4.産学官連携を支える人材の育成に関連した主な意見

1.現状

○ 海外で行われている共同研究と比較すると、桁が違う部分があり、日本はまだまだという感じがする。しかし、急激に日本の大学も共同研究する部分が増えており、企業もメリットがあるから大学と共同研究をしているのだろう。科学技術立国のテーマにそって、官などで予算などの部分でバックアップしてもらえるのであれば、産業界にも非常にメリットが出てくる。

○ 日本の産学連携が進まないのは大学が悪いとずっと言ってきたわけだが、日本の産業も非常に悪い。産業人のメンタリティーをもう少し明らかにして、お互いに変わっていかないといけないのではないか。しかし、企業側の問題点というのが明らかになってきていない。さらに、特許が大学の機関帰属になるのは、一見非常にいいような気がするが、企業と共同で出願したものは、きちんと周辺特許を抑えていくという特許戦略が必要なので、産学連携をする時には知財本部などが戦略を間違えないようにしなければならない。

2.産学官連携を実践する人材の育成

○ 産学官連携というとベンチャーということに直結してしまう可能性があるが、失敗した場合には多くを失うことも想定されるのは事実。学生や比較的若い先生に責任を負う立場にいると、おもしろそうな研究成果が出てきたからといって、ベンチャーというところに直結させると責任がとれない場合がある。起業のための講義には極めて多数の学生が参加するので、インセンティブは十分に与えていると思う。しかし、最後の一歩は踏み出せないし、組織の長としても踏み出させる責任が持てない。

○ シリコンバレーのように、我が国にはノウハウを持っている人が身近に居ないので、聞きにいこうとしても、あるところから前に進まない。産学連携NGOでもよいのではないか。成果が期待される場合は、学生は、「大学発」と言わないが、気が付いたら小さな会社を持っているということがある。

3.産学官連携を支援する人材の育成

○ 国立大学が法人化したけれども、従前と同じように国から運営費交付金をもらっていて、なかなか意識改革ができていない。公立大学法人も同じ。スタートしてまだ間もないので、意識の変換は急には無理だと思うが、限りなくPRIVATIZATIONが進んでいく時代に対応するような心構えをしていかないと、何年経っても従来と変わらないだろう。

○ 産学連携の企業側のメリットは、自前主義からの脱却。欧米の企業は産学連携を積極的に進めている。一方、大学のメリットはどういうことか。大学には使命があり、産学連携の中で企業はどう考えていくべきか。「短中長」で考えるのがよいのではないか。
 「短」は企業の問題で、現在まで大学が蓄積しているTLOや機関所属になってきている知見を企業がどうピックアップしていくか。
 「中」というのは新しい領域に必要になる基礎研究で、5年ないし7年くらい先に芽が出てくるテーマを考えて大学とコンタクトする企業の姿勢。企業側の問題だが、どういう方向に進めるのか、そのためにはどういう基礎的研究が必要なのかということを考え、そしてそれが大学のメリットにもなるのだという備えが必要である。
 「長」は大学のミッションである基礎的研究。TLOを中心に現在大学の持っている知的財産については、産業を考えずにやっているため、残念ながら非情に需要が少ない。相当お互いにコンタクトをとらなければうまくいかず、一種の共有化を図るための人材、大学の人が企業に、企業の人が大学にくるという双方向の人材交流が必要。

4.産学官連携による人材の育成

○ 大学の先生も、多くの教え子を出しているが、余り企業の必要性、問題、特徴を知らないのではないか。したがって、若者については、将来に向かってインターンシップを企業としても是非進めたい。

○ 科学技術ばかりでなく、いろいろなことで日本の場合は人材交流がまだまだ足りないのではないか。連携のための人材ということよりも、むしろ交流がきちんとされていけば、結果的に連携そのものを活発にしていくのではないか。

○ 「産学官」は、「産学公」にすべきではないか。特に地域の産業を興すためには、県とか市がかなり努力している。

○ ベンチャーの危険性ということでは、危険性を分散できるようなある程度お金を持った新しい企業がベンチャーをサポートするようなチャレンジングな金融機関を作ったりしている。ある程度の財政基盤がないとチャレンジングなのは出てこない。もうけにつながるという仕組みを作った上で、新しい会社を興して、産と学を結びつけたり、いろいろな分野で人材を発掘していく。それが明らかに利益につながるということになれば、活力が生まれてくるのだから、定年後の先生なども活用しながら、スタートを少しお金を出して支援すべき。個人では、あらゆる分野の企業と大学を結ぶというのは難しいが、学の持っているその分野の専門家の人的ネットワークを生かして新しい企業を作っていくことも必要なのではないか。

○ インターンシップについては、本来最先端のところが一番勉強になるのだろうが、インターンシップで受け入れるのが、大学の学生ということになると、企業側の本音では受入れられないところがあり、次善策のようなところで受け入れているのが現状。現場の声としては、これから乗り越えなければならない課題とは思っている。

○ 産学連携に関する大学のメリットというのは、実際に物をつくるとかそういったことを経験することによって、また新たな学術研究のテーマが発掘されることであろう。大学の最大のメリットは本来そこにあるが、そういうメカニズムになっていない。問題が大学の先生方にフィードバックされるようになっていないのかもしれない。

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成21年以前 --