人材委員会(第93回) 議事録

1.日時

令和4年4月25日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 博士人材のキャリアパス等について
  2. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、岩崎委員、勝委員、狩野委員、川端委員、小林委員、迫田委員、隅田委員、高橋(真)委員、塚本委員、長谷山委員、桝委員、村上委員、柳沢委員、山本委員

文部科学省

斉藤人材政策課長、岡人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会(第93回)

令和4年4月25日

 
 
【宮浦主査】  それでは、定刻少々前ですけれども、おそろいですので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会第93回を開催させていただきます。本日の会議は冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いします。
 本日は、16名の委員に御出席いただいており、定足数を満たしております。
 また、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。
【鈴木人材政策課長補佐】  事務局でございます。事務局の人事異動でございますが、本年4月1日付けで人材政策課人材政策推進室長に岡が着任しております。
【岡人材政策推進室長】  岡と申します。よろしくお願いいたします。
【鈴木人材政策課長補佐】  事務局からは以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、まず議事の前に、本日の委員会はオンライン開催ですので、注意事項と資料確認を事務局からお願いします。
【鈴木人材政策課長補佐】  事務局でございます。オンライン会議の開催に当たりまして、委員の皆様に何点かお願いがございます。まず、ビデオは常時オンにしていただきまして、発言時以外、マイクはミュートでお願いいたします。表示名はフルネームの漢字表記でお願いできればと思います。また、御発言の際には、Zoomの「手を挙げる」というボタンが下に表示されているかと思いますので、そちらからボタンを押していただきまして、主査より御指名ありましたら、マイクをオンにして、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。御発言が終わりましたら、挙手の取下げとミュートをお願いいたします。そのほか機材や通信の不具合等ございましたら、先日お送りしましたマニュアルに記載の事務局の連絡先に御連絡をいただければと思います。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。事前に送付させていただいた資料は、PDFファイル2つでございます。1つが議事次第・資料一式、もう一つが参考資料一式でございます。資料は、それぞれの議事の際に画面共有をさせていただきますが、お手元で御覧になられる際には、ファイルの表示画面左側にしおりというものがございまして、こちらのしおりからそれぞれの議題の資料に移動できますので、御活用いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、本題の議題に入らせていただきます。本日は、博士人材のキャリアパス等につきまして、今後の議論の参考にするために、合わせて3つのヒアリングを予定しております。
 まず初めにお話しいただきますのは、文科省の有志の職員の方がアカデミアや企業等の研究現場との意見交換や各種発信を行うために立ち上げられた団体であるAirBridgeの遠藤様です。本日は、博士人材の就職活動やキャリアパスについて、当事者目線で課題意識等を御発表いただければと思います。
 それでは、遠藤様、よろしくお願いします。
【遠藤氏】  初めまして。私は、文部科学省研究開発局防災科学技術推進室の遠藤と申します。私は、文部科学省の若手有志で立ち上げました「ガツガツ若手ワーキンググループAirBridge」の事務局の1人でございまして、本日は、博士人材のキャリアパス等についてということで、実際の研究現場の生の声を伝えさせていただければというふうに考えております。本日は大変貴重なお時間をいただきまして、主査をはじめとして、委員の皆様方、そして人材政策課の皆様方、本当に、このような機会をつくっていただきまして、深く御礼申し上げます。
 それでは、今画面にも表示されておりますが、まず資料1-1の1ページ目を御覧ください。まずは、AirBridgeというものの簡単な説明をさせていただければと思っております。
 文部科学省では、皆さん御存じのとおり、従来から博士課程学生を含む若手研究者の支援に関わるいろいろな政策につきまして検討してきたところでございますが、文部科学省の若手職員には、実際の研究現場の環境を経験してきている方がいらっしゃいまして、そうした方の中では、研究室環境などの研究現場の実態や生の課題という、なかなか政策面から光が当たることがなかったところ、そういった見えづらいところにもっと光を当てていくべきなのではないかという考えがありました。
 そこで、文部科学省では、政策的に重要でありながら、なかなか部局ごとではできなかった、政策の部局横断的な課題につきまして、中長期的な視点において、若手の有志職員が中心となって自由濶達な議論を行う「科学技術ワクワク挑戦チーム」という、この資料1-1の1ページ目の右側の話なんですけども、そういったチームが設置されているところでございます。おととし、令和2年度には、そのチームの場を用いまして、博士課程学生・アカデミアの意欲ある若手が夢を持って活躍できる場にしようということをテーマに、若手の有志職員で検討し、令和2年7月末に大臣へのプレゼンを実施いたしまして、8月末に報告書を取りまとめたところでございます。
 その挑戦チームにおける議論をそこで終わらせるのではなく、その検討をさらに続けていくために立ち上げたのが、このAirBridgeという団体になります。なかなかそういった政策立案の表舞台に出てこないような研究現場のリアルに光を当てまして、研究現場の当事者の目線に立った政策の検討や対外発信につなげるための活動を実施する場として、アカデミアのリアルに内側から迫っていきたいというふうに我々考えておりまして、どのようにすれば博士進学というものを盛り上げていけるかというところを意識し、例えばオンラインワークショップの企画であったりとか意見交換、アンケート調査などを実施しております。
 2ページ目を御覧ください。我々事務局は10名程度で、人数が多くはない形になっておりますが、そういった中でもAirBridgeは徐々に参加者が増えてきておりまして、現在、メーリングリストにつきましては登録者が2,000名弱という形になっており、また、フェイスブックのグループにつきましては800名を超えるような形になっているところでございます。
 今までの活動内容としましては、資料2ページ目の活動内容(例)に書いてありますが、例えばワークショップ・意見交換を実施したり、アンケート調査をしたり、また、今回の人材委員会でも説明させていただいておりますが、各種文部科学省審議会で口頭発表させていただいたり、若手の有志がいろいろな学会に赴いて講演をしたり、そういった活動をしているところでございます。今後こうした活動をまとめた報告書を作成していきたいと考えておりまして、これも近日中に公表できればというふうに考えております。
 また、資料2ページ目の右側に記載しておりますが、NHKのほうで1度取り上げていただいたこともありまして、こういった場を使いながら博士人材の進学というのをもっと盛り上げていきたいなというふうに考えているところでございます。
 3ページ目を御覧ください。そのような活動の中で、先日4月9日には、博士人材キャリアパスというテーマでワークショップを開催したところでございます。参加者50名程度で、論点としては、人材育成の現状であったり、民間企業において博士人材がどう評価されているか、博士人材の就職活動はどうなっているのか、また博士課程学生自身はどのような意識を持っているのか、そういった点について議論を実施しまして、いろいろな議論を踏まえた上で、4つの論点に集約し、資料3ページ目の下のほうに議論の概要と書いていますが、この4つの論点につきまして今回は説明させていただこうと思っています。また、ワークショップに参加していただいた6名の方々に、AirBridgeの参加者という形で今回人材委員会に参加いただいているところでございまして、そういった方々の生の声を聞きながら意見交換させていただければと考えております。
 それでは、4ページ目を御覧ください。まず、このワークショップの中で出てきました問題は、キャリアパスに係る情報格差が大学や研究室にあるのではないか、そのため、色々な博士人材のコミュニティーや情報プラットフォームをしっかり充実させていくのが重要なのではないかということでございます。「現状・課題」に記載しております、昨今、コロナによる学会等の対面交流が少なくなっていることも影響しているかと思いますが、やはり分野、大学、また研究室ごとで、キャリアパスの情報がなかなか入ってこないところと、それなりに入ってくるところと格差がありますので、そういったところをもっと充実させていくべきなのではないか、また、社会人博士、一度アカデミアの外に出た人については、またアカデミアに戻ってきたときになかなか復活できない、そういった課題があるということが議論として出てきたところでございます。ですので、そういったプラットフォームをどこまで検討できるかというのは、また今後の議論だと思いますが、改善策の一つということで出ているところでございます。
 続いて、5ページ目を御覧ください。これは先ほどの情報格差にも関わるところになりますが、キャリアパスに係る分野間の差について、人文社会系は、工学分野や医薬分野といったところに比べて、なかなか自分の専門性を生かした就職情報だとかロールモデルが少なくなっています。AirBridgeの方で人文社会系の方がいらっしゃいますので、そういった方から生の声をいただければと思っておりますが、やはり人社系は、企業というよりはアカデミアに進まなければ評価されないという雰囲気がありまして、そういったところをもう少し打破していきたいと考えているところでございます。また、後々、社会からの博士人材の評価というところで触れさせていただこうと思っておりますが、なかなか人社系というのは自分が研究してきた分野につきまして専門性をダイレクトに生かせる職業が少ないというところもありますので、そういった人社系の人材について、専門性のところだけ見るのではなくて、博士人材としてどのような問題解決能力があるのか、そういったところもしっかり評価していくべきなのではないかという点も意見としてありました。
 その上で、一律として情報提供の支援を行っていくのではなく、分野ごとでそういった差がありますので、分野ごとに情報提供に関わる適切な支援を考えていくべきなのではないかという改善策が出ております。
 こうした点につきまして、今回はAirBridgeの参加者の方から1人、自身の経験を基に発表していただきたいと考えております。AirBridgeのAさん、人文学研究科の博士後期課程3年の方で、次世代研究者挑戦的研究プログラムSPRINGの採択生でありまして、企業就活や企業就活に関する大学のサポート体制、企業からの博士人材評価などについて課題意識をお持ちの方になります。
 では、Aさんのほうから簡単に、博士人材の多様なキャリアパスの理解について、実体験を通したお話をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
【(AirBridge)A氏】  私から、実態、課題意識としては2点ございます。1点目に関しては、やはり大学の関係者の方々、教員の方々もそうですし、学生もそうですが、大学側からインターン実習等の機会を設けても、やはりアカデミア就職を博士であればするものだという意識が強く、民間であったり、官公庁でもそうですが、博士がそういった多様な場所に就職をすることに関し、キャリアパスに関する知見もないですし、そういった共通認識もなく、博士はアカデミアへ行くだろうと思われているということです。ですので、私もそうですが、博士としての専門性を生かせる民間就職ができたと思っても、その体験を恥だと思って、なかなか外に、特に周辺の同期などに話しづらかったです。話しても、もったいないよとか、えー、みたいな反応をされるんですね。なので、なかなかそれが言えなくなっていく。先ほどプラットフォームというお話もありましたけど、そういった雰囲気があると、なかなかそういったプラットフォームに情報を流そうという意識も醸成されないのではないかなというところが本音としてはあります。ですので、そういったことが話せるような雰囲気づくりができるように、研究科の先生方や、支援センターのようなところから支援していただければなと思っております。
 以上です。
【遠藤氏】  Aさん、ありがとうございました。
 それでは続いて、6ページ目を御覧ください。続きまして、社会における博士人材の評価・待遇について説明させていただきます。これにつきましては従来からいろいろな話として聞こえてくるところではあるのですが、やはり企業から自分が研究した専門性以外の能力が求められていることが多いとか、企業が博士人材の専門性の活用方法がなかなか分かっていないのではないかなど、そういった御意見がありました。
 現状と課題にも書いておりますが、専門分野以外でどのような活躍ができるのかと企業から問われることが多く、企業側と博士人材側の意識の差というところでミスマッチが起きていて、そこを埋めていくことが大事なのではないかと考えております。また、海外では、社会全体から、企業だけでなく、一般市民全体からですけれども、博士号取得者は非常に評価されていて、専門性のある人材というよりは、問題解決能力が高く優秀な人材と評価されているにもかかわらず、なかなか日本ではそのような形になっていないというような現状になっているのではないかというような御意見がありました。
 7ページ目を御覧ください。その上で、そういった企業とアカデミアにおける博士人材の評価の差をどのように埋めていくのかというところですが、専門分野以外の能力の育成をしていくべきなのではないか、また、共同研究、インターンシップなどを通じて、企業が今まで知らなかったような博士人材に少しでも触れて、お互いの溝を埋めていく、そういった機会を増やすべきなのでないかといった御意見がありました。
 大学教育において専門性以外に関わる教育をどのような形でつくっていくのか、なかなか難しいところではあると思いますが、企業と博士人材の差を埋めていく上で、最終的には他分野の人に対して自分のやっている研究を伝えないと意味がありませんので、そういうところで分かりやすく伝える能力や実学的な能力についてしっかりと教育をしていく、そういったところが大学教育において必要なのではないかという御意見がありました。また、博士課程経験を社会人経験とみなして、博士人材の採用を中途採用として捉えた待遇がもっと広まるべきなのではないか、そういった形で企業側と博士人材側と、お互いにとって良い形で風通しよくなってきたら良いのではないかといった改善策について提案がなされました。
 それでは、ここで2人目の、AirBridge参加者からの経験談を踏まえた発表になります。電気電子系博士後期課程2年のBさんになります。Bさんは、先ほどと同じく次世代研究者挑戦的研究プログラムSPRINGの採択生でございまして、また、中国御出身で、修士課程から日本に留学されておりまして、博士号を取得することに関するメリットについて様々な課題意識をお持ちになっているところでございます。日本と中国の比較をしていただきながら、博士人材のキャリアパスについて、実体験を通したお話をいただければと思います。それでは、Bさん、よろしいでしょうか。
【(AirBridge)B氏】  よろしくお願いします。御紹介いただきありがとうございます。私から、自分の体験をシェアしたいと思います。
 僕が注目しているところは2点です。博士課程進学の目的とメリット、博士課程卒業後のキャリアパスという2つの観点から、自分の体験をシェアしたいと思います。
 まず、僕が所属する研究室では、ほとんどみんな、修士のほうが就職しやすい、博士課程に進んでも就職に有利とは限らないし、給料がそんなに上がるわけでもない、と考えています。ある学生は、もし就活がうまくいかなかったら、最悪、博士に進めばいいと思っている、と言っています。まるで博士に進むこと自体が負け組だと思われているようなのです。また、博士過程卒業後のキャリアパスに関しては、アカデミアという道があるとしても、ほとんどが狭き門で、卒業して何年間も研究を続けても、安定した職ではなく、収入も少ないため、みんなできれば企業に進みたいと考えています。しかし、企業がそれほど博士を採っていないのが現状で、このような現状から、みんなが博士に進みたくないという共通意識を持つようになるのではないかと思います。
 中国で何故みんなが博士に進みたがるかというと、まず国から博士過程の学費、生活費の補助が出る、そして、企業が大いに博士を採りたがるためです。要するに、時間的に3年プラスでかかり、経済的に3年間稼ぎを得られないという対価を払ってでも、明るい未来が見えるから、みんなが博士に進むんです。日本もこのようにならなければ、みんなが博士に進まないのではないかと思っています。むしろ進まないほうが今のところいい選択肢かもしれません。
 以上、僕の体験です。ありがとうございます。
【遠藤氏】  Bさん、ありがとうございました。人口に対する博士号取得者の割合が、他国は増えているにもかかわらず日本だけ微減しているという状況には、そういった背景や、修士課程で卒業するほうが企業では有利になってくるといった背景があるのではないかと思っていますので、そこも含めてまた御議論させていただきたいと思っております。
 それでは、8ページ目を御覧ください。就活の時期についてです。博士人材の就活につきましては、アカデミアに進む方と企業就職される方、企業就職といっても、研究職に就く方とそれ以外のキャリアパスへ進む方、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、現状、企業就活は博士2年の夏頃から始まるという形になっている一方でアカデミアや官公庁の就活は博士3年から始まるというようなずれがあるというような形になっています。ただ、一概にこれをどう合わせるのかというのはなかなか難しいところもございまして、就職が早く決まっていたほうが不安を抱えずに研究できるという意見がある一方で、やはり就活と研究を並行するのはなかなか難しいというところもありますので、アメリカのような形で、研究が終わってから就活を始める、そういったことも一つのモデルとして考える必要があるのではないかといった論点が出ております。
 ですので、今後そういった論点を踏まえながら就活につきましては考えていかなければいけないと思っております。また、研究に一区切りついた後、1年程度モラトリアム期間を設けるといったモデルを提案してもいいのではないかというような議論もございました。
 最後に、9ページ目になります。こちらはその他となっておりますが、論点としては大きいものだと思っておりまして、例えばアカデミア就活につきましては、現在、論文や、どういった教育歴があるかといった実務経験が重要視されており、企業就活と違うような形の指標になっていて、キャリアパスを考える上で障害になっているというところがございます。また、これは理解が得られている分野とそうでない分野と差があるかもしれませんが、仕事、家庭、学業のバランスに、やはり研究科、研究室によって格差がある。なかなか理解のあるところばかりではないというようなところがあります。また、社会人博士の存在が、研究をしていく上で、専門分野と社会との接点を見いだすのに非常に有用だったというような意見がたくさんありました。社会人博士を受け入れるというのは、大学院側にとっても、出す企業側にとってもなかなか難しいところがあるのかもしれないですが、このように社会人博士がお互いの接点になっていくという議論もあり、そういった意味では、社会人博士は、企業とアカデミア、お互いにとっていい影響があるのではないかと思っております。また、専門外の分野に就職しましても、アカデミアでは触れ難いような社会の側面や、興味深い事柄に触れられるというところがございますので、自分の専門分野にとらわれないキャリアパスを博士人材の皆様方が持っていくだとか、そういった道もあるという認識を社会全体で構築できればいいのではないかと、そういった議論がありました。
 最後に、今回、Aさん、Bさんのほかに、4名の方に質疑対応のメンバーという形で参加してもらっております。現在、海外特別研究員として博士研究員をされているCさん、現在博士課程の5年課程の5年目で、SRAとして採用されているDさん、博士後期課程3年で、大学卒業後民間企業に就職され、社会人院生として修士課程で学んだ後、起業等の経験を踏まえた上で、現在、博士課程に在籍しているEさん、博士後期課程1年で、博士前期課程の間、数学の非常勤講師として中学校に勤務されていて、博士のイメージが固定化されているという課題意識をお持ちのFさんになります。
 以上4名が質疑対応で参加させていただいておりますので、この後の質疑対応では、この方々も含めて、何か御意見があれば、いただければと思っております。
 また、本日、AirBridgeメンバーで参加されている6名の方のうち、4名がSPRINGの採択者でございまして、この後の質疑応答ではSPRINGのプログラムに関する意見やプログラムに採択された後の感想など、そういったところを含めて委員の皆様方から質問いただき、様々御議論できればと思っております。
 博士人材のキャリアパス開拓に向けて、よい形で今後も議論ができればと思っていますので、本日はどうぞよろしくお願いします。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 非常に盛りだくさんの内容を課題提起していただいたと思います。委員の皆様から御質問や御意見、いかがでしょうか。挙手いただければ、こちらで指名させていただきます。
 岩崎委員、どうぞ。
【岩崎委員】  ありがとうございました。東京大学の岩崎と申します。私もAirBridgeには、フェイスブックでメンバーに入っております。
 先ほどのBさんのお話、非常に重要なポイントだったと思いますが、私も日本の大学院生、特に博士号取得者、それから米国や中国の博士号取得者を見ていて、これは実は前回の人材委員会でも発言させていただきましたが、日本の博士号の取得者が、ほかの各国の博士号取得者に比べて、例えばビジネススキルが非常に劣っているとか、あるいは能力が非常に劣っているという印象は全く持っていません。日本の大学院生も米国とか中国の大学院生と同じように高い能力を持っていると日々感じております。
 それがなかなか企業の就職につながらないことについては、やはり企業の側から、博士号を持った学生がウエルカムだというメッセージを発していただくこと、あるいは、実際、民間で活躍している博士号取得者についてもっとデータを出すといったこと、やはりこれが非常に大事だと思っております。大学のほうでさらにエフォートを割いて、様々な経験を積ませるといったことは、確かに解決策としてありそうに思いますが、本当にそれが効果的なのか、それだけのエフォートを割いて、教育、研究の時間を割いてやるべきことなのかどうかということをよく考えてから行っていただかないと、さらに日本の大学の現場が疲弊していく可能性もあると感じておりますので、ぜひ民間の側にメッセージを発してもらうなども検討いただきたいと思っております。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。民間のほうでなかなか理解いただけていないのではないかという御意見かと思います。
 幾つか手が挙がっておりますので、二、三、お伺いしてから議論という形でよろしいでしょうか。
 山本委員、どうぞ。
【山本委員】  山本です。私は、遠藤さんの発表で、就活のお話で少しお願いします。研究が終わってから落ち着いた形で就活をしたいとか、モラトリアム期間があればいいという点です。これは理想として、やっぱりそれぐらいの余裕が欲しいということなのかなと考えました。ただ実際には、博士が産業界でもアカデミアでもきちんと、需給バランスといいますか、就活が安心してできるという体制、環境でないと難しいだろうということを私は感じました。
 つまり、このような意見が出てきたのは、非常に意外だったので、背景を伺いたいと思った次第です。よろしくお願いします。
【宮浦主査】  遠藤様から何かコメントありますか。
【遠藤氏】  就活の時期については、アカデミア就職と企業就職と両面にらみの形でやっていかなければいけないという中で、就職の時期が2年と3年とで分かれてしまうということ、研究活動との両立をどういう形で行っていけばいいのかということが、研究現場の生の声、悩みとして出てきておりまして、何かしら解決策を出していく必要があると思いながらも、現状ではどういった形でそれを方策としてまとめていくべきなのか、山本委員のおっしゃるとおり、企業側とアカデミア側との需給バランスは非常に大事な点でありますので、お互いの理解を取りながら、対話をしながらつくっていくべきと思っておりますが、我々としては、まずはこういった問題があることを提起させていただきまして、その後の解決策について皆様方と一緒に議論していきたいと考えておりますので、そういった意味での課題提起になっております。
 以上です。
【山本委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  それでは、高橋真木子委員、どうぞ。
【高橋(真)委員】  ありがとうございます。大変興味深い御発表でした。
 2点ほど申し上げたく、1つ目は、同じく就活の時期についてです。私は、就活の時期が、今、修士がM1の途中、博士も恐らく博士課程の前半ということに問題意識を持っておりました。古くは高等教育史だと思いますが、18歳時の大学に入ったときのポテンシャルで、大学生のかなりの部分が評価されてしまい、社会人としての能力は、企業に入った後の、基礎体力があった企業でのOJTで、というような旧来モデルではもうなかなか立ち行かないのではないかという非常に大きな問題意識を持っておりましたので、私は、就活時期はもっと遅く、書いていらっしゃったように、アメリカ型で、Mの2年間、Dの3年間というものをきちんと評価された上で勝負をしてほしいと思っていたところです。
 ただ、それに関しては非常に、もう社会システム全体に関わる話なので難しいと思ったのですが、今日の御発表はそういうところで項目出しがされたということで、非常に勇気づけられた次第です。もし、このお二人プラス今の4名の方の中で、いや、そうはいっても実はすごく難しいというところがあれば、その生の声を伺いたいところです。これが1点目です。
 2点目は、簡単に申し上げますと、最初にお話しいただいたAさん、言い難い点をクリアに言っていただいて、まずは拍手を送りたいです。暗黙のヒエラルキーというのは私自身も非常に感じていたところがありまして、ただ、これは第1世代が打ち破っていくべきものだと思っています。私自身は、リサーチアドミニストレーターといって、ドクターなどの研究経験を持ちその後マネジメントに転じる人材群の構築を応援しておりますし、自分自身もそうでしたが、ぜひめげずに、点でつながる仲間をつくって頑張っていただきたいです。
 以上です。1点目について、もし何か、言いにくいかもしれませんが、御発言があれば、生の声をお聞かせください。
【遠藤氏】  遠藤です。CさんやEさんなどで、御意見があったらお願いします。
【(AirBridge)C氏】  Cです。私は、日本で学位を取っていますが、今はアメリカでそのシステムを見ているので、その1つを御紹介させていただきます。アメリカのラボは教授から学生が雇われる形で博士学生は研究をしていますが、博士課程在籍中に何度か、夏学期にラボで研究をする代わりに企業で給料を貰いながらインターンをすることが一般的です。そこでコネクションができ、博士が終わる頃には、そのコネクションを使い就職することもあるので、うまく回っているのかなという印象です。
【高橋(真)委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  就活時期について民間企業のお立場から、迫田委員、お願いいたします。
【迫田委員】  ありがとうございます。私も就活のところ、非常に気になりました。今、文科省が旗を振って、ドクターのインターンシップを進めておられて、途中経過かと思いますが、これに対しては今のところどのような評価なのか、分かれば教えていただきたいというのが一点目です。
 もう一つは、人社系は確かにそうだと思ったのですが、今、人社系で進学するというとアカデミアを目指す人しかいないと思っていて、これは、大学院部会でも大分問題になって議論しているところですが、研究が重点であって、教育ではないと思える点は、今後大きく変わっていかない限り解がないと思っています。一方で、非情報系の工学もそうだという点が少し実感と合いません。理工系はかなり開かれているように思いますが、そうでもないのでしょうか。
 この2つ、お伺いしたいと思います。
【宮浦主査】  分野の問題ですね。理工系でも、先ほどのBさんの場合ですと、今理工系で、やはり企業へのキャリアパスについて、かなり問題意識を持たれているということですか。
【(AirBridge)B氏】  国によって違うのではないでしょうか。日本だと修士を採りたがりますが、海外は博士を採ることが当たり前のように思われています。例えば、日本だと博士に入る年齢は、ほとんどが25、26、27くらいですが、欧州では、社会人経験をしてから30代で博士に進む人が多いです。僕は昔、日本の大学に入学申請する前に、欧州の状況も見たことがあります。欧州は国から給料のように最低限の基準を満たせる生活費が出ます。そのため、欧州ではみんなが博士も仕事のような意識です。もし博士課程自体が仕事経験、職歴だと思われているなら、その後の就活には問題ないのではないでしょうか。
 以上です。
【宮浦主査】  給与システムですとか、その辺りの、修士プラス3年はないだろうという意見は以前からあったとは思います。
 すみません、手が多く挙がっておりますので、
 勝委員。
【勝委員】  ありがとうございます。私途中で退出しますので、早めに質問、コメントさせていただきます。
 お話を伺っていて、やはり博士人材、日本だけが伸びていないと、これは非常に経済合理性のある動きなのではないかと思いました。キャリアパスの部分で皆さん不安を抱えているというのは非常によく分かりますが、今まで、それでも大学と企業との接点を増やしていく、あるいは国際的な流動を促進するということで様々な事業がなされていて、卓越大学院などを含めてですけれども、ただ、やはり日本において、社会が博士人材をなかなか求めない。文部科学省にしても、例えばヨーロッパに行けば、EUの官僚は全て専門知識、専門の分野の博士号を皆さん持っている中で、あるいは企業においても博士人材が非常に多いのに対して、日本はなかなかいない、待遇もあまりよくない、特に工学系エンジニアに至っては待遇がよくない。人社系にしても、MBAもそうかもしれないですが、そういったところがなかなか評価されない社会というのがあるのではないかと思います。この辺について、こういったことをすればこうした社会の寛容度の課題を打破できるのではないかといった議論というのは何かありましたでしょうか。もしお伺いできればと思い、質問させていただきました。
 以上でございます。
【遠藤氏】  具体的にどういった形で日本の社会を変えていくのかというところは、我々の議論の中でも大きな話になってくるので、博士人材が大事だということをどのような形で社会に認めてもらうのかというところは、国、また企業、社会全体で考えていくべき課題かと私自身は思っております。
 例えば、先ほどお話がありましたけれども、18歳時点で評価された方々が大学に入学し、学部を出て、そして修士まで行けば大体理工系としてはそれで完結といった日本型の、旧来の教育システム自体が社会全体に根づいてしまっているというところが大きな問題点だと考えておりまして、やはり入学時点で評価するのではなく、出口面でしっかり評価されていくべきであり、どういったことを大学教育で学んだか、大学院教育で学んだか、また研究室の中でどういった形で課題解決をしてきたのか、そういったところを企業側も見ていく、また学生の方々もそこを磨いていけば、学生時代、大学生ですと小学生よりも勉強していないというような調査結果が出ておりますが、出口でしっかり評価されるという形になれば、そこがインセンティブづけになると思いますので、社会全体そういった形で、さらに大学院教育は大事だと、博士人材は大事だという、スタンダードを変えていけるような社会を目指していくべきだと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  評価システムの話題が出ております。
 川端委員、お願いします。
【川端委員】  ありがとうございます。本音ベースの話をお聞きして、感想が幾つかありますが、基本的に10年ぐらい前と変わっていないなと思いまして、今、ドクターにおられるということから、様々な課題や、ドクターに進学するに当たっての課題をお話しされましたが、ぜひ、皆さんがドクターに行こうと決定された決定因子は何かをお聞きしたいです。要するに、行かない人の言い訳や障害の話は、それはそれであることはよいのですが、皆さん間違いなくドクターに行くと決定されて、ドクターに行かれた、そのときの魅力や、ほかの選択肢があったはずですが、ここに行かれた決定因子は何かというのが1点お聞きしたいと思います。
 その上で、なぜこういったことを聞くのかといいますと、先ほども少し出ましたが、卓越大学院などで、生活費も出します、キャリアパスも保証します、充実したカリキュラムがありますと言っても、学生さんたちの中では手が挙がらず、そこに行こうと思わない人が多いため、なかなか競争倍率も上がらないですし、そういう学科自体の博士に進学しようと思わない要因の裏返しが、おそらく皆さんがドクターに行こうと思った決定因子だと思うからです。人文社会系ではキャリアパスもなかなかしんどいだろうと想像されていたでしょうし、そういう中での決定因子について、ぜひお聞かせいただければと思います。後で結構です。
【遠藤氏】  遠藤でございます。DさんやFさんから何か御意見ありますでしょうか。
【(AirBridge)F氏】  私が博士課程に進学しようと思った理由としては、2つあります。まず一つは、修士課程、前期課程で行った研究が、少し不完全燃焼で、もう少し深めたいと思い、もう3年研究したいと思ったからです。もう一つは、これは私の周りの学生も言っていることですが、博士号がキャリアにおいて必要だからということです。私で言うとアカデミアに就職したいというモチベーションがありますし、ほかの方だったら、博士号という肩書を持って自分のやりたいことをやっていきたいとお話しされています。私の周りでは、基本的に博士号が必要だから進学する、必要ではないから就職するといった選択になっています。
 以上です。
【遠藤氏】  ありがとうございました。やはり博士号取得自体が今後のキャリアにおいて大事だという社会的雰囲気になれば、皆さんおのずと博士進学しなければいけないという風潮になってくるのではないかと考えております。
 以上です。
【川端委員】  今の話に少し追加すると、Fさんが言われた、博士号はキャリアにおいて必要だと思ったときに、おそらく既にアカデミアでの就職は大変といった、様々なことを知っていたと思います。それでも、今の研究をさらに進めたいと博士に行ったということは、やはりそこに面白さだとか魅力だとか、何かがあったのでしょうか。
【(AirBridge)F氏】  そうですね、私の話ですと、楽しいというのがまず1つありました。新しい、誰も知らないことを1つ明らかにするのが楽しいというのがあって、あとは結構、研究課題が自分の社会に対する問題意識と重なっていて、それらを少しでも解決し、よりよい社会がつくれるように自分の研究を進めて、少しでもみんなが過ごしやすくなればいいなと思っていました。
【川端委員】  ありがとうございます。そういうものがもっと前面に、ネガティブな話も重要ですが、ポジティブな話もぜひ前に出していっていただければと思いました。
 以上です。ありがとうございました。
【(AirBridge)F氏】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。やはり研究が好きで、わくわくするから進学しているケースがほとんどではないかと思うのですが、柳沢委員、いかがでしょうか。
【柳沢委員】  皆さんの意見を聞いているうちに、自分の中でも訊きたいことが満載となりました。まず、最初にプレゼンしていただいた資料の中で私も2点ほど少し違和感があったものがありまして、重複してしまうのですが、第1点は、他分野の人や社会に対して分かりやすく伝える能力や実学的な能力について教育が必要ではないかと、これは今さら新しく付け加えるべきことではないと思います。研究者としてやっていくためには、どういう場面であれこの能力は絶対に必須で、真面目に博士課程研究をしていれば自然につく能力、いわゆる広い意味での人間力ですので、そのための新たな教育が必要というのは違和感があります。それから第2点は、就活の時期ですが、アメリカ型が、研究が終わってから就活をする、というのは全く違うと思います。先ほど、スタンフォードに今いるCさんがおっしゃったとおりで、私もアメリカに25年いましたが、アメリカでも日本でも、博士課程の学生の就職は、いつの間にか決まっているというのがほとんどだと思います。研究をしながら、様々な研究会やインターンシップで出会ったことが糸口になり就職していくという人のほうが、私の周りには少なくとも多いです。その意味で、企業などへのインターンシップは、もしそういったチャンスがあれば非常に有用です。企業から見ても博士人材がどういうものなのかという理解につながることもあると思いますし、もちろん学生から見て、企業でどういうことが求められているのかを実地体験できるというのもあると思います。
 それから、本日配っていただいた参考資料のほうにも、企業の側で採る人、人事採用を担当する人が博士だと、博士人材を採りやすい、そして、より博士人材を求めている、そういう傾向があるというデータが出ていたと思うので、これはやはり根の深い問題なのだと思います。恐らく日本の企業が博士を採らないという現状を変えていくには、その悪循環を打破していくことが大事なのかと思います。
 それからもう一つ、参考資料に、いざ博士人材を採ってみると、採ってよかったと思っている企業の方が非常に多いというデータも出ていたと思うので、やはりそこにある間違った前提やネガティブなバイアスを、何らかのきっかけで取り除いてあげれば、うまくいくようになるのかなという印象を得ております。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 村上委員、お願いします。
【村上委員】  今お話を伺っておりまして、博士人材がなかなか日本社会の中で雇用機会が見いだせないとのことですが、これはやはり日本の労働市場全体が非流動的で、大企業を中心として、人材育成システムや処遇のシステムが長年の間に出来上がっていて、これに博士人材がなじみにくいという状況であると思います。ただその一方で、最近、企業の中でも、デジタル人材をはじめとして、高度な専門性を持っている人たちに対する需要はあり、また地球規模で、文系理系を問わず解決しなければならない問題も多く出てきています。
 そういう中で、社会全体として博士人材が不要だということではないと思います。ただ、今の大企業に着目をしてしまうと、なかなか組織の小回りが利かない、変化にうまく対応できないという面もあろうかと思いますので、そこだけに着目していると、せっかくの良い人材が活かされない、埋もれてしまうということがあると思います。
 私がお聞きしたいのは、Eさんです。Eさんは起業されたということですが、この起業という選択肢、これが高度な専門性を備えた人たちにおいてどの程度あるのかということを知りたいです。また、この日本の社会の中で起業の障害となっているものは何なのか、それを特に御経験のあるEさんにお伺いしたいと思っております。
【(AirBridge)E氏】  村上先生、ありがとうございます。まず起業に対しての専門性ですが、博士で学んだことは起業で大変生かすことができると思います。一方で、起業するということは、金銭的な生活面での不安であるとか資金調達であるとか、タイミングというのもあると思うので、なかなか様々なものがそろわないと起業ができないというところがあり、私は今、大学院にいますが、そこでネットワークを広げて、民間企業にも顔を出しながら、様々なものを大学院の博士課程の3年で蓄積して起業するというのは、非常にいい方法だと思います。そうすることで、少しはハードルや障害も落ちます。私は民間企業を経験し、起業していますが、修士、博士とそのまま行っている学生さんには、なかなかハードルが高いかなと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  いろんなケースが出てまいりましたが、宮田委員、よろしいでしょうか。
【宮田主査代理】  御指名ですので、お話を2点させてください。まず第1に分かったことは、大学院の皆さんと文科省の若手の皆さんのSNSのような活動は、非常に有用だと思いますが、全く企業のことを理解しない状況で議論しているように思います。今、企業の現状は、1年中採用をしています。特に中途入社採用という形ですが、博士課程の研究員に関しては、1年中いつでも申請を受け付けて、審査をしております。就活という、今までのような築地市場のマグロのように並べられて、比較して採る、といった採用方法を日本の企業はしておりません。これは大企業だけでなく、ベンチャー企業も全く同じです。その際、皆さんに申し上げておきますが、かつて東芝の方がおっしゃっていたと思いますが、今や日本の大企業に博士の門戸は開かれています。しかし、グローバルに開かれているので、皆さんが就職したいと思い、様々な職歴レポートや研究歴レポートを出しても、グローバルに戦って勝ち抜かなければ入れないということを、まず認識していただきたいと思います。
 せっかくこんなに良いコミュニティーをつくっているので、企業の採用担当者や、皆さんの先輩で企業に入った人を多く入れて、本当に今、日本の企業は大胆に変わっているので、その現状に即したような形で、皆さんがまず知識共有することが重要なのではないかというのが第1点の感想でした。
 また、一番重要だと思ったことは、前から申し上げておりますが、社会人博士です。これこそがおそらく日本の大学院制度を変える人たちになるだろうと思っているので、さらに社会人博士を受け入れる制度設計をすべきだと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。少し勝手な提案ですが、今御発表いただいたコミュニティーに、様々な民間の目線でやられてきた宮田委員がアドバイザーで入られるのはどうでしょうか。
【宮田主査代理】  もちろん構いません。僕は、最近ベンチャーキャピタルになっていますので、起業するということであれば、応援をさせていただきたいと思っています。
【宮浦主査】  恐らく大学の教員ではなく、宮田委員のような経歴で、今ベンチャーを支援されている方にアドバイザーとしていろいろ話を聞いていただくと、このコミュニティーにさらに厚みが出てくるのではないかなと、勝手に提案させていただきましたが、遠藤さん、どうですか。
【遠藤氏】  遠藤でございます。宮田先生、本当にいろいろとありがとうございます。今回のワークショップには、アカデミアだけでなく、会社員の方、民間の方も入っているのですが、そういった視点も踏まえまして我々も引き続き議論していきたいと常々思っているところでございまして、またぜひ御案内させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
【宮田主査代理】  お待ちしています。ありがとうございました。
【宮浦主査】  それでは、現状手が挙がっておりませんので、次の話題に進ませていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、次の話題は、ハイラブル株式会社代表取締役、水本様の御発表です。水本様は、京都大学で博士号を取得後に、自動車メーカー系列の研究所を経て独立されて、ハイラブル株式会社を創業されました。本日は、民間企業での研究や、専門分野の起業などについてお話を伺えるということです。
 お願いします。
【水本氏】  では、お話しさせていただきます。15分ぐらいということで聞いています。よろしくお願いします。
 まず、ハイラブル、私たちの会社がどのようなことを行っているかという説明を少ししてから、キャリアパスの話をしていきたいと思います。
 ハイラブルが行っていることは、一言で言うと、話合いの見える化、可視化です。よく言うアクティブラーニングは非常に普及していて、授業中に子供たちがグループディスカッションするというのは、小中高、大学、企業研修、どこでもあることだと思います。これは、主体的に学ぶことができ、コンセプトを深く理解することができるといった、非常に高い効果があると言われておりますが、個別の学習者の発言を聞くというのは極めて難しく、40人クラス、8並列で同時に話合いをしている状態で、1人の先生が全員の子供の発言を聞くというのはほぼ不可能です。
 記録に残すために、ICレコーダーを置いたり、ビデオを撮ったりしても、それを誰が聞くのかという問題があり、子供たちの立場に立つと、せっかく頑張って話合いで発言しても、先生に偶然見つけてもらえないと評価されない、運次第といった問題があります。また、そうすると、何となく盛り上がっていたというような印象的な表現に頼るしかないので、いわゆるエビデンスに基づいた自分たちの振り返りや指導が非常に困難だという問題があります。さらに、こうしたデータを蓄積できていないので、話合い後の蓄積が非常に難しいという問題もあると考えています。
 これらを解決するのが、僕らが行っているハイラブルと呼ばれる、オンラインや対面の話合いを分析するサービスです。これは学習者の発話を定量化し、可視化することができます。具体的にはこのようなグラフでして、横軸が会議時間です。積み上げグラフになっていて、面積が広いほどその人がたくさん話しているということを表します。このようなグラフにすると、ここで紫と黄色と青の人が話合い、何か盛り上がっていた、ここで誰も話していないから、これはもしかしたら考え込んでいたのか、みんなが書いていたのか、という観点でその子達の話を見ることができます。また、ターンテイクといって、誰の後、誰が話したかというやり取りのパターン、どれくらい話していたか、それぞれの行動の傾向を可視化することもできます。
 こういうものを学習者自身が振り返ることによって、自分の行動を振り返るようなメタ認知が促進される、あるいは、このデータを蓄積していくことによって学習分析が可能になるといったものです。既に国際規格であるLTIやxAPIには対応していて、こういうLMSや学習データ蓄積システムと連携することができます。
 僕らが行うことというのは、音環境分析でコミュニケーションを豊かにするということがミッションでして、このような学校の話から始まったのですが、あらゆるコミュニケーションに広がっています。例えば企業の研修や、いわゆる会議体を分析していくこともしています。コロナ禍に合わせてオンライン版も作ったので、対面とオンライン、どちらも分析することができます。
 後で話しますが、僕はもともと生物の研究などをしていたので、そこから生物のコミュニケーションにも広げるような、Project Dolittleと呼んでいますが、こういったものを始めて、世の中のあらゆるコミュニケーションに広げていこうとしています。
 このようなことを行ってきて今、6期ですが、4万人以上の話合いを分析し、幾つか賞も頂いています。
 僕のキャリアパスについて、ざっと紹介していきたいと思います。僕は高専卒でして、その後、京都大学に編入して、ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンという、ホンダグループの先端研究を担うグループ会社を経て、ハイラブルをつくりました。
 僕の立場はケーススタディーと思いましたので、一個一個細かく話をしていきたいと思います。高専では電子情報工学科というところにおりまして、発電機の原理、送電の計算からソフトウエアまで、座学や実験をたくさんして学んでいました。NHKロボコンにも参加していまして、僕自身は組み込みソフトを担当しておりましたが、一通りの機械加工や回路設計もしていました。
 その後、京都大学に編入しました。大学編入後は、認められる単位が非常に少なくて、非常に大変でしたが、個人的にはよかったと思っています。当時は、東大が2年次編入で、デフォルトで留年扱いだったので、京大で頑張ってみようと思い、無事に卒業できました。個人的には留年してもいいので、3年次編入でもいいのかなと感じていました。
 その後、研究室に入って、博士まで研究をしました。テーマは大きく3つで、人と合奏する共演者ロボットという、人の演奏を予測しながら、テルミンという電子楽器の演奏動作を生成するようなロボットの研究、カエルの合唱を計測して、その空間パターンを調べたりする研究、そして、ロボット聴覚と呼んでいる、マイクアレイ処理の研究です。これはたくさんのマイクをロボットにつけて複数の声を聞き分けるというような研究です。
 実はこれは、どれももともとやりたかったテーマではなく、様々な流れで研究することになったのですが、次第に楽しくなってきたという感じです。もともとは共演者ロボットで、人の演奏を予測しながらロボットを作る研究、そして、手伝いから始まったカエル研究、この2つをメインで研究していたので、この2つで何とか頑張って博士論文を書くことにしていました。
 そこで、ロボットとカエルをいきなり組み合わせるのは厳しいので、僕がやりたいのは何かと考えました。インタラクション、つまり言語ではない、タイミングや非言語なコミュニケーション、インタラクションをモデル化することだと抽象化し、そのケーススタディーとしてHuman-Robot EnsemblesとFrog Chorusesが存在するといった形で論文をまとめることにしました。どちらも結合振動子モデルという、お互いに影響しながらリズムが変わっていくようなモデルを使うことによって1つの論文にしたという形でした。
 ロボット聴覚のほうは、当時、私が所属していた京都大学情報学研究科の奥乃・尾形研究室、今は河原達也先生が教授に着任されていますが、ここで行っていた研究テーマでできたソフトウエアの、アプリをつくる、講習会の講師をするといったことをしていました。基本的にはお手伝いのようなもので、日本、フランス、韓国などで講習会やハッカソンを行うといったことをしていました。
 こうして様々な研究をしていく中で、DC2に採用していただいたり、機会がありフランスの研究所に滞在したりしていました。
 ここで、京都大学の奥乃研究室で共同研究していたのが、HRIと言っていますがホンダの研究所です。その中で共同研究先に就職することになりました。
 共同研究先では、ロボット聴覚、音声の分析の研究をしていました。例えば車の中でヒューマン・コンピューター・インタラクションの研究をする、会話の分析をする、あるいはいわゆる製品の市場調査のようなことをしていました。
 こういった中で独立し、非言語なインタラクションの分析と、これまで研究してきたロボット聴覚の技術を使って、先ほどお見せしたような会話の定量的な分析をしていました。
 このことからキャリアパスと現在のビジネスをどのように使っていますかということですが、基本的には全部使っています。以上が私のキャリアパスでした。
 次に、民間就職や起業のきっかけ、困難に感じた点についてお話したいと思います。きっかけは、もう少し直接世の中と関わりたいと思ったことが一番大きいです。
 論文はそれなりに書きましたが、世界に関わっている感じは、少なくとも当時はそれほどありませんでした。査読者と戦っているだけというのがやはりずっとあり、もう少し何かないかなと思っていました。
 大学のアカポスにも誘われたのですが、結局、共同研究先の研究所に就職しました。しかし、車の会社は安全性も非常に重要視するので、すぐに製品に行けるわけでもないということもあり、もう自分でやろうかと思ったのがきっかけの一つです。
 それから、やはり博士を取るといわゆる普通のレールから外れると思っていたので、せっかくだから普通の会社員ではないことがしたい、何か変わったことをしたいと思ったというのも大きな理由です。
 博士で起業したほうが良いと思ったのは、個人で業績がたまるということです。自分の名前で論文を書くといった、自分の名前で何か書くということで、個人の業績がたまり、知り合いも非常に増えるので、失敗しても何とかなる気がします。これは本当に何とかなるかどうかというよりも、何となくどうにかなる気がしたのでやってみたというのが正確なところだと思います。以上のことが、起業のきっかけになりました。
 困難に感じた点は、正直あまりなかったです。非常に、多くの方にサポートしていただき、研究室にも非常に恵まれていたので、あまりなかったと感じています。
 例えば日々の研究室の環境もそうですし、海外のいわゆるトップカンファレンスに必ず一年に一回は出すといった文化だったので、海外派遣の機会も多くありました。また、企業や研究所のインターンシップの機会は毎年必ず、修士1年のときは必ず行って、その後、相手と合えば、時々バイトのように行くことが推奨されていました。基本的には外に行け行けと言われていたので、非常によかったと思っています。
 研究室のメンバーも非常に優秀なので、様々な大きい会社に就職していて、「久しぶり、ところでちょっと商談いいですか」といって久しぶりに友達に営業に行くこともできたので、非常によかったと思っています。
 ここはあまり細かく書いていないのですが、共同研究していた企業のホンダに行くときに、面接の時点で、僕は起業したいので、3年ぐらいで起業します、といったことを言って入りました。
 社内で、もちろん様々なことがあったのですが、いろいろな方に助けていただき、ライセンス契約をちゃんと結んだことや、起業するということがうまくできたということが、非常に恵まれていたと感じています。
 そのため、いわゆる日々の資金繰りや営業活動は非常に大変ですが、それはどこでもあることで、それ以外の困難に感じたことはそれほどなかったと、個人的には思っています。
 博士で得たスキルがビジネスで役立った場面ということで、まとめられなかったので雑多に書いてみたのですが、まず1つ目が、ストーリーを生み出すスキルだと思います。実験しました、できました、だとあまり論文が通らないので、なぜその条件だったのか、そういうことをきちんと説明しないといけない。あるいは、さきほどお話したテルミンとカエルの論文を1本にまとめるというアクロバティックなことをしていたので、やはりプレゼンする、それぞれのパーツをどう組み合わせて大きい目標にするかといったストーリーを考えるスキルは得られたと感じています。
 また、論理展開のスキルですが、研究会などで研究室のメンバーや博士の審査委員からその場で質問され、基本的に即座に答えなければいけない時に、やはり原理に戻って、きちんと論理を展開して、ディフェンスすることは非常に重要です。
 これは、ピッチのQ&Aをすることや営業トークで様々なことを聞かれることと基本的には同じといいますか、それに比べると相手は同じ分野の専門家ではないので、比較的やりやすかったと感じています。
 正解を考えるスキルですが、私の指導教官だった奥乃先生は、人と同じことはするなといった教えだったので、基本的に何ができればいいかというところから考えなければならないことが多かったです。いわゆるベンチマークがあって、そのスコアを少し超えたら勝ちということではなく、そもそも何が要るのかといったことを考える必要がずっとあったので、そういうところが独自の製品のアイデアを考えることにつながったかなという気がしています。
 新しいことを学んで使うスキルというのは、自分の分野が多分あるのですが、また別の分野、たとえば別の数学を勉強してきて自分の手法で使うというのは普通のことです。それをもう少し広げて、会計や労務も本を探してきて読んでやればいいと思い大体自分で行っていて、そういった学んで使うところまでの心理的なハードルが低くなった点はよかったと考えています。
 関連研究を体系立てるスキルですが、博士論文を書くときに、自分の研究に合わせて周辺分野の研究を、組み立てる必要があると思います。これは、競合を調べることや、そこにある本質的な課題は何かといったことを考えるということだと思っていて、例えば僕らは話合いを可視化します。話合いをしているときに、人が聞くことはそもそも不可能ですよね、といったところから話を始めて、そういうことを考えるのはこの辺の経験が役に立ったと感じています。
 分野外の人に説明するスキルですが、先ほどお話ししたテルミン、いわゆるロボティクスと生物系の研究をしているので、生物系と工学系の研究学会で発表することがあります。
 そうすると、基本的に全く違う人なので、常識も文脈も何も合いません。その分野に合わせた論理構成や表現をしないと、論文も通らないし説明も聞いてもらえないです。これはまさにプレゼンや営業トークそのものなので、非常に役に立ったと思っています。
 文章作成スキルは、世にいうパブリッシュ・オア・ペリッシュのような感じで論文をたくさん書くということをやっていました。そのため、論文・査読・解説・報告・申請書など、目的に合わせていろいろな文書を量産する必要があります。
 企業、ベンチャーでも補助金や提案書、ウェブの文章など、どこでも文章を書く機会はあるので、これは非常に役立っております。
 事務処理スキルですが、僕がいた研究室でも、自分で研究費を取ることが推奨されていたので、様々なところから取ってきなさいと言われていました。したがって、経費や旅行伺い、申請といったいろいろなことをしなければいけません。
 ベンチャーの社長をしていれば事務処理はないかというと、そのようなことはないので、事務処理をさささっとできるようになって、しっかりと自分の技術開発や営業に時間を取れるようなスキルが身についたのはよかったと思っています。
 最後に、博士があると、「専門家です」と言わなくても見たら分かるので、この説明コストが少し減るということがよかったと感じています。
 私がこれまで、ハイラブルで行っていること、キャリアパス、博士過程で得たスキルなどの話をしました。
 以上です。ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。それでは、今お話しいただいた内容の関連で、御質問、御意見、いかがでしょうか。
 桝委員から手が挙がっております。どうぞ。
【桝委員】  水本さん、桝と申します。本当に貴重といいますか、非常に面白い話をありがとうございます。
 最後の博士課程で得たスキルがビジネスでどう役に立つかということは、僕自身、修士課程でお恥ずかしいですが、修士課程で得たスキルというものがテレビ局で役に立った場面が同じような感覚であったので、すごく共感を持ちました。ただ一方で、企業側の視点で考えると、企業で学ぶ3年間というのも同じぐらい学ぶことがあるわけであって、企業側の方も3年間足踏みしているわけではないので、博士課程だからこそ学べたスキル、あるいは博士課程だからこそ、企業で過ごす3年間以上に学べたというものは、その中で特にどれだと感じられますか。
【水本氏】  そうですね。やはり論理展開スキルやストーリーを生み出すスキルが一番かなと思います。というのも、まず論理展開やストーリーは、自分でやらなければいけません。やらないと次のポジションがなく、論文も通らないので、「最終責任者自分」としてできるのはよかったと思います。
 会社では、最悪上司に振ればいいという安心感があったので、それがなかったというのは鍛えられたと思いました。
【桝委員】  皆さんが博士課程に行ったことのメリットとして、専門性というのもあると思いますが、同じように汎用的なスキルという意味でいうと、そういうところを強調していけば、企業側にも博士の価値が伝わると思いました。ありがとうございます。
【水本氏】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  それでは宮田委員、どうぞ。
【宮田主査代理】  ありがとうございます。ストーリーをつくるスキルというのを強調していただいて、本当にありがとうございました。
 皆さんが取る博士号というのは、医学はMAですが、ドクター・オブ・フィロソフィーだということを、理科系だとしてもぜひ御理解いただきたいと思います。
 科学実験で手を動かしていると、つい職人のようになってしまいますが、我々が証明するのは新しいコンセプトです。その力をきちんと大学院教育で教えていただいて、まさにドクター・オブ・フィロソフィーの名にふさわしいような教育をしていただければ、今日のハイラブルの水本さんのように、キャリアパスを軽快に、企業に行ったり起業したり、いろいろできるのではないかと思っていて、そこを強化すべきだと認識させていただきました。どうもありがとうございます。
【水本氏】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  柳沢委員、どうぞ。
【柳沢委員】  先ほど川端さんが聞いていた質問と同じですが、どうして博士課程に入られたのか、修士ではなく、大学院に行くとき博士と決めたのか、そこをぜひ教えてください。
【水本氏】  ありがとうございます。ロゴにカエルがあるぐらいカエルの話をしていますが、カエルの研究を始めたのが修士の途中からで、録音はできて少しうまくいったけれど、もう少しやりたいなと思ったことがやはり一番大きいです。
 あとは、「俺ならできる」という勘違いをしたといいますか、魔が差したといいますか、そのまま行っちゃったという感じですので、「できる気がした」というのも大きい気がします。
【柳沢委員】  やはり先ほど、Fさんも言っておられましたが、博士に行く人は、割と単純に、面白いから、もう少しやってみたいからというマインドセットのある人なのだと思います。私の周りもそういう人ばかりです。
 だから、博士課程の学生を増やしたかったら、学部ないしはもっと早く、そういう自由なマインドセットを育てるしかないという気もしてまいりました。ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 迫田委員、どうぞ。
【迫田委員】  すばらしい発表をありがとうございました。私もその最後の1枚、博士課程で得たスキルというところに非常に感銘を受けました。
 まさに我々企業で採用するときに見ているポイントだと思います。特にストーリーを生み出すスキルというところと、正解を考えるスキルというところ、それから、新しいことを学んで使うスキルというあたりはいつも見ているところなので、まさに先ほどの話にもあったように、博士課程でしっかり学んでいる、学び切った方は、就職ではあまり心配ないのではないかという印象を受けました。
 一方で、全員がそうではないと、企業側から見ると感じるのですが、皆さんの周りでは、どうでしょうか。面接等をしていて、はたしてこういう方ばかりなのかということが、引っかかるところです。
 個人的な印象だけかもしれませんが、皆さん、博士課程でこういうスキルが育っているかどうかという点について、教えていただければと思います。
【水本氏】  そうですね、ほかの研究室は正直あまり分かりません。ただ、僕の研究室、奥乃研出身というだけで、「じゃあ大丈夫」と言われるようなところがあり、少なくとも学科では非常に厳しくて大変と言われている研究室であって、学部の卒業研究、卒論を博士の国際会議に出すことはマストといった感じでしたので、こういった常にある圧の強さがよかったかなという気はしています。
 なので、ケースによるというのはおっしゃるとおりかもしれないです。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。
 村上委員、どうぞ。
【村上委員】  水本さん、御報告ありがとうございました。博士課程で得たスキルですが、これは水本さんが今、社長になられて、振り返ったときに認識したスキルなのか、あるいは博士課程を修了する時点で、会社に行くときに面接で、もう自分はこういうスキルを持っていますとアピールできるほどに認識していたスキルなのかというところをお伺いしたいです。
 今挙げていただいた幾つかの項目は、私も博士課程の学生を持っていますけれども、こういうスキルを身につけることができるのだろうと意識して教育している部分です。
 しかし、学生が、それを自分が体得をしたという意識を、ドクターの3年、4年の時点で持っていないと、会社に行ったときに面接でうまくアピールできず、そのために入社できないことになっているかもしれません。
 だから、もしそうであれば、私はさらに授業をしていく過程の中で、今していることはこういうことにつながる、みんなはこういうことを習得できていると意識させる場面が必要だと思ったのですが、その点、水本さんの御経験はいかがでしょうか。
【水本氏】  ありがとうございます。少なくとも博士に行く時点で考えていたのは、博士には個人の業績があることです。大きい会社もいつなくなるか分からない、そういう意味ではむしろこちらの方が安定かなというのは当時から思っていました。
 この8つのスキルについては、今回、何かスキルが役立った場面を話してくださいと言われて、まとめたところでして、当時あまり言語化はしていなかったです。
 就職活動では、幾つか受けましたが、全部研究所だったので、こういったプレゼン、研究の説明をして、いろいろ質問に答えていくと、大体大丈夫でした。
 そのため、ジェネラルスキルと言われたらこのようなものだろうと思った、これもまた、こういうストーリーを生み出しただけで、基本的には研究をきちんとしていたという認識ではありました。
【宮浦主査】  研究のプロセスが生きているというお話だと思います。
 小林委員、いかがでしょうか。
【小林委員】  小林です。水本さんのお話を聞いていて思ったのは、特に今のビジネスに役立ったスキルという話もそうですが、もともと研究はリスクテイクするもの、リスキーなものであって、研究者になるということはリスクテイクそのもので、その中で博士課程に進むことも、ベンチャーもリスクテイクだということです。
 実は世の中は、そういったリスクテイクをする人がいないと回りません。ところが今、大学は、学生もそうかもしれないですが、教員もリスクヘッジのほうに走ってしまっていると感じていて、もしかすると、様々なスキルがありましたが、その根底にあるのは、博士や研究に対するリスクがあっても挑戦するというマインドがあるかないかの違いだと思いましたが、そういう感触はありますでしょうか。
【水本氏】  まず、あると思います。ただ僕は、研究室の先生がかなり研究費を持っていたので、最悪、ポスドクで雇ってもらえる、何とかなるようになっていたのでリスクが取れたように感じています。
 修士から博士に行くときはリスクを取ったと思っていますが、その後は、自分で大丈夫なようにしてからリスクを取っていました。
【小林委員】  周りの方は同じ程度、リスクを取っていますか。
【水本氏】  起業している人はほとんどいないです。研究所や大学におられる方がほとんどです。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。ほか、いかがでしょうか。狩野委員、いかがですか。
【狩野委員】  水本さんの話も大変すてきでした。おっしゃった中で、「最終責任者自分」というのが一つの重要なポイントだと思いました。しかし大学院などに進む前の方々に宣伝したときに、それが魅力だと通じない人たちも、ある程度いるように思っています。これをどういう表現にすれば「最終責任者自分」がよいトレーニングであるということを伝えられるかと思いました。その年代に近い方として、どう思われますか。
【水本氏】  例えば、よいかどうかは別として、毎週、研究室で奥乃先生とミーティングをして、「これやりなさい」と言われ、そのまま言うとおりにやったら、次の週、本人が忘れていて、「何でそんなのやったの」と言われるとします。
 こういった理不尽なことがある場合もあるので、自分で確かにそうだと思わない限りやらない。確かにそうだと思ったら、突然先生が豹変しても「いや、これは必要なんです」と言うといったプロセスがあったように思います。
 ただ、最終責任者が自分であることが良いということは、組織にあまりいることができないといいますか、最終的に僕が決めたいのに、いろいろな人に説明をして回らないといけないため、組織人的にはどうかとも思います。
 したがって、みんながこうなったほうが良いとはあまり思っていません。組織の言うことをきちんとやる人や、勝手にいろいろなことをやる人の、バランスだと思います。
 博士がマジョリティーになることはおそらくないので、そういう人が少なくてもいいのではないかと思っています。
【狩野委員】  多様性が大事ということですね。あとはバランスがどれくらいで推移すると一番いいかということも、ここで考えたほうがいいと思いまして伺いました。ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 隅田委員、手が挙がっていますか。
【隅田委員】  はい。質問です。高専の前からも少し含まれるかもしれないですが、水本さんのキャリアを振り返って、家族のサポートや影響などありましたら教えていただけますでしょうか。
【水本氏】  ありがとうございます。家族の積極的なサポートはあまりなかったといいますか、ほっといてくれたが正しいです。いろいろなことを言わず、もう好きなようにしいな、と言ってくれていたことが一番大きいと思います。最悪帰ってくればいいといった感じがよかったという気がします。そのため、親のブロックは全くありませんでした。
【隅田委員】  分かりました。御兄弟はどうでしょうか。
【水本氏】  妹がおります。
【隅田委員】  水本さんの影響、あるいは妹さんから影響を受けたようなことはありますか。
【水本氏】  僕が、高専で楽しそうにしていたからかは分からないですが、妹も同じ工学系に進んだので、影響を受け合っているとは思います。
【隅田委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  それでは、もう1社話題提供がありますので、移らせていただきます。
 博士人材の採用を積極的に進めている株式会社サイバーエージェント様から、お話を伺います。本日はAI事業本部の田爪様、AI Labリサーチマネージャの山口様から、AI Lab並びにインターンシップ等について御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【田爪氏】  それでは、サイバーエージェントより、博士人材の採用と活躍についてお話をさせていただきたいと思います。本日はこのような機会をいただきまして大変にありがとうございます。光栄に思っております。ぜひ当社の活動をお伝えできればと思っております。
 本日ですが、私がAI事業の採用企画と広報を担当しております。もう1名は、AI Labリサーチマネージャで、AI組織の運営をしている山口より、順にお話をさせていただきます。
 サイバーエージェントですが、大きく3つの事業を柱としておりまして、ABEMAなどのメディア事業、「ウマ娘」などのゲーム事業、創業時から事業の要としているインターネット広告事業になります。
 本日の焦点である博士人材が所属するのは、AI Labと申しまして、赤枠のインターネット広告事業の、「AI×広告」や、DXといったビジネスと密接に研究に取り組んでいます。
 AI研究に関係の深い領域を3つ、簡単に御紹介いたします。1つ目が、「AI×広告クリエイティブ」の領域で、バナーやテキスト広告の自動生成、広告効果の事前予測などを行っています。
 2つ目が、コロナ禍で需要が高まっているCGやアバター、メタバースといった、バーチャルクリエイティブの領域にも取り組んでいます。3つ目が、小売や医療、行政など他業種へのDXの支援です。
 バーチャルクリエイティブに関しては、テレビなどにも取り上げていただいたことがありますが、冨永愛さんのような著名人の分身となるデジタルヒューマンや、この世に存在しない架空のAI人物モデルを作成しています。動きや音声も対応して、著名人のデジタルツインを広告案件にキャスティングするなどといった事業も行っています。
 併せて、研究のところですと、ディープフェイク対策に関する研究を行うことで、健全なマーケットづくりにも取り組んでいるような状況です。
 こちらがDX事業の一例です。対象としている領域も幅広くあり、面白い例としては左から2列目、ロボット研究で世界的な研究者である大阪大学の石黒教授と一緒に研究をさせていただいております。ロボットの遠隔接客の有用性について取り組んでいまして、こちらもコロナ禍で研究が加速しております。動物園、スーパー、自治体などで、遠隔ロボット接客の可能性について検証を行ってまいりました。
 AI Labについて御紹介をしていきます。2016年に設立いたしまして、現在は50名、博士も約半数以上と大きく増員をしています。
 設立当時から、博士号取得者の方を中心に高いスキルを持った方が集まる組織にしていくことを中心に考えて、これまで少数精鋭で組織を成長させてきました。
 現在は50名ほどですが、2020年頃までは10名前後の人数で組織を成長させてきたという経緯があります。
 前職は様々で、助教・准教授を務めていた方、内閣府や地方自治体から転職されてきた方もいらっしゃるような状況です。
 主な研究領域は、これまで御紹介したビジネスと密接な研究領域になっていまして、クリエイティブ、ロボットの接客対話、経済学、大きくはこの3つです。
 サイバーエージェントの特徴として、AI研究の社会実装スピードが速いという点がありますが、これらはAI研究組織とエンジニアの開発チーム、事業責任者のビジネス組織、これらが非常に近い距離で仕事に取り組む体制ができているところが要因と思っております。ふだんからディスカッションなども頻繁に行われておりますので、シームレスに連携ができていると思っております。
 実際に、そのような体制の結果、近年多くの実績を残していまして、国際カンファレンスに関しても、主著・単著を合わせて、年間で50本以上の論文採択、また、産学連携も大きく取り組んでおりまして、AI研究の結果に関しては弊社から出しているプロダクトが多数あり、100プロジェクト以上、既に実装されています。
 博士人材の採用について、ここからお話をさせていただきます。
 当社が博士人材の採用を強化する理由ですが、これまでも多々議論されていたように、グローバル企業を見渡しても、圧倒的な成長を遂げるためには高い専門知識を持つ博士人材の活用は欠かすことができないと考えております。
 そのため、ハイレベルのAI研究ができる人材と、企業側においてその技術を最速で取り入れる組織の体制、それを受け入れる文化を並行してつくることで、大きく企業が飛躍すると考えています。
 2016年のAI Lab発足当時ですが、大きな課題がありました。1つ目は、認知不足です。企業ですと、今までの議論の中で、OBの皆さんのところへ就職をされるという話があったと思いますが、サイバーエージェントは、社名は知られていましても、研究組織を持つ企業としては、各大学の博士のOBがいるわけでもありませんので、研究のイメージから大きくかけ離れていました。
 そのため、博士人材の皆さんから、そもそも就職先の候補にすらなりませんでした。
 2つ目は、専門人材が少数であるため、博士人材の採用難易度の高さというところが大きな課題としてありました。
 それでは、これらに対して何をしてきたかということになりますが、大きく4つの施策をしています。その中でもサイバーエージェント特有の左の2つ、PRの施策と、キャリア支援企画の実行をピックアップしてお話させていただきます。
 PRに関しては、2016年の組織の立ち上げのときから、文化づくりと並行して、当社に培われていく研究力、実際に在籍する研究者の皆さんの活躍の幅について、学生の皆さん、社会、顧客企業に対して、こういった人材がいること自体が我々企業としての強みであるということを知っていただく必要があるので、それぞれに向けて広報の発信を強化してきました。
 例えば、我々のようなテック企業から、論文採択のプレスリリースというものは当時出されていませんでしたが、そういった公式の発信を強化しました。加えて、実証実験の記者会見を実施することでテレビ露出をしたり、研究者の活躍や、研究が社会とどのようにつながり、研究をどのように生かしているかといったインタビュー記事を多く公開したりすることで、広く知っていただく工夫を重ねてきました。
 2つ目の、博士キャリア支援企画に関しては、独自のインターンシップを実施してきたことに加えて、企業研究所カンファレンスを主催しました。
 実際に研究者を抱えている企業に赴いて、一緒にこういったカンファレンスを行いませんかとお話をして、2018年度から実施し、企業で活躍する研究者の発表する場をつくってまいりました。CCSEというカンファレンスです。
 次に、博士人材の独自採用について、もう少し細かく御説明させていただきますと、博士向けリサーチインターンシップを2018年から継続して実施しています。
 1番上に書いてあります博士向けのリサーチインターンシップは後期課程の皆さん向けで、夏休みなどの長期休み、週5日2か月間のフルコミット形になります。こちらには書いておりませんが、給与は月額50万円で出しております。
 こちらに関しては、初めて2018年に出した際、非常に大きな反響がありました。金額に関しては、驚かせたいということではなく、博士課程在学中で当社が一緒に研究をしたいと思える人材の皆さんであれば、このような金額をお渡しすることは適切だと思っていますし、我々企業としても、博士人材の活用をきちんと理解していきたい、理解していくという当社のメッセージも含めて出しております。
 そのほかにも、学振の規制緩和のタイミングなどを考慮して、インターンシップの規制緩和や、長期で働けるタイミングに合わせて協働研究員など、独自のプログラムを提供しております。
 これらを通して期待しているものは、サイバーエージェント自体を知っていただきたいということはもちろんですが、我々のような新しい企業でも研究者が活躍できる場をつくっていきたいということです。大学生ないしは高校生にも、こういった研究者のキャリアを知っていただけるような機会になればうれしいなと実施しております。
 2つ目の、博士人材の採用難易度に関しては、研究者採用に特化したダイレクトリクルーティングチームや、柔軟な雇用形態や組織づくりに対応するAI Lab博士人材の所属しているAI Lab専任の人事、研究や活躍、事業にどのように貢献しているかを広く伝える広報PR、それぞれを特別編成することで解決してきました。活躍できる組織体制づくりと文化づくりが必須ですので、並行して取り組んでおります。
 これは博士採用についてまとめたページです。今までお話しした内容を人材流入別にまとめているページになります。
 重ねてになりますが、専任の人事、広報チームなど特別チーム組織を編成したことで、柔軟な組織制度と研究の環境づくり、また皆さんがどういったことを考えていて、どういう状況であればより会社として働きやすいか、研究力を上げるような活動ができるかといった議論を重ねております。
 加えて、各学会への参加や、大学との連携に対して一つ一つ真摯に取り組んでいくことが大事だと思っております。
 これらに関しては引き続き、当社の研究活動を知っていただくための活動として、地道に行っていきたいと考えております。
 それでは次に、AI Labリサーチマネージャの山口に交代しまして、AI組織の運営課題と対策についてお話しさせていただければと思います。
 山口さん、お願いします。
【山口氏】  スライドはこのままお願いします。マネージャの山口です。
 今、私はこのAI Labという50名規模の研究チームの責任者をしております。2016年から、このAI Labという組織が立ち上がり、私がサイバーエージェントに入社したのは2017年ですので、途中からになりますが、組織づくりに努めてまいりました。当初の頃と今を比べますと、研究者が活躍できる環境・文化がないといった課題が組織内にありましたので、ここをつくっていくことを起点として、組織づくりを始めてまいりました。
 当時のサイバーエージェントは、営業組織、あるいはゲームなどの開発部門は非常に元気があり、それを基に事業成長している状態でしたが、研究といったアカデミアの文化にはあまりなじみがなく、研究への投資にきちんと取り組んだ経験もなかったため、手探りで組織づくりをしております。
 日本の国内の状況を見てみましても、メガベンチャー企業、我々もメガベンチャー企業という枠でよく分類されますが、そういった企業の中で、当時すでにAIがブームになっておりましたので、アメリカの会社は、こぞって研究に投資していた時期でしたが、日本の場合はそういった状況にはなっていませんでした。また、研究に関して、研究費の取扱いや、論文そのものについて、社内で理解している人が多くない状況でしたので、この辺りを何とかしていこうと取組を進めてまいりました。
 スライド次お願いします。幾つも施策は行ってきましたが、大枠で4種類ほどあると思っておりまして、まず、研究体制や制度をきちんとつくっていきました。例えば、先ほど採用の話にもありましたように、採用チーム、専任の人事、広報チームをつくり、研究そのものを外部に周知し、採用周りも専任の人事に一任して動けるようにしていきました。
 また、アカデミアの場合ですと、研究予算が年度単位で、競争的資金の予算申請をして、審査されて獲得する、といった流れになると思いますが、企業経営の場合はお金の流れが変わりますので、極力、心配せず研究費を使えるような仕組みにしていきました。
 さらに、論文が採択されると、それに応じたインセンティブが支給されるような仕組みをつくる、また、普段の研究を行う上での現場の悩みを、細やかな面談により吸い上げていくといったことを進めてまいりました。
 そのほか、アカデミアに所属されている方々の転職も受け入れられるように、制度上、研究費はどのようにするのかといったことをよく聞かれますが、その際も対応できるよう、科研費の引継ぎができる指定機関に認定していただき、きちんと取扱いができる、アカデミアに寄り添った組織づくりを進めているところです。
 大学との共同研究も、先ほどお話ししましたように強力に推進しておりまして、現在、非常に多くの共同研究を進めさせていただいております。
 そのほかにも、例えばカジュアルに論文を読んだり書いたりすることができる社内文化をつくっているといった話が、一番右側になります。
 スライド次お願いします。博士人材がどのように活躍していて、どういった課題があるのかという話をしていきたいと思います。現在、我々は多くの人員が博士号を持っており、代表的な4名を紹介します。こちらは、各領域の研究者です。私はこの山口と書いてあるところでして、組織経営や論文執筆、大学に出向いて講義するといったことを務めております。
 仕事としては、国研に私は所属したことがないですが、大学で教員もしておりましたので、アカデミアの文化を理解した上で組織づくりをしていくというところは、ディレクションしております。
 また、博士号を持っている方は強力な研究の経歴をお持ちですので、実績を出していくという上では非常に、組織としての研究能力を向上するというところで役立っております。
 少し変わっているのが一番右下の森脇という者でして、彼は経済学系の博士を持っており、もともと国家公務員をされていた方で、そのバックグラウンドを生かしてプロジェクトを進め、今は行政向けDXのプロジェクトで活躍しております。
 スライド次お願いします。基本的に研究開発という側面に関しては非常に、博士を持った方は強力な武器になっておりますが、我々企業として、今後取り組まなければならないこととして、研究ポジション以外での博士の活躍に目を向けていくことだと思っています。これはまだ我々もそれほどできていることではなく、博士号を持っている、非常に研究スキルのある方が深くビジネスを理解していくことで、ビジネスを変革させていくことができるのではないかと思っていますが、実際に実行していくとなると、まだまだハードルが高いと思っています。
 では、どのようなキャリアパスがあり得るのか、これは誰も経験がないので、手探りで組織づくりを進めていかなければならないということが一つです。
 また、キャリア支援においても考えています。新卒一括採用を、サイバーエージェントとしても行っておりますが、その枠内に当てはまらない博士の方も多いと、実際に採用をしていて思います。そのため、中途採用扱いとして、新卒の一括キャリア採用の流れに乗らない選考も用意しています。他にも、博士インターンシップを通して知り合った方を採用するといった努力も続けていますが、流入チャネルが違うこともあり、分かりにくくなってしまうかもしれませんので、分かりやすく博士の方向けにメッセージを発信していきたいと思っております。
 次に、我々単独ではなく、世の中に対しての期待や課題のお話になりますが、国際化に関しは、言語の壁が非常にあります。
 留学生、あるいは海外にいる学生さんから、サイバーエージェントでインターンをさせてくれないかというお話をいただくこともありますが、現在サイバーエージェントは国内事業の会社ですので、基本的には日本語です。
 そのため、日本語ができる人でないと働きづらいという実態がありまして、研究チーム内であれば英語でディスカッションも問題ないですが、会社の経営や、スタッフ部門は日本語ですので、こういったギャップを何とかできないかと思っております。
 また、採用に関して、外資企業様は非常に魅力的なオファーを博士の学生さんに出されていて、採用が苦戦するという実態がございまして、これはサイバーエージェントが国内単独の事業を行っている企業であり、海外のように莫大な収益を上げる体制に追いつかなければ、なかなかここを引き上げることは難しいという事情もあり、環境やマーケットを整えて、日本市場が魅力的になっていけばいいなと思っております。
 私からは以上で締めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。サイバーエージェント様から話題提供をいただきました。
 手が挙がっていますので、柳沢委員、どうぞ。
【柳沢委員】  ありがとうございます。私の勉強不足で、サイバーエージェントさんにそういった研究部門があることを今日知りました。非常に勇気づけられるプレゼン、ありがとうございました。
 最後のほうでおっしゃっていたかもしませんが、こういったPhD集団を企業の中でつくっておられて、AI Labがサイバーエージェントさんの中の一つのインターナルベンチャーのように私は印象を受けましたが、ほかの部門にも、活躍の場を広げていく計画はないのでしょうか。ゲームビジネス、メディアビジネス含めてです。
 PhDの方々も、入られてから狭義の研究だけに興味のある人ばかりではないと思うので、その辺りはいかがでしょうか。
【山口氏】  これは私からお答えさせていただきますと、このAI LabはAI事業部と呼ばれている事業体の中でつくった研究組織でして、御質問のとおり、ほかの部門に広げていく取組は少しずつ進めている段階です。
 やはり研究開発を通してダイレクトにリターンが得られるビジネスと、そうではないビジネスがありますので、どういうところで一番効果があるのかを見ながら、少しずつ、ステートオブジアートの技術を使うとこれだけビジネスが変革するという事例が見つかり次第、積極的に取り組みたいと思っております。
【柳沢委員】  山口さんや、先ほどの水本さんもそうだと思いますが、PhDで修行した人だからこそのマネジメント能力も必ずあると思いますので、狭義の研究業務だけではない分野にもぜひ広げていっていただければうれしいです。
【宮浦主査】  山本委員、どうぞ。
【山本委員】  山本です。AI系では人材獲得競争が非常に激しくなっている中で、サイバーエージェントさんが博士人材を引きつけられる一番の理由はどこかを教えてください。
 この分野ですと、給与条件など非常に高いものを示していますので、その中でどういった理由なのか、関心があります。お願いいたします。
【山口氏】  どういった魅力があり、博士の方が競争的な採用環境の中で弊社を選んでくれるのかについて、国内企業水準では確かに待遇面は少し優遇していますが、恐らくそれだけではないと思っていて、よく聞くお話の、「この人と研究したい」といったミクロなつながりが重要なファクターだと思っています。
 また、インターンの学生さんから聞くのは、論文を書きたい学生さんは多く、我々は、論文を書くことに対してインセンティブもきちんと出していますし、どちらかというと推奨していますので、こういった労働環境、研究環境も一つの要因だと思っております。
 田爪さん、何か補足はありますか。
【田爪氏】  1つだけ補足させていただきますと、インターンや入ってくださった方に聞くお話で多いのが、研究ができる体制がある、論文が本当に書ける、ということです。
 加えて、社会実装ができることです。実際に自分が研究したことをプロダクトに乗せて実装し、社会で実データを得て、さらに研究をしていくことができるといったサイクルを実際に回せることが非常に魅力的だというお話は、たくさんお聞きします。
【山本委員】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  川端委員、どうぞ。
【川端委員】  インターンシップは非常に興味があり、非常に高い、50万という数字を提示されていて、まさにジョブ型インターンシップが目指す一つのモデルケースだろうと思っています。その上でお聞きしたいのは、一つの仕事としてまとめられる期間が、そちらで実施されているインターンシップの期間で合っているのかどうかです。
 先程、ひと月ほどとお聞きしましたが、論文にしたいほどの、仕事としてまとめられる期間として、いかがでしょうか。
【田爪氏】  先ほどお伝えしました博士インターンに関しては長期休暇の時など2か月間のフルコミットでの実施、月額で50万円をお出ししています。
 おっしゃられたとおり、2か月で論文にはたどり着けません。しかし、その後も継続的に、雇用形態を柔軟に変えながら、半年、数か月たってようやく論文が完成するところまで一緒に共同研究をしていく形で、最後までお付き合いしている案件が非常に多いです。
【川端委員】  そういう意味で、2か月でまず月額50万という話から始まり、インターン終了後、内容によっては契約を継続して、賃金が払われるということですか。
【田爪氏】  はい、そのとおりです。
【川端委員】  そうですか。ありがとうございました。
【宮浦主査】  村上委員、どうぞ。
【村上委員】  人文社会系の博士卒の方が実際にお仕事をされているか、採用されているかということと、貴社のような先進科学技術をビジネスとする会社において、人文社会科学系の博士が活躍できる場はあるのかということをお伺いしたいと思います。
【山口氏】  こちらは私がお答えします。人文社会科学系の研究に、経済学は入るのかというお話はあるのかと思いますが、経済学を含めるのであれば、我々研究チームの中にも経済学者を集めたチームがございまして、彼らは計量経済学的な知見に基づいてビジネスの意思決定をするというところで、既に活躍しております。
 また、最近ですと、先ほど少しお話ししましたが、行政のDX、デジタル・トランスフォーメーションの部分で、実際に行政組織の中でプロジェクトチームを組み、どういったところを仕組みとして変えていくのかといった仕事のプロジェクトリードで活躍している事例はございます。
 しかし、経済学以外になりますと事例がまだないと思いますが、社会科学系でもマッチするポジションがあれば、積極的に採用したいと考えてはおります。
【宮浦主査】  狩野委員、どうぞ。
【狩野委員】  今日の背景となるテーマの一つに、「「博士人材」とは言い換えるとどのような人でしょうか」というものが、あるように思います。
 これを企業の方にも分かりやすく説明できるようになれば非常に良いのではないかと思います。今日お話を伺っていると、「研究が好きで論文が書きたい人」といった雰囲気がしました。山口さんやほかの皆様が多くの博士人材を集めておられて、何かほかに共通点があるか、あるいは、「あれば良い」共通点があるか、どうでしょうか。お願いします。
【山口氏】  博士人材の共通点は、先ほどの水本さんのまとめられていたスキルセットが非常に近いと思います。やはり一人で仕事を任せて、深掘りがきちんとできるという点は、人材としての特徴だと思いますので、小規模のプロジェクトを任せて、一人で進めてもらうという部分で非常にマッチする傾向はあります。また、文章を書くことも非常に上手な方が多いので、レポーティングは安心して任せることができていると思います。
 これ以上細かい話が出せず、すみません。
【狩野委員】  ありがとうございました。それでは、大学教員もそれを意識していきたいと思います。ありがとうございました。
【田爪氏】  今の話で、私のほうからも一点、私は博士などではなく恐れ多いですが、博士の皆さんには、これまで思いもしなかったことを発案してくれるのではないかという期待を常に感じているので、わくわくしながら皆さんと一緒にお仕事をさせていただいています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。長谷山委員、どうぞ。
【長谷山委員】  AI・マルチメディアデータの研究者の視点で質問させて頂きます。サイバーエージェント社の資料1-3の「学術貢献」に、「2021年論文採択数約50本」の記載があります。権威ある国際カンファレンス、AAAI、NeurlPS、CVPRに採択されていると書かれています。
 これは、主としてジョブ型インターンシップからの発展の成果でしょうか、それとも、共同研究からの発展の成果、もしくはそれ以外の成果なのでしょうか。サイバーエージェント社の皆様の事業形態において、どのようにして生まれた成果なのかお教えください。
 おそらく、私の質問の意図をサイバーエージェント社の皆さんはよくお分かりと思いますが、この国際会議は、業績として大変魅力的なものです。もしこのような成果に繋がる研究が、会社でできるということであれば、博士課程の学生やAI系の若手研究者は、チャレンジしようとするのではないかと思います。どういった形態でこの業績をお出しになっているのか、差し支えない範囲でお教えください。
【山口氏】  これは端的に言いますと、我々の中で既に採用しているリサーチサイエンティスト、博士インターンシップや共同研究といった、何らかの形で弊社に所属している者が著者として入っているものをカウントしていくと、昨年は年間約50となっております。
 全体が50人規模の組織なので、こういったことができるようになってきております。
【長谷山委員】  AAAI、NeurlPS、CVPRのようなトップカンファレンスにどのくらいお出しになっているかは、貴社の非常に大きな魅力と思います。年間約50本程度と理解してよろしいですか。
【山口氏】  はい。
【長谷山委員】  すばらしい成果を出していらっしゃると思います。どうもありがとうございます。
【宮浦主査】  宮田委員、どうぞ。
【宮田主査代理】  博士人材の雇用について、終身雇用を考えていますか。
 貴社の離職率は、業界平均より5%ほど低く10.3%です。私が思うに、イノベーションが非常に早く、賞味期限があるような気がしますが、どのような雇用制度を考えていらっしゃいますか。
【田爪氏】  サイバーエージェントとしては、社長の藤田も、終身雇用ができる会社として成長していきたいと多々申し上げていますので、どの職種に限らず、長く働ける会社をつくっていきたいと思っています。
【宮田主査代理】  それは理想的ですが、そうしますと再トレーニングのプログラムなども考えていますか。すでにバイオテクノロジーの世界では、研究の人たちの賞味期限が出てきてしまっているかもしれません。
【宮浦主査】  宮田委員、終身雇用制度である必要はないのではないでしょうか。
【宮田主査代理】  むしろそれをはっきり言ってほしいと思っています。
【宮浦主査】  終身雇用は考えていないと言っていただいても構わないという御意見かと思います。
【宮田主査代理】  そのとおりです。無理しないほうが良いということです。
【宮浦主査】  その辺り、ニュアンスでも結構ですので、何かコメントを一言いただけますか。
【田爪氏】  終身雇用を求めて我々の企業に応募してくる方もそれほどいないと思いましたが、どうでしょう。私は十七、八年、我が社にいますが、毎年新しいチャレンジが始まっていくので、そこに対して新しいものを考えたり、今持っている自分のスキルをプラスして何かをしようとしている方でないと、確かに難しいと思いますが、楽しんで新しい技術を学びに行かれる方が多いとは思っております。
 すみません、回答になっていないかと思います。
【宮田主査代理】  ありがとうございます。競争は激しいですが、終身雇用もできるということです。
【田爪氏】  まだ20年ほどですので、長く働ける会社をぜひつくっていきたいと思っています。
【宮田主査代理】  ありがとうございました。
【宮浦主査】  今、宮田委員がおっしゃったことは非常に重要で、博士を出て前向きに勝負する方は終身雇用に固執していないかと思いますので、そういった日本の社会も変えていかなければならないと思います。
 司会の不手際で終了時間となってしまい、申し訳ありません。令和4年度予算に関わるコメントを事務局から、資料を一枚出すか、終了するか、どちらがいいでしょうか。
【鈴木人材政策課長補佐】  ありがとうございました。むしろヒアリングのほうが今回のメインコンテンツでございましたので、資料2のほうに令和4年度の予算の関係をまとめております。科学技術・イノベーション人材の育成・確保については令和4年度当初予算及び令和3年度補正予算で抜本的に強化しておりまして、特に本日御議論いただいた博士後期課程学生の処遇向上、研究環境確保、またキャリアパスの整備などを中心に支援を充実していこうと考えておりますので、また引き続きよろしくお願いいたします。
 資料を御覧いただいて委員の皆様からお気づきの点や御質問などありましたら、また事務局にお知らせいただければ、御回答させていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。それでは委員の皆様、各自、資料を御覧いただくということで割愛させていただきます。
 以上となりますが、事務局から何か連絡事項などございますか。
【鈴木人材政策課長補佐】  本日も御議論ありがとうございました。
 次回の委員会の開催日時などにつきましては、調整の上、追って御連絡をさせていただきたいと思います。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、本日御発表いただきましたパネリストの皆様や委員の皆様にお目通しをいただいて、主査に御確認いただいた上で、文部科学省のホームページを通じて公表させていただければと思います。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。5分超過して失礼いたしました。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局 人材政策課 人材政策推進室