人材委員会(第88回) 議事録

1.日時

令和2年2月7日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. ポストドクター等の雇用に関する小委員会の審議状況について
  2. 卓越研究員事業に関する実施状況等を踏まえた改善について
  3. 令和2年度政府予算案について
  4. 「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」について
  5. 「研究大学における教員の雇用状況に関する調査」について
  6. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、勝委員、狩野委員、川端委員、小林委員、柴原委員、高橋(真)委員、塚本委員、藤垣委員、八木委員、柳沢委員、横山委員

文部科学省

菱山科学技術・学術政策局長、梶原大臣官房審議官、真先文部科学戦略官、磯谷科学技術・学術政策研究所長、奥野人材政策課長、小林科学技術・学術政策局企画官、楠目人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第88回)

令和2年2月7日

【宮浦主査】  ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会(第88回)を開催いたします。本日の会議は、冒頭より公開となっていますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、長我部委員、隅田委員、高橋(修)委員、竹山委員の4名が御欠席ですが、13名、委員御出席いただいていますので、定足数を満たしており、開催とさせていただきます。
 それでは、議事に入る前に、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
【満田人材政策課長補佐】  それでは、お手元に配付の資料をごらんください。まず、議事次第、その後、資料1から資料6まで順に配付しています。資料1の後ろに参考資料を1枚付けています。議事進行の過程で不備等ございましたら、事務局の方まで御連絡ください。
 なお、資料につきましては前方のスクリーンの方にも投影していますので、傍聴の皆様におかれましてはスクリーンの方をごらんください。
 以上でございます。
【宮浦主査】  それでは、議事の1に入ります。第87回の人材委員会におきまして設置が承認されましたポストドクター等の雇用に関する小委員会について、1月14日までに2回開催されています。その審議状況を御報告いただきたいと思います。
 それでは、事務局から10分以内程度で御説明をお願いいたします。
【楠目人材政策推進室長】  資料1をご覧ください。
 前回、10月の人材委員会で設置されましたポストドクター等の雇用に関する小委員会の審議状況に関してですが、これまで、11月と1月に2回、会議を開催しているところです。
 議事については記載のとおりですが、現在、ヒアリング等による現状の把握や、基本的な考え方の整理等の御議論を頂いているところです。
 3ページ目をごらんください。直近の小委員会の資料でございますが、ポストドクター等の活躍促進の重要性や、ポストドクター等をめぐる課題、それから、本ガイドラインの策定について目指すべき姿などを御検討いただいているところです。
 4ページ目をご覧ください。ポストドクター等の雇用の状況について、多様な状況でのポストドクターの方がいますので、そちらについてヒアリング等やこれまでのポスドク調査等も踏まえまして、図示を試みたものです。こうした多様なポスドクの方のうち、どの部分に重点を置いてガイドラインを対象としていくか等、引き続き小委員会で御審議を頂く予定です。
 4ページの下方ですが、ポスドク等の雇用に関するガイドラインのイメージについて、章立てのイメージとなります。
 なお、小委員会の設置紙と名簿については、御参考にお配りしていますので、御参照いただければと思います。
 事務局からは以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 小委員会について、ただいまの御説明を頂きまして、10分程度、意見交換を行いたいと思います。御意見、御質問ある方は挙手いただきまして、御発言をお願いします。
 議論の冒頭ではございますが、本小委員会の主査をお願いしている小林委員に御尽力いただきまして、ありがとうございます。いかがでしょうか。
【小林委員】  私の方から若干の追加の御説明をいたします。
 これまで委員の方から、北海道大学、東北大学の取組事例のご発表があり、また、大阪大学、広島大学、早稲田大学の3大学からヒアリングしまして、詳細な点も含めて様々な問題が指摘されています。それについては、個別に方針等を示すことも全大学共通の基準やルールの説明なども必要になるかと思われますので、適宜、反映を検討していくつもりです。
 また、参考資料にポストドクター等の雇用の状況の図がありますが、その右側に説明されている中で、「雇用関係のない者」がやはりかなりいるということで、扱いが難しい部分があります。特に日本学術振興会の特別研究員(PD)などの扱いに難しい部分もありますが、本人の権利や活動の問題と大学としての責任の問題が今後問題になってくるのではないかと思われます。この点についても多分、今後、フォーカスして議論することになるのではないかと思っています。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。ポストドクターの雇用状況を調べ、議論いただいているところでございますけれども、御参加いただいている委員の皆様から何か御意見ございますか。
 川端委員。
【川端委員】  この委員会に参加させていただいて、様々な議論を行ってきましたが、ポストドクターという意味自体が、十数年前のポストドクター等一万人支援計画の頃とは時代が変わっていて、あの頃はたくさんのポストドクターをどう処理するというような議論でしたが、今は、問題点も出ている。要するに任期が短いということが悪ではなくて、それイコール今度は自由に選べるという、ポスドクにしてみれば自分の行きたい進路に進むといったような前向きな動き方があったり、ポスドクの置かれている立ち位置や本人の意識に合った施策が必要なのだと思います。ただ、一番大きい問題は、雇用関係にないと大学側から何の情報も入ってこないということです。大学で活動しているのにも関わらず大学の情報が全く入ってこない孤立状態というのは問題です。それも初めて知った部分もあったりしたので、そういうところも明らかにしながら、ポスドクだけではなく、参考資料にある図に書いているような区分も考えながら施策を作っていかなければならないと思っています。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 はい、どうぞ。
【柳沢委員】  きちんとフォローできてないので教えていただきたいのですけど、先日の内閣府が出した700万円掛ける700人の施策とこれの関係はどういうふうになるのでしょうか。あれも当然、かなりの部分はいわゆるポストドクが対象になるのだと思うのですけど。
【宮浦主査】  その辺り、コメントいただけますか。
【楠目人材政策推進室長】  恐らく「創発的研究支援事業」のことだと思いますが、こちらの事業は、多くの若手について研究費の支援をすることになりますし、また、その研究費を持って色々な機関に行くことができるような制度設計になると聞いていますので、そういった形でポスドクの支援策にもなると思うのですが、基本的には研究費を支援する事業になりますので、ポスドクの研究費の支援のツールの一つにはなると思いますが、こちらのポスドクの雇用のガイドラインの方が、機関向けに、雇用管理の面や育成の面を計画的にやっていただくために必要な事項を整理しようということで進めています。「創発的研究支援事業」とは直接的にリンクをするものではないと思いますが、様々な支援策があることも踏まえながら、ガイドラインの内容を詰めていくことをしていきたいとは考えています。
【柳沢委員】  内閣府の「創発的研究支援事業」は、人件費は含まれないという理解でよろしいですか。ポスドクガイドラインは人件費とか処遇とかをメインに議論しているわけですよね。
【原振興企画課長】  後ろから失礼します。研究振興局振興企画課長の原でございます。
 「創発的研究支援事業」は研究振興局で担当しています。今年の補正予算で500億円付いたということで、700万円の研究費を最長で10年間支援する制度です。完全にカバーできないと思いますが、エフォートに応じて自身を雇用するような人件費も出せるようにしようということは検討しています。ただし、基本的には研究費なので、ポスドクの方も応募していただくことは可能だと思いますけれども、ほかの施策で給料を頂いている方ですとか、あるいは施策自身は創発的な研究を推進することを目的にしてございますので、あくまでも研究費を出すということで、ポスドクからテニュアの研究者になろうとしている方、あるいは既にテニュアを取った若手の研究者の方を専ら制度の対象の念頭には置いています。
【柳沢委員】  ありがとうございます。そうなると、やはりガイドラインも、そういうような施策があるということを少なくとも意識せざるを得ず、何か連携する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
【奥野人材政策課長】  ガイドラインについては、一応、このガイドラインの区分の中の競争的資金等を活用されて雇用される者で、その形態がポストドクターであった場合に関しては、当然そういった形で適用されることが前提となりますが、先ほど担当局から説明があったとおり、この挑戦的な研究費として若手に提供される創発自身が、提供される主体が必ずしも全てポスドクに限るわけではありません。一方で、確かに創発も検討することにはなりますが、類型としての競争的資金を使って雇用されている者という枠内において、競争的資金の中の共通的な取扱い等で対応できる部分も多いかと思いますので、今の御質問に関してお答えするとするならば、この競争的資金を使ってポストドクターの形態で雇用された場合に関しては、こういったガイドライン等が適用され得るというような形で御検討・御議論いただくというのが整合的だと考えています。
【柳沢委員】  ありがとうございます。今の説明に関連して、私は以前、ポスドクにも博士を取ったばかりの人から、もうPIになりかけている人までいると申し上げましたが、この参考資料の図が、少し単純化し過ぎで、例えば競争的資金で雇用されている方々の中にも、ボスに与えられたプロジェクトを粛々とやっている人もいれば、かなり自律的に、ほぼラボの中で半独立のPI扱いでやっているような人もいます。だから、この専従義務の緩和という部分がありますが、現場は非常に多様性があるということは分かっていた方がいいと思いました。研究室の主宰者が獲得してくる競争的資金であっても、ボスの名のもとにポスドク自身が書いているような人もたくさん世の中にはいるので。
【宮浦主査】  ありがとうございます。ポストドクターといっても様々な多様性があるので、ほぼ独立に近い方から卒業して間もない方まで、ガイドラインの作成においてはその辺りもお含みいただいて議論していただければと思います。
 そのほかありますか。
【高橋(真)委員】  参考資料の図について、処遇と自律的な研究活動の4限で区切って、どのくらいのポピュレーションがいるか見えたということが、まずはすごくいいことであり、スタートラインだと思います。
 その上で、議論があるかどうかを伺いますが、とりわけこの分布の丸1と丸2、3、4の中で、自律的な研究活動の度合いは低いけれど、具体的なテーマに従って研究開発ができるポジションにある人たちが、多くの場合は事業費で雇用されるというのが、エフォート100%であったりすると、その後の自分の研究展開のためにエクストラな活動をしたり、別の資金で自由度のある研究をするというのがなかなかできないことも多いと、つい最近までは言われています。そこについて、小さく「専従義務緩和」と矢印があるところがとても大きな救いのように見えるのですけれども、ここら辺についてどのような方向性での御議論があるのでしょうか。
 一方で、国が国プロというものをこれからますます重要な研究開発活動の礎にしようとしたときに、きちんとエフォートが100%でそれに従事していただく者というのは重要だと思いますが、ここら辺の御議論や方向性について何かあれば教えていただきたいと思います。
【宮浦主査】  今の点、御議論、まだまだこれからとは思うのですけれども。
【楠目人材政策推進室長】  ありがとうございます。先ほど、高橋委員が言及された点については、これまで人材委員会やポスドクの小委員会等でも少し御説明等させていただき、御意見等賜っているところですが、次のステップに行くに当たって、多少、期間が少し短いということと、その中で自分の研究とかに割ける時間が限られているということは課題としてありますので、昨年策定した「研究力向上改革2019」等の中でも、一定の要件を設けた上で、専従義務を少し緩和しています。例えば20%とかは関係する自分の研究にも従事できるようにエフォートの管理を少し緩和していく方向で議論を進めている状況がございまして、その状況も踏まえて、こちらの赤い矢印は付けているところです。よって、そうした方向での議論は進んでいる状況です。
 それから、先ほど柳沢委員から頂いたポスドクにも様々な状況があるということ、今回は、あくまでこれまでになかった整理のものをこちらは参考として触れていますけれども、ポスドクの年齢による分布ですとか、かなりもうPIに近い方から博士を出てすぐの方までいろんな人がいて、どういう状況で移動しているかいうことも、小委員会や、人材委員会の資料集にも入れていますが、そうしたことは当然、大前提としてお示ししながら議論を進めているところですので、それに合わせて今回、様々な状況の人がありますので、こういった整理をしましたけれども、そういった図だと御理解いただければと思います。さらに、新しい類型で雇用される人とかが出てくる可能性もあるということもまた視野に入れながら、アドバイスも踏まえて引き続き検討させていただきたいと思います。
 以上です。
【奥野人材政策課長】  後の議題でありますけれども、今回、総合科学技術・イノベーション会議で策定しました研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの中においても、国プロという御指摘ありましたが、競争的資金でプロジェクト実施のために雇用される若手研究者のエフォートの一定割合について、自発的な研究活動等への充当を可能とすることによる若手研究者の研究機会の拡大という方向性も提起されています。当然、文科省のこのガイドラインの議論等もそういった観点で、競争的資金を所管している部局とも連携しながら進めていきます。方向性としては、国の施策に関してはそういった形で進めていくことと決まっているところです。
【高橋(真)委員】  ありがとうございました。大体分かりましたし、方向性は合っているのだと思いますが、現場がアウトプットについてすごくシビアに求められたり、時間軸をしっかり描く必要がある中で、個々のラボやPIにそのマネジメントを全て委託するのは難しいところがあると思うので、例えば、事業が5年あれば、1年目と5年目はエフォートの20%ぐらいをフリーにする等、そのガイドラインが少し具体的に現場に届くような形で制度設計していただければと思います。
 以上です。
【八木委員】  現場から言うと、現実問題として、競争的資金でポスドクを雇用したときに、競争的資金を持っている研究代表者が、ポスドクに自由な研究をさせるというのは、競争的資金自体のアウトプットを下げることになり、競争的資金から見れば目的外利用ともなりかねない。ということは、20%でも30%でも自由な研究ができる財源を別途保障する仕組みを何らかの形で国がサポートできると、研究代表者の理解も得られ、スムーズに進むのではないかと思います。色々な財源があって、人を雇用する財源もありますけれども、今申し上げたような趣旨で国がサポートする仕組みを作ると、競争的資金で雇用された研究者に自由裁量枠を設け、運用しやすくなるのではないかと思います。
 それから、雇用していても、競争的資金には3年、5年と期限があるため、どうしてもそこの枠の中で実施する必要があります。その人自体はすごく優秀なので是非雇用を続けたいと思ったときに、競争的資金はその財源の年度でお金が終わってしまうというのが非常にしんどいです。人件費だけが、例えば単年度1億もらったときに、その1億のうち3,000万は後年度にその人の雇用を継続することができる予算として使途できるというような仕組みができると、プロジェクトはすでに終わっているが、後年1から2年間、その人が引き続き次のプロジェクトに参入できるような仕組みができて、要は長く雇用できると、大型のプロジェクトを持っている人も運用しやすくなると思います。そのような研究代表者が使いやすい仕組みを併せて考えていただけるといいと思います。
【宮浦主査】  小林委員。
【小林委員】  若干説明いたします。専従義務の緩和は、文科省の資金に関してはかなりの程度進んでいるところがあります。例えば科研費への申請ができるなど、現状でもそのようになっていると思うのですが。
【八木委員】  そうはなっているけれども、その分、申請した分のエフォートは誰が払うかといったときに、財源の問題が出てきます。
【小林委員】  ですから、エフォートの一部で専従義務を緩和するので、人件費は元の資金で見るけれども、ただし、自分で研究する分の費用については自分で持ってこいという設計になっていると思うのです。
【八木委員】  ええ。要は、人件費分を結局、競争的資金で払わなければいけないわけですね。
【小林委員】  はい。
【八木委員】  そうすると、例えばそれを2割持っていくと、2割分のアウトプットなくなるわけです。だから、そこを何か国が別途更に支援できる仕組みがあるとよいということを申し上げているのです。それが現場の声です。
【宮浦主査】  宮田委員。
【宮田主査代理】  現場は多分そうですよね。しかし、私は、ポスドクは奴隷ではないということを今回のガイドラインで明示することが一番大切だと思っています。それは皆さんのマインドセットの改革も重要になっていて、つまり、企業でもそうですけど、部局単位で業績を上げることと企業全体で業績を上げることのレベルが違うのですよね。ですから、企業の研究所でも闇研究みたいなものを認めているのは、将来の新しいシーズを創造したり、人材を作る努力を入れようということなのです。今まで、実はポスドクを続け、それでいつの間にか年齢制限で正規のラインに入っていけないという人たちが多かったので、今回のガイドラインの一番重要なところは、ポスドクは次の学術を創るための人材を育むものであって、プロジェクトの専従義務だけの奴隷ではないということを明確にすることだと思っています。現場は苦しみますよ。けれども、この苦しみは日本の未来を創るものだと考えていただいて我慢してもらうしかないですよ。だから、日本の学術がどんどんどんどん先細りして、日本国内の企業だけではなく、ほかの海外からの資金も集められなくなっていいのかという話にもなりうるので、そこのバランスをガイドラインでしっかりとやらないと、理想的なガイドラインを作ったとしても現場が動かない可能性があるので、そこはきちんとやるべきだと、それは賛成です。
 では、このガイドラインを誰が読むのかというところが一番重要で、当然、機関の長、部局の長は読むでしょうが、いわゆる外部資金を獲得し、ポスドクを雇っている人も読む、3層構造をどうやって作るかというのが一番重要かもしれません。
 もう一つ、ガイドラインの表題に「雇用」とありますが、参考資料の図の4象限の右の人たちは対象外ともとれるため、「雇用・受入れ」とし、そこに働いている客員研究員でも、客員ポスドクについても期間を把握する必要があるということを、ガイドラインで明示してほしいと思っています。難しいですが、バランスとりたいと。
【八木委員】  重々理解はしていますが、具体的な施策につながる仕組みまでこのガイドラインから流れていくと一番いいかなと思います。
【宮田主査代理】  はい、そうですね。
【宮浦主査】  狩野委員。
【狩野委員】  ありがとうございます。先ほどの議論に加えて、宮田さんがおっしゃるような将来につなげるとすると、この枠組みに、よりその意味での能力のある人が、たくさん来てほしいわけですね。ポストドクター的な立場を想定しますと、そのために、主語を高校生や大学生などポスドクを経る将来進路を検討している人たちにする場合、どういう内容であれば進路として選択の視野に入れてくれるだろうか、ということも考えておいてよいかと思います。そうすると、その後にどのように職がつながっていくか想像がつくか、という質問になると思います。大学院に進学をすれば、特に理系の場合、修士までなら、その後はまだ職があるかもしれない、というイメージがあるでしょう。しかし、更にその先に行くと厳しくなるというイメージがあるでしょう。ポストドクターになると教員になれなかったらどうなるか、というようなイメージもあるかと思われます。そのようなイメージの中で、どこか改善できることがあるのかどうか、ということが一つあると思います。
 その場合に、「ポストドクター等」の、「等」が微妙な表現ですが、定義の問題が出てきます。教員でも最近、任期付きの人も、年俸制のひとも大勢おられます。社会保障制度もさまざまでしょうか。このあたりの制度面は、余りポストドクターと変わらないといえば変わらないかもしれません。では、何が一番違い得るかというと、先ほどからお話があったような、財源が研究費である場合に、翌年度のことがぎりぎりまで分からないという不安は、こうした財源で雇用されているポストドクターが一番大きいのかと思われます。この点に関して、その後の研究費が続かなかった場合に、翌年度以降の不安定な立場を少し和らげるようなことが何かできれば、多少良くなるかもしれません。
 もう1点、その先にさらに、ポストの継続が不可能だった時、多額な金額をかけずとも、マッチングのためのアプリを作っておくなど、何かポストが切れてしまう人と、これから働いてくれる人が欲しい側をつなぐ仕組みができてくればいいかもしれない、ということを提案してみます。
【宮浦主査】  はい、どうぞ。
【柳沢委員】  八木委員のご意見に関して、現場もいろいろありまして、放任主義的な自由な研究室では、数字上のエフォートと実際に一人一人のポスドクの方々がやっているものがリンクしていないところもあります。そもそも、アカデミアでの研究は本来そういうものだと思います。その意味で宮田主査代理がおっしゃったことは全くそのとおりで、ガイドラインで恐らく一番重要なポイントは、ポスドクは「トレーニングピリオド」であるということです。要するに本人を育てることが第一目的で、プロジェクトの要員としてのポスドクの役割は本来は副次的なものです。それを全てのPI、中心研究者ないしは外部資金を取得する研究者が認識することが極めて大事だと思います。
 八木委員がおっしゃった中で、例えば5年で資金が終了するとき、ソフトランディングできるような、5年を超えて繰り越しできるような制度があれば、それは非常に役に立つと思います。そこの部分は、私、100%賛成です。
 それを踏まえて、労働基準法における年度再雇用を続けた場合の5年縛りについては、今のアカデミアの現状とは全くかけ離れた法律なので、5年以上雇える人が法律のせいで逆に雇えなくなるということが起こるわけです。「ポスドクなんか5年以上やる方が悪い」と言われてしまうと、現実には結構長い間でやって、成長していく人もいるので、その辺りも何か、例えば大学に関しては文科省で統一的なガイドを作っていただくといいと思います。筑波大学はWPIなど部局によって研究員に関しては10年まで延長できるというような特例を設けていますが、恐らく各大学でばらばらでやっています。それこそガイドラインとどうリンクするかは不明ですが、自主判断でやっているような状況で、その辺を何か作っていただけるとうれしいです。
【宮浦主査】  ありがとうございました。幾つか現場の御意見、課題がございます。この小委員会、ガイドライン作成の域を超えている部分もありますが、現場の先生方の御意見、プロジェクト終了後の若手がなかなか難しい部分について、自主財源で何とかつないでいるのが現状で、自主財源5,200人の中にはそのようなタイプの方がかなり含まれていると思われます。過去の国プロ、その後の1年ですとか、いろいろな事情が生じているのと、あとは、PIがやはりプロジェクトの評価を受けることに注目しており、ポスドクを育てるという視点がまだまだ足りないのではないかという御意見も出ています。財源が切れたとき、5年といっても年度単位の雇用であったりすると、御本人は、正月超えないと、翌年度の雇用が成立するかどうか分からないというような、そういう不安定な状況が多々発生しているということ、様々御意見ございました。研究者の場合は、年限縛りというのは非常に問題になりますし、また、エフォート管理も、9時-5時で仕事している研究者はほとんどいないと思いますので、そういうことも包括して考えていかなくてはいけないということと、あとは、20%ですとか企業でやられているような自由時間というようなのは必ず発想の転換に必要だと。幾つか課題が出てまいりました。その全てを小委員会の方でお願いするのは範囲を超えているかなと思います。ガイドライン作成においてその辺りを十分加味していただいて御議論いただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題がございますので、進めさせていただきます。次の案件は、議題2に進ませていただきます。議題2としては、卓越研究員事業でございます。
 現在、実施状況を踏まえて改善も進んでいるところですが、その状況、今後の改善に向けた検討、方向性などについて事務局より御報告いただきまして、御議論をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【満田人材政策課長補佐】  それでは、資料2をご覧ください。
 卓越研究員事業につきまして、実施状況等を踏まえ、現在、改善について検討を進めていますので、御紹介をさせていただき、委員の皆様の御意見を頂戴できればと考えています。
 1ページ目をご覧ください。
 まず事業の目的ですが、卓越研究員事業については、優れた若手研究者が産学官の研究機関において安定かつ自立した研究環境で研究に専念できるように、研究者及び研究機関に支援を行うという事業です。
 具体的な事業スキームとしては、大学や研究開発法人、民間企業といった研究機関の方から、任期のないポスト又はテニュアトラック制のポストを提示いただきます。その後、公募審査により卓越研究員の候補者となる若手研究者を選びます。その研究機関と決まった候補者との当事者間で交渉をし、マッチング、すなわち採用に至れば、卓越研究員として決定をし、一定の研究費や研究環境整備費を支援するという事業です。
 令和元年度からは、ブリッジプロモーターという、いわゆる職業紹介事業者によって研究機関と候補者をつなぐマッチング支援を行っているという状況です。
 2ページ目をご覧ください。
 現在の卓越研究員事業の状況ですが、本事業は平成28年度から実施しており、今年度で4年目になります。本事業の申請者の数については、近年は若干増加をしており、また、海外機関からの申請者数も増加をしている状況です。また、平成28年度以降、合計で262名という一定の若手研究者が新たにポストを得ている状況です。
 一方で、研究機関からの提示ポスト数でございますが、そちらは減少傾向にあります。平成28年度は317ポストありましたが、令和元年度は130ポストに減少しています。また、民間企業からの提示ポスト数についても、96ポストから17ポストと減少している状況です。卓越研究員としての採用決定者数についても減少傾向にあり、特に民間企業への採用は、平成28年度以降、合計12人にとどまっている状況です。
 3ページをご覧ください。このような状況を踏まえ、卓越研究員事業の制度について改善を行っていますので、御紹介いたします。
 まず、令和元年度の公募における改善状況ですが、1つ目としては、マッチングの数を増加させるという観点から、当事者間交渉を支援するブリッジプロモーターを試行的に導入しています。ブリッジプロモーターは、候補者に対するキャリア相談として、面談や書類の添削、またポストの紹介などを実施しています。また、ポストを提示いただいた機関に対してもヒアリングを行い、どういった人材を求めているのかとかを確認したり、また人材、研究者を推薦することを業務として行っています。
 また、産学連携活動経費による支援では、企業のポストに決定した卓越研究員が、大学などとの共同研究又は受託研究に参画する場合には、産学連携活動費を支援するという枠組みも選ぶことができるように改善をしています。
 続いて、下の方の令和2年度の公募での主な改善事項ですが、当事者間交渉支援の強化ということで、ブリッジプロモーターを令和2年度に2機関導入することとしています。申請者の方々、例えば数物系、工学系や生物系の分野に申請者の方々がかなり多いという状況もありますので、そういった分野に強みのある事業者の力を借りたいと考えています。
 また、ポスト提示期間の柔軟化ですが、今までは、ポストを提示する期間の締切りというものが6月下旬までで、そこまでに出さないとこの事業の枠組みに乗れないという状況でありましたが、締切りの期間を12月の中旬まで延ばすということをしています。
 続きまして、3つ目の候補者資格の継続という部分でございますが、令和元年度、卓越研究員の候補者として決定した方で当事者間交渉が完了しなかった候補者、要は採用に至らなかった候補者については、その候補者としての資格を令和3年度まで継続します。
 また、選考方法の改善ということで、企業への就職を希望する支援研究者の方々のそれを明確化するという観点で、申請書の中で企業の志望というものを明確に選ばせる工夫を実施する予定です。
 4ページをご覧ください。
 先程御説明いたしました制度改善を実施しつつ、実際、研究機関や候補者の方々などに対してアンケートを実施しています。その結果なども踏まえ、今後、令和3年度以降についても更なる改善をしていきたいと考えています。
 まず、企業からのポスト提示が減少しています。考えられる要因としましては、博士人材を求める機関、これはベンチャー企業なども含まれていますが、こういった機関に対して本事業の情報が届きにくいという状況があります。また、企業における卓越研究員の採用実績というものが近年少ないという状況であり、企業からはポストを提示いただいているにもかかわらず、採用にまで至っていないという現状があるということ。また、企業が望む研究分野にマッチする候補者が少し不足しているのではないかということ。企業との当事者間交渉を希望するような候補者というものが少し不足しているのではないかということ。こちらは、研究機関の方々へのアンケート調査からこういった意見が出ているという状況です。
 これを踏まえて、「改善に向けた方向性」としては、令和2年度の改善事項は、先ほど御説明しました当事者間交渉支援の強化ということと、あとポスト提示期間を少し柔軟化するということに加え、JREC-IN Portal上の企業ポストの活用をしたらどうかということです。JREC-IN PortalはJSTが運用する各研究機関などの求人公募情報をまとめたポータルサイトで、こちらに掲載されている企業のポストについても活用いたしまして提示ポスト数の拡大に努めていくことを考えています。
 続きまして、企業と候補者とのマッチング数が減少していることについては、考えられる要因としては、候補者の方々が企業でのキャリア形成を視野に入れていないということ。また、企業における研究環境等に関する情報が少し不足をしているということ。これらにつきましても候補者の方々へのアンケート結果から得られている状況で情報です。また、民間企業への採用実績が少ないことから、企業や候補者ともに採用後のイメージが描きにくいということが考えられます。
 これを受けまして令和2年度の改善事項の当事者間交渉支援の強化や、候補者資格の継続ということに加え、インターンシップを経由して採用する枠組みの新設を考えています。以前、文科省で取り組んだポストドクター・キャリア開発事業では、ポストドクターを対象としたインターンシップも実施していましたが、その修了者については66%が民間企業に就職をしているというデータもありますので、インターンシップの活用は、民間企業への採用という観点では一定の効果があるのではないかと考えています。また、一定水準の若手研究者についてもインターンシップを経由して採用する枠組みを新設したらどうかということも考えています。このような取組を行うことで、企業で活躍する博士人材のロールモデルを作っていきたいと考えています。
 5ページをご覧ください。こちらは、先ほど上の方で説明をさせていただきました改善案丸1の具体的なイメージを図示したものです。赤い枠や赤線で書いた部分が改善案でして、それ以外の部分については現行の制度を表しているものです。左下のところですが、企業からのポスト提示という仕組みだけでなく、JREC-IN Portal上の企業ポストについても、卓越研究員候補者が自身で応募し、マッチングすれば卓越研究員として採用・選定するという仕組みの導入を検討しています。
 6ページ目です。改善案の丸2と丸3です。同じく赤字で図示しているところが新たな改善案の部分です。まず、改善の丸2は、企業に新たにインターンシップポストというものを御用意して、インターンシップを経由して最終的に採用に至れば、卓越研究員として選定するものです。改善案の丸3は、一定の若手研究者、例えば特別研究員の経験者などを挙げていますが、企業の研究職への就職を希望する場合には、インターンシップを経由して卓越研究員と選定するというものです。インターンシップの受入れ時には何らかのインセンティブの検討が必要といったことも考えています。
 これらの案につきましてはあくまでも検討中のものですので、今後の改善に向けて御意見を頂戴できれば幸いです。
 説明は以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。卓越研究員事業の進め方の改善策の案について御説明を頂きました。
 ポイントは、提示ポストが減ってきていると。特に民間企業からの提示ポスト、初年度96件とかが17件と非常に減ってきていると。一方、申請者数は顕著に増えて、むしろ増えていると。494から559と増えている。海外からの申請も増えているということで、ポストの御提示が非常に減っているために、特に令和元年度は民間への決定がゼロになっていると。全体でも48件ということで、何とか提示ポスト数をやはり増やしていきたいという部分がございます。
 個別に気になる点あるいは全体的な御意見等、いかがでしょうか。はい、狩野委員。
【狩野委員】  この制度に自分が関係すると感じられる人の数を増やさないと、どうしても広がらないのではないか、と思います。一例を挙げると、私、前の職場で医学部の研究に関わる人数を増やすため、教育プログラムの立ち上げに携わりましたが、その際の例です。100人に1人ぐらいの割合でしか学生が行かないような状況だとなかなか人が続かなかったところを、そのプログラムに関係する学生数を10人に1人ぐらいにすると、人の流れが続くようになったという経験です。いまだにその制度は続いて10年ほどたっていますが、学生数は続いている状況です。ということで、無論お金はそう簡単に出てきませんが、どのようにしてか、この制度に関係すると思える人を増やす方策が要るという気がします。
 一案としては、インターンシップに紹介するルートだけは確保しておき、その中で何かの優秀性のある方にはお金を出す方法もあるかもしれません。いずれにせよ、何かとにかく関わる人の数が増えないといけないかと思います。
 他方で、企業等でのインターンシップの実施自体は、修士課程ぐらいまででやる気のある人はすでにやっているはずかと思います。こうしたインターンシップと何が違うのか、差別化として考えが要るのではと思います。その際に、企業経験のある方に伺いたいとすれば、一体この専門性というのはどういう魅力を持つのか、ということをもう一回明らかにするのも、よろしかろうかという気がします。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 はい、どうぞ。
【横山委員】  今期から関わらせていただいて資料等拝見しているのですが、幾つか分からないことがまだありますので、お教えいただければと思います。
 まず、エフォートが50%すごく低く設定されていますが、ほかの資料で拝見すると、エフォートが60%で雇用されている方たちがいらっしゃるわけですね。驚いたのは、そういううちの何人かは、卓越研究員として採用されてから3年ほどたった方が1本も論文出してない、1回も学会発表していないという方がいらっしゃいます。一番たくさんやりたいことをやれて、自分の発想で伸び伸びと活躍して、分野にもよりますけれども、一番業績を出す時期において、3年間、一度も発表しない、一度も論文出せないという卓越研究員の方が結構いらっしゃる。やっぱり制度的に何かおかしいのではないかと思います。
 もちろん、エフォートのせいだけではないと思うし、御本人の御事情もあると思いますが、この制度設計が機能していない大きな原因がどこかにあるのではないかとお見受けします。ポスト数が減ってきているというのは非常に残念なことですが、もし成功事例が増えていれば、やりたいという人たちがもっと増えるはずですよね。うまくいっていない原因を、例えば分野別や、あるいはどういう分野の人だったらうまくいって、例えば数物の理論系なんかどこ行ったって自由にできますので、割と自由にできると思いますけれども、その研究分野で実験的な装置などが、分野が変わると大きく業績が減ってしまう方がいらっしゃるのかなど、分析をもう少しお伺いできると大変助かるかなという印象を持っています。
 以上です。
【宮浦主査】  研究領域ですとか専門性ということが生きているかという議論だと思いますが、マッチングシステムが動いていますので、基本的には、相当マッチングが掛かった上で、両者合意の上に成立しているというシステムになっていると理解しています。その上で、全く業績の見えないというか、3年間、何しているかよく分からない卓越研究員がいるという部分は、分野のマッチングがうまくいかなかった可能性ですとか、あるいは研究者の方が、任期がある間は着実に業績を形に見える形で出していかないと次につながらないので、そういう形でやってきたけれども、卓越研究員に採択されてからはもう一発勝負に、出すんだったら『ネイチャー』といった一発勝負に本気で狙っていて、二、三年は業績が出なくてもいいと、いうスタンスになったのか、幾つかの要因は考えられると思いますが、そのマッチングに関しては非常に重要なところで、マッチングのためのブリッジプロモーターを強化するという方向ですけど、それでどれぐらいうまくいくかなという部分と、あと、先ほども話題になったインターンシップを今更やるのかという御意見、専門性を磨いている段階でそれをより強化するという意味と、民間企業との出会う機会という意味ではいいと思うのですけど、少し趣旨に外れてないかという御意見もありましたが、その辺り、いかがでしょうか。
 はい、勝委員。
【勝委員】  先ほど、この制度がうまくいっていないのではないかという御意見がありました。確かに資料の2ページの表をみると、提示ポスト数も減少しているし、申請者は辛うじて500をキープしていますが、候補者数あるいは採用決定者数を見ても非常に減少しており、やはり、提示をする機関側と、それから研究者側のこの事業に対しての見方、目的が共有されていないのではないかというのが感想です。懸念されるのは、企業のみならず研究機関自体の提示ポスト数も減ってきているところです。大学自体も任期なしのポストを用意することはそれなりに財政面で非常に厳しいところもありますし、なおかつ、やはりこれは最終的な目標としては人材のマッチングになるわけで、そうすると、その申請者数をあるセレクションで半分に候補者数を減らしたとしても、それから実際に採用される数というのは更に少ないと。そうすると、採用されない候補者数というのが累計的に増えていくということで、それらをどうしていくのかというような問題も出てきます。この制度の持続性ということを考えた場合、毎年15億円、20億円の予算を入れていくということが本当に妥当なのかということも考えていくべきと思います。
 企業と大学とのマッチング、あるいは人事交流については、卓越大学院制度等で、実際にフェース・トゥ・フェースで同じ分野の研究者が企業と大学で顔を見せ合いながら研究、あるいは教育をしていくというもので、このような形のほうがもしかすると合理的なのかもしれないし、この事業自体の成果をここできっちりとデータ等で解析するということがまずは重要なのではないかと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  塚本委員。
【塚本委員】  ありがとうございます。
 JREC-IN Portalに関して、3点コメントをさせていただきます。以前ご説明をうかがってから、どのようなものがあるのかとアップデートメールがくるように設定をして、毎日見ています。自分の興味のある分野についてののみくるように設定しているため、最初に企業からの求人がくるように設定していなので、届かず、企業からの求人も掲載されていることに気づいていませんでした。恐らくほかの利用者のかたも同様なのではないかと思います。従いまして企業からの魅力的なポストの提示があったときには、日々送られる更新メールに一律に加えるようにするなどそもそも企業に関心のなかった定期購読者から関心を持ってもらうきっかけとしての一つの広報活動になるかもしれません。また、すでに対応なさっているかと思いますが、企業によっては、外向けの研究所用の求人用のサイトなどもあるので、そこからリンクをはっておくなどの対応も可能とすると、企業側にも負担とならず掲載がより増えるのではないかと思います。
 2点目ですが、ブリッジプロモーターを2つに増やすというのは、彼らのが効果的であったからではないかと想像しています。おそらく彼らはキャリアコンサル的な役割もするかと思いますので、提示ポスト全体を見て、企業と研究機関からの求人数を把握し、候補者の適性を見つつマッチング率を増やすように、ある種ナビゲートをしていくなども有効なのではないかと考えます。また、米国等では官公庁の契約でも使われていますが、契約の形態を、単純に請負ではなく、一定の金額プラス成果報酬のような形にして、マッチング数の目標値を超えた場合にはインセンティブを支払うような契約にするとより彼らの専門性が生かされてさらに結果が出るのではないかと思います。
 最後ですが、まだ未実施であれば、卓越研究員となった262人のかたが、今どのようにしておられるかなど、体験談が簡単にHPなどで閲覧できるとPRになるのではないかと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。キャリアコンサルを入れた効果を最大化するという部分だと思います。
 はい、川端委員。
【川端委員】  卓越研究員制度は、先ほども出たJSTの若手支援という、創発とどういう整理になっていくのでしょうか。特にこれはシステム改革のはずですよね。ただ単に若手を支援するのではなく、これによってどんなシステムを作るかという話が出発点だったと思っていて、そのときに1つあったのは、大学・企業を超えた研究者の流動という話と、それからもう一つは、若手側から見たら、どうも人事がクローズで、内々でやっているのではないかという話があり、それをできる限りオープンにすることを大学側も示す必要があるから参画するという動きから始まったと思います。
 もう1つは、企業自体の流動性を考えるに当たり、卓越した人間を企業に送り込んだら、企業にもどんどん広がっていくだろうということから出発し、最初の頃、なかなかうまくポスドクが企業に行かず、それは審査体制が悪いという話になりました。平成28年で民間に就職したのは87名のうちの5名。「審査体制が大学側でやるから駄目なのだ」と言って、民間の人を入れるなど、いろんな工夫をしたが、3人になり、4人になり、ゼロになった。何か、一体どこに行ったのだ、これはとか思っている状態で今に至っています。
 そこで、1点お聞きしたいのが、この制度を使わず、民間がポスドクをどれくらい採用したかという数字があると、要するに、このシステムはそれをプロモーションしようとしたシステムであって、これを通した人間以外でもいいから膨らんでいってくれていれば、これはこれで意味を持っている。そういう意味で、民間側がポスドクなり大学の若手の研究者を採用した数の推移があり、それが増えていれば、それなりにこの事業は意味をなしながら前へ進んでいるといえると思います。
 最後は、採用人数が50人だと、そんなに申請しないですよね。手間掛かるし、それなりにいろんなことをしなければならないのに、そんなに採用されない。そういう意味からいうと、お金をばんばん積むよりはポスト数を増やした方がいいのではと思います。採用人数を絞らずに、それよりは、渡すお金自体はそんなたくさん出なくてもいいから、ポスト数をどんどん増やしていって、比較的こういうような考え方のある人を流動させるように動いたらどうかなと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 はい、どうぞ。
【八木委員】  僕は企業にもいたので、両方の観点から捉えたときに、何で研究者が企業に入るかというと、自分のキャリアがどうなっていくか、何ができるのかがある程度明確になれば、企業に就職してもいいと思い出します。特にこの場合だと、博士課程を卒業した研究者ですから、この最初のところに書いてあった、候補者が企業でのキャリア形成を視野に入れていないというのがもしも原因だとすれば、企業に行っても自分の描いていた夢に近いことができるのではないかという期待感が生まれると、そこに行こうかという気も起きると思うのですね。それがインターンシップという手段でできるならいいと思いますが、多くのインターシップって単なる企業経験でしかないです。それが自分のキャリアとしてそこで更に上の、いわゆる卓越した人を就職させるという意味を加えたものがインセンティブとして入ると、機能するのかなと思います。企業も優秀な人はもう一気に課長に昇進するとか、あると思います。
【宮浦主査】  なかなかそのようなインセンティブが働いていないという御意見と、あと非常に重要なのは、若手研究者が企業にこの制度で行った場合にどういうキャリア形成になるか御本人がイメージしにくいということが発生していて、アカデミアに残っている方は大体アカデミアの雰囲気は分かって、企業に入ってから自分はどうなるのか見えていない、見えにくいという部分があるということは、おっしゃるとおりだと思います。
 また、ポストを出していただける企業も、初年度96出していただいたのが現状17になっていると。ポストを出そうか考えている企業さんにとってもちょっとメリット感がないのかなということですかね。
【八木委員】  だから、本当はヘッドハンティングみたいな形になると一番理想形だと思います。そうしようと思うと、そういうことがデシジョンできる人がインターンシップのできた人を評価するということを何らかできると、そのインターンシップの価値が上がります。
【宮浦主査】  インターンシップの件、おっしゃるとおり、一口でインターンシップと言っても、修士の学生が行くインターンシップと全く……。
【八木委員】  違いますね。
【宮浦主査】  質的に違うと思いますので、お互いを知って、例えば、研究機関に行ったらどういうキャリアなのか、A社に行ったらどういうキャリアなのかということを研究者もよく理解できて、お互いに議論できるような場がインターンシップとしては重要なのかなと。半年行くとか1週間行くとか、そういう単なる経験というものではないと思います。
【八木委員】  ではないと思います。
【宮田主査代理】  ポスドク・キャリア開発事業をやって、インターシップをやって、かなり成果を上げて就職率が上がったという記憶ですが、それがこの制度の中にどう遺伝していったかというのを考えると、何か明確さが欠けてしまったのですよね。昔は、ポスドクを、あるいは後期博士課程の人を企業にやるというために制度が最適化されていたのですけど、今回は流動化というかなり難しい課題にチャレンジしているのですよ。ドクターの方の研究費持ちで行くかもしれないけど、自分にそれだけ研究の自由が本当に与えられるのかって、研究費がなくなったら次どうなるか分からないですよね。それから、ここで何回も言っていますけど、結局、企業と大学の待遇格差がかなり広がってしまったために、その溝を乗り越えるというのがなかなか難しい現状で、無理やり顎足付きで人を派遣してやるという制度が受けなかったというのが結論なんじゃないかなと思っています。ですから、先ほど横山委員もおっしゃいましたが、アカデミアとしても中途半端だし、企業に送り込むという意味でも中途半端だった原因を明確にしないと、これ、小手先でやってやると、増改築した旅館のようになり、使いづらくなるのではと懸念をしているので、むしろ、もうちょっと原因を鮮明にした方がいいと思います。多分、今の段階で原因を推定し、それに基づいて最良の手をここで提示していると思っていますが、多分皆さんが感じているのは、原因の推定が間違っているのではないかということだと思います。明らかにこの数字が表していると思っていますけど。
【宮浦主査】  横山委員、どうぞ。
【横山委員】  似た印象を持っていて、原因を更にはっきりと推定していただくといいと思うのですが、やはり民間にもっと若いいい人材がたくさん行くというのは、みんなの希望だと思います。そこへの道筋のつけ方として、最近、スモール・ビジネス・リサーチ・イノベーション(SBI)について、いろいろと議論されていますね。基礎系の若い優秀な人にお金をどんと付けて自由にさせると、すごいイノベーションが出てくるということですね。このSBI的な発想を卓越研究員事業の方に移植して、本来の意味での若手がいい成果を出す設計になっていくといいと思います。増改築にならないように本当は何をやりたかったのかというのと、それが響く形で設計されているのか根本的に見ていくのがよいという印象を持ちました。
 以上です。
【宮浦主査】  そのほか御意見ございますか。はい、どうぞ。
【高橋(真)委員】  補足のコメントです。これ、個々人のこの人たちがどのくらいという話ではなくて、新しい人のパスを作るシステム改革だと思いますので、そういう意味では、仮にこの申請者数とか卓越研究員の数が例えば48人が53人になったら、多いのか、成功なのかって、そういう話ではないですよね。例えばこの申請者数が令和元年559人、これが1年間に生み出されるドクター新規入学者数、たしか日本は今、1万2、3千人だとして、その約5%に当たります。その5%をどのように新しい人たちの流れを作るかというところをトラックしないと、絶対数の話ではないと思っています。日本のこの15年ぐらいで新しい職種や新しい人の流れを作るときに、どうしても最初の成功の数値的なものというのが議論されずに、まだできることはあるよねというところだけにフォーカスすると、制度の増築になってしまいます。もし私たちがこれからこれでできることとすると、平成28年から4年間でも申請者数は2,000人ぐらいいるので、これのどこがどうだったのかというところをトラックするというのはとても大切なのかと思います。
 より具体的なお話としては私の土地感のある範囲でいうと、この15年間、産学連携の推進支援者は日本にとって重要だねって言われているけれども、なかなかしっかりと定着しないという感触もある。全体像のトラックの有効な例としては、例えばデンマークでは、2、3千人という母集団に対し、属性、どこにどのように就職しているか、職位と年俸ぐらいのデータから、全体的なビヘービアが見えてきます。それによってある程度、デンマークだけど、300人程度と多くはないものの、新しい職種が定着しつつあるというマクロなトレンドが見えてくるわけです。1年間に日本が創出するドクターの5%ぐらいの人たちがこういう新しい動きをし始めたということであれば、絶対数の多寡とは別の観点から事業の成功を見ることも可能だと思います。せっかくですので、そういうサイエンティフィックな分析ができればいいと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 川端委員、どうぞ。
【川端委員】  1点だけ。これ、若手研究者自体が、平成28、29、30年とかで、ずっと人件費削減などで、大学の中のポストをどう整理するかにかなり時間が使われていて、その期間ってかなり若手の採用を抑えられて中堅どころの採用に回っていたという、それがようやく平成30年、令和元年辺りから、若手比率3割をもっと真剣に考える動きがこれからくると思います。そのときに活用しやすいシステム、今まで、ないポストの中で、これに合わせられるものはどれかと探しながら申請していた部分がありますが、この次、今度は拡大のフェーズが来ると思うので、それを捉えるようなものも考えていただければと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 幾つか、相当御意見を頂きましたので、非常に重要なのは、先ほども話題になりました、2,000人の方がどうなったかというのは、可能であれば情報をとってみるというのは、制度を4年実施した時点での更にどういう改善点を検討しやすいのではないかということと、あとは、御指摘いただいた中で、母集団の解析を少しした方がいいかと。卒業してすぐのリーディングや、ああいうところは非常にどこに行ったかをトレースしやすいですね。新卒ですので民間に相当行っています。ただ、ポスドクの場合は任期とともに動いてしまうので、トレースしにくいですが、先ほどの小委員会でもポスドクが数千人、1万人近くいるという数字も出ていますので、その中から年間どれぐらい企業に動いているかというデータも1回見てみて、その中でこの卓越を使えたのは2%なのか、8%なのか辺りも判断材料になるのではないかと思います。それがもし1%であれば、これをやってどうなのだという話になりますし、トップの層の数%はこれを使って動いているのであれば、やるべきだという議論になると思いますので、その辺りの解析が少し必要ではないかという議論になりましたが、室長、何かコメントございますか。
【楠目人材政策推進室長】 幾つか補足で御説明いたします。
 去年までもいろいろ御議論もいただいてきた中で、一番多かった意見として、候補者側で分野が合うものが少ないということがありました。大学側からも合う人が少ないということがあり、それぞれ、特に候補者の側は自分の専門をかなり狭く捉えて申請に躊躇するところとかがありますので、そこはブリッジプロモーターという職業紹介事業者を間に入れることで情報がちゃんと流通するようにする改善を今年度行っています。今年度、結果として、民間は現時点でゼロとなっていますが、ブリッジプロモーターが入ることでいろいろとヒアリングをしたり、相談を受けたり、あるいは民間のポストを積極的に広報いただいたりする中で、これまでは民間は受けていなかった、予定のなかったような候補者が民間を受けているような例も明らかに出てきています。ただ、採用につながっていないというのはあります。
 一方で、職業紹介事業者、ブリッジプロモーターから改善点について、聴取しましたが、提示ポスト数によって大体このマッチングの割合が一定になっているところがあり、そこを増やしていくことが一つ大きな課題であると思われ、そこを強化するために、今回、改善案を御提案させていただきました。以前は各大学等にポスト提示して頂いていた中で、今年、提示してもらえないところ等にヒアリング等も行いましたが、実際、大学も忙しいとか、ポスト提示は厳しいとかということに加えて、人事異動により情報が引き継がれていないということもありましたので、趣旨の方を徹底していくということと、あとは、ポストを出す期間が10月までですと翌年度の4月からの採用のポストを出せないため、そこを柔軟化して、遅くまでポストを提示できるようにしてほしいということで、来年度からはそこの部分も改善することで、提示ポストを増やしていこうと思っています。
 また、私学のポスト提示が非常に少ない状況でしたので、そこは私大の団体等にも周知をすることで、今年度の公募説明会にも多く参加していただいています。
 川端委員から御発言のあった、民間に就職する研究者の割合の点ですが、ポスドク調査を今年度実施しており、最新の状況がでるのはもう少し先のため、3年前、6年前の比較になりますが、ポスドクから大学教員になった者は、6年前は1,103人で、大学教員以外の研究職員などが446人でしたが、3年前の時点では、大学教員になった者が1,549人で、大学教員以外の研究開発職は576人ということで、大学以外に行く研究者も増えてきています。そういった約2,000人の中の一定数を、この卓越研究員事業でそういうモデルを作っていくことでシステムを改革していこうというのがこちらの主眼ですので、それは引き続き続けていく必要がある事業だと思っているところです。
 あと、改善案に関して塚本委員から御発言のあったJREC-INのポストを利用するときに、JREC-INに載っているものを候補者が自分でとってきた場合に、安定性やエフォートなどが確保されていることが確認できれば、それを認めようということもできないかと考えており、御負担はもちろん、できるだけ最小限の形で御協力いただけるようにしたいと思います。
 また、ブリッジプロモーターから今年度もいただいているアドバイスについて、今また引き続き行っていきたいと思います。
 あとは、ブリッジプロモーターを2つにする件については、事業者によって得意分野があり、分野によってマッチング率が高いところ、厳しいところがありますので、そういったところを見ながら来年度は2つで支援をしていきたいと考えているところです。
 採用された後の状況とですが、一般的に、大学であれば、卓越研究員で採用された人は、助教とか准教授になる場合が多いと思うのですが、どうしても、ポスドク時代には研究に100%エフォートが割けますが、助教や准教授で採用されると、当然、教育や、大学の用務なども入ります。50%以上は研究でエフォートを確保してほしいと申し上げているところでありまして、その中で研究活動をしていただいているというような状況もあります。
 また頂いた御意見も踏まえて改善等を検討していきたいと思います。
【宮浦主査】  はい、課長、どうぞ。
【奥野人材政策課長】  政策の仮説、その他ありました。創発との違いもありましたが、端的に申し上げれば、卓越研究員事業は、基本的に流動的なポスドク等に関して安定的なポストを提示・確保させるマッチングというのが政策手法になっています。その上で、この実績等の仮説・分析に関しては、マッチングがどれだけ機能するかという観点に関して、技術的な当座の対応として、提示ポスト数が減るとマッチングの確率が減るため、まずはそこを対応したいという観点。もう1点は、企業等が減っている際に、そもそも申請者の母集団側の指向性の問題等があって、特に企業についてそこがうまくいってないという点で、企業に関しては、若干この卓越で行く申請者の母集団をより企業に適合する母集団が構成できるような形で拡大することで対応したいというのが、マッチングという観点に着目した点です。創発は、安定的なポストの提示よりも、むしろ研究環境や研究の方に着目していますが、こちらは安定ポストへのマッチングという観点で政策を図っていきます。
 また、安定的なポストへのマッチングという観点から、ポスドクから研究者に変わったという点で、研究エフォートの減少に関しては、それは一定程度見込む必要がありますが、今申し上げたように、50%という助教等の職位においては、より恵まれた研究環境を提示するような形でその目的も達成していきたいと思いますので、やはりまずはマッチング事業としての有効に機能する提示ポストと候補者数の母集団、さらには候補者の指向性に合わせた候補者のポートフォリオを適正化していくという仮説でもって臨んでいきたいと考えているところです。
【宮浦主査】  それでは、この辺りで、趣旨としては、今御指摘いただいたように目的はマッチングであるということで、他にアイデアが浮かびましたら、事務局の方に御連絡いただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、議題3に入ります。令和2年度政府予算案について事務局より御説明をお願いいたします。
【満田人材政策課長補佐】  資料3をごらんください。前回の人材委員会において概算要求の説明をさせていただいていますので、端的に説明させていただきます。
 まず、1ページ目をごらんください。人材の育成・確保の全体の予算は241億円です。今年度の予算と比較して、約5億6,000万の減額となっています。個別の事業を見ると、卓越研究員事業が1.8億円の減額、あと、資料上に掲載されていませんが、科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業等、補助事業期間が終了した事業については、諸々の減額があり、全体として少し減っています。個別の事業については、世界で活躍できる研究者戦略育成事業や、次世代アントレプレナー育成事業などが増額になっています。
 2ページ目については、先ほど卓越研究員の御説明をいたしましたので、詳細は省かせていただきますが、昨年度は72名分に支援する費用を計上していましたが、今年度は55名分の予算を計上している関係で若干減額となっています。一方で、新しい取組としてブリッジプロモーターを2機関に増やす予算も計上しています。
 3ページ目でございます。世界で活躍できる研究者戦略育成事業では、我が国の研究者の生産性向上を目的とし、世界トップクラスの研究者育成に向けたプログラムを開発し、組織的に研究者を育成するという事業です。今年度は2機関、京都大学と広島大学が採択されていますが、来年度については、特に複数の大学や企業が連携した形で、各機関の強みを生かして、産学を通じて活躍できる研究者を育成する取組、いわゆる複数機関によるコンソーシアム形式などで取り組む機関を1機関支援する予算を計上しています。
 続きまして4ページ目、データ関連人材育成プログラムについて、博士課程学生や博士号の取得者などの高度人材に対して、データサイエンスなどのスキルを習得させる研修プログラムを開発して、社会の多様な場で活躍を促進する事業です。これまで全国ネットワークも含めて6機関採択されていますが、来年度は1機関分の採択を計上しています。内容としては、新規の取組として、次代のAI技術を牽引する人材の育成に向けて、大学等が、AI、数理やデータサイエンスに関する教育について先進的な取組を行う高等学校などと連携をし、そこに博士人材を派遣することで高等学校における探求的な学習を促進する取組を行う拠点を1機関支援する経費を計上しています。
 5ページ目、特別研究員事業です。優れた若手研究者が研究に専念できるように研究奨励金を支援するものですが、令和2年度については、優秀な若手研究者支援の重要性に鑑み、支援人数という形では今年度と同規模の人数を確保することができたという状況です。
 6ページ目の次世代アントレプレナー育成事業です。アントレプレナー育成に係るプログラムの受講生の拡大やロールモデルの創出に取り組むことでアントレプレナーシップの醸成を目指すという事業です。現在、5つのコンソーシアムに支援をしていますが、新規の取組としては、EDGE-NEXT COSMOSという、EDGE-NEXTに参画をしていない機関でも参加できるようにコミュニティーを設置したり、マッチング支援を行うなどして、日本全体としてアントレプレナーシップの醸成とエコシステムの構築を加速するための予算を計上しています。
 7ページ目、スーパーサイエンスハイスクール支援事業です。こちら、先進的な理数系教育を実施している高等学校等をスーパーサイエンスハイスクールに指定し、その取組を支援するというものです。新規の指定校として30校支援する予算を計上しています。また、高大接続や広域連携、海外連携、地球規模の社会共創に取り組む学校に対して、重点枠を設けています。
 8ページ目です。グローバルサイエンスキャンパスです。理数系に優れた資質を持つ子供たちの才能の更なる伸長を図るために、地域で卓越した意欲や能力を有する高校生などを発掘し、選抜した生徒に対して高度で実践的な講義や研究を実施する大学を支援するという事業です。実施規模としては、新規2機関、全国で14機関になるような予算を計上しています。
 9ページ目、ジュニアドクター育成塾です。理数分野で特に意欲や突出した能力を有する小中学生を対象とし、大学等が特別な教育プログラムを提供して、その能力などの更なる伸長を図る事業です。実施規模としては、新規で3機関、全国で27機関程度になるような予算を計上しています。
 10ページ目、科学技術イノベーションを担う女性の活躍促進ということで、研究コミュニティーの持続性の確保や、多様な視点や発想によるイノベーションの活性化のために、女性研究者が活躍できる環境を整備する事業をまとめて記載しています。まず、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブですが、従来、牽引型、先端型、全国ネットワーク中核機関を実施していますが、新規の取組としては、研究分野や機関の研究特性や課題に対応し、女性研究者の活躍を促進する取組を行う特性対応型という拠点を新設する予算を計上しています。また、特別研究員事業(RPD)については、研究中断後に研究現場に円滑に復帰できるように支援するといった事業です。これは先ほどのとおり、前年同規模の予算を確保しているところです。また、女子中高生の理系進路選択支援プログラムですが、その名のとおり、女子中高生が適切な理系進路の選択を可能にするために、シンポジウムですとか実験教室などの取組を地域や企業と連携して行う大学等に支援する事業です。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 御質問等ありますでしょうか。
【宮浦主査】  狩野委員。
【狩野委員】  先般、研究費部会も出させていただきました。そこで申し上げてみたことを繰り返してみます。
 近頃、外務省の役目もさせていただいており、その経験を通じた個人の意見です。日本はこれから何によって存在感を出していくのかを考えないといけない時代なのかな、という内容です。なぜかというと、これまでは、科学のアウトプットが質・量ともに近隣各国と比較しても勝ち目があったところが、徐々にそうでもなくなってきており、母数を考えても近隣各国の方が少ないということはないわけで、質・量の両方で勝つことはなかなか難しい時代になっていると思います。その中で日本が何で存在感を出すかということは科学技術外交でも非常に重要な観点で、トップダウン式でいろいろ出ているような成果もあるかと思いますが、加えてボトムアップで出てくるものでも存在感を出せないといけないのではと思います。
 ボトムアップの方でどのようにしたらよいものが出てくるかということに、この人材育成は非常に関係してくると思っています。日本でないとできないものを大事にしようという観点を、こういう測り方の中に徐々に入れていかないといけないのではないか、と思います。こうした観点も含めて、人材委員会としてもいい議論ができるといいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。国際戦略としても、人材の宝をどう生かしていくかという戦略を考えるという重要性について引き続き議論させていただければと思っているところです。
 そのほか、予算関係の御質問について。はい、どうぞ。
【柴原委員】  小中高関係の施策が随分入っており、すごく有り難いと思っています。子供たちの能力ってすごいものがあると思っています。先日、茨城県で中学生・高校生を対象に、自分たちで課題を見付けて、その課題解決に夏から取り組んで、可能性がある取組15チームに活動資金を与えて、実際に活動させて、この1月に発表させ、その発表に企業や自治体が支援するという取組を行いましたが、1位になった子供の発表が本当にすごくて、私たち教員を超えている。そこは誰が指導しているかというと、大学院や専門家の方々なのです。ですから、小中高と大学がもっともっとつながれば、もっと若手が成長すると思っています。
 そのときに、自分のやったことが評価されることはとても大事だと思うのです。そう考えたのは、スーパーサイエンスハイスクールで特許を取れる研究って結構あるのですが、その特許を申請するにしても、学校は法人として認めてもらえず、教育委員会はその予算がない。だから特許を取得しなくても、私がこういう研究しましたという登録でとどめました。そういう生徒に対して「あ、君はすごいね。じゃあ特許も国が面倒みてあげるよ」という、そういう仕組みを作っていただくともっとモチベーション上がるのではないかと考えています。
 それから、施策の中にあるような大学院生の派遣もよいのですが、遠隔で先生が指導してくれれば、本県でも高専の先生が、今、小学生のプログラミング指導を始めましたが、そういうことを考えたときに、施策のスキームの中にある、集めて指導するというのもいいですけれど、遠隔を使いながらどうやって子供たちの力を伸ばすか、そういうプログラムを作ってくれると有り難いと考えています。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。出前講義や距離感を埋めるような遠隔も積極的に入れて、小中学生、高校生は比較的、高大接続やSSHでかなり動いていると思いますが、小学校、中学校との連携というのが非常に重要で、ますます強化していただきたいというところです。
 そのほか。
【宮田主査代理】  では、いいですか。
【宮浦主査】  はい、どうぞ。
【宮田主査代理】  ここで言うべきことかどうか悩みますが、1月28日にハーバード大学の教授が逮捕されています。御存じのとおり、マスメディアでは米中貿易戦争と報道していますけど、これは覇権争いで、完全に大学の知財をめぐって知財の漏出を防衛する。特に中国が千人計画で、完全に中国でアメリカと全く同じラボを造り、そこで出た知財を確保するという、シャドーラボというやり方をしています。その事件後、名古屋大学で講演をした際に、工学部の人に留学生の状況について聞いた所、25人中24人が中国で、1人が韓国であるという状況で、エレクトロニクスなので仕方がない面もありますが、少しそこら辺の影響が出てくるのではないかと思っているので、留学生や留学させる海外派遣のとき、多様性について考える必要があります。
 それから、コロナウイルスの騒ぎで、上海のラボに帰れなくなった元理研の教授がいて、インタビューができるチャンスを得た話なのですが、特にライフサイエンス系の退職者がラボを持っている例が多いので、その自由を妨げる必要はないのですけど、事実は把握しておかないと、特に知財管理については大きな問題が起こるだろうと考えています。できれば、この人材という面でいうと、知財の管理と、それから現在の国際情勢に対して、海外の報道も含めて情報を共有するようなある程度の教育をやっておかないと、後で大どんでん返しになる可能性があることを恐れています。
 同じことは、半導体で企業の人が中国や韓国で再雇用されて、結局、企業の産業スパイ事件みたいなことが起こり、この流出に関しては特定の不正競争防止法の改正で我が国は対応していますけど、ライフサイエンスのアカデミアの部分に関しては、あるいはほかの分野もそうですけど、少し脇が甘いので、人材に関して迷惑が掛からないようにしてほしいと思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 はい、どうぞ、横山委員。
【横山委員】  別の話題で確認できたらと思ったのですが、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブの特性対応型の新設について大変心強く思います。これは割とざっくり書かれていますが、具体的にどういうことに対して使えるものなのでしょうか。例えば人事に関連することも入ってくるような予算なのか、その辺を確認ができればと思いました。
【有薗人材政策推進室長補佐】  ありがとうございます。今回の特性対応型ですが、以前、ダイバーシティ事業の方で開設していた特色型の進化版のような形で考えていまして、例えば、スマートラボの活用や、実験ノートの電子版という形で、基本的には、分野にもよりますが、研究環境の方をIoTやAI等も活用していただきながら、その上で分野の方で女性研究者の割合が少ないような分野などの課題等に対応し、その上でなるべくその割合等を増やしていただくというような形で設定しています。それ以外にも大学特有の分野の偏りなどを御提案いただいた上で、こちらの方の型で申請いただきたいというもので設定したところです。
【横山委員】  ありがとうございます。目的は、これは分野の偏りが著しい分野においてダイバーシティを改善するための予算だということですね。で、額はそんなに大きくないということですか。
【楠目人材政策推進室長】  金額については、大きくないということもないと思います。今後、公募要領をまた出しますが、積算上は、過去にあった特色型とかと遜色ないぐらいの水準になるとは思います。また、従来、そんなに制限なく、大学の方で計画を立て、目標立てていただいて、人事システムの改革の導入等に関わる経費等にも使えるものになっています。
【横山委員】  なるほど。一部の大学では工学系の人事がいつまでたっても進まないということで、本部が厳しい施策を出されているようですので、そういうものとも併せて改善されていくといいなと思います。大変心強く思います。ありがとうございます。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、この案件はここまでとさせていただきまして、次に進ませていただきます。議題4、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」についてです。
 こちらは、1月23日にCSTIで決定されました「研究力強化・若手支援総合パッケージ」について、御報告いただきたいと思います。事務局からお願いいたします。
【小林科学技術・学術政策局企画官】  それでは、資料4をごらんください。
 1月23日にCSTI本会議で決定されましたが、経緯を申し上げると、昨年6月の統合イノベーション戦略でパッケージの策定が決まりまして、それ以降、内閣府を中心に、文科省、経産省等、関係省庁で集まって議論いたしまして、最終的に内閣府で取りまとめられたものです。
 内容をご説明いたします。
 1ページ目に、我が国における研究力の現状ということで、我が国の論文数の国際的なシェアが大幅に減少しているといった課題が書かれています。
 2ページ目に、研究力強化の鍵は、競争力ある研究者の活躍であるけれども、現状、若手をはじめ研究者を取り巻く状況は厳しく、研究者の魅力が低下しており、修士課程から博士後期課程への進学率の減少や、博士後期課程修了者の就職率の停滞、40歳未満国立大学教員のうち「任期付き」割合の増加、大学等教員の研究教育活動の割合の低下、特に研究時間が減っているという課題があげられています。
 この対応として、3ページをご覧ください。概要としては、若手の研究環境の抜本的強化、教育研究活動の十分な確保、研究人材の多様なキャリアパス実現、学生にとって魅力ある博士課程を作っていくということでありまして、まず、博士後期課程においては、独立して研究の企画とマネジメントができる人材を育成していきます。若手研究者の段階では、自由な発想で挑戦的研究に取り組める環境を整備します。中堅・シニアにおいては、多様かつ継続的な挑戦を支援するとともに、産業界において博士人材の積極採用と処遇改善とを図っていくということ、あるいはマネジメント人材、URA、エンジニア等のキャリアパスを明確化するというような、様々な将来の多様なキャリアパスを見通すことによって、博士人材により多く優秀な人材を呼び込んでいくとの内容になっています。下に記載の細かい測定指標を基に振興を図っていきます。
 4ページ目、施策の方向性ということで、人材、資金、環境面それぞれにおいて、施策の充実を図っていき、それを基に第6期の科学技術基本計画、第4期の国立大学中期目標期間等に施策を反映し、評価していくということにしています。
 5ページ目に、具体的な測定指標を達成目標として掲げており、それに関係する主な施策を書いています。まず、若手研究者ポスト拡大と挑戦的研究費の提供ということで、将来的に我が国の大学本務教員に占める40歳未満の教員が3割以上となることを目指し、40歳未満の大学本務教員を1割増ということで、主な施策として、各国立大学の「中長期的な人事計画」の作成を促すとか、先ほどの創発的研究とか、そういった施策を記載しています。また、その右の優秀な研究者に世界水準の待遇の実現ということで、運営費交付金と外部資金との「混合給与」の推進等によって若手ポスト増設・事務部門の環境改善を図っていくということで、主な施策として、クロスアポイントメント制度あるいは混合給与についてより一層周知を図っていきます。
 それから、博士後期課程学生の処遇の向上ということで、多様な財源を活用し、将来的に希望する博士後期課程学生の生活費程度を受給できるよう、当面、修士課程からの進学者数の約5割に相当する学生が受給できることを目指すということで、施策を掲げています。また、産業界における理工系博士号取得者の採用者数を1,000名増加するといった目標や研究時間を増やすために学内事務の割合を半減する、あるいは研究設備の共用体制を確立するといった目標を掲げまして、それに関する施策を掲載しています。
 7ページ以降は、更にそれぞれ細かい施策を記載していますが、例えば優秀な若手研究者の安定と自立の確保の中で、先ほどの若手研究者のエフォートの一定割合について自発的な研究活動等への充当を可能とすることや、卓越研究員事業、あるいは7ページの下の方で、ポスドク等の研究力向上やキャリア開発に支援する大学等に対するガイドラインの策定、正に先ほど御議論いただいたような内容についても盛り込んでいます。
簡単ではございますが、以上で御説明を終わらせていただきます。

【宮浦主査】  ありがとうございます。次期の基本計画に向けて書き込んでいただいたという状況でございます。
 御質問ございますか。はい、川端委員。
【川端委員】  具体的な内容はよく我々の理解とも連動していて、そう思っています。その上で、いつもそうなのですけど、内閣府のこういうところとの話し合いになって、いつも一番最初が一番気になっていて、2ページ目ですけど、研究力強化の鍵は競争力ある研究者の活躍ではないのですよね。競争力が必要なのは国なのです。研究者に競争力を求めるのではなくて、研究者に必要なのは独創性や実行力なのですよ。だから、ここのキーワードが一番最初に掛け違えて、色々なところに掛け違え、色々なところに影響が出てきます。それがひっくり返ったら研究者の魅力を低下させたりしているという、その連動だけ是非いろんなところで議論したり考えていただけると有り難いと思います。
【宮浦主査】  今の点、重要な部分でございますので、是非根本的な考え方として盛り込んでいただきたいという方向でございます。
 ほか、ございますか。
【川端委員】  今すぐ変わらないですけど。
【宮浦主査】  最初の1行目を変えていただくということですね。
 はい、どうぞ、高橋委員。
【高橋(真)委員】  ごく簡単に、同じ趣旨です。2ページ目の「若手をはじめ、研究者を取り巻く状況は厳しく」と言うと、どうしても、確かに直接的に研究力を担っているのは研究者ですが、広くそれに関連する人たちも魅力ある職場としてこの研究所若しくは研究機関に勤められるようにしていただければと思っています。15年で研究推進支援人材も2,000人、3,000人と増えている中で、どうしてもサポートでジャスト支援というのはやはり、難しい言葉ですけれども、サボのように聞こえるので、そうではなくて、黒子でも編集者でも誇りを持ってやっていけるような形に書いていただければと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  今のご意見は、URA関係、マネジメント人材に関することですね。やはり第3のポストとして非常に重要で、先ほどの競争力を大きく左右する部分でもあろうかと思いますので、そこの重要性……。
 どうぞ。
【小林科学技術・学術政策局企画官】  ありがとうございます。資料の10ページに、マネジメント人材、URA、エンジニアのキャリアパスの確立や研究時間の確保ということを掲載しておりまして、URAについては質保証制度の創設や技術職員についてキャリアパス構築に向けて課題を調査するなど、各施策において、単なる支援ということではなく、きちっとした職としてキャリアパスを確立するような施策も盛り込んでいますので、文科省としても取り組んでいきたいと思っています。
【宮田主査代理】  先ほど狩野委員の御発言を補足しますが、これって、まだ日本が成長過程にあったときのプログラムの作り方のような気がしていて、量的拡大、質的向上で何とかなるような時代はもう終わったと思っています。多分、大学の数も減っていくでしょうし、研究者の全体の数も日本のという意味では減る可能性もあります。そうすると、海外からどうやって研究者を招聘して、その予算を確保するかという手だても必要になります。今のところ、これ、まだリニアモデルですけど、僕らはもう角を曲がっていると思っていて、縮小するような環境の中で我々は一体どうやって国際競争力を保つのか。
 その戦略として、1つは分野を絞り込むという戦略もありますが、日本が1990年代まで頑張ってこられたのは、研究者の真面目さと、低い予算でも効果があるような分野へ必然的に研究者がそのエフォートを集中して、多くのアメリカの企業がファッショナブルに研究している段階で、もうずーっと酵母が死ぬ様を顕微鏡で見ているような頃でノーベル賞をとっているわけで、その多様性と絞り込みをどういうふうに両立させていくのかというのは、本当は総合科学技術・イノベーション会議が頭を絞らないといけない状況なので、これ、やるべきことは盛り込まれていて、とてもすぐれたプログラムだと思いますし、若手を元気にさせる心理的効果はあると思うけれども、大きく国がカーブを切ったときにこういうやり方だけで通用すると思わないので、文科省として、人口が4分の3ぐらいになったときに、大学とか我々の人材教育というのはどうしたらいいかというプランBを是非作っておいていただきたいと思います。これはもう個人的なお願いです。
【宮浦主査】  ありがとうございます。先ほどの戦略性も、やはり外国、海外から優秀な研究者をもう雇用してしまおうと。連れてくるには、現在の雇用システムと年俸制の額では誰も来ないという現実もありますので、その辺りを何かドラスティックに、最後の白いページに透かしが出てもいいんですけれど、透かしで書き込んでおくような、そういう……。
【宮田主査代理】  いや、とりあえずプランBは作っておいた方がいい。
【宮浦主査】  プランBですね。
 どうぞ。
【藤垣委員】  11ページをごらんください。 評価の仕組みについてのコメントがあって、我が国の研究力をどう測るかという話が出ています。これは、10月1日の人材委員会でも政策研のデータを見ながら一度議論している点です。国の研究力を測る指標として必ず論文総数や引用数が出てきますが、それだけでよいのかという話ですね。人材委員会として重要な論点は、国の研究力だけではなくて、個人の研究力の評価指標もこれと同様の見直しをしなければならないという点です。若手研究者を取り巻く状況が厳しいのはなぜかというと、お金もポストもないけれども、論文を書かなければ大学に職が得られないからです。また、議題の(2)で、卓越研究員制度がなぜうまくいかないのかということを議論してきましたけれど、企業と大学との間の流動性を難しくする一つの要因は、個人の研究者の業績評価の指標なのだと考えられます。つまり、若い研究者は、大学に残ろうと思ったら論文をたくさん書く必要があるが、企業に行ったらトップジャーナルに論文を書くことより現場に役立つ研究をしなくてはいけないので、そこの部分で、引き裂かれるわけですよね。ですので、この11ページの評価の仕組みへのコメントを見ると、議題2の卓越がなぜうまくいかないのかということの一つの理由を発見したような気分になります。個人の研究力を評価する指標の中身をきちんと考えないと、流動性というのはうまくいかないだろうと考えられます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。評価指標ですね、企業が求める評価指標とアカデミアが求めるものがそもそも違うというギャップを埋めていくことも重要ということです。ありがとうございました。
 八木委員、手が挙がっていました。どうぞ。
【八木委員】  これ、全体を見ていて、優秀な人材を作るような話はよく出てきますが、実は一番重要なのって、この5ページ目にある研究者を魅力ある職業にしていくことだと思います。魅力ある人材ができれば、その姿を見て博士にも行こうかとかいう流れができると思うので、そういう観点の主張がメインのところに出てくるといいのにと。最後まで行かないと見えてこないというのは少し残念かなと思いました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。研究者を最大限魅力ある職業にしていかないと優秀な人が残らないという、その循環ですね。
【八木委員】  はい。
【宮浦主査】  その辺りを加味していきたいと思います。
 最後に、資料5に「研究大学における教員の雇用状況に関する調査」ということで、まだこれ、動いている途中だと思いますので、簡単に事務局から御説明いただけますか。
【満田人材政策課長補佐】  それでは、端的に御説明させていただきます。
 資料5の1ページ目、2ページ目をごらんください。本調査については、6月に行われた人材委員会(第86回)でも駆け足で御説明をさせていただいていますが、前回は、RU11を対象に、教員の年齢構成や任期の有無、雇用財源等について調査を行っていましたが、今回、下の方の調査対象機関として、国立大学の重点支援3に該当する研究大学に当たる大学についても調査対象として広げています。
 3ページ目です。調査項目として、任期の長さや、契約可能最長期間、処遇の観点から給与の月額などを新たに調査項目として追加をしています。下の赤枠で記載されていますが、こちらは、前回、前々回の人材委員会で報告したときから若干変更した部分ですが、実際、調査を行う調査対象の機関に事前説明をしている段階で、教員の異動後の状況把握がなかなか難しいという御意見があったことから、転出・異動後の状況の部分について一部項目を削除しています。1月末で調査票を発出しておりまして、3月中旬の締切りで今現在調査を行っているという状況です。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。こちらは今実施中ということで、まとまりましたら御報告をよろしくお願いいたします。
 最後に、今後のスケジュールについて御説明をお願いいたします。
【満田人材政策課長補佐】  次回の人材委員会の具体的な開催日時につきましては、恐らく来年度に入ってからですが、また日を改めて皆様と日程を調整させていただきまして、御連絡いたします。
 本日の会議の議事録等につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただきまして、最終的に文科省のホームページを通じて公表いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、資料につきまして、机上に残していただきましたら、追って事務局より郵送をさせていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。活発な御議論を頂きまして誠にありがとうございました。

―― 了 ――
 

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