人材委員会(第84回) 議事録

1.日時

平成31年4月16日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成・活躍促進について
  3. 第6期科学技術基本計画に向けた人材育成政策の在り方について
  4. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、長我部委員、勝委員、狩野委員、川端委員、小林委員、柴原委員、隅田委員、竹山委員、塚本委員、藤垣委員、横山委員

文部科学省

菱山サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、松尾科学技術・学術政策局長、渡辺審議官、坂本人材政策課長、楠目人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第84回)


平成31年4月16日


○議題1については非公開


【宮浦主査】 私は科学技術・学術審議会の濵口会長から第10期の人材委員会における主査の指名を受けました宮浦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回は第10期の人材委員会ですが、第9期から特に若手研究者の問題、また、多様性ということで、女性研究者や外国人研究者の問題、幅広く議論をしてきたところではありますが、次期の基本計画に向けて議論を成熟させる時期だと思いますので、若手研究者の問題は様々な場面、審議会総会でもかなり頻繁に話題になっており、人材委員会が担う役割、非常に大きいものになってきています。
 この10期では、議論を深めて、成果物を狙っていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、主査代理の宮田委員からも一言お願いいたします。
【宮田主査代理】  2期連続なのですが、まだ議論が足りないと思っていまして、今期はじっくり皆さんと議論を煮詰めていきたい、結晶体を作ってみたいと思っています。なぜ結晶化かというと、鮮明なメッセージを皆さんとともに作り上げて、国民の心に刺さる、文部科学省の足の親指に刺さるような、そういうぴりっとした提言を出したいと思っています。どうぞ御協力賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  力強い御挨拶ありがとうございました。
 続きまして、本日、第10期の最初の人材委員会ですので、事務局を代表して、松尾局長より御挨拶をお願いいたします。
【松尾科学技術・学術政策局長】  文部科学省の松尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は先生方に御参集いただきまして、本当にありがとうございます。今回、第10期の人材委員会ということで、先ほど宮浦主査からもございましたように、本当に議論は9期で相当しています。ただ、もう一歩、是非結晶化して、私どもも受け止めていきたいと思います。宮浦主査、宮田主査代理、それから、各先生におかれては、9期からの引き続きの方もいらっしゃいますし、10期からという先生方もおられますので、是非よろしくお願いいたします。
 今期の大きな課題ですが、そろそろ政府全体では第6期の科学技術基本計画の議論が始まります。そこで、我々として、どう人材の観点から打ち出していくのかが大きな課題です。そのためにしっかりと御議論いただきたいと思いますし、宮浦先生からは、「もうこれまで議論しているのだから、あとはやるだけ」、と言われているところもありますので、そこもしっかりと我々が受け止めて、あとはどうやるかというところです。
 ただ、我々だけがやると言っても、人材育成は現場で行われているわけでして、世界の状況や現場を見ながらしっかりと、現場が動きやすい形で施策を打っていくことが一番重要だと思っています。そのために、6期に向けての様々な施策、それから、文部科学省の中でも、例えば、大学改革を中心にして、人材、環境と資金ということで、現在、「柴山イニシアティブ」として、様々なプランを立てております。これもうまく機能するよう、しかもスタンドアローンではなく、9期では中教審の大学院部会と合同で議論していただいておりますので、色々な「つながる」ということを私どもも、念頭によく置きながら、委員の皆さまにはしっかりと御議論いただきたいと思っていますし、それを受け止めたいと思っていますので、何とぞよろしく御議論いただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 議題2に移ります。科学技術・イノベーションを担う多様な人材の育成・活躍促進に向けて御議論いただきたいと思います。本日は第10期の最初の人材委員会でもあります。また、今回新たに委員に御就任いただいた先生方も多数おられますので、今後の御議論の参考としていただくために、まず、本委員会に関連する政府の方針や、また、科学技術イノベーションを担う人材育成をめぐる状況等について事務局より御説明をいただきまして、現状を共有したいと思っています。
 それでは、事務局より御説明をお願いします。

○事務局より資料2-1に基づいて説明

【宮浦主査】  ありがとうございます。後ほど、最後、自由討議の時間を用意していますので、そちらで御質問、御意見等の発言をお願いします。
 それでは、次に、議題3として、第6期科学技術基本計画に向けた人材育成の在り方について、人材委員会での検討の方向性に関し、まず事務局より説明の後、委員の皆様から御意見をいただきたいと思っています。
 それでは、次期計画関連で事務局より御説明をお願いします。

○事務局より資料3-1、資料3-2に基づいて説明

【宮浦主査】 次期基本計画に向けた流れについて、スケジュール感も含めて説明がありました。これから1時間程度、意見交換の時間となります。本日は第10期の最初の人材委員会ですので、基本的に御出席いただいている全ての委員から最低1回は御発言いただきたいと希望しています。また、初めての委員もいるため、御発言のときに冒頭で、簡単な自己紹介を含めてお願いします。
 話題が、博士学生の問題、若手研究者、キャリアパス、研究力向上の問題、国際性、ネットワークの問題、具体的には卓越研究員の制度、あるいは多様性、女性、留学生など非常に多岐にわたりますので、また、次期基本計画に向けては、研究力向上に向けた人材確保をかなり強力に打ち出していく背景もございます。いずれの話題でも結構です。
 狩野委員。
【狩野委員】  今回の内容を伺いながら、また、前期の委員も通じて思っておりますのが、対象となる方々の動機付けをどう高めたらいいかということです。動機付けの面というのは、研究あるいは科学をやりたい人たちをどうやって見つけ出して、そういう気持ちのある人を、どうやって、また、いつから、元気付けるかが大きな課題だと思います。これを種々の役割分担もあって、どうしても大学院生なら大学院生に注目しがちではありますが、前期の議論にあったように、少し、幅広い教育課程全体をつなげて議論をしていくのも重要ではないかと思い、その観点で申し上げます。
 1つ目として、いつからか、という点です。例えば、小学校の頃は、皆さん、質問するのが大好きだったかもしれません。しかし、そのうち、なんとなく止められますよね。けれども、質問する力に対して自分で勝手に答えを考え、その答えが真実かどうかを確かめるのが科学だと考えると、質問する気持ちを止めないような仕組みが作れるかどうかは重要と思います。加えて、それぞれの質問に既知の答えはないとわかったら、どんな答えがありうるか、科学ではこれを仮説と言いますが、それを彼ら彼女らに聞けているでしょうか。さらに、それらの仮の答えに、とりあえず証拠があるかと聞くことができるでしょうか。こういう、科学の考え方の基礎を作る、教育する側と教育を受ける側のやり取りはある種、土台を作る仕事なので、政策として出せる内容に含まれるかは分かりません。もしかすると学習指導要領の領域かもしれません。ともあれ、この観点はここで聞いてもいい質問かなと思って発言をしました。
 関連して実例を挙げます。最近、SDGsの関係で勤務地の近くの県立高校と御一緒しています。高校の先生がたが非常に元気よく、生徒さんたちに「SDGsから考えて、質問と仮説を考えて実現までやってごらん、ほかの人たちとのつながりはこっちが作ってあげるから」と言って、地域の方や大学の先生や企業の人など、様々なところにつないでいました。その結果、本人たちが「自信を持ちました、試せます」と言い始め、先日、新聞社主催でシンポジウムがあったときに、壇上の市長や銀行頭取などそして会場の方々の前で、堂々と自分のアイディアを提案していました。必ずしも既存の試験での成績優秀者ではないとのことです。そういう元気のある人たちが、本当は元気づければ出てくるという実例と思います。が、今のところ、全体でこうした動きが起きているようではない印象を持っています。何かいい方法はないでしょうか。
 2つ目に、「何に対して」動機付けを高めたいかというところです。それは、課題ベースの考え方ができるかどうかという点です。科学者の世界は、深遠な、しっかりとした科学を作ることに優先順位を置いてきました。これはこれで重要なことです。しかし、どうしても理論化が難しいところは扱いにくい、したがって扱う課題はそれぞれの専門で扱ってきた課題の延長でという感覚でやっていると思います。その結果として、既存の科学では解決していないところがたくさん出てきています。SDGsもその一環でしょう。けれども、課題を目にしている社会としては科学技術に期待する姿勢が幸いある状況なので、もしそれを水平展開するのであれば、少し科学の厳密さとしては劣るかもしれないけれども、課題に対する視野を広げていくように背中を押せるかということです。
どのように、ですけれども、先生たちは、今までは「自分があなたより優れている」という建付けなので、「私の言うことをきちんと聞いて、勉強しなさい」という姿勢でやってきたと思います。しかし課題に対する視野を広げるようなことをやろうとすると、先生側も解決策や答えはわからない内容になります。そこで、「課題がどんなものかはよく知っていますが、どうしたらよいかは自分もわからないので、皆さん一緒に考えてください」「どんな質問ができますか」「あなたの聞いていること、おもしろいね、自分も答えを知らないけど一緒に考えてみましょう」「どんな仮の答えが考え付きますか」「仮の答えの証明の方法について少しは知っているから、そこはサポートしましょう」、というスタイルがおそらく重要になるわけです。けれども、これを今、教育の中で、あるいは科学者が関与しながら、できるかどうかということです。
 さらに、もし少ないお金を支援に回すと、そういう中で伸びてきた人のうちで、どういう人をサポートするかという選び方の観点があると思いました。もちろん、これを政策ベースに持っていくには、より精密な議論をしなければならないでしょう。今申し上げたいずれの観点も、これまでわが国で行われてきた政策、あるいは、現在行われている教育とは若干色合いが違うと思います。しかし、今まで私が試した範囲では、こういうことをすると、元気な人が出てくる気がしますので、是非こういうことを楽しく思う人を見出して、元気を付けて、その結果として、日本でしか聞けないような質問に対して答えが出るので、外で見てもおもしろい、ものがたくさん出るといいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。幾つか貴重な御意見を頂き、大学や社会がイノベーション創出において、初等中等教育との連携の御指摘があったかと思います。特に理科離れが言われて久しいですが、理科に限らず、自由な発想で小学校から質問する子を育てるという社会的背景がまだまだ我が国には足りないということで、この委員会、比較的高等教育の人材を議論しておりますが、やはり社会全体を考えると、初等中等教育への貢献など、横展開の議論も是非していければと思います。
 いかがでしょうか。横山委員、お願いいたします。
【横山委員】  横山でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構で科学論の研究をしています。特に最近は、政策提言に必要な観点から、理系の中でも数物系の女子が、生命系に比べてなぜ少ないのかということを、社会的、文化的に解明しようというプロジェクトを展開しています。
 例えば、工学系で一番低いのは機械工学で、5%程度です。理学系では物理学科が全国平均17%で低い状態です。これは微増傾向にありますが、ほぼ20年間変化しておらず、海外から見ても異様なほどに低い割合です。原因として懸念としているは、資格も収入も確保される医学部を勧めるということに加え、学校現場では女子生徒に工学や数物進学に必要な物理選択よりも生物選択を勧めやすいということも耳にします。何よりも数物系は男性の学問という社会的イメージが大きいと思います。
 アメリカでは非常に巨大なパネルデータがありますので、長年にわたる調査があり、母親の影響や、あるいは数学の得意の度合いによって、やはり周りの環境が数物に行くことを妨げているという現状も分かっています。是非今後の御議論に、STEMは一色ではなく、特に低い部門の数物系、特に情報系、AIが今後関わってくるため、そうした分野に女子を押し上げる施策を御検討できればと思います。
 また、女性研究者にかかるところでは、アンコンシャス・バイアスを気にしています。特にアメリカでは人事面で、審査員にあらかじめ教育をする試みも始まっており、人材の議論にもお役に立てたらと思います。採用時の無意識バイアスをいかに取り除くか、具体的な方策をぜひ御検討いただきたいと考えています。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。ダイバーシティーの問題は、まだまだ非常に課題が多いところで、この人材委員会ベースの様々な全国の取組、事業も行われているところですが、国際的な評価が非常に低いという現状があります。STEMの問題も、御指摘いただいたとおりで、我が国における機械工学、電気工学、日本の女子高校生だけが物理ができないとは思えませんので、そのあたり、環境問題、社会問題も絡めた議論を推進していく必要があると思います。また、留学生の問題も、多様性という意味で同時に議論していければと思っているところです。 柴原委員。
【柴原委員】  柴原でございます。今回から初めて参加させていただきます。最初に、自己紹介を兼ねまして自分の経歴を申し上げますと、もともと高校の教員で、退職後、茨城大学で2年半、教職課程の学生に授業を行っていて、教育長になってから1年半です。
 初等中等教育について立場上、話をしますが、教育長としてではなく、個人の考えとしてお聞きください。
 私たちが教員になった頃は、自分が知っている範囲で授業をすれば授業は成り立ちました。知らないことを教えることは必要ありませんでした。しかし、現在はそれでは成り立たなくなり、教員は、子供たちが知っているという前提で授業をしないと、できない時代になりました。
 今まで日本の教育が知識を覚えて再生させることに重きを置いてきたことは否めません。しかし、それで国が伸びてきたことも事実です。そのしがらみからまだ抜け切ってないというのが初等中等教育の現状だと思っています。現在、指導主事に10年後の授業をデザインするように指示をしていますが、どのようにしてよいか分かりません。なぜかというと、私たち自身がそのような経験をしておらず、学生に聞いても大学の授業で経験していないため、分からないと言います。教員養成課程の授業を見ていても、将来を見通した、例えば、ICTを使った指導法の授業を実施している大学は少数です。サークル等で実施しているところもありますが、大学の先生御自身がそのような授業をしてこなかったので、どう指導していいか分からないという現実があると思います。
 そういうことを考えたときに、私たちは小中高を通して変わるために、時代の先を見通すためにも、大学とうまくつながりたいと思っています。理想かもしれませんが、先ほど、物理の話が出ましたが、大学でも、今までみたいな、1点でも高ければ、それが公平である、客観的であるという発想はやめていただかないと、高校も変わることができないと思います。
 現在、比較的進学者の多い学校でしか物理を履修していない現状を改善するためにも、大学入試の在り方が、従来の試験を中心とした1点刻みの選抜からいつ脱却するか、私たちはすごく期待していてます。高大接続入試改革も期待していますが、併せて、私たち自身が変わらなくてはいけません。今回、(学習指導要領の改訂により)プログラム教育や英語教育が導入されますが、それを契機に、私たち自身の授業を変えていきたいと、現在もがいている最中です。しかし、なかなかゴールは見えてきません。SSHの話も出ましたけれども、正直言って、その学校の先生の力量だけでSSHに採択されるかどうかは結構大きな課題があります。そういうときに、大学院の方にお力を頂ければ、また変わってくると思います。
 現在、全国の高等学校教員の新規採用者の中で、大学院修了者はおそらく、24~25%しかいません。それしか大学院から高校に来ないということは、大学院の知識が高校に流入していないことを意味します。そこは真剣に考えるしかないし、それが常勤で無理であれば、非常勤等で、その知識を流入させる仕組みを作らないと、高校は伸びません。小中高がきちんと教育できないと、大学も伸びず、最終的には人材育成というのは難しいと思っています。
 何ができるか難しいですが、現在、本県は模索中です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。高大接続含め、教育委員会の方から強力な委員に入っていただきましたので、今後、議論が熟成すると期待をしています。どうしても、大学側の理論で議論しがちですので、是非、中学、高校の先生方の視線で御意見があると大変有り難いと思っています。
 また、大学院生が中学、高校の現場で活躍の場を頂きたいと思っている側面もありますし、また、それが教員免許ありきでない形の活躍の場もあってもいいのではないかということ、そして、SSHと連携した取組等、様々な議論を期待していますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。勝委員。
【勝委員】  先ほどの話と少し離れるのですが、本日、資料2-1で、様々なデータを見て、今まで見なれたデータがたくさんある中で、新しいデータも含まれており、非常に有用だと思っています。やはり論文数は日本が低下していて、中国をはじめ、他国でもある程度は右肩上がりになっており、大学院、修士課程、博士課程への学生の人数も、右肩上がりになっていますが、日本だけが低下しています。これは明らかに日本の政策対応がどこかで間違っていたことを示すものではないかと思います。
 その中で、資料の24ページ、国立大学の常勤教員グループ別年齢構成の推移について発言させていただきます。やはり明らかに、この10年で相当変わっていると思います。若手の常勤、安定的な教員ポストが大きく減少し、もちろん任期付ポストが増加しています。これは種々の競争的資金に伴うものであると思いますが、常勤のポジションがないということは動学的に見ても、若い人たちが研究職を目指さないことの背景にあると思います。また、女性が医学部を目指していくことは、ほかのところに行くと、なかなか安定したポストがないということが背景にあると思われるので、この部分は真剣に考えていかなければならないと思います。
 もう一つ、非常に新しい資料だと思ったのは、中国の政策対応ということでかなりの巨額の資金を投入しています。日本でも海外の大学で学位を取った人たちを厚遇するような循環があれば、そういった分野を目指していく人たちが増大すると思います。今年の1月に、アメリカ経済学会に出席したときに、中国人研究者が非常に多く、中国の大学はお金があるせいか、様々なところでレセプションをしているけれども、日本は1大学もありませんでしたし、プレゼンテーションの数も非常に少なくなっていました。研究ではネットワークが一番重要であるとすると、その循環を、社会科学系においても、海外の大学と日本の大学のとの循環をさらに加速するような予算的な枠組みを考えていくべきだと思います。
 もちろん日本の大学は国際化が進み、海外に行く学生たちも増えていますが、短期留学の支援にも補助金が付いていて、そうではなくて、もっと重点的に、学位取得や研究に厚く付けていくことが必要なのではないかと思います。
 ただ一方では、国立大学も改革が非常に進んでおり、例えば、学費を上げて、その分をテニュアの教員を増やすというような、そういう大学も出てきているので、このような形に変えていくということも必要であると思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。論文数の低下の問題は非常に重要な点だと思います。
 論文数が低下している背景には、若手研究者の任期付ポスト、しかも二、三年の任期でやらざるを得ない現状が論文数の低下にも大きく影響していると思いますので、単に論文数が低下している側面と、人の問題をリンクして、今後、議論していければと思います。ありがとうございます。
 川端委員。
【川端委員】  新潟大学の川端です。
 私は、もともと理学部物理で、その後、生物に移り、北海道大学で理事を歴任した後、新潟大学の理事になりました。先ほどの話もいろいろお聞きしていて、高校だとか、もっと小さなところから始まり、今、大学の話に入って、やはり真ん中に博士離れと言われています。博士課程に進む人間が増えないという。これを裏返すと、博士離れではなくて、「アカデミア離れ」と言っていい。要するに、大学、研究機関も含めて、日本の博士課程自体に魅力がなくなっているというのが核にあると思います。
 どうしてそれが起こっているかというのは、それは様々な原因が複雑に関係しており、それぞれが一生懸命問題に取り組んでいるが、結果が出てこないというのが現状かなと思っています。 このなかに若手の話もありますが、資料の24ページ、25ページを見て思うのは、まず、国立大学関係で考えたら、教職員数約6万人のストックがあります。それが30年から35年ほどで消化されるとすると、毎年約2,000人が退職し、採用されるというフローのサイズの法人で考えると、そこに向かって、博士は毎年約1万5,000人修了します。1万5,000人の中にフローさせたら、その中の2,000人しか入っていかないというのが現状で、その中心にポスドクが1万5,000人いるという。このストックの中で、若手は一体少ないのか多いのという話があります。
 常勤は、資料26ページの非常勤の割合が39歳以下で増えています。確かにそのとおりですが、実はこれ、ポスドク問題が起こり、1万5,000人ほどに増えたときに、ポスドクはひどいぞと言われて、大学の中では名称を特任助教に変えました。要するに、任期はポスドクと変わらないが、特任助教の方が優秀な人材が来るのではないかという話がありました。
 そういう意味で言うと、若手のストックでいえば全体でかなりの人数になります。したがって、ショットで見ると、若手のポストはそこまで少ないわけでもなく、アカデミアの中にかなりの割合はいるのです。
 それでは、どうしていくか、ということですが、若手研究者が少ないという件、それから、もう一つは、常勤職員(承継職員)はほとんど外の人は分からない話です。何か任期のない人かなという、そういう感じでしかないのです。
 だからと言って任期制が悪いわけではなく、少し前までは、若手研究者は1つの大学の中にずっといるよりは、幾つかの大学を渡り歩くなどして、特に海外経験をして、最後に落ち着く大学を決める。1つの大学の中にずっといる人よりは、外で様々な経験した人の方がよいという観点から、任期制が導入されて、若手研究者だけが任期制になりました。最初、我々も反対しましたが、抗えない世界もあり、けれども、運用してみれば任期制も10年任期と思えば、次のポストぐらい得られるだろう、それはと思うような優秀な人を活用しようということから始まった話であり、だから政策的に揺れるたびに、あれは悪だという話が起こっているのが、この流れの中にあると思います。
 それでは現在どうあるべきか。大学の理事をやっていると、共通指標という恐ろしい武器があり、これに抗うと運営費交付金が下がるという話で、39歳以下の割合を増す必要性がどこかにある。理解はしますが、一方で、全体のストックで考えたときには、39歳以下、ポスドクまで含めたら、かなりの割合の研究者の卵が、日本だけでなくて世界に散らばっている。そういう人たちの中から優秀な人を上げていくという。
 では、上げられなかった人はどういうことになるか。メジャーな部分は、この中に埋め込まれるし、当然、そこに民間への活躍があるはずだと思います。
けれども、10年前と現在で比較して民間に就職する割合が大して増えていません。施策を打ったのに、結局、博士課程卒業者で民間に就職した人数が、好景気にもかかわらず微増という状況は、やはり問題として、もう一度、しっかり認識しなければならないと思います。
 また、年俸制等様々な政策が出てくると思いますが、それを我々がうまく消化しながら進む必要があります。良し悪しを論じていても仕方がない部分もあるので、それを我々が消化する必要があります。
 もう1点消化すべきものは、大学という法人組織です。その組織をもっと活用すべきだと思います。法人組織こそ多様化すべきだと思います。人材育成の仕方、経営の仕方等、様々なものが多様化しています。だからこそ個性的な若い人たちが、排出されるのだと思いますし、このような調査でも、表の中に、法人がどう動いているかだとか、今まで以上にデータとして出てくる。どのような形で出せばいいかという問題は、議論する必要がありますが、是非、その切り口を上手に出していただければと思います。
 以上です。
【渡辺審議官】  御指摘のところに全部お答えはできませんが、2点だけ言及します。
 率直に申し上げて、データがきちんとし始めたのは、ここ5年です。5年前からやって、ようやく3年ぐらい前の数字としてまとまってきています。川端委員が御指摘になったことと全く同じことを、現場で数字を見て感じたことがありました。最初はポスドク調査でよかったのですが、御指摘の通り、特任助教が増えています。特任と付かなくても、様々なバリエーションがあり、そういう研究者も含めて調査をしようとすると、個々の大学の事情によりなかなかデータが出てきません。先生方は出すとおっしゃっても、様々な事情により調査回答が出てこない場合があります。
 総長自ら出すように指示をした大学が1校あり、それをきっかけに、RU11は少し出てくるのではないかと思います。言い訳になりますが、きちんとしたデータというのが、なかなか出てこないというつらさがあります。それを見てきたときに、分野別で、きめ細かく見ていく必要があるということになりました。
 また、若手研究者は多いはずです。どうしようかということを、もっと深く、組織として、考えていただく必要があると思います。10年ほど前ですが、イギリスのロイヤルソサエティーの350周年アニバーサリーが非常に大切に見ているのが、「リサーチャー」たちが、どういうキャリアパスかということで、それを簡単に図示しています。イギリスでは大学の「プロフェッサー」はそれだけで尊敬されますが、それになっているのはリサーチャーとして入った人で、博士を含めて、「アーリーリサーチャー」として定義されています。その図によると、0.45%です。日本の場合は、大学のキャリア担当者によると、アカデミアに残るのが一番とされているので、博士課程に行く人は、それが当然という意識はなかなか変わらない状況です。企業も過去10年に比べれば、徐々に変わっていますが、20年前に基礎研究所等を閉鎖し、最近、やはり研究所等が必要という風潮になってきています。様々な振れの中で、若手研究者の数字がわからない状況です。何が言いたいかというと、きちんとしたデータを押さえたいということです。
【川端委員】   現在、各大学で、IRが急速に発達し始めています。データを外に出す、出さないは、それをどう使うかということとのリンクの作り方なので、文科省と国立大学法人の関係をいま一度整理して、IRとのリンクの作り方も、是非一緒に考えていきたいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 企業の話が出ましたので、企業のお立場から発言が出るのだと思います。長我部委員。
【長我部委員】  長我部と申します。理学部の物理を出て、企業の研究所に入って、20年間、基礎研究をやって、それから15年間ぐらい研究マネジメントをし、ここ五、六年は事業をしているという立場です。意見が2点あります。1点目は、なぜ博士課程の修了者を企業が採らないのかということです。物理学会誌5月号の平成の飛跡という特集に、この30年間で企業の研究所に何が起こったか執筆しました。一番大きな変化は、株式の所有者です。以前は株式持合い或いは金融機関が株主の主体で、株主は経営に何も物を言いませんでした。しかし現在は、多くの海外の機関投資家等が、日本の企業の株式を持っています。そういう人たちにとって大切なのは、極言すれば企業の中身ではなくいかに自分の元本を保証して、それを増やしてくれるかということです。投資家の考えはとてもよく分かりますが、そういう株主がいて、企業の経営責任が上がり、取締役会などガバナンスが強化され、したがって、基礎研究、人、学位持った人が大事ですが、一方で、きちんと利益を出してくれると、こういうことになっていて経営が難しくなっています。しかし、これは日本も米国でも世界中で状況は変わりません。
 では、何が異なるのかというと、やはりスタートアップの資金で、1989年にバブルがはじけたとき、日本のベンチャーファンドが運用する資金は1,000億ほどあり、米国とほぼ同レベルでしたが、平成の間、ほとんど変わっていません。米国は当時から2桁近く増えて、さらに中国が追い付きました。要は、リスクをとってトライするということが、日本の大企業は、株主の制約上難しくなり、リスクをとれるベンチャー投資が伸びていないということです。
 では、どうすればいいかということですが、今の学生さんはスタートアップや、学位を取った人で新しい仕事を始める人が出てきています。また、Googleなど圧倒的に利益率が高く比較的に自由に研究ができる外資系の企業に就職する人もいます。日本の大企業に就職してもつまらないと思い、学位を持った人が、スタートアップを起こしたり、大学もベンチャーファンドを持っているから利用するなど、そういう流れに徐々に変わりつつあると思います。そういうことが起これば、学位を持った人がイノベーション、産業界に参加するというパスもできてくるのではないかという期待があります。
 それから、もう一つのポイントは、評価です。人材育成の観点からいうと、JSTの運営統括やアドバイザーをやっており、若手を指導する立場の先生方と話していて思うことは、評価をやり過ぎではないかということがあります。今の評価は、もちろん政策の評価から、プログラム評価、上位レイヤーをきちんと評価して、プロジェクトそのものに関して、余り指摘しないという風潮になってきていると思いますが、実際、政策評価とかプログラム評価を実施すると、やはり現場の評価をしてしまいます。そうすると、我々もよかれと思って指導をするし、皆さん、自分の経験を基に指導をするのですが、それが本当にいい人材を育成しているのか、やっている本人も疑問に思うところがあります。米国の制度を見ると、採択のときが非常に厳しいと思います。海外の人間もレビューして、入り口は厳しいが、事業の実施中は何も言わない。そのかわり、結果が出なければ、次の提案が採択されません。
 このように、評価のやり方は人材育成に影響します。研究の評価のやり方は、日本全体の、特に研究力という点で見た上で、ずっと下まで影響してしまうのではないかと危惧しています。これは、合っているかどうか分からないのですが、大体どこ行っても、そういう議論が出ますので、御指摘させていただきました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。おまとめになった5月号は是非共有して、拝見したいと思いますので、よろしくお願いします。
 民間に博士人材が流れないという部分は、中途、いろいろな形で活用していくという、任期の問題、川端委員からも先ほどございましたけれども、2年、3年が問題なのであって、任期5年で2回やって10年、そこで道が見えなかったら辞めた方がいいという職種でもあると思います。また、芽が出ないから企業に拾っていただくという視点ではなく、もっと早い時点でイノベーション創出の勝負師として採用していただきたいというニュアンスが共通認識かと思ったところです。企業御出身の方で、何かお考えございますか。
【宮田主査代理】  じゃあ、最初によろしいですか。
【宮浦主査】  はい。
【宮田主査代理】   新規事業の作り方などを見ると、集団が決めるのではなくて、おそらく、特定の個人が集団のリーダーとなって引っ張っていくというところが重要ですが、日本の今までの大学は、入学が難しくて、しかし、落第させると、運営費交付金にも響きかねない状況が存在して、みんな出してしまうという、ここが1つは根本的に大きな間違いなのではないかと思っています。
 先生の権威も、もし学生の生殺与奪権を持てば、それなりに責任も伴うことになりますし、そういった落第を、あえて視野に入れた品質管理というか、大学の成果物は人材なので、その品質管理をどうするかという仕組みが必要だと思います。そのときに、評価のやり過ぎということと絡めて考えると、今までとは違う評価をしなければいけないと思っています。知識の継承の評価じゃなくて、新しい知識の獲得、あるいは獲得をしようとした努力といったものに評価軸を移す必要があると思っています。
 それで、日本はもう中央研究所のようなものは企業としてはできなくなっています。そのかわり、例えば、AIなど、モントリオール、トロントの大学に研究室作り、アドホックな人材を集めて、研究を猛烈にドライブするやり方になります。ただ、それはもう10年ぐらいで終わります。同じようなことは、実は中外製薬がシンガポールでやっていて、彼らが抗体を作る技術の6つのイノベーションがありましたが、彼らの社内では、たった2つの製品しか開発できる余力がなかった。だから、あとの製品をどう開発するかと考え、6か月の間に人材を採用できて、研究所をスタートアップできたシンガポールで製品開発を行っい、現在、2期目になっています。ですから、そういう意味で、品質管理された人材の流動性というのを少し考えていただきたいと思います。少し問題が複雑なので、幾つか分けて、みんなで議論しなければいけません。
 まず、大学院重点化というのはよかったのかというのを考えていただきたい。これは簡単なことで、教員の数を同じまま2倍の学生を受け入れてしまった。この反省を日本がしっかりやった上で考えなければいけません。人口減少していますから、人口が増大している戦後間もなく、フルブライトで出た教授たちが戻ってきて、必ずポストがあるという状況とは違います。中国は今、まだ人口ボーナスの時代にあるので、中国のモデルを我々はもう追求することできないのです。
しかも、人口ボーナスの時代は、同じことを繰り返していても、市場は拡大していったので、企業は同じことやって、「組織の言うことを聞け」みたいな、知的劣化をさせるような状況をやっても売上は上がっていました。けれども、現在、人口は減り、市場は、そのまま放っておくと縮小します。ですから、我々はイノベーションをやらざるを得ない。この状況でどのような人材を教育していくのかということを1つ考えなければいけません。
 それから、知識は、2種類あると思っていて、1つは本とか人に聞いて獲得する知識ですが、それをそのまま研究の場に持っていったときに、全然実験がうまくいかないという現実に立ち向かいます。そのときに多分、クリエーションが起こるはずなので、そういうようなことを提供することが、実は大学の中核価値だと思っていただきたいと思っています。
 もう一つ重要なのは、さっきの大学院重点化の延長線上にありますが、さまざまな評価や書類が、我が国の大学では非常に増えています。教授が大学の学生と御飯を食べれるような時間も得られなくなっているという状況は、大学としてのプラットフォームの劣化だと思います。だから、いかに研究や教育の時間を確保するか。これは事務作業の自動化ですよね。これからITが導入されてくると、どんどん自動化されていきます。
 今、ほとんどのコマーシャルとか、タクシーに乗ったときのコマーシャル作業はすべてIT化、自動化です。これをどうやってとことん推し進めるのか。自動化というのはガバナンスにもつながりますので、是非、そこをやっていただきたいと思います。
 それから、もう一つはお金の種類です。本当にリスクな研究に対して、国家の資金が投入できるのかという非常に大きな問題があります。エイズの研究をやるといって取った科研費を、後で見ると、ほとんどエイズの研究をやっていなかったみたいなことが十数年前までは許されていましたけど、ガバナンスがよくなったため、なかなか創造的闇研究ができなくなってしまった。これをどのように確保するかということは本当に真剣な問題で、ヒトゲノム計画のパイロットプラントに関して、パイロット試験に関して、余りにもリスキーなため、米国政府も英国政府も政府資金は入れていません。これを出したのはチャリタブルファンデーションで、ウェルカム・トラストや、ハワード・ヒューズ、日本だと笹川財団、現在の日本財団が出した程度で、実は研究や人材の多様性は、お金の多様性の問題でもあるため、いかにチャリタブルなファンドを科学研究の中に投入できる仕組みを作るか。ふるさと納税でも何でもいいのですが、何か新しい仕組みを作らないと、このまま国家が窮乏化していけばしていくだけ、我が国の科学研究も、それに引きずられる形になってしまうことを、私は一番恐れています。以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。評価の問題、常に出て、評価をやり過ぎですとか、書類が多過ぎ、本来の時間確保ができないということも非常に問題視されているところで、関連して、施策そのものをこれだけ議論して、「ちょっとこれやってみたい」と言うと、やっぱりその施策や打ち出したものが失敗する可能性もあります。3年後、あるいは5年後、失敗しても許容していただきたいというか、10年間議論して余り変わらないのだったら、3年失敗しても大して変わらないのではないかと思います。失敗を恐れていると新しいことができないということで、そういう評価、絶対失敗してはいけないと、それは施策も同様ではないかと思っているところです。
 竹山委員。
【竹山委員】  課題を指摘するのは簡単なことかと思います。それぞれの立場から課題が見えるものです。この人材委員会だけでなく、文部科学省の他の委員会でも同様な議論が毎年行われているのが実情かと思います。
【宮田主査代理】  もう何回、同じテーマでとかね。
【竹山委員】  同様な課題が毎年抽出され議論され続けていますが、解決するに至っていないのが日本の実情だと思っています。ただ、少しずつは変わってきている部分もあると思っています。博士号取得後に大学に残るだけでなく多方面でのキャリアを目指す学生も育ち始めていていますし、起業マインドを持つ学生も出てきています。
 博士人材のキャリアアップでは、企業が重要な鍵だと思います。一方、社会人ドクターが少しずつ増えていることを考えると、企業のグローバル化に伴うニーズの拡大があるかと思います。文部科学省での長年のプログラムの成果もあり、少しずつ育成が進んでいるとはいえ、この速度で良いのかということがあります。先ほども言及しましたが、企業の役割が今後重要になると思います。
話は変わりますが、具体的に博士の人数を増やすということであれば、はっきり言ってサポートの予算を拡大することが必要です。博士のJSPSの採択率が低くなっている点が別の会議でも指摘されていました。博士課程への進学の一番の要因は、お金のサポートの有無です。国の制度だけでなく、教員の競争的資金でアメリカのように積極的に博士課程の学生をサポートすることも重要かと思います。研究推進には博士課程の学生が必要である以上、研究費からサポートするのは当然という考え方が必要だと思います。
科研費や大型資金でも、このような人件費には別途上乗せしてくれるような制度があると良いのかもしれません。
【宮浦主査】  ありがとうございました。制度的な改革も同時にやっていかないと、現状で頑張ろうと言っていても、難しい部分があるかと思います。 塚本委員、どうぞ。
【塚本委員】  キャタピラーの塚本と申します。
議論に参画をさせていただく機会を頂戴し、どうもありがとうございます。微力ながら頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 簡単に3点コメントいたします。先ほどからでている産業界において、どうして博士人材を活用していないのかという話ですが、制度的な課題も産業界側にあるのではないかと考えています。メンバーシップ型の雇用形態からジョブ型になって、ジョブディスクリプション・給料等を明確化して提示できる労働市場になれば、中途採用市場が活性化し、博士の給料が300万円以下ということはなくなり、最初からもっと高額が提示され、そのかわり2年、3年契約で結果が出なかったら双方合意の下に契約終了というような制度などのように、徐々にかわっていくのではないかと思っています。
 2点目は、柴原委員や狩野先生がおっしゃっていたような、子供のころからどうやって研究に興味のもつ人材を育成するかということです。ランドセルのメーカーが、今年の4月に、小学校1年生に、将来なりたい職業のアンケートをした結果が新聞に掲載されており、小学生の6歳の男の子が、スポーツ選手、警察官、研究者、女の子がケーキ屋さん、芸能人、花屋さんとなっていました。男の子のなりたい職業の3位が、研究者だというのはすばらしい思っており、その意欲をどうやってすくすくと育てていくのかが重要だと考えます。聞くところには、仮面ライダーの職業が研究者ということで、その影響もあるのならば、ヒーローイメージなども使って、研究者に興味をもってもらうということも、広報宣伝としてありえるのではないかと考えます。
 また、3点目ですが、資料2-1にあった研究者の移動状況について、1990年代のリーマン・ショック以前は、産業界でも、グローバル企業の本社は、大体、六本木近辺にあり、外国人など多くの人材がいて、アジアパシフィックの本社が日本にあったと思います。現在、上海やシンガポール、オーストラリアに移転しており、もしかすると、研究者の状況も、グローバルにおける日本の存在の縮図になっているところもあるのではないかと思っています。ただ、世界の地政学が少しずつ変わっていく中で、like minded countryの結びつきも変わってくる過渡期になっているのではないかと思います。したがって、研究者のコラボレーションの在り方もより活発になりうるチャンスなのではないかと感じています。
 よろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  ありがとうございます。是非、よろしくお願いします。
 隅田委員、お願いします。
【隅田委員】  
 少し戻りますが、最初に若手研究者というのが1つキーであり、これは難しくて、私も若手と言われながら、もう20年ぐらい苦しんでいて、これは相対的なものなのか、絶対的な、どこか基準を作るのかというのもあります。私自身は大学、学部は理学部でしたが、大学院から教育に進み、今は科学技術分野の才能教育の研究をしています。附属高校の管理職もやっていますので、その意味では、まさに現場にもインターフェースがあるということがあります。
 まず若手人材に関連して、高校生とかのことを、あるいは中学生、義務教育のことを少しお話しします。私は、9期の人材委員会の委員をやっていたので、それを踏まえて、現在興味を持ち、次、やってみたいという思いを述べると、高校生が、今、大学に行って研究をさせてもらえるとか、大学の教員からレクチャーを気軽に聞いてディスカッションできるなんていうのは、やはり昔には明らかになかったことで、これはグローバルサイエンスキャンパスとか、SSH、などが、今まではつながっていなかったものを随分とつなげたと思います。今、ジュニアドクターで、義務教育段階まで入っていて、これも最初は大丈夫かなと思いましたが、教育委員会のサポートも得られて、実施機関も増えていっています。
 私自身は5歳ごろからの幼い子どもを対象に大学でプログラムを実施しています。すると、女の子は、自由研究で発表しますし、大学教員が質問しても答えるような5歳、6歳、7歳の女の子もいます。そういう意味では、つながりつつある学校種を超えた取り組みを強くしたいと思います。それと、学外でも科学技術コンテストは、確実に成果を上げていて、自由研究はもちろんですが、オリンピックのような種別が違う能力を見る施策といいますか、人材育成が着実に広がって成果を上げつつあります。それで考えると、どうしても地域差や、環境差が出ているので、テクノロジーとかを上手に使うことで、より層を厚くし、コミュニティやアカデミーのようなのが、もっとできていくのがいいのではないかなと思います。
 2つ目は、企業の管理職で大学院卒が非常に多いというデータに関連して、日本の、海外の企業で、管理職でMBAを取得している方が、いつ取得したかというのを思います。恐らく企業に就職する前に取得しているのではと思います。日本はどうしても就職する前に全部、できるだけいいものをそろえたいと考えるのだと思います。そうではなくて、ライフスパンやライフマップを作りながら、いつ、こういうところで、こういうのができていって、やりながら完成していくというモデルを示すことで、若い人でもイメージが付いてできてくるのではないかと思います。そういう意味では、流動性に時間軸を入れると、もう少しデータとして厚みが出るのではないかと思います。
 3つ目は、外国人学生の増加についてです。これは私、大学の管理で国際に関わっているので、重要な問題に感じています。多分、留学生が来る国も変わってきているんじゃないかなと、そういう戦略どうするのかとか、あるいは、では、すごく伸びているような国が、例えば、論文数であったとして、どれぐらいの割合の予算規模を投入することで、どれぐらいのインパクトがあるのかとか。日本も研究予算を支出するのですが、それを小出しに分けるのがいいのか、どれぐらい大きくすればいいのかとか、そういう予算規模のインパクトも含めて、やっぱり外国のやり方というのは見ていきたい。
 さっきの研究者のフロー、塚本委員の発言が興味深く、30年前と航空機の運航状況がどれぐらい変わったかを見ると、確実に増えているはずなのに、日本人の流動性が増加していないのは、残念なことで、これだけ国際便が増えて、お互いの出て行く方もインバウンドも増えているのに研究者の流動性が増加しないというのは、別の観点から、もっと攻めるところがあるんじゃないか。
 4つ目は、大学教員の数が、データだけ見ると、わずかに増加しているように見えますが、やはり非正規者がおそらく多いということで、それの是非はともかくなんですが、それに関わって、マネジメントに関する大学の負担が増えていると思います。URAを出すことはとてもいいことですが、事務系職員とかURAの待遇が必ずしもよくありません。すごく優秀な事務の方が必要なのです。そういう人を特別な人事待遇できるシステムを作っていくことで随分変わるだろうと思います。
 最後は、今まで優秀な人材や強い個をどう採用していくかというような施策がイメージですが、個だけでは人数も限りがありますし、強いリーダーを育成することで、ほかの人も巻き込んで連れてくるような強い人材を育成する施策ができればいいかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 いくつか御指摘いただいたのは、スーパーURAとか、あるいは外国人教員は、現在の人事制度の給与システムでは誰も来ないというような指摘も多々ございますので、抜本的な改革も必要かと思います。
 小林委員。
【小林委員】  小林です。今期、人材委員会にまた戻りましたが、実は6年ほど前までは何回かやっていました。しかも、この問題はほぼ30年、ずっと関わり続けていて、ほとんど議論の内容が変わっていません。新しい言葉や、概念は出てきていますが、流動性や、高齢化等、根本は何も変わっていません。
 それはともかく、色々なことを言うと切りがありませんが、つくづく難しいのは、人材の問題は、例えば、若手の比率にしても何にしても、それだけで決まるものではなく、研究活動のサブスタンスというか、中身が変わっていくという、あるいは研究分野も変わっていく。これは10年、20年の間に、かなり大きく変わるわけです。これは産業界でも同じです。
 そういう中で、若手研究者の数が決まるのは、そちらの方が先にまずあるはずなのですが、最近は、とにかく若手の比率がどれくらいとかというのが先に来てしまい、人材の問題は本末転倒の議論になりがちです。この点はいつまでたっても変わらないので、非常に苦しい気がします。
 もう一つは、我々が今、議論している人材問題の捉え方は、もしかしたら間違っているのではないかという気がしています。例えば、小さな変化を見ていると、有名な人材紹介業は、最近は博士課程修了者も取り扱い始めました。要するに、採用側は当然、年収の何割かを支払って紹介を依頼するわけですから、かなりのコストが掛かるわけで、それでもそれをやり始めているということは、そこに商売が成り立ち始めているということで、これは1つの変化の兆しだろうと思います。
 あるいは、民間に就職するような若い人たちが増加しており、私の周りでも、最初から大学に残る気はなく、民間に就職する博士の学生もいます。このような小さい変化は結構あるのではないかと思います。
 また、別の角度の問題ですが、日本の研究力が低下しているという言い方をしますが、一方で、中国人留学生と、様々なデータを見ながら話をしていると、実は論文数や引用数等の指標で見たときに、中国の大学があれだけ頑張っているにもかかわらず、安定的にトップ100に入れるのは2大学プラスアルファあるかどうかです。日本はあんなにお金がないと言っているにも関わらず、2大学が入っている。しかも、100番、200番とかという、下げていくと、中国はほぼ入ってきていません。一方で日本は多くの大学が入っています。それを見て中国人は、日本はすばらしい、コストパフォーマンスいいと言うわけです。ですから、これは見方の問題なので、どっちがいいか分かりませんが、様々なものの見方があると思います。 それで、若手人材の問題設定の仕方も似たところがあり、確かに現在、若手の教員が少ないのですけれども、中にはしっかり押さえている人間もいて、その中で、きちんと育ってくる人間がいて、明らかに若手の中のある種の人たちは、今のシステムに適応している、若しくは過剰適応している人たちがいます。例えば、法人化後の研究環境は、評価が厳しいのは当然で、彼らはしっかり計算して、インパクトファクターの高い論文誌へ積極的に投稿します。業績をきちんとカウントしていくわけです。そういう人たちが結構長い間、もう15年くらい、ほぼ継続して育ってきています。15年というと、大体、45歳ぐらいになってきており、これからはそういう人たちの割合がかなり増えてくる。あるいは、ここにいる人たちは、一部を除くほとんどの人が、もうそれより年上になっていて、古い見方をしていて、今の若い人たちから見たときに、何が問題なのかという、逆に問題提起される可能性があります。
 ただ、そういうインパクトの高い商業系のジャーナルは、大体、色々な分野を載せるわけで、そうすると、いわゆるピアレビュー的な意味での研究の評価という、要するに、中身を見た評価というのがほとんどなくなる。その結果、数字だけで評価が決まっていく中で、年をとった方は心配をするわけですね。どっちの心配が正しいのかわかりませんが、そういう心配する方が正しいのか、若い人たちのように、そんなことを言っていて業績を上げない方が問題だと言って尻をたたくというような人たちいますけれども、そういう現実になってきているのですね。もう既に。そこは単に、今の評価の仕方がいい悪いというのを単純に言えないような気がしていて、もし、本当に考えるのであれば、少し根本から考えないと、もしかすると、とんでもない若手人材の育成をしてしまったのかもしれないし、逆に我々がとんでもない時代錯誤の見方を今でもしているかもしれないという気がします。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。30年間で変わったところと変わらないところがあるということです。
 藤垣先生、お願いいたします。
【藤垣委員】  藤垣と申します。 私の専門は、科学技術社会論で、科学技術と社会ですので、その観点から、簡単に1点だけ加えたいと思います。
 最初に狩野先生が、動機付けの話の中で、小学校で質問をしたい人の話をされ、そして、勝手な意見を言う人に証拠を挙げて何かを言うことができるかというエピソードを話されましたけれども、そのような観点から、実は人材育成には2種類あるのではないかということを御提案したいと思っております。
 それは、今までの議論と、視点が違いますが、1つは研究力を支える科学技術系人材です。もう一つは、科学技術に関連する、ある種の知識を持った良質な市民を作ることです。例えば、それは市民性教育と言ってもよいのかもしれませんが、常に我々の社会では、科学技術に関連した話題があるわけで、例えば、子宮頸がんワクチンの安全性の問題であるとか、低線量被曝の問題でありますとか、様々なことが記事になったり、テレビで報道されたりするわけです。その中には、本当にきちんとしたものと、そうではないものとがございます。それで、そういうことを見たときに、その記事は一例だけど、それがどのくらい一般化可能なのかとか、テレビの内容はどれだけ一般化可能かとか、考えることができる市民をつくることは大切です。メディアの報道の中には、一例を大変センセーショナルに報道する場合もあります。それに対してきちんと自分の頭で批判的思考のできる人材が必要です。その一例は、統計データのなかのどこに位置するのか、他国での統計データはどうなっているのか、日本のデータは他国と比べてどうなのか。我々がここでやっているようなものも、統計データですけれども、一般の人が、いろいろな話題に対して、そういうような思考ができるような教育をしていくということも、実は人材問題なのではないかと思います。そうだとすると、小・中から大学まで、いわゆる科学技術立国を支える底力のような一般市民の科学技術リテラシーと市民性教育みたいなものも、本当は議論しなくてはいけないのかなと思いながら聞いておりました。以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。人材の育成と、あと科学技術の広い理解を促していくという両側面が重要であるという御意見です。
 一通り御意見を頂戴しましたので、今後、これを踏まえて、事務局内で少し話題を整理した上で、今後の議論の資料作成などを進めていければと思っています。
 最後に、事務局にお返しいたします。
【坂本人材政策課長】  大変貴重な御意見頂きまして、ありがとうございました。
 先ほど宮浦主査や小林委員からもお話がありましたように、この人材の問題は、なかなか複雑であると考えています。ただ、何かしらの体系的なアプローチで問題の構造を変えていきたいと考えています。
 その構造を変えたいという意思表明だけさせていただきたいと思うのですが、表面的なことだけではなくて、1つ、我々の考えを御紹介したいのは、先ほど宮田委員から、品質管理された人材の流動性、これはキャリア形成が大事であるとの御発言がありましたが、それは我々も気づき始めています。この品質管理された人材の流動性、あるいはキャリア形成というのをどうやってやるかというと、おそらく、幾つかの要素があり、少なくとも、その人の能力が高められる、その出口とすべき能力は何なのかということと、そのポジションを、その人にどう与えるのかということ、そのポジションにおける活動をどう評価するのか、そして、それは処遇がどうあるべきかということをセットで考えていかないと、人はそのキャリアに対して魅力を感じないし、その目指すものが何かということを明確にできません。これをセットで考えるということを、我々は、勉強し始めているところです。例えば、イギリスです。先ほど審議官の渡辺から紹介がありましたが、イギリスはしっかりと議論しています。2002年にイギリスの財務省が教育改革についてレポート「ロバーツ報告」を出しており、若手の研究者、あるいは博士人材をどうやって育成するかというときに、エンプロイヤビリティーをキーワードとしています。博士人材、あるいは若手研究者が、そのキャリアに魅力を感じると、やはりそれはエンプロイヤビリティーがあるからだろうということです。そのエンプロイヤビリティーとは何かというと、それは産業界との関係で、きちっと定義をして、それを能力のスペックに落とし込むと。その能力をどう形成するか、そのプログラムにどう落とし込むかということをやるべきだと言っており、実際、リサーチカウンシルを中心に、始めています。そのキャリアというのは、トランスファラブルスキルと最近言われている能力開発プログラムにつながっていきますが、そのトランスファラブルというのは、もともとは、おそらく産業界を意識したようですけど、現在はトランスファラブルスキルを推進している団体は産業界のことだけではなく、世界トップレベルの研究者を育てるためにトランスファラブルスキルが大切だと言及しています。それはこれからの人材にどういう能力が必要かというところに近づいてきています。スーパーサイエンスハイスクールでも気づいていますけれども、探究学習がどういう能力を育てるかというのは、これは先ほどから御議論のあった、知識を習得し、それを活用できるという、いわゆる認知的な能力ではなく、探究学習が非認知領域の能力を刺激しているのではないかと思います。それがトランスファラブルスキルを身に付ける、非常に重要な要素になっています。どういう人材が将来必要とされていて、それは、その人の人生にとってどういうことが大切なのか、能力なりポジションを包括的に見て、必要な人材育成プログラムを作っていくということです。しかも、それは、その人材育成プログラムはプログラムとして存在するだけではなくて、様々なツールを組み合わせなければなりません。宮田委員からお話のあった、大学という知識、人材生産のプラットフォームが劣化しているという指摘と非常に関係しており、例えば若手の研究者が雇用されているプロジェクトの中で短期的な成果、プロジェクトとしての成果だけ求めて人材は育たず、そこに人材育成の要素をどう組み込むかというマネジメントの問題も出てくるわけです。そういったものを我々はどう改善していくか、政策論、制度論を一個一個やるべきだと思っています。そういったことを我々も御提案しながら議論を進めていきたいと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。
【宮田主査代理】  是非、それは国家のためだけではなくて、個人の幸せを中心にして、その幸せな個人が幸せな社会を作るということをやってください。そうでないととんでもないサイボーグを作る事業になる可能性があります。
【宮浦主査】  幸福度の低い我が国としては、一人一人のキャリアと幸福を前提としたシステムを作るという、皆様の強い意思表示だと思います。
 事務局の方からお願いいたします。
【浅井人材政策課長補佐】  連絡事項です。資料4になりますが、今後の審議は、5月に人材育成の在り方についてヒアリング等を、6月に重要事項の検討をという形で進めていく予定としております。
【宮浦主査】  ありがとうございました。それでは、ほかに何か事務局から。
【久保基礎人材企画係長】  最後に、今回の会議の議事録にいては、作成次第、委員の皆様にお送りいたしますので、お目通しいただきました上で、主査に御確認いただきまして、文部科学省のホームページに掲載いたします。
 また、本日机上資料については、そのまま置いていただきましたら、後ほど、こちらの方から送付いたします。
 以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 本日は初日ということで、皆様の決意表明の会になったと思いますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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