人材委員会(第94回)議事録

1.日時

令和4年10月26日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 博士人材のキャリアパス等について
  2. その他

4.出席者

委員

 宮浦委員、宮田委員、岩崎委員、狩野委員、川端委員、小林委員、迫田委員、隅田委員、髙橋(修)委員、高橋(真)委員、塚本委員、長谷山委員、桝委員、村上委員、柳沢委員、山本委員

文部科学省

 柿田科学技術・学術政策局長、阿蘇大臣官房審議官、橋爪人材政策課長、岡人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会(第94回)

令和4年10月26日

 
 
【宮浦主査】  人材委員会主査の宮浦でございます。定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会(第94回)を開催させていただきます。
 本日の会議は、冒頭より公開となっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、髙橋修一郎先生が途中から参加されて、参加者は16名ということになりまして定足数を満たしております。
 それでは、開催に当たりまして、柿田科学技術・学術政策局長より御挨拶をお願いいたします。
【柿田科学技術・学術政策局長】  ありがとうございます。文部科学省の科学技術・学術局長を9月から拝命しております柿田と申します。よろしくお願いします。
 私自身、昔、人材政策課長もやっていまして、その当時から宮浦先生には人材委員会でお世話になっております。久しぶりに局に戻ってまいりましたが、この人材政策は文部科学省の科学技術・学術政策局の中でも極めて重要な政策・施策分野であります。
 博士課程や博士人材にまつわる問題というのは、ここ10年あるいはそれ以上でしょうか、ずっと重要な政策イシューとして存在し続けております。そのような中で、最近、博士課程の学生への経済的支援、これを格段に進めさせていただいておりまして、非常に隔世の感があるかなと思っておりますが、やはり大事なのはその後のキャリアパスを、研究者の世界はもとより、産業界、それから、我々が働くような公的な機関・セクター、あるいは世界、国際的な場面も含めて、様々な場所で立派な博士号取得者が活躍していける状態を作っていくということであり、ますます残された重要な課題だと思っております。
 そのような意味で人材委員会の先生方にまた今後とも忌憚のない御意見をいただきまして、文科省の政策をさらに進化させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。また、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をお願いします。
【對崎人材政策課長補佐】  先ほど御挨拶させていただきました局長の柿田に加えまして、事務局に人事異動がございましたので、以下、役職と名前を読み上げさせていただきます。
 本年9月1日付で科学技術・学術総括官に北山が着任をしております。
 また、本年7月1日付で人材政策課長に橋爪が着任しております。
 また、本日、局の幹部のほうで審議官の阿蘇も出席をさせていただいております。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
【對崎人材政策課長補佐】  失礼しました。最後に、申し遅れましたが、私、7月19日付で着任しています對崎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前にまず、本日の委員会はオンライン開催でございますので、事務局から注意事項と資料確認をお願いいたします。
【對崎人材政策課長補佐】  それでは、オンラインの会議開催に当たりまして、通例のことでございますが、私より御案内させていただきます。
 まず、ビデオは特段の支障がなければオンにしていただいた形で、発言時以外にマイクはミュートの形でお願いいたします。また、もし可能でしたら表示名のほうはフルネームの漢字ということで、皆さん入るときに御案内をしておりますけれども、そのような形でお願いできればと思います。
 また、御発言の際には、Zoomの中に「手を挙げる」とか「リアクション」とかの項目がございますが、そちらのほうを押していただいて、主査から御指名を受けましたら、マイクをオンにして、お名前をおっしゃって御発言をいただければと思います。御発言が終わりましたら、適宜、挙手の取下げとミュートにしていただければと思いますが、この辺は事務局からも御案内させていただきますので、どうぞまずは発言されるというところを優先で皆様、忌憚なき御意見をいただければと思っております。
 また、機材や通信の不具合等がございましたら、事務局の連絡先まで御連絡をいただければと思います。
 また、資料確認でございますが、昨日事前に送付をさせていただいているファイルがPDFファイルで2つございます。一つが、議事次第と資料の一式で、本日のヒアリングの資料等も含まれております。もう一つが、参考資料として一式をお送りさせていただいております。資料のほうは議事の際には画面共有を適宜させていただきますが、お手元で御覧になられる場合はファイルのほうにPDFでしおりがついており、それぞれ資料幾つというところに飛んでいただけるような形になっておりますので、御活用いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日は、博士人材のキャリアパス等について今後の議論を進めていく上で、合わせて3つのヒアリングを予定させていただきました。
 まず初めにお話しいただきますのは、内閣府日本学術会議若手アカデミー様です。若手アカデミー様は、学術会議内に置かれた、人文社会科学・生命科学・理工学にまたがる多様な分野において最先端の研究に取り組む45歳未満の研究者の方50名をメンバーとする組織だと伺っております。
 本日は、将来学術界で活躍いただく当事者の目線で、研究者としてのキャリアの選択とか研究現場の現状等を含めまして御発表いただきたいと思っております。それでは、若手アカデミー様、よろしくお願いいたします。
【岩崎委員】  御紹介ありがとうございます。若手アカデミーの岩崎と申します。私、岩崎は人材委員会の委員でもありますけれども、本日は若手アカデミーからメッセージ等を伝えさせていただけるということで大変ありがたく思っております。
 今御紹介いただきましたように、若手アカデミーは、内閣府日本学術会議の中に置かれた組織でありまして、特徴としては、人文社会科学と生命科学、それから、理工学にまたがる様々な分野の若手研究者が集まった団体であると、このような特徴を持っております。いろいろな方と対話あるいは連携することで、この人材委員会のメイントピックである人材、キャリアパス、そのようなものを含めた点について若手研究者が議論をし、あるいは発信をしておると、そのような組織であります。メンバーとしては、多様な組織、多様な分野からこのような50名が集まって日々議論を行っております。
 今日は、若手アカデミーのメンバーから、私、岩崎と、それから、幹事の小野、それから、学術界の業界体質改善分科会という、私たちの学術界を取り巻く体質、そのようなものについて若手アカデミーの中でも集中して議論を行っている分科会の委員長であります川口、その副委員長である岩永、そして、幹事である埴淵の5名が出席をさせていただいております。
 今日は、まず小野、岩永、埴淵からキャリアについて簡単に御紹介いただいた後に、川口のほうから特に若手アカデミーで議論を行ってきたことについて、このようなことをこれまで議論しているということで皆様に御紹介をさせていただきたいと思います。それではまず、小野さんのほうから紹介いただいてもいいでしょうか。
【若手アカデミー(小野氏)】  初めまして、豊橋技術科学大学で准教授をやっております小野です。自分のキャリアを一つの事例として御紹介させていただきたいと思いますが、私は今、テニュアトラックの准教授でして、今、小学校1年生の子供がいます。
 まず、自分の研究者人生、まだ十数年とかですけれども、よかったなと思うことから少々御紹介させていただきたいと思います。まず、私は都市工学が専門で、ずっと東大の研究室にいたのですけれども、大学の指導教員が夕方5時には帰る先生でして、夜遅くの会議がないとか、自分も早く帰れるという、そのようなライフスタイルとワーク・ライフ・バランスの取れた研究生活が送れたというのが非常によかったなと一つ思っています。
 それから、そのとき、私、博士課程在学中に子供を出産したのですけれども、同じ研究室に子育て中の博士課程の学生さん、主に留学生だったのですけれども、そのような人がたくさんいて、そのようなのが割と当たり前にある環境だったというのも非常に恵まれており、よかったのかなと思っています。
 それから、ここに書いていますが、保活に非常に苦戦してパブリックの保育園を見つけられなかったのですけれども、ただ、東大の保育園とか、その後の愛媛大学の保育園、大学の保育園に大変お世話になって、やはり働く場と子育てする場、住む場所が非常に近いという、非常に理解を得られる中で子育てができたというのも非常によかったなと思っています。
 それから、これは分野特性もあると思いますけれども、博士取得後に2年間、愛媛大学に所属しながらも、都市計画の実務経験を積めたというのが、その後の自分の専門家としてあるいは研究者としてのキャリアにとてもプラスになっていると思っています。民間に出てしまうとなかなかアカデミアに戻ってきにくいという中で、実務経験を積みながら研究者番号ももらえて研究も継続できたという、非常によかったなと思っています。
 それから、今の所属ですけれども、平日の5時以降の会議がないとか、土日にあまり学内の仕事がないというのも非常に快適に研究生活を送れていることの一つかなと思います。それから、学内で、非常に小さい大学ですので、事務の人と非常に近い、顔の見える関係にあって、些細な手続とか予算の執行とか気軽に相談できるような、そんな人間関係が築けているというのも非常にありがたいなと思っています。
 そんな中で幾つか懸念点というか、気になっていることとしては、やはり子供の成長とか、あるいは今回のコロナもそうですけれども、ライフステージとかいろいろな外的要因によって、研究の内容とかやり方とかを割と柔軟に変更していかないといけないということに今直面しています。もともと海外でアフリカの研究をやっていたのですけれども、これからどうしようかとなったときに、研究費の取り方とか使い方とか、あるいは研究のやり方とかというのがなかなか硬直的で、そこをもう少々柔軟にできたらいいなというのは一つ思っています。
 それから、今、地方の大学にいるのですけれども、今、大学単位でお金を入れたりどうこうというのがあって、大学ごとに特色をつけるとか、自立的な運営をしていくというのは非常に重要だと思っている一方で、格差といいますか、地方に出たのが子供の出産というのがきっかけだったのですけれども、一回地方に出てしまうと、そこの環境に絡め取られるようなところもあって、あまり行き過ぎるとというところが少々心配しているところです。
 以上になります。ありがとうございました。
【岩崎委員】  では、岩永さん。
【若手アカデミー(岩永氏)】  日本女子大学で准教授をしております、岩永です。右に自著の書影を載せておりますが、日本の貧困問題とか生活保護制度などについて研究しています。
 私のキャリアは、見ていただくと、きれいに都立大学とか大学の名前が並んであるように、はっきり言って、自分で言うのもなんですが、相当順調なキャリアだと思います。この順調なキャリアを支えてくれた第一のものは、右の青い四角で書いている奨学金です。修士2年で学生結婚したにもかかわらず、順調に、自分の研究テーマではないですが、貧困に陥らずに博士課程まで行けたのは、何しろ奨学金があったことがとても大きいです。2人で奨学金40万円ぐらい、非課税世帯になるので、奨学金は課税をされないので、それでとても順調に暮らすことができました。
 他方で、私の学年が奨学金の返還免除、教育職に何十年か就いていると返還免除になる最後の学年で、それ以降の私たちの下の学年の人たちには返還免除の措置が廃止されました。それがもうずっと博士課程から今に至るまで心苦しくて、下の世代の人たちはやはり博士課程まで行くと800万円ぐらいの借金を背負って、その後働いていくことになります。
 先ほど税金は免除されると言ったのですが、自分の専門にまたこれも関わってしまうのですけれども、社会保険料を払わなければならなくて、学生でずっといても、年金の保険料とか国保の保険料を払わなければいけない。それも結構重たいなと思っています。働き始めるのが順調にいって二十七、八歳、30手前なので、そこからようやく厚生年金に加入できるとなると年金額も少なくなるので、老後も大変。高齢の先生方が多いのは、やはり社会人として始める時間がほかの人より遅いということ、そして、年金が少ないとか、十分に支払われないということも結構関係しているのではないのかなと思っています。
 最後にもう一つだけ付け加えたいのが、今、女子大で勤務していて考えることなのですけれども、社会人の学び直し、女性の学び直しというのが博士課程でもありまして、そのような観点もこちらの部会で議論していただけるといいなと思っております。
 以上です。
【岩崎委員】  埴淵さん、お願いします。
【若手アカデミー(埴淵氏)】  よろしくお願いいたします。東北大学の埴淵と申します。私は、人文地理学という人文社会系の専門で研究をしております。これまでのキャリアを下にざっと書いてありますけれども、大きく3つありまして、一つは学生時代は地元の徳島大学、大学院からは京都に進学しまして、その後5年間、ポスドク研究員としてのキャリアを積みました。2012年以降は、大学の教員として中京大学、それから、2年半前に東北大学に異動してきたというキャリアになっています。
 振り返って1つだけ思うこととして、右の矢印で少し書いてあるのですけれども、私はあまり早い段階から研究とか研究者というものがイメージできなかったというのが振り返ってみて思うことです。大学に入って初めて地理学という分野も知りましたし、それから、大学院に入るタイミングで、研究者というキャリアもあり得るということをそこの大学の先生から教わったりとか、あるいは実際に就職活動を始めたときに、就職が厳しいということを知ったというようなことで、よくなれたな、今まで続けてこられたなということもあるのですけれども、裏返して言いますと、早いタイミングで研究者としてのキャリアパスがこのようにあるということがイメージできるような、そのような環境があればいいのかなということは思っています。
 たまたま、先月教えてもらったアメリカの研究論文で、テニュア教員の場合は、親も博士号を持っている割合が一般人口集団と比べて極めて高いというような論文もあります。その理由として、早い段階から研究者の考え方とかキャリアがイメージしやすいということも言われていましたので、何かそのような環境が整備されているといいのかなと思っています。
 以上です。
【岩崎委員】  では、川口さん、お願いします。
【若手アカデミー(川口氏)】  川口です。僕は、高校まで地元の県立高校に行って、そのまま大学に行って、何か気づいたら研究者になっていたので、そんなに研究者になりたかったというわけではないのですけれども、若手研究者としても博士院生としても困ったことは何もなくて今に至っています。今、40歳ですが、大学の教員と違って職務の雑用はなく、教務もなく、事務のサポートは手厚く、研究費は十分にあるという状況で研究をしております。何が言いたいかというと、僕の意見は何ら参考にならないのではないかということです。
 でも、だからこそ、自分の経験に基づかないでいろいろなことを考えられる、ニュートラルな立場かなとも思っているので、つい先日、政府CSTIのほうから、研究力強化のために何が必要か学術会議で審議せよと言われたのに対して回答を発出しまして、これは論点整理等から関わって作りました。
 結局、このときの回答は、科学技術研究力の強化ということで、人材育成も結局のところ根幹は一緒で、大学教員に時間がないと。教員に時間がないと、研究もできないし、学生と向き合うこともできない。では、何で時間がないのだというと、余計なことをたくさんしているから時間がないのではないかということで、私はこの若手アカデミーで業界体質改善分科会と名のっているのは、業界の慣習としてずっと続けていることがとても仕事を奪っていたりとか、もうこんなにインターネットを使えるようになったのに、メールで済むこともわざわざ会議をしているとか、そのようなものがたくさんあるのではないかと。そのようなものを一つ一つ見直していったら、時間が創出されて、教員も学生と向き合えたり、研究ができたりするのではないかと考えたわけです。
 このような話をすると、今回の場もそうですけれども、有識者と呼ばれるような人とかが特に目のつく事例を取り上げて、ああ、そんな意見もあるんだねとか、それを生かして政策にとかいう方向に行くのですけれども、基本的に99.9%ぐらいの人はそのような生活をしていなくて、日々を一人一人でしみじみと暮らしながら大学教員をしていると思いまして、そのようなところの人が本当に何を求めているかというのを吸い上げなければ、いいことにならないのではないかなと。
 市井の大学教員はとても文科省の悪口を言うのですね、文科省の政策は全然俺たちのことを分かってないみたいなことを言って。でも、僕は学術会議で文科省の人と話すと、とてもいろいろなことを考えて手を打ってくれていて、その擦れ違いは一体どこで生じているのか、擦れ違わないような政策を用意してもらうには何をしたらいいのかということが、今回の回答を作るときに僕がとても考えたことです。
 このスライドの赤字で書いてある下側、大学教員の生活実感に基づく課題を解消しなければいけないのではないかと。何かきらきらした打ち手をして全部解決みたいなことではなくて、日々の生活で少々困っているんだよねみたいなことを全部拾い上げて、それを全部しらみ潰しにして、結果的に99%以上の人間に少しずつ幸福が訪れたら、国内の学術界総体としてはとても改善するのではないかという視点で論点整理をしたわけです。
 次のスライドに行きますと、大体このようなことを言えばいいのではないかということを書いていますが、実はこのスライドを作り、ツイッターとフェイスブックに流したら、様々な人が、いやいや、ここは違う、これはもっと推し進めるべきという意見を僕に大量にくれて、それをチューニングしていく形でさきの学術会議の回答もまとめました。
 今日は資料に組み込んでいないものでいうと、提案の3番というのが、このコロナ禍で授業がオンライン化できたりとか録画教材が使えるようになったので教員の講義負担が減るという話をするとすぐに、録画教材を使うと定員削減の口実に文科省がしてくるから、そのようなものはやってもいいとか言ったら良くないというので、大学教員が動画教材使うなんて言いませんなどという謎の方向の強情張りをしていたりするので、そこは文科省側が「そんなことありませんよ」というメッセージを出すなどしたら、お互いの不安も解消されて、時間が創出できるのではないかとか、そのようなことをいろいろ考えて回答にも盛り込んであるので、ぜひ読んでいただきたいなと思います。
 今日は資料に盛り込んだのは、提案の1番の学生ケアという部分です。学生ケアとは何かというと、やはりメンタルヘルスの問題とかアカハラの問題とかというのは非常に多く起こっていると。これへの対応というのは本当に慎重にならなければいけなくて、それゆえに大学教員の時間とか精神とかをとても奪っていると。しかし、大学教員は全然専門家ではないから、時間や精神を削っているにもかかわらず、いい解決策は導けないし、学生から見ても、的外れなことばかりで時間が浪費されていって、学費がかかるとか、卒業できないという不安があるということになるので、やはり第三者機関を設置してそのようなものに対応しましょうというように打ち手をきちんとしなければいけないのではないかなというようなことを考えたというわけです。
 この次は補足資料で、実態としてどれぐらいその不安が増しているのかという話とか、学生支援の3層モデルといって、普通に頑張れている子と少々不安がある子とか何かそのようなものをレギュラー化しているのですけれども、基本的に対応する人間が全部大学教員になっていて、どれだけレギュラー化しても、全部大学教員が対応していたらずっと忙しいみたいな話をここでは述べたかったわけです。
 次に行くと、そのような話以外にも、今回の人材委員会ということで、今回、学術会議の回答の中で幾つか明示的に人材育成に関して述べている部分があります。一つは、博士課程院生というのを、国を挙げて、学生であると同時に研究者であるという身分の二面性を持っているのだという部分を、例えばもう政治家とかからもはっきりと明示してもらって、そこを起点にしないと物事が進んでいかないのではないかというようなことを言ったりだとか、産業界での博士の活躍などと言うけれども、それは実態としてどういったものであったりとか、そのために何を制度的にしなければいけないんだというのはきちんとみんなで考えていこうよというようなことを言っております。
 次のスライドは、産業界で既に活躍している博士の方々とか、その会社の意見というのが最近少々見えるようになってきているのですが、やはり専門性はどうでもよくて、むしろ読み書きが適切かつそれなりのクオリティーでできるという部分が非常に役立っているというのが、産業界で活躍する博士もそうだし、産業界側の部下に対する評価としてもそこが取り上げられているということがよく分かりました。
 これは経産省のほうで出している「人材版伊藤レポート」でも同じことが書いてありまして、博士人材の高度な専門性のみならず、一般的な深い思考力や課題設定能力などがよいというようにコメントをしていただいています。産業界としての人材のキャリアパスも、1つの会社でずっと暮らしていくのではなくて、コミュニティーの外に出たり入ったりしながら、人材が自分の価値を高めつつ会社にも貢献していくというようなモデルを提案されていて、その開かれた先の一つとしてこれから博士課程が使われていくようになるのが産学の双方にとってうれしいことなのではないかと思うわけです。
 そのときに、では、どこでみんながつまずくかというのを生活実感に基づいて考えてみると、例えば僕は40歳なので、僕がずっと40歳までサラリーマンをやっていて、今から博士課程に入ろうと思ったときにどこがネックになるかなと思うと、やはり家庭を支えるための給料が途絶えるというのはとても大きなネックになる。では、企業の人が自分の会社の人間を博士課程に入れるのにフルカバーで給料を払い続けるかというと、やはりそれは会社の経営の合理的な判断として難しいだろうと考えると、例えば今の博士院生支援の金額をもらいつつ、企業からはサラリーは半額になるけど一応もらうみたいなのを産業界と学界側とで握って、そのような制度化をして進めていくというのが一つあり得るだろうというのが給料の側面です。
 もう一つ、決断というのは、今、大学院に入るのに入試を受けなければいけないのですけれども、会社をしばらく休んで博士課程に行きますと言うタイミング、あるいは自分が今関わっている仕事をお任せするというものと、全部お任せしたのに、院試に落ちたからもう1年会社にいますとかなるとみんな拍子抜けするので、そこら辺をうまくチューニングできるように、例えば大学院の院試に受かったら、その受かった合格資格は2年間保持できるようにするとかにすると、まず院試を受けて受かって、受かりましたからということで2年間ぐらいかけて社内の調整をしてから博士課程に行けるようになるとかというような制度にできるといいのではないかなと考えています。これは国家公務員試験の運用がそのようになっているのを援用できるかなとか、そのような具体的な落とし込みについても少々考えたところです。
以上です。
【岩崎委員】  若手アカデミーからは以上になります。ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。若手アカデミーからの発表でした。ただいまの御説明、いろいろな考え方、視点、それぞれプレゼンしていただいた方のキャリア、特色、考えていること等、非常に参考になりました。
 ただいまの御発表に御意見や御質問等ございましたら、お受けしたいと思います。挙手機能でお願いいたします。いかがでしょうか。
 狩野委員、どうぞ。
【狩野委員】  ありがとうございます。私も若手アカデミー経験者でございますので、大変心強く伺ったところです。一つ、多分産業界あるいは学術界以外に博士号を持っている人材により活躍していただくためには、博士号を取るとどのような能力が身についているというように宣伝ができるのかということが大事なような気がしています。ここはどのように言葉にできそうでしょうか。
【岩崎委員】  これ、川口さんからでいいですか。
【若手アカデミー(川口氏)】  はい。このアカリクさんという博士リクルート会社の作られた図が非常に役に立ちまして、1番、2番、3番というように書いてある大学院生のコア能力、専門性の高い部分ではなくて、裾野、土台になっている部分が大事だというのが博士号取得者の就職活動を支援している会社が言っていることです。これを能力応用就職と呼んでいますが、アウトプット能力、調査能力、評価能力、自己管理能力だったり、科学思考、データ・文献の使い方などがやはり推せる部分だというように述べられております。
【狩野委員】  ありがとうございます。これは産業界ではどのように評価されるかとか、そこまでは追いかけておられますでしょうか。
【若手アカデミー(川口氏)】  はい。経産省側で作られたスライドがございます。
【狩野委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。隅田委員、どうぞ。
【隅田委員】  ありがとうございます。小野さん、愛媛大にも御縁があったようで。愛媛大学の隅田です。愛媛大学だけではないかもしれないのですが、先ほどの皆さん御自身の経験の制度はあったのだけれども、愛媛大のデュアルキャリア支援制度みたいな、パートナーも一緒に支援するような制度がありますよね。そんなものを御提案とか何か経験とかあるのでしょうか。
【岩崎委員】  小野さんでしょうか、どなたかあるでしょうか。
【若手アカデミー(小野氏)】  そうですね。私はないですが。岩永さんは?
【隅田委員】  例えば愛媛大の制度でいくと、愛媛大に1人教員がいて、パートナーが別の大学の場合は、一定期間クロスアポイントメントで愛媛大に来てもらうことができるような支援制度です。そのような、1人だけの支援ではなくて、パートナーとセットで支援するような、そのような仕組みは何かあるのでしょうか。
【岩崎委員】  そうですね、むしろ我々が伺いたいことかもしれませんけど。
【若手アカデミー(川口氏)】  そのような仕組みはアメリカでは多くて、強化していこうという意見もあったのですけれども、やはりどうしても事例として少ないのではないかという意見もありました。それは先ほどの回答を作る上でそのような議論があったということです。
 以上です。
【岩崎委員】  沖縄のOISTではそのような仕組みがあるということは聞いたことが少しあったりします。
【宮浦主査】  狩野委員、どうぞ。
【狩野委員】  ありがとうございます。別の質問です。先般、なぜ博士課程に行かないのかということを別の団体で調査する機会があったときに言われたことがあります。それは、一人っ子ですと、大事な一人息子または一人娘に対して親がリスクを取りにくい。よって、大学院に行くというのがリスク含みであるという世の中の評判によって、それにより行かなくなるというケースが増えているかもしれない、という話がありました。一人っ子家庭がどのぐらい増えているのかなと思いますと、今2割ぐらいに達しているようです。関連して、今回お話があった子育て支援のところについてお伺いしたいのは、今の支援の体制でもって2人以上子供を持つ元気が出るかどうかについて教えてください。
【宮浦主査】  若手としてどう考えているかという部分でまずどうですか。
【若手アカデミー(川口氏)】  子供が数多くいるのは人生の幸せなので、リスクだと思ったことはないです。
【狩野委員】  ありがとうございます。女親の務めを頑張っている方々におかれては、いかがでしょう。
【宮浦主査】  我が国の出生率は今1.3ぐらいで、このまま人口減少が低下すると大変なことになるというのは数字的にはよく分かっているのですけれども、では、研究者として全般的にどうするかという部分が、研究者ならではの課題も多いと思うのですけれども、どなたか。なかなかこれぞという政策は難しい。
 高橋委員、関連のお答えをいただける感じですか。違いますかね。
【狩野委員】   どなたか、もし何か経験があったら教えていただけますか。
【若手アカデミー(小野氏)】  2人目を持つ元気があるかということですか。そうですね、機会があればぜひと思いますけれども。周りはやはり2人目、3人目という若手の女性研究者は少なくないので。ただ、とても大変というところですね。でも、先ほど制度が十分使われているかどうかという話をされていたのですけれども、やはり周りにロールモデルが全くいない状況で、私も修士から博士に進学したときに、その専攻のその学年で1人だけだったのですね。男女含めて1人だけ博士に行くというようなそのような進学率なので、周りの教授、准教授ももうほぼ全員男性という中で、やはり何かの中から選択するというよりは、本当に目の前のものをつかんでいくしかないというような、そのように子育ても来たのかなと思うと、かえって2人目のほうが少し経験もある部分、できるというところもなくはないのかなと思います。すみません、経験がないので、想像でしか話せないです。
【狩野委員】  とんでもないです。ありがとうございました。
【若手アカデミー(岩永氏)】  私は人文社会学系にいるので、女性の研究者はとても多いのですけれども、私の周りを見ても40代の高齢出産がとても多いです。数年前が周りのベビーブーム状態で。と同時に、不妊治療している人もとても多いです。というのが周りを見ている経験です。以上です。
【狩野委員】  ありがとうございます。ということだと、やはり親としてリスクを取らせにくくなるということは可能性があるなと思って考えたところです。
 あともう一点追加です。自分が若手アカデミーのときに聞いた話です。男女共にアカデミアにいるケースも増えてきた。けれども、わが国では夫婦で物理的近くにアカデミアの職を得ることは簡単ではない、よって、子育てを家庭として進めるのが大変難しくなっている、ということが、我々以降の世代で結構生じていることを聞いたことがありました。
 以上です。
【宮浦主査】  関連情報なのですけれども、同じ文科省の事業でダイバーシティ事業がかなり全国で走っていて全国組織も出来ておりますし、その流れの中で各大学、各キャンパスに保育園も作って、結構国としては力を入れていただいているのですけれども、それがまだまだの部分と、やはり浸透して使い切れているかという、両方あると思いますので、その辺りは要検討かなと思っております。
 高橋真木子委員からお願いします。
【高橋(真)委員】  皆様の実際のキャリアを見ながらのお話で大変迫力があって参考になりました。皆様、ありがとうございました。
 コメント1つと質問1つなのですけれども、コメントのほうは、川口先生でしょうか、社会人がもう1回博士課程に帰るときに、具体的に企業のこのようなところを直すとか、2年間の入学資格保持とか、そのようなところが一つの現実的なボトルネックになっているというお話は非常に腑に落ちますし、ますますリスキリングということがこれから大切になっていく中で、ああいう現実的な、少し次の一歩を踏み出すための改善というのを積み重ねるのが改めて大切だなというのを思いました。コメントです。
 質問は、やはり研究力強化という観点で海外への長期の留学とか派遣というのは、恐らく海外の人脈を作ること、そして、共著を出すこと、そして、それが現在の指標における国際的なインパクトを引き上げるという意味でやはりとても大切な一つのポイントだと思っております。一般論としてまず、そのような意味で1年以上、何かどこかのデータで、今は1年未満とか出張がとても短くなっていて、いわゆる人脈形成みたいなところでの海外滞在というのがとてもやりにくくなっていると聞いたのですけれども、皆様のキャリアでもあまりなかったなというのが一つの感想です。質問は、海外に行くことをどう捉えているかとか、行きたいけど行きにくいということがやはり総論としてあるのかどうか、そこら辺について生の声をお聞かせいただければと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  今の海外の点は何かお答え、コメントございますか。
【岩崎委員】  若手アカデミーの中では、海外に結構長く留学されていたりとか、今、実際に海外で研究されている方もいらっしゃいます。最近そのような留学の支援も増えていることは確かですが、例えば家庭の事情とかラボの事情とかでなかなか行きにくいという人もいたりとか、人それぞれという、なかなか若手としてはこれを求めていると一つにまとめるのは難しいような感じかな、と思います。
【若手アカデミー(川口氏)】  次のスライドにまとめております。私も1年間スイスに行ってきたのですけれども、日本の経済力が相対的に非常に落ちていまして、例えば今、JSPSの海外特別研究員に支給される金額だと、スイスとか東海岸、西海岸の都市部だと、最低賃金を下回っていてビザが下りないのですね。そもそも行けない問題というのもあって。僕の場合はチューリッヒに行けたのですけれども、1年間行っていると、貯金を切り崩して行っているような状態で、チューリッヒに来ているポスドクのみんなも、親から金を借りて来ているとかいう状態だったので、もっと海外に行けばいいと言うのですけれども、ただただ単純に支援制度はあるけれども、その制度の金額が全く足りてないというような状況もあって、そうなると、特に家族を連れて行くなんていうのはとてもじゃないけど無理とかいうようなのが現実問題として起こっております。
【高橋(真)委員】  ありがとうございます。行くための課題と、行った後の、特にこの2年、この冬電気代がヨーロッパは大変だなんて、そのような声も聞くので、参考になりました。ありがとうございました。
【宮浦主査】  塚本委員、どうぞ。
【塚本委員】  どうもありがとうございます。御説明いただきまして、ありがとうございました。2つ質問がございます。大学教員の研究時間をそいでしまうというご説明のあった件、負担を軽減するのは重要だと思います。民間でもコアとノンコアと分けて、ノンコアに関してはアウトソースしたりとしています。ご説明のあった不登校の場合、会社ですと出社できなくなった人のケアは、産業医の人を交えたり、専門の看護師さんと一緒になどいろいろな取り組みをするのですが、大学は私立でも国立でも公立でもそのような制度がなく、すべて教員がやらなければいけないことになっているのでしょうかというのが一つ質問です。
 もう1つ目が、『アカデミアを離れてみたら』についてです。友人が書いている関係で私も読みまして、なるほどと感心してしまっていたのですけれども、これは少々ミスリーディングなメッセージだよということが今回おっしゃりたかったことと理解していいでしょうか。教えていただければと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  いかがでしょう。
【岩崎委員】  川口さんですか。
【若手アカデミー(川口氏)】  大学の学生ケア窓口が実態としてどうなっているかというのを僕自身は各校のことを詳しく調べたわけではないので分からないのですけれども、最初に名前が出てくる方々が先生だったりするので、そこは教員側としても大変だし、学生側としても本当に求めているケアが受けられているのかはよく分からないということです。
【若手アカデミー(岩永氏)】  川口さん、少々代わって言ってもいいですか。多分、最近の大学では割と担任制みたいなのが取られていて、学生から相談ができる窓口が決められていて、先生の顔がもう決まっているという。特に女子大ではそのようなところもあります。ただ、女子大だけではなくていろいろな大学でそうで、もちろん専門のカウンセラーがいる部署もありますが、情報共有がなかなか難しかったり、そちらで聞いたことをこちらで共有していいかというのもあったり、あと、ハラスメントの問題は、大学の学内で先生方が委員会を作って、第三者機関として活動していて、私の知人でも活動している人が何人もいるのですけれども、その業務負担が重たいと聞いています。
 以上です。
【宮浦主査】  今の点、組織的には、各大学に産業医の先生や看護師の方がいらっしゃって、そのようなケアは各大学で動いております。また、ハラスメント委員会なども各大学が持っていて、事案としてどれぐらいの重たさか、あるいは委員会にかけるか、相談なのかとか、レベルの違いが非常に大きいのではないかなと思いますので、学生のケアで担当教員が非常に時間を取るというのは恐らく研究室レベルですと、各大学、結構あるのかなと思います。
 塚本委員、よろしいですかね。
【塚本委員】  大丈夫です。
【岩崎委員】  この『アカデミアを離れてみたら』、こちらはどうですか、川口さん。
【若手アカデミー(川口氏)】  御指摘いただいたとおりで、このような事例紹介は一つすごい、ああそうなのかという理解にはつながるのですけれども、やはり特定の人を取り上げているというバイアスもありますので、そこには注意しなければいけないなと思っています。
 さきに提案として出したのは、産業界に既にいる博士号取得者の統計情報というのが全然ないのですね。探したのですけれども取れなくて。一番下から2番目に、この9番に9+として書いてありますが、そこの情報を何とかして国を挙げて取らないと、議論が前に進めにくいのではないかなとは思っています。
【宮浦主査】  どうもありがとうございました。
 次は、株式会社メルカリの多湖様、草野様に御発表いただきます。メルカリ様は、「メルカリ」の企画・開発・運用等を実施する企業様ですけれども、令和4年1月から博士課程への進学の学費支援、週休3日・4日などの柔軟な働き方などの実現を通じて社員様の研究活動とか学び直しを支援する制度の導入などに取り組まれています。それでは、博士の活躍に向けてのお話、よろしくお願いいたします。
【メルカリ(多湖氏)】  メルカリR4Dでマネージャーをしております多湖といいます。よろしくお願いします。簡単にR4Dの御説明と、人への投資に関する御紹介をさせていただければと思います。
 R4Dは、先ほど御紹介ありましたとおり、メルカリにおけるいわゆるR&D組織です。今年の12月に設立5周年をめでたく迎えることができます。4Dという名前には、リサーチに加えて、ここに記載した4つのDを意味する言葉が含まれていまして、研究するだけではなくて社会実装まで目指していきたいという思いが込められています。
 こちら、簡単な組織図です。今年の4月に東大の川原先生という方に所長として就任いただきました。R4Dの中には、リサーチャーが所属するR&D組織、いわゆる大学におけるURAとか事務方部門が所属している本部組織の2つから構成されています。研究開発アドバイザリーボードを持っておりまして、社内の山田進太郎社長とか、外部の有識者の先生方を招きまして、R4Dの研究はこのアドバイザリーボードを経て採択が決まるという立てつけになっています。ここでは、その研究の価値とか、メルカリにとっての必要性といったものが議論されます。
 また、もう一つ特徴として、R4Dの研究は倫理審査を全件通しています。企業の、しかも医薬系でもない企業で倫理審査委員会を持っているというのはかなりまれだと思うのですけれども、弊社はCtoCマーケットプレイスを運営しており、お客様が近い会社であるため、社会の公器としてお客様から信頼されることを重要と考えています。そのため、研究成果を社会実装していくことまでを射程に置いたときに、倫理性や社会性に配慮することは不可欠だよねという思想からこのような体制になっています。
 こちらが、先ほどのアドバイザリーボードのメンバーです。村井純先生のほか、元楽天技術研究所の森先生、早稲田大学の佐古先生といった方々に御参加いただきまして、研究の審査プロセスを実施しています。
 R4Dの特徴としてもう一つあります。いわゆる企業のR&D組織というと、やはり企業の製品とか、新しい製品を作ったりとか、その改良というところをすることが多いと思うのですけれども、メルカリはどちらかというと、科学技術ドリブンというか、技術があって、研究したいテーマがあって、それをいかに、今すぐではないかもしれないけれども、何年か先のメルカリやメルカリが目指したい社会に対して役に立てていくかという考え方をする組織です。なので、どちらかというと、企業よりもアカデミアに近い考え方で運営されている組織になります。
 という背景もありまして、結構、研究領域はバラエティーに富んでいて、IT系の会社なのですけれども、IT技術とか自然科学系だけではなくて、コミュニケーション研究とか、ELSIといった人文社会科学系の研究を企業なのにしているというのは、割とユニークな点かなと思っています。ただ、何もかもしているというわけではなくて、メルカリが目指している循環型社会、その実現に寄与すると判断された研究のみが実施されているという形になります。
 では、人への投資について御説明いたします。今年の1月からメルカリR4D主導で、社内の制度にはなるのですけれども、社会人博士支援制度を実施しました。こちらは研究開発職種に限らず、全職種のメンバーが応募することができます。サポートの内容としては、学費の全額負担と、研究時間と仕事時間を調整可能というようなものになっています。結構ツイッターとかで反響をいただいたのですけれども、そこで評価いただいたのは、研究分野を不問としているところでした。さきに説明したとおり、R4D自体がかなり研究分野のバラエティーに富んでいるので、私たちとしては当たり前のことだったのですけれども、結構ここが刺さったのが面白いなと私自身は感じました。
 もう一つ特徴として、リサーチャーの柔軟な雇用形態があります。メルカリ全体的な制度としてYOUR CHOICEという制度があります。これは、オフィス勤務か、在宅勤務か、そのハイブリッドかを自由に選べたりとか、日本国内であれば住む場所も都内に限らずどこに住んでもいい。さらには、フレックスなのですけれども、コアタイムもなくて、いつ働いてもいい。もちろん月で働かなければいけない稼働時間は決まっているのですけれども、それを満たせばいつ働いてもいいというような制度があります。このおかげでリサーチャーの柔軟な雇用形態を実現できています。
 なので、R4Dのリサーチャーは、普通のフルタイムの方もいますし、時短の人もいるし、特徴的な点として、大学との兼職、いわゆるクロスアポイントメントといった方もいらっしゃいます。先ほど説明した所長の川原教授も、大学の籍を当然持っているのですけれども、メルカリでも社員としての籍を持って働いています。このように大学の籍を失うことなく企業で働けるというのは、リサーチャーの方にとってはより柔軟なキャリアプランが出来る可能性がある働き方なのではないかなと私たちは自負しています。
 このような投資を行っている「想い」としてはhogehogeです。PhDを取り巻く日本の現状はもう言うまでもなく御存じかと思うのですけれども、やはり博士課程に行ったほうが就職しづらいって何なの? という不思議さがあって、研究とか技術が発展していくためには、やはり大学とかの研究の現場と、それを使う企業の現場で人材が交流したほうが絶対効率がいいと普通に考えたら思うのかなと思います。
 私たちとしても、PhDホルダーの活躍の場を増やしていくことで、日本全体の風潮を変えることに一石を投じられればと思っています。特に日本においてPhDホルダーは研究職と思われがちで、ほかの活躍の場がそもそも想定されていない。学生さんと話すことも結構あるのですけれども、みんな、それ以外の就職先を考えていることがほとんどなくて、それも結構もったいないなと私たちは思っています。
 先ほど説明した社会人博士支援制度というのは、実施して終わりではなくて、そこに行った社員のその後の成長の仕方とか、どのような点が成長していったかというのをやはり定点的に観察していって評価していって、それを発信していくことが大事だと私たちは考えています。それによって、ほかの企業の方たちが、博士号を取得している人ってこのような能力があるんだ、このような場でも活躍できるんだというのを分かってくれて仲間が増えていくことで、一歩ずつでも何か変わっていけばいいのではないかなと私たちは思っています。
 では次に、実際に博士号取得者が活躍している事例として、グループ会社のメルカリでUXリサーチャーとして活躍している草野より御説明させていただきます。
【メルカリ(草野氏)】  草野です。よろしくお願いします。私はUXリサーチャーという職種で今働いているのですけれども、どういった役割を担っているかというと、豊かなお客様体験と健全な事業成長、これを両立するために、お客様に関して様々な調査を推進して、そこに対して鋭い洞察を得て、このようなところをプロダクトとして実現していくと、お客様の体験としてもよくなるし、事業の成長としても意味のあるものになりますみたいなところを提案していくような役割になります。
 このプロセスは、調査業務なので、下に少々抽象度高めにリサーチプロセスを書いているのですけれども、研究のプロセスと大変似ている部分もあります。なので、博士研究などをやって一般的なリサーチプロセスを経験してきた人たちにとっては親和性が高いので、このようなところに曲がりなりにもやはりパブリッシュできるような論文を書いてきた経験とか学会で発表してきた経験というのが生きるのかなと考えています。
 具体的に私という一事例ではありますけれども、どのように仕事に博士課程の経験が生きているかというところで、先ほどの前の段階での議論でも幾つか出てきているところなのですけれども、まずは何か調査、探求するための汎用プロセスを身につけておりますので、そのようなところというのは普通の事業をやる中でも様々活用することができます。
 ただ、やはり研究職は研究職みたいな頭で業務に関わってしまうと、ここの汎用的に使えるという部分が、少し視野が狭いせいで生かせないみたいなケースはあるのかなと思っていて、探求のための汎用プロセスというところで、やはり研究職になるというように思い込んでしまっている博士課程の方だと、この辺の汎用プロセスが一般の事業でもいろいろ使えるんだよというところがなかなか意識されないところがあって、このようなところの認識を広げていくというのが一つ効果があるポイントかなと思っております。
 あとは、2番目、やはり今の事業というのは非常に変化が激しいですね。ここ数年でとかここ10年ぐらいでさらに加速しているように思うのですけれども、このようなところにおいてやはり専門性を高め続けるとか、最新の情報を取り続けるという態度が非常に重要になってくるかなと思っています。要するに、昔学んだことをそのまま生かせば、事業として例えば35年食っていけますみたいな時代ではないので、そのようなところで、このように博士課程とかを通して新しいことを学び続ける、それにキャッチアップしてさらに新しいことを提案していくみたいなところは、非常に重要なマインドセットであり態度になってくるかなと思います。
 3つ目、失敗から学ぶ姿勢というのも、今の業界の変化の激しさに関わるところなのですけれども、研究職というのは基本的には非常に不確実なところを攻めていくわけで、ほとんどのことは失敗で終わると思います。ただ、その失敗から学びを得て、じゃ、次はこのように試したらいいのではないかという、そのような反復型のプロセスを回していくことができるし、そのようなところに対するメンタリティーみたいなものがあるわけでして、このようなところも今の不確実性の高い事業環境においては生かせるところがあるのではないかなと思っています。
 4つ目が知的好奇心というところです。今の時代は、与えられた業務を淡々とこなせばいいみたいなものよりは、この人が何を面白いと思っているのかというところを重視して、そこから新しい発見とか、よりわくわくする働きがいみたいなところが出てくるわけなのですけれども、そのような気持ちをきちんと持てるとか、自分でそのようなものに飛びつけるみたいなところ、そのような能力というのも結構事業において重要性が増しているかなと感じます。
 最後はエシックス、倫理です。やはり研究者というのは結構倫理観みたいなものを持たねばならないというようなのを教育でたたき込まれるわけですけれども、やはり例えば事業をやっていくときに、もうけられればいいという時代は大分変わってきているかなと思いまして、やはり社会に貢献できる事業なのかとか、そのビジネスが伸びたとして本当に地球環境のためになるのか、そのようなことが問われる時代になってきています。単にもうければいいというよりは、やはり本当にそれが人類の知になるのかとか、そのようなところに向き合うためのというのが、博士研究とか研究に取り組んでいる方というのは持っている方が多いかなと思っていまして、そのようなところも事業としては、事業の今の環境においては生かせるところがあるのではないかなと思っています。私がこれを全て完璧にできているわけでは全くございませんけれども、このようなところは普通にビジネスのときでも役に立つ場面が増えてきていると感じています。
 私からは以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。株式会社メルカリからお話しいただきました。
 ただいまの御説明に対して、御質問、御意見ございましたら、どうぞ。順番に3名の方、山本委員、迫田委員、枡委員といきます。まず、山本委員。
【山本委員】  山本です。私はリサーチャー雇用について、多湖さんのほうにお伺いしたいと思います。
 これはとても大学人がクロスアポイントで企業と両方にというのがうまくいっているケースということで、関心を持ちました。産業界とアカデミアとの人材交流で、アメリカのように転職が非常に一般的なところでのモデルでは日本では難しいということを常々感じておりまして、その点クロスアポイントメントは魅力があるなということ。導入時はなかなか進まなかったのですけれども、産と学の間でというのがいよいよ効果を出してきたのではないかなと思っています。
 質問としては、このような形がもっと一般的にほかの会社さんでもなり得るのか。そのためには何か課題みたいなものがあるのか。例えば、大学によっては、大学発ベンチャーの経営者などであっても駄目という内規があるとか、大学によって縛りがうるさいとかあるのかなと思いまして、様子を教えてください。
【メルカリ(多湖氏)】  ありがとうございます。大学側の縛りは、もしかしたら大学によっては禁止しているというハードルはあるのかなと思っています。川原の件でも、できる業務とできない業務というのが大学側の縛りであったので、その辺の特殊な社員を受け入れるための前例がないことだったので、社内を調整するというのはとても大変ではありました。
 ほかの企業でも転用可能なのかという点については、やろうと思ったらできるとは思うのですけれども、これが実現できたのは、完全フレックスだからというのと、副業をむしろ積極推進している会社だからという2つの特徴はあるかなと思っています。あとは、住む場所がどこでもいいという3つですね。この3つが特徴としてあるから、割とそこのハードルが越えやすかったというのはあります。
【山本委員】  分かりました。そのような意味では、先進的な企業が働き方を柔軟にしているというところであれば、可能性が高いのだなということを感じました。ありがとうございました。
【宮浦主査】  迫田委員、お願いします。
【迫田委員】  迫田です。説明ありがとうございました。13ページのところにあった、博士課程で得たものがどう生きているかというのは非常にそうだなというように実感としても感じますし、先ほどの若手アカデミーの方の発表とも重なりますが、まさにこの辺は即使えるところだと思います。
 お伺いしたいのは、メルカリさん全体で規模感、どれぐらいのドクターの方がいらっしゃるのかというのと、あと、先ほど御説明があったサポートプログラム、これもどれぐらいの規模の方が実際に今使ってやられているのかという2点を教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【メルカリ(多湖氏)】  ありがとうございます。メルカリ、少々そこも変わっているのかもしれないのですが、学歴を見てないのですよね。なので、学歴というデータが社内にないのです。LinkedInとかで調べると、10とか20名ぐらいはいるのかなというようには見えるのですけれども、実際中に何人いるのかは把握していません。入るタイミングで能力とかカルチャーマッチというのを重視しているだけであって、その人がどんな大学を出たとか、どこまで、院に行っているのかドクターに行っているのかというところまでは見ていないという感じになります。
 あと、社会人博士の件ですね。社会人博士の件は、第1回の応募が終わって、秋入学に行ったメンバーが何名かいるのですけれども、そもそもがマスターを持っている方が前提というところもあって、応募が10名前後です。実際に内定を入れたのは若干名、3名程度でした。その中には人文社会科学系のメンバーも含まれてはいました。
【迫田委員】  分かりました。ありがとうございました。
【宮浦主査】  枡委員、どうぞ。
【枡委員】  御説明ありがとうございます。枡と申します。
 この社会人博士支援制度について伺いたいのですけれども、本当すばらしい制度だと思っていて、これがうちのテレビ局にもあれば私も違ったのになと思いながら、メルカリ様の制度をとても興味深く見ていたのですけれども。
 実際、ほかの企業がこれを導入するかどうかというのが伺いたくて、現実的な話になりますけれども、特に学費全額負担というのもあると思うのですが、実際のところ、これは結構企業体力がないと難しい制度なのか、どれぐらいのコスト感覚を想定していたのかということと、あと、社内的にこれを導入するに当たって、おっしゃられる範囲で結構ですけれども、どんな議論になったのか。多分、反対意見もあったと思うのですけれども、どういった議論の末にこれを導入することを決定したかというのを差し支えない範囲で伺えればと思っています。
【メルカリ(多湖氏)】  ありがとうございます。驚かれるかもしれないのですが、ほぼ反対はありませんでした。山田がリケジョに寄附していたりとか、そのような学ぶことへの投資というのに結構積極的な会社というのもあるとは思うのですけれども、そこまでそんなに反対されることはなかった。というのも、意外とコストインパクトがそんなにないのですよね。
 日本だと、年間、学費は私学の高いところに行っても200万円を超えないぐらいで、そもそもの想定として、働きながら博士を取りたいという人はそんなにたくさんいないだろう、年に二、三名だろう。せいぜい600、行っても1,000万円程度で、それなりの評価を得たりだとか、あるいは、実際に行った方がきちんと博士としての能力を身につけて、それを実際の現場で発揮してくれれば、それは大したコストではないという判断をしていただけたというのは、うちの経営陣が懐が深いというのは非常に思います。
【枡委員】  なるほど。経営陣の理解ですね。ありがとうございます。これが広がればいいなと思いつつも、うちのというか、いろいろな会社が導入するかどうかの障壁があるかと思ったので。ありがとうございます。
【宮浦主査】  今の点で非常に画期的なのは、企業側、組織側がそろそろドクターを取ったらどうかという話があって取りに行くのではなく、御本人が手を挙げたときに、企業がそれなら行ってきたらという、そこの違いが非常に大きいかなと思います。非常にすばらしいと思います。
 柳沢委員、どうぞ。
【柳沢委員】  非常に刺激的な話、ありがとうございました。
 先ほど迫田さんが言っておられたこととあえて逆のことを言うのですけれども、草野さんが説明していただいた博士人材というか、研究をしてきたからこそこのようなことができるんだ、生かせるんだという御説明なのですが、これはあえてdevil's advocateになりますけれども、これって優秀な人材はみんなこのようなことをできるのではないのと、別に博士課程を出ているから初めてできることではないのではと言う人もいるのだと思うのですが、そのようなコメントに対してはどのように反論しますか。
 それとともに、草野さん自身は博士課程でどのようなことをやられていて、そこが具体的にどのように生きているかということも少し肉づけしていただけたらうれしいです。
【メルカリ(草野氏)】  ありがとうございます。先ほど多湖からあったように、この会社は学歴を一切見ていませんので、博士号を持っているからといって、別に評価が高くなっているとか何か採用に有利になっているということはほぼないというのがまずありまして、なので、優秀な人材であればこれができるのではないかという答えに対しては、そこは、博士号というフィルターで見ていないので、もちろん博士号を持ってない人でも、このような能力ある方であれば、弊社で御活躍いただけるのかなというのが回答です。
 ただし、このような汎用プロセスの専門性を身につける、要するに、優秀な人材として育っていく1つの手段として、博士課程で研究するというプロセスが手段の1つとして有効に働くであろうという期待感は私自身は持っていますので、実を言うと、私のマネジメントしている部下というか同僚も、今まさに博士課程プログラムを使って研究というプロセスにチャレンジしているわけですけれども、もともと実務経験が豊富で優秀な人材なのですが、そこに研究というプロセスを経験することによって、一段思考の深みが増していたり、あと、より広い範囲で事業を俯瞰して、何をやるべきかみたいなところに思いを馳せてくださっていたり、既にもうそのような片りんが見えてきているというところで、やはり1つの手段としては有効活用できる部分なのかなというように思っています。
 もちろん、その分業務時間が短縮されていたりして、マネジメントする側としては苦労する部分もあるのですけれども、それで長くそのような能力を発揮したりとか、このような機会があるからこの会社で働き続けようと思ってもらえるのであれば、十分に意味のある時間なのかなというように思っています。
 私自身がどのような研究をしてきたかというお話でいきますと、もともとヒューマン・コンピューター・インタラクションという研究分野におりまして、コンピューターと人間がどのように相互作用するとより豊かな経験を人は得ることができるのかといったところの研究です。そのような中で、私はソフトウエアのプログラミングをずっと大学、大学院の頃はやっておりまして、まさに作っては試し作っては試しみたいなことを多々やっておりました。
 そのような結果を少し論文にまとめて研究会や学会発表させていただいたりといった経験もありまして、そのような探索的に何かを作って試してというところが、まさに今事業を作るときのこのようなことをしたらうまくいくのではないかなみたいなところの探索的な思考だったりとか、それを思いつきだけでそのまま走るのではなくて、これを少しリサーチして、検証してから実際の開発に進めたほうがいいですねみたいな肌感が得られたとか、そのようなところを説得力をもっていろいろな人にお伝えしながら、UXリサーチという手段を会社の中で活用できるポジションにいるのかなというように考えております。
 今きれいに話しておりますので、いろいろな失敗もあるのですけれども、そのような自分の研究してきた経験が生きているのかなというように思います。お答えになっていれば幸いです。
【柳沢委員】  ありがとうございます。学歴ブラインドとおっしゃって、これはある意味とてもいい面もあると思うのですけれども、逆に、私はアメリカが長いので、そっちのほうの周りで見たことばかり言うのですが、あっちではPh.D.って1つのcurrencyなのですよね。だから、Ph.D.がないと舞台に上がれないみたいな側面もあって、それだけに皆さん頑張って、もちろん、向こうでは、博士課程の学生は学生として見られてなくて、もちろん給料もフルに出る。先ほど、もはや学振の海外特別研究員もはや向こうで暮らしていけないという話も出ましたけれども、かなりの給料も出るので、皆さん頑張っていくというところがあって。
 ここは難しいところだと思いますね。企業の採る側が学歴ブラインドになってしまうと、Ph.D.行く必要ないのではと必ず感じる学生もたくさんいて、実際、私の理解では、日本の工学系の特にメーカーさんとかそちらのほうでは、博士号があるかないかで全く区別しないメーカーもとても多いと理解していますので、その辺もとても難しい部分だと思います。
【宮浦主査】  今の議論、深掘りが必要ですので、また総合討論のところで議論できればと思います。
 小林委員、どうぞ。
【小林委員】  小林です。今のところに関して、13ページのスライドをお願いできますか。ここで言われていることって実は、博士に関して、もう10年、20年前から言われていることとあまり変わらないのですよね。
【メルカリ(草野氏)】  おっしゃるとおりです。
【小林委員】  そのような意味では、特に新しいイメージは浮かばないのですが、逆に、現実問題として、大学で研究しながら就職する人、あるいは就職すらうまくいかない方たちもたくさんいます。草野さんから見て、そのような方たちがこの中のどこが失敗しているというように見えましたでしょうか。
【メルカリ(草野氏)】  ありがとうございます。少しケースが少ないので、私の意見という感じになってしまうと思うのですけれども。
【小林委員】  結構です。
【メルカリ(草野氏)】  1つは、先ほど言った、研究者は研究者になるみたいなことであったり、私の分野はここの分野なのでこのような分野で強みを発揮したみたいなお考えの方がいらっしゃったときに、そうすると、この汎用プロセスはあまり生きてこない可能性があります。つまり、その分野でしか自分は働けないとか、その分野でしか自分をアピールできない、もしくは、受けてもらう企業側もそのような目線で見ているとなると、アンマッチングが生じてしまう可能性があるかなというように思ったりします。
 なので、私も元はヒューマン・コンピューター・インタラクションの研究者でありますので、別にいわゆる調査業務というのを専門にやっていたわけではないし、調査業務に関する研究をやっていたわけでもないので、そのようなところを少しマインドチェンジというか、少し視野を広げて、抽象度高めにして御自分の能力がどう生かせるかというのを考える必要があるというところが1つあったかなというように思いますというのと、もう一つは、10年前から言っていることが変わらないというのは、まさにおっしゃるとおりで、正直、これは10年前の研究者であっても備えていた能力だろうというように思うのですけれども、先ほども申し上げたように、事業環境の変化というのは、この10年でかなり大きく変化してきているなと。
 例えば、今、メルカリという会社に私は属していますけれども、10年前はメルカリが出るか出ないかぐらいのときでしたので、例えば、10年でこれほどに産業が発展したりとか、もしくは、追う側から追われる立場になっていたりとか、そのようなことが本当に数年単位で起きるような状況になってきていますので、そのような状況下において、このような探索的な手法ができるという部分の重要性が増してきているという部分はあるのかなというように思います。
【小林委員】  ありがとうございます。実は、似たような話はほかの新しい企業でも聞いたことがあって、似たような仕組みも起きています。IT系というのですか、IT絡みのと言ったほうがいいかもしれませんけれども、そのような企業は幾つかあるようですね。過程が重要だというのは非常に参考になりました。ありがとうございました。
【メルカリ(草野氏)】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 次、株式会社tayoの熊谷様からお話を頂戴したいと思います。博士の採用プラットフォーム等です。どうぞよろしくお願いいたします。
【tayo(熊谷氏)】  よろしくお願いいたします。株式会社tayo、熊谷と申します。
 2019にできたばかりのベンチャー企業の代表をやっておりまして、簡単に言うと、この文部科学省の人材政策委員会様が考えているような課題に対して、それを市場のお金で、あと、ITの力で解決できるかみたいなものを社会実験している会社でありまして、私たちが何を考えてどのような取組をしているのかを中心に御紹介できればと思っております。よろしくお願いいたします。
 まず最初、私の自己紹介です。私はもともと東京大学で博士号を取りまして、専門としてはバイオインフォマティクスというところで、先ほど若手アカデミーの岩崎渉先生のお話がありましたが、私の博士論文のラストオーサーが岩崎渉先生でして、あと、私はもともと、東大で博士号を取った後、機械学習エンジニアとしてフリークアウトという会社で1年ほど、民間企業でエンジニアとして働いた後、次はJAMSTEC、国立の研究開発法人でポスドクとして働いておりましたので、川口さんも元同僚という形になり、知り合いが数多くいるなと思って驚いた次第であります。
 というようなところで、このような民間企業とアカデミックなところを行ったり来たりしたような経歴と、あと、IT企業にいたということもあって、民間企業における人と人とのコミュニケーションとアカデミアと民間企業、また、アカデミア内部でのコミュニケーション、大分違いがあるなということにとても課題を感じて、何かそれを解決するようなウェブサービスだったりプラットフォームだったりが作れないかということで、会社をつくったというのが僕の経歴です。
 会社についてですが、全体としては15人ぐらいの従業員数、全体、業務委託の方とかインターンとかを含めてやっている小さな会社です。というところで、この辺りはもう皆さんさんざん、僕よりはるかに考えているかと思うのですけれども、先進国の中で、博士課程進学率が非常に低下を続けているのはよくないですよねというお話がありまして、それを僕らはITだとかコミュニケーションの領域から考えていくということをやっております。
 まず最初に、例えば、民間企業とアカデミアだとどのような違いがあるか、コミュニケーションツールはどんなのがあるかというところを考えると、最近、SaaSといいますか、Software as a Service、クラウド型のサービスですとかいろいろ、当然、民間企業に向けたコミュニケーションのプラットフォームというのは、例えば、一例を挙げると、求人だったり副業のマッチングだったり、あと、イベント開催みたいなものとか、かなりいろいろなものが、当然、そこには市場があるので、いろいろな事業者が進出して、益々便利になっていくわけですよね。
 一方、アカデミアは文化が違うので、結構同じものをそのまま使えなかったりとかするところがありまして、あと、当然、お金もあんまりないという中で、日本だと、求人はJREC-IN Portalのような官製のサービスみたいなものが中心となっていて、副業マッチングとかイベント管理とかのあたりも、クチコミだったりメーリングリストみたいなものにとても依存していて、かなり民間企業だと20年前とかにやっていたようなコミュニケーションの方法でアカデミア内部だったりアカデミアと民間企業間で連絡を取っているようなことがあるなというのを結構感じていたところです。
 もう一歩踏み込んで、例えば、日本とアメリカではどう違うのかということを考えますと、求人というところに絞って考えますと、日本だと、例えば、最初に企業と接点を持つのは、就職活動するときも、いきなり面接というか、選ぶ人、選ばれる人の関係であったりするのですけれども、アメリカだと、結構よくあるのがインフォメーショナル・インタビューと呼ばれるような、日本で言うとOB訪問、会社訪問みたいなものですかね。いきなり面接に行く前にカジュアルな面談みたいなものを設ける文化があって、そこも結構違うなというところと、あと、コミュニケーションツールみたいな話でいくと、圧倒的にアメリカはSNSなのですよね。SNSというか、ほぼLinkedInなのですけれども。ボストンですとか、アメリカでPh.D.を取って民間就職した人の話を聞くと、基本的に皆さんLinkedInを通して就活をされていて、しかも、大体スカウト経由で就職をしているということで、コミュニケーションの方法というか、博士号を取った人材が民間に流れていくまでのフローが日本とアメリカは全然違うのですよね。
 それは何でこうなっているのかというところと、日本でもそのようなアメリカのような就職体系が作れないかということでやっているのが僕らの事業の紹介に移らせていただきますというところで、まず、僕らが一番メインでやっているのがtayo.jpという求人プラットフォームの運営になりまして、こちらはカジュアル面談みたいなものを促進するような研究者向けの求人プラットフォームということになっております。
 こちら分かりやすく言うと、JREC-INに大学院生募集の機能をつけて、民間企業からの掲載を有料にしたみたいなそのようなサービスなのですが、こちらは民間企業の実績としても、例えば、広島大学発ベンチャーのプラチナバイオさんの例ですと、掲載1か月で18名の応募、しかも大学教員まで含まれるような方々が企業に応募してくれたとかそのような例があったり、博士号を持っている人がとても数多く集まってくるような求人メディアになってきていて、最近ですと、結構海外からの投稿とかもあって、大学とかアカデミアに向けてはこの求人サービスを無償で提供していたりするのですが、かなりいろいろな大学が使ってくれていて、大学院進学希望者の周知みたいなところで結構使っていただいている例が多いです。
 ということで、こちらの今のサービスとインフォメーショナル・インタビューみたいのを日本でももう少し作ることで、企業と博士学生が気軽に接点を持てないかということで行っていて、もう一つ、SNSを通した連絡みたいなのがもっとできるといいよねというので、11月にリリースのこのような研究者のプロフィールページを作るような機能を少々考えておりまして、研究者の個人ホームページは、日本人の大学院生とか博士の方とか結構みんな持っているのですけれども、海外の方はあまり持ってないのですよね。何でかというと、LinkedInをみんな使って、そこでコミュニケーションを取っているからで、個人ホームページで業績を載せたりするという文化は日本独自なのではないかと思っていて、その辺り、少々課題があるので、僕らもプラットフォームでその辺りリプレースできないかなというところで、このようなプラットフォームとして民間の窓口になれればいいなというところで開発を進めているみたいな形です。
 とても簡単に言うと、JREC-IN Portalとresearchmapを統合したウェブプラットフォームを弊社が作っていまして、アカデミアからの利用と求職者は無料で、民間企業からマネタイズするようなモデルで経済として回していけないかというのをしているということです。
 あと、また少々毛色が違った取組で、メタバースを使った合同説明会みたいなことも開催しておりまして、そんなことに対する御紹介も少しさせていただこうと思います。
 僕らはブラウザベースのメタバースシステムみたいなものを用いて合同説明会とかを開いているのですけれども、とても相性がいいなと思っていて、例えば、PCスペックとか通信速度とかITリテラシーとか、メタバースみたいな取組をする上で、そもそもそれに親和性の高い人たちが多いので、イベント運営は問題なくいきやすいというところと、あと、理系人材、1人当たりの単価が高いので、ある程度コミュニケーションやコストを割けるかなというところと、あと、一番の気づきとしては、オンラインでイベントを開くと、オンサイトのイベントと違って、企業側がエンジニアを呼べるのですよね。エンジニアとか研究者を展示会に呼んで、直接、ファーストコンタクトで技術者と博士学生とかが話すみたいな、そのような合同説明会とかが開けるので、これは大分この領域に合っているなということで、今後も開催していくというような形です。
 公的支援に関して、少々思うところを話させていただくと、日本では、公的なサービスでウェブポータルみたいなのがとても多いなと。JSTさんがとても頑張っていて、JREC-INとかresearchmapとかを作っていただいているのですけれども、僕らみたいな立場からすると、JREC-INとかresearchmapに対して検索で勝てないのですよね。なぜかというと、go.jpという政府のドメインがとてもグーグルとかが高く評価するので、そのようなところに同じような情報をアップされてしまうと、やはりそのようなところの情報のほうが高く評価されるというのは結構課題としてあるなと思っていて。民間企業がそこに勝っていくのは結構ハードルが高いなというのは、今、運営していて感じるところです。
 官製のウェブプラットフォームみたいな、現状は、JREC-INとかが非常に動いていて、とても必要だと思っているのですが、これは結構難しいところでもあるのですけれども、民間企業の参入障壁を上げているみたいな側面もあるのではないかなと思っているところです。
 というようなところで、この辺りで終わろうと思います。ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 ただいまのお話に御質問、御意見いかがでしょうか。挙手をしていただければと思います。狩野委員。
【狩野委員】  ありがとうございました。今少々お話があった、これは政府系の委員会でありますので、政府は一体何をすると助けになり、何をしないほうがいいのかというところは、どのようにお考えかを少し教えていただきたくなりました。とりわけ、博士人材の活躍というお題ですので、その中で何を国全体で進めればよくて、何は民間に任せたほうがよいのか。どのようにお感じでしょうか。
【tayo(熊谷氏)】  ありがとうございます。これはとても難しくてですね。端的に言うと、思うのが、アメリカとか欧米で博士人材と民間のやり取りが行われるのはほぼLinkedInで、日本だと、そもそもLinkedInがはやってないのが、民間企業でもそんなにはやっていないので、そこは事情が違うのですけれども、でも、だからといって、LinkedInをみんな使ってくださいと国として打ち出すのも多分違うと思うので。
 そうなった中で、日本は現状だと、そのようなJREC-IN Portal、LinkedIn的な民間とアカデミーとの接点を官製のウェブサービスとして持つという方法を取ったわけですけれども、それによって逆に、僕らみたいな民間企業としてそのようなことをやろうとしている人からすると、そっちのほうが、政府のドメインですかみたいな感じになってしまってというところで、難しいと言えば難しいなというところですかね。
【狩野委員】  分かりました。もう一つだけ、後の総合討論で皆様に伺いたいことは、トランスファラブル・スキルという、要するに、博士号人材が企業でも活躍できるための能力の開発を必修化しようという動きがあるのですけれども、それに関して、一体何を最低限しなければいけないかということを、また後でお考えを伺えたらと思います。時間が押しているようなので次の方にお譲りしますけれども、また後ほどお願いします。
【宮浦主査】  ありがとうございました。それでは、髙橋修一郎委員、どうぞ。
【髙橋(修)委員】  髙橋です。プレゼンテーションありがとうございました。
 今の後半のお話につながることかもしれないのですけれども、博士人材が民間にコミュニケーションを取るところの設計をされているというお話を聞いて思ったのですけれども、そのときに、コミュニケーションの取りやすさみたいなところを設計するのと同時に、何をコミュニケーションするかというのが重要だと思います。いわゆる専門の業績だけではなくて、先ほどあったような、例えば、トランスファラブル・スキルに関連するような、あるいはメルカリさんのおっしゃっていた汎用的なスキルにも繋がるようなもので、どのようなポイントをコミュニケーションしていくのがこの人材の流動性やミスマッチを解消していくのかということについて、何かヒントであったりとか、独自の工夫みたいなものをやられていたら、教えていただければと思いました。
 以上です。
【tayo(熊谷氏)】  ありがとうございます。とても重要な指摘だと思っていて、その点がまさに現状の研究者のプロフィールというか、業績が並んでいても、それだけで連絡は取れないというところにあると思うのです。人によって得意なコミュニケーションのレンジは当然違いますし、人によって、研究者によって、例えば、SSHの企画とかで高校生向けのプレゼンテーションとかを数多く行ってきた人とか、あと、研究室で産学連携の経験をしっかり積んできた人とか、そのようなのは別のソフトスキルがあって、そのようなところを意図的に外部にアピールできるような仕組みはいろいろ考えているというところですかね。
【髙橋(修)委員】  ありがとうございます。理解できました。
【宮浦主査】  官民のシステムの違いなど、また後ほど、総合討論でもお願いしたいと思います。山本委員、どうぞ。
【山本委員】  山本です。私はメタバース合同説明会について伺います。
【tayo(熊谷氏)】  ありがとうございます。
【山本委員】  これは就活の合同説明会、博士人材とか高度の人材のだと思うのですが、もちろん対面の合同説明会もあるけれども、ウェブのほうが大勢参加できるし、特にメタバースのような新しい技術を用いるというお話だと理解しました。
 そのときに、そのよさが理系のほうがマッチする、使いこなす人が多いからというような意味なのか、それから、企業のほうがエンジニアをそこに入れて技術者同士ができるというのは、普通の対面ですとかウェブの説明会では難しいけれども、これは可能だということでしょうか。お願いいたします。
【tayo(熊谷氏)】  僕らが実際やってみて重要だと思ったのは、後半の部分です。企業の方がエンジニアを気軽に連れてこられるというのはやはり大事で、例えば、東京ビッグサイトとかにITエンジニアを連れていくと言われたら、人事の方からすると、そのようなものできるか分からないですみたいな感じになるのですけれども、オンラインでどこからでも参加できるということになると、そこのハードルがとても下がって、学生さんからしても、特に博士の人とかになると、基本的には、人事より技術屋の方と話したいので、そこが大きな体験の違いにつながったかなというように考えています。
【山本委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
 それでは、3つ今日話題提供いただきました、総合討論、意見交換を行いたいと思います。質問でも結構ですし、3つのお話を伺って、やはりこれが課題だろうというようなお考え、あるいは、3つのお話の相互の関係、先ほど少々話題になりました、官と民のマッチングシステムをどのように活用していくか。人材の流動性。今までも人材委員会で、アカデミアと企業でとにかく人が動かないということがずっと、博士人材が動かないということが課題になってもう久しいわけですけれども、その辺りに風穴を空ける何か画期的なことができないかというようなことも含めて、何か御提案、御意見いかがでしょうか。御質問でも結構です。枡委員、どうぞ。
【枡委員】  いろいろな話を聞いて、いろいろ考えたのですけれども、最終的にとても単純な話になってしまって申し訳ないのですが、結局、流動性を高めるにしても何にしても、企業がどうするにしても、博士号人材がどれだけ活躍したかというものの指標といいますか、そのようなのが必要なのだなというように思っております。川口さんもおっしゃっていましたけれども、統計的な調査もそうですが、分かりやすく指標というか、やはり博士号人材はすごいということを周知することも同時に必要だと思うのです。
 なので、その案といいますか、そのようなアイデアというのは何か、もしかするとマスコミを使うのかもしれませんし、あるいは文科省からアピールするのかもしれませんけれども、そのような話を議論の種として、今、ここに投げさせていただければなというように思っております。
【宮浦主査】  ありがとうございます。博士人材の数とかいろいろなドクターの見える化ですね。世の中から見えてないのではないかというような、統計も含め、アカデミアから見た場合と官から見た場合、あるいは民間から見た場合で捉え方が違うかもしれませんので、統計の調査そのものは文科省のほうでかなり資料はあるわけですが、その浸透といいますか、見える化について、事務局に振ってしまっていいですか。事務局として、こんなに公表しているとかいうお話、反論でも結構です。何か御意見ありますか。
【對崎人材政策課長補佐】  どうもありがとうございます。まさにおっしゃるところ、議論をずっと聞いておりまして、エビデンスというか、数字上は、例えば、製造業、一般企業の中で博士号が何%ぐらいという数字だと、4%ぐらいしか全体では見ていないけれども、例えば、ベンチャーとかスタートアップみたいな企業では、博士号取得者、博士号所有者の割合が比較的高いといったデータとか、あるいは、トランスファラブル・スキルにつきましても、これは経産省側の調査とかにはなってくるのですけれども、どういった能力・スキルが博士人材において企業側が求めるものなのか、あるいは、大学院教育等を通じて、どのような能力・スキルを育成してきたのかといったところ、数字とかデータがかなり大量にあるので、また別途お示しはしたいと思いますけれども、そのようなエビデンスは幾つかあるのですが、マクロに見れば、そのような数字を政府はいろいろ調べたりしてきているわけですけれども、実際のところのマッチングというか、企業は企業で大学側でどのような能力を持った人を出してくるんだというのがあって、アカデミアはアカデミア側で、いや、企業が博士号取得者の能力を理解してないんだというような、あまりうまくマッチしてないという状況が比較的ずっと続いてはきているのかなと思いますので。
 そうした今日いただいたお話とかもありますけれども、具体的にどこがミスマッチの要因になっているかといった点は、引き続き我々もよく分析はしていきたいと思いますが、もし個別の事例とか、今日お話いただいたところで、そのような点も御指摘いただけると大変助かります。
 以上でございます。
【枡委員】  メルカリの多湖さんに伺いたいのですけれども、先ほどの今年からスタートした博士号支援のシステムは、恐らく社内的にフィードバックというか、実際やってよかったよねという基準を多分フィードバックすると思うのですけれども、それはどのような形で評価、例えば、生産性が上がったとかは結構抽象的だと思うのですが、そこでどのように評価されるようになっているのですか。
【メルカリ(多湖氏)】  その点はかなり内部でも検討しておりまして、そもそもメルカリの評価の仕組みとして、バリューという考え方があるのです。Go Bold、All for One、Be a Proという3つのバリューの軸があって、いかにそのバリューを発揮したかというのが評価されるのですけれども、その軸に沿ってそれぞれの能力がどれだけ上がったかというのを1年に1度、自己評価とピア評価、マネージャーからの評価というのをもらって、動きを見ようというように考えています。
【枡委員】  博士号から帰ってきて、それが有意に上がっていれば、これは成功だったなというような感じで、きちんと目に見える形で評価できるのですね。
【メルカリ(多湖氏)】  そうですね。
【枡委員】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  小林委員、どうぞ。
【小林委員】  補足的な説明で恐縮なのですが、大学院生、特に博士の活躍ぶりを示すデータがあるかないかという話なのですが、この間、結構頑張っていただいたおかげで、国勢調査でようやく大学院というカテゴリーができました。それともう一つ、分野が限られるという点は、問題なのですけれども、科学技術研究調査という調査が博士保有者、取得者というのを数えています。ただし、研究開発分野に限られるという限界がありますが。
 そのような意味では、少しずつ改善してきているので、これからもそのような問題意識で要求していけば、分析できるようなデータが集まる可能性もあるのではないかと期待しています。ぜひとも、このような方向への働きかけもしていかなくてはいけないなというように思います。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。狩野委員、どうぞ。
【狩野委員】  ありがとうございます。個々のストーリーとしての伝え方と、それから、全体像としての統計の伝え方の両方があるといいな、と思いながら伺いました。先ほど少々提起だけさせていただいた話題でございます。トランスファブル・スキルとかインターンシップですね。これは今、大学でよりたくさんやりましょうという掛け声が、特に文部科学省の皆様から国立大は来ているような印象があります。重要な動きです。ただし、マスに広げようとしたときに、どうしても理解が足りないとミスマッチの大いなる原因になり得るということがあるとも思います。何が満たされれば、この掛け声というのがより実を結ぶものになるか、というところについて、少々お伺いしたい気持ちがしています。
 大学側の特に教員側としては、当然、自分の研究に資するような活動をしてくれることが博士号を取りに来た人たちに頼みたいことであるという発想があるでしょう。その中で、学生各位がインターンシップ等をやることについては、時間の邪魔であるという考えを持っている人もおられるでしょう。その中で、企業側から御覧になって、どんなことがなされていれば最低限要件を満たすのかという感覚を少々教えていただきたいと思いました。
 メルカリのかた、あるいは熊谷さんのお考えがありましたら、ぜひ教えてください。
【宮浦主査】  企業側の視点から見たインターシップ、どうだろうかということです。いかがでしょう。
【狩野委員】  どうしましょうか。まずはメルカリ様からお伺いできましたら。
【メルカリ(多湖氏)】  草野さん、何かあります?
【メルカリ(草野氏)】  例えばなのですけれども、エンジニアとかですと、既に結構弊社はインターンシップを受け入れておりまして、そのインターンシップをきっかけに就職していくみたいなことが起こっていたりするのです。エンジニアリングって年齢に関係なく好きな人はとてものめり込んで、若い状態でもスキルが非常に高いみたいなことがありますので、そのようなところを御一緒させていただくことで、この人は弊社でもバリューを発揮できそうだなみたいなところから就職につながるとか、そのようなことはよくあります。
 最近、面白い事例で社内で聞いていたのは、学び直しで大学院に入られた方が、社会人で入られて、社会人ではあるのだけど大学院生で、その方がインターンシップで来ていて、結構いろいろな御活躍をしてくれていたり。新卒学生のインターンシップだけではなくて、そのような社会人学生のインターンシップみたいなところも含めていろいろな可能性が出てくると、リスキリングして転職しようだったりとか新しい可能性を広げようみたいなときに、結構幅が広がってくるのかなと。
 ダイレクトに博士人材という話ではないのですけれども、結構エンジニアの分野ではそのようなことが起きているなというところなので、そのような活動というのはもっともっと拡張していってもいいのかなと。学生さんが単位を取るためだけに来るみたいなのは、あんまり好ましくないかなとは思うのですけれども。
【狩野委員】  どうしても、一般に必修にすると、やる気のない人も交ざってくるので、大変なのですが。しかし選択にすれば大勢は動きにくい。熊谷さん、いかがでしょうか。
【tayo(熊谷氏)】  ありがとうございます。コロナ禍、アフター・コロナで特にIT系の企業を中心に、フルリモートのインターンシップ、長期で副業に近いような形で実施しているところが増えておりまして、そのようなところが大学院生ととても相性がいいのは常々感じていて、非常勤講師とかをやるよりも、金銭面でも大分割がよかったりとかしますし、結構それを後押ししていくみたいなのはあるのかなと思っていて。
 そこで、例えば、今、研究開発型インターンシップとかそのようなものもある中で、もっと裾野を広げて、リモートであれば、ITの分野だったり研究開発に限らず、最近ですと、例えば、ベンチャーキャピタルですとか、あとコンサルティング系とか、理系からビジネス職に転向したいような学生も数多くいる中で、それはそれで後押しすべきだと思っていて。なので、研究開発だけではないもう少々幅広いインターンの支援みたいのをしていくのが大事かなと思っています。
【狩野委員】  ありがとうございます。地方大の視点から見ると、そのようなところでなかなか都心部とのつながりを作るのが物理的に難しい人がいる中で、大変いいお考えかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【宮浦主査】  手が挙がっております迫田委員、宮田委員、川端委員の順番で、少々短めにお願いいたします。まず、迫田委員からお願いします。
【迫田委員】  迫田です。先ほどの熊谷さんの説明の中でいいなと思ったのですけれども、これは熊谷さんの仕事の邪魔になるかもしれないのですが、LinkedInを大学の方々があまり使わないというのは何か理由があるのでしょうか。
 今、我々もそうなのですが、既に相当な数の企業がLinkedInを使っていて、特に経験者採用の場面では、LinkedInを通じて人を探してくるというのは普通にやっていることです。もしそれが可能なのであれば、世界中のマーケットにつながり、いろいろな可能性を探ることができるのではないかなと思います。今までの研究成果であるとか様々な取組をきちんとLinkedInに載せていくことで、そのような採用にもつながると思うのですけれども、ここは特に禁止とかそのようなことはないのですね。
【tayo(熊谷氏)】  禁止とかそのようなことは多分一切なくて、やっている人は現に結構数多くいまして、外資系に就職する方とかはLinkedIn経由の方が当然多かったりはしていて。でも、なぜ日本ではやってないのかというところは、いろいろな企業が使っているとはいえ、まだまだ日本は、諸外国に比べるとLinkedInの普及率が低いかと思いますので。
【迫田委員】  もちろん諸外国に比べるとそうですけれども、日本でも楽天とかソフトバンクとか、相当な数の企業が活用していると思います。
【tayo(熊谷氏)】  そもそも相性はいいはずで、研究者ってまず実名で仕事するので、そもそも名前を出しているので、実名コミュニケーションに慣れているというのと、あと、任期が短いので、連絡先がころころ変わるので、そのような名刺代わりにSNSのつながりを利用したいという需要は絶対あるはずなのですよ。なのに使われてないというのは、ガラパゴス的な事情があるのだと思いますが、その辺りは、僕らのほうでも今かなり深掘りして考えているところではあります。
【迫田委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  宮田委員、どうぞ。
【宮田主査代理】  今日は本当に参考になりました。ありがとうございます。
 メルカリのお話を少々伺いたいのですけれども、これはサステーナブルかどうか。この制度は、メルカリはアップ・アンド・ダウンの非常に激しい企業なので、これが単年度で終わるという可能性がないのか、あるいは、これはどれぐらい続けるということを想定していらっしゃるかということを確認させていただきたいのですが。
【メルカリ(多湖氏)】  ありがとうございます。確かに、入学だけさせておいて最後まで面倒を見ないというのはさすがに無責任だよねというところで、入ったメンバーが卒業するまでは続けるという前提では進めています。
 いつまで新規を集め続けられるかというのは、確かに、そこはR4Dが頑張っていかなければいけないところだなとは思っているのですけれども、ただ、これは人材への投資だけではなくて、R4Dとしては結構メリットのあるところが幾つかあって、例えば、私たちとしては、大学とのネットワークを広げたいとなったときに、博士人材として行ってくれることで、その研究室とコネクションがまずできるというところと、あと、社会人博士なので、研究テーマに設定するときは仕事の課題が多いのですよね。それを研究して、一緒に解決してくれることで、研究しているんだけど、会社での課題が解決するみたいなところもあるのかなというように思っていて、その辺のメリットをきちんと伝えていくというのが、このような制度を始めた私たちの使命ではあるのかなとは思っています。
 少々ストレートな回答になってなくて恐縮ですが。
【宮田主査代理】  ぜひ調べていただいて、このようなことを広報することによって、より優秀な人材が入ったかもしれない。直接的な計測はとても難しいと思うのですけれども、何らかの別の社業に貢献できた。例えば、今、メルカリはアメリカ進出を一生懸命やっていると思うのですが、そこでのIT関係の人たちと議論をするときに、博士号を持ってないと同じ場に立てないとか、結構いろいろなメリットがあるので、ぜひそれを社内で調査しておいていただいて、R4Dが持続可能にする、プラス、できれば文科省か何かの広報紙に、成功例として、そのような企業へのメリットもありますという形で我々が発表できると、とてもうれしいというように思っています。ぜひサステーナブルにしてください。
【メルカリ(多湖氏)】  ありがとうございます。頑張ります。
【宮田主査代理】  それから、もう一つ。1兆円、5年間でリスキリングのために政府はこれから出そうとしているのですけれども、そのようなような予算が、仮に補助金として得られたらどうします?このプロジェクトの拡大のためにどう使いますか。要するに、リスキリングというか、大学院に派遣した人材の給料の半分ぐらいを補助金で補填するとか。そうするとモチベーションは上がりますか。企業の。
【メルカリ(多湖氏)】  制度導入をコスト面で躊躇している企業であれば、そのハードルが下がるのではないかなとは私は思います。
【宮田主査代理】  了解。メルカリもそのような事態になる場合があるので、用意しておいて。ありがとうございました。
【宮浦主査】  川端委員、お願いします。
【川端委員】  若手アカデミーの方々、どうもありがとうございました。いろいろお話をお聞きして。
 1点お聞きしたいのが、途中、自己紹介のところで、博士課程在学中に出産しましたとか、それから、奨学金で生きてきましたとかいろいろな話を語っていただいて、私も大学院で結婚して子供ができて、こんな同じような世界を生きていて。私と皆さんは私の子供の世代で、お聞きしたいのですけれども、文系だったら、ある意味先の就職が非常に難しいなということはもう理解ができている。また、理系だとしても就職厳しいかな、どうなるかな、なんだけど子供産んじゃおうみたいな、結婚しちゃおうみたいな、借金も大量に増えるな、でも、どうにかなるかなって、考えられたのかもしれず、こんなようなところのメンタリティーの観点から、皆さんは一体なぜ博士進学に進まれたのかということがお聞きしたい。
 要するに、先ほどからお話しされているのは、今の学生が博士に行かないのは、、進学したいけど障害がいろいろあってという話なんだけれども、皆さんはそのようなことを知った上で博士進学に進まれた。子供ができた。借金を増やした。それは一体何がドライビングフォースになっているのかというその1点と、それは今の皆さんが見ている学生さんたちは同じようなことを感じられる人なのか。また、違うゾーンのZ世代、いや、分からないけれども、そのような違う感覚を持っているのか。そんなふうに感じるかどうかというこの2点についてお聞かせいただけると。
【若手アカデミー(小野氏)】  では、私のほうから先に。
【川端委員】  どうぞ。
【若手アカデミー(小野氏)】  ありがとうございます。基本的に、今おっしゃっていただいたような流れではあったのですけれども、1点だけ少し違うのが、私は博士のときに出産したのですけれども、研究者として働き始めると、出産なんてとてもできないので学生のうちに産んだほうがいいというのは、割と私たちの分野ではよく言われていました。それをあまり意識したわけではないのですけれども、何となくそれは頭の中にあったのかなというように思います。
 メンタリティーという意味では、基本的には何も考えてなかったということだと思うのですけれども、そんなに生きていけるかどうかとか、そのようなものはどうでもなるというのはありましたし、やはりやりたいことがあって研究者になりたいという気持ちでいましたので、あまり、子供も産みたいし、研究もやりたいし、やりたいことをやるのだという、今もずっとそのような形でやっています。
 なので、学生も本当に人それぞれですので、元気な学生もいれば慎重な学生もいて、それは別に何が悪いということでもないのかなと思いますけれども。何とかなるという。
【川端委員】  今の話で、全員がそんなわけはないのだけど、ある割合でそのような人は皆さんの周りの学生さんの中にもいそうですか。それが全くいなくなっているのか。
【若手アカデミー(岩永氏)】  私が1つ思うのは、仲間がいるかいないかというのが大きい気がします。今、院生は社会科学系で孤独だと言われていて、特に地方の大学であればあるほどそのような面があるので、もっと仲間がいるとかというのが大事かなという気はします。
【川端委員】  きっと、周りでそのようなロールモデルがあると、いいなと思って学生さんはそれに憧れて、その後同じような動きをしたり、いろいろなことをすると思うのですけれども。ありがとうございました。
【宮浦主査】  小林委員。
【小林委員】  小林です。川口さんだったかな。学生支援の話をしてくれたのですけれども、立場上、言っておかなければいけないと思って言いたいのですが。
 学生の障害というか、メンタルヘルスに関しては、宮浦先生がおっしゃったように、かなり体制は整ってきています。私は実は教員側の肢体不自由の1人で、ほとんど介助がないと動けないのですが、むしろ教員側のメンタルヘルスその他のほうが実は問題で、しかも、受皿がないのです。
 例えば、私が車椅子で移動して生活しているわけですけれども、学生に対するような支援はないです。そのような人間が研究科長をやっているので、わかりますが、私が担当すべき先生は四百何十人もいますけれども、そのような先生たちの間でも、メンタルヘルスで非常に今苦しい人たちが増えているというのも現実です。これも時間を減らす大きい要因になっているのです。
 また、きちんと指摘しておきたいのですが、この種のデータを扱うときは気をつけていただく必要があって、お話を聞けばきちんと分かるのですが、スライドだけ見ると誤解を受ける方がいますし、障害ある学生を受け入れるからいけないんだというようなことを言う方もいるのが現実なので、ぜひ誤解されないようにうまく表現していただければと思います。これはコメントです。
 以上です。
【宮浦主査】  岩崎委員。どうぞ。
【岩崎委員】  今日はありがとうございました。委員として少し発言させていただきます。
 これは前回の人材委員会でも申し上げたのですけれども、私、日本のいろいろな大学、あるいは国外の大学の大学院生を見ていても、日本の博士号取得者の能力、それは専門の能力であれ、トランスファブル・スキルであれ、そのようなものが日本の大学院生が劣っているということは全く感じておりません。
 ですので、大学院生が博士課程で取得するスキルというものがいろいろなものに活用できるんだということを理解してもらう、そのために必要なデータを出していただくことと、それから、データだけで皆さん自分の人生を決めるわけではないので、ストーリーというか、そちらに行ってもいいんだという、そのような気持ちを持てるきっかけを作るということが大事だと思っております。
 そのために1つ、博士号を取った人がどこでどう活躍しているか、川口さんの話にもありましたけれども、そのようなデータをぜひ分かりやすい形でまとめて発信していただきたい。それから、メルカリ様、tayo様のお話がありましたけれども、博士号取得者が民間で活躍しているという様子をぜひ発信していただいて、こんな事例もあるんだということを、それは個別の事例かもしれませんが、そのようなものが一人ひとりには響くということもあるかと思いますので、ぜひ発信をしていただけると大変いいかなというように思っております。
 以上になります。
【宮浦主査】  ありがとうございます。村上委員、どうぞ。
【村上委員】  村上です。民間企業ではなかなか博士が採用されないということは言われていましたけれども、民間企業でも就職口があり増えているということはよく分かりました。どこに仕事があって、そして、どこに民間企業に勤めたい博士がいてということが分からない状態だとマッチングはしないので、そのために情報提供をするシステムがある、そのようなことを担っている企業があるというのは非常に重要なことだと思うのですけれども、その情報が分かった、どこに仕事があるとか、どこに民間に勤めたい人がいるということが分かった段階から、実際の雇用関係に至るまでには、さらにステップがあるように思います。
 その辺のところをどのようにサポートしていけるのかというのが今日お話を聞いていて疑問に思いました。熊谷さん、その辺のところは、例えば、このようなケースは雇用関係に至りやすいとか、そのためにこのようなサポートが必要であるとか、そのようなことを御経験から分かっていることがあれば教えていただきたいのですけれども。
【tayo(熊谷氏)】  とても難しい質問で、すぐにクリアな答えが出てくるものではないというのを前に置いた上で、これまでも度々お話に出てきましたが、ソフトスキルというかトランスファブル・スキルというか、基礎的能力のようなところですね、ここの教育というのがとても大事かなというようには思っていまして。
 日本だと、海外に比べて、そのような例えば基礎的なテクニカルライティングですとか、そのようなソフトスキルのようなものも教育があまり体系的にされないみたいなのはいろいろ言われることかと思うのですが、それによって人材によってばらつきが出てきてしまう。独学するからですね。なので、そのようなソフトスキルのようなものがしっかり身についている人は、就職する上でも、そのようなスキルは就職するためのスキルにもなるので。なので、そのようなベーシックなスキルをつけられた人は就職もうまくいきやすいなというのは感じているところですかね。
【村上委員】  そのようなスキルを私は持っていますよというようなことをマッチングの過程でうまく表現する、示せる、そして、企業側もそのような具体的なスキルで何を必要としているのかということをかなりかみ砕いた形でオープンにできるというようなことが、かなり進んでくる必要があるということでしょうか。
【tayo(熊谷氏)】  おっしゃるとおりだと思います。これまで、どちらかというと、研究者というのは業績だけが自分の名刺という考え方はある程度強くて、例えば、若手研究者の方もホームページとかを見ても、大体そのような思想で作られていると思うのですけれども。それよりもっと、例えば、産学連携だったりアウトリーチだったり、どのような活動をしてきたのかみたいなものがもっと発信されるべきだと思っております。
【村上委員】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 非常に貴重な機会ですので、言い足りなかったとか後で考えたらこう思ったというようなことを事務局のほうに御連絡いただいて、主査として少し取りまとめて皆様とシェアする機会があればいいかなと思います。ありがとうございました。
 事務局にお返しして、令和5年度概算要求について、簡単に5分ぐらいでお願いいたします。
【對崎人材政策課長補佐】  事務局でございます。ごく簡単に概算要求と、第11期のラップアップについて少し御案内をさせていただきます。
 まず、令和5年度概算要求でございますが、次のページをお願いします。大きく博士課程支援の経済的支援というところは、局長の御挨拶にもありましたとおり、引き続き進めさせていただいておりまして、一応7万5,000人ぐらいの推計値のいる中で、1万6,300人ぐらいを昨年度まで支援してきたところですが、今年度概算要求でさらに1,200人ぐらい増ということで、1万7,500人ぐらいの支援が行き渡るようにというところで検討しております。
 内訳としては、博士の特別研究員の人数と単価の増と、別の経済的支援でありますフェローシップ、SPRINGといった事業の増というところが大きな枠でございます。目標としては、2025年度までに従来の生活費相当費受給学生の割合を3倍にしていく。人数規模でいうと2万2,500人ぐらいを目指していくということでございます。
 こちらはSPRINGとフェローという経済的支援の事業でございますけれども、細かいところは省きまして端的に申し上げると、令和5年度の新規採択者からは、SPRINGという事業の基準の単価分であります290万円を1人当たりに支援するということに事業としてスキームを一本化していくというところを検討しております。ここはまた、大学等の採択先にも丁寧な説明が必要と思っておりますので、概算要求をしっかり行って財務省と折衝した上で、また別途、各大学等に向けて説明会をしつつ、この事業も引き続き拡充を図っていく予定でございます。
 次のページをお願いします。学振の特別研究員は古くからある事業でございますが、こちらは大きく2点、単価の増と支援人数の増というところを、今、概算要求で挙げているところでございます。少々見にくいですけれども、真ん中から上部のところに、支援単価の増ということで年間で36万円、1か月当たり3万円の単価の増と、DCの中でトップ・オブ・トップの支援として、優れた者10%に関しては年間で360万円、1か月当たり30万円という形になりますが、こうした増の要求をしているところでございます。
 そのほか、この委員会でも様々議論いただいておりますが、特に女性研究者への支援というところで、ダイバーシティ環境研究イニシアティブという事業の中での増要求でありましたり、学振の特別研究員の事業でありましたり、あるいは、女子高生の進路選択のプログラムといったものの一部の増というところも含めて、概算要求をしております。
 概算要求の説明は以上でありまして、もう一点、先ほど主査からも少しまた議論を取りまとめてというお話ございましたけれども、当委員会も年末に向けてラップアップをしていこうと思っておりまして、基本的な内容としましては、こちら項目に書いてありますような今期の議論の審議の経過でありましたり、今期特に議論をいただいた博士人材のキャリアパスというところで、論点はもう既に御承知おきのとおりと思いますが、多様なキャリアパスを進めるためにどうしたことが必要か、あるいは、今回のヒアリングをさせていただいている幾つかの団体様の概要等もおつけする予定でございます。
 参考3のところで、特に11期に議論になった論点ということで書かせていただいておりますが、今日もございましたように、まず、社会背景の変化として、旧来型の高等教育からどう変容していくかとか、あるいは、旧来型の雇用システムからどのように変容していくかといった社会的事情の変化や、博士人材を社会全体の課題解決とか新しい産業の創出にどうつなげていくかといった点や、分野ごと、業種ごとの違いでありましたり、研究人材の多様性、そして、組織的な研究力向上や研究時間確保にどうつなげていくかということで、今日も議論ございましたように、取り組むべき事項としては、博士号取得者というのがどのようにロールモデルが形成されて、それが普及できるのか、あるいは、博士号取得者の能力をどのように可視化して、それを向上、PRしていくのか。
 今日も議論があった点ですけれども、こうした点を少し11期の議論も踏まえながら全体をラップアップして、主査、委員の皆様とまた御相談をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。11期も終盤に差しかかっておりますので、御意見いただきながらまとめにかかりたいと思います。
 事務連絡をお願いいたします。
【對崎人材政策課長補佐】  長時間にわたりまして、濃密な御議論を本日もいただきまして、どうもありがとうございました。
 次回の委員会ですけれども、今お話をさせていただいたとおり、年末に向けて少しラップアップしていきたいと思っておりまして、具体的には少し主査とも相談して進めたいと思いますが、まとめの文案のようなものを作って、まずは主査、先生方と御相談の上で、次回の委員会自体は年末までにもう一度開催する予定でございますので、また日程調整の連絡等をさせていただきます。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成の上、委員の皆様にお目通しをいただいて、主査に御確認の上で、文科省のホームページのほうを通じて公表させていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございます。
 
―― 了 ――

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