2.技術者の養成・確保に関連した主な意見

1.「技術者」の定義

○ 技術者について議論する上では、「技術者」という言葉でどこまでをカバーするのか、ある程度整理しておく必要がある。

○ アメリカの場合には、技術者についてはPE(Professional Engineer)という使い方をしており、PhDというのはアカデミックな場面での用語である。博士課程に重点を置いて議論すると、技術者の養成・確保という意味においては、日本だけ突出したあるいは世界と全く違った考え方をしていることになる。

○ 技術者と言った場合、社会の中には自然科学系の技術だけではなく、経済学とか、不動産鑑定、あるいは会計士に求められるような技術など、いろいろな技術があるわけで、この委員会ではそういった自然科学系以外のものも含めて、社会の発展のために議論しているのか。それとも、自然科学系に限定しているのか。

○ これまでの検討においては、科学技術・学術、すなわち自然科学のみならず人文・社会科学も含めて審議を行ってきているので、基本的には技術者についての議論になった途端に自然科学に限定することはない。ただ、この点については先ほど申し上げた通り、「技術者」という言葉の使い方の問題を整理する必要がある。我々の委員会として、どこまでの分野をカバーするのか、どこかに集中するのか。集中するとすればどういう優先順位でどこに集中して議論するか、これは皆さんと御相談しながら決めていきたい。

○ WTOのGATSで対象となる職業は、技術者に限らず、医師、建築士、会計士、弁護士など多様な職種が含まれるが、今後、この委員会においてどれだけの分野をカバーするかは別として、本日は、WTOのGATSで言うところの技術者というカテゴリーについて議論しているものと認識している。

○ サイエンティストとエンジニアの他に、テクニシャンという言葉があり、これを技術者と訳しているところもあるような気がするので、この点は議論をするにあたって注意していかなければならない。サイエンティストとエンジニアの線引きはできないという意見は理解できるが、今後議論するに当たっては、もう少し明確に分けたほうがいい。

○ 技術者も重要であるが、ある意味では技能者と言われる人たちが新たに脚光を浴びる時代が来ているのではないか。ここで技能者を排除するというと、この検討そのものが何のためにやろうとしているのか、横に退く感じがする。実際にやっていくのは技能者ではないか。

○ 研究者と技術者の違いは、研究者については、企業でいえば新しい製品、新しい何かを作り上げるWhat志向、工場の技術者はいかに効率化、合理化、品質安定化を行うかというHow志向。研究者と共通している点はクリエイティブ。

○ 技能者と技術者はもちろん違う面はあるが、クリエイティビティという側面があり、その人の主観に属するような面が技術にはあるということを打ち出すことも、個々の若い人たちに自分が技術を担うという気分にさせる1つの要素であると思う。

○ 技能というのは、暗黙知の世界であるが、これから大変に必要になるのではないか。技能者は、どういう理由でこうなるのかということはわからないが、技術者はそれを言葉とか数式で表せる。しかし技能者の暗黙知の部分は形式知化されるが、技能者のもっていたノウハウが全部数式や何かで表されるのかといったらそうではない。技能者と技術者の両方の関与が必要である。これからの日本の生産技術の大事なポイントは、いかに技能者を育て、それを技術者に解析して生産技術化するという形でバトンタッチしていくかといったサイクルをうまくやるという点ではないか。

2.技術者に求められる資質・能力

○ 研究者と技術者は、クリエイティビティ(創造性)で分けられるものではなく、知の活用においても、世界にない新しい組み合わせを考え出すということもありうる。研究者と技術者は技術系である以上、専門性は共通に求められるが、技術者に決定的に必要なことは、技術を生かすために社会あるいは市場を常に意識することである。さらに、発明・発見されて創造された知を社会の中で価値あるものにしていくには、一つの技術や一つの考え方だけでは無理である。優れた技術者は、結局一人だけで全部できるわけではないので、インテグレーション(統合、融合)の能力を持つ必要がある。資料にある調査結果の中で、自分の専門の周辺分野について知識を広げていきたいという回答をしている技術者は、まさにこの点を経験上理解し、自らに対する反省の意も込めてこういうことを言っているのではないかと思う。技術者の養成においては、このような資質や能力を学生に身につけさせることを意識した教育を行っていただきたい。

○ 個人的には技術者と医者というものを並べて考えている。すなわち、医者は医業に従事する者であって、健康の専門家であるけれども、自分が知っている知識だけを応用してやるのでは進歩がない。新しい知識を積極的に求める必要があるし、自分の知らない知識に挑戦するような医者こそが、まさしく我々の求めている医者である。技術者も同様の気持ちでやらなければならない。そういった意味で、必要に応じて研究の分野に入っていくぐらいの能力は期待されていいと考えている。

○ 今現場でITを支えている人達、特にソフトについては文系の出身者も多い。それは物理、科学を知っているというのではなく、物事を論理的に考えるとか、ある程度の数学的知識があるという程度で、あとは現場でその資質で賄っている。余り早くに専門を分ける、文系、理系に分けるということを急ぐべきではないのではないか。

○ 日本の場合文系と理系というのを分けすぎているのではないか。世の中で活躍するためには、やはり理科の知識、科学の知識も必要なのであり、大学段階まで両方に行けるような余裕を残す必要があるのではないか。

○ 理系のものが得意な人と得意ではない人というのは先天的に分かれているのか。ある程度の基礎について知っていればいわゆる理科系というような職業選択、転換というのは可能なのか。

○ 多くの人は非常に数学が嫌いになっている。一旦そこでサヨナラしてしまうと、なかなかそれをカバーするのは難しい。そういう意味では数学教育の改善は非常に大事。

○ 早い段階で文理を分けているのではないかとの指摘については、早く解決されると非常によいと思う。

3.技術者が誇りと生きがいを持って取り組むことができる社会の実現

○ 「知の創造」である大学の研究をどう産業に結びつけるかという意味で、「知の活用」が重要。産業かまでは内外年月がかかるが、外国人に論文を見破られて先に産業化されたりするのは深刻な問題。企業側としては大学の研究を産業かに結びつけるために技術者の果たす役割を考える必要がある。

○ 過去の大きな事故などの事例を調べてみると、技術者が指摘したことが意思決定システムの中で無視されて事故を起こしているケースが非常にある。専門性を持った技術者の役割の重要さを訴えていく必要がある。技術者が本当に何の役に立っているのかということ、顕著ないい例を文科省としてもPRするべきではないか。

○ 技術者であることが多くのインセンティブになるということをいろいろな形で努力するべき。その中で資格は重要。

4.その他

○ ダブルメジャーの人材をどのようにして育成するか。今後の科学技術はバイオインフォマティクスなどの融合技術が中心になるが、こうした分野の専門家は企業では育成できない。

○ 町で開業している医師が、意外と最先端の治療や薬を知っている。彼らがどうやって最先端の情報に接して身につけているのか、調べて教えて欲しい。

○ 医学は人間を対象にしているが、ゲノムの時代といわれる中で、人間以外の全ての生物のいろいろな情報をもとに、今後は生物系のエンジニアリングというものが重要になってくる。今いる技術者の中身をどうするかという問題とは別に、こうした新しい分野における技術者をどうやって養成していくかは非常に大きな問題である。

○ 企業としては、いろいろな尺度で国際的通用性を図る資格のようなものがあれば、人を採用する上での一つの目安になる。資格を付与することは個人のモチベーションにもなってくるので、技術者全体としてのレベルを引き上げることにもつながっていけばよい。

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