初等中等教育
(課題)
- 児童生徒が理数・科学技術が実社会でどのように役立っているのかを実感できず、児童生徒が理数・科学技術に関心を持てないことがある
- 先進的な理数教育を行う高等学校においては、研究に関する高度な専門性を有する人材の確保が課題
(方向性)
- 児童生徒の理数・科学技術への興味関心を喚起するため、産業界、地域人材の教育現場への活用を促進し、理数・科学技術が実社会にどのように役立っているのかを児童生徒・教員が実感できるようにする
- 先進的な理数教育を行う学校の教育の充実のため、博士課程修了者や企業の技術者等の高度の専門的知識を有する人材を活用
- 生徒の大学学部段階の学修、大学院以降の研究の基盤となる思考力、コミュニケーション力、表現力等を育成するため、高等学校においても、生徒が課題を発見し、探究する研究・学習を支援
カ.イノベーション創出のための場の整備
(方向性)
- 流動性と多様性を最大限に生かし、それらの人材の持つ様々な知識、視点、発想等が刺激し合い、融合し、個々の人材の能力を超えた画期的な成果を共に創出していく場の構築
キ. 大学・研究機関のマネジメントの強化
(課題)
- 大学・研究機関の人事制度を改善していくためには、大学・研究機関としてのマネジメント力が必要とされる
(方向性)
- 大学のガバナンス改革及び新たな研究開発法人制度の創設により、各機関のマネジメントが強化されることが期待される
ク.関係機関・関係施策との連携
1 産業界・地域との連携
- 産業界・業種業界、地域と大学等との対話の場の構築。需給情報のインプット
- 学生が、大学における学修と社会での経験を結び付け、学修を深化させ、新たな学修意欲を喚起するため、企業でのインターンシップや産業界との交流の場や、自らの専門分野以外の分野の研究を行う学生と交流する場を充実
- 児童生徒の理数・科学技術への興味関心を喚起するため、産業界、地域人材の教育現場への活用を促進し、理数・科学技術が実社会にどのように役立っているのかを児童生徒・教員が実感できるようにする(再掲)
2 大学改革・独立行政法人改革との連携
- 国立大学改革プラン等を踏まえて施策の展開
- リーディング大学院、スーパーグローバル大学等重要施策との連携
- 今般、独立行政法人通則法の改正により、研究開発成果の最大化を第一目的とする国立研究開発法人の分類が設けられたことを背景に、大学・大学院までの縦の教育システムと大学院や研究開発法人における若手研究者の育成システムとの連携の強化
- 大学・国立研究開発法人をハブとし、産業界及び地域とも連携した、ポストドクターや大学院生も含めた人材育成及び企業等の人材再育成の仕組みの構築
ケ.社会に対する科学者の責任
- 科学者一人一人が高い研究者倫理に関する規範意識をもち、公正な研究活動を推進していくことが必要
- 研究内容や成果を社会に対して説明する責任を持つとともに、市民との双方向コミュニケーション活動であるアウトリーチ活動を推進する必要
コ. その他
- 各施策を連携することによりシナジー効果を図る
- 人材育成の状況に関し、エビデンス・ベースの調査・分析を行い、発信するなどして、政策の企画・立案に生かす
6.終わりに
- 人材は我が国の宝。将来を見据えた長期にわたる取組が必要。
- 本提言を次期科学技術基本計画等に盛り込み、早急かつ確実な実施を求める。
(了)
科学技術・学術政策局 人材政策課
人材政策推進室
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