人材委員会(第104回)議事録

1.日時

令和6年11月27日(水曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 東館 17F 研究振興局会議室 及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. 実社会課題に対応するコミュニケーションの推進事業に関する事後評価について(非公開)
  2. 今後の科学技術・人材政策の基本的方向性について
  3. その他

4.出席者

委員

 狩野委員、稲垣委員、梶原委員、杉山委員、長谷山委員、桝委員、水口委員、村上委員、柳沢委員

文部科学省

 井上科学技術・学術政策局長、髙谷大臣官房審議官、先﨑科学技術・学術総括官、奥人材政策課長、白川人材政策課長補佐、井上科学技術社会連携係長、服部科学技術社会連携係専門職

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会(第104回)
 

令和6年11月27日

 
 
(議題1:実社会課題に対応するコミュニケーションの推進事業に関する事後評価について議論)

【狩野主査】  それでは、議題2から公開となります。ここまでお待ちの方々におかれましては、ありがとうございます。お待たせをいたしました。
 前回の人材委員会で、最後に議論の対象といたしましたけれども、十分な時間がございませんでした今後の科学技術・人材政策の基本的な方向についてということで、奥課長から改めてポイントを御説明いただきたいと思います。私が、最初に論点が分かっていたほうが聞き取りが楽な人なので、フライングで先に論点の紹介をさせていただきますと、事務局から5つ頂いております。1つ目、全体像の俯瞰的、体系的な整理がこれでうまくいっているかどうか。2つ目、研究者等の育成・確保に向けた競争的資金の研究費の在り方、戦略的な活用についていかがでしょうか。3つ目、技術者に関しての体系的育成・確保方策についていかがでしょうか。4つ目、大学の経営等に関わる専門人材、いわゆる研究開発マネジメント人材の育成・確保についてはいかがでしょうか。5つ目、先ほどもちょっと話題に出ましたが、SPRING事業の今後の在り方など、博士後期課程学生支援の在り方についていかがでしょうか。以上の点を、事務局からの注目してほしいポイントとして頂戴しております。
 私として、あともう一つ加えさせていただくと、前から主査を任じていただいている者としては、せっかく前回まとめました「シン・ニッポンイノベーション人材戦略」で、「つなぐ」「深める」「活かす」という3つの柱を掲げましたけれども、これらについて今回の議論の中でどのように生かせるかということについても少し考えをいただければ幸いです。特に問題は評価指標かなと思っておりますけれども、これもお願いできたらと思います。というのも、先日、OECDのCSTPで、この内容をご紹介する機会をいただきまして、今の「シン」と、それからこれから奥さんが説明してくださる内容について、概要についてお話をして、世界的に非常に重要な論点ですとという話をいただいております。従って、ぜひこちらで具体化をしていけると世界を先導できるということで、科学技術の中身だけじゃなくて、政策についても先導したいという気持ちで、今ちょっと御紹介をいたしました。
 では、奥課長、お待たせいたしました。お願いいたします。
【奥人材政策課長】  ありがとうございます。では、資料に基づいて、簡単に御説明だけさせていただきたいと思います。
 時点更新以外は基本的に全く同じ資料ですし、前回時間が足りなくて、一部の先生方しか御意見いただけなかったので、今回改めて、できれば全員の先生たちから御意見いただきたいということで、改めて同じ議題を設けさせていただいた次第です。本当にポイントだけ御説明させていただきます。
 2ページ目、3ページ目は、科学技術・人材育成施策の今後の全体像というのを、人材政策課、我々の観点だけでまとめたものになっています。
 2ページ目のところで、基本姿勢として3つ挙げています。まず資源配分、資源が限られる中で、今後の資源配分の重点化の観点から、戦略性という視点が必要だろうということ。あるいは文科省として、組織であるとか人材であるとか施設といった、中核的な基盤の維持・強化というのはミッションとして重要だろうと。あるいは、社会的課題が複雑化する中で、社会と共創するという考え方が必要だろうということで、この3つの視点で全体の政策を俯瞰してみたいというのが挙げています。
 その3つの観点から全体を俯瞰したものが次のページになります。この検討については、参考資料2でお配りしているシン・ニッポンイノベーション人材戦略を、さらに拡張して具体化して個別の施策まで落とし込みたいという趣旨で御提案させていただいているものですので、連続性は基本的にあるものだというふうに思っています。
 それで資料2、次のページが全体の俯瞰になります。先ほどの3つの柱に沿った形で、それぞれの柱ごとにさらに個別に項目立てをし、全体を9象限で整理させていただいています。
 左上が研究開発の推進ということで、いわゆる競争的資金戦略に関するものになります。2つ目が産学共創、イノベーション、あるいはスタートアップのシステム改革になります。3つ目が国際的な連携強化、ここら辺は予算等の資源が限られる中でも戦略的に取組を進めるべき分野だというふうに思っています。
 5のところは、人材・環境の基盤的な充実・強化とありますが、いわゆる大学等の組織、それと2ポツ目の人材、それと3ポツ目の先端的な研究施設・設備、ここら辺は資源が限られる中でも、我々文科省として引き続き、今後とも充実・強化していかなくてはいけない分野ではないかと思っています。
 また、6ポツ目の社会共創のところでは、1ポツ目で、自然科学のみならず、人社系も含めて、科学技術と社会に関する研究を進める必要があるということ、2ポツ目は、予算のみならず、研究インテグリティ、研究セキュリティ、研究公正あるいは生命倫理等の指針、制度に関するものというのを挙げています。また、3つ目が科学コミュニケーション、それに関するものということで、文科省の事業、施策を全体的に整理すると、この9つぐらいに分けられるのではないかということで掲げさせていただいているものです。先ほどの狩野先生のとおり、こういう整理の仕方がいいのかどうかということを改めて御意見いただければと思います。
 全ての項目について人材という観点がいずれにしろ入っているということがありますので、こうしたそれぞれの柱の中から人材の観点、課題というのを抽出した上で、最終的にパッケージ化としてまとめていってはどうかということを考えております。
 10ページ目を御覧いただければと思います。ここの人材委員会のところに来期以降だと思いますが、下にワーキング・グループなどを設けながら検討を続けていただいて、来年の夏ぐらいをめどに中間的な取りまとめをするということを考えたいと思っています。前回の10月15日以降、大学あるいは関係者の方々に対して、並行してヒアリングをさせていただいておりまして、これまで20以上の大学、研究機関、それとあと研究者の方々の御意見をいただいているところです。大変、評価、前向きなコメントをいただいておりまして、こうしたものも後ほどヒアリングの結果として、この委員会のほうにかけさせていただきたいと思っています。
 11ページ目は、先ほど申し上げた縦と横の関係になりますけれども、ほかの政策群の中で、研究者あるいは技術者であるとか、人材に関する観点というのが多々ありますよということが1ポツ目で書かせていただいていまして、こうした観点を最終的に、2ポツ目のところ、研究者、技術者といった多様な人材の育成・確保であるとか、初等中等教育あるいは大学、大学院といった学校教育段階における人材育成、さらに制度、システム改革の推進といった形で、縦を横に整理するような形で取りまとめをしていってはどうかというふうに思っています。
 12ページ目が、ここの検討の最終的なアウトプットを書かせていただいているものでして、先ほどの9象限のような全体の俯瞰、体系化の整理というのが1つ目で、2つ目が科学技術・人材施策としてのパッケージ化をした上で、再来年度の概算要求のほうに反映していくということを考えたいと。最終的に、この委員会のほうで報告書の形で取りまとめていただきたいというのが3つ目になります。
 13ページ目以降が、先ほどの9象限のところをもう少し具体的に書いたものです。ポイントだけかいつまんで申し上げると、14ページ目のところ、9象限のほかの内容でも全て同じ形式になっていますけども、(1)、(2)、(3)と白抜きで書いてあるところが現在の取組になります。クリーム色のところで抜いているのが今後の方向性で、主に人材の観点から検討してはどうかという方向性を書かせていただいています。
 競争的資金については、科研費をはじめとする基礎・基盤的な研究から、AI、半導体といった先端技術に関する研究、あるいは健康、医療、エネルギーといったニーズプル型の研究支援と、多様な研究資金制度がありますが、こうしたものを、右下にあるように、質的・量的に引き続き充実させるとともに、研究者の育成という観点から、研究者の安定的なポストの確保であるとか研究開発マネジメント人材の育成であるとか、あるいは機器設備の共用といった形の環境整備改善にいかに競争的資金を使っていくかということを考えていってはどうかというのが1つ目のところです。
 16ページ目が産学共創に関するところになります。これも同じように(1)、(2)、(3)と、いわゆる産学共創のための場、拠点の整備であるとか、研究シーズの事業化へのつなぎ、あるいはスタートアップ支援といった取組をしている中で、今後の方向性として、特に大学研究機関において、知財等の専門人材であるとか組織経営のマネジメントをするような体制整備をいかにして進めていくのか、事業化を促進するための起業人材をいかにして育成するのかというあたりが論点かなというふうに思っています。
 18ページ目、国際になります。これも多国間との国際共同研究であるとか頭脳循環、それと科学技術外交に関する取組等をさせていただいていますが、特に最近力を入れているところというのが(2)頭脳循環の取組になります。今後の方向性のところでも、海外に優秀な研究者を派遣するであるとか、海外から逆に優秀な研究者を日本に招聘してくるといった、こうした頭脳循環の取組というのを今後特に加速していく必要があるかなと思っているところです。
 20ページ目からは基盤に関するところになります。特に大学に関するところですけども、(1)大学・大学共同利用機関における研究・教育機能の強化とありますが、いわゆる大学の運営費交付金等の基盤的経費の充実・確保とともに、最近では国際卓越研究大学制度であるとか地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)のような取組というのも充実・強化をしてきているところです。
 こうした中で、いわゆる基盤的経費に加えて、競争的資金のような外部資金をいかにして戦略的に活用していくのかということが大学の経営戦略上、非常に大事だろうというふうに思っています。組織のマネジメント強化であるとか、研究者の安定的なポスト確保、技術職員も含めた専門人材の確保にいかにして活用していくのかということが大きい課題かなと思っています。
 23ページ目が人材に関する取組になりますが、こちらは先ほどのほかの施策の縦のところを全てここに、最終的には横串で集約化するということを考えたいなと思っています。柱としては3つ、多様な科学技術人材の育成・確保ということで、研究者、技術者あるいは技術職員をはじめとする専門人材の育成・確保。(2)が学校教育段階で、大学、大学院であるとか初等中等教育段階における人材育成。(3)は、クロスアポイントメントですとかジョブ型研究インターンシップといった、制度・システム改革に関する取組、こうしたものの具体化を図っていくということを考えたいなというふうに思っているところです。
 25ページ目は先端的な施設・設備の整備のところで、(1)のSPring-8、J-PARCをはじめとする先端的な大型施設に加えて、(2)で大学・研究機関において施設・設備の共用という事業を我々として積極的に進めているところです。こうした中で、技術者の育成にここをどうつなげていくのかということが非常に大事だと思っていまして、先端研究施設・設備の整備に関する研究開発を通じた人材育成に関する取組というのをどう強化していくのかというあたり、こうした取組を進めていく方策について御議論いただければと思っています。
 27ページ目以降が、もう一つの柱の社会共創に関する取組になります。
 28ページ目は、(1)が戦略的な政策に関する調査分析機能の強化、(2)が自然科学以外の人文社会も含めた社会と科学技術に関する研究開発の推進ということで多々取組を進めていますが、今後の方向性として、特に人社系も含めたELSIに関する取組であるとか、社会と科学技術をつなぐ専門人材をいかにして確保していくのかという点が必要かなというふうに思っています。
 29ページ目は、予算以外の、いわゆる制度であるとか指針に関する取組ということがありますけれども、研究者あるいは事務職員に対して、いかにしてこうした取組について周知徹底し、実行に移してもらえる形で取組を進めていくのかということが大事かなと思っています。
 最後、30ページ目が科学コミュニケーションに関する取組になります。先ほどもあったように、科学コミュニケーションに関する活動というのは多々展開されていますけれども、今後こうした科学コミュニケーションの活動というのを、先ほどの初等中等教育段階におけるSTEAM教育などとどう連携させていくのか、あるいは科学コミュニケーターをはじめとする専門人材をいかにして確保していくのかというあたりも検討の課題になるのかなというふうに思っているところです。
 論点が多岐にわたりますので、先ほど5つぐらい主査に挙げていただきましたけれども、それも含めて多様な御意見等をこの場ではいただければと思っております。
 雑駁な説明で恐縮ですが、以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。今お聞きのように、奥課長をはじめ、チームの皆様が極めて推進力強くこちらの準備をしていただいておりまして、今までの人材委員会で扱わなかった範囲も含めて、包括的に進められるいい機会だというふうに私としては受け止めております。改めて申し上げると、全体像はどうか、競争的資金の在り方はどうか、技術者に関してはどうか、研究開発マネジメント人材についてはどうか、博士後期課程学生の支援の在り方についてはどうか、そして、先ほどつながりと言っていただきましたけど、つなぐ、深める、活かすという柱について掲げましたが、これらについてどのように実装できるかというあたりを主にしながら、いずれの点でも構いませんので、御意見を頂戴したいと思います。
 それで、御承知かと思いますが、最大6時まで延ばしてやるかもしれないという話になっておりまして、どちらかといえば皆様の御意見を全部集めるということについて重点を置きたいと思います。
 では早速、杉山先生、手を挙げていただきました。お願いいたします。
【杉山委員】  相当総合的なパッケージ的なものになっているので、どこかに必ず何かが書かれているという感じにはなっているんですけど、何かちょっと全体に見えにくい部分もあったりするので、そこを確認させていただきたいと思います。まず1点目ですけど、これはいつも私が言うんですけど、競争的経費とか、そういうことは随分書かれているんですけれども、やはり大学が今一番困っているのは、萌芽的な研究を進めるための基盤的な経費がなくなっているというところだと思うんですね。選択と集中をし過ぎるために、集中したところ以外はペンペン草も生えなくなっているという状況で、そうすると分野が変わっていくところで全然対応できないというようなこともあります。ですので、やっぱりある種デュアルサポートというようなところ、基盤的な経費と競争的経費の両輪でというようなところはぜひ入れてもらいたいなというのが1つ。
 それから2つ目は、一応多様な人材という書き方はされていたと思いますけれども、ダイバーシティという点での踏み込みがちょっと少ないのかなと。特に女性というようなことでこういうイノベーションのところに、今のままでは日本はあまりにそこが弱いと、また外国人も少ないというところについて、やはりもう少し踏み込んだことが必要なのかなというような気がします。
 その中で、私は前から、梶原委員が前におっしゃっていたことなんですけど、高校段階での理系文系分けのせいで、やはり相当な選別というか、そこで分断が起きちゃっているというふうにも思っていますので、その辺も含めて、高校段階でこういうイノベーションに向かう人材をどう育てるのかというところも、少し書いてあったとは思うんですけれども、論点にしっかり入れていただけたらと思います。
 それから、研究開発マネジメント人材というのはURA的な方を指しているのかなと思うんですけども、結構いろいろ広い範囲で研究を、サポートするというよりは、一緒に創っていく人材がますます必要になってくるのかなと今思っていまして、必ずしも研究開発のマネジメントする人だけじゃなくて、IRをやる人とか、それから事務職員の系統の中でも、すごく専門性が高く、いろいろ研究を一緒に創っていく人というのはこれからどんどん必要になってくると思っているんですね。ですからその辺、必ずしも研究開発マネジメントとか技術とかいうだけでなくて、研究共創人材とか呼ぼうかなと思っているんですけど、そういう人材を広くいろんな分野で育成していくということも、こういうイノベーションや研究ということには大変重要ではないかなというふうにちょっと思っています。
 それから、もう一つだけ。あとは、世の中の動きがすごく今速いので、どのように新しい分野に対応していくかという観点がやはり必要かなと思います。AIとか何とかがすごい勢いで出てきたときに、日本は後手後手に必ず回っているわけですよね。ですから、そういう自分たちで分野をつくり出すという部分も含めて、どうやって新しい分野にアジャイルに対応できる体制をつくっていくのか、大学もそうですけれども、国としてそういう観点は必要かなというふうに思いました。
 つらつらと思ったことを言わせていただきました。どうもありがとうございます。
【狩野主査】  杉山先生、包括的にありがとうございました。一応振り返りますと、今競争的資金で勝ちやすい以外のところにも何とか目を向けるためにどういう制度ができるか、とりわけ基盤的経費の拡充という方法なのかどうかということが1つ。それから多様性、ダイバーシティの、ジェンダーを含めた記述がもっとあったほうがいいのではないか。そして3つ目が、高校の頃からこうした人材を育てるための何か工夫が要らないか。4つ目として、一緒につくっていく人についてどうできるかという点をいただいたと思いました。
 では続いて、村上委員、お願いいたします。
【村上委員】  非常に内容が多かったものですから、ちょっと整理する意味で御質問ですけれども、今回提示されているものは、今までのいろいろな政策等を単にまとめ方を変えただけなのか、あるいは新たな政策が加わっているのか。あるいは、内容とかジャンルは同じだけれども、強調する部分に変化が起きているとか、今までと何がどう違っているのかを教えていただきたいということです。
 それが質問で、あと意見としては、人材・環境等の科学技術基盤充実・強化というセクションのところに、初等中等教育に関しては理数系教育の充実が書かれていますが、初等中等教育で充実すべきは、むしろ理数系教育というよりもモチベーションとか意欲とか、今日本の若者に欠けているところで、それを強化するような教育の新たな方針を打ち出していただきたいと思います。国際比較を見ると、日本の子供たちの内向き志向とか意欲の低さがよく問題になっていて、それは理数系能力とは必ずしも関係ないものなので、特に世界に出ていくために、そういうところをどうやって高めていくかということを、この国全体として真剣に考える必要があるのではないかと思っています。初等中等教育のところで理数系だけを強調せずに、さっきのサイエンスコミュニケーションの能力も必ずしも理数系だけの問題ではないので、そこを充実するような形での書き方をしていただきたいというのがコメントです。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。コメントとしては、モチベーションを上げるようなことをより優先したほうがいいのではないかということについていただきまして、具体的な方法は考えていかなければいけないんですが、御質問についてはいかがでしょうか。まとめ方を変えるだけなのか、それの先を行くおつもりなのかということですが。
【奥人材政策課長】  ありがとうございます。この資料自体は、あくまで現在の文部科学省における政策事業体系を一通り整理しましたというものですので、現状の取組をあくまで整理したものというふうにお考えいただければと思います。今後、この中から人材の観点で課題を抽出した上で最終的に新しい方向性を打ち出していきたいと考えています。
【狩野主査】  私も少しどうするのかなと思ったときがあって、お伺いした結果で分かってきたのは、人材政策課が全部を扱うということではないんだけれども、人材の観点からいろんなことを見直したときに、今後どういう方向に進むべきかということを担当課に向けて提言をしていくというような方向性が一つある。また、それから人材政策課で新たに何か、この結果として政策をつくれれば、それもそれでよろしい、というふうに理解をしております。
 ほかはいかがでしょうか。まだ発言されていない方、幾らでもどうぞお願いしたいと思いますけど、いかがでしょうか。全部に包括的に御意見いただかなくても、気になるところだけいただいても結構ですけど、いかがでしょうか。桝先生。
【桝委員】  大したコメントでなくて申し訳ないんですけども、この全体の枠組みの体系的な整理についての意見ということで、途中の科学技術と社会に関する研究基盤の強化というところでELSIの人材の育成・確保というところがあるのと、それと別で社会との共創というところで人材確保がそれぞれあるんですけども、これはELSIの研究者等というものと科学技術コミュニケーターというのが別の枠に見えるなとちょっと思っていて、そこの部分はもしかすると、社会と科学技術をつなぐ専門人材はELSI研究者だけでは多分ないだろうなと思っていたので、ELSIの概念を理解した上での違う、メディアワーカーであったりとか、あるいはそういったほかの多様な人材というのもあると思うので、ここは枠組みとしては、うまくつなげるか、この部分を共創のほうに持ってきたほうがいいのかなというふうな、そこはちょっと思ったというところです。
 すみません、本当に枠組みに関する細かい意見でしたけども。
【狩野主査】  ありがとうございます。結局言葉でまとめますので、その定義をどうするかというのはなかなか重要な議論だと思っておりまして、その意味でどうでしょう、桝先生、御知見から、何かいい言い方が思いつかれたら教えていただけるとうれしいですけど、どうでしょうか。
【桝委員】  多分今書かれている最後のほうの社会共創のほうというのが、以前私が意見したことのせいかもしれませんけど、比較的若い世代とのコミュニケーションといいますか、それに対する影響というのを意識した社会共創の話になっていると思うんですけども、どちらかといえば、若い世代だけじゃなくて、社会全体と考えると、さっきのELSIの部分というのはこっちに入れたほうがいいんじゃないかなというふうに思っています。ELSIは科学技術コミュニケーション中の一つの視点といいますか、視座というふうに考えてまとめたほうが分かりやすいかなというふうには思っております。
【狩野主査】  ありがとうございます。例えば科学の成果を社会が受け止めるときに、どういうことが必要かということに関係するということですよね。
【桝委員】  そうです。はい。
【狩野主査】  したがって、そこに言葉としてのやり取りも必要だし、ほかの手段の表現方法かもしれないし、その中に倫理ということもないと、ELSIということもないと、うまく受け止めてもらえませんよ、という、そういうセンスのことですよね。
【桝委員】  まさにおっしゃるとおりです。科学コミュケーションとELSIが結構分離している部分というのはちょっと感じていたので、まさにここもできれば統一したいなと思っておりました。
【狩野主査】  ありがとうございます。「シン」の言い方であれば、「つなげる」能力かなということを今思ったところでした。あるいは活用するというところですね、その両方に関係するかなと思いました。ありがとうございます。
 今みたいな簡潔なコメントでも結構ですので、次々いただければと存じますが、いかがでしょうか。
 できれば、まだ発言されていない方にお願いしたいところですけど、当ててしまいますが、研究開発マネジメント人材の話が出ましたので、稲垣先生、思うところを述べてください。お願いします。
【稲垣委員】  すみません、ありがとうございます。研究開発マネジメント人材じゃなくてもいいですか。
【狩野主査】  もちろんです。振っただけです、大丈夫です。お願いします。
【稲垣委員】  博士課程の学生の支援に関しては、やっぱりその前段階の修士課程の学生に対する支援を視野に入れるみたいな方向を持っていただくことも大事かなと思って聞いていました。やっぱり今、かなりドクターのほうは充実しているので、大変皆さん感謝しているようなんですけれども、その間がないとどうしても、やっぱりやめるという声もあるので、きちんと連続的に支援しますということが見えるような方向に持っていくことが重要なのではないかなというふうに思います。
 あとは、人口がやっぱりこれだけ減る減ると言われている中で、それをどこまでこういう文書に入れていくのか。研究も恐らく国際標準化を目指した形でセットアップしていかないと、多分この先どんどんいろんなことが低く下がっていってしまうと思うので、国際という視点を、単に頭脳循環ということではなく、インフラとして国際的な対応をどうしていくのかという観点をもう入れていかないといけないのではないかなというふうに、聞いていて思いました。
 あと、こういうことを言っていいかどうか分からないんですけども、やっぱり地方大学は本当にもうかつかつなんですね。若い研究者が、いい人材を獲得できても、旬になった途端、移動されちゃうんです。ただ地方大学も、お金がない中それなりに投資をしているんだけども、移動されちゃうと、その投資が全部無になってしまう。もちろんその分野に関する人を集めたりとかするんですけども、結局投資してもゼロになっちゃうというのが本当にボディーブローのように利いてくるので、できるかどうか分かりませんけども、例えば、この先生はプロテクト枠だから、この先生が欲しいんだったらプラスアルファちょっとお金下さいみたいな、そういうことができるようになると、地方大学としてもそのお金を使ってまた新しいことにチャレンジできるというふうになるので、強いところがどんどん吸い上げるだけじゃなくて、日本全体の底上げを図れるような、そういう仕組みも含めて今後考えていくことが大事じゃないかなと思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。御専門に近いところはいかがでしょうか、今の言い方だけで大丈夫でしょうか。
【稲垣委員】  研究開発マネジメントの人材もやっぱり今、人が採れないということがあるので、クロアポとかもそうですけれども、雇用に関する多様な制度とか、そういう観点の何か言及があってもいいのかなと思いました。
【狩野主査】  ありがとうございました。1つ目は、ドクターのみならず、間が空かないような支援ができないかということでした。この点については、伺っているところですと、今、SPRING事業も後継事業がどうできるかというところについて、これからストーリー立てがまだ必要だという状況だと伺っております。それについても御意見が後でいただければということは思います。それからあと、国際標準に近づけるためのインフラ設定という観点が要るのではないか、それから地方大学が干上がっているようであるけれども、全体を底上げできる何か制度はどうか、そしてクロアポ等の方向についても何か言及ができないかということで伺ったかと思いました。ありがとうございます。
 続きましては、どなたかいってくださいますか。では、水口先生、お願いします。
【水口委員】  ありがとうございます。16ページ目のスタートアップ関連のところで幾つか意見をさせてください。まず、右下の黄色の今後の方向性のところで、場の創設という、括弧で協議会と書かれたところについて、あまりイメージがつかなかったので教えていただきたいなと思いました。場といったときに、いわゆるマッチングのように、様々な産学官のメンバーがいて、そこで何か新しいものが生まれるという、そういう場だったらいいなと思ったのですが、協議会と書かれており、イメージが湧かなかったため、教えていただけますと幸いです。
 また起業人材に対する支援強化というところで、起業というと、リーダーシップを持った個人というイメージが強いと思いますが、起業は一人だけではうまく回らないため、ほかのCXO人材、支える人材も重要であると感じます。そのため、そういうところにも目を向けていただけると非常に良いかなと思っております。
【狩野主査】  ありがとうございました。これも国のお金はどうしても場をつくるプロジェクト型になりがちであるというところを、どうやって乗り越えられるかが一つのことかなと思いながら、場についての御意見を伺ったということ。それから、その「場」という言葉を一体どういうイメージで使っておられるかというのは、後でもしよろしければ事務局の皆様から教えていただきたいという御意見がありました。それからあと起業に関しても、研究者と同様で、個人で全部やれるわけじゃないので、支える方々についての、いわゆる人材的なインフラについてどう考えていくのかというのも観点として要るかなということだったと思います。
 お答えいただけますか。
【奥人材政策課長】  協議会に関してですが、文科省の事業として支援しているのは、基本的には大学における産学官協力のための共創の拠点形成、産学官共創のための拠点形成というのが中心になっていると思います。やはりそこから出てきた成果というのを実装に移していくときには民間企業も入った形で、いわゆる官民コンソーシアムみたいな形を創っていくというのが一番適当な形なのかなというふうに思っています。例えば量子科学の分野ですと、量子コンピューターとか量子暗号の形で産学官のコンソーシアムというのを創設して、そこの中で技術実証というのをやっているところもありますので、各分野において、そうしたコンソーシアム、協議会というのがたくさん出てくるということを期待したいなという意味で書かせていただいています。
【水口委員】  分かりました。
【狩野主査】  そうすると、何かさらに御提案がありますか。
【水口委員】  そうですね、そこから何か新しいことや、国の政策、実行しやすい環境が生まれてくる等、そういう提言にもつながっていくといいなと思っておりますし、そこも恐らく視野に入っているんだろうなと思って聞かせていただきました。
【狩野主査】  ありがとうございます。場からいろいろなものが出てくるということは経験上ありますので、これをうまく、でもどうやって公費でやっていくかというところの理論を作らないといけないなというふうに思いながら伺いました。ありがとうございます。
 柳沢委員が退席後ですので、残りはこちらにおられるあとお二方かもしれませんけど、どちらが先に行かれますか。では、梶原先生、お願いします。
【梶原委員】  先に勝手にいろいろと申し上げることになって申し訳ないですが、まず、ほかの省庁との関係性みたいなところで、例えば科学技術外交という表現が18ページにありますが、文科省あるいはJSTの範疇だけではないと思います。外務省との連携の中でどのようにやっていくか。今まではあまり科学技術のところでの連携は多くなかったような印象がありますが、これから経済安全保障の領域になってくると、外交的要素のところもバイラテラルで多くなると思います。そういった視点は必ず、書く書かないは別にして、持っていただきたいと思いました。同じように、経産省についても同様です。経産省で、例えばKプロの話が14ページに入っていますが、経産省側で主導しているのももちろんあるので、その辺の今動いている中での課題の共有ですとか、何を変えていくのか。その背景は何かというように、経済安全保障の話が今後もっとディープに入ってくることになると思うので、そうしたときに経産省との関係性をどのように進めていくのかというのは非常に重要だと思います。
 経産省、経産省となぜ言うかというと、人材育成のところで、産業界が求める人材と大学が輩出する人材等に関し、文科省側の資料ではあまり印象がありませんが、経産省から出てくる資料では、これだけ差がありますと棒グラフで提示されたことがあります。結局、産業界あるいは経産省が今後施行しようとするときの人材の領域の話題と、今一生懸命大学で育成しているところの話は、もちろんタイムラグがありますが、多分一緒に会話していかないと人材育成でうまく合わないです。
 重要技術のバイオ、重点分野の戦略、量子戦略とかAI戦略等、全部、課題は人が足りない。日本の中で人が足りないのをどう効果的に対応していくのか。もちろん海外の人をというのもあるでしょうけれども、文科省が考えている人材育成のやり方と産業界が求めている話は、会話をしてきた状態で今があるのでしたら、もっと変わる必要がありませんか。もし会話がなかったのであれば、そもそも連携する必要があると思います。求める人材像のところと育成すべき人材のところをやはり会話していただきたい。半導体の人材は今非常にブームになって伸びています。それでも人が足りなく、いろいろ誘致して伸びている状況があります。重要な人材については、産業界がすぐに手を出していないとか、少しトーンダウンしてしまっているところで、維持していくべき人材があります。例えば、エネルギーの需要の件で、原子力分野の人だとか。
 本来的には、インフラの重要な要素なので、育てていかなければいけない層があると思います。そういう人たちに対しての特別な手当を出すとか、何かちょっと今のダイレクション、新しい領域に行くのは、それはそれで重要ですけど、日本のインフラを考えると本当に必要な人材の領域というのは、一定程度あると思います。経済安全保障の話をすると、この資料の中では、重要技術の開発だとか経済安全保障の文脈は全部、国研で書いています。国研は経済安全保障の重要技術を期待されると。大学についての話をあえてしないのがどうか、これはちょっと気になって見ていました。
 あとは、先ほど初等中等教育のところで理系の人材だけではなく、とありましたが、もうこれはずっと議論していて、STEAM教育が誰にとっても重要ですと言ってきましたので、そういう用語を使われたほうが良いのではと思いました。
 以上です。
【狩野主査】  たくさんの視点をありがとうございました。頑張ってまとめてみると、私も、もともと外務大臣次席科学技術顧問をやっておりましたので、お気持ちはよく分かるところです。ぜひ、よりつながったらいいなと思っております。あとは経産省との共有で、一つの観点は安全保障だし、もう一つの観点は人材育成の方向性です。それからあとは、ちょっと違う表現をされていたけれども、杉山先生のご主旨に近づけると、「変化への対応力が社会としてあるのか」という質問に対する答えがあるかなと。どうしても政策で1回決めると、その方向に走り過ぎてしまって、ほかのものが足りなくなるということがよく起きるかと思います。そういう辺りをどうやって多様化を保つかということになるのかなと思って、1つは聞きました。
 あとは経済安全保障が国研のみかという御質問ですが、これは国際戦略委員会も加わらせていただいている人からいうと、大学についても現在検討中なのでございますが、なかなかどのようにして自由の確保と安全保障の確保を両立させるかという点についての議論が、まだどうしようかなというところが少し残っています。結果、現状ではこういう書き方になっているかなというふうに理解をしております。け私が答えるのは適切でなかったかもしれませんが。何かほかにお答えになることは。
【奥人材政策課長】  おっしゃるとおりで、外務省とか経産省をはじめとする関係機関との連携協力というのは絶対に必要なので、人材育成の観点からも当然、パッケージみたいな形でまとめるときには関係府省との協力関係は必ず基盤として考えていきたいと思います。ただ、この人材委員会の中で分野の人材育成に関してどこまで踏み込むのかというのは結構難しくて、AIもそうですし、半導体もそうですし、量子も原子力も、何でも取りあえず人材が大事ということになりますが、そこら辺の需要量をどれだけ見込んで、供給側として大学側にどれだけの人材の育成を求めるかというのをここの中で定量的に議論するというのは、多分相当難しいだろうなというふうに思っています。そこの関係をどうするかというのは悩ましいところだなと思います。
【梶原委員】  定量的にすべきと必ずしも思ってはいないのですが、ただ、いつも丸めた議論になっていると、平均値化されて、よろしくないと思うところをどう打破しますかと。ここはとんがらなきゃいけないだとか、ここではなく違うところで議論すればいいのだったら、文科省と経産省とそういう領域で話すべきだと思います。あまりにも平均値化された会話をしていると、限られたリソースの中で難しくなりませんかというのが気になるポイントです。ここで議論するのはここまでですという話であれば、そういう決め方で良いと思います。井上さんが多分考えると。
【井上科学技術・学術政策局長】  いやいや……。
【狩野主査】  せっかく統括官、審議官、局長とそろってくださっていますので、最後にコメントいただきたいと思って、考えておいてくださいねと思っているんですけど、後ほど。
【井上科学技術・学術政策局長】  すみません、私はまた遅れてきて、さっき来たばっかりなのに、もう行かないといけないんですけれども。
【狩野主査】  じゃあ先にいただきましょうか、何か言いたいこと。
【井上科学技術・学術政策局長】  もう今、奥課長以下で非常に網羅的に整理していますので、この中から人材委員会として、本当にやらなければいけないところをぜひ御議論、もう本当に忌憚のない御議論をいただいて、形づくっていければいいと思っています。そういう意味では、まさにこの議論が始まったところなので、ぜひよろしくお願いします。
【狩野主査】  ありがとうございました。勇気づけていただきました。
【井上科学技術・学術政策局長】  すみません。恐縮です。
【狩野主査】  ありがとうございました。
 では、長谷山先生、まだだったと思いますので。
【長谷山委員】  梶原委員が随分と発言してくださったので、私から同じ点について言うことはないのですが、自身の視点から考えを述べさせていただきます。博士課程学生の育成にこれだけの資金が投じられたことは、文科省や国全体が動いてくれた結果で、大学人として大変に感謝しています。一方で、研究に対する投資について考えると、例えばウェブ・オブ・サイエンスのESI(Essential Science Indicators) 22分野の論文数を見ますと、過去10数年間、論文数の多い上位数か国で、研究各分野の論文数の割合に変化がないのは、日本だけです。日本以外の国では、工学と物理の論文数の順番が変わったり、物理と化学が変わったりして、10年間で変化が起こっています。
 このような現状の国に、どの研究分野が重要なのかということを選ぶ能力があるのだろうかと感じます。例えば海外にはいろんなシンクタンクがあって、そこから必要な情報を得て、どの分野に投資するかを決めています。100%成功するとは限らないけれど、自国の強みを活かす投資を多様な視点で検討しています。失敗するものがあっても、大きな成功が生まれればイノベーション創出に繋がるのだと思います。AI、半導体、量子技術、どれも重要と思います。ただ、実施の際には、多様な視点での分析が必要と思います。私の専門はAIやデータ解析なので、例えば、細かに論文データを見てみると次のことが分かります。
 日本がAIPをつくったときに、議論は早かったと思っていたかもしれません。ただ、10年前の論文数を見ると、中国とアメリカは、ほかの国よりも先にこの分野の論文数が既に増加しています。量子系の話になると、日本も論文数が増加しています。どのような分野なのかさらに細かく、論文数の増加に貢献している著者のネットワークを可視化してみると、実はアメリカで学んだ方が日本に戻ってきて、日本で論文を書いていることが分かります。数値分析をすればこれくらいのことは分かります。海外のシンクタンクは当然それ以上の分析を行っていると思います。
皆さんが大変に悩みながら多くの労力を費やして仕上げて下さった、この資料は、すばらしいものと思います。過去と現状の上に新たな事業を作り上げるのは、複雑で大変な作業と思います。ただ、やはり数値根拠に基づく、多様な視点で分析する機能を国が持ってこなかったことが現状の問題を生み出した1つの原因ではないかと思います。以上、私見を述べさせていただきました。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。これも大事なところをいただいたので、まとめさせていただきます。分担別のままで発展しているよね、と、それ以外のやり方ができていないよね、ということだと、一言で言えば思いました。私も言いたいことがあるとすれば、思ったとおりじゃないことへうまく対応して、それを建設的に生かす方向に対応する力がないよねということと、あるいは予定どおりでないということもそうですよね。何か事業評価するときに、計画どおりじゃなかったときに、駄目ですと、そういう反応になっているというところもあるでしょうし、それらこれら全部関係しているかなということがあると思います。よって、違える、違っているときにどういうふうにそれを活用するかという方法についての検討が要るのかなということを思って伺った次第です。
 続いて、私も一委員の立場として申し上げます。1つ目が、ということで、何を勝ち筋と、奥課長おっしゃいましたが、勝ち筋にするかというところの設定も、やはり一様でないようにしないといけないと思います。とは言いながら、あんまり多様にすると分からなくなっちゃうので、もう少し幾つか複数軸を置くということは一つ大事ではないかと思ったのが1つです。
 次に、国費だけでやれるかという問題がやっぱりあるような気がしております。国費ですと、どうしても税金の再配分なので、同意が必要な程度が高いということであると、同意がそこまで必要ないような資金、例えば財団のお金ですとか、それから産業界からの別の資金かもしれないし、よく分かりませんけども、そういったもので既に存在するものもありますので、こういったものを含めて全体のマッピングをした上で、じゃあその中で国はどこをやっていく、ほかのところにはどういうことを期待するといった議論もこれから必要かもしれないなということは思っておりました。
 それからあと、解析のデータの基盤という、日本社会が「理由」に基づいて何かを言うことを優先させる社会でなかったからかと思いますが、その意味でデータの蓄積の程度が非常に、欧米の諸会合に行って話をすると、違いを痛感するわけです。ではそのようなデータをどうやって蓄え活用できるようにしていけばいいか。文部科学省あるいはほかの省庁の中だけでできない場合には、今1つ走っているSciREX事業みたいなものの中からそういう必要が出てくるということもありました。そうした科学的な考え方ができる人による外部からの声というのを入れるような仕組みを何かしら考えていくのも要るのかなということを思いました。ただ、それを本当はGRIPSがやるべきだったという意見もあったわけですけれども、より注力していただくということでしょうか。
 それからもう一つ、教育に関してです。先ほど申し上げたように、言いたいことがあるんだったら理由をつけて語ろうという作文の型が、科学の根本の一つでありまして、この方法をどうやって広めるかというのが1つ。それから、「言いたいこと」につながる基は「問い」ですよね。ということで、あなたは今自分が関わっているものに対して、どこが引っかかりましたか、それに対してどういうことを聞きたくなりましたかということを聞いていって、面白いことを思いついたよねと言ってあげられるようなフィードバックをする教育というのが、これは別に科学技術の人材だけじゃなくて、ほかでも必要だなということを考えています。こういうことを全員に本当にできるかはいろいろ議論もありましょうから、対象を絞った形でも結構ですけども、もう少し何か広げていかないと、多分この西洋的規範が広まってきている国際社会では厳しいのではないかということを思っている次第です。
 あともう一つ、先ほど加えたとおりで、指標の開発が必要なところがまだまだたくさんあるなと思っております。論文指標だけでは進まないとすれば、先ほどの「つなげる力」をどうやって指標化できるのかとか、あるいは「活かす力」が強い人材をより選び出して集中的に支援するというのであれば、どうやって測って選べるのか、ということについて検討が必要だと思います。単一指標で無理であれば、ダッシュボード指標的な考え方でも何でも結構ですけども、そういったものは一体どうやって測れるのかということも、今後の委員会、公開だとやりにくいとすれば、少し揉むような分科会を作った上でやっていくということも必要ではないかというふうに思いました。
 ちなみに、この点に関しては先日、先ほど申し上げたように、OECD、EU本部、それからユネスコとかに行って、何か考えがないかなと思って聞いてきたんですが、世界的にまだあまり考えはないような感じがしますので、ぜひ日本での測り方というのを一つ創り出して、それこそ世界に冠たるものにできるのもいいのかなということを、そういう意味では我々は今世界最先端の問いをつかみかけているということかもしれないと思って、先に進められたらいいなということを思っております。
以上、主査としてよりは、一委員としての意見でございました。
 2巡目、どなたかございますでしょうか。杉山先生、さっき時間を埋めるためにおっしゃっていただく機会が。
【杉山委員】  数年前に大分流行った総合知とかいう言葉が出ているんですね。大学の現場では文系人材、特に人文系ですよね、社会学は逆にドクター行かないんですけど、文系の人材が全く社会に関わろうとしないのというのもちょっと問題であるというのが現場としてはあります。何かやはり総合知なもので社会に関わっていく大切な人材であるという観点を出せないのかなというふうに少し思いました。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。この点も先ほど申し上げたつなぐ力というのが多分似ているのかなと思っておりますけれども、そういう好奇心が広めで、いろいろつながりたい人に対する価値づけがいま一つうまくできていないように思っております。こういうところも含めて、いい議論ができたらいいなと、そういう人の一人かもしれない人としてはとても思っております。私も深めるより、多分つなぐ人なので。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、予定の時間は過ぎておりまして、延ばすための時間もそろそろだんだんなくなってきましたので、先﨑さんと髙谷さん、何かおっしゃりたくなったことがあったら、ぜひいただければと思います。
【先﨑科学技術・学術統括官】 今日も大変ありがとうございました。前回に引き続き、大変勉強になりました。霞が関というところにいると、いろんなところからいろんなものが降ってまいります。それは霞が関という以上は政策、施策にまとめてみたいな、そういうのをある意味手早く処理するというようなことばかり長けてくるところは正直あるわけでございまして、それでいいのかというか、もうよくないよねというところに来ていて、それについて一遍見直してみる必要があるということで多分今回の方向性が出てきたと思っております。
 こういう資料を見てみると、それぞれの施策についてはもちろん我々分かります、どんな事業をやっているかとか、予算は幾らでとか。だけど逆に、そこには必ず人がいて、その人がどんな動きをしていて、どんな数なのか、何に悩んでいるのかみたいなことが、ともすると見えなくなってくる。それが幾つあって、どうなっているのかも、もう数え切れなくなってきているようなところがあると、でもそれはちゃんと目を向けていかなければいけないと。だったら一遍、施策で全部出してみて、その中で人という観点で全部見てみる、必ず人がいるんだから、人という観点で全部整理してみる必要があるでしょうということで、こういうような展開になっていると認識しています。
 さっき局長も言っていましたし、課長もさっきから言っていますけれども、それは何か出口ありきでやるというような、審議会にはそういう機能ももちろんありますけれども、ここではそういうことを多分話すのではなくて、正直に、どういうところに人がいて、どんな問題があって、その中で人というのは必ずいるわけだから、そこはどうしたらいいかなということを考えて、さっき主査おっしゃったように、じゃあ勝ち筋はとか。特に個人的には、さっき杉山先生もおっしゃっていましたけども、人社系と社会という関係を今の言葉でもう一回語って、じゃあどうするのかという議論は絶対要るんじゃないかなということと、これもさっき主査おっしゃっていましたけれども、やっぱりエコシステムという考え方で、今風の言葉で語るとするならば、人と金のエコシステムということを考えたときに、国以外の社会の役割というのもまた新しく見えてくるだろうといったようなあたりもぜひとも御議論いただけると、我々としては大変エネルギーをいただけるというところかなと思います。ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございました。皆様勇気が出たかと思います。
 では、どうぞ。
【髙谷大臣官房審議官】  ありがとうございます。今日も非常に貴重な御意見ありがとうございます。言い尽くされたところありますが、行政官は現場が見えていないので、ぜひ現場の視点をいただきたい。いろいろ、局長、課長、それから先﨑が申し上げたようなコメントをいただきたいということなんですが、私の個人的なこだわりというか関心でもあるんですが、やっぱり教育。先ほど産業界と大学のアウトプットとインプットというか、そこにギャップがあるねという話があったのと同じように、多分初等中等教育と高等教育にはギャップがあって、プラスのいろんな分野ごとの縦割りがあると。いろんな縦割りと同様に横割りもあるんだなということがあって、そこをやっぱり何とかつなげたい。一本、人材という形で、課長が作ってくれた9象限、横のつながりというのもあるんですけど、私は縦の串刺しというようなものをぜひ進めていきたい。
 そのためには、教育の分野において一体何を考えていったらいいか。それは御指摘いただいたとおり、理数というよりは興味関心だろうし、プラスアルファで、今の話で出てきた、例えば問題をどう設定して、どうその理由をつけて話していくか、それからどう前向きになっていくか、そんなことが教育に必要になってくるのかなというような、その辺りの視点もぜひ踏まえて御議論頂戴できれば大変ありがたいと思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。どうしてもシステム論に終始しがちですが、システムをつくった後に、個々人が、どれだけ、他者と違う自分の工夫を生かせるかということが多分究極の目標だと思いますので、これが支えられるような制度設計ができるような場にここもしていきたいなという気持ちで主査としてはおる次第でございます。髙谷審議官、ありがとうございました。共同作業ということで、今後ともよろしくお願いいたします。
 では、少し長くなりまして恐縮でございましたけれども、今日も活発な御議論いただきまして誠にありがとうございました。
 では、事務局より事務連絡、お願いいたします。
【滝沢人材政策課長補佐】  次回委員会につきましては、皆様の御都合を確認させていただいた上で、改めて御連絡をさせていただきます。
 本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様、主査に御確認をいただきます。その上で、議題2の議事録については文科省のホームページで公表いたします。
 以上でございます。
【狩野主査】  では、これにて閉会となります。議事録もなかなかまた見ていただくのは大変な分量かと思いますが、ぜひ公開のために頑張っていただければと思います。
 以上で終了でございます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局人材政策課