人材委員会(第80回) 議事録

1.日時

平成30年4月17日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 15F特別会議室

3.議題

  1. 研究人材を巡る諸外国の動向について
  2. 文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握・分析について(人材委員会関連部分)
  3. 科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会 合同部会の審議状況について
  4. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、長我部委員、狩野委員、川端委員、鈴木委員、隅田委員、髙橋(修)委員、竹山委員、塚本委員、萩谷委員、林委員、柳沢委員

文部科学省

戸谷文部科学事務次官、佐野科学技術展学術政策局長、伊藤文部科学審議官、松尾大臣官房審議官(科学技術展学術政策局担当)、勝野科学技術・学術総括官、坂本人材政策課長、石丸人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第80回)


平成30年4月17日


【宮浦主査】  科学技術・学術審議会人材委員会第80回を開催いたします。本日の会議は冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、飯澤委員、高橋真木子委員、豊田委員、勝委員、原田委員の5名が御欠席で、長我部委員が遅れての御出席の予定となっております。現時点で12名の委員が出席で、定足数を満たしております。
 まず、議事に入ります前に事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  事務局でございます。資料を確認させていただきます。
 本日の会議は、前回に引き続きまして、ペーパーレスによる運営とさせていただいております。お手元のタブレットのデスクトップにあるフォルダーを開いていただきますと、議事次第、資料1、資料2-1から2-3、資料3、参考資料が保存してございます。
 また、委員の先生のお手元には、研究人材の育成・確保に関する主要な資料を配付させていただいております。具体的な内容は、議事次第に記載のとおりでございますが、議事進行の過程で不備等がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 以上でございます。
【宮浦主査】  それでは、議題1に入らせていただきます。前回、事務局からも御紹介ございましたけれども、海外、特にアメリカや中国等が博士号取得者を急激に増やしてきております。本委員会におきましても、研究人材をめぐる国際的な動向を踏まえることが重要と思われますので、本日は国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センターにおいて、特任フェロー・研究主幹をお務めでいらっしゃいます永野先生をお招きいたしまして、研究人材をめぐる諸外国の動向について御紹介いただきました上で、それを受けて議論させていただきたいと思っております。
 それでは、先生、よろしくお願いいたします。30分程度のお時間でお願いできればと思います。
【永野様】  永野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。
 一応、「世界が競う次世代リーダーの養成」ということでまとめさせていただきました。本日の話の展開ですけれども、まず、私が何故若手研究者に関心を抱いたのかという動機を簡単に説明させていただいた上で、各国にどのような事例があるのかということと、フォローアップがされているのかということを中心に展開させていただきたいと思います。
 まず、私が若手研究者に関心を抱いた動機は、十三、四年前にオックスフォード大学を訪問した際に、ブレア首相の主席科学顧問をされていたMayさんという方とフェローシップの話になりまして、ポスドクにフェローシップがあるとハーバード大学の教授になったりスイスのETHの教授になったりすると伺いました。また、候補者を選ぶときには、選考委員が才能ある若者に賭けるリスクを取るそうです。日本のように、自分みたいな年長者が敬われるのは気持ちがいいけれどということをおっしゃっていまして、本当なのかと思ったことがございます。
 また、私はもともと科学技術庁で仕事をしていたことがございまして、当時の科学技術振興事業団に出向して、さきがけ研究21の担当の室長になりました。3年ごとに新しい領域を立ち上げなければならないということで、実はそれまで新技術事業団ということで物理、生物、化学と3つの領域を扱っていたのですが、私は情報も必要だと思い、4つめの領域として「情報と知」を立ち上げました。
 それまで領域総括は皆名誉教授でしたが、情報の分野は新しい発想が要るのではないかと思い、慶應の理工学部長だった安西先生にご了承いただき、当時のポスドクや助手ぐらいの人に、3年間で毎年1,000万円の研究費を支援しました。その後何年か経つと、石黒さんみたいな人がいたり、後藤さんという、個人の名前は知られていませんが、初音ミクの音声合成でその分野では非常に有名になられている人がいたり、まさに社会を変革している人が何人もいます。そのようなことがあって、若手の支援に関心を持ち始めたということでございます。先ほど申し上げましたように、Mayさんのお話を本当かなと思ったのが関心を持ったきっかけです。
 そして、各国の事例を調べますと、結構古いところから現在まで続いているものにマックス・プランク協会があります。こちらの理事長が2014年の理研との交流30周年のときに来られて講演したポイントをもらったのですけれども、マックス・プランク協会の運営のプリンシプルが左に5つ書いてあり、その下に、「Independence as early as possible」というのがあります。これに基づき、リサーチグループリーダー制度ということで、1969年から50年ぐらい行っている制度があり、これはPh.D.取得後7年以内の人を9年間支援するものです。毎年四、五千万円の研究費を支出して、今でも毎年大体10人ぐらい採択しているようで、修了後の進路はこちらに書いてあるとおりで、マックス・プランクに残る人は15人ぐらいいます。
 先ほど、Mayさんのお話をしましたが、Mayさんが関係している王立協会が実施するユニバーシティ・リサーチ・フェローシップは、1983年に創設され、もう三、四十年行われているもので、将来、指導的立場に立つ可能性のある卓越した若手研究者に独立して研究できる能力を身に付けさせるものです。終身雇用ポストを有していない、1回から3回のポスドク経験者を対象に、原則8年間、例外的な場合には10年間支援します。
 たまたま私がこちらを調べ始めた頃に、若手でポスドクだった人がノーベル賞を取ったというような話もあり驚きました。実はこちらでノーベル賞を取ったのはこの人1人だけだったそうですが。数年前に行ったときの人数ですが、採用数は毎年35人ということです。去年は57人を採用したそうで、いろいろな基金のファンドを集めて、制度は変えずに人数を増やしていますということでした。
 アメリカの事例ですが、Presidential Early Career Awards for Scientist and Engineersという取組が、96年にクリントン大統領によって創設されています。なかなかおもしろいことに、11の省庁が参加していて、大統領府の科学技術局が取りまとめて、NSFも入っています。2016年には105名が受賞しました。写真の真ん中の2列目あたりにオバマ大統領がいるようです。NSFの人は、みんなキャリアプログラムの受賞者です。キャリアプログラムとは何かというと、前身は30年ぐらい前からずっと行っていて、テニュアトラックのアシスタントプロフェッサーを毎年600人ぐらい採用して、5年間に40万ドルを支出するものです。いろいろ調べると、ハーバード大学のジュニアフェローシップ制度というのは1933年から行っていて、80年ぐらい同じ取組を行っていて、この中の受賞者にはミンスキーなど有名な人が何人もいるそうです。ということで、制度の内容は変えずに、長期的に行っているのが共通しているところと感じます。
 ドイツ研究振興協会の会長で、その後、EUがやっているグラントの事務局の事務総長になって、ヒューマンフロンティア財団の事務総長も数年前までされた方とたまたま知り合いになったので、この話を持ち出したところ、大事なことが7つあるという持論をお持ちでした。一番大事なのは早期に独り立ちさせ責任を持たせること。2番目は、家族も養える一定程度の財源的独立。3番目は、ファカルティ側の十分なメンタリング。以下、質のよい大学院生、ポスドクが近くにいること。所要のスペースと資源。透明性のある職員採用システムに立脚したテニュアトラックシステム。子供への対応も含めた夫婦が研究者の場合の支援システムの存在。このようなことを言いながら、最後のものはフランスには負けてしまうなとか、ドイツも透明性のある採用、なかなかこれができていないというような話もされていました。
 その中で一番重要なのは、やはり早期に独り立ちさせるということと、メンタリングも重要ですけれど、学生やポスドクなど同年代に非常にいい人が近くにいることが大事なのだと強調していたことを思い出します。
 この方がドイツ研究協会の会長として作ったのがエミー・ネーター・プログラムです。エミー・ネーターとは20世紀初頭に活躍したドイツの女性数学者です。こういう名前を付けることから、やはりドイツでも女性研究者は少ないのかもしれません。それは別にして、目標は2つあって、1番目は繰り返しになりますが、研究者として早期に独立させる環境を作ること。2番目は、外国から卓越したポスドクを招聘、もしくは呼び戻すこと。応募資格は博士取得後2年から4年。5年間で毎年60人、大体2,000万円ぐらいずつ。ここで彼が言っていたのは、もちろんヴィナカーさんはアメリカでポスドク経験があるわけで、さきほど、一応アメリカの例も出しましたが、アメリカは非常に早く独立させたり、ちゃんと自分で責任を持たせたりすることができるようになっているけど、ヨーロッパではそうでもないと。したがって、いい若い人がたくさんアメリカに行ってしまうので、彼らを呼び戻すにはどうしたらいいかということもこの目標の1つなのだと言われていました。
 これはブリュッセルでも言われていますが、北欧の人は会議のときに常にいいアイデアを持ってくると言われています。スウェーデンの戦略研究財団には、Future Research Leadersプログラムが2001年にできて、3年ごとに20人を採択しました。余り人数は多くないですけれども、Future Research Leadersプログラムという名前が付いているもので、関心を持って、いろいろ調べてみたところ、ゴールとして、1番は当然ですけれども、2番として、リーダーシップ、3番としてサイエンスの結果を実社会に役立てていくこと。4番目として、future leaders of academic and/or industrial researchのリーダーになることと言っておりまして、この5年間のうちにいろいろなプログラムを合宿で受けなければいけないということで、リーダーシッププログラムとか自分自身のことを理解するとか科学と社会とか、Ethics values diversityとかcoaching motivation、メディアとのコミュニケーションとか、To lead groupsとかそういうような、ラッピングのところもやはりそういうことですけれども、こういうことをちゃんとマスターしなさいというのがプログラムに組み入れられています。リーダー教育だから、そうなのかもしれませんが。
 おもしろいのは、さきほど言いましたように、3年に1回ということですので、ワークショップや合宿のほかに、一、二週間海外に行くというのがちゃんと組んであるそうで、日本に3年ごとに来ます。今年もまた来ます。ヨーロッパの国には行かないのかと言うと、ヨーロッパのことは全員知っているので、違うところに行くとすると日本がおもしろいということを言っておりました。
第1回のときに日本に来たメンバーの一員が、その後、東京のスウェーデン大使館の参事官になり、今はエルゼビアの日本支社かアジア支社か、そこの社長になっているということです。
 欧州連合は、2007年に個人を支援するグラントを始めました。それまで欧州連合は基本的には、もともと日本が80年代に情報で非常に飛躍したということで、欧州の産業競争力をどうやって高めるかということで、3か国ぐらいの機関が入ったグループを作って、そこへ支援するというのに徹していたのですが、突然、それだけではヨーロッパの地位を守れないということで、2007年に欧州研究会議というものを設けまして、今はそちらでグラントを出すようになりました。その選び方は、基本的原則のところにありますように、科学的エクセレンスのみを評価の対象とし、国籍の制限はなく、場所が欧州であれば資格があります。日本の若い人もこちらに採択されている人は結構います。
 助成金としては、実は初めの頃は若手助成金というのしかなくて、こちらは博士号取得後2年から12年以下ということでした。5年間で150万ユーロですが、それですと、やはり7年以下の人が不利だということになって、ここもまた予算を分割して、2年から7年の人と7年から12年の人に分けて、7年から12年の人は5年間で200万ユーロ、3億円ぐらいということにしています。
 この10年間で採択された人が研究している機関をお示ししています。もらったら、どこへ行ってもいいのですけれども、フランスは大学が入っているので、御覧の通りCNRSが多いのです。国籍はドイツ人が一番多いです。行き先としてはイギリスが一番多くなっています。
 イスラエルはアソシエートメンバーですので、いろんな機関が入っていて、スイスは2つしか国立大学がないのですが、2つとも高いところにいて、これで好きなところに行けるのですが、もちろん流動化を促していますが、もともと行ったところにいて、だから、ドイツ人で言うとイギリスに行く人が多いらしく、イギリスにいるのでドイツ国籍の人が多いですとか、そういうことがございます。
 次は年齢と人数です。オレンジ色は若手支援の、2年から7年と7年から12年の人数です。誰でもいいよというのが青色です。若手の人を毎年500人くらい採択し、5年間で2億円から3億円くらい支援しています。
 それから、中国にいこうと思いますけれども、中国のNSFみたいな機関で、NSFCと呼ばれている国家自然科学基金委員会というものがございまして、俊秀青年科学基金を行っております。こちらも、実はもともと45歳ぐらいまでの人を対象にした若手資金があったのですが、2012年に、先ほどお話しましたドイツ研究振興協会の会長であったヴィナカーさんが国際評価委員会の委員長になって、45歳以下と言いつつ、昔は36歳ぐらいの人が結構採択されていたのですが、最近、44歳とかそういう人ばかりになっているので、新しいプログラムを作るべきだという指摘がされました。それに従って、38歳以下の海外経験者で、国籍は問わないが華人であることなど、一定の条件を満たした者に対して、毎年400人に3年間で2,200万円ぐらい支援しています。数年前に行ったときは、3年間で100万元出していたのですけれども、先月行ったら、30万元上げましたと言っていました。この写真は、国家自然科学基金委員会です。右側の小さい建物はドイツが建てた建物で、ドイツとの協力のために使っています。
 それから、時々話題になるかもしれませんが、中国で海外から人を引き戻すという取組の代表事例として、青年千人計画というのがございます。
 選定要件としては、中国の法律を厳守すること、自然科学・工学分野、海外における3年以上の継続した研究経験を有するPh.D.の保有者、海外における著名な大学、研究機関、企業研究所における正式な教育職、あるいは研究職ポストについていること、中国におけるフルタイムで働いていない者。帰ってきても1年以内ならいいですよというようなこと。これをもらって、帰国して3年以上フルタイムで働けること。将来のこの分野のリーダーになる資質を有すること、といったことです。研究費総額が一番下にありますが、100万元から300万元で、これは人によって、分野によってフレキシブルですが、300万元もらう人は余りいませんという話で、支援期間は3年間。一括した生活手当、給与は別途、一番いい大学と同じぐらいもらえ、毎年600人ぐらいが採択されていて、年齢は30歳代の初めということです。行っていた国を見ると、アメリカ、ドイツ、英国が多く、日本は5番目になっていました。
 これを一覧表に、全部はなかなかできないのですけれども、対象分野とか対象者、年間採用人数、支援期間、支援金額、発足の年。一応、発足年が古いのから、マックス・プランクはマックス・プランクの中の制度ですので、こちらには載せていませんが、英国とドイツ、スウェーデン、EU、中国を並べてみて、グラントの名前、対象分野。全分野というのもあり、自然科学・工学云々。対象者は、ここに書いてあるように、非常に若い人が多くて、年間採用人数もこんなような感じです。支援期間は、中国は3年や5年、10年近いものもあります。支援金額はどこも非常に大きいです。さっき、中国が100万元から130万元になったとお話ししましたけれども、スウェーデンも1月にここに行って聞いたところ、1,000万クローナーだったけど1,200万クローナーにしたというようなことで、基本的に同じプログラムを改廃したりしなくて、いいなということになると評価を受けて、それをより充実したものにしていくかなという感じが受け取られます。
 これはお話ししましたが、先ほどお話ししただけでなくて、スイスとかオランダ、フランス、シンガポール、韓国、インド。どこでもいろいろなものを行って、ちょうどここに青年千人計画のものは書き移していますが、あれは2011年だったと思います。これを見て、ちょっとおもしろいなと思うことは、マックス・プランク協会のグループリーダー制度、これをヴィナカーさん、先ほどの7つの原則に基づいて、ドイツ研究協会でエミー・ネーター・プログラムを作ったということですが、このマックス・プランク協会のグループリーダー制度を結構参考にしていると思われます。
 そして、欧州連合の若手支援ですけれども、こちらはスウェーデンの、欧州連合のERC、欧州研究会議で聞いたところでは、もともとの発端はデンマークで欧州連合の会議を開催したときに、スカンジナビアの国がこういう今までのEUのやり方でない新しい個人へのグラントのアイデアを出してきたと言っておりました。
 そして、さきほど若干触れましたけれども、ドイツ研究振興協会の会長だったヴィナカーさんが欧州連合、ERC、欧州研究会議の事務総長になります。したがって、Starting Grantなどこの辺はエミー・ネーター・プログラムと非常に似ております。フランスは長いことグラント機関がなかったのですけれども、2006年か、少し前、ANRで若手研究者支援制度を作りました。これは、そもそもグラント機関を作ったこと自体が、欧州連合がこういう活動をするのに刺激されて、そこで自分の方でいいのを選んで、欧州からさらに推薦して、お金をもらって、ある意味でそれに間に合わせるように準備をフランスがしたと思われます。
 実は、2007年の欧州連合のこのシステムは突然できたのではなくて、欧州の場合、何かしようとすると、数年前からいろいろ準備をします。それがうまくいくのか、いかないのかということをチェックして、うまくいかないところを直しながらファンディングシステムを作ります。欧州の場合は、2004年にEuropean Science Foundation、これはストラスブールにあると思うのですが、そこでまず手始めに行い、修正して、きちんとしたものにします。
 何を修正したかというと、例えば、前の2004年のシステムですと、各国のファンディング機関を通過して、そこでうんと言ったものを欧州に持ってきます。そうすると、研究者の側からは、自分の国のファンディング機関でにらまれていると上に出ていかないというコメントがあって、それはもうやめて、ブリュッセルで直接行うと、出すということでございます。
 そのときのリーダーだったスウェーデンの人が、シンガポールのナショナルリサーチファウンデーションのエグゼクティブボードのメンバーになりまして、シンガポールでそういうフェローシップができて、彼はその後、シンガポールの理工大学の学長になります。さきほどのドイツのヴィナカーさんは中国の制度を国際評価委員会の議長として作っているというような、いろいろなことが国際的に関係していることが分かります。
 時間になってしまいましたので、こちらは省略しますが、英国の場合、こういう感じで、Ph.D.を取った後、プロフェッサーになるのは0.45%しかいないですとか、いろいろなキャリアの、これは王立協会の350周年のときに作った冊子の中の絵ですが、こちらで私が感激したのは、リサーチポリシーで一番大事なことは、Ph.D.を取った人が生涯どういうキャリアを積んでいくのかということを常にウオッチするのがポリシーの大事なところだとするところです。
 この図を作ったデータはvitaeというところがあって、そちらは今でも、研究者の3年後はどうなったかですとか、どういう素質が必要かですとか、いろいろなことを行っています。
 まとめですが、卓越した若手研究者の養成については、20世紀、1960年ぐらいから連綿として継続したプログラムが実施されています。21世紀初頭頃から、社会の成長のための原動力は人の知的な力であるという認識が世界的に広まって、卓越性、チーム統率能力で秀でた若手研究者を支援して、早期に独立させる制度が先進各国に普及し、かつアジアにも広がってきました。そういう中で、人材をめぐる国際的な競争が激化していますが、欧州と米国は、先ほどの欧州研究委員会のお話もそうですが、アメリカからたくさん人を呼び戻しているので、今は頭脳還流が実現したと彼らは言っています。中国と米国の間でもそういう感じを受けております。
 それと、このファンディングシステムというのは、研究者が動くのは当然なのでしょうけれども、ファンディングを考える人たちもいろいろ流動していたということが印象的でありました。御清聴、どうもありがとうございました。
【宮浦主査】  永野先生、ありがとうございました。
 それでは、ただいま国際動向の話題提供をいただきましたので、それに関連いたしまして、15分程度意見交換を行いたいと思っております。様々な話題を提供していただきまして、国際動向、特に欧米、欧州連合、また、最近では中国の動きが非常に大きくなってまいりました。委員の皆様からどうぞ御自由に御意見あるいは御質問も含めて、いかがでしょうか。
 狩野委員。
【狩野委員】  お話ありがとうございました。私も、欧州の方々と意見交換をした結果、一番大事なのは、若い人が自分のリサーチクエスチョンが追えることに尽きるような気がしていまして、これを支援することが重要だと思っています。したがって、若手研究者と意見交換をしますと、「独立」という言葉がたくさん聞かれるのですが、独立の意味というのが、本人の問いが追えるという意味の独立であって、組織の中の独立とは違うと、裁量権があることが大事だという意見が聞かれましたので、共有いたします。
【宮浦主査】  川端委員、関連してでしょうか。
【川端委員】  ありがとうございます。「若手」というキーワードは世界的にもいろいろ考えられている。その上で、2つお聞きしたいです。
今日お話しのあった若手支援の話はかなり大きな額のファンドをするものですが、多分、各国のレベルで言えば、1万人とか2万人とかいる中に30人とか10人というものを選んでいくプロセスがある中、これらのファンドはどういう位置付けなのか。要するに、すごいやつから何か成果を出させようとしているというファンドなのか、それとも、もっと全体を上に引っ張り上げようという感覚で、周辺の施策がこれにくっついているのかどうかという、それが1点。
 もう1点は、支援期間が3年とか5年という期間が長いのか短いのか。「育成」という単語で言えば、もっと長いスパンがあっていいような気がするのですが、3年とかいうと、さっさとやって、さっさと結果を出してよという、こんな感じにも見えるので、その辺についてお聞かせいただけるとありがたいです。
【永野様】  私も確たることは言えませんが、第1番目の質問については、別にこれだけが制度じゃなくて、全体の中でやっている中からこういうのが必要とされており、突然、こういうプログラムを考えたということではないと思います。
 2番目については、中国等は別にしまして、私が長いなと印象深かったのは、royal society、王立協会の10年です。ポスドクで雇われて8年するとETHの教授になると初めに言われて、本当かなと思いました。マックス・プランク研究所もそうですよね。だから、そういうものが模範にあって、最近できたものは、ちょっと短くなっているのかなと感じます。また、支援期間が長いということとは別に、制度がずっと長いこと続いていますよね。50年も続いているとか、ハーバード大学は33年からとか言っていて、チョムスキーなど聞いたことがある名前の人がたくさんいました。文化系でもいたりして。そういう意味でも長いというのが私の感覚です。
【宮浦主査】  柳沢委員。
【柳沢委員】  これ、ブレイン・ストーミングということでいいですよね、何でも。余りまとまらないのですけれども、幾つか感想があります。
 幾つか重要な点があると思います。1つは、この手のプログラムは、みんなボトムアップだということです。どなたかおっしゃっていましたけれども、分野を問わずに若い人が自分のアイデアで行うボトムアップの研究をサポートするというファンダー側の態度が非常に大事だということです。
 それから、スライドをお示しになっていましたけれども、現実にはイギリスでも日本でも博士号取得者の中で学者として一生やっていける人はごく一部なのが現実なわけです。それは当たり前ですけど、言わばこういうエリートプログラムというのは、その少数を相手にする。例えば、こういうエリートプログラムを取った人の半分ぐらいは教授になっているとか、そういうのを狙っているプログラムであるのが普通だということです。
 もう1点は、独立とは何かということですけれども、私はアメリカに24年いたので、非常にラッキーなことに、行った瞬間から独立のPIだったのですが、これは組織の中で独立かどうかは大事ではないと言われると、少し違います。もちろん自分の問い、自分のアイデアで仕事ができることは当たり前ですけれども、やはりそれが自分の仕事だと周りが認めてくれることが大事です。だから、我々のような、純粋にアカデミアの基礎研究の範疇で言いますと、ぶっちゃけた話が、例えば、論文が出たときに自分がラストオーサーになると。自分の上のチェアマンなり何なりがいたとしても、コントリビューションがない限りその人はコオーサーですらないと。そういう立場が独立ですね。自分が責任著者であると。これは狭い意味でのアカデミアでの話ですけれども、そういうことが大事だということです。
【宮浦主査】  ありがとうございます。責任著者の問題などは、独立は何かという点で非常に重要なところかと思います。
【柳沢委員】  要するに、後から、それが自分の仕事だと周りが評価してくれるということですね。これは、極めて大事です。そうでないと、やっぱり独立とは言わないと思います。
【宮浦主査】  ほか、いかがでしょうか。
 隅田委員。
【隅田委員】  2点質問がございます。1点目は、40歳以下とかPh.D.を取って何年というタイミングで勝負しなければならないとなると、ある程度早い時期からスタートした方が有利だというのはイメージできますよね。そうすると、そういうトップリーダーを養成するような教育がどれぐらいの段階からスタートしているのか。多分大学院から、もしくはもっと早い時期からされているのではないかという気がいたします。こちらについて、何か資料があれば教えていただきたいということが1点。日本と違って、今度は年配の研究者、50代とかの研究者の役割が、また違う役割があるのではないかということで、何か変わったものがあれば教えてほしいです。
【永野様】  そんなに幅広く調べているわけではありませんが、大学院のマスターからですね。ドクターになったら当たり前ですけれども、やはり自分のテーマを探すというか、そこで相当訓練されて研究者になっていくという。だから、日本の大学院はよく分かりませんけれども、自分で研究できるようにマスターぐらいから訓練しているというような感じかと思います。
 年配の人がどういうことをしているかということにつきましては、やはりメンターをされている。ほか、印象に残っているのは、Mayさんが、若い人を選抜するときに、自分でリスクを負うというようなことを言っていたこと。今、日本ではそう言うのかもしれませんけれども、そのとき初めて、僕のリスクなのだと言われたのが強烈。それまで聞いたことがなかったですからね。ということで、それも年配の人のするべきことでないかと思います。メンターとしてとか、いろいろあるとは思いますが、一番印象として残っているのはそういうことです。
【宮浦主査】  先に手が挙がっておりましたのは萩谷委員ですかね。
【萩谷委員】  ファンディングと受け入れ機関との関係についてお聞きしたいと思います。さきがけの状況は大体分かっているのですが、例えば、EUのファンディングの場合、ファンディングにアクセプトされてから受け入れ機関を探すのか、それとも、ある程度受け入れ機関があって、その中でプロポーザルを出していくのか、その辺はどういう状況なのでしょうか。
【永野様】  ERCで言うと、基本的には受け入れる先はここだというのを書きます。だから、受け入れ先と事前に交渉しておく必要があります。お金は採択されたらば、全額研究所に配算されます。もしその人が二、三年たって別の研究所に行った場合は、残った金額は全部移すというふうに契約上縛っています。
【萩谷委員】  そうしますと、やはり受け入れ機関として自由に研究をさせる、そういう基盤というか、そういうものが当然広くないといけないということです。
【宮浦主査】  林委員。
【林委員】  ありがとうございました。2点御質問したいのですが、1点目は、まず単純な話ですが、本日の発表でも、各プログラム、長期に続いているとおっしゃっていたので、プログラムの効果の評価や分析をどのくらいやっているかということです。この質問は、要は、日本では余りそういう分析はなされていないということでお聞きしたいです。
 2点目ですが、こちらはもう少し大きな話ですが、先生が本日お話されたことと、日本の状況をどう比較して、どう考えればいいのかということをお聞きしたいのですが、日本はJSPSのPDが昔から、多数の人にお金を配分しています。それから、競争的資金で雇われているポスドクがたくさんいます。それから、JSTとかが人材育成のプログラムをいろいろ行っていて、各大学の中でプログラムに相当する大学内のプログラムみたいなものを作り、3年くらいそのプログラムで雇用するというのがあります。そして、新たに卓越研究員を作ったと。そういう、ある種雑多な状況が日本なのですが、本日のお話から日本のこの状況はどう理解すればよいのかをお教えいただけますか。
【永野様】  まず、第1問ですが、私は林先生みたく専門でないので分析は全然していませんが、ただ、おもしろいなと思ったのは、例えば、さっきのエミー・ネーターの話を聞きに行きましたら、やはり様々な評価書があります。エミー・ネーターでやっていて日本でしていないのではないかと思ったのは、もらった人ともらっていない人を統計的に割り出して、もらっていない人との比較をきちんとしているところです。もらわなかった人にアプローチするのは難しいのではないかと聞いたところ、ドイツ研究協会は、ドイツにいる研究者をほとんど知っているので、いろいろ考えればできると言っていました。もらわなかった人の5年間と、もらった人の5年間、様々な分析、評価書を作っていましたね。それに基づいて、次、こうするのだと。非常に説明がはっきりしていました。
 2個目は、この本を何で書いたかというと、別に各国の比較をしようという趣旨で書いたのではなくて、私が昔担当していた、さきがけ研究21、これは非常に評判がよかったですね。分野も光と物質とか、情報と知とか機能と構造物。そうすると、ある分野でいくと、物すごくよくできる人たちなのですが、化学の人もいれば物理の人もいれば情報の人もいる。そうすると、集まってきた人が、よくできるけど知らない、会ったこともない人たちで、3年間、毎年2回合宿するのですが、2年ぐらいから、ようやく相手の言っていることが分かってくるとか、そういう感じのときがありました。
 こういう取組をもっと行うべきと思って、この本を書いたのです。世界ではどうなっているのだろうかというのをついでに調べた、そういう感じです。
【宮浦主査】  柳沢委員。
【柳沢委員】  外国のことになると、どうしても発言したくなるのですけど、幾つか前の御質問で、こういうのに当たる人というのは相当早くからどんどん芽を出しているのかという御質問があったと思うのですけど、アメリカではそんなに驚くほど早く研究者としての道を歩み始めているようには見えません。ただ、アメリカの場合、御存じのように、いい大学の大学院に入るのはかなり難しいので、一流の大学のPh.D.コースに入る学生は大体パブリケーション1報ぐらいあります。ラッキーな子は、アンダーグラッドの間にしていますし、そうでなくても、アンダーグラッドが終わった後、1年か2年どっかでテックか何かやって、そこで論文1報書くぐらいしている子が多いですね。そして、おっしゃったように、大学院で非常にめきめき伸びる子は伸びて、こういうエリートプログラムになるのです。HHMIも一時、アーリーキャリアサイエンティストを行っていました。日本人では鳥居啓子さんが、そのようなプログラムを経た後、見事にきちんとしたフルインベスティゲーターになりました。
 だから、アメリカ人の場合、日本のシステムと比べて、一流の大学に入る学生については、すごく早く研究者として歩み始めているようには全く見えません。私自身の弟子も含めて個人個人に聞いても、研究者になろうと本気で思ったのは大学院の最中だったとか、別に普通の答えですよね。
 だから、全くおっしゃるとおりで私も同感で、本当に文科省の方々に、いつも同じことを言っていますけど、同じプログラムをしつこく何十年も続けることがすごく大事だと思います。
 それから、もう1点は、全く同感で、分野限定はだめです。トップダウンは必要ないです。余計な口出すなと。何でもいいからやれと。特に、こういうアーリーキャリアグラントの類いは、それが本当にいいと思います。
【宮浦主査】  よろしいでしょうか。
【宮田主査代理】  先生、いいですか、1つだけ。
【宮浦主査】  宮田先生。
【宮田主査代理】  この本を書いて、その思いは遂げられたのですか。要するに、さきがけ21というものが目指していたものをもう少し確認したいけれども。1つは、どうもお話を伺っていると、分野創造だったような気がします。それと、もう1つは、若手が分野を創造できるのだという信念だったという気がしますけど、いかがですか。
【永野様】  全くそう思いますね。この本を書いたことで、こういうところに呼んでいただけるという意味では効果があったのではないかと思います。
【宮田主査代理】  これ、若手の問題よりも、実は分野創造だと思います。ずっと、この人材委員会でも議論していたのですが、日本のシステムって変化しないようにできているのですけれども、やはり科学研究は変化しないと新しい分野を開けません。ですから、そういう意味では、変化しないシステムの中でどうやって変化をするか。逆に言えば、若手だからリスクを取れるという可能性があって、今、若手研究者が注目されているのかなというのは1つあります。
 もう1つ、最近、ゲノム編集の具体的なプログラムをアンダーグラウンドでみんなで議論しているのですけれども、本当に優秀な研究者が日本に帰ってくるとポストがない。だから、今までの日本は、人口ボーナスで、留学すればポストがあって教授になれるという、まさにこういうようなプログラムが1960年代前後ぐらいにあったと思うのですけど、今やヨーロッパ諸国みたいに人口オーナスが長く続く時代が来るので、ポストが用意できないのです。ですから、意図的に若手のポストを作り出すことがいかに重要かというのを、先生の本日の発表から学ばせていただきました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。話題は尽きないのですが……。
 狩野先生。
【狩野委員】  柳沢先生より、組織における独立も重要という発言がございましたので、日本的なコンテクストを2つだけ申し上げます。1つ目、大学のポストが多いと思うのですが、大学の教員になりますと2つのデューティーがあって、1つ目は組織を回すというデューティーがあるので、若いときから独立すると、これも全部負担しないといけないという意味で負担が増えるという問題があります。
 もう1つは、日本の場合は、入ってきた学生は基本的に全員卒業させねばならないので、これを独立して1人で回そうと若手の人がこだわった結果、いろいろとトラブルがあるという問題が日本ではあるので、よって、組織における独立と必ずしも同一視しない方がいいのではないかという意見が若手研究者との議論で出たということを背景として説明します。
【柳沢委員】  でも、そういう組織の弊害を取り除けばいいんですよね、逆に。
【狩野委員】  それが日本でできるかどうかです。
【柳沢委員】  日本の大学はそうだと決める必要はないと思います。
【宮浦主査】  御議論ありがとうございます。これだけで2時間いけそうですけれども、残りの話題もございますので、このあたりで。本日の話題提供をいただいて、まずは御礼申し上げます。若手の独立の問題、組織内での独立の問題、研究分野における独立、また、若手の育成のみならず新たな分野創出という面での重要性、諸外国と比べて日本の課題も浮き彫りにできた一面があろうかと思います。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移ります前に、課長から御挨拶、よろしくお願いします。
【坂本人材政策課長】  遅くなりまして申し訳ございません。一言御挨拶させていただきます。4月から人材政策課長に着任いたしました坂本です。よろしくお願いいたします。私、今の課の隣の課になりますけれども、産業連携・地域支援課というところで産学連携を3年半担当しておりました。そこで、我が国の大学発イノベーションをいかに全国に展開するかということを私なりに必死になって努力をしてきたつもりでございます。
 イノベーションというのは、ここにおられる委員の皆様には釈迦に説法のところがあるかと思いますけれども、社会の本質的な課題というものを特定すると。そして、ソリューションを構想し、デザインして実践する。そして、新しい価値を生み出して、人々が豊かになるような社会変化を起こすと。これがイノベーションの本質であると我々は理解しておるわけでございますけれども、こういった価値創造のアプローチの中で一番重要なものは、私も産学連携をやっていて痛切に感じますのは、やっぱり人材です。いくらすぐれた技術や構想があっても、人材がなければ、イノベーションや価値創造は起こりません。産業界のイノベーションでは当然のことですし、学問の世界においても、先ほど、新しい分野を切り開くというお話がございましたけれども、価値創造というアプローチが、今必要になっているのではないかと考えています。
 学問でもあるいはイノベーションの世界でも、こういった新しい世界で一流になるための大きなインパクトをもたらす能力をいかに若い方々に持っていただくか、育むか。そして、それを土台として、自分のキャリアをいかに切り開いていくかというところ、このプロセスをしっかりと、うまく機能できるように環境を作っていきたい。そのための仕掛けを、委員の皆様の御指導を頂きながら、これから考えていきたいと思いますので、是非ともよろしくお願いします。
【宮浦主査】  それでは、議題2に移らせていただきます。議題2は、第5期科学技術基本計画の人材委員会関連部分につきまして、進捗状況を御議論いただきたいと思っております。
 3月23日の科学技術・学術審議会総会におきまして、人材委員会をはじめとする科学技術・学術審議会の各分科会等に対して、第5期基本計画の進捗状況につきまして把握・分析し、今後の取組の方向性について検討を行った上で、総合政策特別委員会に報告するように求められているところでございます。
 まず、事務局におきまして案を作成していただいておりますので、御説明をお願いいたします。

○事務局より資料2-1~2-3に基づき説明

【宮浦主査】  御説明ありがとうございます。基本計画の進捗について人材委員会としてどのような状況か報告するため、資料をまとめていただいたところです。本委員会で議論しておりますように、やはり博士離れの問題、進学促進策、あるいは若手研究者、先ほど来話題になっておりますけれども、若手研究者のキャリアパスに向けて卓越研究員あるいは卓越大学院といったこれから動く事業をしっかりやるということ、また多様性ダイバーシティにおいては、全国的なネットワーク化に向けていくということ、また40歳以下のテニュアポストの問題は非常に深刻かと思いますので、そのあたりがなかなか解決策は難しい部分もあるのですけれども、大きな課題であると既に記載していただいております。こちらを元に、議論することとさせていただきたいと思います。
 是非委員の皆様方から御意見、コメントを頂戴できればと思います。柳沢委員。
【柳沢委員】  本日、経団連副会長をはじめ偉い方々が私の機構にも来てくださいまして、その中で、私が人材委員会に行くと言ったところ、是非言ってほしいことが一つある、伝えてくれと言われたので、それを言います。
 経団連を代表するような企業の人たちは、日本の大学にすごく投資をしたいと思っているのだそうです。一方、博士課程に行くときに例えば学費の支援とか、そういうのが足りず、経済的な理由で博士に行かない子もたくさんいる。それから、教員の側では、運営費交付金がだんだん減って競争的資金に置換されている状況では、各国立大学としてはパーマネントなポジションが非常に確保しづらい状況になっています。そうした状況の中で、企業からの財源を国立大学が獲得していくことは極めて大事だと思うのですけど、私はこういう分野の専門家ではないので間違ったことを言うかもしれないのですが、企業さんが日本の大学に投資をしたいと思ったときにいろいろな壁がある。
 その一つの壁が、例えば大学院に行く人に是非支援をしたいのだけれど、法律でその見返りが全く禁止されてしまっている。例えばすごくぶっちゃけた言い方をすると、企業がいろんな形で、奨学金のような形でもいいですけども、学生を支援したら、その学生がその企業に将来戻ってきたら、それはチャラにできる制度とか、企業から見たインセンティブが欲しいのだそうです。制度というよりは法律のレベルなのかもしれないですけども、それが実質的に禁止されてしまっている。あるいは青田刈りをしたいのだと。優秀な大学にお金を投資して、優秀な教授に学生を育てていただいて、そのうちの一番いいところを企業としては青田刈りしたい。でも、そういう行動が実質的には禁止されている状態だと彼らは言っていました。すごく壁が厚い。なので、やりたいけど、できない。お金はあるのだという言い方をされていました。そういう伝言でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。民間から人材育成に資金を入れる難しさ、ルール的な難しさ、ピンポイントの研究ではなくて、人に投資することにおける制度上の難しさというのは結構議論になるところで、そこを御指摘いただいた点は重要かと思います。
【柳沢委員】  ちなみに、アメリカではそういうのは本当に自由です。悪い言い方をすると、企業と大学が癒着しているのは当たり前というようなところがあって、悪い言い方をするとですよ。だから、その辺の規制改革というか。
【宮浦主査】  制度的な問題、民間の資金でいかに人を育てることに使っていけるかというルール的な問題ですね。青田刈りシステムと呼ぶから問題であって、人材育成をオールジャパンで民間に応援していただくような仕組みこそ重要かと思います。
長我部委員、どうぞ。
【長我部委員】  経団連の話が出ましたのでコメントさせて頂きます。企業の考え方としては、投資はリターンを生むという考え方でお金を使います。しかしCSRとして一定の金額に関しては、社会の中で企業が活動する以上、地域や国に対して何がしかの貢献をするためのファンドは多くの企業で持っていると思います。今おっしゃったことはその二つが若干混ざっているような気がします。例えば我々であれば、幾つか財団を持って奨学金を出すことをしています。多くの企業は類似の機構を持っていますので、そういうCSR的なものは人材育成に使ってほしいと。
 もう1つは、やっぱりさっきの青田刈りをしたいとか、見返りを求めたいというのは、純粋に共同研究のような形で投資をして何からのリターンが欲しいという考え方だと思います。そこのところは余りごちゃごちゃにしない方がいいと思っていまして、どちらの目的かを把握して、人材育成と企業としてのリターンを求めるものをうまく分けて考えて、上手に企業から、大学もうまく使えるような形でお金を得たらいいのではないかと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。財団等で、奨学金もおっしゃるように動くというか、もっと拡大していただきたい点でもございます。
 ほかいかがでしょう。川端先生。
【川端委員】  2つ目の40歳未満の大学本務教員数の話ですけれども、ほかの委員会でもちょっとお話ししているのですが、たまたま大学を移ったもので、2校の大学の状況が分かるのですが、若手教員の全体の比率で言うと、いわゆる運営費交付金で雇っている人と特任教員と言われている人を足したら、1つの大学は若手教員割合が37%で、もう1つの大学は、33%です。両方の大学、全然でもないけど、ちょっとサイズが違う2つの大学でもそんなことになっていて、ここ5年ぐらいで若手教員数は10%ぐらい増えています。そうして見た場合に、本務教員は減っていますが、特任教員を含めた総数で、ポスト数を考えると、10%ぐらい増えているし、全体の人数の割合で言えば37%とか33%ぐらい若手です。では、これを増やすのかという話です。
 もう1個が本務教員と例えば特任教員の差として、確かに任期が2年だとか、1年だとかというのはあって、それは問題です。でも、任期があっても、5年を1回更新して、10年という場合があります。これは本務教員と全く同じレベルのものだと思える。そういうものまで含めて特任教員という名前になって、いろんな名前が付いている。だから、これをどう認識すればいいのか。次の世代を担う若手教員をどういうふうに育成していくかも含めて、全体の人口分布をどう持つべきか。要するにシニアから准教授のミドルと若手がいるとすると、それはピラミッドにするべきなのか、つり鐘にするのか、一体どうするつもりなのかと考える必要があるだろう。だから、話をもとに戻すと、本務教員ということ自体がよく分からない名前で数字が走っているという、そこは是非理解をするなり、リマークした方がいいのではないかなと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。先に手が挙がりましたのは、林委員、お願いいたします。
【林委員】  まず、基本計画を作ったときの委員会も入っていたのですが、そこではまさに川端先生がおっしゃるように、ポスドクとかの年齢分布を見て、それが本務、任期なしの人間に代わればちょうど4割ぐらいになるという試算をした上であのような数字があるので、まさにおっしゃるように、基本計画を考えたときにも、人数としては若手が確かにいることは承知していました。ただ、若手が不安定な雇用条件に置かれているのをどうしようかというところでこういう表現ぶりになったと思うので、もちろん川端先生が言われるように、10年だったら任期なしとそんなに変わらないじゃないかというお話はまた別途あると思いますので、基本的には同じと考えるかどうかはちょっと別の問題ですけれども、目標を立てたときには、一応そういう状況は踏まえた上で立てているというのがまず1つのコメントです。
 その上で、ちょっとこの5期の進捗状況の把握、あるいは俯瞰マップですけれども、俯瞰マップについては、私は別のところでもいろいろいつも言うのですけれども、俯瞰マップは基本的にポンチ絵なので、ちょっと分かりづらいところがあって、何が分かりづらいかというと、人材のフローと施策の話がごっちゃになって入っているのです。本日、たまたま永野先生からイギリスのフローの図を御紹介いただきましたが、我々はこの委員会で本当はあちらを検討しなければいけないはずで、まさに川端先生が今言われたように、我々が目指すフローはどこなのかを検討して、その上で、現状がどうなっているのかを議論するべきではないかというのがまず1点です。
 また、施策については、その効果が本当は分析しなければいけないのにできていないというのが現状だと思っています。それも先ほど永野先生の御発表について、プログラムの効果の分析はしているかという御質問をしたのとちょうどうまく合っていて、資料2-2では、いろんな事業、プログラム、施策はやっていますということが書いてあるけれども、結果だけ見れば、博士課程進学者数が減っていて、40歳未満の大学本務教員数が増えていません。基本計画どおりにうまくいっていないということなので、そこで、では、ここに書いてある様々な事業について、例えばリーディングプログラムの事業だったら、そこで採択というか、そこで補助を受けた学生はその後どういうキャリアを踏んでいて、大学教員に、本務教員になれているのかとか、そういう長期的な分析をしっかりする必要があると思います。この後、この紙で今後どうしましょうという話になったときに、卓越研究員、卓越大学院を拡充しますと書いた場合、リーディングプログラムが成功したのか、してないのか問われますので、短期的には難しいですけど、プログラムの効果を、分析した上で、基本計画を達成するためには、次に何を、どういう政策を打たなきゃいけないかを分析しなければいけないのだと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。まず日本型フロー図を作って、理想的なフロー図に向かって施策を取捨選択するため、現状と比較しつつ施策を打っていくべきだと、そういう御意見かと思います。ありがとうございます。
 鈴木委員。
【鈴木委員】  ありがとうございます。ここでお示しされている目的というところにフォーカスして、その近道、最も効率的にたどり着ける方法は何だろうと思いますと、やはり産学官のクロスアポイントメントだと思います。例えば週に2日、3日、大学で働いて、週2日、3日は企業で働けるという環境を、どの大学でもできるという仕組み作りをここ数年でできれば、お互いにいい経験になると思います。企業から大学に行きたい人もいるでしょうし、私も最近、そういうクロスアポイントメントの方々を大学等から受け入れ始めております。ただ、まだまだこれは特例的で、理解のある大学というのは限られていると思います。そういう意味では、今後、指標を考えるのであれば、日本の100%の大学がそれをできる体制にするというのが、1つの道筋と思います。
 あとは、やはり国際的な人の流動性というのは目指した方がいいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。狩野委員、どうぞ。
【狩野委員】  ありがとうございました。鈴木委員の御発言の内容は、私もこのロジックチャートを作るのに入っていましたので、たしか別途の項目で立てた覚えがありますので、これを御参考ください。
 それから、それを作るときに若手研究者と、あるいは学生と意見交換をして出てきた、もう2つの観点を申し上げます。
 1つ目、研究職、あるいは大学院生になることのイメージとして変えた方がいいと思うことは、経済的にいつまでも独立しないと思っている人が多い。これは何とか違うフレーミングにしないと誰も行かない気がしますので、ここを何とかできないかが1つです。
 もう1つは、研究の考え方が楽しい人を育てる教育課程になっていないのではないか。そういう人たちが楽しいという気持ちを持ち続けられるようになっていないのではないかという意見があって、これも是非こちらに入ってもいい内容かなと。高等教育局やほかのところと立て付けがあるかもしれませんけど、是非人材委員会としてもお出しになった方がいいかなということは思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。竹山委員。
【竹山委員】  博士課程への進学促進について、「分析」の一番下のところに、「優秀な学生・社会人を国内外から引き付ける」と書いてありますが、ちょっとこれは文章がおかしいと思っています。この後博士在籍者の人2割程度が生活費相当の受給とか、TA・RAとか書かれていますが、社会人が含まれているのが不思議だなと。
 前も、人材委員会で出たと思うのですが、私たちのところの周りを見ても、特にエンジニアリングやバイオといった、アウトプットに近い分野の研究室は半分くらい社会人で、企業からドクターを取得しに来ており、もう半分が自分のところの学生ということになっています。それが現状で、社会が今グローバル化していて、国際社会にみんなが打って出ていくときに、ドクターを取ることが重要というのは本当に何十年も言われているのに、リアリティーを持っていない会社が多かったのです。それがだんだんリアリティーを持ってきて、以前修士卒で採用した人材の中で、できる人間にはドクターを取らせたいと考えるようになってきている。修士課程から、でもしかドクターみたいにちょこちょこ上がってくるのとは別に、本当にできる人間を博士課程に入れて教育しようとする会社が増えてくれば、そこはうまいサーキュレーションができると思う。変な言い方をすれば、そういう人たちは、私たちはその先の就職をあまり考えなくてもいいし、お金の面倒も見なくていい。かえって日本型なのかもしれないですね。いつもアメリカ型とか、いろいろなところを見てまねをしようとするのですが、社会の成り立ちがそもそも違うので。
 会社が今、マチュアになりつつあるところで、博士課程に入ってくる社会人が増えてくると、今度は修士課程から上がって博士を取って、会社に行く人数がやっぱり上がってくるのです。
 先ほど、0.45%がプロフェッサーとなるとあったのですが、会社に行ったのは17%で、そうあるべきだと思うのです。だから、そう思うと、もう少し日本の中の社会からの入ってくる日本流の形が少しずつこれから生まれてくるのではないかと思います。ただ、あの文章はやっぱりおかしいと思うので、あれは是非直していただければと思います。社会人に私はTAを出していません。よろしくお願いします。
【宮浦主査】  塚本委員。
【塚本委員】  ありがとうございます。皆様がおっしゃっておられるように、この目的に対して、指標がこれだけ見てしまうと足りないような印象を受けます。当然ながら、分業体制でほかにもたくさん割り振られていると思うので、それらを一覧で見せていただいた上で、人材委員会の所掌はこれですと言っていただくと、より全体の中で見るべきスコープが分かりやすいかなと思いました。
 永野先生から、非常におもしろい御説明をいただき、どうもありがとうございました。その中で一番すごいと個人的に思いましたのは、中国共産党がやっていらっしゃる、世界中の博士を連れてくるプログラムで、アメリカから62%というデータがあったと思うのですが、さすが中国と感心しました。日米中の話は通商、経済関係でも、センシティブに関連しあう三国なので、中国が行っているよいことでまだ日本で行っていないことがあれば、いろいろ学びながら使えるところは活用してもいいのではないかなと思いました。
 もう1点は、教えていただきたいということでの質問です。2ポツの40歳未満の大学本務教員数を増やしていくのに、人事給与マネジメント改革を行うというのは、今、働き方改革でも一般的に脱時間給など行っていると理解していますが、大学の世界ではどのように改革すると若手研究者の確保ができるのか、もしも仮説等の議論が進んでいるのであれば教えていただきたく思います。
【石丸人材政策推進室長】  先ほどの件につきまして、人事給与マネジメント改革と若手研究者の本務教員のポストの点でございますけれども、各大学様々な努力をして若手研究者の確保に取り組んでいるという事実はまずあるところでございます。その中で、人件費の配分を学内でどうしていくかということで、いわゆるシニアの教員の方々の給与を例えば年俸制にするなどのいろいろな工夫をすることによって、ほかの人件費を創出していくという意味で、マネジメント改革ということが入っているところでございます。
【塚本委員】  分かりました。ありがとうございます。
【宮浦主査】  宮田先生から。
【宮田主査代理】  今回は要するに進捗状況を報告するための議論ですね。ですから、これから皆さんと一緒に結構長期にわたって人材政策を議論するのとはちょっとレベルが違うというのを是非御理解いただきたいというふうに思います。ただ、前回の議論を聞いている限りでは、卓越研究員は失敗じゃないかというような印象を私は持っていた。あのような議論もちゃんと反映させておかないと、このまま進捗計画の中で前例どおり頑張りますというところだとまずいのではないかという認識だけは持ちたいと思っています。今までどおり頑張ればうまくいくのだというようなトーンの報告ではなく、人事給与マネジメント改革のところ以外は、例えば施策の効果をきちんと検討した上で進展するとか、そういうような今日の議論を少し入れたような形で作っておいていただくと、後ほど私どもがもう少しまともなレポートを出したときに政策に反映しやすいと思います。このまま行くと、何もやらなくてもいいのかという感じになってしまいますので、そこの文章は是非、余地だけは残してほしいというふうに思います。
【宮浦主査】  狩野委員、一言。
【狩野委員】  一言だけ。これの作る方の片棒を担いだ人として事情を説明いたしますと、第4期科学技術基本計画までには、科学技術計画基本計画がうまく回っているかどうかを評価するための余地がなかったということで、その反省の下にこれが今回置かれたということが1つと、よって、現在測れる指標しか書いておりません。よって、これももっといい指標があるなら、例えばNISTEPに頼んで測っていただくなりということが、余地がとても残されておりますということだけ御説明いたします。
【宮浦主査】  ありがとうございます。今頂きました御意見に基づきまして、これはもう1回このために開くのは大変ですので、今頂戴した御意見を反映する形で進捗状況報告ということでまとめさせていただくということで宮浦に御一任いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、議題3です。中教審大学院部会と本委員会との合同部会の審議状況につきまして、こちらはまだ始まって動き始めたところでございますが、現状報告をさせていただくということで御了解いただければと思います。事務局より御説明お願いいたします。

○事務局より資料3に基づき説明

【宮浦主査】  ありがとうございます。合同部会の現状でございますが、かなり詳細な議論をしております。本委員会からも何名か合同部会の委員として出席をしておりまして、私もその合同部会の主査を拝命しております。今後、有識者の方の意見も聞きながら、議論を進めていくこととしており、本日はとりあえず出た議論を御紹介するという段階ですので、もし今の流れの中でこういう違った視点も議論すべきであるというような御意見がございましたら、事務局の方に御意見を頂きましたら、そこを合同部会に反映してまいりたいと思います。
 本日は現状報告ということになりますが、よろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、最後になりますけれども、事務局より連絡事項をお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  事務局でございます。次回の委員会の開催日時につきましては、宮浦主査と御相談させていただきまして、委員の皆様の日程を再度調整の上、改めて御連絡させていただければと思います。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第委員の皆様のお目通しいただきました上で、主査が確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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