科学技術・学術審議会
人材委員会(第23回)
平成16年1月23日
『専門的・科学的知識と手段を生産に応用し、生産における企画、管理、監督、研究開発などの科学的、技術的な仕事に従事するもの。この仕事を遂行するには、通例、大学などで自然科学に関する専門的分野の訓練又はこれと同程度以上の知識と実務的経験を必要とする。ただし、研究所、試験場などの研究施設において、自然科学に関する基礎的・理論的研究に従事するものは「科学研究者」に分類。』
(平成12年国勢調査における定義(学校基本調査においてもほぼ同義))
○ 平成7年から12年にかけて、総人口が増加(1.1%増)する中、就業者数は減少(2.0%減)しているものの、専門的・技術的職業従事者は増加(6.3%増)しており、技術者数も増加(12.0%増)し、平成12年10月1日現在、約266万人となっている。
○ 技術者の専門分野別構成を見ると、「土木・建築・測量技術者」の占める割合が最も多くなっているが、平成7年から12年にかけて「情報処理技術者」の占める割合が増加(5%増)しており、12年において、この両分野に「電気・電子技術者」を加えた上位3分野では、全体の80%を占めている。
○ 技術者の年齢別構成を見ると、昭和55年は「20代後半」とともに「30代」の占める割合が高くなっているが、昭和60年から平成2年にかけて「20代後半」の人数が増加しており、平成2年以降は「20代後半」の占める割合が特に高くなっている。
○ 平成6年度の卒業者以降、高等教育機関全体としての卒業者数や就職者数は減少しており、技術者として就職する者も減少している。平成6年度から14年度にかけての減少率は、就職者数の19.7%減に対して技術者数は11.1%減となっている。
○ 平成14年度に高等教育機関を卒業した者約76万人のうち就職した者は約43万人、そのうち技術者として就職した者は約9万人となっており、就職者に占める割合は平成6年度卒業者の18.5%に対して14年度卒業者では20.5%と増加している。
○ 高等教育機関全体の卒業者のうち技術者として就職した者の専門分野別構成は、「機械技術者」、「電気技術者」や「土木・建築・測量技術者」の占める割合が多かったが、平成6年度の卒業者以降、「情報処理技術者」の占める割合が増加しており、14年度卒業者では全体の約3分の1を占めている。
○ 高等教育機関を卒業し技術者として就職した者の学歴別構成については、大学学部卒の占める割合が最も多いが、大学院修士課程卒の占める割合が急増してきており、平成元年度卒の11.1%に対し、14年度卒では29.5%と全体の約3割を占めている。
○ 高等教育機関を卒業して技術者として就職した者の専門分野別の学歴構成については、昭和54年度卒や平成元年度卒ではどの分野でも大学学部卒の占める割合が最も多いが、平成元年度卒から11年度卒にかけては全体的に大学院修士課程卒の占める割合が多くなってきている。特に、平成11年度卒のうち化学技術者などの「鉱工業技術者」については、大学学部卒と大学院修士課程卒の占める割合がほぼ同率となっている。
○ 高等教育機関を卒業して技術者として就職した者の占める割合は、平成14年度卒業者において、博士課程卒が約14%、修士課程卒が約59%、大学学部卒が約18%、短期大学卒が約2%、高等専門学校卒が約87%となっており、修士課程卒の就職者は約6割、高等専門学校卒の就職者の約9割が技術者になっている。
○ 技術者として就職した者の専門分野別構成を見ると、博士課程卒は「化学技術者」が増加しているが、修士課程卒は「情報処理技術者」や「電気技術者」が増加しており、平成14年度卒では「情報処理技術者」の人数が最も多くなっている。
○ 大学、短期大学、高等専門学校卒は、進学者の増加などにより就職者数が減少しており技術者数も減少傾向にあるが、大学卒の「情報処理技術者」で急増するなど分野による違いがある。
○ 現行の第2期科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)においては、技術者の養成・確保について、「技術者教育、技術士等の資格付与、継続的な教育を通じ一貫した技術者の資質と能力の向上を図るシステムの構築を図る」とされており、文部科学省においては、
などを行っている。
本人材委員会の第2次提言において指摘されているように、今日、我が国においては、新たな「知」を生み出す研究開発の分野はもとより、創造された「知」を新たな製品やサービスの形で経済発展につなげていく分野の双方において、その国際競争力を一層向上させることが重要となっている。
特に、国際的な競争の激化、製造拠点の海外移転、企業内教育のアウトソーシング等の状況が生まれており、「知」の創造を担う人材に加え、生み出された優れた「知」を経済社会に活かし、持続的な発展を遂げていくためには、技術者の役割が極めて大きい。
このような状況下において、学校教育における理工系人材の育成に向けた各種取組を一層推進するとともに、そのような教育機会を通じて育まれた技術者が、その能力を十分に発揮し、あるいは伸ばしていくことができるような環境を整備し、我が国の技術革新を担う高い専門能力を有する技術者を養成・確保していく必要がある。
その際、以下のような点についてどのように考え、また、国、大学、学協会、企業等でどのような対応を行う必要があるか。
近年の急速な技術革新、産業構造の変化に伴い、技術者に必要とされる能力が高度化するとともに、技術者の専門的な知識や経験が必要とされる局面や、技術者としての感性や創造性の発揮が期待される部門が増加するなど、技術者の活躍する場が多様化してきている。
さらに、安全・安心で質の高い生活のできる国を実現していくため、科学技術を社会へ適切に活用することが求められており、技術者自身の倫理や社会的責任が重視されるようになっている。
このような状況において、これからの技術者に必要とされる能力として具体的にどのようなものが考えられるか。
技術者に必要とされる能力が多様化・高度化する中、次代を担う創造性豊かな理工系人材の養成・確保に向けて、理工系教育における実践的な教育を一層推進するとともに、大学院修士課程卒の技術者が増加している実態を踏まえ、今後は、大学学部における技術者教育に加えて、大学院における高度な教育研究の質の向上を図ることが必要と考えられる。
また、生涯を通じた個人の能力向上志向、企業の雇用環境の変化(企業内教育訓練から即戦力となる人材の雇用へ)等に対応する必要があり、能力向上志向はあるが時間や機会がないといった技術者個人の実態を踏まえつつ、既に技術者として活躍している者への継続的な能力開発機会を整備する必要があると考えられる。
このような中、将来を担う創造性豊かな理工系人材の養成・確保や、技術者自らがその能力を継続的に向上させることができる環境整備に向けて、具体的にどのような対応を図ることが適当か。
上記のような取組に加えて、技術者が自らの活動に対して誇りや生きがいを感じ、能力を遺憾なく発揮するためには、技術者が、社会的にも経済的にも、その活動の意義や役割に見合う正当な評価を受けられるような環境を整備する必要があると考えられる。また、こうした取組は、継続的な能力開発への意識高揚や、将来にわたり継続的に質の高い技術者を確保していく上でも重要であると考えられる。
このような中、技術者がその能力を遺憾なく発揮し、活躍できる環境整備に向けて、具体的にどのような対応を図ることが適当か。
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --