資料2-1 大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査

科学技術・学術審議会
人材委員会(第32回)
平成17年4月25日

文部科学省
科学技術・学術政策局
基盤政策課

1.調査の目的等

(1)調査の目的

 大学、公的研究機関等で研究しているポストドクター等の全体数、博士課程在学者のうち雇用型等の経済的な支援を受けている者の実数の把握を目的として実施。大学・公的研究機関等において研究活動に従事する研究者等のうち、競争的資金等の外部資金、運営費交付金や自己財源により一定期間採用され、当該研究機関において研究活動に従事する者(以下、「雇用者等」という)の人数を調査した。

(2)調査方法、調査期間、対象

 大学、研究機関(民間企業研究所を含む)を対象(合計約1,759機関)に調査票(別添1)を送付し、1.博士課程在学者 2.ポストドクター等 3.その他の区分ごとに、競争的資金等による雇用者等の人数について記入してもらい、電子媒体にて回収した。平成16年12月に調査票を発送、17年1月に回収した。1759機関に配布、1552機関から回答あり。(回収率は88.2パーセント。「該当者なし」の回答を含む。)

調査票配布機関数:回答数(回収率)※1

配布数 回答数 回答率
大学 711 683 96.1%
短期大学 490 404 82.4%
高等専門学校 63 61 96.8%
独立行政法人 93 82 88.2%
特殊法人 1 1 100.0%
公益法人 167 137 82.0%
施設等機関(国立研究所) 27 24 88.9%
公立研究機関 51 46 90.2%
民間企業 152 110 72.4%
大学共同利用期間 4 4 100.0%
合計 1759 1552 88.2%

※1 独立行政法人、特殊法人、公益法人、公立研究機関(地方公共団体の設置する研究所)および民間企業については、科学研究費補助金の申請対象として文部科学大臣の指定を受けている機関および何らかの研究開発活動を行っていると思われる機関を対象とした。
 なお、本報告書中、調査結果の概要においては、「大学」には大学共同利用機関を、「独立行政法人」には特殊法人の研究所を含めている。

(3)用語の定義等

「博士課程学生」

 大学院博士課程(後期)に在籍している者のうち、研究活動に従事し競争的資金等から給与・謝金等の対価を受けている者。当該研究機関以外の大学院博士課程に在籍している者を含む。

「ポストドクター等」

 本調査では、博士号取得後、助手等の職に就いていない者で、大学等の研究機関で研究業務に従事している者とした。なお、本調査の定義では、博士課程に標準修業年限以上在学し、所定の単位を修得の上退学した者(いわゆる「満期退学者」)を含むこととしているため、「ポストドクター」と呼ぶこととする。

「その他」

 学士号・修士号取得者で研究支援を行っている者等、本調査の雇用者に該当する者で、「博士課程学生」「ポストドクター等」以外の者とした。

○ 各研究機関において研究活動に従事しているポストドクター等については、給与等の支払がない場合(雇用関係にない場合)であっても、受入にあたり何らかの内規等に基づいているもの等については、調査対象とした。以下、便宜上「雇用者」に含めることとする。
なお、以下に当てはまる者は除外している。

  • 当該年度の雇用期間が2ヶ月未満の者
  • 常勤・非常勤、任期の有無の別を問わず、大学教員(教授・助教授・講師・助手)
  • 競争的資金を獲得した研究者本人及び研究分担者
  • 学部学生・大学院修士課程に在籍している学生
  • 当該機関における研究業務以外に常勤の本務を持つ者
  • 当該研究業務に直接関わらない職員

○ また、独立行政法人については、法人によっては常勤の職員(任期付)として雇用されているものであってもポストドクター相当とされている研究者(例:独立行政法人理化学研究所の基礎科学特別研究員等)がいるものの、その取扱は法人毎に異なるため、別途各独立行政法人所管課を通じて、ポストドクター相当の任期付研究者の人数を調査した。これらについては「独立行政法人雇用型事業」として集計している。
○ このほか、研究者の所属機関と雇用関係の所在が異なる者(独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業、新エネルギー・産業技術研究推進機構の産業技術フェローシップ等)については、各制度所管法人から回答を得た。

3.調査結果の概要

(1)平成16年度雇用者数(見込)および15年度雇用者数(実績)の概況

 各研究機関等において、平成16年度及び平成15年度において研究活動に従事したポストドクター等の実数を調査するため、別添様式1により質問した。

  • 平成16年度雇用者数(見込)は、合計で49713人。うちポストドクター等については、12,583人となっている。平成15年度雇用者数(実績)は、合計で43,168人。うちポストドクター等については、10,199人となっている。平成16年度見込はポストドクター、博士学生ともに平成15年度実績を上回る人数となっている。(第1-1図)
  • 機関種別では、大学がもっとも多く37,517人(うちポストドクター7,598人)、独立行政法人5,892人(うちポストドクター3,219人)が次いでいる。(第1-2図)

第1-1図 被雇用者数合計
被雇用者数合計のグラフ

第1-2図 機関別雇用者内訳(平成16年度見込)
機関別雇用者内訳のグラフ(平成16年度見込)

(2)博士課程在学者の状況

 博士課程在学者で各研究機関等において研究活動に従事している者のうち、給与・謝金等の支給を受けている者について、その実数を調べた。

  • 博士課程在学者の平成16年度雇用者数(見込)は、25,775人。15年度では24,476人となっており、増加している。(第1-1図、前出)
  • 機関種別では大学がもっとも多く25,025人、独立行政法人が397人。(第2-1図)
  • 資金別では、「運営費交付金等その他の財源」がもっとも多く16,092人となっている。競争的資金では、21世紀COEプログラムが5,298人、科学研究費補助金が409人などとなっている。(第2-2図)

第2-1図 博士課程学生の機関別雇用者内訳(平成16年度見込)
博士課程学生の機関別雇用者内訳のグラフ(平成16年度見込)

第2-2図 博士課程学生の雇用財源別内訳(16年度)
博士課程学生の雇用財源別内訳のグラフ(16年度)

(3)ポストドクターの状況

 ポストドクターのうち、各研究機関等において研究活動に従事している者のうち、給与・謝金等の支給を受けている者に加え、各機関の内規等に基づいて雇用関係にない博士課程修了者を受入れ研究活動に従事させている場合もふくめ、その実数を調べた。

  • ポストドクターの平成16年度被雇用者数(見込)は、12,583人。15年度では10,199人となっており、増加している。(第1-1図、前出)
  • 機関種別では、大学が6割ともっとも多く、独立行政法人※2が次いでいる。(第3-1図)
  • 資金別では、「運営費交付金等その他の財源」がもっとも多いが、競争的資金やその他の外部資金が全体の約半数近くを占めており、全体的に様々な財源により雇用・支援されていることがわかる。(第3-2図)

※2 独立行政法人科学技術振興機構において雇用し各大学等で研究活動に従事しているポストドクターについては、「独立行政法人」に含めた。

第3-1図 ポストドクターの機関別雇用者内訳(平成16年度見込)
ポストドクターの機関別雇用者内訳のグラフ(平成16年度見込)

第3-2図 ポストドクターの雇用財源別内訳(16年度)
ポストドクターの雇用財源別内訳のグラフ(16年度)

(4)雇用者の属性〈平成15年度実績〉

 本調査では、平成15年度に雇用された者について、1.年齢 2.年齢区分毎の女性の内数 3.全体の人数における外国人の内数 4.全体の人数における社会保険加入者の内数について調査した。

1.年齢分布

 平成15年度に雇用された者について、「29歳以下」「30歳以上34歳以下」「35歳以上39歳以下」「40歳以上」の4階層に区分して集計を行った。(第4-1図)

  • 博士課程在学者では、29歳以下がもっとも多い。
  • ポストドクターでは、30歳以上34歳以下が最も多い。もっとも年齢の高い40歳以上は全体の1割近くを占めている。

第4-1図 年齢分布(平成15年度実績)

年齢分布のグラフ(平成15年度実績)

2.性別

 本調査では、1.の年齢区分ごとに、女性の人数(内数)を調査した。(第4-2図)

  • 雇用者全体における女性の割合は27.8パーセント、博士課程在学者では24.1パーセント、ポストドクターでは21.3パーセント。(第4-3図)
  • ポストドクターの年齢区分別女性割合を見ると、29歳以下では21.2パーセント、30~34歳では19.2パーセント、35~39歳では23.0パーセント、40歳以上では30.0パーセントとなっている。(第4-4図)

第4-2図 男女別年齢分布(平成15年度実績)
男女別年齢分布のグラフ(平成15年度実績)

第4-3図 雇用者全体の男女比(平成15年度実績)
雇用者全体の男女比のグラフ(平成15年度実績)

第4-4図 「ポストドクター等」の男女別年齢分布(平成15年度実績)
「ポストドクター等」の男女別年齢分布のグラフ(平成15年度実績)

3.外国人

 本調査では、平成15年度の被雇用者における外国人の人数(内数)を調査した。(図4-5図)

  • 被雇用者全体における外国人の割合は16.4パーセント。博士課程在学者では17.3パーセント、ポストドクターでは23.2パーセント。
  • ポストドクターについて機関種別に見ると、大学では23.4パーセント、独立行政法人では33.2パーセントとなっている。民間企業では27.4パーセント、その他は2.0パーセントと低い。(第4-6図)

第4-5図 外国人の比率(平成15年度実績)
外国人の比率のグラフ(平成15年度実績)

第4-6図 機関別・ポスドクの外国人比率(平成15年度実績)
機関別・ポスドクの外国人比率のグラフ(平成15年度実績)

4.社会保険加入状況

 本調査では、平成15年度の雇用者における社会保険加入者※3の内数(事業者負担の対象となっている人数)を調査した。本調査においては、被雇用者のうち常時勤務者に近い労働時間・日数で研究活動に従事している人数を調べる指標として、同項目を調査対象とした。非加入者には、フェローシップ受給者等雇用関係のない者、日々雇用の者、週あたりの勤務時間が常時勤務者の3/4に満たない者、配偶者等の被扶養者などが含まれる。

  • 雇用者全体における社会保険加入者の割合は19パーセント、ポストドクターでは47パーセント。(第4-6図)
  • ポストドクターについて、機関種別に見ると、大学では約35パーセント、独立行政法人では約85パーセント、民間企業では95パーセントが加入者となっている。(第4-7図)

※3 被雇用者本人が社会保険(健康保険、厚生年金)に加入している場合の人数。配偶者の被扶養者になっている場合や、日々雇用の場合、週あたりの労働時間が常時勤務者の3/4に満たない場合等には加入できない。また、雇用区分が「フェローシップ・国費留学生等」の場合などは、雇用関係が存在しないため、非加入となる。なお、今回の調査では、調査対象機関が雇用者負担を行っている場合のみを計上しているため、人材派遣会社等との雇用関係があって社会保険に加入している者は、非加入として計上されている。

第4-7図 社会保険加入者の比率(平成15年度実績)
社会保険加入者の比率のグラフ(平成15年度実績)

第4-8図 機関別のポスドク社会保険加入率(平成15年度実績)
機関別のポスドク社会保険加入率のグラフ(平成15年度実績)

4.調査結果の総括と課題

  • ポスドクや博士課程学生の支援形態は非常に多様化している。競争的資金の拡充や21世紀COEプログラムの開始など、競争的資金で雇用されているポスドクが多数を占めている。大学院生の支援では運営費交付金や21世紀COEプログラム等によるTA/RA型の支援が多くなっている。
  • 雇用・支援の形態が多様化し、ポストドクターの人数は多くなっている中で、社会保険(厚生年金等)の加入状況から、常勤研究者並みの待遇のポスドク※は、半数程度と推察される。
    (※フェローシップ型の支援を受けている者を除く。)
  • ポスドクの女性比率を見ると、大学教員等における女性比率に比べると比較的高くなっている。一方、年齢が高くなるほど女性比率が高い傾向があり、女性がポスドクから次の段階に進みにくいという問題もあると見られる。

5.注意事項

 本調査は各大学・公的研究機関等にアンケート形式で回答を依頼したものであり、各機関の回答により内数と外数の誤差等が生じている場合(各年齢区分別人数の合計と全体の人数など)がある。
 同様に、国が実施している施策(日本学術振興会特別研究員事業等)の予算・決算上の人数と、各機関の回答の合計が一致しない場合がある。

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

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