◆ 本委員会の第一次提言においては、求められる世界トップレベルの研究人材像として「幅広い知識を基盤とする高い専門性」が重要であると指摘し、総合的な政策の方向性について議論した上で、各種の施策を推進してきた。
◆ また、博士号取得者やポストドクター等が、我が国の研究活動の活性化に寄与するだけでなく、社会の多様な場における活躍を促進するために、各種施策を推進してきたが、社会が求める科学技術関係の人材像の観点に立った検討は未だなされていない。
◆ このため、世界トップレベルの研究人材のみならず、知識基盤社会で活躍すべき人材等も含めた、我が国の将来を担う科学技術関係人材について、どのような資質・能力が求められるべきかということを、改めて議論し、幾つかの社会的な役割に応じて、求められる人材像を系統立てて検討し、その上で導き出される今後の人材政策の方向性を検討していく必要がある。
◆ 本まとめにおいては、科学技術関係の人材像について、特に博士課程修了者について社会のニーズとのミスマッチがあると指摘されていることなどを踏まえ、社会を支える人材の資質・能力などについて、重点的に審議を行った。
◆ また、「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展など、様々な情勢の変化があることを踏まえ、世界をリードする研究者の資質・能力などについても、改めて検討した。
○ 知識基盤社会、グローバル社会の到来に加え、知識の伝達スピードが加速化し、産業構造の変化も急速に進んでいる現代においては、基礎研究から市場へ出るまでの各ステージと幅広い研究分野を網羅的に統合するような資質・能力や社会の変化に対応できる資質・能力、さらには、多種多様な個々人が一つのチームとしての力を最大限発揮できるようなチーム力といった資質・能力が特に重要であると考えられる。
○ イノベーション創出を担うチーム型の研究においては、リーダーの人選だけでなく、多様な人材の配置にも目配りが必要である。チーム力は、個人が持つべき資質・能力ではなく、グループ・チームが持つべき資質・能力に着目している。この考え方の背景として、求められる資質・能力が多様化している現在においては、求められる人材像も多様であるため、必要とされる知識や技術の全てを個人の問題に帰するのではなく、異なる資質・能力、背景を持つ多種多様な個々人がそれぞれの個性を活かし、1つのプロジェクトチームとしての力を最大限発揮することの重要性が増しているということがある。さらに、専門分野や能力の異なるチームが相互に働き合い、全体として創造的な力を発揮することも重要である。
○ また、産業界で活躍する人材に特に求められる資質・能力としては、課題探求力がある。アメリカの企業が重視していると言われているヒューマンスキルのように、感性、志、夢、心のあり方、世の中に役に立とうとする気概など、「課題探求力」に結びつくことを身につけてもらうことは重要である。
○ さらに、資質・能力を身につける仕組みについて、時代の変化に応じて、人がコミュニティの中で果たす役割はさまざまに変わることから、アメリカでは分野替えを希望する研究者をサポートするシステムが構築されており、特定の分野に深い専門性を持った人が、分野替えをして複数の役割を果たしている。また、ラボミーティングなどのOJTやメンターの教育により、コミュニケーションスキルの強化を図ることも行っている。こうした好事例は参考にすべきである。
○ 以上の審議を踏まえ、「知識基盤社会が求める科学技術関係の人材像」のイメージを1枚にまとめた。イノベーションの創造を担う人材については、研究分野の幅の広がりや社会経済的価値創造への各ステージに応じて様々な人材が存在するほか、各ステージを関連付ける働きをする人材も存在する。今後は、チーム力や課題探求力などの能力・資質を備え、知の創造により生み出された基礎研究の成果を社会に役立つかたちにつなげる人材が特に社会から求められると考えられる。
科学技術・学術政策局基盤政策課
-- 登録:平成21年以前 --