科学技術・学術審議会
人材委員会(第22回)
平成15年12月1日
科学技術・理科・数学教育を重点的に行う学校をスーパーサイエンスハイスクール(SSH)として指定し、理科・数学に重点を置いたカリキュラム開発や大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を実施。
平成14年度は、全国の高等学校の中から26校をSSHに指定して事業を実施。平成15年度は新規に26校を指定し、今後段階的に拡充予定。支援は科学技術振興機構(JST)が実施。
科学技術・理科教育を重点的、一体的に実施する地域及びその地域内の小・中学校を「理科大好きスクール」に指定し、観察・実験等を重視した取組みを推進し、知的好奇心や探究心を高め、理科好きな児童生徒を増やし、科学的な見方や考え方を養う。
平成15年度から全国19地域の167校を対象に事業を開始。支援はJSTが実施。
(Science Partnership Program:SPP)
研究者を教育現場に招へいして実施される実験等の講座、大学、研究機関等の施設、機材を活用して実施される講座及び教育委員会と大学、研究機関等の連携により実施される教員研修に対する支援等を行うことにより、中学校・高等学校等と大学、研究機関等の連携を推進しつつ、その適切なあり方について調査研究を実施。また、海外における大学、研究機関等と教育現場との連携の実態や研究者の業績について社会へ発信するための手法等の調査研究を実施。
科学コミュニケーター:ここでは科学ジャーナリスト・ライター、科学系の学芸員等を表すものとする。
ア.科学館等が活動を行う上での問題点としては、予算的な制約を除くと、「人数が足りない」、「専門的な知識を持った人が集まらない」「専門知識を持った人の長期的見地に立った養成が行われていない」という人材に関する指摘が上位を占める。
〔科学系博物館・科学館における科学技術理解増進活動について(平成14年)科学技術政策研究所〕
イ.科学技術に関する国民の最大の情報源はテレビ・新聞等の媒体であるが、研究者はマスメディアとの接し方を知らず、記者もまた研究の背景や先端的知識に必ずしも精通していないこともあり、必要な情報の取得がスムーズに行われないという状況が出現していると考えられる。この点で、英国や米国においては、記者のみでなく、科学コミュニケーターを養成するための大学院等が存在する。
〔科学技術理解増進と科学コミュニケーションの活性化について(平成15年)科学技術政策研究所〕
ア.研究職以外の方面へ進出を考えた時に興味のある職種についての質問において「研究者社会と国民社会を繋ぐインタープリター」「小・中・高校において教育・育成に携わる業務」に関心を示す研究者は一定の割合があり、特に50歳代の研究者で研究者社会と国民社会を繋ぐインタープリターになることに関心を示す者は3割近く存在する。
〔我が国の研究活動の実態に関する調査報告(平成14年度)文部科学省〕
イ.青少年のための科学の祭典の出展参加者にみる教員の役割の大きさ
・「青少年のための科学の祭典」は科学技術振興財団が主な事務局となり、青少年が自分自身で実験や工作を体験することで、科学の面白さや不思議さを感じる機会を充実することを目的として平成4年度から始められたもの。平成15年度は「青少年のための科学の祭典」の名前を冠する実験教室等の取組が全国で77大会(内66大会が終了)開催され、現在まで約33万人の入場者を集めている。出展参加者はボランティアによっているが、95年以降の出展参加者6413人、所属が判明している者4534人のうち、大学教員・学生(8.7%)、科学館・博物館職員(1.7%)であり、半数以上は小学校教員(15.2%)中学校教員(13.2%)高等学校教員(23%)で占められている。この点で、科学ボランティアで教員の果たしている役割の大きさが分かる。
ウ.ボランティア(サイエンス・レンジャー)からの要望
「サイエンス・レンジャー」とは、「科学実験」、「科学工作」を通して、科学や技術の素晴らしさを感動的に伝える活動をしている実験名人を科学技術振興機構に登録する制度。小学・中学・高校の教員、大学教官や国立研究所の研究官等からなる。平成15年4月現在、全国で登録者167名。出動の要請を受けて全国各地で出前の科学実験・科学工作を行っている。
サイエンス・レンジャーからの要望(抜粋)
上記の状況を踏まえれば、科学技術・理科、数学に関する青少年をはじめとした国民の理解の増進について、以下のような視点に立った対応が必要ではないか。
(1)児童生徒の学習意欲を向上させるきっかけとして、知識を積み上げていく学習の他に、自らの興味・関心に従ってより学習を深めることができるように、獲得した知識を科学的な体験を通じてより実感を伴って理解したり、学習した原理を利用した先進的な技術に触れたり、そこに関わる研究者・技術者の姿に触れ合う機会を拡充すべきではないか。また、こうした機会を充実するためには、教材や設備等の条件整備も併せて進めるべきではないか。
(検討の方向)
○ 学校、科学館や大学、研究機関等の多様な場において、児童生徒が観察・実験等の科学的な体験をする機会を充実したり、先進的な技術に触れたりする機会を拡充させ、学習への動機付けを図るべきではないか。
○ 観察・実験等の科学的な体験に必要な教材や設備についても、一層の充実を図るべきではないか。
○ 研究者や技術者の姿に触れる機会を増やすなど、科学技術に携わる者に触れ合う機会を充実させるべきではないか。
【関連意見】
(2)児童生徒の科学技術・理科、数学に関する学習意欲を高めるためには、高い指導技術を持った教員による指導が不可欠であり、1理数科目について十分な指導力を持つ教員を育成するため、地域の理科教育センター等における実験指導等の実践的な研修を充実したり、2専門的な指導を行う取組や3高い指導技術を持つと評価される教員の意欲を喚起するための取組の推進が望まれるのではないか。
(検討の方向)
○ 国と各地域の理科教育センター及び理科教育研究部会と教員養成系大学のネットワークを強化し、行政が持っている情報の流通の円滑化等を推進するべきではないか。
○ 各地域の大学、研究機関等と教育委員会が連携した実験等の実践的な教員研修の取組を一層充実するべきではないか。
○ 大学院修学休業制度を活用した教職員の専修免許状の取得を促進するべきではないか。
○ 他校種免許状による専科担任制度を拡充した教育免許法の改正を踏まえ、中学校理科教員による小学校での指導等の取組を推進するべきではないか。
○ 理数科目について高い指導技術を持つと評価される教員の取組を支える仕組みの在り方について検討を進めるべきではないか。
【関連意見】
(3)スーパーサイエンスハイスクールにおける先進的な科学技術・理科、数学教育に関するカリキュラム開発を実施する過程で明らかになった課題の一つは、実験や課題学習等を重視した教育を推進しようとしても、現実の大学入試の在り方との関係で、大学の入学者選抜での評価について心配している学校が少なくない。
また、各学協会等により科学オリンピックヘの我が国からの参加が拡大される動きがあるが、この種の国際的な広がりを持っコンテスト等、理数分野を得意とする生徒の目標となり、これらの生徒の意欲を一層喚起することを目指して行われている取組を推進するとともにその成果を通則こ評価することも求められている。
そのため、これらの取組や学習内容・学習活動が適切に評価されるような環境作りが必要であることから、例えば、大学の入学者選抜においても各大学がアドミッションポリシーを明示した上で、高等学校段階までの生徒の特色ある取組や学習内容・学習活動を適切に評価することを一層促進することが求められるのではないか。
(検討の方向)
○ 高等学校までの特色のある取組や学習内容・学習活動を適切に評価することにより、科学技術に対する生徒の取組が広く評価されたりするような環境作りが必要ではないか。
【関連意見】
(4)第2次科学技術基本計画においては、研究者や技術者自らが、あるいは専門の解説者やジャーナリストが、最先端の科学技術の意義や内容を分かりやすい形で社会に伝え、知識や考え方の普及を行うことを責務とすべきこと、また、地域レベルでも科学技術に関する事柄をわかりやすく解説するとともに、地域住民の科学技術に関する意見を科学技術に携わる者に伝達する役割を担う人材の養成・確保を促進することとされている。
今後は、職業的に科学技術理解増進の活動に取組む者、専門知識を活かして科学的な知識についての普及を図るためボランティア活動等を行う者等、科学技術理解増進活動を担う人材を育成し、これらの者が介在することで、国民が科学技術に身近に触れる機会を充実するとともに、社会から科学技術の側に意見や要望が的確に伝えられる機会を拡大していくことが必要ではないか。
(検討の方向)
○ 科学ジャーナリスト・ライター、高度の企画力を持つ科学系博物館・科学館の学芸員等の科学コミュニケーターの量が十分とはいえない状況で、このような者の養成を図るために専門の教育の在り方を研卑することが必要ではないか。
○ 公的研究費による大規模な研究については、その研究内容や進捗状況について広く社会に情報発信を行い、社会からの意見等を研究に反映するための取組を予めプロジェクトに組み入れるようにするとともに、このような取組を科学コミュニケーターを養成する場として活用するべきではないか。
○ 国が主要な学協会等と連携して、科学コミュニケーターとして活動したい研究者・技術者と学校教育・生涯学習の要望をつなぐ取組を促進すべきではないか。
○ 科学技術理解増進に取組むボランティアをネットワーク化し、協力や支援を行いながら活動を推進するべきではないか。
【関連意見】
(5)研究者が、社会との関わりについて常に高い関心を持つことを促すため、予め研究開発の意義について社会に情報発信することを推奨したり、情報発信に必要な知識を身につける機会を充実したりするとともに、科学技術理解増進活動に対する研究者の貢献を適切に評価するべきではないか。
(検討の方向)
○ 研究者を養成する段階から、社会への情報発信を念頭においたトレーニングを行うとともに、情報発信の手法について身につける機会等を充実するべきではないか。
○ 研究者の評価指標について、科学技術理解増進活動の実績を社会貢献として評価することをより重視すべきではないか。
○ 研究者が自らの研究について平易な言葉で一般社会に語りかけることに自発的に取り組めるような環境の醸成が必要ではないか。
【関連意見】
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --