第4章 グローバル化に対応した人材養成・確保方策

(検討のポイント)

◆ 「知」をめぐる世界的な大競争時代を迎え、優秀な人材の獲得競争が激化しているなか、我が国が世界をリードする科学技術水準を維持し続け、研究人材の国際的好循環の一翼を担うためには、我が国の研究拠点に優秀な外国人留学生及び外国人研究者を引きつけられるよう、研究環境や生活環境をより魅力あるものにしていかなければならない。

◆ また、ノーベル賞受賞者の中には、海外で研究経験を積んだ者も多く、日本人研究者が海外で研鑽を積むことも重要である。日本から海外への日本人学生の留学及び日本人研究者の派遣の拡充により、グローバルな規模での相互交流が活発になり、優秀な日本人研究者が国内外で活躍することを目指すべきである。

◆ 以上の観点から、グローバル化に対応した人材養成・確保のための方策について、受入れ・派遣の両面から検討した。

第1節 外国人留学生及び外国人研究者の受入れ

(論点)

(1) 優秀な外国人留学生や外国人研究者(以下「外国人研究者等」と表記。)にとって魅力ある拠点及び研究環境を形成するための方策や我が国で博士号を取得した外国人留学生が引き続き外国人研究者として日本に残って研究活動に従事するための方策について。
(2) 外国人研究者については、教員として受け入れられる際、日本語で行われる授業に対応できないことにより、採用を躊躇している大学もあることから、教育を担う外国人研究者の養成・確保について。

(1)魅力ある研究拠点及び環境等

<検討の視点>

  •  研究拠点の研究水準は、我が国の科学技術レベルの象徴的な指標となるため、より多くの優秀な外国人研究者等を受け入れることに力を注ぐべきである。
  •  日本の大学あるいは研究機関で特色ある魅力的な研究を進め、その研究拠点に外国から集まってくる人を増やすという発想が重要である。また優れた魅力ある教育研究内容を積極的に海外に向け情報発信していくことも重要である。
  •  日本の女性研究者が夫の転任に伴って海外へ行き、キャリアアップしたという経歴を持つ例は非常に多いが、海外から夫の転任に伴って日本へ来てチャンスをもらった外国人研究者の例は非常に少ないとの指摘がある。
  •  外国人研究者等が家族を日本に連れて来られるかどうかは、自分たちを許容する文化や生活環境があるかどうかという点と密接な関係があり、それが日本への評価となる。
  •  外国人研究者等の受入れ体制として、例えば、事務手続きの資料がまだ英語化されていないなど、大学等の組織的な受入れ体制が不十分である。
  •  宿舎等の生活環境が整備されていることも必要不可欠である。

<解決に向けた提言>

  •  世界トップレベル研究拠点を形成するため、国は、企業と共同でマッチングファンドを設立し、企業の基礎研究も充実させることを検討する。
  •  大学や研究機関は、高度な設備や技術を持つ施設に、多様な外国人研究者等を集中的に招へいすることが望ましい。
  •  大学や研究機関は、優秀な外国人研究者等を呼び込むための海外に向けた積極的な情報発信、宿舎や奨学金・フェローシップなどの受入れ環境整備に加え、海外のように、その家族の生活環境等にも配慮した研究環境等で外国人研究者を受け入れる土壌を形成する。
  •  大学や研究機関は、教職員の英語能力の向上や学内文書の英語化など、外国人に対応できる組織的な受入れ環境を整備する。
  •  日本人のみならず、大学卒業・修了後に引き続き日本に留まって就職したり大学や研究機関で教育研究活動に従事する外国人留学生への支援を実施する。同様に来日した外国人研究者等の配偶者の処遇にも配慮する。

(2)外国人研究者の在り方

<検討の視点>

  •  外国人を教育者として受け入れるか、研究者として受け入れるか、またそれぞれどの程度受け入れるべきか、養成・確保について留意する必要がある。
  •  外国人は、セミナーや大学院向けの授業などで十分活躍できる。また、今後は、学部段階における英語での講義の需要も出てくる。

<解決に向けた提言>

  •  大学は、英語での講義を学部段階でも積極的に取り入れることが望ましい。

第2節 日本から海外への日本人学生の留学、日本人研究者の派遣等

(論点)

○世界に通用する国際的な研究人材の養成には、海外の大学、研究機関における経験が有益であることから、日本から海外への日本人学生の留学、日本人研究者の派遣を拡充するための方策について。
○優秀な頭脳の国際的循環が急速に進展している中、研究人材の国際的循環に対応するための、
 ・海外の研究機関、国際企業への就職を促進するための方策について。
 ・海外で優れた実績を上げた日本人研究者を呼び戻すための方策について。

<検討の視点>

  •  海外にいる日本人のポストドクターは、研究者として日本に戻る場所がなく、「難民」化している。
  •  海外から帰ってくる人材のポジションをつくり、意欲ある研究者が海外に挑戦できる環境を形成することが重要である。
  •  地球環境問題などグローバルな諸問題の解決に向けて、社会全体でのイノベーションの創出に寄与し、グローバルなレベルでリーダーシップを発揮できる理工系人材を育成することが課題となっている。

<解決に向けた提言>

  •  国は、優秀な日本人研究者が海外で研鑽を積むことができるよう、海外に挑戦できる環境をより一層整備することを検討する。
  •  大学や研究機関は、お互いに協力して、海外での日本人研究者のネットワーク化(データベース作成等)を図ることが望ましい。その際、日本における研究機関等の公募情報を提供するなど、研究者がネットワーク化に協力するインセンティブが必要である。
  •  大学等は卒業・修了要件に海外留学を組み入れるなど、日本人学生の積極的な海外留学を促進するための取組を検討する。

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