第3章 次世代を担う人材育成方策

(検討のポイント)

◆ 我が国の科学技術関係人材が身につけるべき資質・能力を明確化し、我が国の人材育成の大きな方向性に関する共通認識を醸成した上で、次世代を担う人材の育成方策について幅広く検討した。

第1節 教員の指導力向上のための取組

(論点)

○ 科学技術、理科及び算数・数学に優れた指導力を有する教員を確保する観点から、養成、採用、現場での実践、研修のそれぞれの段階において、指導内容の改善、学校と大学や科学館との連携等の取組を進めるための更なる方策について。

<検討の視点>

  •  子どもたちが理科や算数・数学に興味・関心を持つためには、教員が、科学技術や理科、算数・数学に関して高い資質や能力を備えている必要があるが、小学校の教員の約6割が理科を指導するのが苦手という調査結果もあり、教員の指導力向上のための取組が必要である。
  •  今回の学習指導要領の改訂では、科学的な知識や概念の定着を図り、科学的な見方や考え方を育成するため、観察・実験や自然体験、科学的な体験の一層の充実が図られたが、それを踏まえ、学校現場の教員が十分に対応できるようにする必要がある。
  •  現場の教員は、日々の教育活動に追われており、最新の科学技術やそれを踏まえた授業研究を十分に行えていない状況があり、教育委員会等が研修などの機会を通じて、教員の知識や技能を改善していく必要がある。
  •  理科、算数・数学における観察・実験などの指導に当たって、児童生徒の興味・関心を高め、思考や理解を深めるなど効果的にICTを活用するため、教員のICT活用指導力の向上が必要である。

<解決に向けた提言>

  •  各教育委員会において、理科専科や小・中学校の連携を推進することにより、理学部や工学部出身の教員を小学校の理科の授業で活用する。
  •  理科や算数・数学の指導が得意な教員を増やすため、教員養成の段階において、大学の取組により最先端の科学技術や科学技術と日常生活とのつながりに関する講義や観察・実験に係る実習の機会を増やすなど、科学技術に関する内容を充実させる。
  •  大学と教育委員会が連携し、教員を志望する者については、例えば、理科支援員として観察・実験の支援を行うなど、現場で経験を積む機会を充実させる。
  •  一部の教育委員会では、既に実施しているところもあるが、教員採用選考試験において、実験に係る実技試験を取り入れるなどの取組を進めることが考えられる。
  •  科学技術や理科、算数・数学に関する研修の充実を図るとともに、教員免許更新制における免許状更新講習において、教育学部以外の理系の学部なども、観察・実験に係る講習や最先端の科学技術等に関する講習を開設することが望まれる。
  •  「教員のICT活用指導力の基準(チェックリスト)」を活用し、全国の実態について調査・公表することにより、地方公共団体の取組みを促進するとともに、ICTを活用した教育の効果に関する調査研究の成果について、全国的な普及・促進を図る。

第2節 教育環境の充実のための取組

(論点)

○ 教材や外部人材など各学校において必要となる教育環境を整備するための更なる方策について。

<検討の視点>

  •  文部科学省が平成18年に実施した教員勤務実態調査によると、現場の教員は、生徒指導や部活動などの業務に追われており、授業準備や教材研究の時間が十分とれない状況にある。そのような状況を改善して、現場の教員の負担を軽減し、教員がそれぞれの資質や能力を十分に発揮できるような教育環境を整える必要がある。
  •  観察・実験を行うための備品や消耗品を購入するための予算が十分ではない学校も多く、そのような学校では、観察・実験に係る費用を教員が自費負担しているようなケースも見られる。
  •  コンピュータ、校内LANなどの学校のICT環境整備が遅れており、ICTを活用した指導が十分に行われていないという状況がある。
  •  理科や算数・数学について子どもたちが学ぶ意欲を高め、探究する力を育むよう、実生活・実社会に関連付けられるような教科書にしていく必要がある。

<解決に向けた提言> 

  •  理科支援員等を活用して、教員の授業の改善を進める。
  •  理科の授業を効果的に実施するため、各教育委員会等においては、観察・実験のための備品や消耗品に係る予算の増額や購入のための事務手続の改善、教育センター等で備品や教材の管理を行い必要に応じて貸し出すシステムの活用などの取組を進める必要がある。
  •  コンピュータ、校内LANなどの学校のICT環境の整備状況を調査・公表するなどにより、地方公共団体の取組みを促すとともに、学校のICT環境整備に関する先導的かつ効果的な実践研究を実施し、その成果の普及を図る。
  •   国は、科学技術・理科に関して児童生徒の知的好奇心、探求心に応じた学習の機会を提供するため、教員や児童生徒等が利用できる科学技術・理科学習用デジタル教材の開発・提供を進める。
  •  最新の科学技術や発展的な内容を含めた内容が充実されるよう、教科書の構成上の配慮・工夫を進める。

第3節 児童生徒等が、科学技術、理科及び算数・数学に興味・関心を持ち、その資質や能力を伸ばしていくための取組

(論点)

○ 科学技術、理科及び算数・数学に興味・関心が高い児童生徒等の資質や能力を伸ばすための更なる方策について。
○ 幅広い児童生徒等の科学リテラシー向上のための取組を充実させるとともに、児童生徒等が、研究者や技術者に係る職業観を育み、進路意識を明確にできるようにするための更なる方策について。

<検討の視点>

  •  科学技術や理科、算数・数学に優れた資質や能力を有する児童生徒を伸ばすための取組を小中学校の段階から行う必要がある。
  •  他の教科と比較して、「理科や算数・数学の勉強が生活や社会に役立つ」と思っている児童生徒の割合は極めて低いという調査結果も出ており、科学的な発見や科学技術が実生活にどのように役立っているのか、ということが分かるような教育を小中学校の段階から行うことが必要である。
  •  子どもたちに、科学技術や理科に関する興味関心を喚起するためには、体験を伴う学習を行う必要があるが、企業の力も活用していくことが重要である。
  •  2006年に実施されたOECDのPISA調査では、「科学を必要とする職業に就きたい」、「大人になったら科学の研究や事業に関する仕事がしたい」と回答した我が国の生徒の割合は、OECD参加国の平均を下回っているような状況であり、理科や算数・数学への興味・関心を喚起する施策とあわせて、児童生徒等が理工系の職業を希望するための関心や意欲を育てるキャリア教育も行っていく必要がある。
  •  社会を支えている技術に関する教育についても理科との連携を進めるとともに、キャリア教育とも関係付けて行っていく必要がある。
  •  科学者や技術者に子どもたちがなりたいと思わせるためには、ロールモデルに触れる機会を作る必要がある。
  •  児童生徒等の科学リテラシーを向上させるためには、保護者も含めた取組が必要である。

<解決に向けた提言> 

  •  大学等で科学技術や理科・数学に関して発展的な内容を学べる機会を充実するなど、優れた資質や能力を有する児童生徒を伸ばすための取組を進める。
  •  国は、スーパーサイエンスハイスクールの取組を推進し、国際的な科学技術関係人材の養成を進める。
  •  理科、算数・数学における観察・実験などの指導に当たって、児童生徒の興味・関心を高め、思考や理解を深めるため、コンピュータ等ICTの活用を進める。
  •  キャリア意識を形成するため、子どもたちが第一線で活躍している研究者や大学で研究に取り組んでいる学生に触れ合う機会を充実する。
  •  国際科学オリンピック等に参加する生徒を増やし、理科や数学に優れた資質を有する生徒の国内外での交流を進める。
  •  学校において、理科や技術など各教科で連携した取組を進める。
  •  教育委員会等と企業が連携し、工場見学や出前型の授業を行うことなどにより科学技術が社会にどのように貢献しているか、学習する機会を充実する。
  •  国は、科学コミュニケーターを活用して、科学技術を国民に分かりやすく伝えるための取組を進める。
  •  日本科学未来館や科学館を活用して、保護者も含めた国民全体の科学リテラシー向上の取組を進める。

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科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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