人材委員会(第97回)議事録

1.日時

令和5年8月3日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

科学技術・学術政策局16F2会議室及びWeb会議(ZOOM)

3.議題

  1. 産業界における博士人材の活躍について(有識者からのヒアリング)
  2. その他

4.出席者

委員

 狩野委員、岩崎委員、稲垣委員、梶原委員、迫田委員、杉山委員、鈴木委員、隅田委員、長谷山委員、桝委員、水口委員、村上委員

文部科学省

 清浦大臣官房審議官、山下科学技術・学術総括官、生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会(第97回)

令和5年8月3日



【狩野主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会の第97回を開催させていただきます。
 本日は冒頭より、傍聴者の皆様に公開しております。どうぞよろしくお願いします。
 今日はオンラインと現地を合わせて12人の委員の方に御出席していただいておりまして、定足数を満たしております。
 それでは、議事に入る前に、本日の委員会の開催に当たりまして、事務局から注意事項と資料の確認をお願いできますでしょうか。
【對崎人材政策課長補佐】 文部科学省人材政策課の對崎でございます。
 本日の会議、対面とオンラインのハイブリッドの実施ということで、対面で御出席の方は、この後の御発言の際は、会場にて挙手、または名立て等の合図をいただき、オンラインで御出席の先生方は、挙手機能によって挙手ボタンを押していただいて、狩野主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただきますようにお願いいたします。
 また、機材の不具合等ございましたら、対面での先生方は事務局のほうに合図いただき、オンラインでの御出席の皆様方は、マニュアルに記載の連絡先に御連絡あるいは、チャット等に御記入いただければと思います。
資料につきましては、この後、事務局のほうで共有させていただきますけれども、会場にお集まりの皆様にはお手元にお配りをしておりますので、御覧いただければと思います。
 資料の確認でございますが、資料1が鈴木委員の御発表資料、資料2が水口委員の御発表資料、資料3が株式会社アカリク様の御発表資料、そして資料4が事務局提出の最近の政策動向等についてという資料、及び参考資料として今期委員会の名簿をお付けしております。
 議事進行の過程で不備等がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 本日、事務局のほうからは、審議官の清浦と総括官の山下、人材政策課長の生田、人材政策推進室長の髙見、そのほか、補佐以下が出席をしております。
 それでは、主査、お願いいたします。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。皆様、お越しいただきまして、大変ありがとうございます。
 では、本日の議題に入ります。今日は、今期人材委員会の主要論点の一つであります、産業界における博士人材の活躍促進につきまして、今後の議論の参考にさせていただくということで、3件のヒアリングをお願いしております。
 まず、初めに、お話しいただきますのが、今回から委員に加わってくださっております、モデルナ・ジャパン株式会社代表取締役社長であられます、鈴木蘭美委員です。鈴木委員におかれましては、イギリスでの博士号取得や企業における御経験、そして組織のマネジメントの立場での御経験などを踏まえまして、研究者としてのキャリア選択や産業界における博士号取得者の活用等について、御発表をいただきたいと思います。
 それでは、どうぞ御説明よろしくお願いします。
【鈴木委員】 本日は、このような貴重な機会を賜りまして、誠にありがとうございます。対面で発表を差し上げたかったのですが、少し咳が出ています。コロナの検査は陰性ですが、念のため、オンラインでさせていただくことにしました。
 それでは、私自身、どうしてPh.D.を自分でやったかということの背景を少し説明させてください。私が20歳ぐらいの頃、仲よくしていた友人の2人ががんの診断を受けました。私とほとんど年齢が変わらないような彼らが、急に授業を受けることができなくなって、当時はあまり抗がん剤も、副作用が強いものの薬効は芳しくなく、大変な思いをしているのを目の当たりにして、これは許せないと思うようになりました。
 その許せないという気持ちが積み重なって、ある日、朝起きてみたら、自分はがんを完治するために生まれてきたのだと。夢の内容はよく覚えていませんが、そういう腹落ちがあったということを、当時のマスターをやっているときのスーパーバイザーに話したところ、そんな夢を見たのであれば、自分の仲よくしているUCLの教授を紹介するから一度会ってくるといいということで、その教授に会いに行くと、そんな夢を見たのであれば、私がいつも検体をあげている教授に紹介するということで、わらしべ長者じゃないですけれども、あれよあれよと、人々の善意のおかげで、私はPh.D.を開始することになりました。さらに、当時英国で外国人が医学のPh.D.をするには結構お金がかかることを、Ph.D.を実際開始できることになった後に気付きまして、やりたいけれども、金銭的に無理ですと申し上げたところ、奨学金まで出ることになりまして、本当に皆々様のおかげで、私はPh.D.を始め、そして完了することができました。
 そのようなスタートであったので、がんを完治するということが、自分の志として今でもあるわけです。完治がまだできていないということ自体が、精神的に結構つらいものがあり、カウンセリングを受けて、自分がまだがんを完治できていなくて、がんの患者さんが今でもお亡くなりになっていることがつらくてつらくて、申し訳なくてしょうがないとカウンセラーに相談したところ、あなたは1人でやろうとしているのかと。がんの完治を1人で実現しようとしているのかと聞かれて、よく自分で考えてみたら、確かにそうだと。彼女は大笑いして、1人では多分できないので、これはチームで、いろいろな人と協力をして、一歩一歩進んで、がんの完治を目指しなさいとおっしゃいました。そこでとても気が楽になったということと、それから、一研究者という形ではなくても、例えば、会社の経営者としてでも、がんの完治を目指すことができるのだなと思いました。
 私自身のキャリアというのは、がんの完治を目指しているというところもありますので、製薬企業での時間がとても長いです。ただ、ポスドクから製薬企業に移る前に、ITXコーポレーションというベンチャーキャピタルの仕事をして、そこでは欧州とイスラエルの様々なスタートアップにお会いし、また、投資をする機会も得ることができて、かつ、Ph.D.をやった経験と知識が役に立ったと思います。
 御質問いただいている、どのようなスキルセットや能力が必要と考えているかというポイントですが、ここで私がリストアップしたものは、決してPh.D.の人たちだけがユニークに持っているものではないと思いますけれども、自分自身だけではなくて周りの人たちを見てみて、そういう素質を特に持っているなということと、それから会社として、こういう素質を持っているPh.D.の人たちがいるといいなというものを挙げてみました。このリストを作成するに当たり、私の人事の同僚などにも相談しました。
 最近、ミーティングを行いました。参加者は東北大学のスタートアップ、弊社のボストンから来た、プエルトリコ人で米国に住んでいる人、そして上場企業の日本の会社でした。そして私、はたと気がついたら参加している全員がPh.D.なんです。東北大学のスタートアップの社長も、顧問も、それから、技術系の方も、全員Ph.D.です。なので、ライフサイエンス、また弊社のような製薬企業が行動する中では、Ph.D.の人たちが大半で、様々な部門の責任を持っているということは、極めて普通な状況なのだなと思いました。
 やはり、特にライフサイエンスの領域では、Ph.D.を持っている人は、時代に求められていると思います。これは、特にレベルが上がると、例えば部長以上になりますと、特に研究開発周りでは、Ph.D.あるいは医師の免許(MD)を持っていない人がその立場に就くということはすごく難しいと思います。少なくとも国際的には、そして弊社のようなマルチナショナルな会社においては、必然と思われる資格だと思います。また、Ph.D.を持っている人にとって便利なことといいますと、やはりお互いのリスペクト、日本の習慣ですと、お互いを先生と呼び合う。日本以外は、もちろんファーストネームなどで呼んだりするかもしれませんけれども、それでも、この人はPh.D.を持っていて、同じような共通点、同じような倫理感、同じようなディシプリンを経てきた人だという、そういう目でお互い認識するような傾向があるのではないかと思います。それが、仕事する上でも、これまで私にとっても役に立っています。
 先ほど申し上げましたように、部長クラスになると、Ph.D.が必然という業界でございましたので、例えば、私が過去に勤めていたマルチナショナルな製薬企業では、160人の組織の中の5名を、会社がPh.D.をスポンサーしたことがございます。そのときの経験も少しシェアさせてください。
 彼らは、社会人として、Ph.D.を今からやりたいという本人の希望があって、会社としても、非常に優秀な人たちですので、ぜひともキャリアップを続けてもらいたいというお互いのニーズがマッチした状況でした。素直に申し上げますと日本の大学でPh.D.をやるというのは安いです。ですので、大学のコストを全て会社がお支払いしても、その人が辞めてしまって、ほかの人を見つけるために払うヘッドハンターのお金を考えると、大学に行くことを会社としてサポートするほうが理にかなっていると、そういう判断でございました。
 彼らは、働きながらのPh.D.ですので、会社の仕事は減ることもなく、休むこともないまま、社会人としてPh.D.をやると、結構苛酷です。週末や夜を使ったりしますし、日中に授業や実験をしなければいけないような場合に関しては、その分、夜に会社の仕事をするなど、そういったフレキシビリティが必要でした。
 それをやっている彼らの活躍を見て思ったことは、まず、金銭的援助が会社からあったということは、すごく彼らにとって後押しになったと思います。こういうことができる企業が増えるといいなと思います。Ph.D.期間延長ですけれども、基本的には3年、4年で終えようと思っている人たちで、場合によっては、例えば5年とかかかったのかもしれないのですが、最初のハードルとして、本当に4年で終えることができるのかという心配はあったようです。ですので、社会人Ph.D.にとっては、5年、ないし10年など必要に応じてフレキシビリティがあると、最初に知ることができるといいのかもしれないと思います。
 いろいろな大学に、皆さんそれぞれ行かれました。筑波大学、東京大学、理科大、横浜市立などだったのですが、決定的に違いはそこにあって、何の違いかといいますと、地の利です。その会社が東京だったので、東京の大学であれば授業もそんなに難しくなく受けられて、理科大の方はお嬢様も理科大で、お嬢様と一緒に同じクラスを受ける、すてきな経験をなさったらしいのですが、やはり地の利がよくない場合に、移動時間というのが負担になったと聞いています。ですので、オンラインで授業を受けることができるなどはとても重要だと思います。
 あと、単位を様々な大学でシェアする、また、実験室もシェアすることができるようになると、例えば、どこか地方の大学のPh.D.をやっていても、東京の大学で一部活動ができる、またはその反対などそういったフレキシビリティはとてもいいのではないかと思います。
も う一つ思うのは、Ph.D.を漠然とやってみたいと思う人たちはたくさんいるのですが、自分はきっと駄目だろうという固定観念を持っている人が多いです。例えば、自分がやりたいものは理系だけども、もともと文系だとか、その反対もあるでしょう。ですので、Ph.D.をやるために何が必要なのか、自分がその資格を十分に持っていない場合には、どうすればその資格を取れるのかということが本当に分かりやすく、初めから見えると、ハードルというのはかなり下がるのではないかと思います。
 あとは、ここに書いたものを全て読み上げることはいたしませんけれども、私自身の経験としては、Ph.D.を始めること、行うこと、そして、それを完了したときの達成感、また、Ph.D.の経験を経て働いていくことというのは、本来、すごく楽しいことです。それをぜひとも多くの人に認識していただけるといいなと思っていて、本人だけではなく、例えば御両親や御家族など、そういった人たちも楽しいということを知っていることが重要なのではないかと思います。
 私の友人がイスラエルで、当時、女性のPh.D.を増やそうという努力をしていたときにやった手法というのが、Ph.D.を持って社会で活躍している女性数名が集まって、小学校のPTAを訪問して回って、そこで、自分のキャリアとかこういう人生を送っているというのを説明したというお話を聞きました。
 その話を聞くと、親としては、より親近感を持って、彼女たちがこういうふうにできているのであれば、うちの娘もできるのではないかというように考える人もいたと思います。また、日本ではたくさんの小学校があるので、全ての学校を周れないかもしれないことを考えると、例えば、バーチャルリアリティーや朝のドラマなどで、一般の方々に親近感を持ってもらうというのはとても重要なのではないかと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
【狩野主査】 鈴木委員、大変ありがとうございました。気持ちのところから始まり、プラクティカルな御提言まで含めて、たくさんのことをお話しいただきまして、しかも時間内に終わっていただきまして、大変ありがとうございました。
 それでは、質疑応答を10分程度させていただきたいと思います。ぜひ御質問をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。杉山先生、お願いします。
【杉山委員】 名古屋大の杉山です。鈴木委員、どうもすてきな話ありがとうございます。
 大変分かりやすかったと思いますが、博士人材として社会で必要とされる能力というところをまとめられた3枚目のスライドと関連して、博士人材が社会に対して、博士人材であるがゆえに提供できるというものは何かについて、質問したいと思います。一般論としては、この中にもありますし、何かビッグピクチャーを持つというようなものは博士人材ならではかもしれませんし、当然、高い専門性というのもあると思いますけれども、先ほど鈴木委員もおっしゃったように、これらは全ての人材に必要な要件でもあったりするように思います。博士人材ならではというところはどこか、御意見をお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。
【鈴木委員】 重要な御質問ありがとうございます、杉山先生。少し日本語が適切ではないかもしれないのですが、さっさとやる力だと思います。さっさと調べたり、つくったり、やってみて、次に進める力で、これはやはり専門性が高く、実際に自分が研究などしたい人であれば、さっさとできるはずなのです。そうでなければ、下調べや、コンサルを雇ってレポートを書かせるなど、机上から始まってしまうので、そこでやはり時間のギャップが生じると思います。そういった意味で、その会社の領域に合致した博士がいるということはとても強いと思っています。
【杉山委員】 ありがとうございます。
【狩野主査】 ほかにいかがでございましょう。隅田先生、お願いします。
【隅田委員】 隅田です。鈴木委員、ありがとうございました。2点あります。
 1点目は、今日、お話を聞いていて、ロールモデルやメンターってやはり大事なのではないかなと思いました。少し肩を押してくれる、つなげてくれる人。先ほどの小中PTAなんかもそうかもしれないですよね。ロールモデルを見せているような、そのような感じでした。その辺りに関して、何か御提案はございませんでしょうか。
 もう1点は、お仕事をされていくと、Ph.D.を持った人の職場になっていくという話があったと思いますが、今度はPh.D.を持った人が集まった中で、そこでさらに輝く人は、どのような点で見ていくのかということが二つ目の質問です。
【鈴木委員】 隅田先生、御質問ありがとうございます。
 メンターについては、私もよく友人たちと話し合います。メンターってそもそも何だろう、今メンターはいるのか、どんなメンターがこれまでよかったのかというような話もします。その人生の時々によって、どんなメンターがいいかは変わると思いますが、大概、経験して、あまりよくなかったなというメンターの例というのは、会社がプログラムとして誰かをつけて、ひと月に一回ほど定期的に6か月やるような、会いたいから会っているのではなくて、会社に言われたから会っているような。一方、この人がすてきだとか、この人から学びたいということを本人が思っていると、たとえ、会えるのが2年、3年に1回であっても、その人から得るエネルギーや学びというものは物すごく大きいと思います。あとは、学ぶこと、話すことというものも、必ずしも仕事のことだけではないと思います。生活や自分の感情など、そういったことも含めてだと思うので、いろいろなメンター、または歴史上の人物なんかもメンターになり得ると思いますし、私自身、メンターもメンティーも世界中にたくさんいる状況です。
 メンティーに対して思うことは、私は彼らから、彼らが私から学んでいること以上に、私はメンティーの方々から学んでいます。ですので、メンターというのは、一方的にメンティーに教えるということではなくて、本当に相互の関係なのではないかなと思っています。
 もう一つ、Ph.D.の人たちがたくさん集まった中でも、その中で特に光る人というのは誰か、どのような人かというところですが、これはやはり、弊社の状況に要請されている、求められている人物だと思います。ですので、例えば、弊社のカルチャーや、弊社が求めているものに合致した人はその分輝きますし、今、弊社で、例えば輝けていない人が駄目な人かというと全然そのようなことはなくて、ほかの会社、ほかの状況、ほかの時期であれば、より輝くかもしれません。Ph.D.の人たちが今後、自分のキャリアを考えたときに、一つの会社だと、本当に自分が一番輝ける環境かどうかは分からないと思います。ですので、絶えずいろいろな可能性を考えていいと思いますし、クロスアポイントメントといった手法もあると思います。あとは、分かりやすく転職ということで、今の自分が最も求められるような環境を見つける、グッドマッチというのが重要なのかと思います。
【隅田委員】 ありがとうございました。能力がある人を、いかに輝かせるかという観点での博士人材の育成というものも聞いていて面白いと思いました。ありがとうございます。
【鈴木委員】 ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。村上委員が手を挙げておられると思いますが、いかがでしょうか。
【村上委員】 村上です。鈴木委員、ありがとうございました。
 鈴木先生にお伺いしたいのは、3ページ目でしょうか、博士人材として社会で必要とされる能力やスキルというものをいくつか挙げていただきました。その中に、長期的ビッグピクチャーを社会的課題やインパクトに対して鮮明に描ける想像力であるとか、複雑なアイデアを専門家・非専門家を問わず幅広い層に伝える能力、科学と一般社会をつなぎ、共感や共通認識を高めることができる能力といったことを挙げられておりますけれども、私は大学に身を置いていて、こういった能力を持っている人はかなり少ないような印象を持っています。
 アカデミアの内向き志向といいましょうか、ピュアサイエンスには興味があるけれども、社会的課題、一般社会をつなぐなど、そういったところの視野がない方が、少なくとも私の周りには多いかなという印象を受けています。これが日本全体の傾向なのかどうかということは分かりませんが、そういった能力をどのように育成していけばいいのかを御教示願えればと思います。
 それから、先ほどアカデミアの内向き志向という表現をしましたけれども、アカデミアの中にとどまらず、広い社会とつながっていくために、企業側から大学に何かアプローチをしていくなど、何か仕組みのような考えられるものがあれば、教えていただきたいと思います。
【鈴木委員】 村上先生、ありがとうございます。まず、最初のビッグピクチャーの部分ですけれども、6年ほど前でしょうか、私のMITの恩師の方に、日本のサイエンス、イノベーションが世界でもっと開花するために何が必要かということを聞いたことがあります。そのとき、彼は二つのことを言いました。一つが、どんなに大変であっても、科学者が自殺をしてしまうようなこと、それは許されない。そう言われたときは少し驚きましたが、結局、科学者が独りぼっちで、自殺までいってしまうような働く環境、または社会的環境というものが、もしかしたらあると、その先生はお考えなのかなと思いました。
 これを日本の研究施設の方々とシェアしたときに、産業医もいるし、様々なホットラインなどメンタルヘルスサポートはあるけれども、正直あまり使われていないというフィードバックがありまして、これは、私自身解決はないのですが、一応情報としてシェアさせていただきます。
 もう一つ、その先生がおっしゃったのは、私の研究所には日本の研究者はたくさんいて、彼らは働き者で、かつ頭もよく、真面目でいいデータを出してくるけれども、彼らが持っていないスキルはビッグピクチャーを語るところであると。日本人でない研究者は、そこまでデータづくりに真剣ではなかったり、雑だったりする人もいるけれども、ビッグピクチャーを話すのが好きで、上手であるということです。
 私はそのとき先生に、日本人の研究者がすごく優秀で、データもしっかりとつくれて、かつビッグピクチャーを語ることができれば世界一なのかと聞くと、そうだと笑ってくれたので、やはり日本の研究者がビッグピクチャーを語れるということはとてもパワフルなことだと思います。一方、では、なぜできていないのかというところですけれども、向いている人と向いていない人がいるとは思います。クリフトンストレングスなど、様々な自分の強みをリストアップしていくような評価はいろいろありますが、ビッグピクチャーを話すことが好きな人や上手な人は必ずいると思いますし、反対に、そういったところには思考が行かない人もいますので、自分自身で全部やるというよりも、ビッグピクチャーを描ける人と一緒にやるということが一番現実的ではないかと思います。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。とてもプロファウンドといいますか深みがあり、なおかつ、ぜひ人材委員会もビッグピクチャーを語れるようになりたいという気もするやり取りをいただきまして、ありがとうございました。
 30分を予定しておりまして、そろそろその時間になりましたので、鈴木委員のお話と質疑に関しては、こちらで一回閉じさせていただきます。後ほど10分前後、全体を通じての意見交換の時間も取れますので、もし加えてございましたら、そのときにまたお願いできればと思います。
 それでは、鈴木委員、大変いいお話、誠にありがとうございました。御礼申し上げます。
【鈴木委員】 ありがとうございました。
【狩野主査】 では、続きまして、水口委員からお話をいただきたいと思います。株式会社メタジェンの取締役CFOでおられまして、水口委員におかれましては、学生時代に自ら起業された御経験ということで、これを踏まえて、ベンチャー企業における状況等も含めて、産業界における博士号取得者の活躍について、お話をいただきたいと存じます。
では、御説明お願いできますでしょうか。
【水口委員】 御紹介ありがとうございます。メタジェンの水口と申します。
 まず、最初に、私のキャリアパスのお話をさせていただいて、その後に、産業界における博士人材の活躍についてのお話をさせていただければと思います。
 まず、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。改めて、メタジェンの取締役CFOで、共同創業者の1人でもあります。専門としては、バイオマテリアルや細胞組織工学というところを私の専門としております。下に経歴を載せておりまして、簡単に説明させていただきます。私は小山工業高等専門学校、いわゆる高専の物質工学科にて化学を中心として研究等をしておりました。その後、高専は5年制の教育の課程でございますけども、3年次に東京工業大学の生命理工学研究科に編入しました。卒業して、修士の2年のときに、メタジェンの起業を行っております。後ほど詳しいお話はさせていただきます。修士を出て、その後、そのまま博士課程にも進学しておりまして、博士課程の3年間は、メタジェンと自分の博士課程の研究を両立していたところでございます。博士課程のところでは、文科省のプログラムの一つでございますけども、博士課程教育リーディングプログラムにも入っておりました。リーディングの必修科目でもありましたが、海外の留学等もしており、シンガポール国立大学のがん科学研究所というところにも3か月行かせていただいております。その後、博士課程とリーディングプログラムを修了し、私の役職も、ステージにおいて変わっております。CSOという、ストラテジーオフィサー、経営の戦略というところをメインにしておりました。博士課程修了後につきましては、メタジェンの専任の役員という形で務めております。その後、メタジェンで役員を務めながら、経産省の若手ワーキンググループの委員などを務め、また、メタジェンでの役職も現在のCFOという立場に変わっております。現在は、この人材委員会の委員も務めさせていただいております。
 ここから私のどういう形でこういったキャリアを歩んできたかの詳細をお話しさせていただければと思います。まずは、キャリア選択の経緯ですが、高専の物質工学科は、主に化学で、有機化学や生化学、無機化学など幅広く化学の基礎を学ぶというところでございました。私はそこで薬、有機化学などといったバイオケミストリーに非常に興味を持っていました。何で興味を持ったかというと、薬とは、既存の薬はいわゆる低分子化合物が現在もメインにはなっておりますけども、原子数十個からなる小さな分子でございます。こういった小さな分子が人の生体システムに直接作用する能力があると。例えば頭痛でお薬を飲むと、すぐに頭痛の改善が見られるなど、こういった能力を持っている物質というのは非常にすごいなと、単純ですけども、こういったところから興味を持ったのが始まりでございます。
 私が高専で研究を始めた頃に、ある問題を知ることになります。これは1冊の本になりますが、「医薬品クライシス」という本でした。そこに書かれていたのは、2010年問題と言われておりまして、具体的に言うと、ブロックバスターと呼ばれる巨大な商品が次々と特許切れを迎え、さらに巨額な投資や、トップレベルの頭脳による開発競争をもってしても、なかなか新薬が生まれない時代になってくると書かれておりました。さらに、新興感染症の脅威も依然として残っておりますけども、作用機序の分かりやすい疾患の薬は出尽くされてしまって、難病が残ってしまうといったところが課題となっている。ローハンギングフルーツとも言われますけども、こういった分かりやすいものは取り尽くされ、高い果実にはなかなか手が届かず、難病については、やはり疾患の患者さんも少なく、なかなか利益につながらないため、製薬会社もなかなか薬の開発にはいかず、こういった難病が残っているということを知りました。このような課題も知り、私の人生で何を成し遂げたいかというところで、こういった未解決の難病の人々を救いたいという思いが芽生えてきたというところが、高専で研究を始めたきっかけでございます。これを私のミッションとして、どう実現すればいいかが、私が学生時代、ずっと考えていたことでございます。
 研究分野を変えていくというところで、難病の患者さんを救う、そういった世界を実現するためにはどうすればいいか、それを考えていった結果、いろいろな研究分野へ携わっていくことになります。高専のときは、低分子化合物の医薬品というのはなかなか生まれないという課題があり、その当時、核酸医薬や抗体医薬という次世代医薬品が着目されてきました。従来の低分子医薬ではなかなか治療が難しい疾患へのアプローチということで、私は核酸医薬の研究を進めることになります。また、当時、SARSなどの新興感染症の脅威も広まっており、それに対応できるような薬の開発ができないかどうかということで研究を始めることになります。高専のときはそういった研究を行っておりました。さらに、一般的な薬というのは、飲み続けなければいけないという、いわゆる対症療法が基本になっておりますが、それだと、なかなか難病の患者さんなどへのアプローチは実現できないだろうと思っていました。東京工業大学に編入した際に、ほかに何かできることはないかと考えたときに、再生医療や組織工学という分野に着目し始めました。再生医療は、根治治療につながるアプローチだと考えておりまして、例えば大きな臓器の損傷や、脊椎の損傷の治療も、再生医療であれば、実現できる。薬だけでは対応できないようなところにもアプローチができるため研究を始めました。
 具体的には、三次元組織構築という、立体的な臓器をつくるためにはどうすればいいかという研究を始めております。もう少し具体的に言うと、立体的な臓器をつくるためには、三次元的な血管を張り巡らさなければ中の細胞は死んでしまいますので、そういった立体的な臓器をつくるためにはどうすればいいかというような研究を行っておりました。
 同時に、私は修士2年のときに起業しておりますけども、その過程で、こういった難病の患者さんの治療だけでなく、あらゆる病気をなくしていきたいという思いに変わっていきます。治療だけではなく、やはり予防も重要であり、この両方をやる必要があると思ったところでございます。ですので、こういった治療だけではなくて予防もするアプローチも両方やりながら、病気のない世界をつくりたいと思い、いろいろな研究を行っていったわけでございます。
 今、メタジェンでは、近年の研究によって、実はいろいろな疾患の原因や増悪に、腸内細菌が影響していることが続々と分かっておりまして、うまく腸内環境をコントロールすることができれば、いろいろな病気の予防や治療が実現できるだろうということで、腸内細菌・腸内環境に関するアプローチを行っております。
 私自身、このようにいろいろな研究に携わってきたわけですけども、やりたいことは病気をなくしたい、病気ゼロという社会を実現したいと考えております。そしてそれを実現するためには多様なアプローチが存在しておりますが、私はどんなアプローチでも構わないと考えております。今は、メタジェンという会社で腸内細菌をターゲットとしたアプローチを中心にしておりますけども、それもいろいろなアプローチの中の一つであると捉え、病気ゼロの世界の実現を考えております。
 どのように起業に踏み入ったかというところは、いろいろな人々の出会いにつながっております。私は東京工業大学のリーディング大学院の一つである、情報生命博士教育課程に所属しておりました。この課程は、情報を専門に持つ学生と、生命科学を専門に持つ学生のいわゆる複合領域型にあるのですが、もう少し説明すると、博士人材としてのしっかりとした主専門としての軸を持ち、かつ副専門についても専門家とディスカッションできるような素養を身につける、いわゆるガンマ型人材を目指しましょうといったプログラムでした。その課程の中で、短期インターンシップをした際に、株式会社リバネスさんからTECH PLANTERというプログラムの中で行われるTech Planグランプリというビジネスコンテストを紹介していただきました。そこで、私と、リーディング大学院に所属する安田という同級生と、一緒に何か出そうという話で盛り上がりまして、チーム構成としては、私がバイオで彼がITという形でした。また、応募資格にハードウェア開発を伴わないプランは対象外という縛りがあり、ではどうすればいいかと、いろいろずっとディスカッションして、どのようなものがいいかとアイデアを出していきました。
 そこで、たまたま出てきたアイデアが今の起業につながっているのですが、出てきたアイデアというのが、スマートトイレの構想です。皆さんが何気なく排せつしている便には、非常に有用な健康情報が詰まっております。今のトイレというのは皆さん普通に水で流されると思いますが、無駄に廃棄してしまっております。これを、次世代のトイレをつくることができれば、日常的にこういった健康に有用な情報をフィードバックして、健康を維持することができるだろうというアイデアをTech Planグランプリに持っていったのが始まりでございます。
きれいなストーリーであれば、ここでグランプリを取ったり、賞をもらって起業したりとなるのですが、落とされてしまいました。私はこれを2回繰り返します。ただ、病気ゼロの世界を実現するための一つのアプローチとしては非常に重要だと考えていたので、このように落とされては、また出すということを繰り返しておりました。
落とされてはしまいましたが、主催者を通じて、腸内細菌研究のトップレベルの研究者を紹介いただくことになります。私は再生医療が専門で、腸内細菌はあまり精通しておりませんでしたので、こういったトップレベルの研究者と会って話してみてはということで、つなげていただきました。
 一人が弊社の社長でございますけども、慶応義塾大学の福田先生、もう一人が東京工業大学の山田先生です。私がこういうことをやりたい、スマートトイレをつくりたいという話をしながら、意気投合してチームが出来上がりました。彼らもよく言っていたのが、論文を書いただけでは世界は変わらないということです。ネイチャーやサイエンスといった有名な雑誌に論文が掲載されたからといって、世界は変わらなかったと言っておりました。また、科研費に頼らない持続的な研究をする必要があるということです。やはり科研費というのは限られておりますし、これは持続的ではありません。研究成果を社会に実装して、そこから出た利益をさらに研究に投資して、そういう循環的なサイクルを生み出す必要があるという話をしていて、私も病気ゼロを実現するためには研究成果を社会に実装する必要があると考えておりましたので、意気投合してメタジェンが出来上がりました。このチームができた後に、バイオサイエンスグランプリというものがございまして、そこでグランプリをいただき、その後、実際に会社を立ち上げました。彼らと出会って、半年というスピード感で会社ができたというところでございます。
 2015年に会社を立ち上げて、今、8年たちました。社員が26名になっております。ミッションとしては、腸内環境に合ったヘルスケアを当たり前にするということを掲げております。また、グループ会社として、メタジェンセラピューティクス及びメタジェンシンガポールを立ち上げておりまして、グループ全体のビジョンとして、病気ゼロを実現するということを掲げております。グループ会社を含め、いろいろなプレーヤーを巻き込みながら、病気ゼロの実現を目指しているところでございます。また、J-Startupなどにも認定を受けております。
私の役割についてもお話しさせていただくと、ステージに応じてメインの役割が変化しております。走りながら武器を拾うと書いておりますが、そのようなスタイルでやってきました。私は博士課程を通じて研究をしておりましたが、今はファイナンスのところをやっております。自分の専門とはまた違うところにおります。ステージに応じてということで、立ち上げ当初、先生と一緒にやっていたということもあり、誰が動いて営業へ行くのか、運営はどうするのかということで、まずは、COOに就任いたしました。その後、博士号を取得してCSOに就任しました。徐々に社員も増えてきて、経営戦略の中心を担うようになっていき、その後、CFOに就任し、財務も含めた戦略も行うようになってきたところでございます。
 我々メタジェンの役員陣は皆博士号を取得しており、研究者でやっているような会社でございます。私自身は、病気ゼロを実現するために、最短でどうすればいいかを考え、ファイナンスの部分を引き受けて、会社の運営に努めております。
重視していることは、理念と利益の両立が不可欠であると書かせていただいております。やはり実現したいことは、病気ゼロの世界であるということは、前提であり、その上で、会社を運営していくためには、利益を出すことが必要で、これは両立する必要があると考えております。こういった持続的な研究開発を行いながらも、理念を追求していく形をつくる必要があると、常日頃考えております。
 先ほどの繰り返しになりますが、絶えず研究成果を社会に実装して、得られた利益を研究に再投資して、持続的なサイエンスを生む。サイエンスでまた成果を出して、それを社会に実装して、得られた利益でまた研究をするという、こういったサイクルを回しながら病気ゼロに向かって歩みを進めております。
 こういったキャリアパスも含めまして、私の経歴については一旦以上にさせていただいて、次に、産業界における博士人材の活躍促進についてのお話をさせていただければと思います。博士人材として社会で必要とされる能力やスキルは、もちろん挙げればいろいろあると思いますが、一つだけ大きなものを取り上げさせていただきました。博士ならではという御意見ありましたけれども、難易度の高い問題を解決できる能力というものが博士に求められる能力であると考えております。社会はあらゆる問題であふれております。その上で、博士として、より高い問題にトライしていく、そして解決していく必要があると私は考えております。
 ブレークダウンすると、三つ挙げさせていただきましたが、まずは問題の本質を見極め、道筋を計画し、実行するということで、これは研究の過程で普通に行われていることかと思いますが、学術的なことだけではなくて、社会実装、事業開発、研究開発も含めて、ここは重要なところかと思っております。それが解くべき問題なのかどうかも含めて、やはりまずは問題の本質を見極める、といった能力が求められると思います。
 2つ目は、不確かでもうまくやれるということで、今の時代、VUCAと言われておりまして、なかなか予測が難しい時代となっていることも踏まえて、限られた情報の中でよい判断をして、解決に導いていく能力が求められるのではないかと考えております。
 3つ目は、やり切る力で、もちろん途中で諦めてしまうと、そこで終わりになってしまいます。特に起業家に求められる力かと思います。いろいろなハードシングスが訪れ、苦しいときはあるけども、もちろんそこでやめてしまったら世界は変わらない。ですので、こういったやり切る力というのは非常に重要であると考えています。
 次に、博士人材が社会の幅広い分野でより活躍するために、政府、産業界、アカデミアがそれぞれ取り組むべきことをそれぞれ挙げさせていただきました。まず、政府として、こういったことができればいいのではないかと考えていることは、社会課題解決に携わる企業や機関等と研究者、博士人材が交流する機会を増やして、知識のオープン化と循環を促進ということで、先ほど少し議論もありましたが、社会との接点をより持ってもらう必要があると考えております。研究者や博士人材が社会課題を目の当たりにしていないところが大きいかなと思います。そういった課題を認識させ、研究者や博士人材の力を使っていく、ミッションを与えるということが一つ重要であると思います。こういった社会課題も、1人だけでは実現できないものがより増えている時代になってきますので、いろいろなプレーヤーを巻き込みながら、社会課題の解決を目指していくということが実現できるとよりよいと考えておりますので、それに資する政策等が実現できるといいのではないかと考えております。
 2つ目の産業界については、利潤のみを追求しない研究予算の確保、研究自由度の見える化ということで、我々が実践していることでもありますが、利益だけではなくて、利益に加えて、自ら抱えるビジョンにつなげていくということです。一般的にアカデミアと産業における研究の違いって何かというと、研究の自由度かと思います。アカデミアでは予算に限りはございますが、比較的自分で自由に研究を設定して、研究を進めていくというのが大きいかと思いますが、産業界においては、一般的には利益につながる研究というイメージがあるかと思います。しかし、利益だけではなくて、より長期的な研究、長期的なビジョンに向かって、より基礎的な研究をやっている場合もございます。そういったところをよりアピールしたり、こういった予算がありますといった見える化ができると、より産業界に飛び込んでいく研究者が増えてくるのではないかと思っております。
 また、我々のところにもありますが、やはりベンチャーに入ってくる博士人材は、社会実装に興味を持っているというのも多く印象として受けますので、そういったところもより分かりやすく伝えて、アピールしていくということが非常に産業界において重要かと考えております。
 3つ目は、アカデミアで、ラボ外活動の寛容性の向上ということを挙げさせていただいております。私自身、博士課程の3年間は、自分の会社と、自分の博士課程の研究を両立させていただいておりました。ここは結構、ラボのPIの考え方に依存してしまう部分はあるかと思いますが、よりこういった寛容性を向上できると、より社会との接点をつなげることにつながってくるのかと思います。学生だけではなくて、ポスドクや、先生の皆さんもそうですが、起業などにおいても、よりラボ外活動で社会の接点を持っていくことは非常に重要であると考えています。もちろんバランスは重要ですので、そこを考慮した上で、より社会との接点を持つというのが重要と考えております。
 以上になります。
【狩野主査】 ありがとうございました。熱い思いを裏打ちした頼もしいお話だったと思います。それでは、5分程度と残り時間が少なめなのですが、たくさん手が挙がりましたね。では、先に質問いただいて、まとめてお答えいただくパターンに今回はいたしましょうか。
 では、鈴木委員、まず、お願いいたします。
【鈴木委員】 ありがとうございます。手短に。利益との両立というところが気になりました。例えばモデルナの場合は、コロナになる前に、メッセンジャーRNAの研究開発に4,000億円規模の開発投資に挑んでおり、その間赤字でした。ですので、長いダムをつくるとか、新幹線をつくるとか、初めから利益が生まれるというのはかなりレアだと思います。そこをもう少し御助言いただければと思いました。
【狩野主査】 大変、私も聞きたいところですが、では、続いて、迫田委員の御質問をお願いできますでしょうか。
【迫田委員】 ありがとうございます。大変力強い発表で勇気づけられました。
 お伺いしたいのは二点で、一つは、社会課題を基に、自分のエネルギーで前に進んでいこうとする姿勢を非常に強く感じたのですが、社会実装を目指す方とアカデミアを目指す方がいる中で、周りに社会実装を目指す方がどれぐらいいらっしゃったのかというのをお伺いしたいです。もう一つは、今、お伺いした中では、医薬の研究をされている方との出会いが非常に大きかったのかなと思いました。その他にベンチャーを育てるエンジェルのような役割を果たす方がいたのだろうと感じたのですが、どういう方がそういった役割を果たしたのか、その二点教えていただければと思います。ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。では、桝委員からも御質問を先に共有いただけますでしょうか。
【桝委員】 本当に面白いお話、ありがとうございます。
 私からは1点だけ、実社会とつながりながら博士号を取得したという、まさにロールモデルが水口さんなのではないかと思ったのですが、実際問題、ビジネスをされながら博士号、博士課程を両立したときに難しさを感じた点と、制度上でそれを緩和する方法はありそうかどうかということを伺えればと思っております。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。どれも大変本質的な御質問だと思います。ぜひ水口委員、お願いします。
【水口委員】 まず、利益との両立について、やはりビジネスモデルに依存してくる部分はあると思いますが、我々の腸内細菌分野の研究においては、いわゆるノウハウや解析技術が、まずコアにございました。そこでうまく、自分たちの利益を確保しながら、データをためていくのですが、そのデータというのは非常に重要で、その後の自社のビジネスモデルにもつながっていくところがあります。もちろん製薬会社さんで、最初の基礎研究で膨大なお金がかかる場合だと、なかなか難しいところはあるとは思いますが、自社の持っているものを、企業連携をしながら収益を上げて、次世代のビジネスにつなげていくとともに、基礎的な研究を行えるような体制を整えていく。我々はバイオベンチャーでありながら、7期連続増収黒字という形で会社を運営させていただいておりますが、やはり、いかにしてアンドを実現するかということを常日頃考えて、それを実現できるビジネスモデルをつくったというところでございます。
 ですので、全て一般化できるわけではございませんが、工夫をすればできる企業も生まれてくるのではないかと思っておりますので、一つのモデルとして、次世代のベンチャー等へ繋げていければと考えております。
【鈴木委員】 ありがとうございます。
【水口委員】 二つ目のところで、社会実装を考えている人がどれくらいというお話については、大学内、アカデミアの中にいるとあまりいないという感覚ではございますが、ビジネスコンテストなどに参加していると、そういった博士課程の学生もおりますし、助教の方もいますし、教授の方もおり、意外に研究者もちらほら見かけます。ですので、私の感覚では、結構社会実装を目指す方も出てきているのではないかと思っております。
 我々の会社は研究者だけで立ち上げましたが、初期は、株式会社リバネス様に、経営面や財務面の支援をいただいておりました。どのように会社を運営すればいいか、我々ずっと研究者でしたので、経営については右も左も分からない状況で、最初の方はそこを御支援いただき、学びながら、自分で運営できるような形にしていったというところでございます。
【狩野主査】 もう一つは、実社会とつながりながら博士号を取得されることの両立の難しさはどうでしょう。
【水口委員】 自分の研究とメタジェンの会社の運営をする中で、結構時間がシビアなところではあると思いました。いかにして時間を有効活用して研究を行っていくかということで、その当時、あまりリモートは普及してはおりませんでしたが、リモートを有効活用しておりました。立地的なところもございまして、弊社の社長が慶應義塾大学の先端生命科学研究所というところで山形県の鶴岡市におりましたので、私がいる東京工業大学からはオンラインでのやり取りが必要でした。また社外との打合せをするときは、東京工業大学のすずかけ台キャンパスから都心に行くのは電車で1時間ぐらいかかるので、その間で論文を読んだり、研究計画を立てたり、自分の研究をいかにして進めるか、いかにしてそういった時間を有効活用するかということを考えておりました。
 留学で、シンガポールのNUSに行っておりましたが、時差が1時間のため、国内での会議も円滑にできるといったことも考えながら、留学先も選定していくなど、両立を何とかやっておりました。
【狩野主査】 たくさんの内容を大変簡潔にやり取りをしていただきまして、大変ありがとうございました。
 それでは、一旦水口委員の内容はこちらでお開きにさせていただいて、続けて、アカリクの皆様からのお話をいただきたいと思います。株式会社アカリクの代表取締役社長でおられます山田様と、プロジェクト開発グループマネージャーでおられます鬼頭様からお話をいただきたいということで、今日わざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。
 株式会社アカリク様は、大学院生や研究者のための就職情報サイトの運営や、就職転職サービス、そして就活イベント等を展開されております。今日は博士課程学生と産業界をつなぐ就職活動の最前線の状況を踏まえまして、博士人材の就職市場や、産業界における人材の活用に関する現状などについて、御発表をお願いしたいと存じております。
 それでは、山田様、鬼頭様、ぜひよろしくお願いいたします。
【アカリク(山田様)】 御紹介ありがとうございます。株式会社アカリクから、採用支援会社から見た産業界における博士人材の活用促進についてというテーマで御説明させていただければと思います。
目次は記載のとおりになっております。
 まず、アカリクの御説明をさせていただければと思います。アカデミーとリクルートの略称でアカリクと申しまして、設立からは18期目を迎える、新卒のキャリア支援においては比較的老舗の会社に当たるところでございます。領域としては、非常に絞ったターゲット層で、キャリア支援をさせていただいておりまして、大学院生とポストドクター、研究者に特化したキャリア支援をしております。キャリア支援の方法としては、人材紹介というサービスと、個人情報や研究内容、自己PRを記載いただければ企業側からスカウトが来るというスカウトサービスというものと、オンライン、オフライン、ハイブリッドで行っています採用イベントというものが事業内容としてはあります。
 我々、コーポレートミッションとして、知恵の流通の最適化というものを掲げて取り組んでおります。これは、高度研究機関であります大学院やその他研究機関から日々生み出される知恵と我々呼ばせていただいておりますけども、それを幅広く産業界に還元、流通することで、よりよいサービス、よりよい世界が生まれてくるため、そこにアカリクが間に入って最適化させようということをコーポレートミッションに掲げて事業運営をしているという形でございます。
自己紹介ですが、私、アカリクの代表しております山田と申します。2021年の4月に2代目という形で代表に就任いたしまして、私は実は博士まで行っている人間ではなくて学部卒でございます。前任の林という人間が、京都大学の博士課程、結果満期退学という形ではあるのですが、そこで実際に研究されている際に、非常に周りの同級生が優秀で、ただ、民間企業からあまり求められていないというところのねじれを解消したいという思いで立ち上げた会社でございまして、2年前の4月から私がバトンを受けたという形でございます。
 私自身は、ずっと一貫して人材育成や転職就職支援というHRの領域を10年ほどやっておりまして、前職ではジョブ型の走りでありますエンジニアの紹介支援をずっとやってきておりました。そのノウハウをこの産業界のマッチングに還元してほしいということで前任の代表からお話をいただきまして、バトンを受けたという形でございます。
 アカリクでの産業界における博士人材のキャリアパス拡大の取組について、我々の取り組んでいる内容を簡単に御説明できればと思っております。
 アカリクで取り組んでいる内容、大きく7個ありまして、後ほど細かく説明していきますのでざっと流していきますと、1点目が、就職エージェントという形で、人材紹介でマッチングを行っております。年間2,500人以上の大学院生やポスドクの方々と、一対一でキャリア相談を行って、求人の御提案などをさせていただいております。
 2点目が、博士と企業のマッチングイベントで、なかなか我々以外やっていないのではないかというところではあのですが、博士課程限定のキャリアイベントを年に複数本やっておりまして、1年間で400名以上の方々に参加いただいております。
 3点目が、大学向けに、就職ガイダンスやPBLという問題解決型の教育等のカリキュラムの提供などもさせていただいております。
 4点目が、大学院生向けの自己分析ツールというものを開発させていただきまして、なかなか自分を客観的に見る機会がないという声もいただいておりましたので、分析ツールの診断結果を踏まえて、自己分析したり、自分の自己PRを書いていただくようなツールを提供しております。
 5点目は、キャリアパス事例の発信で、民間で活躍する方々へいろいろヒアリングをさせていただいて、研究者や博士人材の方々にロールモデルを見つけてもらうための発信もさせていただいております。
 6点目は、文科省さんと一緒にやらせていただいておりますジョブ型研究インターンシップというプロジェクトと、7点目、JGRADの運営業務委託という事業を大きくやらせていただいております。
 エージェントでのマッチングの創出について、我々大学院生を中心としたキャリア相談を行っておりますので、基本的には8割以上が大学院卒のキャリアアドバイザーで構成しておりまして、高度人材の採用支援のプロによるサポートを行っております。資料右側が、ざっくりマッチング時の理論年収の平均で、もう少しここを広げていきたいなと思っているのですが、新卒全般に比べると博士学生の支援というところは、50万円ぐらいは上振れて、平均年齢が上がってきているというところもあるので、新卒全体の平均よりもやや高めに水準してマッチングのほうをさせていただいております。ただ、専攻分野においては、マッチングしやすい業界や職種は異なってくるのですが、その中でも、昨今半導体関連の業界の高年収オファーというのが非常に多くて、そういったところで引上げていただいている形になっております。
 博士と民間企業のマッチングイベントというものの開催について、資料右側のバナーの画像が直近やらせていただいている採用イベントでございまして、博士課程Expoというものが、博士学生を100名以上集めて、企業も8社から10社ほど集めて、行きたい会社の個別ブースにアサインして、そこで説明を聞いていただくというものです。右側のDX人材ブートキャンプというものは、博士学生限定で、最近流行りでありますデータサイエンスやITエンジニアという職種の即戦力で活躍できるようなカリキュラムを1.5か月のプログラムとしてつくりまして、それを無償提供で学生に受けていただき、企業からはスポンサーの費用をいただき、一緒に育成して、そういった方々のマッチングの機会を提供しているというものです。左下の住友ファーマさんのところ、データサイエンスに特化した個社イベントや、右下のイノベーションサミットというものが、博士学生を選抜しまして、企業の研究プロジェクトの問題解決のカリキュラムを2日間行って、グループワークで最後発表まで行って終了するというプロジェクトをやっております。
 続きまして、大学でのガイダンス提供におけるキャリア支援について、大学の中で、大学院生や博士学生に特化したキャリアセミナーがなかなか現場でできないといった声もありまして、アカリクはその辺の領域にかなり精通していると思うので、ちょっと講演いただけないか、セミナーやっていただけないかということを、大学側からありがたいことにお声がけいただいておりまして、大体月間で5校から多いときは10校ほど、セミナーをさせていただいております。実際に弊社の博士課程の経験がある講師が複数名おりますので、自分の実体験を用いながら発信させていただいたり、あとはなかなか手を動かさないと分からない部分もあるかと思いますので、個人ワークやグループワークを行いながら、自分のキャリアや自己PRを書いていただくといったワークなども提供させていただいております。
 実際にガイダンスで発表している資料の参考例になりますけども、博士課程のよくあるケースとして、ずっと研究に専念していて、結果的に民間就職するとなったときに、慌てて情報収集してセミナーに参加するなんていうことがありますけども、ほとんどの企業がもう終わってしまっているというところもあって、滑り込みで最後我々のほうで支援をさせていただくのですが、もう少し前もって準備していきましょうといった内容を発表させていただいていたり、あとは、博士学生の方には、とがった自分の研究テーマのみで就職先を探そうという傾向がありまして、それで求人があればそのまま我々も支援させていただくのですが、なかなかそういった針の穴を通すようなマッチングというのもなかなか難しいので、もう少し専門分野や一般的な知識経験というところまでブレークダウンして、その上で、求人を御提案させていただくということもガイダンスで発表させていただいております。
 あとは、一般的な博士学生の就職活動のスケジュールです。我々、これは提言させていただいているところではありますが、下がどちらかというとアカデミックの選考で、上が民間ですけども、両輪でしっかり、博士に入るタイミングで、このようなスケジュール感を頭の中でイメージしておきましょうというのを発表させていただいております。
 それから、自己分析ツールのアカリク診断というものを提供させていただいております。実際に研究に取り組む大学院生にフォーカスを当てた質問項目になっておりまして、研究での経験や実際に研究室での取組内容、自分のアカデミックキャリア、ライフキャリアについてというところで、キャリアコンディションが把握できるような自己分析ツールを作成させていただいております。あまり外部にはまだ出していないのですが、資料右下がアカリク診断によってつけられた平均スコアになっておりまして、やはり学部、修士に比べると圧倒的に博士やポスドクの方々のスコアが高いということがありますので、こういったところを企業側にもっとプッシュしながら、博士人材を採用していきましょうと、営業側の提案として我々がさせていただいているところでございます。
 また、キャリアパスの事例紹介と発信について、先ほどもロールモデルの不在、ロールモデルがなかなかいないといった話もあったと思いますが、博士人材が民間企業でしっかり活躍しているというところを、紙や動画などの媒体で積極的に情報発信をさせていただいております。左下の「Acaric Journal」というものは、少しでも手に取っていただきたいということもありまして、初音ミクなどのキャラクターも使いながら、各研究室やキャリアセンターなどに置かせていただき、研究者のキャリアや、どういったプロジェクトをやっているかというところを、研究者をデザインするというテーマで発行しております。資料右側は、「理系の歩き方」というものを産経新聞さんと一緒に行っておりまして、産経新聞さんの中で先端技術大賞というプロジェクト、若手研究者を表彰するという制度がありまして、それに非常に我々も共感をさせていただいて、一緒にアライアンスを組みましょうという形で、いろいろな大学の先生や現役の大学院生、民間企業で活躍される博士卒の方などそういった方々の10分ぐらいのインタビュー動画をつくらせていただいて発信しております。
 あとは、ジョブ型研究インターンシップ推進事業について、これは文科省さんと一緒にやらせていただいているもので、博士学生に2か月間有給でインターンシップをさせていただいているという形でございます。そこの運営事務局をアカリクでさせていただいております。
 マッチングの事例の共有を少しさせていただければと思っております。資料左側は、JX金属さんという会社ですが、これはテクノロジースカウティングという、少し特殊なジョブではあるのですが、そこでのマッチング事例や、資料右側は、実際に文部科学省様にも求人のほうを出していただいて、エビデンス分析に基づく科学技術のイノベーション政策の戦略立案という内容のジョブで実際にマッチングも生まれております。
 もしお時間あれば、ウェブサイトでも掲載しておりますので、実際に詳細なジョブ型研究インターシップの実施事例というものを見ていただけると、何となくイメージがつくかと思いますけども、エア・リキード・ラボラトリーズという会社様で実際にマッチングして、どのような活躍をされて、実際どのようなところを評価されているかということが内容として記載されておりますので、よろしければこちらも見ていただければと思っております。
 あとは、博士人材データベースJGRADの運営についてで、実際にアカリクが間に入らせていただいて、博士学生にもっとこのデータベースを活用いただくためにSlackのコミュニティーなどの運用もさせていただいております。
 博士人材に必要とされる能力とスキルというところについて御説明させていただきます。
 こちら、我々のほうでコラムを出させていただいているのですが、企業が大学院出身の方に期待する能力と活躍フィールドを簡単にまとめさせていただいております。やはり研究と事業は近いという部分で、研究開発の経験や主体的な研究遂行力、新しい分野での開拓推進力というものを高く評価される部分や、研究と重ならないところではありますが、調査分析能力や自己管理能力、プレゼンテーション能力など、そういった能力を生かせるところでいうと、もちろん民間の研究開発職、技術職はもちろんのこと、コンサルタントやデータサイエンスなどでも活躍できますといったことを一覧化した資料でございます。
 また、経営者が求める人材について、我々、博士学生や高度研究人材といった領域で積極的なアンケート調査を実施させていただいておりまして、経営者は、分析力、リスクの許容力といった能力を持つ人材を希望しているというデータがありまして、こういった人材は非常に博士学生と相性がいいのではないかということで、我々から情報を発信させていただいております。
 研究職以外で博士学生の採用を行っている企業様の期待については、実際に幾つかアンケートを取らせていただいているのですが、やはり学部生や修士と比べてパフォーマンスの高さを実感いただいておりまして、97.3%の人事担当の方から高いと言っていただいております。かなり驚異的な数字であると思っています。実際にどういったところのパフォーマンスが高いかと言いますと、やはり研究活動を通じて得た視野の広さや、批判的な思考力というところでした。企業だと勢い任せの会社もある中で、少しフラットに考える、こういったリスクがあるといった提案ができる、こういったところは高く評価をいただいておりまして、9割以上の人事担当の方から、これからも博士学生を採用していきたいという声をいただいております。ですので、なかなか知られていないところではありますが、産業界での活躍の場は意外と広くあるということを我々のほうで今発信させていただいております。
 博士人材が今後活躍するために、産学官で取り組むべきことについてお話をさせていただきます。
少し恐縮ながら、産業界の方々に共有といいますか、発信させていただければと思っているのですが、博士人材をどう活用するかという視点で検討して、積極的な採用を進めていただきたいと思っております。我々は、主に博士学生やポスドクの方々の御支援をずっとメインでやっている会社ですので、意外と採っていただいている認識ではあるのですが、広い視点で見ると、博士人材の活躍の事例がある企業のみが積極的に採用している状態でありまして、まだまだ博士人材を知らない、博士人材を採用したことがないという会社が圧倒的です。ですので、やはり博士人材のことを理解していただいて、現場と一緒に、どうやってその人材を活用するかということを模索していただきたいと思っております。今、文部科学省さんと一緒にやらせてもらっているジョブ型研究インターンシップは非常に相性がいいこともあり、まずはお試しでインターンシップというところから接点を持っていただいて、パフォーマンスを見て採用につなげていただくというのも、もっともっとやっていけると良いと思っております。
 あとは、博士人材の活躍できる環境をつくるということもあります。積極的に採用して、かつ、博士人材が活躍されている会社をピックアップすると、そういった環境を工夫しているところがあります。大きいところでいうと、給与や待遇面は差をつけて優遇しているという会社もありますし、あとは社内教育でキャリア形成の支援というところも積極的にやっているという会社もございます。手前みそですが、アカリクも、今年4名の新卒を採用いたしまして、そのうち3名が博士卒で、8割以上が博士卒というのも、我々が実際体現しております。実際に活躍しますし、立ち上がりはものすごく早いので、教育コストもかなり抑えられるということもあります。そういった事例を積極的に民間企業に発信をさせていただいているところでございます。
 それから、政府の方々への提言もありまして、包括的な方策に加えて、分野ごとでアプローチが変わってくるので、その分野ごとの支援パッケージをもっともっと拡大できてくると良いと思っております。参考事例として、アカリクの登録会員を対象とした、研究や事業などで1週間当たりどの程度時間を使っているかという調査がありまして、結構分野別に差が見てとれます。ですので、我々もそうですけども、こういった学生に合わせたキャリア支援や、支援パッケージを拡大していくことが必要ではないかということで御提言させていただきました。
 続きまして、大学含めアカデミアの方々向けへの提言で、産業界と協力して博士人材の活躍の場や機会を拡大していくことが重要であると思っております。研究をずっとやられてきて、最後、直前に民間への駆け込みで、我々のキャリア相談やキャリアサポートのニーズが非常に高いところではあるのですが、キャリア形成は早期から継続的に取り組むことがベストだと思っていますので、こういった議論は積極的にやっていく必要があるということと、博士学生の方々に、自分は何ができるのか、この分野で社会にどういった影響を与えられるのかという視点を拡大していただけると、自身でキャリアパスを広げられていけるのではないか思っています。結構やっている内容自体は民間企業でも活躍できる内容だったりするのですが、そのイメージがなかなか持てていないというところがあるので、そういった視点を積極的に発信していく必要があるということと、あと、最近リカレント教育というのが一つバズワードとしてあると思いますが、そういった実際に産業界で活躍をされてきた人材を、積極的にアカデミアに受け入れていただいて、その方がキャリアパスを発信していくということも非常に重要かと思っております。
 イメージとしては、なかなかアカデミアの外を知らない、見えないということがあり、アカリクでは、こういった外の世界を積極的に、イベントであったり、いろいろなツールを使いながら発信をさせていただいておりますので、こういったことを産業界と協力して、博士人材の活躍の場や機会をもっともっと拡大していく必要があると思っていまして、唯一のゴールであるように見える教授職以外にも、もっともっと活躍できるフィールドあるということを発信していくということ、また、もっと行き来できるということを発信していきたいと思っています。実際に、いろいろな会社さんで社会人博士の通学サポートや、そういった部分で1回戻る、また戻ってきてもらうという行き来するキャリアパスというものを提示している会社さんも増えてきているので、こういったところがもっともっとできると、双方シナジーが高まってくるのではないかとアカリクとしては思っております。
 以上になります。ありがとうございます。
【狩野主査】 大変豊富な内容を、時間も配慮いただきまして、大変ありがとうございました。また、提言の内容がしっかり名宛人が明記されていてさすがだと思って拝見いたしました。杉山先生、お願いします。
【杉山委員】 ありがとうございます。ただいまのお話、全体のまとめのような感じがして、我々が持っている問題意識、非常にクリアに見せてもらえたかと思っています。
 前回も私、申し上げたのですが、学生の立場からすると、マスターからドクターへ進んでPh.D.を取るということが、研究者になるためであれば必要なことだという理解はできるのですが、社会に出て活躍するためにドクターを取るインセンティブがあまりないというふうに見えています。例えば、ドクターを出れば、マスターではいけないような会社に就職できたり、それから27ページに書かれていましたけれども、マスターから3年たったところでの待遇よりもずっといい待遇や、博士人材ならではのキャリアパスになったり、何かドクターであることがすごくインセンティブになるようなことを考えている会社、またはそういった事例がありましたら教えてください。
【アカリク(山田様)】 ありがとうございます。実際、幾つか例を挙げさせていただきますと、IT企業でGMOインターネットという会社がございまして、そこは710プロジェクトというものを発足して、博士学生含め高度研究人材の採用は710万円からスタートするという、高年収帯での採用サポートを行っている会社様もあります。海外だとPh.D.を持っている方であると年収の好待遇で採用されているという事例も結構ありますが、日本だとまだまだ少ないので、こういった企業が増えてくると、いやらしい部分ではありますが、金銭的な部分でドクターを目指すというところも一つあってもいいかと思います。
【杉山委員】 御社の場合も、今年の新卒の採用者4名のうち3名、Ph.D.ということですが、会社の仕事が博士人材に適しているということもあるかと思いますが、戦略的に、あえて博士人材を採られているということでしょうか。
【アカリク(山田様)】 そうですね。我々、毎年3名から4名ほど採用させてもらっていますけども、活躍していただく社員や、早期にリーダー、マネージャーなる方々が、博士卒が多かったといった実績の下というものもありますし、あとは我々がやっているビジネスが、博士学生が自ら体現しているところもありまして、就職を進めていく中で、なぜ修士まで行ったのか、博士まで行ったのかということを言われ、なかなか間口が狭いと感じて、アカリクに入ってこういった社会を変えたいという強いビジョンを持った学生が集まりやすいということも、一つ要因としてはあります。
【杉山委員】 ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。
 一つお伺いしてよければ、特に分野が違うと支援の仕方が違うべきだという話がありましたが、初めの鈴木委員のお話と水口委員のお話が、どちらかというと生命科学医療系だったわけですけども、より広く見ておられる御社から御覧になって、2件のお話に加えてくださることがありましたらお願いできますでしょうか。
【アカリク(山田様)】 答えになっているか怪しいのですが我々スカウトサービスをしていく中で、圧倒的にスカウトをもらうのは、情報通信やIT、AI、データサイエンスなどの領域の学生が非常に多いです。そういった方々は、正直受け身でも就職先が決まるので、彼らはどちらかというと絞る作業になってきます。そこの絞る作業を我々はサポートさせていただいておりますが、生物、農学、医学、薬学という領域の観点でいうと、彼ら学生の数と求人の数で学生の数が多いことが分かります。また、我々に求人を出していただく企業様も少ないは少ないです。なぜかというと、出さなくても採用できるからというのがありまして、ですので、そういった部分だと、我々は広げる作業をしていくというのもありますので、そういったコミュニケーションの手法は違うかと思っています。
【狩野主査】 人文社会科学系では、博士号を取りに行くのはなかなかハードルがある話はたくさん聞くのですが、こちらに関しては何か御提言、お考えございますでしょうか。
【アカリク(鬼頭様)】 では、私から補足させていただきます。私、鬼頭と申しまして、ジョブ型研究インターンシップの事務局の担当をしております。先ほどの委員のお二方のお話にありましたライフサイエンスの分野ですと、研究活動、博士の活躍というのが一般的になっているところは多くある分野であるとは思われます。それ以外の分野、特に人文社会系ですと、自身の分野が産業界でどう使われるのか、どういった研究ができるのかが、結果的にまだ分かっておらず、多くの産業界の方もそういった分野をどう生かしたらいいのかが同時に分かっておらず、その結果、人文社会系の方などは、大学での研究というのが唯一の自分の生き方であるように、どうしても見えてしまうということはあります。もちろん、そこが適切に自身の専門知識や能力を生かせる分野ではあるのですが、本当はそれ以外にもいろいろ産業界に活躍の場はあるはずで、そういったことを、産業界とアカデミアが一緒になって探し、見つけていくというのが、今後必要な視点ではないかと考えております。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。村上委員から手が挙がっております。お願いいたします。
【村上委員】 私は社会科学が専門なのですが、社会科学の分野では博士号を取る人が少ないという問題があります。大学に就職するためには博士号の取得は必須ですが、民間企業の就職では、博士号を取らずして博士課程を修了している、そういった方々を企業はどのように評価をしているのでしょうか。博士号を取らずに、ある一定の年数を過ぎた、こういった人社系の人材に関しては、例えば博士を取らなかったとしても、何らかの論文を書いているなどといったことは、企業において評価されるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
【狩野主査】 お願いいたします。
【アカリク(山田様)】 ありがとうございます。自社の事例になってしまうのですが、実際に社会科学系の学生で博士まで出て、博士号を取らずして入社いただいているという事例もあります。取得していればなおよしではありますが、そこの過程で、どのようなことをやって、どういった成果を出して、どういったことを今後やっていきたいのかということをすごく生かせることができれば、評価自体は落ちないだろうというところもあります。あとは、結構そういった方々は社会人になっても社会人博士といいますか、博士号を取るために継続して研究をやっていく方も中には多くいらっしゃるので、そういったやり抜く力や、やり切る力といったというのは高く評価させていただいております。企業とも話をさせていただくと、こういった方々の採用先として、一つはコンサルティングファームさんなどが上がってくるところではあるのですが、そこでいうと、博士号を持っていたほうが評価はしやすいという話をいただくはいただくのですが、先ほど私が申し上げたとおり、プロセスなどそこの内容に問題がなければ、決して内定の確度が下がるというわけではないという話は聞いています。
【狩野主査】 ありがとうございます。ちょっと時間の都合でだんだん押してきまして、よろしければ、取りあえず一度アカリク様にはこれで御礼を申し上げまして、この後は、まだ発言いただいていない先生方から、今まで発言された方も結構ですが、ぜひ何か一言ずつ程度、今後に向けてのことをいただければと思います。稲垣先生、いかがですか。
【稲垣委員】 アカリクさんにお伺いしたいのですが、社会の状況として、博士人材の就職も新卒が主流なのでしょうか。
【アカリク(山田様)】 通年採用する企業様もあるので、企業によってという形ではあるのですが、事由としては、新卒一括採用の中に組み込まれるというところがあって、それが非常に博士学生としてはやりづらいという声をいただいているという状況です。
【稲垣委員】 なるほど、ありがとうございます。
【狩野主査】 長谷山委員、いかがですか。
【長谷山委員】 まず、鈴木委員の大変興味深いお話の中で、地の利のお話がありました。社会人として博士を取得するために関東圏の大学をお選びになった、ということと思います。例えば、私の北海道大学の情報科学院は、社会人博士学生に対して、全てオンライン、ビデオオンデマンドでの授業を実施しています。自由な時間に受講し、レポートを提出することで、単位取得が可能です。スクーリング、つまり、研究のディスカッションや博士論文指導は、自由に指導教員と日程を調整して、Webやメール、教員の出張に合わせてなど、通学せずに学位取得が可能です。そのような点について、社内では話題になっていらっしゃいましたでしょうか。
【鈴木委員】 ありがとうございます。すばらしい仕組みだと思います。正直全く存じ上げませんでした。ですので、私の無知をお許しいただきたいのと、そういったことを周知されるというのは、貴学にとっても差別化にもつながっていいのではないかと思います。
【長谷山委員】 本学だけでなく他の地方の大学でもおそらく同じような仕組みをお持ちの大学があると思いますので、特に御社のような企業が先陣を切って、場所よりも何を学びたいのかということで博士を取得する大学を選んでいただければ、修士でやめてすぐ就職してしまう、博士に進学しないというような状況を変える一つのきっかけになるのではないかと思います。どうぞご検討ください。よろしくお願いします。
 次に、アカリクさんにもお聞きしたいことがあります。今日の議論とは少し違うかもしれないのですが、8ページの分野別のマッチングで、マッチング完了にかかった時間は、大変に興味深く思います。差し支えない範囲で構いません、男子学生と女子学生で、この時間に差はあるのか教えていただけませんでしょうか。特に情報系の学生は、先ほど御説明があったように、大変な勢いで就職して行きます。特に女子学生に関しては、企業も女性社員の割合を増やしたいということで、博士進学率が上がらず、頭が痛い問題です。全体を通して男子学生と女子学生の差があれば、差し支えない範囲でお聞きしたいです。
【狩野主査】 重要なことだと思います。お願いいたします。
【アカリク(山田様)】 ありがとうございます。こちらの参考資料における研究と事業などの1週間当たりの時間の差分で男性女性の差というのは、すいません、手元のデータがないので何とも言えないのですが、女性と男性の違いでいうと、おっしゃるとおりで、各企業、理系の技術職の女性の割合を、経営層から水準を上げていくように言われておりまして、我々も女性限定のイベントを先ほどの博士課程Expoなど、そういったくくりでやらせていただきますけども、企業の売上げといいますか枠を取りたいというスピード感でいうと、圧倒的に女性のイベントのほうがすぐ埋まるので、そういった意味だと非常にニーズが高いなとを感じていて、我々のデータベースだと、年大体2万人ほど修士博士を御登録いただくのですが、3割ぐらい女性の方々がいらっしゃって、理系の女性は少ないと言われていますが、我々の登録自体は結構あると思っていて、ですので、ニーズは高いというのは総じてあります。
【長谷山委員】 ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。続いて、岩崎委員、お願いいたします。
【岩崎委員】 ありがとうございます。今日、もともと事務局には欠席と御連絡したのですが、出席できるようになりましたのでオンラインで拝聴させていただきました。
 これまで、人材委員会で議論してきたようなことが、まさに、民間の先生方のお話の中でも改めて確認できたといいますか、非常に全くだと思って聞いておりました。特にアカデミア、政府、産業界、それぞれやるべきことがあるということが重要で、そういった内容を、ぜひこれから実際に動かしていけるといいかなというふうに思っております。
一つ、皆様、3社様に伺いたいのですが、日本の特に労働関係の法令、仕組みについて、こういったところが博士課程の人材の活躍という点で足かせになっているのではないか、そのようにもし感じるところがあれば伺えればと思っております。よろしくお願いいたします。
【狩野主査】 ありがとうございます。では、一言ずつ。だんだん時間の残りが減ってきてしまったものですから恐縮ですけど、どの順番にいたしましょう。鈴木さんからお答えくださることはできますか。外資系の事情について。
【鈴木委員】 ありがとうございます。やはり社会人Ph.D.をやるにおいて、長時間労働というのは一つの大きな懸念で、そのおそれがある場合には、事前に上長に相談するようにということで始めました。幸いにも、Ph.D.をやっていると、やはりプライオリティーづけが上手になってきて、結構効率よく皆さん働けて、仕事の質や量に悪い影響がない形で両立はできたと思います。
 ですので、長時間労働に関する問題というのは、そのときは生じなかったと記憶しています。
【狩野主査】 ありがとうございます。長時間労働に関する論点をいただきました。
 水口さん、いかがですか。
【水口委員】 私のところも似たようなことは感覚としてありまして、博士号取得者のほうが、時間の使い方がよりうまいかと思いました。長時間労働にも関係してくるのですが、うまく時間をやりくりして休むといったところはしっかりできている印象でございます。ですので、足かせというよりは、むしろ博士人材のほうが、よりその辺は効率的にできているように感じます。
【狩野主査】 制度上の問題のようなことはございますか。
【水口委員】 我々は研究者によっては裁量労働制としており、自分の、よりパフォーマンスが上がる働き方というのをうまく活用していただきながら、活躍していただいております。
【岩崎委員】 一言だけ補足させていただくと、特に日本の場合、スペシャリストとして雇用した後、その専門性が必要なくなったときに、別のことをやらせないといけないというような、そういったことがスペシャリストの雇用の上で阻害要因になっていることがあると言われているかと思うのですが、そういった観点からになります。
【狩野主査】 もし何か今のことで加えられますか。先に、山田さん、鬼頭さん、お願いします。
【アカリク(山田様)】 今ジョブ型雇用が、大手企業を中心に結構率先して取り組んでいただいているので、そこと博士学生は非常に相性がいいと思っています。ですので、ジョブ型雇用が進んでいきながら、どこかでそういった足かせが見えてくることもあるかと思うので、そのタイミングでしっかり議論していくのがいいかなと思います。博士学生もジョブが分かりやすいほうがエントリーが進みやすく、何をするかがもやっとしていると逆にエントリーしづらいといった声も聞くので、そういった部分は非常に良いと思っています。
 あとは、裁量労働や、リモートワークなどですか。自分でスケジュールを組立てて仕事を進めていくということは、非常に博士学生が得意な領域かと思うので、あまりがちがちに管理をせずに、ひとつ時間を与えつつリモートワークで、テキストコミュニケーションも相当うまいので、そういったところも含めて、うまくハイブリッドで仕事ができるといいのではないかと思います。
【狩野主査】 鬼頭さん、加えられますか。
【アカリク(鬼頭様)】 ありがとうございます。やはり一つ推進が必要、産業界でももっと広がると良いというものは、クロスアポイントです。先ほど、博士号を取得せずに博士課程を修了して入社といったお話も出たと思いますが、弊社で働いている者でも、実際に在籍しながら論文を書いて、それを最後に提出して博士号を取得しようとされている方もおりまして、そういったところをもっと許容できるようになると、ぎりぎりの本当にプレッシャーに迫られて研究を続けるというところは、多少緩和されるのではないかと考えているところはあります。
 あとは、同時にジョブ型研究インターンシップなどで、民間企業へのキャリアパスをより探しやすくなってきているところはありますが、大学の研究室の先生側からお伺いする事情ですと、博士課程の方を、少し長い間、2か月間ではありますが、研究室から外に出す、その大変さということをよく聞きまして、例えば教員の方がいて、博士課程の方が1名いて、修士課程の方が2名いて、学部の方が4名いるとか、そういった研究室で博士課程の方が一時的に離脱してしまうと、かなり大変になってしまうので、そこへの躊躇や不安がかなり大きいと伺っております。
 ですので、より博士課程の方を送り出しやすくするように、いろいろなサポートのスタッフの方の増員、もしくは評価を、研究の推進が一番重要な評価ではありますが、例えばそれ以外にもそういった博士課程の活躍の機会の創出といったところも、より評価にプラスされると、よりキャリアパスが広がりやすくなるのではないかと考えております。
【狩野主査】 大変包括的な議論いただきまして、ありがとうございました。あと5分になってしまったので、一度ここで打切りにさせていただきますけども、ぜひ今日の議論を踏まえて今後の展開を考えていきたいと思いますし、そのためにもしお気づきの点がありましたら、また事務局にもお知らせいただきたいと思います。
 では続いて、あと5分の間だけですけども、最近の政策動向等について對崎補佐から御紹介いただけると伺っております。お願いいたします。
【對崎人材政策課長補佐】 狩野主査、皆様、ありがとうございます。では、最後に簡単に資料4、最近の政策動向等について事務局より御説明申し上げます。
 第6期の基本計画のほうでも、様々我々議論していただいている内容ですので、これはおさらいで、新しく決定したものではございませんが、特に博士後期課程学生の経済的支援とキャリアパス整備、女性研究者の割合やURA等の研究マネジメント人材の充実等が記載されております。
 そして、最近いわゆる政府の政策文書をいろいろ閣議決定しておりまして、その中でも幾つか我々の主要論点についてしっかりと記載されているので御紹介をいたします。
 まず1点目は統合イノベーション戦略ですけれども、こちら、内閣府CSTIの下で取りまとめられまして、政府としての閣議決定文書です。こちらの中でも、ざっと一つ一つは申し上げませんけれども、博士後期課程学生の支援というところで、経済的支援やキャリアパスの支援を着実に進めること、女性研究者の活躍促進に関しても、指導的な立場を含めた女性研究者の活躍促進に取り組むこと、また、研究時間確保の文脈の中でURAやPM等の研究マネジメント人材や支援職員も含めたガイドラインを策定した上で、政府全体の研究現場における研究時間の確保に取り組むということで、具体的な記載もしているところです。
 次のページは、いわゆる骨太の方針や成長戦略と言われる文書における記載でございます。一番上が骨太の方針でございますが、こちらの中でも、博士号取得者が産業界等を含めて幅広く活躍できるキャリアパスの整備などの総合的な支援が必要であること、女性の活躍においても、上位職への女性研究者の登用や、理工系分野の女性割合の向上等についても記載されております。また、第4章のところですが、研究を支えるマネジメントや支援人材の活用促進といった文脈も触れられております。成長戦略も同様に記載されているところでございます。
 こちら、別件になりますが、今度、文部科学省主催でJSTと共催で、仮称でございますが、未来の博士フェス2023というイベントを予定しております。日程が9月13日、場所は東京ということになっておりますが、ハイブリッドでのイベントの実施を考えております。こちら、博士課程学生あるいはポスドクや博士進学を迷っている学部生や修士課程学生を主要なターゲットといたしまして、いかに博士号を持っている人の活躍の場が広がっていくかということをしっかりとアピールしたいというイベントでございます。こちら、企画のほうは大体詰まってきておりまして、8月の中旬頃に正式なイベントとしてはローンチしたいと思っておりますが、様々有識者の方々にお集まりいただいて、学生のショートプレゼンや、企業で活躍いただいている博士人材等のパネルディスカッションで、こちら(4)パネルディスカッションのところでお名前をお借りしておりますが、枡委員に司会をお願いしておりまして、ぜひ、こうしたイベントも盛り上げていただきたいと思っております。また、委員の皆様におかれましては、もちろん御出席いただきたいというところもさることながら、周りの方々への広報周知等もぜひ御協力いただければと思っております。
 最後に、今後の人材委員会の開催スケジュールについて、定期的な開催を予定しておりますが、今回のような産業界における博士人材の活躍という観点で何回かヒアリングを行っていきまして、今年度に、ある程度その活躍の促進プランというところで産業界に求められる能力の見える化、あるいはアカデミア側でどのような人材の育成が必要かといった観点を、ヒアリングを通して取りまとめていくことを予定しております。
以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。本来、これに質問をお受けするべきなのですが、時間になってしまいましたので。
【對崎人材政策課長補佐】 今日は御報告というところで、ありがとうございます。
【狩野主査】 清浦審議官、何かお一言ございますか。
【清浦大臣官房審議官】 本日はどうもありがとうございました。人材の様々な施策の中でも、この博士人材のキャリアパスの話は引き続き非常に大きい政策課題となっていて、どういう施策を打つか、その制度論の議論のみにとどまらず、全体として、社会全体で機運を上げていくといった側面もあります。個人的には、このポストの前は人事課におりまして、博士人材の採用を実はやっておりました。恥ずかしながら、文科省にいながらにして、博士人材はこんなふうにいいのだということを、そのポジションにつくまで知らなかったというところもありますし、霞が関の中でも十分認知していないところもたくさんあると思いますので、そういった博士人材の魅力を周知していくことは、今後それぞれのところで進めていく必要があると思っております。
 ぜひ委員の先生方には、引き続き本件御協力をよろしくお願いしたいと思います。今日は活発な御議論ありがとうございました。
【狩野主査】 ありがとうございました。今日は皆様深い話も用意いただきまして、また、その場を設けていただきました文科省の皆様にも感謝を申し上げたいと思います。
 それでは、これでお開きにいたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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