人材委員会(第105回)議事録

1.日時

令和7年1月22日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館 15F 科学技術・学術政策局1会議室 及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. 科学技術・イノベーション人材の育成・確保に関する令和7年度予算案について
  2. 第12期科学技術・学術審議会人材委員会審議まとめ案について
  3. その他

4.出席者

委員

 狩野委員、稲垣委員、梶原委員、迫田委員、杉山委員、隅田委員、長谷山委員、桝委員、水口委員、村上委員、柳沢委員

文部科学省

 井上科学技術・学術政策局長、髙谷大臣官房審議官、先﨑科学技術・学術総括官兼政策課長、奥人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会(第105回)
 

令和7年1月22日

 
 
【狩野主査】  定刻となりました。ただいまから第105回の科学技術・学術審議会人材委員会を開催いたします。
 今日は、今期の最後の回とのことで、皆様の闊達なる御意見を頂戴できればという機会になっております。よろしくお願いいたします。
 本日は2件の議題を予定しています。
 それでは、議事に入る前に、本日の委員会の開催に当たりまして、事務局から注意事項と、それから資料の確認をお願いいたします。
【髙橋人材政策課長補佐】  本日の会議は対面とオンラインのハイブリッドでの開催となります。御発言の際には、対面で御出席の委員は、挙手あるいは名立てなどで合図をいただければと思います。オンライン御出席の委員は、挙手機能により挙手ボタンを押していただくようお願いいたします。主査より御指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言よろしくお願いいたします。
 また、機材の不具合等ございましたら、対面で御出席の委員は会場の事務局にお声がけいただきまして、オンラインで御出席の委員はZoomのチャット機能などでコメントいただければと思います。
 また、本日の会議は録画しております。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。事前に送付させていただいた資料としまして、議事次第、資料1、資料2-1から2-3及び参考資料1から3となります。
 参考資料1は、前回の11月27日に開催した人材委員会で配付した資料と同じものになります。
 また、参考資料2及び参考資料3につきましては、令和6年度の研究者・教員等の雇用状況に関する調査の調査結果がまとまりまして、ちょうど本日ホームページにて公表しましたので、参考資料として配付しております。この調査については、大学等及び研究開発法人の研究者・教員等のうち、無期転換申込権発生までの期間が原則5年のところ、10年とする労働契約法の特例の対象者に関して調査したものとなっております。この調査結果を踏まえまして、各機関に改めて適切な対応を促す依頼文などを発出していますので、その報道発表資料等を参考資料として配付しております。
 資料につきましては、Zoom上でも共有いたします。議事進行の過程で不備などございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上になります。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 冒頭もう一つ申し上げるべきことでありましたが、本日、10名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。
 それでは、本日の議題に入ります。科学技術イノベーション人材の育成・確保に関する令和7年度予算案と題して、まずは事務局より御説明いただきました後で、御意見、御質問をいただいてまいりたいと思います。では、まず、御説明をお願いします。
【髙橋人材政策課長補佐】  それでは、資料1を御覧ください。
 10月に開催しました前々回の人材委員会にて、令和7年度概算要求について御説明させていただきました。その後、財政当局との予算折衝などを踏まえまして、昨年12月27日に政府予算案が閣議決定しましたので、今回、その御報告となります。
 次の1ページ目を御覧ください。こちらが全体像になります。右上にありますとおり、令和7年度の予算額案としまして245億円となっています。そのすぐ下に括弧書きで令和6年度の予算額を記載しておりますが、差額の約5億円は新規事業である研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業になっていまして、そのほかの事業については、おおむね令和6年度と同額となっているところです。
 2ページ目が、今申し上げました新規事業に関するところです。左上の「現状・課題」にありますとおり、研究力強化には大学等において戦略性を持った経営・研究開発が必要であり、研究者と研究開発マネジメント人材が連携して研究開発に挑戦する環境の醸成が必要です。
 また、その研究開発マネジメント人材は、いわゆる科研費の申請などを補助するような方ではなく、研究内容に関する深い理解・洞察を有して、大学などの組織に関わるマネジメント全般に関わる高度専門人材として必要であるところ、その量的不足の解消であるとか質の向上を目指してこの事業というものは進めてまいります。
 具体的には、この左下にありますとおり、体制強化機関と研修提供機関、それぞれ9機関程度、あるいは3機関程度を採択する予定でして、現在、公募に向けて準備を進めているところでございます。
 特別研究員制度になります。こちらは昔から行われている事業ですので、事業内容そのものは基本的には変わりありません。令和7年度のポイントについては、PDのところですが、近年取組を強化している博士支援のキャリアパスとしてPDもあり得るところ、その支援人数を、10人増加させております。
 スーパーサイエンスハイスクール支援事業について少し御説明します。事業概要の左側の基礎枠というところですが、基礎枠として新規33校の採択であるとか、あるいは、中央に書いています重点枠として新規4校の採択といったことを令和7年度に実施できる予算案となっております。
 また、それ以降のSTELLAであるとか、あるいはダイバーシティに関する事業についても、新規採択を一定数行える予算案となっているところでございます。
 説明は簡単になりますが以上です。
【狩野主査】  御説明ありがとうございました。ということで、これに対して御意見、御質問のある場合は、挙手、そして指名を受けたら御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。杉山先生、お願います。
【杉山委員】  杉山です。
 今説明があった学術振興会の特別研究員ですが、このDCが変わらないというお話だったと思います。今SPRING事業が出てきて、更にBOOSTというのが始まっていて、BOOSTのほうがはるかにこれより条件いいんですね。年額300万超える金額を給料で受け取っていて。
 うちの大学でも両方採択されて、どっちを選ぶかみたいな話で、2人いたのかな、1人は給料の高いBOOSTを選びました。もう一人は、学振が今までのトラディションもあるからプレスティージアスだというので、学振を選びました。
 私の感覚からすると、学術振興会の特別研究員は非常にランクの高いものであってほしいと思うので、給与を上げるとかということを少し考えていただけないかというのを、ぜひお願いしたいというのが意見です。
【狩野主査】  ありがとうございます。何か現時点でお返事があれば。
【髙橋人材政策課長補佐】  どうもありがとうございます。問題意識は我々も同じでして、議題2のほうでも書かせていただいていますが、今後の博士支援の在り方の中で、まさに特別研究員DCとSPRINGとどう整理していくのかというところは極めて重要かなと思っております。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 こういう機会に財務省に説明するための材料が得られたらいいのかもしれませんが、どんな材料があるとより効果的かといったあたり、差し支えない範囲で教えていただくとどんなでしょうか。
【髙橋人材政策課長補佐】  ありがとうございます。
 総論的になるかもしれませんが、特別研究員、あるいは、ほかのSSHとか、我々として一定数の数を確保していきたいという量の話もありますので、ぜひ、そういった規模感が必要であるということ、さらに、それが理想的には、定量的なデータも伴って、この人数がやはり我が国で必要だという議論があればありがたいと思っています。
 ただ、それに加えまして、質を保つことというのは極めて重要だと思っていますので、その点において、事業の改善であるとかそういった形で、質の担保あるいは質の向上をいかに図っていくのかという点でも御意見いただけるとありがたいと思っています。
【狩野主査】  ありがとうございます。迫田先生、お願いします。
【迫田委員】  今、民間で給料が非常に上がっていまして、今年の昇給率もおそらく5%以上にはなってくると思います。新卒の初任給でも30万円を超えるところがどんどん出てきているので、それとの見合いで考えてもよいのではと思います。優秀な大学院進学者については、生活面では就職したものと劣らないレベルにしていくというのを1つのロジックとしてぶつけるべきではないかという気がします。
 今年も相当上がると思いますので、それぐらいは上げていただくことを考えていただけたらありがたいなと思います。
【狩野主査】  ありがとうございます。産業界関係から力強いお話をいただきました。
 ほか、今の内容に何かお返事ありますか。
【髙橋人材政策課長補佐】  特にないです。ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 ほかに人材政策課の枠組みでも、よりあったほうがよい施策の可能性などもし思いつかれたら、この後でも結構ですが、お知らせいただければと思います。オンラインからはよろしいでしょうか。隅田先生、何かSSHに関してコメントございましたら、いかがでしょうか。
【隅田委員】  まずは、予算額、前年と同じといいますか、それが確保できていることに安心したところです。
 といいますのは、博士人材といっても、若い子供たちがいきなり博士人材の大学院生になるわけではありませんから、そこへつなぐパスをきちんとつくっていくというのが欠かせませんので、この規模感からいくと、もう少し本当は欲しいですよね。10%ぐらいの子にはチャンスを与えたいなと思うところではあります。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。あとは、それに関係するエビデンスといいますか、支える情報がよりあると、今の話が前に行くのかなというように思いました。
 ほかの点はいかがでしょうか。杉山先生、お願いします。
【杉山委員】  
 先ほども申し上げたようにSPRINGその他で博士後期課程は非常に今、支援が手厚くなっていると感じています。一方で、博士前期のほうが支援がない状態で、前期を修了して社会に出る方はいいんですが、後期につなぐときに、支援がないので後期へ行かないというところもあります。うまく博士前期・後期一貫して支援するようなことがあるといいと思います。
 個別のプログラムであれば、卓越大学院みたいなものはそういうプログラムがあったので、前期から博士後期課程まで一貫して支援できて、進学率も増えています。
 ただ、全体として、SPRING事業その他、非常に後期課程に手厚いけれど、何かうまく前期課程をある程度支援して後期への進学率上昇につなげていくみたいなのがあるといいと思います。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 公費を投資するとすれば、その結果としての税収増につながれば、という考え方は聞くことはあり、そうした視点も考えていけるといいということは思うところです。その結果として産業界のアウトプットがよくなって、より経済が回るようになるみたいな、そういう理論立てができたりするとなお強いかということは思っております。別に全員が経済に関係しなくてもいいですが、そういう方々も出てきてくれるといいというところかと思います。
 ほかの点はいかがでしょうか。稲垣先生とか桝先生とかよろしいですか。
【桝委員】  大変細かいところで申し訳ないですが、ちょうど1ページ目の未来共創推進事業のところを拝見していて、予算額が10倍になっているような気がして、これは同じぐらいの予算が確保できたと認識してよろしいでしょうか。
【奥人材政策課長】  未来共創事業は対前年と同額で32億円弱の予算でして、恐らく言われているのは令和6年度の補正予算額の方かと思います。 本予算案のほうは令和6年度と同額になっています。
【桝委員】  了解しました。こちらの使い道、方向性に関していうと、これから具体的に、これまでとは違う形も検討していければいいと思いながら見ておりました。
【狩野主査】  ありがとうございます。金額があって、あとは配り方とか使い方のところに関する議論も、もちろん我々でできたらいいのかなと思っております。
 稲垣先生、お願いします。
【稲垣委員】  ありがとうございます。私はマネジメント人材のことについて、厳しい査定の中、新規事業を確保いただいて、まず、ありがとうございます。
 この体制強化と研修提供の数を入れ替えるというか、調整するということは可能なのですか。
【髙見人材政策推進室長】  人材政策推進室の髙見です。これは体制強化機関と研修提供機関で担っていただく役割が全然違いまして、それぞれの単価も異なっているところですので、この機関数の入替えというのは念頭にないです。
【稲垣委員】  なるほど。分かりました。一応、基礎力育成研修等はJSTが無料で始めているので、そこはそんなにお金がかからないのではないかということを考えると、今どんどん増えてきている新しい業務に関する実践力を身につける研修を充実させるほうが現場に沿った事業になるのではないかと思ったりもしますので、立てつけが変えられないのであれば、変えられない中でうまく動かせるように仕組みを考えていただくといいと思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。隅田先生、お願いします。
【隅田委員】  先ほどのSSHのところで少し何か根拠をということで、例えば、高校生でいきますとPISA調査がございます。それで、PISA2022年で考えると、科学的リテラシーで、日本について、習熟度別で見たときにいわゆる国際的に上位層とされるレベル5以上の生徒は18%程度いるんですよね。OECD平均が7.5%に対して、日本には18%いる。上位層です。
 そこら辺の子にもっとリーチするような施策があっていいというのが1つデータとして言えるかもしれません。参考まで。
【狩野主査】  よい気付きをありがとうございました。取りあえず、私はいいなと思って伺いました。文科省の皆様もそうだと思ったら、後できっと言ってくださると思います。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。多分ここに、教員の皆さんがその方向に向かってよりやる気が出るとか、あるいは新しい方法を試していくとかということに対する努力も何か後押しができるといいのかなということを、現場に近くおりますと、思ったりします。
 
 それでは、議題2に移ります。先ほど申し上げましたように、今期、12期というのは今回までだそうであります。ぜひ次の期に向かって、お考えをいただけたらと存じます。まず、この期で何をしたかという振り返りのまとめがよろしいかどうか、ということ。それから、この期に議論できたことに加えて、あと何が必要か、ということを後で御意見いただけたらということ。そしてまた、それに関係する御意見を既に何回かいただいておりますが、それのまとめもその後御紹介いただいた上で、皆様から追加をどんどん忌憚なく、忖度なく出していただければということです。御覧になりながら、お考えになりながらお聞きいただければと思います。
 ということで、議題2です。今期第12期の人材委員会の活動状況、それから、その下に設置いたしましたワーキング・グループの結果も含めて、検討結果のポイントについて、まず事務局から御説明をいただき、その後、御意見、御質問をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。お願いいたします。
【髙橋人材政策課長補佐】  それでは、御説明いたします。
 次回の科学技術・学術審議会の総会において、今期における人材委員会の議論を報告する必要がございます。人材委員会は、主査からもありましたとおり本日が最終回になりますので、本日も含めまして、これまでの議論をまとめたものというのが資料2-1から2-3に当たります。資料2-3につきましては後ほども御議論いただきますので、まずは、資料2-1と2-2について御説明します。
 今投影していますのが資料2-1になります。こちらは総会に例年各委員会より報告している様式に基づいて記載したものになります。下半分に、今期が始まる際に総会に報告した活動予定というのが記載しておりまして、大きく、博士の話であるとか、あるいは、委員会の下にワーキングを設けて、研究人材の流動性・安定性について議論するということと、研究開発マネジメント人材や技術職員の育成・確保について議論するということが予定として書かれておりました。
 それに対しまして、今期で実際に行ったことというのを上半分に4つの箇条書で記載しております。少し裏返しの書き方になりますが、1ポツについては、博士について議論いただいたということを書いております。2つ目のところで、今申し上げたワーキング・グループにおいて検討してまとめたものなどを書いています。3ポツについては、この人材委員会において御議論いただきました2050年を見据えたシン・ニッポンイノベーション人材戦略をまとめたということを書いています。さらに、最後の4点目で、今後の科学技術・人材政策の基本的方向性について、これまで議論いただいたことなどを書いております。
 この最後の点で、審議の経過や主な意見、今後の検討課題を議論まとめとして取りまとめたという過去形になっていますが、これは、本日、この後の資料2-3も含めての表現となっております。こちらは事実関係をまとめたものになります。
 資料2-1はワード1枚という制限がございますので、それを補足するものとして資料2-2を用意しております。
 1ページ目の目次を御覧ください。コンテンツとしては3つ入れておりまして、1番、若手研究者へのメッセージ、こちらは研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループのもの。2点目が、科学技術イノベーションの創出に向けた研究開発マネジメント業務・人材に関する課題の整理と今後の在り方のポイントで、こちらは研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループから出てきたもの。3つ目については、資料2-3のほうに移しておりますが、最終的には、この3点をまとめまして、総会のほうに資料として提出をしたいと思っております。
 まず、1つ目の若手研究者メッセージにつきまして、3ページ目を御覧ください。こちらにつきましては、この流動性・安定性ワーキング・グループにおいてまとめた論点整理、昨年の10月の人材委員会でも御報告させていただいたものですが、その中で、若手研究者が挑戦的な活動により打ち込みやすくなるよう、そして、これから博士を目指す学生が将来に対する不安を抱くことなく研究者を志すことができるよう、メッセージを作成したものになっております。
 こちらの3ページ目から12ページ目までが、メッセージになっています。まず、こちらの3ページ目については、先ほどちょっと申し上げたところと重なりますが、ワーキング・グループにおける認識であるとか議論などを端的に書いているところでございます。
 続いて、4ページ目、こちらは冒頭少し説明しましたが、参考資料でつけている参考資料2-3の調査結果の一部から引用してきているものです。無期労働契約に関する状況が上の棒グラフ、下の棒グラフが有期労働契約に関するもので、それぞれの在籍者数を比較しているものになります。
 下のオレンジの囲みで端的に書いていますが、40歳以下におきましては有期労働契約の方が無期労働契約の方よりも多いという状況がある一方で、41歳以降においては無期労働契約のほうが多くなるという結果になっています。また、全体の数値としましても、無期労働契約のほうが多いという結果になっています。
 次のページも同じ調査結果の一部になっています。上が有期雇用の方の状況、下の半分が無期雇用の方の状況になっています。有期雇用の研究者のほうが、離職あるいは採用の人数が無期雇用よりも多いということで、より流動しているという様子が分かるという一方で、下の無期雇用の契約の方においても離職や採用が一定数いるということで、無期雇用の方でも一定の割合で流動していると言えるのではないかということ。
 これにつきましては、自らの活躍にふさわしい場を求めて流動するという研究者という職の特徴の一端が見られるのではないかということを下の囲みで書いています。
 6ページ目は過去の調査からの転記ですが、同様に一定の割合で機関を移動しているという様子が見てとれるので、先ほどと同じように、研究者の一定割合というのは、無期雇用に関わらず流動しているのではないかということです。
 後半、さらに7から10ページ目につきましては、ワーキングの論点整理であるとか、先ほど申し上げた特例に関する資料などを参考として入れていまして、11ページ目に、大学における対応として期待されていることを書いています。
 こちらはワーキング・グループで議論された内容なども踏まえていますが、例えば、定年退職者の承継ポストを若手研究者の雇用に活用することであるとか、研究者からURA、あるいは学部研究科から機構への所属変更等、組織内や組織間での職種転換を図る際の支援などを機関における取組例として示すとともに、参考資料でつけている調査結果からも、キャリアサポートを求める声というのがあるというのが分かっていますので、大学において雇用している研究者を対象としたキャリアサポートの取組を行うことなどを最後に書いております。
 次のページがメッセージの最後になります。文科省におけるこれからの検討の方向性ということで、これまでも人材委員会でも御議論をいただいておりますが、科学技術・人材政策の基本的方向性に記載している関連する内容をここで書いて、メッセージの締めとしております。
 2つ目の内容としまして、もう一つのワーキングでありますマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループで昨年8月にまとめた課題の整理と今後の在り方の概要になっております。
 こちらについては、研究開発マネジメント人材と技術職員それぞれについて課題や現状などを整理しているところですが、共通的な内容としては、キャリアパスが困難であるとか、あるいは、大学などの機関内におけるそれぞれの人材の認識がまだ足りていないといったことなどが課題として挙げられていまして、それぞれ期待としては、将来的には大学における経営に携わる方になっていただくということが期待としてあります。
 特に前者の研究開発マネジメント人材については、こういったワーキング・グループの議論、ポイントなども踏まえまして、議題1でも少し触れました新規事業などを始めております。また、今後としましても、研究開発マネジメント人材と技術職員それぞれの人事制度に関するガイドラインの策定に向けまして、今期あるいは来期で継続して議論していきたいと思っております。
 資料2-2については以上になります。
【狩野主査】  御説明ありがとうございました。
 ワーキング・グループについては、ここにおられる皆様方には委員を共通している方はあまりないかもしれませんので、まず、前半については私が共通しているので申し上げますと、メッセージとして、主語はワーキング・グループを主語にいたしまして、文部科学省ではなくてワーキング・グループの構成員を主語として作りました。
 ゆえに、研究者同士として、という気持ちでは作ったということ。それから、現状を考えると不安感が走ってしまう方もたくさんおられようと思うので、それは現状がこうだから、それを踏まえてどういう感覚で行くかを考えてください、というような気持ちで作ったところです。
 これの取りまとめに当たっては、髙見さんほかの皆様が非常にいろいろな意見を収集して御尽力いただきましたので、御礼を申し上げます。
 もう一つのほうは、稲垣先生、何か追加コメントありますか。
【稲垣委員】  URAという言葉が平成23年度ぐらいから導入されて、10年以上たち、1,700人ぐらいの方が従事しているのですが、まだ現状としては、執行部の考え方1つでその後どうなるか分からないという大学も見られる。技術職員については、きちんと実態が把握されていないということがあるようですので、これをきっかけに、もう少し実態を正しく理解した上でどうするべきかみたいなことを考えていきましょうということになっております。
 いずれにおいても、研究者だけで研究をするということが難しい時代になっておりますので、研究者をいかにきちんと支えられるかということが日本の研究開発においては重要です。こうした人材について、今までは研究担当理事で差配されていた部分が多いのですが、安定的な雇用ですとか待遇の改善になりますと、人事や財務担当の理事の方々にも御理解いただく必要があるだろうということで、大学全体として考えてほしいというメッセージを込めた提言になっております。
 以上です。
【狩野主査】  簡潔にありがとうございました。
 では、今の内容に関して御意見、御質問をいただけたらと思います。お願いいたします。どうぞ、梶原先生。
【梶原委員】  今の稲垣先生の思い、執行部の理解が必要という視点が、文章を初見で見たときにあまりにじみ出ていなかった印象です。
【狩野主査】  今の稲垣先生の視点は、最後の1枚だけです。前半は全部が若手研究者に宛てたということになっている中のちょっとだけが大学側あての内容です。
【梶原委員】  では、若手研究者に向けてというところ。流動性の話が説明されると、流動していますというトーンになっています。産業界からすると視点が違って、流動していないと思っていて、産業界からするとちょっと違和感があります。
 ですから、文章的には、調査からは多数はちゃんといい環境下にあると、そうでないケースもあるけどという書き方が、確かにこの事例ではそうなのですが、この表現が、若手研究者の皆さんが見たときに、腹落ちというか、よく考えてくれたと本当に思ってくれるといいと思いますが、どうなんでしょうか。正直、私は流動していない前提で思ってしまっているところがあるので、そんな形で見てしまいました。
【狩野主査】  なるほど。多分、流動性の程度の当たり前がどれほどかという感覚がお互い違うのかなと思いました。だから、研究職を大学付近でしかしたことがない人から見ると、これでも流動していると思っている場合に備えて、こんな書き方にはなっていますが。産業界においてはもっと移っていくのが当たり前だというような気持ちを踏まえてもよいかなと今伺って思いましたが、どんな表現をするとそうなるかがちょっとまだすぐには……。
【梶原委員】  産業界からするとイノベーションがなぜ日本で起き難いのかの話では、お互いのことを理解する立場の経験が少ないとか、そこはすごくリテラシー的な問題で、相互を理解できていない部分が根っこにあり、今の状況が起きている、というのがベースにあります。
【狩野主査】  1つの考えは、もうちょっとこのメッセージが大部になってしまう方向性ですが、産業界において流動性という言葉の裏側にある景色を何か同じようなデータで示せるものが1枚か2枚かあって、それが今の日本の社会の現状になっておりますと。それに比べて研究の関連ではこういうデータになっているので、見て比べてみてねという、そういうメッセージもありかとは思いますが。
 そうすると、どんなデータがあり得ますか。何か思いつかれるデータがあったら、紹介いただければ、加えてみる検討は、やぶさかではありません。
 このワーキング・グループは、今回は委員には産業界の人がほとんど入っていません。ほとんど大学か国研の人だったので、その範疇から見るとこんな表現かなと言って落ち着いたところだった次第です。ただ、それが今おっしゃったような産業界も含めて見るとちょっと違うかもということであると、そのようなお気持ちを証明できる何かをつけてあると非常にもっといいのではないかとは思いました。
【梶原委員】  よく転入元・転入先のところで、例えば、大学から企業に行っているパイプが少ないとか、割とよく言われてきました。企業から大学に行くのは、ある意味、日本の中の定年の制度で、大学の定年が長い、企業のほうが早いので、それは動くと思います。どうでしょう。
【狩野主査】  1つ思いますのは、主に大学の中でしか過ごしていない方々の場合、そのほかの産業界での状況を知る機会がないまま、そのまま大学周辺の世界で走る人はそれなりにたくさんおられると思うんです。そういう方々に、いやいや、実際の社会では今ここまで来ているんだからということを知らしめるような資料が入っているのは悪くないような気が今伺いながらいたしました。
 髙見さん、どうぞ。
【髙見人材政策推進室長】 今、梶原委員がおっしゃったのは、恐らくアカデミアと産業界の流動性みたいなところが問題意識の中心ということですか。
【梶原委員】  私たちがイノベーションだとか社会変革するという視点で、あるいは、社会課題を解決するというところに必要なスキルセットで、どういう人材ですかというと、今のようなアカデミアだけの流動だけで世の中解決するとは言い切れません。そのベースがあって臨んでいるので、流動しているとなると、初見で見て、「え?」というのが実は正直なところでした。
【髙見人材政策推進室長】  御指摘の趣旨を踏まえたいと思いつつ、これはあくまで今期の流動性・安定性ワーキング・グループというところがまとめたメッセージということで受け止めていただきたいとも思っています。ただ、このメッセージというのは、研究者の安定性・流動性をどう考えていくのかというものです。
 おっしゃるとおり、このメッセージの中では、アカデミアの中でも流動するというのも含めて、一緒に書いてしまっているところがあるので、コメントいただいたアカデミアと産業界の間の流動性というところが若干見えにくいですし、1つあるとすると、6ページの機関間の流動というところが、企業と大学というところが薄い、というところが見えるという資料になっております。
 その問題意識は我々も同じようには思っていまして、その意味でも、博士人材を産業界にもっと活躍促進を図っていくことを考えても、アカデミアに一度進んだ段階から産業界に行くという人たちを増やしたいですし、そのことによって、アカデミアでも活躍する、産業界でも活躍するというのが、もっと循環できるようになるといいというビジョンは持ちながらいろいろなことは考えたいと思っております。
 そういう意味では、この後の議題になりますが、2-3のほうの第13期につないでいくほうの議論の中で、まさにその辺りの流動性を促進するにはどうしたらいいのかというところは御指摘いただきながら、具体策に落とし込めたらと思います。
【梶原委員】  必要だと思います。
【髙見人材政策推進室長】  ありがとうございます。
【狩野主査】  ワーキング・グループにおいていろいろご意見あった中で、国研の方から、「研究者という人たちは、大学に関与していないとグレードが変わったと思う人が結構いるような気がします」という話を言われました。つまり、「大学がヒエラルキーの上のほうである」と考えている人が多いんじゃないでしょうかという意見がありました。それがどのぐらい印象論だけかはともかくとして、そのような、同じような見かたで更に違うセクターに行くことについて感じている人はそれなりにいるとすると、そこの意識改革を図れるような何かデータも要るかなということを、今伺いながら思ったりはしておりました。
 稲垣先生、どうぞ。
【稲垣委員】  ありがとうございます。
 「流動性」という表現をよく文科省で使われますが、機関を移動するだけでなく、その結果としてキャリアアップとかサラリーがアップして初めて流動性に価値があるということになると思います。こういうデータにちゃんと、ステップアップしている人と同じポジションでぐるぐる回って上に上がれていない人をきちんと分けて分析しないと、結局、流動性がいいことなのか悪いことなのかというのが分からない。あるいは、企業に行くのが、待遇がよかったから動くのかそうじゃないのかというのは、恐らくそこまで見ないと分からないのではと思いました。
 実際こういう調査というのは、その辺の情報は取られて分析されているのかというのを教えてください。
【髙見人材政策推進室長】  科学技術指標のこのデータに一人一人のサラリーが分かるかというと、そこは少し厳しい気がいたします。データとしてあれば、クロス集計するというやり方があるかもしれないですが、そこは今正しい情報がないので、確認をさせていただきたいと思います。
 今御指摘いただいた、処遇がちゃんと上がる形で本人が望むキャリアを描けているのかというのは、まさにそこが大事な部分なので、今あるデータだけですとそこが見てとれないというのは、御指摘はおっしゃるとおりだと思うので、その点も含めて考えていくことが必要かと思います。
【稲垣委員】  ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 今の「アップ」という言葉なんですけれども、私は最初、医者から始めて、それから研究職に移った人なので、金銭的側面としてはダウンしたかもしれないんですが、しかしながら、自分の得意を活かして生きている意味合いとしては「アップ」したつもりだから移ったという経験があります。それを考えると、何が「アップ」かは分からない、人によって違うかも知れない、という気持ちがどうしてもあります。それで、ここにも「アップ」という言葉はなるべく使わないように気をつけました。
 ですから、より自分にふさわしい場所を求めて動けばいいじゃないという気持ちがどうもあります。その意味で、何がよりよくて何がより悪いみたいな表現はなるべくなくしたつもりです。
 その際に、だけれども、アカデミアの中でいろいろな場所に行くのと同時に、ほかの例えば、スタートアップといった職種に行くとか、大きな既存企業に属する職種に行くとか、そういうことも含めてフラットに比べた上で自分をより生かせるところに活路を拓いてください、という、そういう気持ちが流動性の原動力だ、というのがワーキング・グループの主査をしている人の考えです。
 それをどういうデータでどうやって上手に表現して、どのようにそう思っていない人に伝えるかというのはなかなか苦労いたしまして、今のところ、このような表現に落ち着いているという状況です。
 隅田先生、お願いいたします。
【隅田委員】  先ほどの6の図で、別の観点で、浮き沈みではなくて、例えば男女別とか、あとダイバーシティでいくと、男女、外国人とかで分けて分析とかはされているんでしょうか。
【狩野主査】  なかなか統計については、今のようなかゆいところに手が届くようなものが難しいということは共有をさせていただいております。無論、その項目を加えたほうがよいという議論はこれからどんどんしたほうがいいと思いますが、そのときにフィージブルかというか、実現可能かどうかはまたぜひ検討ということになると思います。というのが今、各所をつなぐ役割の人の意見ですが、いかがでしょうか。よろしいですか。
【髙橋人材政策課長補佐】  はい。
【狩野主査】  ということで、今の御意見からは、そういうサブグループ化した解析がもしできるようであればということが1つあるかなと思います。
 あと、前から出ている話ですが、文部科学省様から調査が行ったときに、別件でもそうでしたが、個人からの回答率は6%だったでしょうかね。機関からは100%に近いのですが、多分、公式見解しか返ってきていない。そういうようなこともあるので、誰がどのように調べたらよりすてきなデータになるのかということも今後検討の必要があるのかなと思いながら、つなぐ人としては思っております。
 桝先生、どうぞ。
【桝委員】  先ほどの狩野さんの話とも少し通じるものがあるのですが、何をもってキャリアアップと言うのかというので流動性の意味が変わってくるというのは、本当にそのとおりだと思っていて。私自身も、収入とかそういう意味で言ったら、むしろキャリアダウンしているのかもしれないですが、自分の希望で転職しているわけです。
 社内で見ても、ライフプランが変わることによって、例えば結婚、育児あるいは介護といったところで、自分により合った部分、合った職場に行くということは、はたから見たらキャリアダウンに見えるかもしれませんが、自分の人生プランとしてはキャリアアップだという状況というのがあると思います。
 希望をして流動したのかどうかというところの指標というのが、1つ単純に分かりやすい指標になるのではないかと思いながらこの図を見ておりました。この流動しているのが希望で流動したのか、あるいは、希望していないが流動したのかというところを分けるだけでも、随分と見え方が違うのではないかと思いながら見ておりました。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 その点に関してもう一つコメントがあるとすると、「希望する」ためには、そこがどういうところかを知らないといけない気がするのですが、行先の現場状況を知るために必要な情報を、転職を考えているときに知っているのかというところも本質的には重要ですよね。知らないと希望もしようがないし、行ってみたら実は想像したよりもいいところだったりするときもあるでしょう、ということで、なかなか、全てが「希望どおりか」という調査でうまくいくかと言われると、個人的には心配もあったので、少しコメントしてみました。ありがとうございます。
 長谷山先生、どうぞ。
【長谷山委員】  長谷山です。
 2つ質問があります。1つは、小さなものなのですが、4ページにあるグラフで、有期労働契約の在籍者数が示されています。多くの国立大学法人では、承継職員であっても助教に任期を課していると思います。その様な雇用は、有期、無期のどちらに入るのでしょうか。
【髙見人材政策推進室長】  ありがとうございます。任期付きであれば、有期労働契約のほうに入っております。
【長谷山委員】  そうなりますと、多くの大学で、例えば、本日ご出席の杉山委員の名古屋大学でも、同じかと思いますがいかがでしょう。
【杉山委員】  そのとおりで、うちの大学は、助教については、テニュアトラックという形での任期ありと特任としての助教と両方あります。全ての今までの承継と言われているポジションの助教は、ほとんど全てテニュアトラックに変えてしまったので、もしそのカウントだと、テニュアトラックでも有期になってしまう。
 ただ、無期に行ける可能性の高い人たちとそうでない人たちが混在しているというのは確かだと思います。
【長谷山委員】  杉山委員が仰るように、本学も同じです。データを見た方に誤解を与えないように、雇用形態について正しく理解されるよう記載をお願いしたいと思います。この有期雇用というものが過去に言っていた有期雇用とは異なり、大学自身も変化していることが分かるようにお願いします。
 今回の資料は、これでよろしいかと思いますが、今後は、大学現場がどのように、若手次のポジションへのチャンスを与えているのかということが理解される説明を付して頂ければと思います。
 次は、6ページで、ほかの委員の皆さんもいろいろと発言なさっている転入者の流れについてです。「研究者の一定割合は他機関等に転入しており、流動しています」と書かれているのですが、グラフからは、大学には他から転入しているが、大学からは外に出ていないと読み取れます。穏やかに研究者という表現で記載して頂いたということでしょうか。
【髙見人材政策推進室長】  そこは今長谷山先生がおっしゃるとおりで、大学等というのが転入元というほうを見ますと、他機関に異動している方というのは非常に細い線になっているというのは確かです。その意味では、大学等にほかから入ってくる人たちは多いですし、そこが中心の解釈になるデータかとは思います。
【長谷山委員】  分かりました。大学の研究者が、機関間の流動性に貢献していないことが残念という御意見もありましたので質問させていただきました。
 こちらのグラフですが、大学から異動している方の年齢データはお持ちでしょうか。
【髙見人材政策推進室長】  大学から異動している方ですね。
【長谷山委員】  大学に異動している方の年齢も分析に役立つと思いますが、まずは、大学から外に僅かながらでも異動している方がいらっしゃいますので、その方の年齢データはお持ちかどうかお教えください。
【髙見人材政策推進室長】  一対一では対応していないと思います。先ほどの女性とか外国籍というところもありますが。
【長谷山委員】  年齢データの取り扱いは、大変に難しいと思うのですが。CSTIにはあるのではないかと思います。個人を特定しないデータがあれば、少し調べたほうが良いように思います。
 何を言いたいかというと、梶原委員おっしゃったように、人が移動することで、多様性が維持されイノベーションが生まれると考えると、それは非常に重要であることは理解します。しかしながら現在の大学研究者の年齢構成は、年齢が高い研究者が多く、企業が採用したいのだろうかと感じます。どこの大学も高齢化です。
 研究者にとって異動の魅力がどこにあるのか、例えば役職なのか、研究環境の良い条件なのか逆に、企業から来ている方なのか、年齢を知ると、少しでも分かるのではないかと思いました。
 繰り返しになるのですが、今の大学の年齢構成では、企業に異動して活躍することのできる方は、特別な研究の成果をお持ちの方と思います。この現状か、資料2-2の6ページのグラフの割合を表していると感じます。
 以上、意見です。ありがとうございました。
【髙見人材政策推進室長】  ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。多分これを見るのは研究者の素養がある人なので、データとその解釈が合っているかどうかとか、それから、データの取り方の定義はどうであるかとかということを批判的に見る力をお持ちの方々だと思います。なので、とりあえずは当方の解釈は説明する、あとは見て考えていただく、という気持ちでした。
 迫田先生、お待たせしました。
【迫田委員】  先ほど梶原委員がおっしゃったように、大学周辺でぐるぐる人が回っているというのを異動と言えば異動なのかなというように見ていました。
 少しデータの意味を確認させていただきたいのですが、4ページが、今の一時点を切った研究職の全体数と考えてよろしいですか。
【髙見人材政策推進室長】  はい。
【迫田委員】  そうすると、それに対しての移動数が5ページというように見ればいいですか。
【髙見人材政策推進室長】  そうです。
【迫田委員】  そうすると、逆の言い方をすると、有期雇用の多さと、その人たちの安定性のなさというか、次のページの10万のベースで2万人が離職というように見えますよね。
【髙見人材政策推進室長】  そうですね。離職率と採用と。
【迫田委員】  「採用が2万4,000人」というのがどういうふうに見えるのなというのは少し気になるところです。現在、「非正規」とかいうのがたたかれるようになってきているので、このデータを見て若手の研究者の方がどのように感じるのかなという点が不安に思いました。
 それと、この数字と6ページの数字の関係はどう見ればいいのか、5ページと6ページの数字の関係はどう見ればいいのか教えて下さい。
【髙見人材政策推進室長】  これは元となるデータ、調査が違いまして。
【迫田委員】  違いますよね。
【髙見人材政策推進室長】  はい。なので、4ページと5ページは、今迫田委員がおっしゃったように、全体で10万人強の有期労働契約者がこの時点ではいらっしゃるうちの令和5年度中に離職なり採用された方が、それぞれ2万人とか2万4,000人いらっしゃるという対応関係が成り立ちますが、6ページのデータはまた別でして、基準となっている年度も2022年度ということで、調査の出典も科学技術指標というところでございますので、対応関係はなかなかつけられないものにはなっております。
【迫田委員】  そうすると、有期の方の離職2万人が一体どこに行ったのかというのが非常に心配になるところです。これだけだと非常に「安心感を持てない」データに見えるんですが、いかがでしょうか。
【狩野主査】  もちろん、その可能性は否定されない状況だとは思います。要するに、個人をひも付けして、時系列で追いかけているような調査は多分ないし、簡単ではないと思います。しかも、全数に近い形ですね。その結果として、どのような解釈もまだ成り立ち得るようなものしかないのかなというところは、拝見していて私としては思った次第です。
【杉山委員】  離職から採用にそのまま行っているという人も結構いるのかな。
【髙見人材政策推進室長】  あります。
【迫田委員】  いらっしゃるのですね。先ほどおっしゃったような有期のトラックに移る方もおそらくいるのだと思いますが。
【髙見人材政策推進室長】  本日お配りしております参考資料の3が、こちらの4ページ、5ページのデータの出典になっておりまして、これが本日公表の内容になっているのですが、こちらの第2部の研究者・教員等の異動の状況についてという部分の45ページ、46ページ、この辺りが離職した研究者・教員等の離職理由についてまとめたものになっております。こちらは機関からの回答になりますので、一応全数でございます。
 有期労働契約のほうは、46ページのほうですね、2万695人が離職をされていますが、その方々が、年代別に整理してあり、無期雇用の研究職に行った方がどれぐらいいて、有期雇用の研究職に行った方がどれぐらいいて、というのをグラフ化したものになっております。
 把握できていないというもの、転出先不明もございますが、皆さんそれなりに次のところを見つけて移動しておられるというような解釈かとは思っています。
【杉山委員】  転出先不明と不明が結構、半分ぐらいを占めているので、分からないということですよね。
【髙見人材政策推進室長】  そこはこの調査をやるときにいつも問題ではないのかという御指摘をいただく点ではあるのですが、機関として、辞められる方に行き先どこですかというのをお一人お一人に確認するかどうかというところはありまして。
【迫田委員】  難しいですね、確かに。
【髙見人材政策推進室長】  一定のこういう数字は出てきてしまうというところはあるかと。
【狩野主査】  なかなか、データを取るにも限界があるということを思うところです。
 村上委員、どうぞ。
【村上委員】  私は大学で労働経済学を教えている関係上、今の議論に対して一言発言させていただきますと、自発的であろうと非自発的であろうと、転職をする、組織を変わる状態は流動化と言います。
 自発的に変わる場合には、必ずしも給料が上がることをみんなが求めているわけではなく、先ほど主査がおっしゃいましたように、自分がよりハッピーになるという要因は人によって変わりますので、必ずしも給料が上がらなくても、自発的なものはそうそう大きな問題には基本的にはならず、問題なのは非自発的な場合ですよね。
 そこで、有期雇用の人たちがどうしているのかということにもっとフォーカスをしたほうがいいと思います。今は研究者についてこの図が出ていますが、研究者だけではなくて、URAの場合にはほとんど有期雇用ですから、その人たちがどういう異動をしているのか、そして異動できていればまだよく、異動先もなく、いわゆる失業状態になっているとか、失業でもなくて就業を諦めてしまって非労働力化しているとか、そういうことがやっぱり一番問題になってくるので、そういうところをもっと捉えられるようにしたほうがいいと思います。
 それから、先ほどどこからどこの組織に移っているという図がありました。私も今までに何回か見たことがある図ですけれども、要するにこれは組織を企業、公的機関、大学というカテゴリーで分けて、大学の中、企業の中で流動している人はいるけれども、アカデミアから企業の中に入っていかない。アカデミアは企業から流入しているけれども、逆にアカデミアから企業に行ってないという、非対照な状況がここで見て取れるわけです。結局企業がドクターを採用するかどうかという話と、似たような問題が出ているのではないかと思います。ですから、企業がやはりどういう人材を欲していて、それがアカデミアから流れてくるような人材であるのかどうか、そこのところをもう少し検討する必要があるのではないかということです。
 それから、今、文科省さんの御回答をいろいろ聞いていて思うのは、今回、今後の方向性というところにも出ているように、戦略的な調査分析機能を強化することが非常に大事だと思います。エビデンスベースの政策という話がよくありますが、今、出されているエビデンスというのは、日本は海外と比べてこれだけ違うとか、これだけ遅れているとか、そういうのがエビデンスとされていて、だから、キャッチアップしなきゃいけないということになる。もうちょっと細かく分けて詳細な分析をしようとすると、もうデータがありませんということになり、それはとてもエビデンスベースの政策ではないと思うので、戦略的な調査分析機能を強化するというところにしっかりお金を配分し、重点を置くことが必要だと思います。
【狩野主査】  ありがとうございます。データがまず存在しているのですが、それを今おっしゃったように、多様な視点で解析できる能力も含めて持っている人材が足りないのではないか、とかいうお話とか、あるいは今まさにお話があったように、今進んでいる政策と違う視点なのですが、そっちに立つとこういうデータが必要だと思ったときに、それを提案したら誰かが実行できるような体制とか、いろんなものが本当はより必要だなと思います。ありがとうございました。
 杉山先生、どうぞ。
【杉山委員】  2つ、先ほどの「若手研究者の皆さんへ」という文章の中で、終わりから2つ目の段落。「アカデミアに職を持つ研究者の多数は、新たな挑戦のための活動を進め、その職や環境を変え、年齢とともに安定したポストについていく姿も見えますが、他方そうでないケースも見受けられます」というこの文章が重要だと思うのですが、ぱっと読んだときに、「他方そうでないケース」というのが、新たな挑戦のための活動をしていない人のことかと読めてしまう。新たな挑戦のための活動を進めた結果として、職や環境を変えて、やがて安定したポストにつくと。だけどそうでないというと、新たな挑戦してないだろうみたいに見えてしまうので、文章を少しいじっていただいたほうが意図が伝わりやすいのではというのが1つです。
【狩野主査】  検討していただきたいと思います。すみません、ここ、いろんな意見の調整の結果こうなっていて、そういうふうに見えないまま走っていました。
【杉山委員】  2つ目は、今回はできないと思うのですが、流動性はやはり国際比較をしたほうがいいと思います。アカデミアだけの話なのかもしれませんが、海外だとアメリカなんかはそもそも大学院に入るときにほかの大学へ行く、それから、ポスドクは必ずよそに出て2回ぐらいやると。これは自分自身のキャリアを広げて研究者として成長するために必要な、そういう異動だというふうに皆さん認識されています。日本の場合は結構同じ場所でずっと居続けたりする場合があるのではとか、そのまま続けて特任みたいなところへ行って、その人たちが結果として、無期の職が得られない。先程長谷山さんが年齢のことをおっしゃっていましたが、年齢のことが分かるような海外と日本の比較、日本のいいところもあるかもしれませんし、こういう流動性で何が日本として問題になっているのかというところを少し比較検討して、システムとかを少し変えるというようなことも提言していくといいかと思いました。
【狩野主査】  ありがとうございます。杉山先生の2つ目の点ですが、昔、ポスドクの問題に関係して何かやりなさいと言われたときに、ポスドク1万人計画をされた方々に直接お話を伺ったときに言われたのは、それをアカデミアがやれば、社会がついてきて変わっていくと信じたのでやりましたとおっしゃったんです。ですが、ついていかなかったわけです、この国では。そのようなことがある経験を踏まえると、アカデミアにおいての違う社会規範におけるデータを比較して、こっちがあるべきだと言っちゃうだけだと少しまずいかなという気持ちがしましたので。
【杉山委員】  そういうあるべきではなくて、とにかく比較をして何が違うのか。そこは少なくともデータとして必要なことだと思います。その結果、我々の社会ではこれが一番フィットするというようなことが言えればそれでいいですが。
【狩野主査】  1つはそうですね。
【杉山委員】  明らかに特任教員で任期有期のまま、40過ぎてまでという人が増えてきている現状があると思うんで、それは健全ではないですよね。
【狩野主査】  はい。そこをどうしようかというところはなかなか難しい。ありがとうございます。
 あともう一つ申し上げようと思ったのは、あるところで意見交換をしているときに、創造性がある人たちをもう少し国で増やさないと、社会として今のような変化に耐えられないんじゃないでしょうかということを申し上げたときに、とある企業の関係者の方で、日本の企業数のおよそ9割は中小企業であると。中小企業に入られた方で、ほとんど同期もいないような人数で頑張っているところの中に、いきなり創造性のある人が入ってくると、極めてうまくいきにくいのではないかという心配をしている人がいて、それは経営者の方も、変えないといけないことは分かっているが、日々ぎりぎりで経営を回している中で、変えたほうがいいとかいう話ばかりされると、その方をなかなか受け入れにくいのではないかという、そういう意見を言っている方がいました。私はそういう経営の現場は知らないので本当のところは分かりませんけれども、もしそういうことがあったとしたときに、こういう科学技術行政的な意味での人材育成の結果、出てくるべきであると言っている人たちの中で、もしアカデミアにとどまらない選択をした場合に、どういうところで働く場所があるのかという質問については、やはり引き続き考えていくしかないだろうなということを、思ったりいたしました。
【杉山委員】  私の印象ですけど、博士人材も、産業界は非常に欲してくれているんじゃないかなというふうに思います。
【狩野主査】  期待しております。
【杉山委員】  それとプラス、あとスタートアップというかベンチャーみたいなところがまたどんどん博士を積極的に採っているというような状況もあるので、今言ったような心配はそんなにないんじゃないかなと。
【狩野主査】  あとはそのような企業様の総数と職を求める方々の数の問題かなという気がいたします。あと、それによる出会える確率の問題かなということは思ったりいたします。ありがとうございます。
 長谷山委員、どうぞ。
【長谷山委員】  長谷山です。また、これもデータがないのではないかなと思うのですが、参考資料3の46ページで離職理由が不明となっているところがあります。これも男性、女性の別のデータとは紐づいていのでしょうか。
【髙見人材政策推進室長】  はい、これも紐づいてはいないですね。
【長谷山委員】  わかりました。
【狩野主査】  だから、サブグループ解析をどのぐらいできるようなデータにするかと、だけど、それを初めから狙って全部を取るとまた大変なお金と労力がかかるので、どこまで入れておかなきゃいけないかという、そこのバランスですよね、結局。
【長谷山委員】  いえ、集めたデータがどうかということではなくて、大変に興味深いデータだと思います。以前、自身の本学で調べたことがあって、行き先が分からない教員は女性に多く存在していました。ただ、男性教員に比べて極めて人数が少なく、結果に優位性を主張できませんでした。今回拝見したデータは、これだけの数があれば女性のライフイベントや上位ポジションの獲得など、様々な問題が見えてくるかもしれないと思い質問させていただきました。多くの不明があることは予想していたのですが、予想を超えていました。大変に残念な数値と思います。
【狩野主査】  ありがとうございます。何か御返事が今の時点でありますか。
【髙見人材政策推進室長】  ありがとうございます。研究者、教員等の雇用状況等に関する調査というのをやるのは2回目なのですが、実はここの第2部は、今回初めて取ってみたところであります。有期労働契約、無期労働契約ごとに、どれほどの流動性に関する状況が異なっているのかというのを、年齢では見たいというのがありましたので、年齢別では取っていたのですが、今、御指摘いただいたジェンダー、男女別というところでは取っていなかったので、これを次回またやる場合には、御指摘も踏まえて考えていきたいというように思いました。ありがとうございます。
【狩野主査】  様々ありがとうございました。あと資料2-3がこの先まだ待っておりますので、一旦そちらに移らせていただきます。まず、今いろいろ御意見をいただきましたけれども、さっき申し上げた次回の総会というのが来週なものですから、こちらの内容をそれに向けて変化させるのはもしかして厳しいかもしれません。これを総会で出して、気持ちはいろいろ込めてつくったんだけど、ほかにもいろんな視点をいただいたので、またアップデートというような言い方にするのかもしれません。ここはちょっと事務局と御相談させていただきます。
 それから、あと12期の活動状況についてという1枚紙がございました。こちらのほうは比較的まとめた書き方にしていただいていますので、これはやりましたという内容にとどまっているゆえ、これでよろしければこれで御紹介をさせていただこうかということでよろしいでしょうか。よろしければ、2-3に基づいて今後の話題をぜひお願いいたします。また、今のお話にあったように、さらにどんなことを加えていくとよりよい政策になっていくのか、とか、あるいは、施策がつくれそうかというようなところがどのあたりにありうるか、を踏まえて御意見を頂戴できれば幸いでございます。
 では、説明をお願いします。
【髙橋人材政策課長補佐】  それでは、資料2-3につきまして、御説明になります。少し繰り返しになりますが、本日いただいた御意見も踏まえまして、先ほどの資料2-2に入れ込んだ形で、総会に向けて提出したいと思っています。
 まず、資料2-3の前半の5ページ目までのところは、これまでの審議経過、人材委員会の開催状況であるとか、あるいは、我々9象限と呼んでいますが、4ページ目で全体の整理などをしているところですので、説明は割愛させていただきます。
 6ページ目以降で、まさに9象限ごとに、これまで皆さんからいただいた御意見、あと、それを踏まえた今後の検討課題例というのを書いておりますので、簡単に御説明させていただきます。
 7ページ目になりますが、9象限でいうと左上、一番上の行のところで、科学技術・イノベーションの戦略的推進に当たるところになります。全体の構成としまして、1ポツの研究開発の戦略的な推進、さらに少しくくった形で研究開発費等の確保、活用推進に関連する御意見というものを白抜きの丸で書いていまして、それを踏まえて、今後の検討課題例というのを下の青字点線で囲んだ中に、また箇条書で書いているという状況になります。
 まず、こちらの1ポツのところで言えば、萌芽的な研究を推進するための基盤的な経費の確保が必要であるといった話、また、あわせまして、競争的資金との両輪の体制が必要であるということ。2つ目の点で、研究開発マネジメント人材はURAのような人材を念頭に置いているところですが、今後は研究を支援するのみならず、専門性を生かして、研究、共創していく人材を育成することが重要であると、こういった御意見などをいただきました。それらを踏まえて今後の検討課題例としては、基盤的経費、競争的研究費の確保、それらを活用した人材育成・環境整備、また、競争的研究費を活用したポストの確保であるとか、あと研究を「共創」できる人材の育成・確保といったものを課題例として書いております。
 下半分の2ポツのところでは、産学官共創及びイノベーション・エコシステムの形成・強化としましては、まず、1ついただいた御意見としまして、産学共創を担う人材、博士人材も含めて研究からビジネスにつなげる人材の育成が必要であるといったこと。また、知的財産の管理・活用推進という文脈で、知的財産収入をはじめとする独自財源を確保して人材育成に充てていくといったことが必要ではないかという御意見を踏まえて、次の8ページ目の上半分のところで、検討課題例として、例えば産学官の共同研究や研究シーズを基にした事業化など担う専門人材の育成・確保であるとか、独自財源の確保策の推進といったことを書いております。
 3ポツの戦略的な国際科学技術活動の推進・展開については、科学技術外交は、グローバルな国際関係における日本の立ち位置を決める手段であること。また、外務省をはじめとする関係府省との連携・協力が重要であるといったこと。また、国立研究開発法人だけでなく、大学における経済安全保障の観点も必要であるといった御意見も踏まえまして、検討課題例として、科学技術に関する国際協力や科学技術外交、頭脳循環などの一層の推進、また、大学や研究機関等における効果的な研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保を記載しております。
 続いて9ページ目、こちらは9象限でいうところの真ん中の行になりまして、人材・環境などの科学技術基盤の充実・強化に当たる内容になっています。一部関連するものについては、再掲という形で御意見、あるいは検討課題例を書いているところです。1ポツの大学研究機関等の機能強化・研究水準の向上というところで、特に大学などの機能強化につきましては、先ほども触れました基盤的な経費の確保が必要であるといったことや、運営費交付金に頼らない仕組み、外部資金獲得のための人材確保を含むことが重要であるといった御意見を踏まえて、基盤的経費と競争的研究費の確保と、それらを活用した人材育成・環境整備が重要であるといったことなどを課題例として書いております。
 下半分になりますが、研究体制の構築としましては、地方大学は若くて優れた研究者を獲得できたとしても、研究者として認められた途端に異動してしまうことが多々あると。地方大学としても新たな挑戦が可能となるよう、日本全体の底上げを図る仕組みを考えることが重要であるといった御意見なども踏まえて、我が国全体の研究力強化に向けた若手研究者などの育成・確保に係る環境整備を課題例として挙げております。
 次のページに移っていただきまして、社会で活躍する多様な人材の育成・確保の中で、博士後期課程学生の支援になります。先ほど杉山委員からも御意見いただきましたが、連続的に支援していくことが見えるよう、修士課程の学生に対する支援についても検討することが重要であるといったことや、また、博士人材の社会での活躍に向けてあらゆる方策の検討が重要であることなどを御意見いただいているので、検討課題例としまして、「博士人材活躍プラン」も踏まえた今後の博士後期課程学生に対する支援体系の整理や、アカデミア以外における博士人材活躍の推進方策を検討課題として書いています。
 下半分の専門人材の育成・確保というところについては、先ほどの資料などで出てきていますが、研究開発マネジメント人材についても、雇用に関する多様な制度について検討することが必要であるといった御意見などを踏まえて、今後、研究開発マネジメント人材や技術職員の人事制度などに関するガイドラインの整備・普及などを検討課題例として記載しております。
 11ページに移っていただきまして、学校教育段階における取組ということで、高校段階におけるイノベーション人材の育成方策について検討が必要であるといったこと。また、女子の理系進学率の低さが指摘されているところ、SSHやSTELLAなどの取組を通じて、女子生徒への理数系教育に関する情報を蓄積して政策につなげていくといったこと。また、STEAM教育は重要であるといったことを御意見としていただいています。
 検討課題として、高等学校段階における理数系における高い意欲・能力を有する生徒を伸ばすための仕組みであるとか、小中学校段階における地域・性別などを考慮した科学技術に関する興味・関心の喚起・促進、また、科学コミュニケーションの活動とSTEAM教育との連携などを課題として書いています。
 また、先ほどから少し議論になりましたが、人材の多様性確保ということで、日本はやはり女性や外国人が少なく、各機関におけるダイバーシティの確保が重要であるといったことから、それらを確保するための方策を課題として書いています。
 一番下に1行、先端研究施設・設備などの基盤整備の促進というのを書いていますが、これまでの御意見では、ここにカテゴライズされるものがなかったので、事項だけ書いているところです。
 12ページになります。9象限でいうところの一番下の行に当たります。社会との共創に関する取組の発展・拡大として大きく3つ。
 1つ目のところで、科学技術と社会に関わる研究基盤の強化。これはまさに先ほどから出ているデータの話になるかと思いますが、各国との比較分析によるエビデンスが重要であるということ。一方で、そういった成果や効果把握を検証する際に、現場の負担が少ない形で取り組んでいくことも重要であるといったこと。それらを踏まえた、科学技術政策に係るデータの効果的な収集・活用体制の強化。
 2番目、科学技術振興等に関わる制度・枠組みの整備・改革として、再掲になりますが、経済安全保障に関する観点が必要であり、大学などにおける効果的な研究インテグリティ及び研究セキュリティの確保が必要であるといったことを書いています。
 最後、社会共創に向けた取組の推進・発展として、科学コミュニケーションに関連するものです。社会と科学技術をつなぐ専門人材は、ELSI研究者だけでなく、多様な人材も含めるべきであるといったこと。また、ELSIは科学コミュニケーションの中の1つの視点としてまとめていくべきであるといった御意見をいただいていまして、検討課題例としましては、社会課題解決やELSIを含む科学コミュニケーションの推進及びそれに対応する人材の育成というのを書いております。
 説明は以上になります。
【狩野主査】  ありがとうございました。非常に広範にまとめていただいておりまして、聞くところによると、さらにこのほかにも意見は担当では集めておられるようでありますけれども、委員会としてはこの範囲であるということでありました。
 ということで、これに対して加えるもの、修正するもの等々、1個ずつでも構いませんので、ぜひ御意見を頂戴できればと思います。いかがでしょうか。迫田先生、お願いします。
【迫田委員】  10ページのところに、「アカデミア以外における博士人材活躍の推進方策」という点は書いていただいていますが、既にリーディング大学院のときに成功例をつくった実績を文科省はお持ちなので、それをもっと生かしたらいいと思います。リーディング大学院では、社会に出ることを相当意識されてカリキュラムを組んでいたと思います。これが評価され、修了生は取り合いとなっていました。産業界でも必ずしもテクノロジー企業だけでなく、商社や様々な企業が採りにいっていました。当時採用の責任者をやっていましたが、とにかく採用するのが大変だったと記憶しております。そういう成功例はあるので、それを生かしていただくのが一番大事かなというのが1点です。
 それから、もう一つは産業界での活躍は、大企業に就職するというのもありますが、自分でイノベーションを起こす、ベンチャーを立ち上げるというのもあると思います。いろんなチャンスはあると思いますが、いかんせん水口委員のように一回で成功する方はあまりいません。たくさん失敗して、その中から成功する者が生まれてくるのが通常です。そのときのセーフティーネットみたいなものを考えていかないと、なかなか思い切ってチャレンジできないのではないかと思います。
 例えば、私は今、日立ソリューションズという会社におりますが、若手をシリコンバレーへ送り出し、何人かのチームで事業を立ち上げ、実際にベンチャーキャピタルから賃金を獲得させるものです。資金を獲得できれば、会社を退職して、自分で会社を立ち上げさせます。1年で資金を獲得できなければ帰ってきますし、立ち上げても失敗したら、復職するのもありという制度をつくっています。起業を促すのであれば、失敗したときの保障というか、次の道へのステップを考える等、何らかのセーフティーネットを考えてあげるのも手かなと思います。
 例えば、研究者のデータベースみたいなのがしっかりあって、どんな研究をやっているのか、産業界の方が容易に見に行けるようになっていれば、こういうことをやった経験、こんなことで失敗した経験がある人はぜひ欲しいというような事例がたくさん出てくると思います。民間企業だとリンクトイン等で世界中とつながっており、人材獲得に活用されています。先ほどの数でいうと20万人ぐらいでできるのであれば、そんなに難しい話じゃないと思います。それがあれば様々なデータも取れますし、リンクトイン等の連携も図れます。研究分野や成果をどんどん自分で書き込んでアピールして、社会に発信していく、研究や事業化の資金を募るというようなこともやれるのではないかと思います。そういう検討もされたらいかがかなと思いました。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。5の2に関して、リーディング大学院などの過去の経験をもう少し活用できないかということと、それから、調整のときのセーフティーネットはもう少し何かできないかということと、3つ目については、データベースの活用ですけど、リサーチマップというJSTが動かしているのがありますので、例えばあれをそういう意味で解析する技があればいいのかなと、今伺いながら思ったりしたところでございました。
【迫田委員】  社会との結びつきみたいなところができたらありがたいと思います。
【狩野主査】  そうですね。それの項目だけ加えればいいのかもしれなくて、だとすると、こちらは監督官庁でおられますので、必要性を理解したら入れてと一言言うと、あとは今、下々は入れないといけなくなっていますので、入れてもらえるのかなということは思いました。ありがとうございます。
 水口委員、お願いします。
【水口委員】  スタートアップ支援や学生の支援で、課題となってくること、もっとあったらいいなと思うこととして、起業の準備や起業後に対する生活費の確保がポイントかなと思っております。私の場合はリーディング大学院のプログラムから奨励金をいただいておりましたので、さきほど話のあったセーフティーネットになっておりました。なので、失敗を気にせず挑戦することができました。博士課程の3年間の間に会社が回るようになり、博士号取得後は自社から報酬を出せるようになりましたので、リーディング大学院におけるサポートは大変助かりました。また、博士号取得後に起業するというパターンもありますが、その場合、会社がすぐに給料を出すことは難しいため、その間の例えば半年から1年、次の資金調達まで等、会社が回るようになるまでの期間の生活費があると、挑戦が生まれやすい土壌に繋がっていくと思っております。
 身近な例で言うと、教員が起業したい学生を博士号取得後にポスドクとして雇い、その間に起業の準備をさせている場合があります。そうすると、ポスドクをやりながらお給料をもらい、生活を維持しながら起業の準備を進めることができますので、博士人材がより起業しやすい環境になってくるかなと思います。なので、このような環境をうまく確保できるといいかなと思っております。
【狩野主査】  ありがとうございました。セーフティーネットとして生活費の確保という観点ということでした。もしそれを実現、国費でするとなると、多分大学院生に対する支援のような、全員にはできないんだけど、どうやってか選んでみたいな話になりそうな気がします。その場合に、どうやって対象者を選んだらいいのかという指標ですね、これをきっと考えないといけないということを1つ思いました。あるいは、トビタテ!JAPANのようなマッチングファンドにして、あちこちからお金を、例えば、文部科学省様の名前で集めた結果をうまく配分するという形なのか、どっちかなと思って聞いていました。ありがとうございます。
【水口委員】  あと、客員起業家というようなところも、今、進めつつあるようなところがあるかなと思っていて、VCとかと連携しながら、そこに所属するんだけれども、そこでお給料をいただいて起業の準備を進めるというようなところもありますので、そういうところをより充実していくと、より起業への挑戦がしやすくなってくるかなと思います。
【狩野主査】  VCの方はそれなりのお金を持っておられると思いますので、その中で教育的な趣味がある方をうまくつなぐと、今のができるのかなということも少し思いました。ありがとうございます、そこですね。多分国費でやるとなかなか大変なときがあるかもしれないですが。
【奥人材政策課長】  政府全体としてスタートアップの支援策というのは増やしているところなので、その中で、各省庁の役割分担に応じて取組を進めているところですが、文科省はやっぱり大学発スタートアップに対する支援が中心で、STARTという基金をつくって支援策をやっています。大学とかの研究機関に対する研究開発費としての支援をしているので、研究開発費の中で、ポスドクであるとか、一部の研究員の方々のお給料も含めた支援というのは、その中で支給できるものは支給できると思います。
 一方で、大学に本籍を置いている人というのが中心になってしまうので、大学を出て、実際スタートアップ立ち上げて、その後どうするのかというところになると、やはり文科省の手を若干離れてしまうので、経産省はじめ、あるいはVCはじめ、民間からの資金調達というのをお願いせざるを得ない部分があるかと思います。なので、フェーズを分けて、どこの機関に所属しているかによって支援策は大分変わってくると思うので、そこを総合的に見ないといけないかと思います。
【狩野主査】  いずれにせよ、でも大事な視点をいただいたと思いますので、こういう委員会の意見の結果として、省庁横断的にやるべきであると委員側は言っていますという話で進めればいいかなという気もいたしました。ありがとうございます。
 村上委員、お願いします。
【村上委員】  私は7ページの2のところ、イノベーション・エコシステムの形成・強化というところが、今、見るとちょっと物足りない感じがしました。ここで言っているイノベーション・エコシステムというのは、起業、スタートアップが中心であるように思いますが、日本は橋渡しの機関が、組織としての機関が足りない。だから、死の谷と言われているところをなかなか克服できない。その機関として、例えば、コンサルとか、ドイツのフラウンホーファーみたいな組織があると博士人材の雇用機会も見込めると思います。
 私は、この年末年始に、海外で博士人材が過剰だという論文を何本も読みました。この間、文科省さんが博士人材活躍プランで日本に博士を増やそうとしているのは、海外との差が大きいからだという話をなさっていましたけれども、海外では博士人材は過剰になっている。要するにPh.Dの人たちで、学歴過剰と学歴適当、つまり、ちょうど自分の学歴に見合ったような仕事をしている学歴適当な人とを比べると、学歴過剰の人の賃金が低くなっていて、そういう人たちがたくさんいるということが、アメリカ、イタリア、韓国、スペインとか、いろいろな国で起きているという論文を何本か読みました。
 そういうことを考えると、日本は民間企業に博士を雇用してくださいとお願いするだけでは恐らく吸収し切れなくて、雇用機会を与えるような組織を積極的にもっとつくっていかなくてはいけない。ちょうど橋渡し機関に相当するようなところが足りないので、経産省さんもいろいろ考えていらっしゃると思うので、ここに文科省、産業界、経産省がより対話を深めていくことが必要と書いてある通りだと思います。要するに人材を育成するというのは文科省さんの立場だから、博士人材を産業界等でも活躍できるように教育するためにはどうしたらいいかという発想になると思います。それももちろん大事ですが、それだけでは増加する博士人材を吸収し切れず、そういう橋渡しになるような機関、日本版フラウンホーファーみたいなものをつくるとか、今理系で本当に優秀な人が行きたがっているコンサルなど、起業だけではないエコシステムの強化をするなどがないと、これから増えるであろうPh.Dの人たちの活躍の場を十分確保できないと思うので、そういうことも含めて、経産省さん等とも連携してやっていただきたいと思います。
【狩野主査】  ありがとうございました。産学官共創のところで橋渡しのような機能がもう少し増えたらいいのではないか。そこにPh.Dの雇用の先もあるのではないかという御意見だったと思います。私もOECDのPh.Dの活躍に関するレポートを読むと、全く今おっしゃったことと同じことが書いてあって、日本における事情と全く同じことがいっぱい書いてあって、どうしようかなと思って拝読したところでございました。ありがとうございます。
 隅田委員、お願いいたします。
【隅田委員】  2点あります。1点目は、現代の地球規模課題とか地域課題を考えると、科学技術分野で専門性がある高度な博士人材というのを、一定数育成するというのは未来のための社会の責任だと思います。努力目標とかじゃなくてつくらなくちゃいけないと思うんですよね。まず、それが前提としてあるかなと。
 そうしたときに、今、博士人材、分野の偏りもありますけど、博士号を持っている人が、所在地とか業種のばらつきも、かなり偏りもあるんじゃないかと思うんですよね。そういう分析結果はまだなくて、やはり日本全体、地方で例えば博士人材を雇用する企業とかに補助を出すとか、もっと国全体でプロフェッショナルな人がたくさんどこにでもいるような、何かそういうイメージをつくっていったらいいんじゃないかなというのが1点目です。
 2点目は、スライド11ページです。先ほどのところで、教育で、どうしても小中学校は興味・関心で、高校から高い意欲というようなイメージが素朴にあるのかもしれませんが、実はそうではなくて、小中段階からジュニアドクター事業等においてものすごい能力や高い関心のある子供たちがいるんですよね。あと、TIMSSの調査結果が最近出ましたけど、日本は上位と言いつつ、トップは全部シンガポールで、算数、数学、理科も、小4、中2、全部シンガポールです。理科でいうと、小4も中2もシンガポールと日本の児童生徒の平均点に50点ぐらい差があるんです。しかもそれは知識だけではなくて、知識とか応用とか推論で問うていて、50点の差があるわけなんですよね。むしろ小学校の理科に対しては児童の意欲は高かったりしますし、小中学段階から質的にレベルが高い理科教育というのをもう少し強めに入れてほしいというのがあります。そうしないと博士人材を常に24歳まで待つのかということになってしまいます。もう少し積極的なのがあっていいかなと思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。後ろから言うと、小中高、各段階に分けた言い方になっているんだけれども、できる人はもっと早くからできるからどうにかできないかなということが1つありました。それから、様々な専門分野の方を国として用意しておくことが大事ではないか、というお話だったと思います。これと人口減少をどのように結びつけて、国力をさらにもう1回伸ばし直さなきゃいけないというところをどうやって結びつけるかなと思って、今お伺いはしておりました。理想は共有いたします。ありがとうございました。
 梶原委員、お願いします。
【梶原委員】  ありがとうございます。7ページのところで、我が国は重点的に支援すべき分野への投資が後手に回っているというこの一文を見たときに、今の私は重点的に支援すべき分野というところ、もしかしたら、URAですとか、いわゆる研究開発を支援するマネジメント人材の分野のことをおっしゃっています? そんなことはないですか。この表現見て何を思ったかというと、経済安全保障の話が割と最近出ているので、どちらかというとこの分野というのは、研究分野のことを指しているのかなと思いました。
 ここで入ってない、最後に出ていますが、経済安全保障のところで重要な分野というか、いわゆる戦略的自立性とか戦略的不可欠性、日本はどこをやるのと。重点的に支援というか、投下しなければならないところという印象が最初に思いました。それは多分、この議論を始めているときに、専門性を生かして研究を「共創」できる人材(研究開発マネジメント人材)の話題があったので、ここでの意味はどちらでしょうか。研究開発マネジメント人材と見ると、例えばURAや技術職員ですとかの重要性が話題になって、知財の関係についても、やはりオープン・クローズの観点で、産業界との共同開発では、しっかり守秘義務を守ってください、となります。その延長でいくと、最後に出てくる研究セキュリティとか研究インテグリティの要素が非常に重要です。今までどちらかというと研究インテグリティの話では比較的研究者個人にフォーカスしているような感じもしますが、研究セキュリティのところまで広がっていくと、より組織的に研究者を支援する、組織がしっかり対応しなければならない領域に入ってくるので、マネジメント人材と言われるところの中の定義がもっと広がっていくような気がします。企業だと、輸出管理をどうするとか、そういう専門人材が当然いるわけですけれども、当然大学にもアカデミアにもそういう人材がいらっしゃると思います。どこまでやれていますかという意味では、一律にできているとは必ずしも限らなかったりするかもしれません。企業とのデュアルユースの先端科学、エマージングテクノロジーの共同開発は、日本の大学では何となく避けられてきた感じですが、よりオープンな環境が大学のありようだったというところを変わっていかざるを得ない、いってほしいのが産業側としての気持ちです。しっかりセキュリティ、インテグリティできていますよという大学だったらもちろんいいですが、そこに対してもっと支援しなきゃならない要素があるんだったら、そういうところも視野に入れていく必要があると思いました。
 これから、7期に向けて考えていくと、経済安全保障の話が割とクローズアップして出てきていますので、そういうふうに思いました。
 先ほど、9割が中小企業というお話をされましたが、本当に地方での博士人材の活躍も重要と思います。PEAKSのプログラムのイベントで三重大学の西村先生が博士人材100人計画のご紹介をされましたが、あれはまさしく大学の人というよりも地域の中堅、地元の企業の社長が博士になると何が変わるかというところの取組をされていました。そういう方々のほうが博士人材への理解が深かったりするのではなかろうか、可能性が大きいのではと思ったりします。あとスタートアップも結局は、大企業に行くよりも、自らが実践として起業をして、事業を起こしていくという意味で、社長ですよね、それでやっていくと。
 どんどん変わっているということで、むしろ問題は、大企業が変わらなきゃいけないですが、多分今までの社会システム上の流れがあるので、そこを変わっていく業種から、だんだん広がっていくはずですから、今の状態をどんどん伝えて広めていくということは重要だと思います。いずれにしろ社会システムを変えていかなきゃならない、変えなきゃいけないと思う人たちは着手しています。だから、前に言いましたが、そういう企業を加点してあげるとか、経産省と一緒に組んで何かやるだとか、いろいろあり得ると思います。博士人材を活かしていく企業こそ、変わる意欲があって、事業ポートフォリオ変革もできるとか、フレキシブルな柔軟性があって、レジリエンスがある企業という評価ができるとか、実際そういうのは実践的に出てきていると思います。
【狩野主査】  ありがとうございます。重点的に支援すべき分野という意味合いは何ですかというのが1つ。それから、マネジメント人材というのはカバーできる範囲はどこまでなんだろうかという御意見。そして、博士人材の、言ってみれば最低要件として何を置いてあるから、だから企業で使えるという表現になるのかなということもあったと思います。あるいはそういうところの活動を既に始めているところを見つけて支えるというような取組ができないかという御意見をいただいたかなと思いました。
 今回、今期最後でありますので、皆さん言いたいことを言っていただくことを、若干優先させていただきたい気持ちがしておりまして、今の検討課題のところでまだ御発言いただいてない方はぜひと思います。杉山先生、お願いします。
【杉山委員】  先ほど梶原さんおっしゃった7ページのところ、文章をやはり切らないとおかしい。「我が国は重点的に支援する分野の投資が後手に回っている状況」の次に「研究開発マネジメント人材は」って中身がつながらないですよね。
【奥人材政策課長】  これはニュアンスとしては研究分野のニュアンスで、ただし研究分野への投資をする際に、エビデンスベースできちんと評価してやらないといけない。なので経営戦略や研究戦略ができるようなマネジメント人材をきちんと確保していかないといけないという文脈です。
【杉山委員】  全然これ、そう読めないので、数文字入れてください。
【奥人材政策課長】  失礼しました。
【杉山委員】  それから、9ページ、今後の検討課題のところで、競争的研究費を活用したポスト確保というのがありますが、日本の場合、アメリカやドイツに比べて研究費の額が桁で違っていて、多くの研究者が取っている科研費で基盤Cとか基盤Bとかではほとんど人が雇えず、基盤Aであってもせいぜい1人雇うことができる程度です。ところが、アメリカやドイツとかで、割と有力な研究者だったら間違いなく取れるレベルで5,000万とか出てきて、それでラボのポスドクや、学生も、確保するという実態がある。それで競争しなきゃいけないというので、やはり科研費の額が足りないというべきなのか、少しその辺りに踏み込まないといけないと思いました。
【狩野主査】  ありがとうございました。人を雇うというのであれば、桁が違うという点を特に強調いただいたと思います。
 桝先生、どうぞ。
【桝委員】  ありがとうございます。検討課題に関しては、12ページ目の社会共創に向けた取組の推進・発展の部分で意見といいますか、今後の検討課題で、すごく特に後半の社会課題解決やELSIを含む科学コミュニケーションの推進、対応人材の育成という検討課題に入っていただいたのはすごくありがたいなと思いつつ、どうしても理系人材という話になりがちなのですが、特に社会課題解決の部分でいうと、ちょうどこの前の内閣府の専門調査会で出ていたのですが、やはり課題解決、課題ドリブンの科学コミュケーションというのが結構これから推進されていくという感じがしたので、人文系の人材という言葉が少し入ったほうがいいかと思っております。対応人材というのがありますので、そこに理工系と人文系人材ともに必要になってくる話になってくるので、理工系の人材が自ら課題解決、社会課題を探してくるというよりは、人文系人材から逆に科学コミュケーションに絡んでいってほしいというところもあるので、そういった人文系のというようなコメントも、言葉が加わったらいいと思いながら拝見しております。
【狩野主査】  ありがとうございました。私としては、誠に共有するところです。理系に限っている理由が、ここの科政局という立てつけのせいなのかどうかなというところだけいつも思っておりました。本来は対象によらず、人と違えて、違っている内容をほかの人に活かすために、理由もちゃんと説明できる人という、そういう意味だと私は思っています。それをなぜか理系というところに閉じ込めたくなるのがどうも現状かなというところが気にはなっておるところです。個人的な意見でした。ありがとうございます。
 稲垣先生、どうぞ。
【稲垣委員】  ありがとうございます。若手研究者の研究環境という観点では、やはりテニュアトラックでPI、研究主宰者として育てる方向にはシフトされていますが、それを支えるやはり支援人材、技術職員だったりデータを出す人、あるいは設備のことは極めて重要になってくると思いますので、今、11ページは3ポツで先端研究施設とか基盤整備の促進という項目しか書いてないとおっしゃっていましたが、やはり機器の共用とかを、今以上に取り組むようなことを課題として取り上げておいたほうがいいのではないかと感じました。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。3番、何もなかったところに必要であるということを今、頂戴できました。
 そうしたら、私も少し思うところがあるのをざっと申し上げます。1つ目に、課題のところの書き方。もしかして問いの形のほうが先に進めやすかったりしないかなと。今は「~について」になっているんですけど、ついて何を知りたいのかがもう一つやらなきゃいけないかとかということが、それのほうが分かりやすいのではないかというのは1つ思いました。
 続いて、基盤的経費。その必要性を説くに当たって、なかなかアカデミア以外の人に分かっていただきにくいという問題がずっとあるというふうに思っています。その理論は一体何なのかということについては、少し探していく必要があるのではないかというふうに思っております。科学の発展の歴史を見れば大体意味は分かると思うんですけど、それを並べるだけで議論になるのかどうかというところがまたちょっと問いです。
 次に、支援する対象の分類。どういうものを支援しなきゃいけないかという立てつけとして、3つ分類ができるかもしれません。「アカデミアの中でのボトムアップ」と、それから、さっきの社会課題というのはその意味だと思いますが、「広く社会全体からボトムアップで上がってきた課題や問に対して何をするか」というところと、あとは「政策的に必要だというふうにトップダウンで決める」。それらの柱に対して一体政府の全体で、どういうお金が回っているのか、あるいは、民間からも含めてどういうお金が回っているのかという調査がないと、全体像を捉えられないのではないかということは思っておりました。
 博士人材の最低要件。これをある程度合意する必要があるのかと思います。そこの立てつけをうまくやらないと、相性が十分じゃない教員のところに行くと、必要以上の内容や活動を求められたり、必要してないものを求められたりして大変なことになる人もいるのかと思います。この辺というのはどうやって整理ができるかということは思っておりました。
 国際科学技術に関して。頭脳循環のところで、結局どういう魅力があるから日本に来てもらえていいのかということの言語化がまだこの国はできてないんじゃないかということを思っています。一体どういう言語化ができるかということは思っておりました。
 環境整備。結局のところの科学の活動はデータを集めることが活動なわけですが、その基盤というのが、もし流動性というのを機関ごとの流動性も考えたときに、どこまでのものが共通機器で用意されていて、データ取得ができればいいのかという、そういう視点というのが今あまりないように思っております。例えば、とある私が出身した大学では山ほど機械があるんだけど、今私が所属しているところではそれに比較して大変少ないわけです。そうすると、もし人材が流動したときに、同じ研究環境とは到底言えないわけです。そのところの理由を、各組織の経営が問題であるとか、お金の集め方が残念だとか、そういう言い方で本当にいいんだろうか、というのは思っているところです。
 多様な人材の育成・確保。ある国研の例として、全員を無期雇用に最初からしていますという国研の例がございまして、ただその結果として、その人が研究をずっと続けられるかというと、それは評価の結果決まりますと。違う職種に移ってもらうこともあるかもしれないんだけど、雇用だけは無期ですという言い方のところを最近伺いました。そういうやり方のほうがもし日本として合っているんであれば、全体にそういうふうに持っていくという考えもあるのかもしれません。ワーキング・グループの結果として思った次第でございます。
 社会で活躍する多様な人材の中の小中高のところ。クリエイティビティ(Creativity)の理論に、「ビッグC」という言い方と、それから幾つかまたクリエイティビティの種類があるという話があります。大きな価値が、おおよそは本人が死んだ後に人類全員が分かるようなものを「ビッグC」とすると、それに対して日々の思いつきが「ミニC」であるとか、もうちょっと多くに認められるレベルのが「リトルC」であるとか、あるいは専門の職としてやっている人の成果は「プロC」であるとか、その成果の中から死んだ後にビッグCになるかもしれないという理論があります。「ビッグC」を求める話はたくさん聞くんですが、日々の「ミニC」をどういうふうによりたくさんの人に出していってもらうかという議論があんまりまだ聞いてないなと思っております。そういうこともここで必要なことではないかと思います。
 データの効果的な収集・活用体制の強化というところ。先ほども話がありましたけれども、視点が多様化できるかということが非常に難しいときがあるかと思います。今までですとNISTEPなどの組織が、主に政府の方針に沿ったデータの収集はできていたと思います。ただ、今日出てきたような、多様な視点がこれから必要になったときに、政府として合意ができてなくても、実は大事だと思う人がいた場合に、そのデータを集めるという作業は一体誰ができるか。例えば、SciREX事業で現在、いろんなデータを取る研究者を集めているけれども、あれも限定された研究組織群の中で手を挙げた人という、そういう立てつけになっています。あんまりそれをボトムアップでやるということはできていないというふうに私は考えております。しかしここでのボトムアップ性も今後、こういう変化する時代においては、実は大事なことなのかなということを思ったりもいたしました。
 以上、個人の意見でした。
 ということで、よろしければ、今期これでそろそろということでありますが、髙谷審議官と先﨑さん、何か所感について、あるいは、今期での振り返りついて頂戴できればと思います。いかがでしょうか。
【先﨑科学技術・学術総括官】  では、私のほうから。今期、大変ありがとうございました。私がこの局に来たのは去年夏なのですが、人材についての政府全体の、あるいは産業界全体の研究人材に対する理解、関心というのは非常に高まっているという気が色々な場面でいたしました。まず、一番象徴的なのは、研究開発マネジメント人材についての予算が新規としてついたということです。これはもちろん人材政策課長、室長以下、課の人が頑張ったからなのですが、経済財政諮問会議の関係で、私、3か月ぐらい議論をする機会があったのですが、研究パフォーマンスというと、いつもサイテーションと研究費の話に終始して、話が先に進まない感じがどうしてもあるところ、こちら側の主張として、FTEとして研究者の相対的な研究の時間の割合が短くなっており、これを支えるためには研究開発マネジメント人材、テクニシャンが必要だという主張が、すっとその会議のメンバーの方々の中に入っていくという場面を何回も見ました。それは非常に進歩したといいますか、変わってきていると感じたということです。
 それから、経産省の話も先ほどから出ていますが、今、経産省と一緒に、これも人材政策課の仕事で、博士人材をどうやって民間企業にマッチングさせるかというパンフレットみたいなものを作ろうといった仕事をしているのですが、隔世の感があるという気がしました。私は10年前、大学で仕事をしており、研究推進部の仕事をしていたのですが、そのときやはり経産省の同じ会議室で同じような会議があって、企業と大学側が博士人材をめぐって罵り合うというのを何回も見て、そのとき大学のボスから、もういい、帰ろうと言われたのを覚えています。今や企業は全く変わっておりまして、企業側の人たちは博士人材を獲得することによって、自分の企業のゲームチェンジを図りたいと確実に思っている。ただ、自分たちの企業の中でどうやって博士人材を使ってゲームチェンジを図っていくのかということが、まだきちんと自分たちの中でも消化し切れていないと同時に、大学と博士の学生というものがまだよく理解できてない。どうやってここに関わっていったらいいのかということを真剣に考えているというのを感じてびっくりいたしました。これもやはり時代の変化というとそれまでですが、皆さんの努力があったからだろうと思います。
 また、J-PEAKSの関係で、各大学の学長さんとお話しすることが非常に多くなったのですが、もともとJ-PEAKSは研究のお金をつけるというものではなく、マネジメントを変えるための予算なのですが、やはり特に若手、中堅の人材をどういうふうにしてエコロジーに育てていくのかということと、URAに対する関心が非常に高く、本当に真剣に考えているということが感じられました。
 大学とスタートアップも、大学発スタートアップはエコシステムとして大学としても何か思い切ったことを、例えば人材育成であるとか人材獲得ができないという観点からも、シーズの社会貢献はもちろんですが、考えていかなければならないということはひしひしと感じました。そういう意味では非常に今、人材という点が色々なディメンションで議論されていて、しかもそれは決して悪い方向ではないということを、この半年あまりですが、実感しているところでございます。
 多分そういった議論を集約して、起点となっていくのがこの委員会だろうと思いますので、また今後とも引き続き、第12期は今回で終了ということでございますが、また御指導いただければと思います。本当にありがとうございました。
【狩野主査】  先崎総括官、大変ありがとうございました。
 では、髙谷さん、お願いします。
【髙谷大臣官房審議官】  ありがとうございます。まずは今期、御尽力いただいた方々、ありがとうございます。私も夏に先﨑と同じぐらいのタイミングで着任をして、すごく記憶があるのが、やはりシン・ニッポンイノベーション人材戦略です。それをベースに、議論がまた始まっているところでございます。引き続き、私ども事務局および、次の期にしっかり基本的な考え方を引き継いで進めていきたいと思っています。
 進めていく上で、1つ人材の話は人だと、当たり前過ぎるのですが、今日も議論があって、やはりマクロなデータや、あるいは全体のいろんな方向性で私たち議論をしますが、実は私個人は流動した経験はありません。そういう意味では、私たち自身が一番怖いのは、やはりデータだけで議論をしてしまうことです。私、全くここではないほかの議論で、実は議論をしていると要はデータだけにいってしまって、全く人が関心を寄せてくれなくなったというようなところがあります。まさにこの分野、そうなってはいけない分野で、そういう意味で現場を知る先生方に御参画いただいているのもそうですし、あと私どもも、今、事務局は足しげく現場に通って意見を聞いてくれていますが、人が何を思うかというその重要性をしっかり踏まえて、引き続き13期にいろいろ検討を進めてまいりたいと思いますので、12期でもし一段落される方々も、事務局のほうに御意見あればいただければ受け止められるところは受け止めていきたいと思いますし、人の気持ちを大切に議論していけたらと思っております。
【狩野主査】  温かい御声援等々大変ありがとうございました。
 今期御参画いただきました皆様に、改めて厚く御礼を申し上げたいと存じます。たくさんのお考えを共有していただきまして、大変ありがたく存じました。
 では、最後に、事務局より事務連絡お願いできますでしょうか。
【髙橋人材政策課長補佐】  本日の会議の議事録につきましては、作成次第、皆様、主査に御確認いただいた上で、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
 以上になります。
【狩野主査】  本日、これにて閉会といたします。では、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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科学技術・学術政策局人材政策課