人材委員会(第86回) 議事録

1.日時

令和元年6月13日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 第6期科学技術基本計画に向けた人材育成政策の在り方について
  2. 研究人材に係る調査の実施について
  3. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、勝委員、狩野委員、小林委員、隅田委員、高橋(修)委員、高橋(真)委員、竹山委員、塚本委員、藤垣委員、八木委員、柳沢委員、横山委員

文部科学省

山脇文部科学審議官、生川官房長、松尾科学技術・学術政策局長、増子大臣官房審議官、角田科学技術・学術総括官、坂本人材政策課長、楠目人材政策推進室長

オブザーバー

小安理化学研究所理事、山村科学技術振興機構研究開発戦略センターフェロー

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第86回)

令和元年6月13日


【宮浦主査】  ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会第86回を開催いたします。
 本日は、長我部委員、川端委員、柴原委員の3名の方が御欠席ですが、14名の委員に御出席いただいていますので、定足数を満たしています。
 なお、柳沢委員におかれましては、今回が第10期の人材委員会初回のご参加となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
【久保基礎人材企画係長】  本日の会議は、ペーパーレスによる運営とさせていただいています。お手元のタブレットのデスクトップにあるフォルダーの中に、本日の資料を格納させていただいています。議事次第、資料1-1、資料1-2、資料2、資料3、資料4、資料5、参考資料が保存されておりますので、御確認をお願いいたします。議事進行の過程で不備等ございましたら、事務局までお知らせ願います。
 なお、本日の資料につきましては、前方のスクリーンの方に投影していますので、傍聴の皆様におかれましてはこちらのスクリーンも御覧ください。
 以上です。
【宮浦主査】  それでは、議題1に入ります。本日は、前回と同様、第6期科学技術基本計画に、今後盛り込むべき事項の検討に向け、これまでの人材委員会での検討を踏まえた人材育成に関する重要な論点について御議論いただきたいと思います。
 今回の人材委員会での議論をもちまして、第6期科学技術基本計画の検討に向けた重要論点については、中間まとめとして取りまとめたいと考えています。
 まず、有識者の方からヒアリングを実施し、意見交換後に、重要論点に関する議論に入りたいと思います。
 では、初めに、これまでの人材委員会の議論においても、若手研究者の戦略的な育成、さらに安定的な研究環境の確保ということが重要な課題となってきました。第6期科学技術基本計画においても、引き続きこれらの課題への取組が求められるところですが、今後の施策の形成や改善に向けた議論の参考とするため、諸外国の研究者の育成施策の動向、並びに研究力向上に向けた研究人材の育成について、ヒアリングをさせていただきたいと思います。
 まず、特に博士の取得者が国際的に最も多く、若手研究者へ支援の充実、能力開発に早い段階から取り組んでいるイギリスの人材養成の施策の事例について、科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)より御紹介を頂きたいと思います。本日、御説明いただきますのは、山村将博JST研究開発戦略センター・フェローです。
 それでは、山村フェロー、15分以内で御説明をお願いいたします。
【科学技術振興機構山村様】  ありがとうございます。先ほど御紹介いただきましたCRDSの山村です。
 では、イギリスにおける人材育成の動向について、お話しさせていただきます。
 本題に入る前に、イギリスの科学技術体制等の基本的なことについて、かいつまんで御説明いたします。
 まず、イギリスの科学技術体制です。首相、内閣があり、その下に様々な省庁があります。科学技術イノベーション、教育を担う主な省庁は、左側のビジネス・エネルギー・産業戦略省です。教育については、その右にある教育省、その傘下の学生局も中心的な役割を果たしています。
 次のページです。イギリスの科学技術組織の変遷です。イギリスは、政権交代に併せて科学技術組織が変わることが多く、現在は、丸が付いているところの体制になっています。ビジネス・エネルギー・産業戦略省の下に、分野別の研究会議があり、近年の主な変遷としては、2018年の4月に、7つあった研究会議と、イノベーションを支援するInnovate UK、そして教育関係のResearch Englandという機関が、UKRIの1つの傘下になりました。
 このUKRIについて詳細を説明しているのが次のページです。こちらは7つの研究会議と、Innovate UK、Research Englandの9機関で構成され、基礎から応用まで幅広く支援するところです。リサーチカウンシルは若手研究者向けのフェローシップをそれぞれ実施しており、そういったところを傘下に持つUKRIという機関がイギリスで重要な役割を果たしているというのが現状です。
 5ページ目、UKRIの予算です。全部の機関を合わせて大体1兆円という、非常に大きな予算で運営がなされています。
 6ページ目、資金の流れを示した図です。研究会議やInnovate UKから大学といった高等研究機関、また、公的な研究機関、産業界に資金が行きます。大学の運営費という点では、Research Englandからイングランドにある大学に資金が流れています。右下、省庁や、チャリティー団体、非営利団体等の機関も、それぞれの機関に資金を流しています。
 7ページ目、近年の科学技術イノベーション政策ということで挙げています。直近のものは産業戦略、その前が2014年12月の成長計画ですが、いずれの計画においても人材の育成は重要項目の一つとして掲げられており、実際、それに見合う投資が行われています。
 8ページ目、産業戦略、現在の最新のイノベーション戦略の詳細です。こちらでは、アイデア、人材、インフラ、ビジネス環境、地域社会の5つの基盤を強化することでイギリスの生産性を高め、イギリスをイノベーション国家にすることを目指しています。人材に関連して様々な取組が行われています。
 9ページ目以降、イギリスの科学技術・イノベーションの現状・特徴と、博士課程・ポスドク研究者の状況をお話しします。
 まず、10ページ目、イギリスの科学技術・イノベーションの特徴ですが、研究者の数や、研究開発投資は比較的小さくなっています。それにもかかわらず、基礎研究で非常に高いレベルであり、高い科学技術アウトプットを有しています。理由の一つに、科学と大学の伝統があげられ、大学で自由な発想で研究を行うことが多くなっています。また、母国語が英語であることも手伝って、海外からも優秀な人材を引き付けています。若手研究者にとっては、非常に研究しやすい環境にあります。
 11ページと12ページ、イギリスと他の主要国の研究開発費や、研究者数を比較したものです。
 13ページからが、若手に関わってくるところですが、イギリスの博士号取得者数は、人口当たりで見るとドイツと並んで世界主要国の中で非常に高く、多くの人が博士号を取得しているというのが特徴です。
 14ページで、イギリスの博士課程、ポスドクの現状ということで概略を示していますが、まず博士課程や、ポスドクの雇用は、研究所、学部単位で大型のグラントを獲得します。そのグラントの中で、人件費、給与、博士課程学生の学費を支出できるようになっています。
 博士課程の場合は、博士自らがポストに応募して、採用されれば学費を払う必要はない上、一定水準の給与も支給されるのが一般的です。
 ポスドク研究者の給与水準は、様々な雇用体系があるので必ずこうですとは言えませんが、各大学のプロジェクト単位の求人情報では、年間3万ポンド、450万円程度が大体の相場です。
 ポスドク研究者向けには、様々なフェローシップがあり、これを獲得すれば一般的には給与、生活費と研究費が支給されます。
 イギリスは、ポスドク、若手、留学生が非常に多いというところが、他国と比べて特徴的と言えます。
 また、イギリスやドイツでは、日本のように1人の教授、准教授がいるという講座制ではなく、研究者一人一人がリーダーとして、若い研究者も、グラントを獲得できれば早いうちに独立できる環境や、支援体制が整っているということが特徴です。
 ただ、その分、博士課程、ポスドクとも、ポジションを獲得するには非常に競争的な環境にあります。
 博士号を取得した人が、必ずしもアカデミアに行くわけではなく、企業や、他の研究所に就職します。要するに、イギリスの場合、キャリアの道が多様で、アカデミアに限らず、様々なところで博士人材が求められているのではないかと思います。
 15ページ目から、イギリスの過去の研究人材育成施策を説明しています。
 16ページ目は、主な政策をまとめていまして、17ページ以降でこれらを詳細にお話しします。
 ポイントとなるのは、1番のロバーツ・レビューで、これが非常に優れた提案でした。これに基づいて様々な施策が展開され、現在にもつながるものになっています。
 次、17ページ目、ロバーツ・レビューです。これが2002年4月に発表された、システム分野における人材供給に関する提言書です。様々な問題を分析して提言がなされました。主な内容としては、例えば博士課程向けに汎用性のあるトランスファラブル・スキルは研究などで学んだけれども、ビジネスとか、別の機会でも応用できる技能のことで、これを身に付ける訓練を1年間に2週間は実施すべきであるとか、ポスドクに対してもキャリア開発をやるべきである、あとは、博士課程、ポスドクの給与、給付金を増額するべき、若手向けのフェローシップを充実すべきといった提言がなされています。これに沿って様々な施策が行われました。
 2番、ロバーツ・マネー配分です。これは、若手学生、研究スタッフ向けの、キャリア開発をするための資金です。大学、研究機関に配分され、各大学、研究機関で、その目的のために自由にお金を使うことができました。2008年に全国的ネットワークであるVitaeという教育を専門にする機関が発足して、各大学、研究機関と協力する形でキャリア開発のプログラムを開発したという動きもあります。
 3番、アカデミック・フェローシップです。これは、次世代の研究リーダーを目的としたフェローシップで任期付きのポスドク研究者が対象となっています。2004年に、イギリス研究会議、現在のUKRIに相当するところが作成したもので、毎年200人、4年間で選りすぐりの800人を採用しました。5年間で合計1,900万円程度支給され、給与、旅費、消耗品費に充てることができました。研究費は自らが所属する機関が出します。興味深いのは、フェローシップ終了後、各機関における終身雇用のポストの提供を義務化したということが挙げられます。これを取った人にはキャリアの道が開けるというのが特徴でした。このフェローシップ終了後、各大学や研究会議でも独自のフェローシップがより充実していきました。
 20ページ目はVitaeについてです。先ほどお話しした、キャリア開発を目的とした非営利の機関で、2008年に発足しました。イギリス全土の8大学にハブを持っており、それぞれの地域でネットワーク構築を推進して、そこにある高等教育機関を支援しています。研究者育成に関する様々な取組、目的については、こちらの通りです。
 21ページ目、5番、研究者のキャリア開発支援のための協定です。2008年に研究資金提供機関、ファンディングエージェンシー、研究会議等と、大学、研究機関との間で締結された協定で、研究者のキャリアサポートやマネジメントをきちんと執り行う原則が掲げられています。これによって、研究の卓越性や、イギリスの健康、経済、福祉への利益が期待されます。先ほどお話ししたVitaeプログラムは、この協定のキャリア開発支援の中で中心的な役割を担う位置付けです。
 22ページ目、Vitaeによる研究者開発フレームワークは、Vitaeと各大学がプログラムを実施する中で生み出された、若手研究者のスキルを体系化したフレームワークです。下にある4つのドメイン、さらには3つの細目からなり、詳細に研究者のスキルを分類しています。これは非常に評価の高いもので、イギリスのみならず、他国でも導入されています。
 最後、7番、ホッジ・レビューは、先ほどお話ししたロバーツ・マネーに関する評価と提言です。ロバーツ・マネーが非常に高い効果をもたらしたため、今後もこの取組を継続していくという趣旨の提言です。
 ここまでが過去の主な施策で、続いて現在の施策に移ります。
 25ページに、現在行われている主な施策を示しています。最上部、博士トレーニングセンターは研究会議がイギリスの大学のドクターをトレーニングする施設で、1つの教室にぶら下がるのではなく、博士同士を集団教育して、通常3年のところ、4年掛けて博士を取得するというセンターがどんどん設置されています。
 2番目、博士課程教育研修パートナーシップの実施ということで、これは40大学を対象として、2,000名ぐらいの学生に支援、勉学の機会を与え、金銭的に支援するといった取組がなされています。
 3番目のCASEというのは、大学と企業が協力するもので、博士課程にいる学生が企業でも研究に従事します。その間の資金の一部を企業が負担するといったものです。
 あとは、AI人材の育成や、フューチャー・リーダーズ・フェローシップを2017年、2018年に実施しています。
 26ページは、若手研究者向けのフェローシップをまとめています。独立を支援するフェローシップで、採択枠はある程度限られますが、これを取れば非常に名誉あるフェローシップで、独立の道が開けるというものです。代表的なものとして、1番と2番について次に述べています。
 27ページは、王立協会が実施しているユニバーシティー・リサーチ・フェローシップで、これは先ほどお話ししたアカデミック・フェローシップのモデルにもなったものです。将来、研究者となり得る研究者が独立した研究キャリアを構築できるような機会を提供するもので、非常に歴史のあるフェローシップで、最も名誉があるものと言えます。こういった機会が提供されています。
 28ページ、最近、発足したUKRIが実施しているフェローシップです。これも最近のイギリスの政策ではかなり大きい額で、1,350億円を550名に対して支出します。キャリア初期段階にいるレベルの高い研究者の独立性を目的としたフェローシップです。イギリスの場合、こういったフェローシップが国内で充実しているということがあります。
 次の29、30ページはEUの事例でして、イギリスは、現在まだEUにいますので、EUがやっている奨学金プログラムも獲得することができます。実際、かなり恩恵を受けているのが、29ページのマリー・キュリーリアクションと、30ページの欧州研究会議というファンディングエージェンシーのグラントです。ただ、イギリスはブレグジットで揺れていまして、これをしてしまうと、ヨーロッパからの資金が受けられなくなります。その辺りを見越して、先ほどのフューチャー・リーダーズ・フェローシップを充実させています。あと、国内でどんどん支援を拡充しているというところもあるのではないかと見ています。
 最後、31ページ、こちらは参考ですが、CRDSでは「研究システムのあり方について」という報告書をまとめており、研究力を強化するためには、人材だけではなくて研究機器、ファシリティーや、研究資金も必要であるという示唆を提言しています。先ほど、お話ししたのは主に人材と資金面の話でしたけれども、イギリスの場合は共用機器とか、研究設備も充実していて、研究力強化を目指す上では、こうした要素も含めて考えることが重要ではないかと思われます。
 以上で説明を終わります。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 イギリスの過去の事例と、現在、動いている事例について御説明を頂きました。これから15分程度、意見交換を行いたいと思います。ただいま御説明いただきました内容について、御質問、御意見等を頂ければと思います。いかがでしょうか。
 竹山委員。
【竹山委員】  非常に分かりやすくまとめていただいてありがとうございます。
 イギリスにおける制度はよく機能しているというご説明でしたが、おそらく、この制度の中でもやはり課題があると思います。CRDSで調べた範囲の中で、イギリスでの課題を幾つか紹介していただければと思いますが、何かありますか。
【科学技術振興機構山村様】  1つは、やはり競争率が高く、必ずしも全ての人が恩恵を受けられるわけではないということがあげられます。博士課程進学者で、学費を払う人は、サウジアラビアとかの王族ぐらいしかいません。イギリスは授業料が高く、年間、大体100万円以上するので、本当に博士課程に進学したい人は自腹は余り考えられず、グラント、ポストに応募して獲得するなど、競争に勝たなければなりません。お話のとおり、イギリスは世界各国から人材が集まってくるので、その辺り、ポスト競争が熾烈というのが課題の一つだと思います。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。
 狩野委員。
【狩野委員】  分かりやすく、ありがとうございました。
 3つ質問があります。1つ目は、イギリスの制度は素晴らしいというお話でしたが、これに比べて、日本がもし国際的に人材を集めようと思ったら、どういう理由で優秀な人材を引き付けられると思われましたか。
 2つ目の質問は、先ほどポストをめぐる競争の話がありましたが、何をもって勝敗を決めているのか、指標はどのようになっているでしょうか。もし調べておられたら教えていただきたいと思います。
 3つ目は、ファンディングのソースごとに勝敗の価値観が違うかもしれませんが、どのような複数の価値観が併存しているか、あるいは、複数価値基準の併存のためにファンディングソースがかえってばらばらに設置されているか、など思われているか、教えていただければと思います。
【科学技術振興機構山村様】  ありがとうございます。
 イギリスの場合は、言語が英語で通じるというのが一つ大きなところなので、その点で、やはり日本の場合、どうしても日本語が問題になってしまうということがあります。そこをどうにかすることが一つではないかと思います。研究力が高い分野はあるので、その辺りで人材を集めることができればというところです。
 勝敗に関わる指標について、どういった人が採択されるかというと、やはり優れた基礎研究を行っている人、それは日本の日本学術振興会(JSPS)やJSTのプログラムでも同じだと思いますが、いわゆる他国でやっているようなことと大差はないと思っています。
 ファンディングのソース、価値観というところで、若手のグラントをまとめたページをご覧いただければと思いますが、イギリスの場合、研究会議が分野別に存在していまして、EPSRCだったら工学関係、BBSRCだったら生物関係と、ある程度そこのトラックレコードを求めるというところだと思います。キャンサーリサーチでしたら、主にがん研究をやっており、それに特化した人材というところもあります。1番とか2番は本当に幅広いので、価値観としては一般的になるのではないかと思いますが、そうではない、分野別の研究会議が出しているところは、それぞれの機関の支援する分野が念頭に置かれているのではないかと思います。
【狩野委員】  なぜその質問を申し上げたかというと、リサーチマップという統計を、JSTが使っていましたが、日本の研究テーマの広がりはいわゆるコンティネント型で、つまり新しい方向へ飛び出す研究者が少ないということが指摘されています。アイランド型ではないということです。それを考えたときに、若手研究者は、特に向こう見ずなことを考えてもいい時期なわけで、こういう人たちの中でどうやって勝敗を決めるか考えないと、このままコンティネント型のまま行ってしまうのではないかと危惧しています。
【宮浦主査】  その勝敗の問題ですが、イギリスですと、例えば大学院生を受けるかどうかは、候補となる大学院生とPIが直接ディスカッションとヒアリングをして、この方を大学院生として受け入れるか、かなりシビアな判定を個々にしていると思うので、その辺りが日本には欠けていると思います。先ほどの御質問にも関連するかと思います。
 では、勝委員、すみません。
【勝委員】  ありがとうございました。先ほどの説明で、ポスト争いがかなり熾烈であるということで、キャリア開発や多様なキャリアなどが非常に成功しているというお話があったと思います。資料の17ページでトランスファラブル・スキルの訓練について、最低2週間実施するとありますが、これは具体的なプログラムの内容を教えてください。
 もう1点は、ロバーツ・レビューがかなり高評価でしたが、その成果はどのように評価されているのか、教えていただければと思います。
【科学技術振興機構山村様】  まず、各大学での具体的な取組内容については、大学単位でプログラムを設定します。具体的な大学名は今すぐに出てきませんが、22ページで紹介している、RDFに書かれている項目に沿って、個別の講義や、実際の講師による研修を行っているところです。
 2つ目の質問はもう一度お願いします。
【勝委員】  成果といいますか、このプログラム、ロバーツ・レビューが基盤となって、うまくいっているという評価をされていますが、その評価、あるいは成果があれば、具体的に、どのような指標を見ていらっしゃるのか教えてください。
【科学技術振興機構山村様】  失礼いたしました。成果というところでは、今でも新しい大臣が教育についてスピーチすることはありますが、この2002年のロバーツ・レビューはそこでも引き合いに出されています。例えば、ロバーツ・レビューでポスドク研究者が充実したとか、金銭的保証がある程度充実してきたなど、また、RDFもロバーツ・マネーをきっかけに開発されたものですので、明確にロバーツ・レビューを受けた成果について、報告書は調べている限りありませんでしたが、イギリスの一連の教育に関する流れの中で、一つのマイルストーンとして意識されているというのが現状です。
【宮浦主査】  順番にお願いします。最初に手が挙がっておりました柳沢委員から。
【柳沢委員】  ありがとうございます。大変興味深い報告でした。
 例えば、11ページと13ページを比較すると、イギリスは、博士取得者数は絶対数で日本より1.5倍程度多いですが、研究者数は逆に半分ぐらい。これは、先ほどから言われているような狭き門という解釈でよろしいでしょうか。
【科学技術振興機構山村様】  それも一つですが、こちらは企業における研究者も含んでいます。産業の場合、イギリスは余り強くないというのがあって、日本の場合はそちらに充実した研究者層があるということが理由の一つではないかと考えています。
【柳沢委員】  要するに、イギリスの場合は、博士号を取得しているけれども、いわゆる研究者にはならない人もたくさんいるという感じでしょうか。
【科学技術振興機構山村様】  そうですね。例えば、金融の道に行くなどのキャリアパスもありますので、日本よりは、博士がほぼ行く感じではなく、むしろ博士号を取っている方がほかの企業でも受け入れてもらいやすいというのが、イギリスに限らず、欧米の特徴だと思います。
【柳沢委員】  逆に言うと、先ほどから狭き門で、プレスティージャスなフェローシップや何かを取るのは極めて難しいということを繰り返し指摘されていますが、それに失敗した方々はそういうキャリアパスが逆に用意されているということでしょうか。
【科学技術振興機構山村様】  そうです。はい。
【柳沢委員】  もう1点は、それとも少し関係しますが、11ページを見ると、研究開発費についてイギリスは比較的少なく、日本に比べると半分以下、絶対値で3分の1ぐらいにもかかわらず、先ほどの狭き門ではあるのだけれども、プレスティージャスな、例えば23ページ辺りでしたか、UKRIのやっているものですが。
【科学技術振興機構山村様】  フューチャー・リーダーズ・フェローシップ。
【柳沢委員】  ええ、これ見ると、年間、平均5,000万円程度、5年間ぐらいにわたって支給されますが。
【科学技術振興機構山村様】  そうですね。
【柳沢委員】  そういう規模感ですよね。狭き門ではあるけれども、そういうことが可能であると。それは、どうしてですか。日本と、どこが違うのですか。日本だったら、これはもう大教授が取るレベル、科研費でいうと基盤研究Sや、CRESTなどのクラスになるわけですよね。それを、比較的キャリアの初期の優秀な人材に与えると。これは、何で日本ではできないのでしょう。日本は、資金はあるのではないですかね。
【科学技術振興機構山村様】  そうですね、なぜできないのかは私も気になるところではありますが、フューチャー・リーダーズ・フェローシップのきっかけについて、推測でしかありませんが、これの創設は2018年で、ブレグジットで人材の流出をどうにかしたいという考えがあると思います。これを取得した人は、国籍は問いませんが、イギリスの研究機関に所属している必要があるので、これをきっかけとして、世界各国から、イギリスにこんないいものがあるから来てくださいねというところもあるのではないかと思います。本当に優秀な人材が来て、イギリスで研究をして、ノーベル賞を取るなり、何かすごい成果を残せば、結果的には出した分十分元が取れるという考えで、これだけ大規模な資金を支給しているのではないでしょうか。これは、先ほどの産業戦略に付随する中でもかなり目玉政策として打ち上げられているものなので、そういうことができていると。日本も、確かに選択と集中というところで財源はあるはずなので、本当にやり方次第だと思います。
【宮浦主査】  資金は日本にもあるので、やり方次第だということですけれども、極めて数は少なくても、自分の給与、研究費、スタッフの給与等、全て賄えるような形、大型をやることの重要性が一つの議論かと思います。
 すみません、複数お手を挙げていただいて、高橋(真)委員、高橋(修)委員、隅田委員、小林委員と、短時間でお願いします。
【高橋(真)委員】  ありがとうございました。イギリスは、歴史的に見ても、きちんと時間を掛けて検証する、そしてシステムを直していく国という印象があります。人材育成関係の事業は、ここでもいろいろ議論になっていますが、育成した成果、果実を得るまでとても長期間掛かってしまうというのと、PDCAサイクルの指標がないということが我々の課題だと認識しています。
 それで言うと、本日のお話からくる印象なのですが、イギリスにおける人材育成事業については、事業成果のファクト、我々が努力途上の人材育成系のプログラムに関する評価指標とか、改善のPDCAサイクルが回っているのか、それともある種良い点を中心にご紹介いただいているというプレゼンの影響があるのか。実際にみて印象としてあれば伺います。
【科学技術振興機構山村様】  もちろんイギリスのいい事例を紹介するというのが今回の趣旨ですので、全体的なトーンとしてそういうようになったということはあります。
 おっしゃるとおり、100%うまくいっているわけではなく、まだ産業界によっては博士を採用しないところもありますし、先ほど言ったように全ての人がアカデミアに進めるわけではありません。それはいいこととして捉えることはできませんが、やはり本当はアカデミアになって、教授に最後まで上がると。博士から大学の教授に残れる人は、1%に満たないと言われていますので、その辺りはイギリスでも問題として捉えられています。
【宮浦主査】  いいですか。
 では、高橋(修)委員、お願いします。
【坂本人材政策課長】  すみません、補足をよろしいですか。
【宮浦主査】  どうぞ。
【坂本人材政策課長】  実は、これ、文部科学省の方でも分析しており、先ほどの高橋(真)委員と勝委員の御質問、非常に重要なことです。たしかホッジ・レビューの中に書かれてあったと思いますが、イギリスの中でもロバーツ報告をきちんとレビューしようという動きはありました。その結果、定量的な効果は測定が難しいという結論が出されています。
 ただ、ロバーツ報告に基づく施策は成功と言うことのできる根拠がいくつかあり、1つは、外国、例えばアメリカなどからベンチマークされている点があげられます。このベンチマークを見ると、やはりイギリスでは進んでいるということが述べられています。だから、海外が注目しているということは、自分たちがやったことは間違っていないと言うことができるのです。
 もう1つは、勝委員の質問のトランスファラブル・スキルについて、もともとは産業界などのアカデミア以外のところに博士号取得者が展開していくときに必要となる能力、資質能力というものを狙ったわけですけれども、これは今、ちょっと変質していて、世界トップレベルの研究者が必要な資質能力となっています。
 その能力について、これはVitaeの会長に話を伺いましたが、産業界と相当議論してきたようです。正直言うと、今でも溝はまだあるとおっしゃっていましたが、この十数年のディスカッションで、相当、議論が蓄積されています。先ほどConcordatの話が出ましたけれども、そういったことをファンディングエージェンシーと大学が結ぶぐらいまでは来たと。それは、要は普遍的な能力開発システムというものがイギリスの中で必要だという認識は相当広まって、それが実際、定着し始めているということを意味しているという、産業界も含めて社会的な評価があるという記述もあります。
 よって、様々な関係者から意見を集約した結果、これは成功と言っていいだろうということで、定量的にどうかというと非常に難しいというようなことが言われています。
【高橋(真)委員】  ありがとうございます。
【宮浦主査】  どうぞ。
【高橋(修)委員】  ありがとうございます。1つ質問させてください。
 ロバーツ・レビューに示されたような大方針を実行するうえでの、大学等研究機関の中への影響を知りたかったのですが。例えば、トランスファラブル・スキルを2週間とか、キャリアの何とかを2週間とか、あるいはJSPSのようなもの、あと終身雇用ポストの準備とか、結構受け入れる側の大学にも何か組織的に変化が求められたのかと想像しましたが、イギリスにはあって、現在の日本にはないような、受入れ側の大学の体制といった、何か示唆のようなものがあれば教えていただければと思いました。
 以上です。
【科学技術振興機構山村様】  ありがとうございます。ここで、Vitaeがやはり重要な役割を示しています。資料20ページに、イギリスの6大学に地域ハブを設置し、ここが大学とも連携しながらプログラムの開発にも当たっています。大学も、もちろん教育に強い大規模大学だったら独自で実施しますが、そうではないところはVitaeや、Vitaeによるネットワークを活用しながら開発していった経緯があります。
【宮浦主査】  よろしいですか。
【高橋(修)委員】  大丈夫です。
【小林委員】  いいですか。ちょっと。
【宮浦主査】  では、小林委員、隅田委員……。
【宮田主査代理】  最後で。
【小林委員】  割り込んですみません。少し補足させていただくと、実はリサーチカウンシルなどが、資金配分をするときに、トランスファラブル・スキルのトレーニングを条件として付けたのです。それが一番大きいのです。
 僕は2000年前後以来、イギリスの動向を観察していて、実際に現地も視察をして、関係者とも話しをしましたが、まず、ロバーツ・レポートの前に2段階ほどVitaeの事業の前身となるようなプログラムを実施しており、その段階ですでにトランスファラブル・スキルの議論もしました。当時の認識では、日本と同様にポスドクの就職先がない、あるいは博士の就職先がないということが大問題でした。それでトランスファラブル・スキルが出てきて、様々な努力を始めたということがあります。助走期間が10年くらいあったはずです。
 それをロパーツ・レポートで発展させました。主にドクターレベルの方に大きく展開したのが、先ほどのドクトラルトレーニングセンターです。当時、英国の関連事業を担当している人たちと話をした感じでは、恐らくあの段階では、2000年前後では日本とイギリスではそう変わりませんでしたが、その後の取組が違いました。ただし、日本でもトランスファラブル・スキルの導入は、いろいろな大学で実施しており、そんなに大きく違うわけではありませんが、資金的な裏付けなど、組織立った取組とかがなかったので、かなり差が開いてきたという印象です。
 ちなみに、ドクトラルトレーニングセンターは、実は近年設置されたものではなく、結構前からあり、文系、理系を問いません。CASEは工学系が中心ですが、CASEはさらに前からあります。
 記憶が正確でないところもあるかもしれませんが、要するに英国は相当な努力を重ねてきていると理解した方がいいのではないかということです。
【宮浦主査】  組織的に相当努力をしてきたということですね。
 では、隅田委員、お願いします。
【隅田委員】  簡単な質問で、留学生率が高いのと、国籍は問わないファンディングが多かったので、イギリス、非イギリス国籍の人の割合等のデータがあれば、簡単に教えてください。
 あと、アカデミック・フェローシップで、終身雇用ポストを義務化しているということが興味深いです。しかし、これは2004年のことですので、15年経過し、この人たちがどう活躍しているか、追跡調査のデータはがありますでしょうか。
 3点目は、強みについてで、科学基盤、環境を確立、整備されていると、これが優秀な海外人材を引き付けるとありますが、各種の政策を超えて、これは必ず守られているというような、こういう基盤に関わるような部分で何かあれば教えてください。
【科学技術振興機構山村様】  留学生の比率ですが、若手研究者、ポスドクでは明確な数字は見つけられませんが、大学院レベルの留学生については4割程度です。ここでいう留学生というのは、イギリス、EU、ノンEUに分かれていまして、ノンEUとEUを合わせた大学院生が4割程度という比率です。
 ポスドク、フェローの獲得については、国籍までは追えていません。皆、イギリスの機関に属している人ですが、明確な数はちょっとわかりませんが、フューチャー・リーダーズ・フェローシップは、最近、40名程度採択になり、受賞者を見る限り、カナダ人や、中国系の人が数名いたというところです。基本はEU域内が多いです。
 追跡調査については、申し訳ございませんが、現時点で即答できるものはありません。
 最後の基盤については、イギリス全体でどうなっているのかというのはわかりませんが、基本的に国立研究所とかを見ていると、共用の設備の使用が徹底しており、ラボ単位ではなく、1つの研究所で大きな設備を買うときは申告しなければならず、研究設備、フェローシップとかをもらって買うときも無駄な購入をしないよう、一定額の制限あり、徹底されているように感じます。
【宮浦主査】  かなり外国人比率、ノンEU比率が高いと、それだけ引き付けているということだと。
 では、宮田主査代理。
【宮田主査代理】  18ページですが、このロバーツ・マネーの配分をみると、2011年から2018年までで180億円という、素晴らしい額の資金を投入していますが、その途中でVitaeを作ったというところが非常に重要なのではないかと思います。例えば各大学にこの手の資金を投入しても、余りよくできなく、大学外の知恵や、スタッフを借りてVitaeがうまく機能したのではないかと、邪推をしています。つまり、自律的に大学に実施するよう促しても無駄なのではないかと思っていて、その代わり大学の努力を支援するような、Vitaeのような組織を作ることが、実は効率的ではないかと思います。Vitaeそのものの内容をもう少し教えていただきたいです。どういう人たちがVitaeに参画して、何をやったかは示されていますけれども、どういう人たちの知恵とか、力を借りたのかというところを伺いたいと思います。
【科学技術振興機構山村様】  20ページ、Vitaeは2008年に発足しましたが、実は1968年から前身となる取組が行われています。そういった過去行われた取組を2008年に合体させてVitaeができました。なので、歴史が長くて、専門教育を得意とする人や、キャリア支援にたけた人が絡んでいたというところです。もし、Vitaeに詳しい方がいたら補足をいただけると。
【坂本人材政策課長】  1点だけよろしいですか。Vitaeの会長と話をしただけなので、情報量は乏しいですけれども、確かに非常に多様な人材がそろっているようです。例えば、RDFは基本的にワークショップ形式で全部やるとおっしゃいました。このオーガナイザーは、大学の教授ではない方が相当多いようです。マネジメントやコミュニケーションであるとか、あるいは知財とか、資金管理とか、そういった専門家の方々を、Vitae自身が相当、自分たちも吸収しようとし、あるいは、そういうことを教えられるにように、その専門家を全国的にエデュケートしたと。その中核がVitaeだということです。
 宮田主査代理のご意見は非常に鋭いと思ったのですが、Vitaeの会長の話を聞いていて決定的に違うなと思ったのは、Vitaeがアカデミアや産業界をはじめとする外部の社会との間で、中立的存在であるということが非常に重要だったとおっしゃいました。イギリスでもどちらかに偏った意見の対立は少々ありますが、折り合いを付けて、お互いがベネフィットを感じるようなシステムを作るには、中立的な存在が要ると。それが重要だと言われて、日本はこれからだと思いました。
 ただ、小林委員からもお話があったように、日本でもこれを取り入れようとしているところもありますし、そういった方々がネットワークを作り始めているところもあるので、決して日本の大学に任せていては全然駄目だということは、我々は思っていません。現在は発展途上だと思っています。
【宮田主査代理】  でも、半分ぐらいは思っているのではないですか。ですから、助走を早く始める。最終的に中立的な組織を作ることを目標に、いろいろな手を打っていくというところが重要だと思います。
【宮浦主査】  日本型Vitaeを、どのような形で作れるかとかですよね。
【宮田主査代理】  だから、大学で閉じた人材だけで、実施するのではなく、外部に人材を求めるということですよ。主に企業だと思いますが、人材の享受者の一つである地方公共団体や、企業とかがやはり大学の教育に、あるいはキャリアディベロップメントに関与しなければいけないということだと思います。
【宮浦主査】  様々な立場の方や企業の方を中心に、そういう組織的な、日本型Vitaeができれば、それを念頭に。
【宮田主査代理】  Vitaeはいきなりできないので、文部科学省の予算も180億円ではなくて18億円ぐらいになってしまう可能性があることを考えると、大学の中でそういう試みを勧奨して、それがある程度進んだところでVitaeのような中立的機関を作るというのが現実的だと思います。
【宮浦主査】  手が挙がりました。横山委員。
【横山委員】  同じ論点で補足ですが、例えばリーディング大学院では、こういうことをたくさんやってきたと思います。
【宮田主査代理】  そう。
【横山委員】  我々には蓄積があります。だから、それを文部科学省がうまく展開する方策さえ御用意いただければ、よいのではと思います。なので、既に日本も相当のものを持っているという確信を思って一から準備をするのではなく、是非、これまであるものを集積して使い込んでいただければと思います。
 以上です。
【宮浦主査】  リーディング大学院の卒業生が、産業界に圧倒的に多く進んでいるというデータは既にありますので、その後、個々のプログラムを実施している大学のいいところを抽出して、センターのような形でできてくるといいのではないかと、そういうことも考えようかというアイデアとしてまとめさせていただき、お時間です。
 では、1分か、2分ですみません。八木委員。
【八木委員】 最初から聞いていなかったので分からない部分もありますが、これ、研究分野とキャリアとの関係は何か出ているのでしょうか。分野によって、よく機能しているとか、していないとか。
【科学技術振興機構山村様】  分野単位では見ていないところではあるのですが、ただ、最後に研究機器の共用などは、IT分野や人文学などではあまり関係なく、ライフサイエンスなどの大きい機器がいる分野で必要になってくるであろうというところです。それ以外の分野の特徴というと、今、基本的には自然科学系を念頭にお話ししたので、人文だとまた違うのかもしれないですけれども、現在の時点で大きい違いがこうだということは言えないところです。
【八木委員】  分かりました。
【宮浦主査】  それでは、まだまだ話題はあると思うのですが、次のヒアリングに移らせていただきます。ありがとうございました。
 引き続きまして、研究力強化の人材育成の視点で、理化学研究所の小安重夫理事より話題提供いただきたいと思います。小安先生は、科学技術・学術審議会の学術分科会の委員として御活躍とともに、現在、日本学術会議の第二部会の会員でもいらっしゃいます。
 小安先生、15分以内を目安に、よろしくお願いいたします。
【理化学研究所小安様】  御紹介ありがとうございます。理化学研究所の小安でございます。
 本日、お話しさせていただく内容は、実は昨年の12月に、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の木曜会合で、日本学術会議の第二部の一会員の私見としてお話をさせていただいた内容に基づくものです。
 2つ話をさせていただきたいと思います。優秀な研究人材をどうやって育成するかというのは、人材委員会で様々な議論をされているかと思いますが、1つは環境の整備ということです。もう1つは、全て環境の整備ですが、雇用環境や生活環境の整備。それから、人材の流動化をどうやって促進するか。あるいは、阻害している要因があれば、それは何なのかということ。それから、研究環境の整備をすると、この点に関してお話をさせていただこうと思います。
 雇用環境、生活環境の整備と人材の流動化ということですが、これは産官学がみんなで協力することが非常に重要であると考えています。多様なキャリアパス、そしてモデルケースをきちんと提案するということです。先ほどのイギリスの話でもありましたが、必ずしもアカデミア至上主義ではなくて、アカデミアから落後したから金融に行くという話では全くないと、きちんと言うことが大切なのではないかと思います。それから、産業界と公的機関、学術機関、あるいは役所も含めた頭脳循環が非常に重要だと思います。当然のことながら、国際的な頭脳循環の方法を考えていくことが必要だと思っています。
 現場にいると非常に気になることは、若手の人材育成や、若手支援などと言っているなかで、そもそも若手がどんどんいなくなっていくという現状をどうするのかという問題です。それは、要するに大学院、特に博士後期課程に進学する人材が減少しているということ、これは分野によっても少し異なりますが、大学院の話をいろいろと聞くと、やはり経済的なことを非常に気にしているということが見えてきます。先ほどのイギリスの例でありましたけれども、私は、特に博士後期課程は給与をもらうべきだと思っていますが、なかなかそれには予算が必要です。
 そうすると、奨学金でも返還不要の奨学金を充実させる。昔は免除職というものがありました。要するに、きちんと卒業して、別にアカデミアである必要はないと思うのですけれども、きちんとしたそういうプロセスを経た人の奨学金は返還不要にするというようなこと、あるいは本当に直接、給与を支給する、こういうことを考えることが非常に重要だと思っています。そうでないと、競争力は全く生まれないと思います。
 もう1つは、テニュアのポジションが非常に減少しています。やはり若手研究者が言うのは、とにかくテニュアのポジションを増やしてほしいということです。ただ、これはもちろん表、裏がありまして、シニア研究者の処遇をどうするのか話と同じです。逆に言うと、シニアの研究以外での活用方法も考える必要があると思います。
 人材の流動化を促進することで、異動により不利益を被ることがあります。これは、私自身の事例を少し御紹介させていただきますが、私は大学院の博士課程を中退して、東京都の研究所に就職しました。そこで7年ほどいて、そのときはもちろん地方公務員でしたが、辞めてアメリカに渡り、アメリカの大学のファカルティーを8年ほどやりました。そこを辞めて、日本に戻ってきて私立大学の教員を18年間やりました。定年まで、まだ数年ありましたが、そこを辞めて現在の理化学研究所に参りました。
 そこで幾つか、もう少し何とかなったのではないかということがあります。1つは、しばらくして学位を取りました。そのとき、事務に、学位を取ったのだから給料を上げてくれと言ったら、「あなたは過剰学歴であって、我々はそれを求めていない」ということを言われました。要するに、今はもっと変わっているかもしれませんが、役所とか、様々なところに学位を持った人材がたくさんいるということが、様々な施策を考えるときに非常に重要だと思います。そういうことは全く頭にないということを、そのときに感じました。
 もう1つは、異動すると、毎回、退職金が支給されます。そうすると、全くアキュミュレートされないので、その点で非常に損しているということを後から指摘されました。
 さらに、日本の私立大学を辞めたときに、年金でも損をするということに気がつきました。それは、私のいた大学では20年勤めないと年金が支給されませんが、私は18年で辞めたので、支給されません。それから、アメリカに行っている間、国民年金を払っていませんでした。当時は大学を卒業したら、すぐ国民年金を払いなさいと言われないような時代でした。また、アメリカにいると、支払い方がわかりません。このような問題があって、多分、年金も非常に損していると思います。
 ですから、異動すればするほど何か損するようなメカニズムがあり、改善する必要があると思います。要するに、異動のたびに家族から何で異動するのかと言われるようでは、やはり誰も異動しないと思います。こういう点は改善していただきたいと思います。
 それから、これはどういうように捉えるか非常に問題ですけれども、労働契約法の改正で、テニュアではない人たちがそこにいて、例えば研究職の人が10年いるとテニュア、要するに無期雇用の資格をもらう。そうすると、絶対異動しないですよね。いた方が得ですから。どこかに異動したときに、また最初から数え直さなければいけないとか思うと、なかなか人は異動しません。こういう辺りのところ、研究者は動くものだという前提で、ずっとこれまでやってきました。1億総活躍、働き方改革でいいのですけれども、全てを一絡げにしてしまっているところにひずみが生じているのではないかと感じています。
 その次は、研究環境の整備ということで、アメリカでは非常に多くの研究があって、どの程度の研究資金がどの程度の研究成果を思うかというのは山のように研究があります。私がこれからお話しするのは、NIHのグラントのケースですので、バイオメディカル、医歯薬系の研究だと思ってください。
 これは何を表しているかというと、横軸が1人当たりに配った研究費の額で、縦軸が出てきた成果、論文の数とか、特許とか、様々なものが組み合わさっています。細かい内容に関しては覚えていませんが、これの意味するところは、1人に年間4,000万円配分するのが最もいい成果が出るということを表しています。例えば、1,000億円あったときに、400万円を2万5,000人に配った場合と、4億円ずつ250人に配った場合、余り変わらず、それよりも4,000万円を2,500人に配る方が数倍の成果が出るということを端的に表しています。
 これは研究者仲間に見せると非常に嫌われるのですが、実はこういうデータは山のようにあります。先ほどのイギリスのフューチャー・リサーチ・ファンドは、ここに当てはまっています。ですから、そういうところは、やはりどこかで考えなければいけないのではないかと思います。
 特に若手は、今、年間、百数十万円とか、200万円ぐらいのお金で一生懸命やろうとするものの、それではなかなか厳しい状況です。JSTの「さきがけ」は非常によくできたシステムで、競争も非常に激しいですが、育っている人材は非常に実力が付き、伸びていると思います。ただ、問題は、先が崖と言われるぐらいで、終わったときにポストがありませんので、やはり真面目に考えていかなければならないと思います。
 それから、これは先ほど申し上げたようにバイオメディカルですから、人文学のグラフは当然、このようにはならないはずですし、理工系も少し違うと思います。ただ、日本の現状の科研費のシステムは、全ての分野で同じものを同じ制度で扱います。JSPSの学術システム研究センターにいたときに議論しましたが、本来は、この額は分野によって違うのではないかと。ただ、誰も適格な額を言うことができず、変えられないので、もう少し工夫ができるといいのかなと思います。
 ですから、一番上、若手が研究するために必要な適正な予算は、細かい額ではないものがあった方が本当はいいのです。そうすると、全員に配分することは予算的に無理なので、どこかで選抜しなければいけない。こういう痛みをどう共有するかというところかと思います。
 もう1つは、科研費で、特に大型の予算を取ると、大体研究室に大きな機器を入れたがりますが、これをやめるだけでも大分、消耗品費を稼げると思っています。買ったらとにかく共用機器にするとか、購入に制限をかける、あるいは各大学や研究機関に基盤の整備費として競争的資金を設けるなど、様々なやり方があると思います。
 それから、生活基盤への予算措置です。これは、テニュアがないとか、こういうところに関して何とかしなければいけないのではないかと思います。
 また、やはり競争的資金を全て基金化するべきです。要するに、基金化しないことで極めて大きな無駄が生じていると感じています。これは是非やるべきだと思います。
 それから、文部科学省の人には申し訳ないですけれども、共用機器に関して、様々な部局で、似たような事業を実施しています。科学技術・学術政策局人材政策課がプラットフォーム事業を、研究振興局学術機関課が共同利用機関の事業を、そして、学術研究助成課は学術研究支援基盤形成事業とか、これは全て共用の機器に関わるものですが、重複している事業を一度全部見直して、一番いいやり方を議論することが大事ではないかと思いました。
 もう1つ、共同利用に関しては、先ほどのお話にも、特にライフサイエンス系だというお話があったのは、私自身はライフサイエンスの人間ですので、欧米ではアンダーワンルーフで機器がそろっていて、あとは本人が競争的資金で消耗品あるいは人件費さえ獲得すれば、特にそれ以上何を持ち込まなくても研究ができるところがたくさん作られています。これは米国のブロード研究所の例ですが、イギリスのフランシスクリックやサンガーなど、様々な箇所があります。
 日本であれば、現在、共同利用機関で進んでおり、共同機器を見える化をして、そこへ行けば使えるものを作るとか、そういうようなことをやっていますけど、欧米ではさらに進んでいるということです。
 次ページ、これは様々なレベルでの共用機器があると思います。一番トップになると、日本では例えば放射光の施設や、自由電子レーザーあるいはスパコンなどは、もう世界水準でトップを行くようなものがあり、これは皆さん利用できるようになっています。
 その次のレベルが、先ほど申し上げたブロード、あるいはフランシスクリックとか、いわば研究者が消耗品さえ持っていけば、様々な研究ができる施設ですが、このアンダーワンルーフがなかなか日本ではないと思います。
 その下の段の共用ネットワークは、現在、共同利用機関等を含めて頑張って作ろうとしているところなのではないかと思いますが、でも一番下のところは日本で非常に遅れています。大学にしても、機関にしても、いわゆるコアファシリティをきちんと用意して、誰もがそこで研究できるようにするということ。このビジョンを持ち、計画を立て、そこをずっと維持して、機器が陳腐化しないようにきちんとそれをリニューアルするシステムを構築することが非常に大事であると思います。これが若手にどんどん頑張ってもらうために必要なことではないかと、に感じております。
 それで最後のページは、例えばこういうものが実際には世界的に動いていて、こういうところで頑張っている若手が、先ほどのイギリスの例でいえば、グラントを取った人たちがこのような施設で研究をすると、高い成果が出ることがよく分かると思いますので、こういった仕組みをお考えいただけるといいのではないかと思いました。私からは以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。人材の流動性の問題、研究費の規模の問題、あるいは共同機器の問題、複数お話を頂きました。
 手が挙がりましたので、順番に、まず柳沢委員。
【柳沢委員】  ありがとうございます。質問というより追加コメントですけど、全くおっしゃるとおりで、資料8ページの図は本当にそのとおりだと思いますけど、様々な研究資金が基金化できていない、ないしは多年度で活用できないというのがその最大の原因であるという気がします。つまり、一発で使って終わりの使途にどんどんお金が流出します。機器もその1つですよね。高額機器は広い意味での箱物です。建物にしても、高額機器にしても、比較的お金がかかります。しかし、欧米のコアファシリティがすごいところはそれを操る専門家がいることなのです。
 最後のページの9枚目ですか、様々なリストがありましたけども、これよく見て分かるとおり、専門家がいないと、機械だけあったって何も役に立たないものばかりですよね。私もアメリカの大学で、コアファシリティを使いまくっていましたが、複数のコアファシリティがり、どっちがいいか悩む場合があります。その場合、ほとんどそこにいるテクニシャンの質で決めていました。機械が多少新しいのが入っていても、腕が悪いと全然だめなのですよね。
 人を雇うということは、これは自動的に何年間にわたる、5年なり10年なり、継続的な資金の援助が絶対必要になるわけで、一発の箱物では絶対にいかないということだと思います。
【宮浦主査】  それでは順番に、先に手が挙がっておりました横山委員。
【横山委員】  私の方は物理系で、共用の基金の審査を10年ほどやっておりまして、大型機器に関してはよく理解していますが、研究科レベルで資料の最後にあるようなものをそろえていく、一発ではない基金の在り方というのはどういうものが望ましいのか、大学として購入するようなシステムが今後あるといいのかということをお聞かせください。また、先ほど柳沢先生からテクニシャンについてご指摘があり、興味があります。おそらく、研究職の方が自分の研究にプラスアルファでサポートをしているのが現状で、そうすると、その研究者の方が共用に熱意を持ったサービスを提供するところはなかなか徹底できないという、非常にバランスが悪い状況にあるということを聞いております。一方で、放射光などでもヨーロッパの方は専門職が何件サービスを完了できたか厳しく評価するシステムで非常に効率よく回っています。これは物理系もそうですけれども、放射線を使うようなところも件数をこなしてサービスとして喜んでもらえたという評価ではなくて、研究者が傍らでやっているからやる気なく、件数もこなせないという非常に悪い状況があって、それを専門のテクニシャンにするだけでうまく行くのかどうかというのは、私の方からはよく見えないため、そのあたりもお教えください。以上です。
【理化学研究所小安様】  ありがとうございます。まず1点目は、共用機器、この場合は例えば加速器などの大きなものではなく、一通りウエットの実験ができるものは機関が本来そろえるべきだと思います。
 それは機関が、どこまで細かいものまでそろえるか、という議論はとりあえず置いておいて、機関が設備をそろえるために、例えば大学に対して文部科学省はどういうサポートしたら、それがうまく運用できるのかということを考える必要があり、それが基金化されたら、今度は競争的資金とするのか、このあたりを含めてお考えいただければいいと思いますが、研究者がそこを見て、自分はここに移ろうと思わせるようなものにすることが肝心であると思います。
 それから、サポートスタッフですが、これは理化学研究所ではそういう人材を多く育成しているつもりです。問題なのは、大学にポジションがないので、行き先がないことです。つまりキャリアパスが描けていないのですね。これは非常に問題です。柳沢委員が先ほどおっしゃったように、腕のいい人は引っ張りだこですから、皆そこにサンプルの解析を頼みますが、その人がどこかに引っ張られてしまうと、急にそこで研究が停滞するということがあります。
 ですから、これを日本全国でうまく運用するようにするのがいいのではないかと思います。昔は技術職員がいましたが、いろんな理由でそれがいなくなってしまった。やはりきちんとしたキャリアパスを作り、それを運用するということが非常に大事なのではないかと思っています。
 ですから、我々のところも例えばSPring-8のようなところは、どのぐらいのサービスとして、どのぐらい外の人が論文を書いて、そこにきちんとしたSPring-8に対する謝辞が載っているかというところで評価をすることを行っていますので、やはりそういう努力も必要だと思います。つまり、どのように評価するかということです。
【宮浦主査】  ありがとうございます。大学の技術職員の低下によって、大型機器を管理する人間がいなくて困っているという話は非常に多く耳にしますので、それが1つ大学側として非常にウイークポイントになってしまっているということであります。
 手が挙がっておりました八木委員。
【八木委員】  私は大学にいる立場で見たときに、いわゆる研究科等々、専攻レベルぐらいで機器を置いている、また、共共拠点のような研究所単位のようなところで共用のものがある。多様なものがあるわけですが、トータルに見ていくと、特に小さい単位になればなるほど、研究者が買ったものを共用しようとしたときに、それをやるほど若手研究者が疲弊します。でも、僕らとしては共用しようと言って、よい循環を作り、お金が回るようになったらいいよねと思って言うけども、若手研究者からすると、正直迷惑というのが現実だと思います。昔はそこに技術職員がそれなりにいて、うまく回っていたけども、正直、運営交付金が減る中で技術職員の数は年々減り、現実回せる状況ではない。その中でどうやるのかという問題に陥っているのが現状です。
 小安先生おっしゃられたように、基金化でき、何かのタイミングで予算を頂ければ、計画的に技術職員の維持も考えることはできます。
 また、技術職員に関して言うと、難しさはやっぱりキャリアパスです。これはURAなども同様だと思いますが、大学の中で技術職員など、教員以外についてはキャリアパスがうまく描けていないのは事実だと思います。そこがうまく描けると、もう少しよくなるのではないかと思いますが、なかなか難しいところだと思います。
 機器のリニューアルについては、大学は装置が古くなっている現状で、何とかしていただけると非常にありがたいと思う次第です。
 それと、改正労働基準法が実は人の流動を阻害しているという点について、改正労働基準法は2013年に施行されたのです。研究者系でいう、雇い止め10年が到来する今、その問題がどうなってきているのか見直さないといけません。また、把握しないといけないタイミングに来ていると思います。
 前回、少し申し上げたのが、雇い止めの10年が近づき、自分自身の次のパスをどうしようかと思って、若手研究者が悩まないといけないということもあるし、今のおっしゃられたようなこの動きがなくなるという問題もあるだろうし、どこかの段階で、全国でどういうことが起きているのかを把握する、例えばアンケートを取る。それは前回、勝委員もおっしゃられていたと思うので、今回のお話しを伺い、それは少し考えてみてもいいのではと感じました。
【宮浦主査】  ありがとうございました。若手研究者のキャリアパスの多様化と流動性の推進を議論してきたところで、現実的には転職を数回繰り返す中で、非常にデメリットも大きいということで、そういう面を考えると、動きにくい要因の1つになっているというあたりで、少し研究者ならではの問題を考えてもいいのではないかという御提案を頂きました。
 よろしいですか。
【狩野委員】  一言だけ加えます。若手人材の話、こうやって環境の話をたくさんされましたが、もう1つ本質的には結局、何を楽しいと感じる人を元気にしたいのか、いつも聞き直したらいいかなと思っております。研究の活動の要素の中の一体どこが楽しい人を増やしたいかということはよく考えないといけないと思っております。
 直接的には、お金に惹かれてくる人材が欲しいわけではないのではないでしょうか。それから、研究活動の何が楽しいから来る人に元気になってほしいのでしょうか。その辺を是非考えたいと思います。
【宮浦主査】  「楽しい」の分析ですね。
【狩野委員】  何でその道に行きたいのかということです。年金がないから辞めたいかというと、たぶんそれは最優先というわけではなく、ついでに年金の話があるといいということではと勝手に推測しております。一体何で研究者の道に行きたいのか。そこが研究をしていってもらうのにふさわしい人材を支援したいです。
【宮浦主査】  そういう分析は非常に重要で、恐らく研究者は将来のことは余り関係なく、楽しいからやっている方が大半であろうとは思いますけれど。
 それでは、ちょっとお時間超過して申し訳ございません。お二人のヒアリングの先生方、まことにありがとうございました。このまま御出席いただいてもよろしいですし、御退席いただいても結構でございます。
 それでは次に、第6期の科学技術基本計画に向けまして重要な論点整理についてです。特に研究人材の育成確保に対する論点整理でありますが、御議論いただきたいと考えています。
 まず、事務局において、これまで人材委員会での議論ですとか、前回少し時間が足りずに会議後にメールで各委員から様々な御意見を頂戴いたしました。それを取り入れていただいて、計画の策定に向けた検討、論点整理、中間まとめ案を作成していますので、まず、その説明をよろしくお願いいたします。

○ 資料2に基づき説明

【宮浦主査】  最後で図が入り、少し整理をして分かりやすくなったということです。
 メールベースで各委員から御意見を頂戴しまして、いかがでしょうか。反映していただいて、まとめ案を作成し、先ほど御説明いただいたところですけれども、ここが抜けているとか、ここをもう少し強化したほうがよいとか、何か御意見はございますか。
竹山委員。
【竹山委員】  イメージ図が気になりますので、コメントさせていただきます。博士課程終了後は民間・公的機関又は大学の2つに分かれて終わっていますが、循環はないのでしょうか。ポストドクターから民間に行く場合もあるでしょう。多様なキャリアパスは、スパイラルに移動する流動性が必要であると思います。
 最近の任期には、5年を2回、10年未満程度の長期のものも出てきています。キャリアパスに関しても、10年後にアカデミアから企業という選択、もしくはその逆もあると思います。キャリアパスは、博士号取得直後の話だけではありませんね。
【宮浦主査】  ありがとうございます。キャリアパスの多様化、特にセクター間での人材の流動化の促進ということを考えると、博士課程修了後、二択になっており、左右両矢印を入れて、流動化を示しつつ、アカデミアと民間の相互の流れを意識して矢印を入れるのでどうでしょうか。文章中には、特に若手あたりの文章に少し入れるということかと思いますが、いかがでしょうか。
【楠目人材政策推進室長】  失礼いたしました。こちらのイメージ資料は、中間まとめのそれぞれの項目がそのどこの部分の人たちが対象になっているか、少し整理をしようと思って作りましたが、確かにその人たちに多様化が必要だとかいうのは本文の方には記述されていますが、この図は中間まとめのポンチ絵のイメージではなく作ったものですから、そういうところが少し不十分な点があると思いますので、もう少し工夫をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。そのほか。
【宮田主査代理】  中間まとめの図について、不明な部分があります。博士課程の卒業生が1万5,660人いて、修了後、3,000人ぐらいが行方不明になっていますが、これは留学生に該当するのですか。
【楠目人材政策推進室長】  学校基本調査のデータから引用しており、就職も進学もしない者や、多分リカレントで来ている社会人などが入り、不詳という部分もあり、それは除外して記載をしています。
【宮田主査代理】  不明というところが非常に重要である可能性があるので、おそらくこれはポンチ絵で多分御説明のためのカテゴリーを示すための図ですが、次に私どもの報告書に出るときにはもっとダイナミックで正確なものを出さないと、結局、不明の3,000の人が我々の未来を作っているのか、あるいは塗炭の苦しみを受けているのか分からないので、そこはしっかり把握した上で議論したいと思います。今回このイメージ図については、カテゴライズするためだけに使用したいと思います。
【宮浦主査】  恐らく海外留学や、海外に行ったのは恐らく不明に入っているかもしれませんね。
【宮田主査代理】 不明は不明と書いておくべきだと思います。
【宮浦主査】  不明で足すと1万5,000にならないという部分。はい、どうぞ。
【藤垣委員】  イメージ図の修正について、追加で、6のその他に4つの非常に大事な項目が上がっており、図には何も表現されていないので、それをどう取り込むかと今後検討していただければと思います。
【宮浦主査】  高橋委員から。
【高橋(修)委員】  イメージ図について「一般企業等」と「民間企業」が右と左に分岐しており、公務員とか公的研究機関とか、研究職かどうなのかとか、例えば私のような立場がどこに分類されるのでしょうか。私はこの図でいうと、実は不明人材です。一般企業なのかと思って見ていましたが、分類のルールを教えてください。
【楠目人材政策推進室長】  学校基本調査の就職した者の分類の中で、まず専門的・技術的職業という分類があり、その中で大学に行ったり、公的研究機関に行ったりと分かれておりますが、大学教員以外の研究職について、この図でいうと左側の民間企業・公的研究機関に分類をしています。紫の枠がいわゆる研究者と言われるカテゴリーに就職をされた方です。右側の方の一般企業等には、研究者以外の専門職も含めいろいろな場合があると思いますけども、そういった研究職以外の者を右側にまとめて整理させていただいております。
【宮浦主査】  はい、狩野委員。
【狩野委員】  まとめていただいてありがとうございます。1つ目は、この文章の効果は、これを根拠にして新しい政策が作れるかどうかというところにあると思いますが、こちらの議論を反映したような政策を作るための根拠に使えるような文章になっているのか、伺います。そこがなければ、我々がいくら提案しても結局のところは効力ないのではないでしょうか。
 今回のキャリアパス関連の論点は、次のようなことがたくさんでてきたのではと思います。これまで日本では歌舞伎の襲名のように、「私は何の何様を引き継ぐ。」とすると、「私は名前に従った行動を取ります。」という感覚でした。自分が生まれつきもらっているものはこうした能力と好みのセットだから、その場合にそれにふさわしい名前あるいは箱あるいは職種が今までないかもしれないけれど、それら既存の枠組みで規定されるものとは違う生き方をしてみたいと変化したときに、それでも収入が続くように制度設計をしましょうという話が、今回の議論にたくさん出てきたと思います。
 例えば、技術補佐員やURAとして生きていくのも立派な人生だし、それと並んでアカデミシャンになるのも立派な人生だし、途中で企業に行っても立派な人生だしという発想にしていきたいという議論が出ているわけだと理解します。ですが、それと社会が伝統を引きずっている中でどうバランスをとっていくか、上手に考えていかないと、ポスドク過多のような問題に戻ってしまう可能性もあるわけです。
 バランスはどの辺で作れて、それを今政策として打ったら、どこまで世の中がうまく回っていくのか。どの辺でバランスしそうだと思ってこれにしましょうかということです。すみません、何か質問として不完全ですけど。
【宮浦主査】  今の点は恐らくキャリアパスの多様化と言いながら一定の研究人材を確保していきたいという、そういうニュアンスの中で、後者をかなり意識しつつ前者も一応入れておこうかというような絵になって、文書になっているという部分で、分かりにくさが見えている。
【狩野委員】  一定程度、しかたがないですけどね。
【宮浦主査】  恐らく先ほどのポンチ絵が、右のその他というところが、字も右に何となくその他になっていて、キャリアパスを多様化しようと言いながら字も小さいし、何となくその他みたいな雰囲気になっているので、ここは金融機関とかいろいろなところで活躍してもらいたいと言いながら、左の方が太い字になっているので、少しその辺を整理して。
【宮田主査代理】  アカデミアを再生するに必要な人材はたしかそんなに要らなかったですよね。6,000人ぐらいだったと思う。あとの1万人をどうやって国家、社会のために役立つようなキャリアパスを作るかという問題設定が必要だということを議論したのだと思います。それを定量的に図で表示できる可能性があると思います。今日は川端先生がいれば、としのんでいるところです。
【宮浦主査】  先ほどの一般企業の御質問が高橋委員からありましたけど、右の一般企業と左の企業の研究者を足すと5,000人を超えますので、非常に大きなポピュレーションだと思いますが、最初、研究者として企業に入っても、開発、マネジメントや営業など、カテゴリー分けが難しくなるので、少しこのあたりをキャリアパスの多様化も含めて、大学に残ってもいいのは3,500人ぐらいみたいな、足すとそれぐらいになるようですので、ポンチ絵は少し改訂をするという。
【宮田主査代理】  そこはすごく重要で、今、先生いいことをおっしゃいましたが、先ほどのイギリスの話を見ると、大学に残る人は本当に優秀であるという、選抜をする環境をビルトインしておかなければいけないというのが1つあります。
 一方で,優秀というのは伝統的に優秀ではなくてイノベーションという新しい何かをやる仕組みもどっかに作っとかなきゃいけないというのを考えとかないと、多様化は無理だと思います。
 中間まとめに目を通した感想ですが、主語がよく分かりません。大学がやるのか、文部科学省がやるのか、社会がやるのかはっきりしないと実行計画に落とし得ないため、明確にしていただきたいというのが1つ。
 それと、優秀な人材の確保の観点と若手研究者の自立安定的な研究環境の確保という観点は、分離できるかというところがあって、1つは、優秀な人材を確保することは重要なんです、そのために環境整備が必要ですという論理構成になっていると思うので、これを同じ並列にしていいのかなと思います。報告書では目的があって、そのためにどうすべきかという論を展開すべきなので、その目的と手段が混同されている感じがするので、整理して案にしていただかないと、議論が絡まってしまう感じがしています。
【宮浦主査】  順番に。竹山委員、塚本委員、横山委員。順番で。短くお願いします。
【竹山委員】  この中間案ですが、以前とどこが変わったのだろうかと感じました。
 例えば女性活用の問題では、10年前から指摘されている内容の繰り返しのような気がします。この10年を経てさらに指摘する内容とわかるようにしたほうが良いかと思います。今まで課題の解決が遅々として進んでいないのであれば、それを表現に入れたたうえで、もっと取り組んでいかなければならないという言い回しでしょうか。これだと前のものをそのまま使いまわした感じを受けます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。塚本委員。
【塚本委員】  本日の小安先生からお話の中にあった研究者の異動のためにどういう論点で議論するべきか、今後の課題として入れてもよいのではと思いました。
 民間も最近流動化が進んできましたけれども、年金の扱いの件などで、新しい会社には、401kが実はなかったなど様々あり、アウトプレースメント会社が、次に行ったときに損にならないように、その分支度金を用意するなど、様々な形でオファーを出すなどして、異動することが個人にとって損にならないようにしています。大学の先生たちの場合は、企業間の異動とは、また違う論点があるかと考えますので、流動化の際の諸課題にどのように対応をするかを議論するという観点は入れておいてもいいと思います。ありがとうございます。
【横山委員】  恐れ入ります。今までに出てきたことと関連しますが、今期の報告書のキーワードを1つ決めてはいかがでしょうか。そこで使えると思うのは、よく使われますけれども、キャリアの多様性の重要さがこの会議では随分議論されましたので、多様性、多様化を1つキーワードにして、キャリアの多様化、人材の多様化を押し出していくと、この報告書の中核になるのではないかと拝見しました。
 先ほど藤垣議員が指摘されましたが、6ポツが非常に重要な部分だと思います。6ポツの社会に目を向けた人材というのが、人材育成全体にわたって多様化を促す原動力になるはずです。だから、6ポツを、イメージ図の5ポツにきちんと書き入れ、社会に目を向けてキャリアパス、そして人材を多様化していくという全体の共通のキーワードを使ったまとめ方をするといいのではないかと思います。
 また、竹山委員のご指摘のとおり、積み残しの問題深刻だと思います。女性研究者達成目標に、特に物理系などははるか及ばない状況が続いており、それが当たり前になっていることが怖いです。欧米から見たときに、この比率の低さ、ジェンダーギャップ率の低さ、一体何が問題なのかというのを改めて本気で考えて、今期実施すると宣言するくらい、真剣に取り組んでいただきたいと思います。これが日本ではスタンダードであると思考停止には決して陥らないでいただきたい。そのためには、強いキーワードの設定をしたらいかがかなと思いました。以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。6ポツがその他になっています。その他というのはどうでもいいような印象を受けますので、御指摘いただいたように、何か今後の多様性をキーワードとする戦略化を考えて、整理をして書き込んでおくのが第6期に向けて重要だと思います。最も重要なことなので、タイトルを付けて書いておくのがよいと思いました。
 そのほか。隅田委員。
【隅田委員】  2つあります。第6期で新しいことに言及するならば、例えば次世代を担う中高生等の育成については、丸の1つ目について、スーパーサイエンスハイスクールは1文ですが分けていいのではないでしょうか、スーパーサイエンスハイスクールも継続と言いますが、新しい高大接続、国際、社会実装や地域コンソーシアムとか出ていますので、そういう特徴が出ることをきちんと書いていいのではないかと思います。
 そのイメージ図で先ほど大学教員は5~6,000人だと。それはそうですが、日本の大学に限ってその話だと思うのです。先ほど、先に情報提供があったイギリスなど海外でどんどん活躍する日本人がポストを取っていくと、そこがまた流動性の拠点になりますから、それだけに限ることではなくて、どんどん本当にそういうクロスが出るようなモデルになるといいと思いました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。それでは、頂いた御意見を、室長の方から何かございますか。
【楠目人材政策推進室長】  様々なご意見をいただきありがとうございます。宮田先生から御指摘いただいた1番と2番は区別できるのかということ、これはもちろん当然連続した施策になるのですけども、今回、参考としてイメージ図も付けさせていただいています。前回、構成案の段階でも御説明しましたが、1ポツは、博士課程の学生をターゲットにしているものと整理しまして、2ポツはそれ以降のポスドク以降の若手を対象にしたものということで分類の整理をさせていただいています。
 また、竹山先生から御指摘いただいた、何も変わってないように見えるということは非常に重く受け止めたいと思いますが、今回は、先生方から色々頂いた新しい要素を中心にまとめさせていただいております。
 例えば1ポツ目の博士課程の人材の2つ目のところですと、確かに書き方はフラットですが、リサーチアシスタントの雇用の拡大や処遇の改善等を、具体的にやっていくということが入っています。3つ目ですと、産学官の枠を超えた国内外の様々なキャリアパスも、抽象的に書くとこのような表現になってしまいますが、隅田委員のご指摘である海外のポスト等も含めて、そうしたニュアンスも入れているところです。
 それから3ポツ目のところでは、AI等の先端的なニーズの高い分野ということを、御意見を踏まえて入れさせていただいたりしているところです。
 また2ページ目の2ポツですが、丸の2つ目、3つ目、4つ目について、かなりこれまでより踏み込んだことを盛り込んでいるところでして、望ましい給与水準を示していくとか、そういうより具体的なところまでやらないといけないのではないかということは竹山委員からも御指摘いただいたところだと思いますけども、そういったことも入れさせていただいております。
 それから、3番目の若手研究者の研究力向上では、これまでの人材委員会ですと、基本的には環境整備などが中心でしたが、むしろ人材育成のためのコンテンツの重要性や、機関・分野の枠を超えて切磋琢磨できるネットワークの構築の支援については、Vitaeのような中立的な機関による支援も念頭に置いて盛り込んであります。3番目については、昨年の合同部会でかなり議論を頂いたので、そこからは同じように見えるかもしれませんが、合同部会以前には余り議論のなかったところですので、5年前と比較すれば新しいところではないかと思います。
 それから、女性研究者について、ここはなかなか新しいことを入れるのは難しいところではありますが、諸外国の先進事例に少し重点を置いて記述していたり、全然進まない分野への課題に応じた支援を充実していくということを3ポツ目では書かせていただいており、今後の施策につなげていきたいと思っています。
 それから、5ポツ目のスーパーサイエンススクールのさらなる高度化ということで、SSHのことを一言でくくっていますが、新しい内容もあるので、少し記述を追加し、分かりやすくしたいと思います。
 それから6ポツ目、その他の項目名は考えたいと思います。また、4ページ目の上の方で塚本委員から御指摘いただきましたけれども、人材の流動性を支えるということは、ここに内容を踏まえて入れさせていただいています。全般を通して文章の中で埋め込むと、ぱっと読むと余り変わりがなく見えるとのことですので、事前に照会させていただいたときは、アンダーラインを引いて分かりやすくなるよう工夫をさせていただきましたが、さらに検討してみたいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。この取りまとめ案について、ご意見を踏まえて、主査一任で修正という方向になっていますが、少し自信がありませんので、是非、一度修正案を、短い時間でも委員の皆さんに見ていただきたいと思います。コメントございますか。
【八木委員】  1点。先日、うちの若手研究者にアンケート調査を実施しました。その中でみんな何か疲れている気がしました。それともう1つあるのが、時間をしっかりかけて物を考える時間がないというのがあり、その観点が文章中に組み込まれていません。現実、若手研究者が研究に専念できる時間が少ないと思います。研究に専念できるからこそ研究が魅力的になるだろうし、そうでないときに、若手研究者は自分の仕事が人に対して魅力的に見せられません。見せられないと、それを見た学生は博士課程に進学する気にもならないという悪循環が生まれているのではないかとアンケート調査で感じました。
 だから、そういう施策が作られて、大学の教員がちゃんとしっかり深く物事を考えて研究できる環境を作り出し、学生を引き込むということが何かメッセージで入るといいのではないかと思いました。
【宮田主査代理】  それに関連して、八木先生や狩野先生がおっしゃりたいことだと思いますが、これ、「博士課程進学者は減少傾向にある」というフレーズが多用されており、その原因が必ずしも明示されていません。幾つもの要因はあると思います。経済的不安とか少子高齢化でそもそも母数が減少している。でも、それ以外にひょっとしたら大学の教員が今やっていることに魅力がなく、楽しくなさそうだという問題もあり、これは若手人材を確保するだけではなく、大学が、教官そのものの幸せを提供する仕組みになっていないとしたら、そこを是正しないといけないと思います。根本的なところです。
 おそらくこの文章を書くときに、減少の原因を共通認識した上で書かないと、間違ってしまうと思います。そこはもう少し、単に減少傾向にあるということだけではなく、原因と、その対策を打つ必要があるという立論方法がいいと思います。
 私自身の感想から言うと、大学教授が、指導教官の時間がなく、学生と一緒に御飯食べる時間がない、あるいは指導する時間がないという根本的な問題が実はあるのではないかと思っていて、今回のこの報告書の中に触れられていない大学のシステムの非効率的なところの改善も含めて指摘する必要があると思います。
【八木委員】  教員の時間について、昔は小講座制で1つのラボが回っていても、割と余裕がありました。もしかすると人が減少し余裕がなくなる中で負のサイクルが回っているのではないかという気はします。
【竹山委員】  今の点ですけど、文部科学省で以前に調査をしており、大学の教員の研究時間が短くなっているというが指摘されています。ただ、改善策が見当たらずもっとひどくなっていると感じています。
【宮浦主査】  何かコメントを。
【松尾科学技術・学術政策局長】  近々、FTE調査の結果を出しますが、全部減少しており、なかなか改善されていません。さきほど宮田委員のご意見のように、改善されていない点を分析する必要があります。その中で一番大きいのは保健の医療関係。大学と地方との関係とか医療との関係等で医療関係の臨床が増えています。診療行為が増えているのです。
 そして、我々が学生の頃は、これはちょっと言うのははばかりますけど、昔はライフサイエンスの基礎がよくて、臨床分野では、『The Lancet』とか『New England Journal of Medicine』への論文掲載がなかなか出ませんでしたが、最近ではそれが増えていて、それは臨床の時間が増えているということとひょっとしたらリンクしているのかもしれません。そこはよく分析をする必要があります。どの分野も時間が減っているというのは確かです。だから、そこは増やさないといけないと思います。
 先月、「研究力向上改革2019」を出しましたが、例えば研究をやられている方々が教育や学内事務に時間を費やしているところがあるので、例えば研究費からバイアウトで事務補佐の人を雇い、研究者の研究時間を確保して研究時間を確保するとか、申請書の作成について、科研費は研究と一体なので、しっかり作成してもらわないといけませんが、プロジェクトに関わる評価や申請書の作成は簡素化していくとか、それはむしろ研究者でない方がやるとか、研究時間を確保するための施策は考えていかなければならないと思っていまして、そこは少し原因等を分析して施策を出したいと思っているところです。
【竹山委員】  その話になると、他の会議で話題になるのは、文部科学省がやたら書類の提出を求めてくるので、そのための対応に時間がとられている、ということですね。文部科学省もリサーチマップ等を活用して自分たちで書類を作ってほしいと指摘も受けているかと思います。
【松尾科学技術・学術政策局長】  その部分は全くそうで、どのようにして簡素化できるか考える必要があります。労働時間が相当増えているというのは確かだと思います。
 一方で、もう1つ、我々が考える必要があるのは、分野によって相当異なり、例えば、都内の一番大きな大学の学生は大企業に就職するのではなく、スタートアップに行っていますよね。そうすると、例えばAIについて言うと、物すごく大学でAIはやっていますけれども、むしろスタートアップして、そこでいろんなことをやる方がおもしろいということになると、大学ではなく、そちらに行くということになるし、新しい学問分野を作ったとしても、教える先生方がいないと、そこには進まないので、そうすると、どこかに行って、また大学に戻ってくるとか。さきほど言われたように、イメージ図が非常に単調になっていますが、違う生き方や、新しい学問分野になれば、大学でずっとやることが本当にいいかどうかというのもあり、また戻ってくるというのもあるので、複合的に考えていくべきだと思います。
 したがって、5年前、私、人材政策課長で、人材委員会に竹山委員もおられたので、同じ内容だと思われるかもしれません。多分変わってはいるけれども、世の中も変わっているので、我々の施策の考え方とか作り方とかも変えて、アピールポイントなどで少し見せ方を変えて、よく打ち合わせをして修正したいと思います。
【宮田主査代理】  それすごく重要で、変化の速度が速くなっていることを一文入れてほしいです。イノベーションのサイクルが昔は60年程度だったのが、インターネットが発明されてから情報共有のスピードが上がり、10年、15年スパンで破壊的イノベーションを起こしているので、そういうタイムフレームの中で人材とか研究力をどう強化するかというのが一番の重要な視点だと思います。
 そうすると、会社でも、昔は終身雇用で40年勤めるときに、1個のイノベーションを大学で教わり、専門家として大きな顔で生きていけましたが、10年から15年でそれが無力化してしまいます。そうするともう1度大学に戻り、新しい知識やイノベースを学んでステップアップする、この往復がもう始まっているので、その観点も取り入れていかないと。
 皆さん流動性と言いますが、イノベーションが必然的に起こす流動性なのです。だから、その事態を取り込むことが今回の報告書で重要だと思っています。リカレント教育が重要だと1行書くだけでは物足りないと思っているので、是非御検討願いたいと思います。
【狩野委員】  試す活動と、言われたとおりやる活動があると思います。大学の人たちも、政策で決まっていることしかできないと思っている人が多いかもしれません。だからこのような会議のときに政策にあれこれこれ入れてください、と一生懸命に意見をだしてくれますが、実際にはおそらく、政策が追えるのは世に色々ある試みが一定出てきた後が多くて、あまり早い段階で国や政府から出してしまうと強めの批判が出るわけです。だから、試しておくことを誰かがやっていて、その中でよかったものはもちろん後で全員に対して政策化すればいいわけですが、試す段階の活動も幾分か、信頼度の支援だけか金銭的にかはわかりませんが、何か支援しますよと。研究も同じですよね。
 そのような支援にも政策的資金を多少使えるようにするが、最後に大きくするときはもう少し後でないとできないかもしれません。だから、「試すこともサポートしたいと思っています」というような一言があるだけで、もしかすると元気が出る人がいるのではないかと思い、御提案します。
【宮田主査代理】  それはそのとおりですが、CSTIの方向を見ると、そういうようなことを国が全部面倒見ましょうと思っているけど、それは絶対できないと思います。だから、イギリスのモデルでもそうですけれど、チャリタブルファンドとか民間の基金とか、もっと自由なマネーソースがないと、本当のイノベーションは起こらないと思います。出てきたものを早く拾い上げるのが国家の目的だと思うので、それについても入れた方がいいかなと思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。様々なキーワードを頂いて、流動性、多様性、タイムスパンの問題、施策自身をチャレンジするものも、第6期へ向けたチャレンジを、引き続き頑張っていくという観点だけではなく、人材の問題ではあるものの、チャレンジの内容を、民間のファンドも含めて、財源の多様化なども、そういうところを盛り込みたいという委員の皆様の熱意を頂戴いたしました。また、このポンチ絵も変更するということで、かなり手を入れていくことになると思いますので、事務局と主査がまず改訂した後に、是非委員の皆様に短時間でも確認をしていただくということでよろしいですか。
【楠目人材政策推進室長】  確認というのはメール等でということですか。
【宮浦主査】  メールで。
【楠目人材政策推進室長】  承知しました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。最終確認の自信がないので、是非皆様にもご確認いただきたいと思います。
 時間過ぎていまして、議題2に入らずに終わってしまいまして申し訳ございません。アンケート調査を予定しているということで、そのあたり少しごく短い時間でコメントしていただくという感じでよろしいですか。

○資料3、資料4に基づき説明

【宮浦主査】  ただいま御説明いただいた内容につきましては、討論の時間ございませんので、御意見がありましたらメールで事務局の方に頂ければ引き続き検討するということで進めたいと思います。
 それでは最後に、事務局からスケジュール等の御説明をお願いいたします。
【久保基礎人材企画係長】  次回以降の人材委員会のタイムスケジュールでございます。次回は、秋頃9月から10月頃の開催を予定しております。その間、その後、令和2年以降につきましても年4回程度開催とさせていただいておりますが、9月から10月頃からその先にかけて、必要に応じて作業部会等の開催なども検討させていただこうと考えております。次回の人材委員会の具体的な開催の日程につきましては、また改めて日程調整の御連絡をさせていただきたいと考えております。
 また、参考資料の方で総合政策特別委員会の今後のスケジュールも付けておりますけれども、今回の人材委員会の御意見については、修正をさせていただいた後で総合政策特別委員会の方にお出しするということで、総政特の方では6月末以降また開催がされるということになっております。以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。時間を超過して申し訳ございませんでした。本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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