令和7年5月19日(月曜日)16時00分~18時00分
文部科学省 東館 15F 科学技術・学術政策局1会議室 及び Web 会議(Zoomウェビナー)
狩野委員、和田委員、天野委員、稲垣委員、江端委員、梶原委員、唐沢委員、川越委員、迫田委員、杉山委員、武田委員、波多野委員、桝委員、水口委員、宮崎委員
井上科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官、先﨑科学技術・学術総括官兼政策課長、奥人材政策課長、高見人材政策推進室長
令和7年5月19日
【狩野主査】 では、主査の狩野でございます。ただいまから、第108回の科学技術・学術委員会人材委員会を開催いたします。
本日は2件の議題を予定しております。
本日は、15名の委員の皆様に、現地、それからオンラインで御出席をいただいておりまして、定足数を満たしております。波多野委員については途中から御出席ということで御連絡いただいているとのことです。
では、議事に入ります前に、まず、今日の委員会の開催に当たりまして、事務局から注意事項、それから資料の確認を髙橋さんからお願いします。
【髙橋人材政策課長補佐】 本日の会議は、対面とオンラインのハイブリッドでの開催となります。御発言の際には、対面で御出席の委員は挙手あるいは名立てなどで合図を、オンライン御出席の委員は挙手機能により、挙手ボタンを押していただくようお願いいたします。主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言ください。機材の不具合などがございましたら、対面で御出席の委員は、会場の事務局にお声がけいただき、オンラインで御出席の委員はZoomのチャット機能などでコメント、あるいは事務局への御連絡をお願いいたします。
それでは、資料を確認させていただきます。事前に送付させていただいた資料としましては、議事次第、資料1-1から1-3、資料2、参考資料になります。資料につきましては、Zoomでの共有も行います。なお、資料1-1については、前回第107回人材委員会における主な意見をまとめたものになります。議論の際に、適宜御参照いただければと思います。また、議題2について、和田主査代理、杉山委員より資料を頂きましたので、後ほど画面投影いたします。
本日は、準備の都合上、ホームページへの事前掲載が間に合いませんでしたので、傍聴者におかれましては、投影される画面を御覧いただければと思います。
議事進行の過程で不備などがございましたら、事務局までお知らせお願います。
以上です。
【狩野主査】 それでは、議題1「今後の科学技術・人材政策の基本的方向性について」というものに入ってまいります。
初めに、先日、ワーキング・グループが2つ行われておりまして、これの検討状況についてお話をいただきたいと思います。
1つ目が、5月15日に開催された次世代人材育成ワーキング・グループというものの報告をお願いしたいと思っております。内容としては、SPRING事業に関する日本人、それから外国の皆様、社会人の方々に対する支援をどうするかというあたり、あるいはSSHに関しては、優れた取組をどう認識して、どう重点化するかというあたり、あるいは全ての研究者がELSIを身につけていくにはどうしたらいいかというあたりをお考えいただきながらお聞きいただきたいということになります。
では、初めの資料は1-2に基づいて、白川さんからの御説明ということで、お願いいたします。
【白川人材政策課長補佐】 白川でございます。私のほうから御報告をさせていただきます。資料1-2の丸1を御覧ください。お手元にございますでしょうか。
こちら1ページ目からは、第1回、4月18日の次世代ワーキング・グループにおける主な意見を掲載しております。こちらは前回の人材委員会で御報告を既にさせていただいた内容ですので、ページをおめくりいただきまして、4ページ目から御覧いただければと思っております。4ページ目からが第2回の次世代人材育成ワーキング・グループ、5月15日に開催したものの概要、いただいた主な意見でございます。
5月15日は、博士課程学生の支援関係、それから初等中等教育段階における科学技術人材育成関係について委員の方から御発表を少しいただきまして、それに基づき意見交換をいただきましたほか、科学コミュニケーション活動関係につきまして、事務局から、現状、課題、今後の方向性についての資料を出させていただきました。そのため、少し科学コミュニケーション活動関係の分量が多くなっているところでございます。
内容について御紹介させていただきますと、博士課程学生支援関係といたしましては、特別研究員制度DCの支援を国内トップレベルに引き上げることが必要ではないかという御意見や、留学生・社会人学生への研究費支援や、留学生には日本での定着・就業の支援など、メリハリをつけながら、対象カテゴリーごとの戦略的な支援を行うべきではないかということ。また、4つ目ですけれども、博士人材について、産業界とアカデミア間の流動性を高めるための環境をつくってはどうかなどの御意見をいただいているところでございます。
また、その下、初等中等教育段階における科学技術人材育成関係につきましては、高い意欲・能力を有する児童生徒をさらに伸ばすための取組として、科学コンテスト、学会発表などの発表機会の拡大・支援や、産学官民連携・ネットワーク構築による社会に開かれた教育課程の実現を進めることが有効ではないかということ。またその際、大学側において学内体制の構築や組織づくり、また、大学、企業、教育委員会などのそれぞれが関与する枠組みを構築することなどを通じて、持続可能な教育エコシステムの確立を図ることが重要ではないかということ。
一方で、科学技術人材の裾野の拡大については、STELLA事業などを通じて開発されたSTEAM教育の先進的なモデルを全国に普及することなどを通じ、STEAM型学習や探求学習を中核としたカリキュラムの推進を図ることが重要であるということ。また、STEAM教育を通じて科学技術と社会の結びつきについて理解することが、女子中高生の理系進路選択につながる可能性があるのではないかといった御意見を頂戴しているところでございます。
次に、科学コミュニケーション活動関係でございます。先ほど事務局のペーパーをお出ししたというふうに申し上げましたが、併せて桝委員からも御発表いただいたところでございます。ありがとうございました。その内容も含めてまとめさせていただいております。
1つ目、今後、対話・協働の場を全国民が対象となる規模に拡大し、情報共有の場と同化していくことを目指すのか、あるいは対話・協働の場と情報共有の場はある程度別物として捉えて推進をしていくのか、こういったところについて問題提起をいただいたところでございます。また、科学技術への関心層、潜在的関心層、低関心層に分けたときに、限られたリソースをどう振り分け、どのような層にリーチすることを目指すのかといった目標について議論をすべきという御意見。また、科学技術という言葉に抵抗を持つ人もいることを踏まえたときに、次のページに参りますけれども、どのような言葉を発信に当たって使うべきか検討すべきという御意見。また、関連して、防災や健康、気象など、科学技術を前面に押し出さず、課題を起点にしたコミュニケーションも科学技術への関心を高める方法として有効ではないかという御意見。
その下、政策の推進に当たって、同じ課題意識の下、既に活動しているNPOなどの産業界の取組との連携に力を入れてはどうかという御意見。また、その下、大学等での現場での科学技術コミュニケーション活動のインセンティブになるように、現場で適切に評価されるようにする必要があるという御意見。また、ゲームやVRも科学技術への関心を高める手法の一つとしてあるのではないかという御意見。
また、科学館・博物館については、博士学生の育成への活用や連携も考えていいのではないかということや、高校を地域の拠点として科学技術コミュニケーションを推進してはどうか。また、海外で一般的なサイエンスメディアセンターのような取組が重要ではないかという御意見。適切な指標を設定し、科学技術コミュニケーションの政策効果を把握する必要があるという御意見や、誤情報への対策として、科学的な考え方などを子供のときから学んでおく必要があるといった御意見も頂戴したところでございます。
最後に、ELSIの素養・科学技術コミュニケーションに関する人材の育成についてですが、ELSIは、研究者になるような人にとって必須の素養であり、学部からなど、できるだけ早期の教育が有効であるという御議論や、社会のニーズは、一般の人々とのかけ橋よりも、むしろ政府や産業界とのかけ橋のほうにあるのではないかということ。また、現在は、科学を「伝える」スペシャリストに重きが置かれているように思うが、科学を「使える」スペシャリストの育成を重視すべきではないかということ。最後に、博士人材も含めて、科学技術人材には多様なレベルで研究を伝える力が必要であり、この評価を適切にできるようにすべきといった御意見も頂戴したところでございます。
以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。もう一つのワーキング・グループを続いてお話しいただくのですが、後ほど意見を伺う際には、これらのワーキング・グループの委員を兼任されていない方から御意見いただきたいということで、御自身がこの内容を聞いた覚えがない方々、ぜひ意見を考えておいていただければと思います。
では続いて、5月13日に実施されました第1回の科学技術人材多様化ワーキング・グループの報告を髙見室長からお願いしたいと思います。
論点としては、技術者の育成・確保に向けた取組事例はどんなものがあるか、あるいは技術職員のスキルや役割の例はどんなものがあるか。それから、研究開発マネジメント人材の育成・確保に向けた取組はどんなものがあるか、あるいはそれを拡大するためにどんな方策が取れるかというあたりが論点ということです。よろしくお願いいたします。
【髙見人材政策推進室長】 ありがとうございます。人材政策推進室の髙見です。本日、1-3の丸1から丸4というのがこの議題の関係の資料になりますが、こちら科学技術人材多様化ワーキング・グループということでございますけれども、前期に研究開発マネジメント人材のワーキング・グループというものがございまして、そこから引き続いて、URAをはじめとした研究開発マネジメント人材の人事制度のガイドライン、それから技術職員の人事制度のガイドライン、これを今、作成している最中でありますが、前回第1回のこちらのワーキング・グループにおきましては、資料でいいますと1-3の丸2と丸4というのが主な論点・検討課題となっておりまして、これらに基づいた御議論をいただいたところでございます。その中で出てきました御意見につきまして御紹介を申し上げます。
まず、技術者関係というふうにしております。ここでいう技術者というのは、我々といたしましては、企業で新製品の開発に当たられるような方々、エンジニアと言われるような方を技術者として表現をしたいと考えておりますけれども、こちらの技術者につきましては、1つ目と2つ目の丸にありますように、企業における技術者と大学等における技術職員、これはかなり異なる職種、スキル、コンピテンシーを有していて、2つ目の丸にあるとおり、それぞれの人物像というのを本ワーキング・グループメンバーで共有できるとよいといった御意見をいただいております。ですので、それぞれに関する育成について、3つ目の丸ですけれども、育成に関しても区別して議論したほうがよいといった御意見もございました。
丸4は、技術職員の出身者は医学系、理学系の方が多い、一方、技術士、技術者の中で技術士資格を取りにいくような方ということだと思いますが、工学系の出身者が多いといった、出身も大分違うであろうということ。そして、大学の技術者教育認定でありますJABEE認定でございますが、こちらについても工学系が多い、こういった違いを考慮して対策を検討することが必要といった御意見をいただきました。
次に、産学官連携についてというところでありますが、論点ペーパーの中に、企業、大学ですとか研究機関といったところは見据えておりましたが、自治体が設置する公設試験研究機関、これが論点に含まれておりませんで、これに関して、公設試験研究機関において、技術的に卓越した技能ですとか、大学が保有していない新しい分析装置等を所有しているといったことから、自治体の技術職員との連携というのもしっかりと見据えていく必要があるといった御意見をいただいております。1つ飛ばして3つ目の丸ですけれども、産学官連携の際に、技術者、技術職員にそれぞれ必要となる役割やスキルについて整理することが必要だといった御意見もいただきました。
技術職員、これは大学の機器の整備ですとか共用に携わる技術職員に関する論点でありますが、そこに関しては、次の2ページ目をお願いしたいのですけれども、1つ目の丸ですが、技術者と技術職員の役割がグラデーションになっているため、人材育成の在り方について、先ほどしっかり区別して議論したほうがいいといった御意見もあったところですが、グラデーションと思うとはっきり区別ができるのかという御趣旨で、このワーキングでしっかり議論したいといった御意見もいただきました。
また、その下です。技術職員の関わる領域が多岐にわたっており、それをどのように接続するかを検討することが必要である。技術士の高度な専門性の領域と、技術職員の専門性の領域をうまくつなげられるように整理ができると、技術職員のキャリアパスが具体化・可視化されるのではないかといった御意見もいただきました。
次の技術士についてでありますけれども、技術士は国家資格として、歴史的にというか、運営がなされてきているところでありますが、この資格試験は難易度が高いというふうに思われる中で、制度の活用促進を図っていくためには、インセンティブが見えるようにしていくこと、自立した技術者をリスペクトしていくような社会の雰囲気の醸成が必要といった御意見をいただきました。
ここまでが技術者関係でありまして、研究開発マネジメント人材の関係は、主に前期のワーキング・グループでかなり整理をしたというところがありまして、ですので方向性について違和感はないといった御意見をいただいたところであります。
前回の御議論は以上になります。よろしくお願いします。
【狩野主査】 ありがとうございました。技術士という資格も、私、今回この仕事になって初めて勉強いたしましたけども、基本的には、正解がまだ分からないことに対して技術をどう活用するかという内容の試験をされて、それの合格かどうかを決めるというような仕組みだということを伺いまして、かなり博士号と話が似ているなと、その意味では個人的に思ったところであります。なので、いずれも正解がはっきりしないことに取り組む人へのリスペクトをどう増やすかということなのかなということを個人的には思いました。
それでは、これを踏まえて具体策の御提案や御意見をお願いしたいと思います。
では、先ほど申し上げたように、ワーキング・グループ兼任されていない皆様から御意見をいただきたく、現場では杉山先生がお一人みたいなのですけれども。
【杉山委員】 いいですか。
【狩野主査】 ぜひお願いします。ほか、オンラインの先生方も御準備くださいませ。
【杉山委員】 では、次世代のほうでは、SPRING事業の話にちょっと興味がというか、自分が委員をやっているのであるのですけれども、結局SPRING事業で、うちの大学だと理学系は結構効いていて、ドクターの数が増えているのですけど、工学系はそうでもないという印象ですね。その辺り、今もう3年ぐらいになりますが、古いのも入れたらもう4、5年目ぐらいか、そろそろ検証ができるのではないかと、どのぐらいSPRING事業がどこにどう効いていて、それをどうしたらいいかという検証をしっかりまずしてみると、中身が分かってくるのではないかと思います。
それから、初等中等教育については、大学が関与するのは重要だと私も思いますし、SSHなんかで随分私もいろんなところで手伝ったのですけれども、結局インセンティブというのが、大学にいい学生が来てくれるというすばらしいインセンティブはあるのですけれども、個々の教員に対するインセンティブがなかなか与えられない中、いたずらに忙しくなるというだけの問題点がどうしてもあるので、そこを何かうまくインセンティブを与えられるようにして、もちろん大学の側からしたらしっかり中高と連携を取るというのはすごく重要だと思いますので、ぜひうまい案を考えていただいて、大学の教員が喜んでやれるような状況になったらいいなと思っています。
科学技術コミュニケーションについては、科学館、博物館というのは、今、博士人材を採ってくれるようにはなってきているのですけど、その前段階のところで大学と連携できているかというと、なかなかそこまでは行っていないというか、それぞれ別な考えでやっている感じになっているので、もう少し連携が取れるといいなというふうには思いました。
ELSIも含めて日本の最大の問題は、理系人材、文系人材と分けられていることだというふうに思っていて、特に、調べるとすぐ分かるのですけれども、文系に行く人の一番大きな理由は、理系が苦手である、理系ができない、理系が嫌いだということで、積極的な理由ではないですね。理系のほうは、理系のこれがやりたいとか、そういう積極的な理由で、文系が嫌いだから理系になるという人はすごく少ないのです。これはやはり教育段階で、非常に理系に進むことを何か、数学が苦手だったら、あなたは理系に行けませんよみたいな、非常にネガティブな誘導をやってしまっているのではないかと思うので、そこは少ししっかり考えていかないといけないと。やはり高校段階、16歳か17歳でもう一生が決まってしまうと、そういう人たちは決して理系にもう、文系に行ってしまったら理系のことはすごく何か悪いイメージだけ残る格好になってしまうので、私には分からないとか、そこは何かやはり工夫が必要じゃないかなと思いました。これは次世代についてです。
【杉山委員】 次は多様化のほうですけれども、こちらはやはり企業における技術者とか大学における技術職員の人物像というのが、さらにもう少しクリアになるといろいろ分かってくるかなと。私はもちろん企業にいたことがないので分からないのですけれども、例えばリチウムイオン電池の吉野さんみたいにノーベル賞を取るような方、また、名古屋大の赤﨑先生も、名古屋大に来る前は企業に勤められていた時期もありますということを考えると、そういう方々も企業ではある意味技術者になるのではないかと思うのですけれども、そういう企業における新しい発見、発明ができるような高いレベルの技術者の方々をどういうふうに我々はサポートしていくのかというのは一つ課題かなと。
大学における技術職員も実は同様で、どうしても我々大学の中では技術職員を、下に見るというよりは、いろいろ手伝ってもらう人というような扱いになってしまうのですけれども、中にはすばらしい技術を持っていて、教員の道のほうに行く方もいらっしゃいます。だからその辺のキャリアパスがまだ我々には、もう長いことたっていますけれども、描けていないというのが、こちらの反省すべき点かなと思っています。
それから、JABEEについて少し書いてあったんですけれども、JABEEは最近料金が高くなり過ぎて、うちも離脱するとか何かいうような話になっておりますので、これは何かやはり工夫がないと、皆さんそっぽを向いてしまうのではないかというところが心配なところです。
以上です。
【狩野主査】 たくさんありがとうございました。今日は時間が押しているので、まとめないで次に行きたいと思いますが、
和田先生、もしよかったら一言いただけますか。
【和田主査代理】 詳細に説明いただきましてありがとうございます。私も次世代ワーキング、それから科学技術多様化ワーキングについて、1つずつお話しさせていただきたいと思っています。
次世代ワーキングに関しましては、まさにおっしゃるとおりです。幅広い裾野と高い頂、富士山のようなきれいな山容を思い浮かべたときに、この両方の視点というのが大事なのだと思います。この裾野を広げる、ここは例えば先ほど出てきた初等中等教育、この中でのSTELLAのような取組は、とても有効だと思っています。本学でもR5年から、小中型と高校型を合わせたSTELLAを実施しております。また、子ども科学財団とも連携をしまして、小学校のときから科学研究ということに関して取り組んでもらう、これを継続する、それがとても大事だと思っています。
それから、縦に伸ばすところ、つまり、強くするところをさらに強くする、その点ではSSHのような取組は非常に大事なのだろうと思っています。社会人大学院は、むしろこの両方ではないかと思います。裾野を広げるとともに頂を高くする、つまり縦と横両方進めるのは社会人の対応というところでは、一つポイントになってくるのではないかと思いました。
それから次に、科学技術人材多様化ワーキングに関しては2つあります。1つがURA、もう一つが技術職員です。URAに関しては、稲垣美幸委員からも意見があるのかもしれません。私たちは、このいずれもキャリアパスということを意識して取り組んでいるところです。第3の職種の仕組み、しかも給与手当、こういったところも意識して進めています。現在、承継ポストも6名、教授5名、助教1名います。また、経営人材にも登用しています。そして、間接経費などでの特任教員の無期化ということも進めています。様々な取組をここで行い、このキャリアパスを可視化するということを意識しています。
技術職員も同等です。技術職員は現在、全て承継ポストです。それに関してもエバンジェリストとかマイスターという言葉で、見える化、技術を見える化しています。それに対して手当をつけている。これは、この認定制度とともに、技術の人材育成プログラムとセットに行っています。つまり、プログラムをして、これを評価していく、このセットで進めていく、これがキャリアとして見えていく、こういった仕組みを取ると、割とモチベーション持ってやっていただけるのではないかと思っています。ですので、やはりキャリアの見える化ということは非常に重要だろうと思います。
以上です。
【狩野主査】 簡潔にありがとうございました。広く高いこと、それから承継ポストあるいは無期化、タイトルをつけるなどで、キャリアパス、元気づけておられるといただきました。ありがとうございます。
天野先生、よかったらお願いいたします。
【天野委員】 詳細に御説明くださり、ありがとうございました。私も簡潔にですけれども、科学技術コミュニケーションのところで、あまり関心がない層にどうやって訴求していくかというところで、多分、私もこれは以前調査をしたことがあったのですけれども、博物館に行かない、あるいはサイエンスカフェに興味がないという層の人たちは、ふだんどうやって情報を得ていますかということを尋ねたときに、せいぜいテレビの情報番組とか、NHKの7時半から水曜日にやっているような番組ですとか、あるいは新聞の科学欄のタイトルぐらいは見ますという回答が圧倒的に多かったので、逆に言うと、あまり科学技術に関心のない方々はオールドメディアには親しみのある方が層として多いのかなという印象がありました。
そういうこともあるので、テレビや新聞などのオールドメディアをもう少し上手に、変な情報を垂れ流されてばかりで、あんまりいい印象もないのですけれども、逆に我々のほうで上手に組んで、活用できないかということを考えていくのもいいのかなというふうにずっと考えていたところです。
もう一つ、社会との関連で、博士の方ですとか、あと理系人材のところで、産業界に興味を持ってもらおうとかキャリアパスに関わってくるところで、文系との連携が不可欠というところなのですけれども、高校ぐらいから、例えば科学社会学とか科学哲学のような、文系であっても科学を考えないといけないような科目、あと理系の方は、私、一般教養で科学社会学か科学哲学かどっちか必修にするべきだとずっと大学に言っているのですけれども、そのような物の見方、考え方を身につけるということ、それから興味関心を持ってもらうということもですけれども、これはもうある程度、授業とかで触れていってもらうのがいいのかなというふうに私は考えています。
逆に、そういう科学社会学とか科学哲学に全く触れてこなかった学生さんに、博士課程ぐらいの子にそういうトピック、セミナーをやると、ものすごくみんな、面白いですね、もっと若いときにやりたかったみたいなことを言ってくれることが経験上多かったので、そういう機会を設けるのも一つなのかなと感じていました。
あとは、理系の女性、理系に進む女子学生を増やす話ですけれども、本当になかなか難しいところではあるのですけれども、これ、親御さんの意識を変えるところからやっていかないといけないので、何か親御さんの理解を深めるようなプログラムみたいなものも考えないといけないのかなというふうに感じていました。幾ら学生さん、高校生ぐらい、中学生ぐらいの女の子が工学部に行きたいと強く思っても、いやいやと反対する親御さん、特に母親に多いと思うのですけれども、そういった家族の意識を変えるというところもひっくるめて考えていくべきなのかなというふうに思っていました。
あと、URAのキャリアのところです。URAのキャリアパスというところでいくと、URAがいろんなキャリアをその後、もちろん大学の中で教授職に就くとか、あるいは企業に行くというようなキャリアももちろんつくるべきなのですけれども、逆方向で、例えば教授職だけれどもURAの上のほうのプロボスト的なポストに、例えば1年間、大学本部の身分で行くですとか、今、大学と関係ない立場だけれども、興味のある人にはURAの認定を資格として取れるような、そういう何か双方向性が見えるようなつくりにすると、よりURAのキャリアというのも見える化されていくのかなというふうに私は考えました。
お話を伺って私が感じたことは以上です。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。
無関心層の話は、桝先生、何かコメントがこの時点でありますか。
【桝委員】 本当に、非常に的確な御指摘ありがとうございます。私も本当にまさに同じ意見でして、無関心層というか、非関心層に関していいますと、科学情報には受動的であるということはもう調査から間違いないところで、それを能動的に、全国民が科学の情報を積極的に取りにいく社会というのは目指すところではないと思いますし、逆にある意味不健全な社会かなとも思いますので、そういった科学情報に対して受動的である方にどのように届けていくかというところが、やっぱりこの科学コミュニケーションの議論には加えてほしいなと思っております。
先ほどおっしゃったように、テレビ、新聞を見る非関心層の方というのは比較的上の世代であって、その方々というのは、逆に言うと、受動的であっても科学情報に触れられる可能性を秘めているので、いわゆるオールドメディアと言われるところの質を上げていけばいいのですけれども、若い世代になってくると、テレビ、新聞に全く接しないので、根本的に科学情報に全く接しないという層がこれから増えてくるはずなのですね。なので、そこの部分をどうカバーしていくかというのは、これからの科学コミュニケーションの在り方に関して言うと、メディア形態が変わったがゆえに、今まで以上に深刻になるだろうというところはちょっと一つ付け加えておきたいところです。
【狩野主査】 ありがとうございました。そのご経験豊富でおられるので、大変迫力のある御意見をいただきました。ありがとうございました。
あとは双方向性のことが、教育内容あるいはURAのキャリアパスについていただきましたし、女子の皆様のことについて、保護者の意識の改革も必要であるということをいただきました。ありがとうございます。
では、迫田先生、お願いできますでしょうか。
【迫田委員】 迫田です。まず次世代のところでありますけども、何が次世代に必要かということを、採用と大学教育の未来に関する産学協議会、経団連と大学の幹部の方々が議論した中で、とにかく最終的な専攻が文系であるか理系であるかを問わず、最低限、数理的な推論とかデータ分析の力は絶対必要だということで、高校段階で文系と理系が分かれて、それ以降、文系は数学等をやらないのは問題だという結論でした。文理を問わず数理的推論やデータ分析の基礎のところまでしっかりやっていくべきというのが産学共通の問題意識だったと思います。
生成AIとかが進んできて、仮にプログラミング自体は勝手にやってくれるようになるにしても、読み解く力とか、それがどういう意味を持ち何を指し示しているのかということがしっかり分かる基礎力がないと、文系であろうと産業界では使い物にならないと思います。例えば、今やデータ分析できない営業は、役に立ちません。この点は強調されてよいのではないかなというふうに思いました。
それから、多様化のほうですけども、技術者のところが気になりました。私自身、大学の状況はよく分かっていなかったので、これまでそうなのかなと思って聞いていたのですけれども、今伺った話だと、やはり少し違うのかなという気がします。企業の中では研究者と技術者を明確に分けてはおらず、グラデーションになっています。基礎研究から先行研究みたいなところはもちろん研究者がやっていますが、そこから実際のビジネスに落とし込むところあたりからは、通常、技術者というふうに呼んでいて、研究所から実際の事業部に移って仕事をするということがごく当たり前にやられていて、行ったり来たりするというのも一般的です。実際のビジネスに関わらないで研究だけというのでは少し足りないということで、ローテーションも行われています。技術職員というのはサポートする役割のように聞こえたのですけれども、産業界でいう技術者とは少し違うのかなという感じがいたしました。
それからもう一つ、これからの議論になるのかと思いますけど、研究開発マネジメント人材のところは技術職員の枠で議論するのが適切なのかがよく分からないなというふうに感じました。これは梶原さんのほうがよく御存じだと思いますけど、例えば企業で言えば、優秀な研究者の中からマネジメント能力の高い方を選び出して、研究開発マネジメントをやらせます。むしろ経営幹部に上がっていく人たちは、そういう人たちなのです。会社のCTOとかになっている方々は、研究開発マネジメントをやっている人であり、どの分野を選択するのか、どこに人材、リソースを配分するのか決め、全体の研究マネジメントを回していくというのがまさにそういう人材です。研究開発マネジメントは相当高いレベルの方を育成することが必要で、先ほどの支援とか、そういう話ではないなという感じがいたしました。
感覚だけで、申し訳ございません。大学の実情が分かっていないので、企業側から見た意見でありますけど、以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。文理問わずに必要なものが多分時代とともに変わってきているのかもしれないということ。あるいは、新しいことをつくるのに、アイデアをつくるのか、方法をつくるのか、あるいは技をつくるのかというところで今分けていますけど、それの分かれ目もどうなのかということもありました。あるいはマネジメントという言葉で表されることは、大学では実は研究者と呼ばれる人がその後マネジメントをすることになっていて、私もそんな人生になっていますけど、それを含めて本当に今のマネジメントという言葉でいいのでしょうか。というような気持ちが入っていたかなということは思って伺っておりました。ありがとうございます。
引き続き、いかがでしょうか。
唐沢先生も今のところワーキング・グループに関係はされていなかったと思うので、よかったら。
【唐沢委員】 どちらにも入っておりませんので、既に出された意見と重ならない部分と、補足したい点とで話をさせてください。
1つは多様な支援のありかたについてです。例えば、SPRINGやDCの中で、できる学生を早い段階で引き上げる、他より厚い支援をするという御提案が、以前にも出ていたと思いますし、今回もそのようなお話があったのですけれども、これがうまく機能しない可能性もあるのでは。SPRINGだと、1つのテーマの下でSPRINGという枠組みで大学全体に来た支援を部局に配分する構造などだと、優れた学生を選べと言われても、実際できない可能性もあります。ただ、できないと言っても始まらないので、どのような支援体制の中で、できる学生を引き上げる仕組みを機能させたらよいのかということを考える必要があるのではないかと思います。
とはいえ、早い段階から引き上げることについては懸念がございまして、あまり文系特殊論を申し上げるのもと思うのですが、例えば博士の1年生や2年生ですごくできる学生を人文学の分野で選べるのかというと、周りの研究者、多くの私の同僚は、それは無理だと言います。そういうものではないと。これは教員側の意識の問題なのか、現実にそういうことが本当に学問の性質上無理なのかということは議論が必要なのですが、学問とか分野の性質を踏まえた多様な方向性や慎重な議論がありがたいのかなということは思いました。
それから2つ目ですけれども、数学ができる人は理系へ行く、できない人は文系に行くという話は、納得するところもありますが、一方で、例えば答えのないものに耐えられないから文系を避けるというのもあると思います。答えがないけど問いを立てる、答えが出ないと分かっているのだけれども問いを立てて、その中で模索していくということに関しての耐性も、理系の素養として必要だと思いますし、やはりこれからの科学技術をどのように社会の中に生かしていくかというときに、ソリューションが簡単に見つからない中での模索というのが大事ですから、文系にも理系にも要ること、文理の壁をどうやって越えていくのかということが必要で、高校生段階から考えるという話も重要だと思います。
また、大学院に入った段階くらいでも、言わば一般教養が今は、大学の1年生、2年生でなされていますけれども、大学院レベルの一般教養として、文系理系の壁を乗り越えるためのカリキュラムみたいなものが考えられ、そういうものを実施することが何かしら資金配分につながると、インセンティブになっていくし、導入も深まるのではないかと思ったのが2点目です。
それから、技術士の方のお話で少し気になったのが、先ほど技術士の方がどういう役割を担うかという御説明があったのですけれども、だとすると、社会とか人に関してリテラシーが必要とされるようなお仕事であるというふうに理解しました。今回拝見していると、そういう観点からの書き込みが、それがやや弱いように思いましたので、この点については、これに詳しい先生方がどのようにお考えになっているか次第ですが、この部分を膨らませていくことも、今後必要になることの一つなのではないかなと思っています。
それから、連携先の話ですけれども、博物館とか科学館は出口としても非常に大事なところですので、そことの連携を深めることを、インターンシップ的なことも含めて、大学院教育の中でも取り入れていく、博士人材の出口としてもう少し真剣に考えていくことが必要かと。地方にある博物館や科学館、資料館については現場の自治体の方からは、人材を募集しても来てくれないような悩みも聞いておりますので、そことつなぐ仕組みというのがあると、ここの部分はうまくいくのかな、少しはうまく回るのかというふうに思いました。
まず拝見して考えたことは以上です。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。いずれもすてきな御指摘だったと思います。ありがとうございます。
宮崎先生は、まだ御発言されていないですね。よかったらお願いします。
【宮崎委員】 宮崎です。まず次世代の人材育成のところからですけれども、そもそもドクターコースになぜ行かないのかなというところの根本の課題に立ち戻ると、経済でもない、何でもないとするならばですけれども、結局DCコースに行くことへのメリットというものが全く理解されていないというのが根本なのだと思います。そのメリットが明確に見えれば、行く必要があるというふうに思うと思うのですけれども、そういった意味では、今、学生の目から見たときのDCコース、ドクターコースというのは、大学の教員しか見えていないかもしれないなと思っているのですね。
もちろん民間での活躍や、活躍している人たちのロールモデルが見えていないというところが根本にあるのですけれども、我々の研究機関からすると、そういうドクターコースを取って博士号を持った人たちというのは欲しい人材であるということが表にアピールできていないという部分は反省をしているところで、我々の研究所としては、研究者というものをきちんと外に見せることによって、学位を取ることによって、こういう開発に携わっているのだということを見せていくような努力をしているところです。
本当になかなか我々の立場からすると、教育そのものに深く関われないので、文部科学省と違う立ち位置でいますので、産業界に羽ばたいていくための人材開発というところには意識して取り組んでいるところです。そういった中では、実は出前事業やサイエンスカフェというようなものはやるのですけれども、先ほど桝先生がおっしゃったように、実はこういうところに来る人たちって、もう我々やると、てきめんですけれども、高齢者が来るのがほとんどなのですね。学びのリスキリングのために皆さん来られて、テレビみたいな古いメディアもというのですけれども、高校生や中学生が来ることって、ほとんどないです。
やっぱりそこから考えると、我々媒体が間違えているのかなと思っていることがあって、我々の情報発信のツールとして、やはりユーチューブであったりとか、それからユーチューブを使う場合にも、例えばインフルエンサーを使うとか、有名なユーチューバーを使うとか、そういうことを我々の技術と掛け合わせながら情報発信しているのですね。そのことによって、タッチポイントである本当に若い人たちに情報を届けることができるのではないかという挑戦を今、しています。それがどう跳ね返ってくるかはまだ検証されていないのですけれども、そういったトライアルは、若い人に向けてやるならば、なかなか高校を介してやるというのは、高校の先生も手いっぱいですので、何か違う。そして、子供たちは違うメディアを使ってやはりコミュニケーションを取っているので、そこに科学を乗せていかないとなかなか届かないだろうなというふうに思っています。
それから、多様化のほうですけれども、産総研での取組、迫田先生の御意見と近いのですが、産総研でも研究者一本で評価すると、なかなか技術を産業界に出していけないというふうな困難さを感じているので、企業と同じように、技術者、技術系職員というのをエンジニアリング人材として、2、3年前から採るようにしています。これは、ただ学生から採って育てようと思っても、研究機関の中では育たないので、いわゆる民間企業で活躍された方をエンジニアリング人材としてどんどん入れています。もうそこで本当にたたき上げの技術者がどんどん入ってくると、研究と産業、技術を外に出すところにつなぐためのアクションに、非常にコミットしてくださいます。これは研究者には絶対できないので、大学教育ではなく、やはり現場感があるエンジニアが入って、初めて技術が社会に出ていくという様をどんどん見ることで、そういうことを見ていると、経験した技術系職員のリスペクトがすごく高まっています。
そうすることによって、先ほど、やはりどうしてもテクニシャンだとか技術者というものに対して低く見られがちな、実は日本におけるある意味の価値観みたいなものが払拭していけるのではないかなと思いますし、それから、URAはなかなか若い頃からたたき上げるということはできないと思うのですけれども、もう一つ、この間聞いた話で非常に興味深いなと思ったのは、ワシントン大学などは大学院の学生が、いわゆる知財部門にテンポラリーに、授業でどんどんOJTのように入っていって、大学の知財を取り扱ってまた戻っていく、研究をそのまま知財のほうに、面白いと思えばそこで、知財のほうで活躍していく人材になるといって、そういう非常にコアでURAで使わなければいけないテクニックを大学院の頃に垣間見て、自分の違うキャリアパスを見つけられるようなパスというのをしっかり見据えながら教育していくということが、やはり大学院生の中には必要なのかなというふうに思いました。
私のほうからは以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。社会とのつながりということの一つが、キャリアパスとして大学以外もあるのかどうか、あるいはアイデアですね、そこがどうつながるのか。また、そのときにアイデアだけじゃなくて、技とつながるということで、研究者と技術者がもうちょっとマージしてもいいのではないかというようなことをいただいたように思いました。あるいは、若い人にタッチポイントがオールドメディアではないとしたらどういう方法があるのかについて、いまいちであると、解決しなければいけないということをいただきました。ありがとうございました。
続いて、まだ両方とも兼任されていない方では、武田先生が今の内容で、もし温まっている内容があったらお伝えくださいますでしょうか。
【武田委員】 武田です。遅れて参加して申し訳ございません。
まず、多様性はやはり重要だと思います。これは科学技術の発展、並びに人材育成という観点でもそうなのですが、多様性は本当に様々な観点から議論ができると思います。まずキャリアパスでアカデミアか企業かという議論がよくなされ、これまでも議論がありましたが、双方向でいいと思っています。大学でキャリアを築いた後、企業に転身しても良いし、また逆のパターンもやはりあると思うのです。これまでの経験をベースに、どちらの方法でも活躍できる機会があるのかなと思っています。
私自身も、30代後半までは完全にアカデミアで研究者として経験を積んだ後で、企業のほうに方向転換した一人なのですが、本人の持つ資質や志向性が、時とともに変わることがあり得ると思っています。私自身は、大学院生の頃は、博士課程を出て企業に就職する友人の気持ちが分からなかったのですけれども、自信が実際にアカデミアで研究をいろいろ進めていくうちに、今の研究は社会との接点が薄いと少し思うようになって、年齢重ねると社会との接点が欲しいと思うようになりました。研究や他の業務も含めて、企業に行ったほうがより社会に近いことができるかも知れないというようなマインドを持つようになり、企業へ転換しました。実際思惑どおりに、サイエンスで培われたことや、研究者として学んだことを企業の活動に生かすことができました。また、企業にいますと、その先に顧客がいて、顧客もまた社会に役に立つ活動をしていることを実感することができました。このように人は変わり得るものだということがあるので、アカデミアか企業かの二択というふうに考えなくて、柔軟にアジリティーを持って自分自身の色々な可能性を考える、そういう選択肢があるということを研究人材にも知ってもらう機会というのがもっとあってもいいと思っています。
多様性で、あともう一つ、企業とアカデミアの人材の件以外に、男女比のこともよく議論になります。例えば、私も理系関係、の企業の人間として業務に携わっておりますけれども、男女比を均等にすべきだという点は、完全には正解とも限らないと思うところがあります。というのは、やはり男性が得意なところ、女性が得意なところはバイオロジーとして、ある程度自然に傾向があるわけです。そこに外的なバイアスとなる社会的な通念や環境影響しているがゆえに、本来あるべき比率でないことが起こっているとしたら、そこは何とかしないといけないと思うのですが、自然にあるべき姿レベルの比率になっているのであれば、そこを無理してでも変える必要はないのではと考えます。男女比は世の中的にはほぼ一対一ですけれども、各種分野においてもそうなければならないという考えは、再考の余地があると思っています。
理系でも分野によっては、例えばバイオやメディカルはやはり女性が得意な点を生かせるという面があるのか、研究者比率はほぼ一対一に近いようなになっているかと思っていますし、一方、工学、機械、数理などというような分野は男性のほうが得意という傾向が、生物学的にあるかも知れないと思っていまして、そこを無理に女性比率を上げるというのは、別の意味でのゆがみを起こしかねないと思います。外的要因の有無、不自然な偏りの有無に関しては、本質的にあるべき姿を見極めたうえで議論することが重要ではないかと考えています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。どうしても官庁の仕事としては、箱というのでしょうか、その中の統計で物事を把握せざるを得ないところがあると思いますけども、他方で一人一人の人間としては、自分の内なるやりたいことがそれぞれあって、それらが時々に合わない可能性もあるので、上手に仕事の場を選んでいけるといいなという話だというふうに、今お伺いして感じました。ありがとうございます。ワーキング・グループを兼ねている方々から、今の話を聞いて、何か政策的にこう打ち込んだらどうでしょう的なものが今の時点でぜひあれば、いただければと思いますけど、いかがですか。
梶原先生、何かありますか。
【梶原委員】 長く話してしまうと申し訳ないと思うのですけど、私、玉田先生がコメントされていることに対しては非常に共感するところがございまして、博士学生の支援のところで日本人と外国人と、どのように見直ししていくかというポイントで、例えば先ほどコミュニケーション、出前授業で評価を云々という話がありましたけど、こういったところでもそういう出前授業に行くようなことを一つの加点要素として、プラスアルファの何か費用がそこに乗っかっているとかいうのもあるかと思うので、非常に玉田先生のコメントには共感するところがございました。
同じようにスーパーサイエンスハイスクールのところも、トップ・オブ・ザ・トップを追求するのか、もう少し裾野を広げるのかというポイントで、最初私は、戦略的に重点化するというのは非常にいいことだと思っていたのですけれども、玉田先生の表現を見て、地方で実は眠っているかもしれないという表現をされている文脈があって、そういったところを掘り起こすという観点での使い方、それは確かにあり得るなと思ったので、SSHの詳細知りませんけれど、トップのところは恐らくいろいろな取組が進んでいるので、産業界とつないで何かをやるとか、進んでいるところは結構あるようにも、広尾学園ですとか、そういうところの話を聞くとあるので、そこはよく検討されてはいかがかと思いました。
それから、科学技術コミュニケーションのところは、ELSI、あるいは知財とかセキュリティーイシューのところも含めて、大学の教養課程のところでベーシックコースは学んでいただいて、さらにマスター、ドクターに行くときにアドバンストコースを提供とか、基礎的なところはやはり学んでおいていただきたいという思いはあります。単にELSIで、Lでリーガルがありますけど、知財のところはやっぱり同じように課題があると思うので、併せてやっていただけるといいかなというのは大学に対してのお願いです。
それから、科学技術の多様化WGですけども、先ほど迫田さんがおっしゃっていたように、これ、アカデミアと産業界で定義が違うというか、イメージするのがまず違うということは明らかに思って、まず技術者と言ったときに、技術職員という表現は企業では当然しないので、企業はエンジニアというと、技術者で事業部に所属していて、事業責任を持っています。一方、研究者はどちらかというとコスト部門ですということなので、割とそういう区分けをしている。研究所を持っているところも含めてコストです。コストではないように使うべきだというのは企業でいろいろあるのですけれども、それで研究部門、コスト部門と、事業部門での人材の流動性というのは企業の中では起こり得る。それに対して、技術職員という表現をされるので、技術職員は企業としてはそんな表現はなくて、どちらかというと、ある特定の共通部門みたいなところで機器を割と共通的にサポートしてくれる人たちがいますけど、そこはやはり技術者ですということで、まず定義が違うからイメージするところが違うというのがあるので、議論をするときには多分、事例的なことをやるのだとすると、類型化できてくるかと思うので、そうやって演繹的にというよりも、帰納的にやっていただくほうがいいのかなと。
同様に、研究開発マネジメント人材も、迫田さんがおっしゃるように、最初私、聞いたときには、どういう人のことをこう言っているのだろうと思いました。マネジメント人材というと、企業としては、もうマネジメントできる、経営層です。マネジャークラスであり、経営層。その名前をつけながら研究開発マネジメントという表現があって、恐らく企業は、先ほどCTOという表現がありましたけど、技術のトップというところでマネジメント人材。
ところが、この中で話をしている、いわゆるURAだとか、研究開発を一緒に支援してくれる人のことを研究開発マネジメント人材と表現をしているので、ここも企業が入ってきたときに定義をしていないと、ちょっとイメージ違う。最初にそう思ったとき、URAの存在というか役割を知らないとき結構びっくりしたのですけど、ワードとして研究開発マネジメント人材は、どちらかというとマネジメントを「支援する」という表現で使っているのだなと思いました。
企業側では実質的に研究開発を実際の研究ではないところでサポートする部門のことを、研究開発推進部門とか研究開発業務部門とか支援部とか表現して、マネジメント部門とかとはあまり、言ったとしてもそれはやはり業務をサポートするような表現としてあって、少しニュアンスが違うので、ここの中で議論をするのは何かと。ここも取組事例をやっていく中で、事例を見てくると類型化されると思うので、そういう形でやったほうがいいという、迫田さんの素直な印象は、私が最初に関わったときに思ったことずばりそのままです。一言、アカデミアと産業界で定義というか、イメージするものが違うので、どうかと言われたときに結構混乱する部分が出てくるのはあります。
【狩野主査】 大変重要な点をありがとうございました。1つ目の点については、優秀性の評価事項を提案していかないといけないと思うのです。その優秀性は一体何に関係するかというと、結局何をバリューとして生み出しているかということだと思うのですけれども、企業活動では、明らかに資金循環が生じないものについてはターゲットにしにくいと思います。けれども、大学というのは多分、資金循環を起こす場所では、今のところよかれあしかれなくて、代わりに何をつくっているのというと、今までの学者はみんな論文をつくっていて、それの評価が同業者から高いほどバリューなんです、という説明をしてきたと思うのですよね。
だけど、現状の社会では、それだけだと極めて厳しくなってきていて、ほかにどんなバリューをつくれるのですかということだと思うのです。それとともに、さきほどの優秀性の軸があるなということは、聞いていて思った次第です。
ほか、いかがでしょうか。和田先生。よかったらどうぞお願いいたします。
【和田主査代理】 ありがとうございます。時間がない中で恐縮です。
先ほどから伺っていまして、アカデミアと産業界の皆様方の意見、非常に勉強になりました。ありがとうございます。その点で2つ、少し追加コメントします。意識の点と、それから育成の点です。
意識の点、アカデミアの中で、僕は随分変わってきたような気がします。これまでのように研究支援、支援をするというだけのところから、先ほど少し追加しました経営の母体に入ってくるであるとか、あるいはもう研究そのものを進めていくリーダーである、あるいはその事業を進めていく主体者であるというふうに、随分変わってきていると思います。
実際、今年、幸いなことに若手の文部科学大臣表彰を、ここでは「技術職員」と言います、技術職員の方がもらいました。つまり、そういった主体性のところが評価されているかもと思います。
したがって、そろそろ研究支援人材の「支援」という言葉は、もう意識の点からも見直してもいいのではないかなと、個人的には思っています。意識の問題だと思います。
2つ目は育成の問題です。そうなると、主体性もある程度持ちながらやっていくためには、若い頃からの動機づけなり、モチベーションが必要だと思います。
実際、今年からURAのインターンシップを始めてみました。これは大学院の博士課程の学生たちです。お互いにこれはメリットがあるなと思いました。いろんな視点がお互いにできてくる。もちろん、産業界出身のURAの方もいらっしゃいますので、そこからの視点というものを交えながらやっているというところが、多様性の確保とともに育成になる。
それから、例えばこれも今年からやっていますが、大学院に国際知財管理を、法学のプログラムの中に入れ込みました。やはり国際知財とか、あるいは最近ではやはりインテグリティーの問題もあります。そういったところも交えながら育成をしていく、それにより意識を少し変えていく、こういった取組というのは今後必要なのではないかと感じています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。何か「支援」という言葉では主従関係っぽいところがちょっとあるのだけれども、これを脱していくほうがいいのではないか。ということとか、あるいは、それを踏まえて育成もしていかないといけない。というお話を伺ったと思います。ありがとうございました。
それでは、議題2に移らせていただきます。今のところ、お考えでまだ発言できていないことは、その後にまたいただければと思います。
議題の2つ目は、研究者育成あるいは確保に関する現状と課題等についてということでありまして、最初に滝沢さんから、資料2に基づいて御説明いただくということになっております。お願いいたします。
【滝沢人材政策課長補佐】 資料2-1を御覧いただければと思います。これ、実は前回も少し御説明させていただいたところなのですけれども、時間があまりなくて御議論の時間が十分に設けられなかったところですので、今日は御意見をなるべくいただくように、簡潔に御説明したいと思います。
全体の部分は前回説明したとおりですので、特に今日は3ポツ、5ページの見直しの方向性・取組の方針というところを重点に御意見をいただきたいと思います。
今回、我々としては、この研究者パート、大学・研究機関における優れた研究者の育成・確保を図っていくためには、研究者が安心して研究に専念できるような環境整備の推進が大事であると。
この観点から、大きく4つの項目を整理しています。1つが多様な研究費の充実・確保、2つ目が安定したポストの確保、3つ目が研究者の活躍の場・機会の拡大、5ページです。4つ目が研究環境の整備という、この4つの中身について、この後、具体的な取組例というのを書いているところでございます。本日は、まず、この項目及び内容についてまずは御意見をいただきたいというのが1つ目のお願い事項でございます。
5ページ下へ行きますと、まずは多様な研究費の充実・確保という観点でして、基本的な考えとしては、まず基盤的経費の確保をしっかり進めるということとともに、競争的研究費をはじめとする研究資金を一層充実・強化をしますと。その中で、研究資金の使途として、研究者の人件費等に対する支出の拡大を図るための取組を推進するということ。その一環として、研究制度自体の不断の改善・見直しも進めるというのが基本的な考えでございます。
具体的な取組例としましては、1番、2番と書いていまして、1番が研究費自体の質的・量的な充実・確保、2つ目が競争的研究費制度の改革で、特に人、人件費への投資の拡大というところを書いております。
特にこの中で今日御意見いただきたい点としては、1つ目が研究者たちの安定的な研究費の確保、具体的には、ここに書いてある基盤的経費や多様な競争的研究費制度、もしくは外部資金の獲得というところの取組の在り方について、御意見をいただきたいというところ。
また、2つ目の競争的研究費制度の改革のところ、この中で、やはり優秀な人材を育成するという観点から、研究費の確保の一環も含めて、直接経費や間接経費の双方で人件費に充てるような割合丸2の2つ目の丸のところですけども、割合を高める取組の工作、例えば制度改善や見直し等の在り方についても御意見いただきたいと思っております。
2つ目が、研究者の安定したポストの確保というところでして、こちらは、安心して研究活動に専念することができるという観点から、安定したポストの確保・拡大に向けた取組を推進したいというところで、1つ目が基盤的研究費による安定したポストの確保、2つ目が競争的研究費や外部資金等の活用による新たなポストの確保という2つに分けております。
こちらの両方の手段があると思うのですけれども、丸1の2つ目の丸のところですが、人事・給与マネジメント改革等もあるところでございますけども、このような改革等も念頭に置きながら、安定したポスト、基盤的経費や競争的研究費、これらの多様な財源の活用によって、どのようにポストを確保していくのかというところの在り方について、御意見いただきたいというところでございます。
続きまして、最後、7ページのところの(3)、上のほうからまず行きますけれども、これは活躍の場・機会の拡大というところで、研究者の育成の観点からすると、研究に加えて、国内外あるいはアカデミア、産業界等の幅広いネットワーク構築を通じた研究活動を積極的に展開するための取組を推進したいというふうに考えておりまして、大きく分けて、丸1番、国際的に活躍するという観点と、2つ目の産学官連携による研究者の育成・活躍促進の2つを書いております。
先に、まず論点としては、重要な科学技術・産業分野における人材育成の確保の観点から、大学等と企業との組織的な連携・協力や共同研究の拡大に向けた取組の充実・強化というものが重要でないかと考えております。その手段として、例えばクロスアポイントメント制度の活用などの在り方、これも重要ではないかと考えておりまして、ここも御意見いただきたいところでございます。
あとは、上のほうの丸1番、国際の観点に戻りまして、我が国の優秀な研究者の海外派遣や、海外の優秀な研究者の招聘・獲得に向けた取組の在り方、こちらについても御意見いただければと思っております。
下のところ、組織・機関における研究環境の整備というところでございまして、こちらはもう先ほどの流れですけれども、研究活動に研究者が専念するという観点から、大学・研究機関等における組織的な研究環境の改善に向けた取組の推進が重要ではないかと考えております。
その中で、具体的にどういう手段が考えられるか、幾つか例を挙げておりますけれども、例えば研究者の処遇・待遇の改善、研究マネジメント人材等の整備の体制、あとは研究設備や機器の共用という観点など、幾つかあると思いますけれども、この辺についても御意見をいただければと思っております。
というところで、今、少し具体的な例も幾つか挙げさせていただきましたけども、こういう観点について、委員の皆様が所属する機関などにおける取組事例や、こうした事例を横展開するための方策というところについても御意見をいただければありがたく思います。よろしくお願いいたします。
【狩野主査】 滝沢さん、簡潔にありがとうございました。
では、この内容について、前回も議論を深めるのに、大学の経営に関わっている皆様方に御意見をお願いしたところ、より深くお話しいただけそうな雰囲気がしましたので、お願いに上がったところでございまして、最初に名古屋大学の杉山先生から、お取組を御紹介いただければと思います。
【杉山委員】 今の話は、もちろん腑に落ちる話だったのですけれども、先立つものがないというのが大学の全ての元凶でありまして、その中で何とか資金を増やそうという試みだというのは理解したところですけれども、ない中でどんなことをやっているかという人材育成について、少し資料を持ってきましたので見ていただければと思います。
名古屋若手研究者支援ということで、これはもう10年以上前からやっているのですけれども、研究力強化促進事業からスタートして、若手に新分野をつくらせるということで、これのよいところが、自分自身の雇用費もそこで持てるようにしている。3年限定なのですけれども、そうすると特任教員が自分自身の研究費をそこで持って、自分の研究目的で研究できるようになると。特任教員はやはり目的を決められて研究せざるを得ないということが多いので、そういう自由な研究ができる。
しかも、必ず組む相手が異分野の人たちということで、すごく面白い、楽しいことがいろいろ起きていて、真ん中にあるのはアストロバイオロジーですばらしい成果が出たとか、太陽活動と考古学の研究みたいなのも非常に大きな成果が出ているところです。こういう、若手同士が組むというところにお金を使っている。
それから、その次は、創発研究支援事業でPIを育てていくという中で、大学として創発は非常に大きなお金を頂いているのですけれども、それだけでは足りないので、研究スペースを優先的に渡す。これは絶対必要です。それから、人件費という意味では、これも創発も同じなのですが、自分の研究費は出せるのですけれども、特任教員なんかで任期が切れてしまうと自分自身が雇えなくなるので、その雇用費は大学が出すという約束にしています。ですので、7年間は保障するという形でやっている。
また、創発の場ということで、創発研究者同士が集う、そこで新しいものを出す。先ほどの、B-3と我々が呼んでいる若手同士のユニットも、そういうところからも生まれてきているということでの相乗効果があります。
また、同じように、右側にYLCプログラムというのがあるのですけれども、これは名古屋大学が15年ぐらい前からやっているのですけれども、特任教員は5年任期なのですけれども、特任教員を雇うことで、その人たちの5年間の研究専念時間を作り出す。そしてその間に必ず、海外に行ったことのない人は行くというようなことを義務づけてやっています。女性枠とか外国人枠というのをあえてつくる、また、文系の人たちも積極的に採るということで、これまで大変多くの人たちが研究者として羽ばたいています。
その後、次のページぐらいに趣旨の説明とか、修了者の現在みたいなものの資料があるのですけれども、修了者の現在というのを見ると、やはり大学の教授とか准教授に既になっている人たち、特任助教で5年間チャンスを与えると、しっかり羽ばたくということが、ここでしっかり見えてきます。
特に文系が、実は、こことは少し違うのかもしれないけど、文系はこういうキャリアがないのですよ。特任教員とかポスドクとかいうキャリアがなくて、とにかく非常勤講師で生き抜け、みたいなむちゃくちゃなことになっているので、こういうポジションがあると、すごくそれをうまく使って、大きな大学のしっかりした研究職の准教授に就くという例がすごく多くなっています。
ということで、こういう若手に積極的にお金を使っていくというのは大学としても非常によいのですけれども、一つ問題は、この人たちを自分たちのところで雇えますかというところです。これまでの実績で名古屋大学在職者、26名ですけれども、いい人が抜かれてしまうこともあって、最近、この5年任期が終わったところで、優秀な人で部局がサポートしてくれれば、5年間、テニュアトラックとしてテニュアになれる道をつくりました。だから、こういう任期なしから任期ありのものに持っていくと。
お金については、5年分は大学がサポートする。その後は部局が持っている准教授ポストとか、そういうポストに移していただくということで、任期つきのポジションから任期なしのポジションへの移行というのを積極的にやっています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。やはりプロジェクトで雇用されていると、自分を主語にできないというところに手当てをしていただいたり、あるいは雇用費のこと、あるいは専念期間を設けて、その間に海外に行けるようにする、あるいはそれを文系の方々に広げるといった、大変いろんな取組をなさっているということを、今、教えていただきました。ありがとうございます。
では、続いて波多野先生にお願いしようとしているのですが、おられますか。
【波多野委員】
今後、何が必要かということを中心に、政策につなげていただければということを中心にお話ししたいと思います。
まず、本学ですけれども、弊社というか、「弊社」って最近申し上げているのですけど、支援の施策は、博士、若手研究、PIまで20以上もあります。
特に若手研究者に対しては、医歯学系ではクリニシャン・サイエンティストの育成、理工系では独創的な萌芽的な研究ができる人を人材育成するなど、特徴的な支援はしてきました。統合を機会に、これらをパッケージにして、効果的に支援を拡充したいというふうに考えています。
特に、部局や分野を超えた異分野融合の推進にフォーカスしています。統合前から、医歯学系と理工系でのジョイントリサーチを、若手を中心にファンディングしてきました。
既に公表していますが、ビジョン駆動型の研究・教育組織、ディシプリンの垣根を超えて、横断型の研究教育組織に刷新しようとしていまして、基礎から応用までの幅広い研究者を分野横断で共創します。
しかしやはり課題は資金と、リードする支援のスタッフの不足です。特に研究費の充実のための安定財源ですが、運営交付金のベースラインの増額というのは皆さんおっしゃっているとおり必要です。さらに間接費の割合を増やして、人への投資を促進していただくのが重要と考えています。間接費の用途の自由度を高めて、それを研究支援人材、設備維持、若手支援に活用していくことです。
欧米、特に英国や米国の研究資金制度は、間接費の配分モデルが、オーバーヘッドが日本と大きく異なりますので、大学の経営的な自立性と持続可能性を考える構造になっているいます。研究支援体制の充実に使える柔軟な使途のルールが、今、必須だというふうに思います。特に間接費だけでも年度越えを可能にすると、人件費に対応できる自由度が増すでしょう。
人への投資が、この委員会の中心的な議題であると思いますが、競争的研究資金で、やはりまだいろいろ制約、例えばPI以外の研究分担者の人件費に使えないなどがありますので、研究資金を人件費に使えるようにすること、さらに、研究資金の総額のうち、何割はこうした人件費に支出しなければならないといった、例えば制約をかけてみるとか、これはすごくハレーションを起こすと思いますが、が有効だと思います。
特にシニアのPIは、まだこういう人件費に研究費を使うというところには慣れていないというか、人件費は増やしてはいけないというように言われてきましたので、理解が無い方もいらっしゃると察します。が今は、物よりも人への投資が、今後研究力をアップするためにも重要だと思っていますので、制約をつけて意識改革をしていくことも必要と思います。
とにかく人件費だけでも、先ほど申し上げたように年度予算ではなくて、人件費だけでも基金化するなどのことが有効かなというふうに思います。
バイアウト制度の拡充もさらに必要でして、弊社で言いますと、理工系の研究者の活用も進んできており、例えば研究資金で講義のTAを雇うとか、講義の専任講師を雇うということもバイアウトとして始めています。さらにバイアウト拡充すれば、クロスアポイントメントが増えて、産業界や国研との人材の流動性を加速させることができると思います。
あとは、競争的資金の構造改革として、若手とかスタートアップの審査とか、その辺をライト版の科研費とか萌芽的研究枠をどんどん増やしていくとか、学際的な研究の支援がさらに必要です。
また、寄附控除を拡充しないと、大学への民間寄附というのが促進できないので、その辺も本質的な日本の課題だというふうに思っています。
さらに、国際共同研究、ホライゾンとかNSFなど、継続的な支援が必要だというふうに考えます。
安定したポストの確保は、既に杉山先生からもお話があったと思いますが、やはりテニュア制度をもっと可視化による実質化する必要があると思います。今後増えるシニア人材の知の活用も含めて、人事改革制度を進めていく必要があると思います。
江端委員がTCカレッジや技術者支援を、URAについて既に皆さんの議論が進んでいますが、科学大では分野を超えたVision Initiativeを実行し、さらにグローバルなイノベーションに発展するためのエコシステムの構築は、「エコシステムビルダー」の育成、未来洞察的なセンスがある人材育成も必要と考えています。
スーパーURAにも相当するかと、、。高度な研究マネジメント人材が重要と考えています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。少なくとも、私が研究者の経験を通じると言いたくなったことは、大体カバーしていただいている内容だったなと思いました。「御社」のレンズを通してお伝えいただきました。
先ほど梶原先生がおっしゃった「研究者はコストである」という表現と、いかにこれをうまく組み合わせて、お互いが納得いくようなところへ持っていくかというのが、極めて大きな問いだなと思いながらお伺いしたところでございました。ありがとうございます。
続いて、和田先生にもお願いしておりますので、金沢大学の状況を踏まえまして、お話しいただければと思います。お願いいたします。
【和田主査代理】 ありがとうございます。資料を共有していただけますでしょうか。
これを共有する前に、先ほど一つ言い忘れました。せっかく追加発言したのに大変失礼しました。
この2つのワーキングで、いろんな取組、グッドプラクティスがあるのではないかと思います。今後それらが、ガイドラインもしくは政策パッケージなどに落とし込まれていくと思います。いろんな各施設でのグッドプラクティスを入れられると、皆さん共有できていいのではないかなと思いました。もちろん、これはアカデミアだけではなく、産業界はじめ様々な観点からいただけるとありがたいなと思います。
それでは、1枚だけスライドを用意いたしました。金沢大学新学術創成研究機構というものについて、少し説明したいと思います。
これは2015年の4月に設置しました。この前、2007年から前身の組織があります。それがフロンティアサイエンス機構というものです。
肝は、若手研究者をテニュアトラックとして独立させていくということです。そこに研究費もつけていくということです。さらに国際循環もつけていく。先ほど杉山先生がお話しいただいた内容と、非常に一致するところが多いのではないかというふうに思います。
現在、このフロンティアサイエンス機構で育ちました8人の教員、それから、ここの新学術創成研究機構、16ユニットがあり16の若手PIポストがあります。合計でこれまでに現在29名の先生方が、ここから育っていっています。
実際、この2007年のフロンティアサイエンス機構で育った1人、既に独立した若手PIとなった方が、WPIの今、機構長、拠点長をしているということにもつながってきています。ですので、やはり時間をかけて、ゆっくりとポジションをつけて育てていくという視点が重要なのだと思います。
このスライドを御覧いただきますと、16ポストの若手PIを大学でテニュアトラックとして用意します。5年間の任期です。そこでテニュアに乗せるというものです。
左側に書いてございますように、ここではやはり海外と頭脳循環をしていくということが非常に大きなポイントになってきています。
実際この中で、多くの方は大学に残ってくれています。一部はやはり、先ほど杉山先生も引き抜かれるという話がございましたが、どうしてもそこは出てまいります。いずれにしても立派な組織で、そのような立ち位置でで、現在活躍をしていただいているというものです。
5年という任期が正しいかどうか、これは御議論いただければと思います、5年間ぐらいはじっくりと腰を据えて、自分で独立した視点でやっていただく、これが一つよい点です。
さらに、ここは分野を融合します。この分野融合というのは結構重要だと思っています。この中で話をする中で、今まで気づかなかったことを認識し、この人たちは基本的に仲よくなります。ですので、こういった孵卵器で分野を融合すること、それから自分の研究を進める中でも、こういった揺り籠的な組織というのは有効に働いていたと感じています。
以上です。ありがとうございます。
【狩野主査】 また簡潔にありがとうございました。おっしゃるとおりで、若手を主役にして、また異分野融合を高めていくということで、あるいはそれをフラットにしてやっていくということが大事であるというお話をいただきました。
下線を引きそびれていたのですけれども、1個目のワーキング・グループでも実は同じような話が出ておりまして、場をつくることも大事だという話が出ておりました。
今のお話、3ついただきましたけれども、これらを踏まえて、それでは、皆様方から御発言をお願いしたいと思います。先ほど、ワーキング・グループを掛け持ちしておられる先生方には触れそびれましたので、もしよろしければ、「貴社ますます御清栄」の江端先生、いかがでしょうか。
【江端委員】 御指名いただきありがとうございます。では、弊社の話をさせていただきます。
先ほど、弊社理事の波多野委員から御説明がありましたが、弊社では、人事制度改革、キャリアパスの多様化についてかなり深く議論しており、試行錯誤しております。
本日、資料が用意できておりませんが、こちらの内容につきましては、昨年の11月に科学技術・学術審議会の学術分科会、第93回で準備した資料がありますので、よろしければまたそちらを御覧いただければと思います。もし参考になるようであれば、本委員会資料として改めてアップしていただければと思います。
この手の議論の中で私が重要だと思うのは、機関全体のスペースマネジメントです。研究スペースの確保というのは、これまでの様々な政策の中で推奨されて、各大学、取組を進められているかと思いますが、大学全体のスペースマネジメントがどこまで実施されているのかについては、非常に大きな課題だと思います、皆さん、どこにどれだけのスペースがあるのかなんて、各大学に聞いたところ、多分誰も把握していないのではないかと思います。これは言い過ぎですかね。
【杉山委員】 そんなことはない。さすがに把握はしています。
【江端委員】 ありがとうございます。さすがに把握はしているとのことです。
一方で、その部屋が誰のものであるのかは分かっても、その先生が本当に活用しているのかというのは、一つ一つ細かくは恐らく見られていない。
例えば、設備・機器がもう使い古されたものでも、これまだ十分使えるよねというようなものが研究室に置いてあるというような状況は大学の中にありますので、そういったものも含めた研究基盤マネジメントをしっかりやっていくことにより、研究者にとってのしっかりとした研究スペースをさらに捻出することにつながります。そういった意味で、今回の政策においても、スペースマネジメントの視点はぜひ検討の中に入れていただければと思っております。
もう一点、研究者の皆さん、特に若手研究者の方々と議論をすることがよくあるのですが、例えば間接経費を頂いても、それのための報告を一個一個やらなければいけない。その時に、運営費交付金の場合はこういう形、何とかファンディングエージェンシーの場合はこういう形と、それぞれフォーマットが違ったりすることがしばしばあります。研究者が各々の事務作業を実施する際に、いちいちその記載のルールが違ったり基準が違ったりすると、そこにかなりのコストが発生してしまいます。この点を踏まえて、様々な制度を変えていただくのはありがたいですし、様々なファンディングエージェンシーから予算を頂けるのは大変ありがたいのですが、そのコストを軽減するためのフォーマットの統一等はやはり重要だと思っています。
もう少し突っ込んで言うと、大学は経営しなければならないという視点で捉えていったときに、管理会計的な視点というのはかなり重要です。
各々の支出がどういった財源にひもづいているのか、大学内での会計の見える化をある程度実施できれば、クリアになるのではないかと考えます。すごく極端なことを言うと、運営費交付金に関しては大学が国との連携の中で実施すべき事業等になるので、しっかりとした報告をし、説明責任を果たさなければいけない。一方で、外部資金として各大学で得られた新たな収入に関しては、大学の経営努力の中でやってきたので、そういったことに関する詳細な報告は簡略化していただく等、研究者の負担をそれぞれ減らしていくような、そういった観点の対応をしていただけると研究者の研究時間の確保に直接的につながると思っています。
最後に、先ほどTCカレッジというワードを出していただけきましたが、やはり技術者にしてもURAにしても、大学にいる教職員、そういった大学構成員キャリアパスを明確にするためには、それなりの人数がそろっていないといけない。
その人数がそろった中で人々が流動化していくというイメージをきちんとつくらなければならないので、そういった場合には、人材難と今言われている部分をどうクリアするかが大きな課題となります。各大学にいる構成員の適材適所な戦略的配置を促進できるような、職種間の異動に関する具体的なイメージを持っていく、人事制度の改革が必要なのではないかと思っています。
そういった意味で弊社では、全教職員が活躍できるフリーでフラットな人事制度改革をこれからも積極的に推進していこうとしておりますので、ぜひその点に関しましても、多くの有識者の皆さんと意見交換しながら、制度として、さらに具体的に良いものにしていきたいと考えております。
私からは以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。同じ、大学におけるマネジメントの視点から、稲垣先生にお願いしようと思っていたら手を挙げていただいたので、お願いしてよろしいでしょうか。
【稲垣委員】 ありがとうございます。マネジメントの視点なのかどうか分からないのですが、安定したポストの確保はとても大事なことだと思うのですけれども、先生が1人で何ができるかというと、多分、今の時代は、分野によると思いますが、なかなか1人ではできないことが多いと思うので、ポストの確保とプラスアルファ、必ず1人分の人件費とか、初回はともかくですけども、そういうセットで物事を考えていかないと、幾ら若い先生を増やしたところで、1人しかも5年間で成果を出せと言われても、ラボの立ち上げに1年2年かかり、そこからデータを出して論文にして成果というのはなかなか厳しいと思いますので、単に若手研究者だけではなくて、その周辺の部分も含めて考えていくことが大事なんだろうと思います。
その一つとして、研究開発マネジメント人材だったり技術職員がいると思うのですけれども、一般的なインフラ的な位置づけの要素が強いと思いますので、その先生の研究と密接にリンクした形での人材の確保というのも大事なんじゃないかなというふうに思います。
あと、テニュアトラックを経てテニュアになった場合は、当然教育にも積極的に関与されることになると思いますし、テニュアトラックの期間でも恐らく学生指導に関与することになると思いますので、研究の部分だけではなくて、教育者としての資質の向上につながるようなことに関しても、フォローするような考え方を持って議論されたらいいのかなというふうに思って聞いておりました。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。私も自分の経験からいろいろ今おっしゃったようなことは極めてよく分かるところで、ありがとうございました。
教育業務と研究業務をどういうふうに割っていくかというようなところもいろいろ悩みがあるところです。川越先生、いかがでしょうか。
【川越委員】 ありがとうございます。事例紹介もありがとうございました。
この紹介の中でもありましたけど、若手研究者にしっかり腰を据えて研究できる環境というのを整えて、場合によっては大学雇用にしてしっかり育て上げていくという、そういった長期的な制度というのは、非常に効果的な取組だなと感じました。
そういった中で、今の議論にもありましたが、研究にプラス、幾ら腰を据えて研究できたとしても、いろいろな指導の部分だったり、大学のいろいろな手続的なところだったりというのがあると思います。そういった研究に関わる周辺領域というところでどれくらい貢献しているか、やっているかというところも評価できるような評価指標であったり、先ほど初等中等教育に関わる教員のインセンティブというのもありましたけれども、それが一つインセンティブにもなるような、インセンティブデザインがすごく大事かなというふうに感じながら、お話を伺いました。
研究者の安定したポストの確保というところで、基盤的経費と競争的研究費、外部資金等とありましたけれども、外部資金で新たなポストを確保すると、基本的にはどうしても時限がついてしまっているというところで、安定的なポストとなかなか結びつきにくいところがあるなと思います。
こちらも議論が出たところですけれども、人材の任期がある中での流動性というものも大事かなとは思いますが、基盤的な研究費における人件費の割合を高めていくようなものが制度に盛り込めるような形だと、より安定したポストというところと、研究者の育成というところにもつながるかなと感じました。
前半のところで行くと、2点あります。
まず、技術者について、技術職員とか技術士というような方々がどこでどのように活躍しているかというところや、必要なスキルということに関しては、もっとよく見えるようにする必要があるなと感じます。
大学の中でも研究室によって、技術職員の方の研究への関わり方というのはかなり違っていて、ゆっくり研究をするように言われている技術職員の方もいれば、どちらかというとマネジメントに近いところを任されている方もいるというところなので、それを見る学生たちも、技術職員のイメージというのが皆さん異なっているなと感じます。
そうすると、将来、学生がキャリアを考える際に、技術職員というキャリアをどう考えるかというところにもつながっていくので、どういった方がどこで活躍しているかというのは、もっと事例を出していただけるといいかなと思います。
あと、研究開発マネジメント人材、URAは、次世代育成の高大接続をやる際にも、活躍しているURLの方もたくさんいらっしゃるというところを見るのですけれども、それが事務職員なのか教員なのかによっても、それを周りで見ている学生さんたちがどう捉えるかというところも違ったりするので、どういった立場であったらどのような関わり方なのか、それがサポート的なのか、より自分自身で推し進めるような、本当にマネジメントのところにいらっしゃる方なのかというところを、ぜひキャリアパスも含めて具体的に見えるようにしていただけるといいかなと感じました。
ありがとうございます。以上です。
【狩野主査】 ありがとうございます。見える化に関しては、議論が巡りますけど、見ようとしている人には見えるのだけれども、見ようとは思っていない人にどう見えるかというのはなかなか難しいところです。またその話も、もし時間があれば後でお願いしたいと思います。ありがとうございます。
もう1人、産業界を見ておられる水口先生に振ってみようかと思いましたが、いかがでしょうか。
【水口委員】 ありがとうございます。先生方の事例の御紹介をお聞きし、ありたい未来や、こういうふうにしていきたいねというところは共通しているのかなと感じました。一方で、先立つ資金やその財源をどうするかが共通の課題にありますので、それを解決できるような未来に向かってどういうふうに人材育成をしていくかが重要であると感じております。
大学において先端的な研究がなされていますが、まだまだ眠っている成果が多くあると思います。こういった研究成果を社会に実装して、市場からお金を集めて、さらなる研究開発に投資していくというようなサイクルを実現させていき、研究開発力がどんどん増してくるような形になってくるとよいと考えています。そういった理想的なサイクルを回していくためにはどうすればいいかですが、研究成果を社会に実装していくためには、まずはアカデミアにおいてURAの方の力で、市場につながっていくような研究開発をマネジメントしていき、そこから起業家の人材に移り、それを社会に実装していくという、そういったリレーがうまく結びつくような人材育成ができるといいなと感じております。博士人材の育成系においては、博士としての専門性に値する基盤は絶対必要だと思いますが、それにプラスアルファが設定できるとよいと考えており、例えばURAに求められるような知財関連や市場調査、研究開発マネジメント等の能力育成につながる教育も並行して行う形もあるかと思います。また、起業家人材につながるような、博士の研究における専門性に加え、経営が学べるコース等、より細分化してもいいのではないかと思います。なお、評価制度と育成系はセットで考えるべきかなと思いますので、例えば、DCであれば研究の業績を中心とし、SPRINGであれば、起業的な要素も評価に含まれて来る等奨励金は一律で幾らではなく、評価制度と紐づき、適切に評価し、育成の方向性を示せるとよいだろう、思っております。
人材育成を通じ、博士号を取得した人材がURAであったり起業家であったり、そこから科学技術の成果が社会に実装され、お金が回っていくというような形ができるように、そういった未来を目指しながら人材育成を設計できるといいなと思っております。
【狩野主査】 ありがとうございました。おっしゃるとおりで、さすがCFOをされているだけあって、資金循環に関する視点をいただきました。なかなか、情報と資金と循環しにくい分担状況にもあるなというのが現状ですので、これをどうやって、より、していくかというのはそのとおりだなと思いました。
桝先生、さっき私が勝手に初めのほうで振っちゃったので、言いたいことが残っていたら。情報の循環と資金の循環というのを。
【桝委員】 一番苦手分野なんですけど。研究者育成に関する現状課題に関してなんのですけれども、単純に研究者の事務負担軽減といいますか、環境整備というところで言いますと、やっぱり事務負担軽減って、実は地味かもしれませんが非常に大きいのではないかなということを、私自身、企業から大学に移って、こんなに忙しいのかというか、こんなに事務が多いのだということを感じました。
こ本当に弊社だけかもしれないので恥ずかしい話になるかも、経理とか事務のDXってどれぐらい進んでいらっしゃるのかなと、ちょっと質問としてしたくて。
といいますのも、教育のDXがコロナ禍もあって急激に進んだなと感じる一方で、結構、学内経理システムのDXって、弊社は大変なことになっておりまして、判子を押しに大学に行ったりすることがあったりするのですけれども、実はそういうところって、国公立大学は結構そこは強力に推し進めるかもしれませんけれども、それこそ私立大学とかって意外と外からのプッシュがないと進まないのかな、なんていうことを思ったりもしていて、地味なところで申し訳ないのですけれども、結構大きいなと思っているので、例えば文科省さんが、お金は出さないまでも、もっと研究者の事務的な負担を減らすように、各大学にちょっとハッパをかけるじゃないですけども、そういう部分って実は意外と実効性が強いんじゃないかなということを思いながら聞いておりました。
すみません、あまり分かっていないで言ってしまっているので申し訳ないのですけれども。
【狩野主査】 いえいえ、「御社」の事情を教えていただいてありがとうございました。極めて国立大学も課題であるというふうに、私の現在の経験では思っております。
【桝委員】 そういうものなのですか。
【杉山委員】 いいですか。財務については、我々、何年か前に財務会計システムとしてシステム化して、一応全部オンラインで処理できるようにはしています。
ただ、これがまた変な話で、結局、事務のところで一旦コピーを取って残しておくとか、必ずやるのですよね。この辺がなかなか改善できないところです。
あともう一つ、今課題だなと思っているのはAIの使い方で、セキュリティーみたいな問題もあって、一旦進めたところをちょっと止めていたりもするのですけれども、これはもう絶対的に必要なことだと思っていますので、そこをどう進めるかが次の課題です。
【狩野主査】 いろいろ今、取組が頑張って進んでいるところで、他方で、国立大学ではやはり責任体制という考え方が、国の機関の一部であったときの気持ちを引っ張っている人も結構おられますので、この辺をどういうふうにより軽減化できるかというのは、少し課題だなと思うときもございます。
和田先生、何遍も発言いただいておりますけど、加えて何かございましたら。
【和田主査代理】 恐れ入ります。事務のDXは、私も全く異論ありません。重要な点だと思っています。
それから、大学が今後、あるいはいろんなところで連携を深めていく、アカデミアの観点だけではないですが、ことアカデミアに関して言っても、事務の方々の負担をいかに軽減していくかがすごく大きいのだと思います。
事務の方々の、それこそ数は変わらない、あるいは減る中で、その機能をどうやって上げていただくのか。例えば大学院に進学するということも一つだと思います。それからDXをするということも必要なのだろうと思います。事務の方々なくして、成り立たないと思っています。
あとは、研究費の件も随分議論が出たと思います。確かに合算について、間接経費などは大分できるようになってきています。ところが、直接経費を含めて人件費の点は、私もとても大事だと思います。さらに、繰越し制度の自由度が上がると、長期的な展望で研究費が使っていけることもありがたいです。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。憲法で決まっていると言うところの年度予算の考え方が、基金化でどれぐらい抜けていけるということが関係するのだと思います。ぜひ御努力をお願いしたいと思っているところでございます。
ほかはいかがでしょうか。梶原先生、お願いします。
【梶原委員】 DXは本当に思っていることでして、先ほど江端委員が管理会計システムの話を出していましたけれども、やっぱり人材不足の日本において、何を今までと同じやり方をしているのですかというところがあって、そういう中で間接経費の上乗せだみたいな話をされても、企業としてしっかり説明してもらえる環境がない中で、3割です4割です、どうしてですか、いやガイドラインで決まっている、のではちょっと。
そんな説明だと出したくても出せませんよという企業は明らかにいますので、そこは、管理会計システムで実際こうなっています、大体企業努力といいましょうか、機関の努力によって、実はもっと益を出せるようになるかもしれないとか、そこまでかからないかもしれないということを一律にやってしまうようなやり方をしているのはやっぱりまずくて、DXって割と、研究開発の話をしていると、研究そのものへのDX化みたいな話になるのですけれども、実は、皆さん事務のDXが、マネジメントシステムはまさに経営ですよね。経営マネジメントシステムのダッシュボードみたいな形で見える化して、誰でも、その機関の経営層というか執行部は、何が問題になって、今どうなっているのか、だからここはうまくいくとか、ここはもっと配分しようだとかという判断が迅速にできるように、そこの取組をどの程度今までやってきましたか、これからもっとやりましょうと、そういうことはつくづく思って聞いておりました。
全体最適となるような、全学共通のそういうシステムを構築できるように。とても財源が必要になるという話は聞いているのですけれども、どこかでそれを作ったら、横展開をしてほかのところにも使えるようにするだとか、何かそういうような、少し見方を変えたシステム改革というのを、DX、AIを進めて事務を軽減化するというのは本当に重要な要素だと思いますので、よろしくお願いします。
【狩野主査】 それとともに、どんなバリューが生み出せたかというのを表現していく必要があるなと。
【梶原委員】 でも、そこで実際にこういう費用がかかっているので、間接費としてこれだけ欲しいのですということを説明してくれるケースが、必ずしも全てになっていないように私には聞こえてきているところがあるので、ちゃんとそこの説明責任にもなりますから、管理会計のシステムってとても重要です、ということを申し上げたいと思います。
【杉山委員】 すみません、今の件に関係しているんですけれども、我々、企業と共同研究をやるときに、まさに間接経費は積み上げの根拠を問われるということが結構あって、それがなぜ3割なのかというところが説明し切れないというようなことも確かにあります。それを5割に増やそうといったときは、やっぱりその根拠がしっかり示せないと増やせない。
一方で、知の価値化ということで、教員の人件費等を直接経費で積むことに関して、結構、企業の側は、それについては賛成してくれるということで、そこの考えを変えていかなければいけないのかなというふうに、共同研究のところでは思います。
ただ、大学の側からすると、間接という何でも使えるお金という形で何か入ってこないと、なかなか経営が回っていかないというところも別にあるので、先生の直接経費で払われた人件費分の一部を、何らかの形で、こちらで払っている人件費を止めるようなことができれば、減らすようなことができればうまくいくと。
ただ、企業の側は、もちろん先生にこれはインセンティブとしてあげてくださいと言ってきているので、大学が得になるような話はなかなかうんと言ってくれないという問題はあります。
ただ、全体として、要するにようやく分かってきたのですけれども、この委員会狙いとしては、デュアルサポートといったときの運営費交付金のほうがどうしても増えない部分を、間接経費という、ある意味運営費交付金の代わりになるような、目的を定めないものを何とか増やしていきたいというのが考えていることだということは分かってきたのですけれども、そこを何とか増やしていく、ちゃんと理論立てて、払う側も間接経費としてしっかり認められるような形で、大学の経営にどういうふうにそれがプラスになるのか、それが研究にどう結びつくのかというところをしっかり説明しなきゃいけないというのがさっきの話ですよね。
先ほどのダッシュボードという話は、e-CSTIとかはまさにそういう目的でつくられているのかなと思いますので、いろんなところで、部局長等も、我々もある程度使うようにはなってきています。
最後に、競争的経費の話で、直接のほうで、科研費などが、採択率がまだ20%30%だと、外れるということがすごく普通なわけです。外れたときにどうするかというのが研究者にとって一番恐怖になっているというところ。
ただ、これはばらまけばいいというものでもないので、ここが、大学がある程度セーフティーネットを用意するというようなところも含めて、考えていかなきゃいけないなと思っています。
【狩野主査】 加えますと、裁量の余地のあるお金、もちろん報告義務はあるにしても裁量の余地のあるお金というものの活用を考えていただくと、より、大学がいろいろと機動的に考えていけるようになるという面もあるかなと思います。固定費が結構な部分を今、占めておりますので。
宮崎先生に、前のワーキング・グループで御披露いただきました、中で継続採用にしているのだけども、その結果として職種間の移動をしなきゃいけないという制度をされた結果として、経験されていることを少し御共有いただけるといいかなと思ったのですが、いかがでしょうか。
【宮崎委員】 パーマネント化したときの職種移動ですか。 産総研は、現時点ではほぼ全てがパーマネント採用なので、あまり現実的ではないのですが、数年前までテニュアトラック制を敷いていましたので、その中でキャリアパス専従をかけるというケースがありますということで、研究者としてそのまま継続していくことだけが、その者の幸せにつながらないかもしれないという考え方で、それは、多様なタレントをきちんと生かすということをしっかり見据えると、研究者として入ってきたけれども、テニュアを獲得してパーマネント化するときに、例えばあなたのタレントだとURAみたいな連携コミュニケーターとしての能力が高いですと。これは研究をしていないとできないという、まさに研究マネジメントってそういうところがあると思います。
そういうパスを提示するとか、これは我々「キャリアパスゲート」と言っていますけど、45歳ぐらいで一度、パーマネントであってもキャリアゲートというものを設けていて、研究者で続けると研究成果を上げ続けなくてはいけないとか、より高いものを求められていくというところよりは、違う評価基準で、例えば知財のほうに行くことによってその人のタレントが行かせるとか、どんどんどんどんキャリアパスを多様化させていくことをしています。
それは、大学と違って、研究者として雇っても、若い頃はとてもよく働くのだけれども、国立の研究機関では、研究者として長い間細く長くやれればいいや、みたいな人たちがあるポピュレーションでいたときに、そういうところをきちんとパフォーマンスを充実してあげていく、ヒューマンリソースのポートフォリオをきっちり設定していくというところが重要かと思っておりますので、そのことによって、その人の違う人生が開けているというのは現実にたくさんあります。
私が今所管している広報系のところでも、研究者だからできる広報活動ってしっかりあるので、やはりそういうものが、よりクオリティーの高い外部へのアピールになっていくということにもつながりますので、そういうケースが産総研では実際に行われているけれども、なかなか大学では難しそうだというのは見えているかなと思っています。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。石村理事長が産業界から行かれた結果として起きたことだなと思いながら一回伺ったことがありましたので、御共有いただきました。
追加としていただける場合には、この会議の終了後1週間をめどにしまして、事務局宛てにメールでお知らせいただければ反映させていただくということになっております。どうぞよろしくお願いいたします。
では、一言ずつ、もし思いつかれたらいただければと思うのですけれども。今日は井上局長からお願いしてよろしいでしょうか。
【井上科学技術・学術政策局長】 今日もありがとうございました。様々は御意見いただきました。あまりにも多岐にわたり過ぎていましたけれども、前も申しましたけれども、極めて真面目なので、皆様の御意見をなるべく生かして施策につなげていきたいと思っておりますが、やはり大学のマネジメントの問題がいろいろな観点でありましたけれども、やはり大学はものすごく多様でして、研究のことを考えるにしても、やはり研究大学として生きていくという大学もあれば、むしろ研究を生かしながら地元で地域の社会課題を解決するような大学もあるし、あるいは、地域ともある程度密着して人材育成にものすごく力を入れている大学とか、もうそれぞれに恐らくケースが異なってきます。
そういうものに合わせて、やはり大学の中でのマネジメントも工夫していただかなければいけないし、そこを文科省がある程度背中を押すみたいなことで進むものがあれば、これは喜んで取り組んでいかなければいけないと思います。
そういったものもある中で、ベーシック、やはり全て統一的に整備していかなければいけないところもあるなと感じましたので、今日、様々に御意見いただきましたけれども、我々なりにどう施策化していくのか、改めてきちんと整理して考えていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
【狩野主査】 いつも真面目なコメントをいただきましてありがとうございます。
では、もし福井審議官、ございましたら。
【福井大臣官房審議官】 確かにいろんな議論がございましたけれども、本日は異分野融合がすごく重要だということと、あと、事務のルールがお金の出どころによって違うので統一しなきゃというところは、非常に取り組めるところかなというふうに思いました。
あと、DX化の話とかマネジメントの効率化の話なのですけれども、私も出向した経験でいうと、結構、忖度が積もり積もっていたりとか、あとはものすごくリスクヘッジを考えると事務が増えていくとか、そういったところは担当者と膝詰めで、何で要るのかというのをやって、それで納得していただければ、たくさんの事務が、本当にこういうリスクがあるのかもしれないけれども、そこは、リスクと作業をてんびんにかけると、そこまでやらなくてもいいのではないですか、みたいなのをやっていったというのを思い起こしました。何かそんなことが必要なのではないかなというふうに思います。
以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。責任ある立場の方がそのような工夫のある言い方をしてくださいますと、みんな勇気が出るかと思います。ありがとうございます。
では続いて、先﨑総括官、もしよかったら。
【先﨑科学技術・学術総括官】
本当に、今回も大変有意義な議論をありがとうございました。ここ数年来、人材に関する議論はすごく高まりを見せているなというふうに思います。多分おかげさまをもちましてということなのだろうと思うのですけれども、URAとかテクニシャンに関する大学の取組も進み始めているなという気がいたします。いろいろなお話が耳に入ってくるようになってきまして、複数の大学で、テクニシャン、URAの職階を上げましたと。要するに、ゴールを上げましたと。部長級に上げましたとか、あるいは副理事級に上げましたと。
その間、当然ラダーが長くなりますので、そこの職階というのをプロポーショナルにしっかりつくっていこうと思います、そうなると人事評価が必要です、どういう観点で人事評価する必要があるでしょうか。
ある大学は管理職的な観点から、人をマネージできるかどうかみたいな観点。もう一つはあくまで技術として、あるいは開発マネジメントとして見る。個人技として見る。要はいろんな考え方の分かれはあるのですけれども、ただ、評価をどういうふうにしようかとか、あるいはURA部門やテクニシャン部門が自ら積極的に、大学の研究ニーズというか研究動向をつかまえて、そして自分たちはどういう人材育成、人材登用をしていったらいいのかみたいなことを考えたいと思います、みたいなお話なんかも聞けるようになったり、あるいは、こういう人たちこそテニュアである必要がありますとか、あるいは、基本は学内で育てます、だから学生時代から教育プログラムを設けて、周知を図るとともに育てていきます、みたいな話が複数の大学から聞こえるようになってきたというのは、やっぱりこういう人材に対する議論が非常に高まってきているからかなというふうに思って、改めて感謝申し上げたいというふうに思います。
基盤的経費、間接経費、いずれもまだ足りていないわけですけれども、しかし、人材や人材の多様化という議論を積み上げていく中で、間接経費やあるいは基盤的経費は重要だよということを議論として深めて、コンセンサスを得ていくという取組も重要かなというふうに思って聞いておりました。ありがとうございました。
【狩野主査】 ありがとうございました。ウェルビーイングの要素の中に「社会的な立ち位置を感じる」というのが入っていることを思い起こす内容をいただきました。ありがとうございました。
それでは、文科省事務局の皆様からいただく御発言は以上ということになりまして、また機会がございましたら意見をいただければと思います。
それでは最後に、事務局からの事務連絡を、髙橋さんからお願いいたします。
【髙橋人材政策課長補佐】 次回の人材委員会は6月13日を予定しております。次回委員会では、有識者からのヒアリングも予定しております。
また、本日の議事録につきましては、委員の皆さんにお目通しいただき、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
以上です。
【狩野主査】 それでは、本日はこれにて閉会といたします。皆様、ありがとうございました。
なお、当日欠席の玉田委員から意見があり、本人の了解を得たうえで、以下、議事録の一部として記載する。
<博士後期課程学生支援の方向性>
〇優秀な日本人学生に対する支援強化(日本人と留学生の支援内容見直し)
追加配分を渡航費(グローバル化支援資金)とするのではどうでしょうか。
理由:研究費を増額しても学びの機会として同じ研究室にいる限り大きな変化はなく、「優秀であることの証」としての追加予算配分であれば、海外に行くモチベーションになります。
追加配分を「渡航費(グローバル化支援資金)」とすれば、外国人学生に配分がなくても矛盾しない(留学生は日本でプログラムに参加している時点でグローバル教育を受けていることになっている)と考えます。
一方、留学生については、例えば国内でのアウトリーチ活動orインターンシップを追加配分の条件とすれば、卒業後の国際頭脳循環への貢献を考えた場合(特に産業界との連携)、配分費で差をつけることで、留学生に日本語学習/日本社会の理解を促すのは、戦略的にも意味があると思います。
〇優秀な社会人博士に対する支援強化
生活費と研究費には差をつけられないと考えるので、上述の通り、「キャリアパス支援費」の名目の中に上述の内容(海外渡航費、日本語でのアウトリーチ/インターンシップ)などを組み込むのが良いように思います。
<初等中等教育段階での科学技術人材の育成の充実・強化>
〇 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の充実・見直し(優れた取組を行う学校に対する重点支援)
個人の意見ですが、スーパーサイエンスハイスクールを科学人材発掘の方法として使うのであれば、偏差値の高い受験校よりもむしろ中級クラスの高校や高専、工業高校に裾野を広げるべきではと思います。
科学的なセンスを持つ学生が必ずしも全科目を通じた成績上位者であるわけではありませんし、ノーベル賞クラスの日本人研究者が、ランキングの高い大学(の学部)出身者のみとは限りません。特に受験環境の整っていない地方には優秀な人材が眠っている可能性があります。予算が拡大できるのであれば、それは人材発掘の「裾野拡大」に使うべきだと思います。
<科学コミュニケーション活動の充実・強化>
〇 大学・研究機関において、ELSI (科学技術に関する倫理的・法的・社会的課題)に関する基礎的な素養を全ての研究者が身につけるための具体的方策について
規則を破った場合に罰則を課すという方法では、ELSIといった倫理学習的なものは組織に浸透しにくく、E-learning的なものの効果も限定的です(大学のハラスメント対策推進の経験からの意見)。国としてこの対策に関与するのであれば、資格試験制度を作り、この技能を持つ人を認定・処遇する、管理職の条件とするなど、「プラス」の側面を持って、組織に一定数の専門家を入れるために積極的な介入をすることが望ましいように思われます。
私自身、企業出身ということもあり、第1種安全衛生管理者の資格を持っていますが、大学教員のほとんどが職場の安全に関してきちんと学んだ経験を持たないと考えます。倫理的教育、安全衛生的教育を学んだ経験のない教員のもとで育てられた次世代研究者が、その重要性を理解しないのは仕方のないことです。
一方で、過去に在籍したことのあるドイツMax Planck研究所、シンガポール国立大学などでは、安全講習の受講+資格認定を受けないとラボでの実験が許可されないなど、研究室任せではなく、組織としての対策が徹底されていました。(きちんと処遇された専門家がいました。関連した情報を後述します)。社会倫理的な問題に関する対策は、起きてからの罰則ではなく、「防止対策活動をプラスに評価するシステム」の構築が重要ということを重ねて伝えたいと考えます(組織評価、個人評価に還元)。これはダイバーシティ・インクルージョン・エクイテイ(DEI)の組織・個人への浸透の手法としても同様であると考えます。
<技術者>
〇 委員等が所属している各機関等における技術者育成 ・確保に向けた取組事例
〇 研究者が研究を進めるにあたって、求められる技術者・技術職員のスキルや役割の例
過去に在籍した欧州の研究機関で、全員博士取得者ながら、キャリア選択の過程で研究者となるルート(教授とそれ以外がある)と技術者となるルートに分かれ、勝者・敗者という位置付けではなく、共に組織を作り上げている状況(それを成立させている個人のメンタリティ)を不思議に思い、「教授になりたいと思わないのか」「ではなぜ博士を取ったのか」といったインタビューを重ねた経験があります。
その結果、それぞれが明確な「職業観」を有していること(そうした教育を受けていること)が、混乱・軋轢を生じさせずに、優秀な「研究者」と優秀な「技術者」を共存させているのだと分かりました。日本の社会では、「研究者」と「技術者」の仕分けが曖昧である上、博士たるもの全員がアカデミックで「教授」を目指すべきで、それになれないものが産業界等で技術者になるといった誤った認識があり、それが科学技術(者)の多様性の拡充を阻害していると思います。
日本でも博士号を持つ優秀な「技術者」「専門家」を増やしたいのであれば、「科学技術関連の職業教育」への積極的介入が必要と思われます。そうでないと、組織で技術者の公募を増やしたところで、抜本的な解決は得られないように思います。
現在所属する九州大学の附置研究所先導物質化学研究所)では、全国共同利用拠点(*1)ということもあり、研究支援室が設置され、共用装置には担当の技術スタッフが配置されています。アライアンス等5大学間ネットワーク事業(*2)を通じて、5大学間での技術者交流も盛んであり、欧州等に近い、比較的恵まれた環境支援体制を保有しています。
技術者の雇用・育成は個別の研究機関で実施されているが、やはり世代交代(若手の確保)が重要課題です。また、URAとしては、退官した大学教員再雇用したり、企業や国の研究関連機関出身者を雇用したりしています。
*1)共同研究拠点 - 九州大学先導物質化学研究所
*2)人と知と物質で未来を創るクロスオーバー・アライアンス
<研究者>
〇多様な研究費の充実・確保
全ての研究費は、財源によってその目的が規定されています。
個人の内在的な興味に基づく基礎研究は、主に「科研費」、社会実装が目的の応用研究は産業関連経費、「寄付金」による研究は寄付者の意向であり、大学等の基盤的経費は、組織の維持・運営のためであり、「大学」の裁量経費で賄われる研究は、「大学」のミッション達成が目的です。
こうした中で「安定的な研究費」が意味するものは何かというのは極めて曖昧であるが、政府が負担する研究関連費総額を研究者数で割って算出される額があまりにも少ないという指摘であれば理解できます。
(科学技術指標2021・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP))。しかし、上記のいずれにも当てはまらない研究をもサポートしろということであるなら、それはどの国のどの組織でもNOであると考えます。
シンガポールでは、政府の重点研究課題が短い周期で変わり、それに応じて、研究者が研究分野を変えるというのは当然のことです。事実、最先端分野の研究をしないとトップジャーナルに論文も通らないし、引用数も伸びません。次なる研究分野のサーベイも研究者の重要な仕事であり、若手研究者は、海外のトップ研究者を訪問し、トレンドをキャッチする努力は怠りません。ハイインパクトの研究成果の持続的創出は雇用の安定と直結するのであるから当然と考えます。
これを日本に置き換えて考えた場合、政府の役割について見直しが必要であるとすれば、競争的資金の課題設定の適切性ではないでしょうか。これのピントがずれていると、競争的に配分された経費が国際競争力強化のために使われないことになります。適切な課題が設定できないくらいならば、科研費を増やしてはどうか、という話になります。すなわち、「安定的な研究費の確保」に関する不満が、実は「競争的資金の課題設定」に対する不満ではないか、分析が必要だと思います。
もう一つ見直しが必要と考えられるのが、若手偏重についてです。年齢で分けて対応すべきは「人材育成」であり、若手への大型予算配分=若手育成という単純な話ではないと考えます。現在JST事業においても、さきがけや創発などの事業が連立し、その棲み分けについて議論になっています。若手偏重のあまり国際競争力の低下を導いていないか、本当に未来への投資になっているかなど、データの分析が必要だと思います。
〇 安定したポストの確保
さまざまな財源からの資金を大学で留保して(単年度会計から脱却し)人件費として活用することは、安定的とは言えないものの、実際大学ではもう行われています。
〇 研究者による活躍の場・機会の拡大
産学連携や海外との頭脳循環は、社会適応力や国際競争力のある人材を育成するという視点から極めて重要です。人材育成という視点が抜けると、「技術的に学ぶべきものがない」「非効率的である」「安全保障上のリスクを冒してまで必要か」といった交流や派遣に関するネガティブな捉え方が次世代へと引き継がれてしまうため、注意が必要です。
クロスアポイント制度の利用については、すでに多くの大学で試行錯誤がなされている状況と思いますが、シンガポールで体験した「目標設定型」のクロアポ制度とは違った形で進行しているように思い、効果が限定的ではないかと懸念しています。
〇 組織・機関における研究環境整備
シンガポールのクロアポ制度は、明確な目的のもと約20年前に開始されました。その目的は(短期的な)研究成果にはなく、彼らが必要とする施設・資材を全て揃えることで、早急に世界トップレベルの研究環境整備を進めることでした。そして、続いて行ったのが優秀な若手P Iの獲得です。爆発的な組織改革を進めるには、綿密に練られた計画(戦略的人事を含む)が必要です。
九州大学では、全学事業として、女性・若手教員を対象とするダイバーシティ・スーパーグローバル研修(SENTAN-Q)を文科省の人材育成補助事業として実施しています。
(HOME | SENTAN-Q ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修 [Diversity and Super Global Training Program for Female and Young Faculty])
本研修は、優れた研究業績を有する将来有望な本学の女性ならびに若手教員に、世界トップレベルの研究および教育に挑戦する機会を提供するもので、多様で秀逸な女性ならびに若手人材を発掘し、世界と伍して戦えるダイバーシティ・スーパーグローバル教員として育てることを目的にしています。研修には、海外トップ大学教員を講師とする大学ガバナンス・リーダーシップ、そしてダイバーシティ教育、AIやデータサイエンス、アントレプレナーシップなどのリカレント教育が含まれており、「教員も学ぶ」のコンセプトのもと、将来の大学幹部候補生として、学際研究、文理融合、社会課題への理解や国際プロジェクト提案、サイエンスコミュニケータとしての能力強化など、多様な魅力を持つ研究者の育成に効果を発揮している。本プログラムから既に2名の女性副理事が抜擢されています。
(研修生 | SENTAN-Q ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修 [Diversity and Super Global Training Program for Female and Young Faculty])
―― 了 ――
科学技術・学術政策局人材政策課