参考資料2 「世界トップレベルの研究者の養成を目指して」-科学技術・学術審議会人材委員会 第一次提言-(平成14年7月)(抜粋)

1 世界トップレベルの研究者に求められる能力

 専門分野の融合や変化への迅速な対応が求められる現代において、高い研究開発力を保つには、個々の研究者には、幅広い視野や変化に対応できる柔軟性が求められており、そのためには、「幅広い知識を基盤とした高い専門性」(「真の専門性」)が重要である。研究者の養成に関わる者が、「幅広い知識を基盤とした高い専門性」を培うことの重要性を強く認識することが必要である。
 また、我が国全体として、高い研究能力を有する多様な人材が数多く存在することが必要である。

(研究者に求められる様々な能力)

 我が国は、これまでのようなキャッチアップ型の国からフロントランナー型の国への移行の中にあり、我が国の研究者には、世界的な水準において、極めて高い能力が求められている。
 能力の具体的な中身としては、これまでも様々な場で指摘されているように、独創性、創造性、未知のものへのチャレンジ精神、豊かな感性、主体的な課題設定能力や論理的思考力、国際的なコミュニケーション能力などが求められるであろう。また、より困難な場面に直面することが多くなることから、強い意志、ねばり強さなど精神的な力もこれまで以上に求められる。さらに、科学技術と社会との関わりがますます強まっていることから、社会への説明能力や倫理観も重要になってきている。

(幅広い視野、柔軟性の重要性)

 今後、我が国は、新たな分野を切り拓くフロンティア的研究に果敢に挑戦していくとともに、科学技術の進歩のサイクルが短くなっている中で常に最先端の研究をリードしていくことが求められている。このような研究においては、それまで予想もしなかった方向に研究が発展することがあり、また、複数の専門分野(しかも類似の専門分野とは限らない)の研究が高いレベルで融合することによってはじめて新たなブレイクスルーが生まれることが多くなるであろう。
 こうした状況において、個々の研究者に特に求められるのは、自らの専門分野にいたずらに閉じこもるような蛸壺的な専門性ではなく、周辺の専門分野や全く異なる専門分野を含む多様なものに関心を有し、既存の専門の枠にとらわれないものの見方をしながら自らの研究を行っていく能力であろう。一般論として、欧米のトップクラスの研究者と比較して、日本の研究者に不足しているのは、興味関心やものの見方の幅広さ、自らの専門分野をも変化させていく柔軟性であると思われる。

幅広い視野や興味関心の広さの重要性のイメージ

 また、科学技術の進歩のサイクルが短くなっている現代においては、今後発展が予想される分野を予測し、当該分野に必要とされる研究者を計画的・効率的に養成することはむずかしい面がある。このため、人材養成の効率性の観点からも、高い専門性と変化への柔軟な対応力を併せ持つ人材の養成が必要である。

(幅広い知識を基盤とした高い専門性)

 こうした諸能力は、高い専門性の基盤となる幅広い知識を有していることによってもたらされるものである。いわゆる「T型」や「π型」と言われる人材イメージがこれに相当する。ここでは、横方向が基盤となる知識の幅広さ、縦方向が専門性の高さ(深さ)を表している。
 これからの時代の研究者に最も必要とされる能力は、「幅広い知識を基盤とした高い専門性」であり、これがこれからの時代の研究者に必要とされる「真の専門性」であると考える。一般的に見て、こうした能力を有する研究者が多くないことが、我が国の弱点の一つとなっていると思われる。
 なお、異分野の融合や新たな分野の創出の観点からは、複数の専門性を有すること(π型)がより望ましいであろう。また、幅広い知識は高い専門性の基盤となるものであるとともに、専門性を複数有することによって知識の幅が広がるという相互の関係にあると思われる。

T型、π型人材のイメージ

 大学、公的研究機関、企業という場の違いによって、トップレベルの研究者に求められる能力に基本的な違いはない。行政、大学、研究機関、企業などにおいて研究者の養成に関わる者が、「幅広い知識を基盤とした高い専門性」(真の専門性)を有する研究者を育てていくことを方向性として認識しながら、研究者の養成に取り組むことが重要である。

(研究者及び養成方法の多様性)

 個々の研究者に一般的に求められる人材像として、T型やπ型人材のイメージを示したが、もちろん、すべての研究者が画一的にこのような人材であるべきということではない。例えば、ある専門分野に限ってではあるが他の追随を許さないような極めて高い専門性を有する研究者(高さ(深さ)のあるⅠ型)が存在することも重要である。このように、我が国全体として見た場合には、高い研究能力を有する多様な人材が数多く存在するということが重要である。
 また、このような多様な研究者を養成するためには、養成の在り方についても一様ではなく多様であることが重要である。

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