第2章 世界をリードする研究人材の養成方策

(検討のポイント)

◆ 世界をリードする研究人材の養成方策については、科学技術基本法制定以降、すでに様々な施策が講じられてきた。しかし、大学における若手教員の状況をみると、近年、大学教員の総数は増加しているものの、37歳以下の若手教員の割合は減少傾向にある。
 こうしたデータも踏まえ、少子高齢社会において活力ある経済社会を実現するため、世界をリードする多様な研究人材を養成するための方策を一層推進する。

◆ また、大学の本来持つ教育研究機能に別途付加するような研究人材の養成方策では、根本的な問題解決にはならない。優れた研究人材を養成するためには、研究資金制度を改革し、切磋琢磨するシステムを構築する必要がある。

◆ 我が国の研究資金制度については、多くの研究費を設備等の物件費中心に充てる傾向にあり、人材養成のために使うという意識が希薄であるため、人材養成の観点を制度の中に組み込むことが必要である。そのための手段として、教員等に人材養成の意識を持たせ、それを評価につなげるなど、研究資金制度等の改革について検討した。

第1節 世界をリードする研究者の更なる養成方策

(論点)

○研究者の流動性を阻害する要因の一つである、大学におけるいわゆる「純血主義」を排することについて。
○自校出身者比率を抑制するため、自校出身者比率の定義を明確にした上で、一定期間ポストドクターを経験した者を大学が採用することについて。
○優秀な研究者だけでなく、研究業績が低迷している研究者、若手やシニアも含めた、研究者全体の流動性を向上させる方策について。

<検討の視点>

  •  大学院重点化以降、博士課程修了者の増加に比して、教員ポストの増加が追いついておらず、若手研究者の養成が困難な状況となっている。
  •  しかし、団塊の世代の大量退職により、大学は大幅な世代交代を迎えつつあり、まさに今が、人事システムを改革する絶好の機会といえる。若手教員のポストを増やすとともに、公正で透明性の高い人事システムを確立させるべきである。
  •  近年、研究者養成の方策は、競争的資金と人材の流動性に重点を置いてきたが、長期的な視野で若手研究者を育てることも必要である。

<解決に向けた提言>

  •  国は、大学が教員を採用する公募条件として、公平・公正で透明性のある審査のもと、博士課程修了後に自校大学以外において一定期間ポストドクターを経験した者を採用することを奨励する。
  •  大学や研究機関は、若手研究者の活躍の場を広げるため、全体の人件費に配慮しつつ、若手研究者のポストを増やしやすいシステムを構築することが望ましい。
  •  国は、制度の目的や特性に応じて、大学や研究機関が若手研究者の雇用を増やすインセンティブを高めるため、運営費交付金や補助金の配分システムの工夫ができないかを検討する。

第2節 人材養成に係る研究資金制度等の改革

(論点)

(1)人材養成に対するインセンティブを与える評価システムを構築するなど、人材養成に係る研究資金制度等の改革について。
(2)切れ目なく研究資金を供給するための仕組みを構築するなど、競争的資金獲得等のインセンティブを高めるための方策について。

(1)研究資金制度の人材養成への活用方策

<検討の視点>

  •  研究プロジェクトにおいて雇用するポストドクターについては、その場限りの戦力ということではなく、研究パートナーとして明確に位置付け、ポストドクターのキャリアが次につながるようにサポートすることが重要である。
  •  競争的資金の中で、学生を育てる場や環境を提供するシステムを構築することが必要である。
  •  一方、研究資金は人材養成の一つの手段ではあるが、主な狙いは、あくまでイノベーション創出、研究サポートのためにあることは認識しておく必要がある。
  •  なお、研究の推進という観点から、人材養成については間接経費で充当すべきという考え方もある。

<解決に向けた提言>

  •  国は、大学や研究機関が研究プロジェクトにおいて雇用するポストドクターには、ポストドクター自身が一定期間、自主的に当該研究プロジェクト以外の研究にも従事することができるよう、制度の目的や特性に応じて、改革を検討する。
  •  国は、チーム研究に配分する競争的資金については、一定割合を研究室の意思でリサーチアシスタント経費やポストドクター雇用経費等に充当できる仕組みの導入について検討する。さらに、制度の目的や特性に応じて、人材養成の方法・内容や人材養成に充てられている経費の割合を明確にさせ、人材養成を評価の一指標とすることを検討する。
  •  国は、教員が修士・博士の入口、出口で質の確保を徹底するなど、教員の意識改革を図るため、制度の目的や特性に応じて、競争的資金の審査基準の項目に、過去に養成した大学院生・ポストドクター等の進路などを盛り込み、人材養成の取組実績を評価対象とすることを検討する。
  •  間接経費の使途については、大学や研究機関が大学院学生へのフェローシップ(研究奨励金)等にも充てられることが期待される。
  •  国立大学法人及び独立行政法人においては、博士課程修了者のキャリアパス支援のための取組、女性登用目標の設定をはじめとした男女共同参画推進のための取組、多様な教員や研究者の確保状況等を、中期目標・計画へ位置付けるなど、各機関の組織的な取組を促進する。また、国立大学法人評価委員会が国立大学法人を、各省庁の独立行政法人評価委員会が独立行政法人を評価するに当たっては、このような取組を積極的に評価するなど、各法人の人材養成の取組を支援する。
  •  国は、制度の目的や特性に応じて、女性研究者を対象とした研究資金を設けることを検討する。

(2)競争的資金獲得等のインセンティブを高めるための方策

<検討の視点>

  •  競争的資金が効率を重視し、成果が見えやすい研究に集中しているとすれば、それは問題であり、研究の多様性に十分配慮する必要がある。

<解決に向けた提言>

  •  国は、基盤的経費を確実に措置した上で、競争的資金獲得のインセンティブを高めるため、競争的資金から研究代表者などの人件費を充当できるよう、人件費を充当できる研究者の対象を拡大することを検討する。
  •  国は、人材の養成には中長期的な視点が不可欠であることから、断続的な支援にならないよう、特に人材養成のためのシステム改革を促進する取組等について、以下の仕組みを構築することを検討する。
     −支援終了直前に評価を実施し、成果が顕著な取組等については、支援延長を認める仕組み
     −支援終了後も成果が顕著な機関が何らかの支援を受けられる仕組み
  •  国は、現在の競争的資金制度において、支援期間終了後も引き続き研究を続ける価値があると評価を得た場合、制度の目的や特性に応じて、一定期間、数百万円の資金を保証する仕組みを構築することを検討する。
  •  国は、優秀な人材を養成するため、若手研究者向けの研究資金やスタートアップ資金をより一層充実する。
  •  大学や研究機関は、競争的資金の獲得実績を評価指標の一つと位置付け、その実績を研究費や処遇等に反映させるシステムを構築することが望ましい。
  •  大学や研究機関については、各々の経営戦略のもとに、独自の取組を推進することが望ましい。国は、大学や研究機関に対する資金面での支援の一つとして、継続性の担保のため、まずは大学や研究機関が自ら先進的取組を実施し、その取組を競争的に審査し、他大学のモデルとなり得る良い取組を支援する制度を構築することを検討する。

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