日本の博士号取得者を対象とした全国アンケート
1.調査の目的
(1)全米科学財団のデータに相応する、日本の博士号取得者の就業状況に関するストックデータの取得。
(2)取得したストックデータに基づく、日本の博士号取得者の活動実態の分析。
2.調査の方法
(1)調査対象
- 社団法人学士会会員:8,947名、学部卒業年次が1950年以降の博士号取得者(ただし、九州大学卒業者及び海外在住者は除く)
- 九州大学同窓会会員:3,711名、1955年以降の博士号取得者
- 合計:12,658名
(2)調査期間
平成16年1月30日~3月29日
(3)回答状況
- 社団法人学士会会員:4,423名
- 九州大学同窓会会員:1,369名
- 合計:5,792名(回答率は45.8パーセント)
- 内、有効回答者:4,611名(有効回答率は36.4パーセント)
3.調査の結果
(1)日米の博士号取得者の活動実態の比較
- 雇用部門別に比較した場合、米国に比べ日本の博士号取得者の割合は、「4年制大学」で8ポイント高く、「営利企業」で17ポイント低くなっている。
- 日本の博士号取得者の「企業における就業率」は、米国と比較した場合、相対的に低くなっている。
- 職業別に比較した場合、米国に比べ日本の博士号取得者の割合は、「科学者」で32ポイント低く、「エンジニア」で6ポイント高くなっている。
- 「科学者」に限定して雇用部門別に比較すると、米国に比べ日本の博士号取得者の割合は、「4年制大学」で20ポイント高く、「営利企業」で11ポイント低くなる。
- 「エンジニア」に限定して比較すると、米国と比べ日本の博士号取得者の割合は、「4年制大学」で52ポイント高く、「営利企業」で42ポイント低くなる。
(2)「学位取得分野」に基づく活動実態の分析
- 日本の博士号取得者の割合が高い雇用部門は、第一が「4年制大学」、第二が「営利企業」となっている。
- 「学位取得分野」に着目して比較すると、「4年制大学」に就業している割合は、理学部が66.8パーセント、工学部が53.5パーセント、農学部が55.8パーセント、薬学部が45.0パーセント、医学部・歯学部が31.1パーセントとなる。
- これに対し、「営利企業」に就業している割合は、理学部が16.5パーセント、工学部が29.4パーセント、農学部が16.9パーセント、薬学部が36.7パーセント、医学部・歯学部が4.1パーセントとなる。
- 「企業における就業率」は、薬学部が最も高く、次いで、工学部、農学部、理学部の順番となる。
(3)「職業内容」に基づく活動実態の分析
- 産業界における博士号取得者の職業内容を比較すると、「科学者」の場合、「電気電子機器(17.7パーセント)」「医薬品(16.0パーセント)」「化学(14.7パーセント)」における就業率が高くなっている。
- 「エンジニア」の場合は、「電気電子機器(23.1パーセント)」「医薬品(16.9パーセント)」「土木・建設等(12.3パーセント)」における就業率が高くなっている。
- 科学者、エンジニアいずれの場合も、「電気電子機器」と「医薬品」分野に就業している博士号取得者の割合が高い。
- 加えて、科学者の場合は「化学」、エンジニアの場合は「土木・建設等」における就業率が高いことが、日本の博士号取得者の特徴となっている。
3.1 日米の博士号取得者の活動実態の比較
図表1 日米の博士号取得者の雇用部門別分布
日本:n=4,611人、米国n=553.4千人

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表2 日米の博士号取得者の職業別分布
日本:n=4,611人、米国n=553.4千人

図表3 日米の科学者の雇用部門別分布
日本:n=1,384人、米国n=342.1千人

図表4 日米のエンジニアの雇用部門別分布
日本:n=934人、米国n=74.6千人

3.2 「博士号取得分野」に基づく活動実態の分析
図表5 日本の理学部の博士号取得者の雇用部門別分布
n=757

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表6 日本の工学部の博士号取得者の雇用部門別分布
n=1,453

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表7 日本の農学部の博士号取得者の雇用部門別分布
n=421

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表8 日本の薬学部の博士号取得者の雇用部門別分布
n=218

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表9 日本の医学部・歯学部の博士号取得者の雇用部門別分布
n=1,324

※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
図表10 博士号取得分野と雇用部門の相関
博士号取得分野 |
雇用部門別割合(%) |
4年制大学 |
営利企業 |
行政機関 |
理学部 |
66.8 |
16.5 |
10.0 |
工学部 |
53.5 |
29.4 |
8.4 |
農学部 |
55.8 |
16.9 |
13.1 |
薬学部 |
45.0 |
36.7 |
7.3 |
医学部・歯学部 |
31.1 |
4.1 |
11.1 |
※)産業界の保健医療関係は、「営利企業」「自営業」と回答したものを含め、全て「非営利」に区分
3.3 「職業内容」に基づく活動実態の分析
図表11 日本の産業界の科学者の職業内容
n=231

図表12 日本の産業界のエンジニアの職業内容
n=130

図表13 産業界の科学者とエンジニアの職業内容の比較
職業内容 |
職業内容別割合(%) |
科学者 |
エンジニア |
鉱業 |
0.0 |
1.5 |
土木、建築等 |
4.8 |
12.3 |
農林水、食品 |
5.6 |
3.1 |
繊維製品 |
0.0 |
0.0 |
パルプ紙 |
0.0 |
0.8 |
化学 |
14.7 |
8.5 |
医薬品 |
16.0 |
16.9 |
石油石炭 |
1.7 |
0.8 |
ゴム製品 |
0.0 |
2.3 |
ガラス土石 |
1.7 |
0.8 |
鉄鋼 |
3.0 |
1.5 |
非鉄金属 |
2.2 |
1.5 |
金属製品 |
0.9 |
2.3 |
機械 |
4.3 |
6.2 |
電気、電子機器 |
17.7 |
23.1 |
輸送用機器 |
3.0 |
3.8 |
精密機器 |
2.2 |
1.5 |
情報処理機器 |
6.5 |
6.2 |
その他、不明 |
15.6 |
6.9 |
3.4 課程博士と論文博士の就業状況
図表14 営利企業における課程博士と論文博士の人数
n=735

図表15 営利企業における課程博士と論文博士の割合
n=735

3.5 アンケート回答者の特性
図表16 アンケート回答者の学部別分布
n=4,611

図表17 母集団としての妥当性/全分野を対象とした場合
文部科学省調査:n=287,605、アンケート回答:n=4,611

※)「文部科学省調査」は、文部科学省科学技術政策研究所「調査資料 No.88 平成12年版科学技術指標データ集-改訂第2版」のデータなどに基づく
図表18 母集団としての妥当性/理、工、農の3学部を対象とした場合
文部科学省調査:n=112,931、アンケート回答:n=4,611

※)「文部科学省調査」は、文部科学省科学技術政策研究所「調査資料 No.88 平成12年版科学技術指標データ集-改訂第2版」のデータなどに基づく
図表19 アンケート回答者の年齢層の分布
n=4,611

図表20 アンケート回答者の博士号取得年次の分布
n=4,611

図表21 文部科学省調査に基づく年度別の博士号取得者数
n=237,910

※)「文部科学省調査」は、文部科学省科学技術政策研究所「調査資料 No.88 平成12年版科学技術指標データ集-改訂第2版」のデータなどに基づく