資料4‐3 科学系博物館・科学館における科学技術理解増進活動について (調査資料-91)

科学技術・学術審議会
人材委員会(第21回)
平成15年11月12日

概要

 科学系博物館・科学館における科学技術理解増進活動について (調査資料-91)

文部科学省
科学技術政策研究所

1.調査の目的

 第2期科学技術基本計画にも、「科学技術の振興」を促進するに当たっては「博物館・科学館等の機能の発揮を図る」必要があると謳われている。しかし現状では、科学系博物館や科学館(以下「科学博物館等」の総称を使用する)はあらゆる年代が利用でき、生涯学習施設として重要な役割を担っているにもかかわらず、来館者数の減少や学芸員の不足などの問題も抱えており、普及・教育(国民への理解増進活動)という重要な活動が十分に機能しているとは必ずしも言い難い。
 そのような問題を抱えつつも、国民、それも特に日本の未来を担う子供たちに対する科学技術の理解増進は急務であり、科学博物館等において解説・公開実験等に直接従事する学芸員、解説員、その他の職員などの科学技術理解増進活動担当者(いわゆるインタープリター※)の質・量の向上、ならびに地域や学校教育との連携が望まれる。また、人材の確保・育成だけでなく、その人たちがそれぞれの能力を十分に発揮でき、誇りを持って働ける環境の醸成も重要である。こうした問題認識に立ってアンケート調査を実施し、調査結果から今後の科学博物館等における科学技術理解増進活動に資する情報を引き出すことを目指した。

※「インタープリター」という呼称については、現場では「展示解説員」ないしは「自然解説員」など狭い意味で使用され、館の企画運営も担当する学芸員については使用されない場合も多いが、ここでは広い意味で使用している。

2.調査の方法

 アンケートは、全国科学博物館協議会および全国科学館連携協議会に加盟する科学博物館等310館に対して、平成13年(2001年)10月に調査票を送付し、回収できたものについて集計および分析を行った。調査対象となった科学博物館等には、自然史部門及び理工部門をもつ総合博物館、自然史系博物館、理工系博物館、動物園、水族館、植物園、プラネタリウム等が含まれる。
 調査票は2種類を用意した。「調査票(その1)」は科学博物館等の概要と現状を問うもので、1館につき1名に回答を依頼した。「調査票(その2)」は、科学博物館等において科学技術理解増進活動担当者の問題意識・要望等を問うもので、1館につき1~5名程度に回答を依頼した。

3.アンケート調査の結果と分析

○ 回答者及び科学博物館等の概要及び現状

 「調査票(その1)」に対する回答が得られた館の数は217館(有効回収率70%)、「調査票(その2)」に対する回答者数は469名だった(共に質問の一部に対する無回答分を含む)。
 本調査によれば、全職員中で科学技術理解増進活動担当者が占める割合の平均は59.3%であり、100%と回答した館も20館あった(図1)。

図1 全職員数と科学技術理解増進担当職員数の比率頻度分布

図1 全職員数と科学技術理解増進担当職員数の比率頻度分布

 調査に協力していただいた回答者の年齢構成は65.3%が40歳以上(図2)で、科学技術理解増進活動の経験年数3年以上が全体の63.1%を占めていた(図3)。これが、各館の年齢構成及び職員の経験年数をどの程度反映しているかは不明だが、総じて経験豊かな職員からの回答が得られたと解釈してよいであろう。

図2 回答者の年齢

図2 回答者の年齢

図3 回答者の経験年数

図3 回答者の経験年数

○ ボランティアの活用状況

 ボランティアの活用状況に関しては、半数近い館において、展示物の解説や自然観察、実験指導などの分野で活用されている。職員が行うべき仕事を肩代わりするために必要なボランティアの数は0人と答えた理解増進担当職員は64.4%と多いものの、職員の意識としては、72%が、ボランティアの活用に関して前向きな意見を持っている。
 なぜボランティアを活用するかに関しては、職員数の不足を補うためではなく、有用な人材の活用、地域住民との交流促進や生きがいの提供、自主的な研修の場の提供、専門知識の補充などが主たる理由としてあげられている。とくに、ボランティアを積極的に活用することは、博物館が地域と一体となって活動していくうえで必要不可欠な使命であるとの認識が広く受け入れられている点は注目に値する。

○ 理解増進担当職員の概要

 科学技術理解増進活動に従事する職員のうち、44.4%を出向者が占めており、40.9%を占める館での採用職員と並ぶ多数派(図4)だが、経験年数としては、3年以下の回答者が全体の20.9%、経験年数5年以下に枠を広げても全体の28.8%に達する(図3参照)。専門知識を養うために必要な年数を質問したところ、平均値、中央値、最頻値ともに3年だった。したがって、出向者の出向年数によっては、経験を積んだ時点で館を離れるケースがままあるとも考えられる。

図4 回答者の現在の立場

図4 回答者の現在の立場

○ 人材をめぐる問題点

 科学技術理解増進担当者のあいだには、量的に不足という声と、専門知識を持った人の長期的養成システムが存在しない点を問題視する声が大きい(図5参照)。長期的視野に立った専門家の養成システムを整備するにあたっては、出向者が多数を占めている現状も、考慮すべき重要な要素となるであろう。ただし、学校・教育委員会・県市町村からの出向者は、科学博物館等と教育現場との連携を促進する上での貢献が期待される。

○ 期待される今後の方策

 今後の方策に関しては、有能な人材と予算の確保が最も望まれている。「ノウハウのマニュアル化、文書化等による蓄積・継承」及び「専門知識面での研修の実施・拡充」、「コミュニケーション能力面での研修の実施・拡充」が「時間がない」せいで実現していないとの回答が多かった(それぞれ41.9%、31.1%、28.8%)のも、人材・予算不足の余波と解釈できなくもない(表1及び図6)。

図5 人材問題の深刻度 (項目番号は下記リストを参照)

図5 人材問題の深刻度(項目番号は下記リストを参照)

※ 項目番号の質問内容

  1. 量的に不足
  2. 専門知識を持った人が集まらない
  3. 長期的見地にたった専門知識を持った人の養成が行われていない
  4. コミュニケーション能力を持った人が集まらない
  5. 長期的見地にたったコミュニケーション能力を持った人の養成が行われていない
  6. 意欲のある人が集まらない
  7. 出向等短期間勤務などのため意欲が不足している
  8. 指導・育成する者が自館内で養成できない
  9. 能力のある者を指導・育成する者として位置づけることができない
  10. キャリアパスが頭打ちで将来に希望を持てない
  11. 身分が非常勤、ボランティアなど不安定で短期的にしか使えず、責任が持たせられない
  12. 担当者が異動になるとノウハウが蓄積されない
  13. 確保・育成するための予算が不十分
  14. 労働条件の制約があり、館外活動、夜間等時間外活動がしにくい
  15. スペース、備品、消耗品等が不十分であり、能力が十分に発揮できない

表1 理解増進活動を担う人材の今後の方策(実現していない理由)

項目 実数(人)
予算がない 適当な人材がいない 時間がない 方法がわからない その他 無回答 合計
1 理解増進活動を担う人材の量的な確保 243 76 21 13 19 97 469
2 専門知識面での研修の実施・拡充 137 49 147 17 17 102 469
3 コミュニケーション能力面での研修の実施・拡充 81 72 128 50 19 119 469
4 理解増進活動を担う人材の意欲の向上 56 81 96 54 15 167 469
5 理解増進活動を担う人材を指導する人の確保・育成 115 136 58 22 17 121 469
6 有能な人を、理解増進活動を担う人材を指導する人として位置づける 69 135 55 41 24 145 469
7 非常勤、ボランティアなど不安定な身分の改善 229 22 6 36 22 154 469
8 ノウハウのマニュアル化、文書化等による蓄積・継承 42 43 198 17 15 154 469
9 活動の評価手法の確立 30 40 99 163 17 120 469
10 理解増進活動を担う人材を確保・育成するための十分な予算の確保 365 10 6 11 7 70 469
11 十分なスペース、備品、消耗品等の確保 337 6 6 5 9 106 469

図6 回答の割合

図6 回答の割合

○ 仕事のやりがい

 横断的な対応を求める声としては、ここでも人材・予算不足と関係した項目に関する要望が高い中で、科学技術理解増進活動に関する社会的認知度(社会的地位)の向上を実現する声が大きい(社会的認知度の向上に関して、「極めて重要」ないし「重要である」とする回答の合計は85.2%、「実現していない」ないし「あまり実現していない」とする回答の合計は87%だった――表2及び図7)。

表2 理解増進活動を担う人材の今後の方策・横断的な対応(重要さの程度)

項目 実数(人)
極めて重要である 重要である 重要でない 無回答 合計
1 専門知識面での横断的な研修の実施・拡充 103 315 28 23 469
2 コミュニケーション能力面での横断的な研修の実施・拡充 56 322 58 33 469
3 学会等における情報交換・相互評価のための研修会、意見交換会の実施 79 328 41 21 469
4 理解増進活動を担う人材を指導する人の確保・育成 113 297 33 26 469
5 ノウハウの共有化、事例等のデータベース化 102 308 37 22 469
6 大学等の専門機関による養成システムの充実 46 278 121 24 469
7 活動の評価手法の確立 66 311 69 23 469
8 資格制度、表彰制度の充実 21 212 212 24 469
9 理解増進活動を担う人材のキャリアパスの確立 37 295 96 41 469
10 理解増進活動を担う人材を確保・育成するための十分な予算の確保 189 238 20 22 469
11 理解増進活動についての社会の中での認知度(社会的地位)の向上 135 267 45 22 469

図7 回答の割合

図7 回答の割合

 この事実はまた、科学技術理解増進活動の必要性及び重要性が社会に認識されていない現状を反映するものとして、深刻に受け止めるべきであろう。科学技術知識の啓蒙と併せて、科学技術理解増進活動に関する啓蒙にも力を入れていく必要があるかもしれない。

○ 運営・展示に関する問題点

 この点でもやはり、人材・予算不足が問題の焦点となるが、イベント開催のための人手不足を問題ありとする回答も合計で70.7%に達している。こうした問題に関しては、ボランティア等の積極的な活用を検討すべきかもしれない。また、展示物の企画・製作についてのノウハウ、他館への付与システムの構築に対する要望も多数を占めている(それぞれ66.1%と67.6%――表3、4及び図8、9)。

表3 展示物、展示方法、運営等(現在の問題点)

項目 実数(人)
非常に深刻な問題 深刻な問題 問題 あまり問題でない 問題でない 無回答 合計
1 展示物を増設したいが予算が不足 146 86 132 76 16 13 469
2 展示物を入れ替えたいが予算が不足 174 94 119 60 13 9 469
3 修理をしたいが予算が不足 126 106 123 77 21 16 469
4 展示の企画、制作等に携わる専門職員のポストやその能力を有する者が不足 73 92 153 114 23 14 469
5 現場を良く知っている人に決定権がない 58 50 98 192 55 16 469
6 展示物を修理したいが人が不足 33 57 152 154 59 14 469
7 増設したいがスペースが不足 96 78 137 114 31 13 469
8 入れ替えたいがスペースが不足 79 71 128 134 40 17 469
9 イベント等をしたいが予算が不足 102 81 158 84 32 12 469
10 イベント等をしたいが人が不足 74 88 172 95 29 11 469
11 イベント等をしたいがスペースが不足 67 59 137 149 45 12 469
12 労働条件の制約があり、館外活動、夜間等時間外活動がしにくい 11 11 64 179 187 17 469

図8 回答の割合

 

図8 回答の割合

表4 展示物、展示方法、運営等(今後の方法)

実数(人)
極めて重要である 大変重要である 重要である あまり重要でない 重要でない 無回答 合計
1 展示物の企画や製作をするための予算を補助する 210 125 91 17 16 10 469
2 展示物の企画や製作をするための人材を供給するシステムを構築する 76 81 155 104 38 15 469
3 展示物の企画や製作をするたのノウハウを提供するシステムを構築する 74 104 180 66 33 12 469
4 現場を良く知っている人が企画の責任者になれるようにする 79 88 180 72 36 14 469
5 展示物を製作し、各館に貸与するシステムを構築する 93 83 143 104 32 14 469

図9 回答の割合

図9 回答の割合

○ 学校との連携

 この点に関しては、本アンケート調査が行われたのは総合的学習が導入される前年の平成13年10月であったことから、必ずしも積極的な活動が行われていたわけではないことがうかがわれた(図9)。しかし、その翌年平成14年度から総合的学習が導入されたことで、その重要性はますます増しつつある。ここで浮き彫りとなった問題点は、人材・予算不足に加えて、館側と学校側との相互理解及び情報伝達の不足、科学博物館等の活用に関するノウハウの不足である。

図10 小・中・高校との連携についてどのようなことを実施しているか

図10 小・中・高校との連携についてどのようなことを実施しているか

5.まとめ

 本調査研究からは、科学博物館等の運営・学校との連携に対する財政的援助、有能な人材の教育・確保・活用・長期的育成システムの確立、展示内容の企画・製作・貸与のノウハウ及び制度の構築、ボランティアの有効活用に関する体制づくり、学校との連携に関するシステム構築、科学技術理解増進活動に関する社会的認知度の向上等の必要性が示唆された。

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成21年以前 --