人材委員会 次世代人材育成ワーキング・グループ(第2回)議事録

1.日時

令和7年5月15日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省15F局1会議室及び Web 会議(Zoomウェビナー)

3.議題

  1. 博士後期課程学生支援等、初等中等教育段階での科学技術人材の育成に係るヒアリング
  2. 科学技術コミュニケーションに関するヒアリング、現状と課題等について
  3. その他

4.出席者

委員

尾上委員、梶原委員、狩野委員、川越委員、重松委員、永井委員、登本委員、桝委員、水口委員

 

文部科学省

 先﨑科学技術・学術総括官、奥人材政策課長、髙見人材政策推進室長、髙橋人材政策課課長補佐、滝沢人材政策課課長補佐、白川人材政策課課長補佐、井上人材政策課科学技術社会連携係長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会
次世代人材育成ワーキング・グループ(第2回)

令和7年5月15日

 
 
【白川人材政策課課長補佐】  事務局でございます。会議の開催に先立ちまして、委員の皆様におかれましてはZoomのビデオをオンにしていただきますようお願いいたします。
【狩野主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会の次世代人材育成ワーキング・グループの第2回を開催させていただきます。本日の会議は、冒頭より傍聴者の皆様方にも公開しております。よろしくお願いいたします。
 本日は9名の皆様に御出席を、対面とオンラインの両方で9名の皆様に御出席いただいておりまして、定足数を満たしております。
 では、議事に入ります前に、事務局から、注意事項と本日の資料確認をお願いいたします。
【白川人材政策課課長補佐】  本日の会議は対面とオンラインのハイブリッドでの開催となりますので、対面で御出席の皆様は、御発言の際には挙手または名立てなどで合図いただき、オンライン御出席の委員の皆様は挙手機能によりボタンを押していただき、主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただきますようお願いいたします。
 機械の不具合等がございましたら、対面で御出席の皆様は、会場の事務局にお声がけいただき、オンラインで御出席の皆様は、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。資料につきましては、Zoom上での共有も行いますが、会場ではお配りしておりますので、皆様お手元で資料を御覧ください。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。事前に送付させていただいた資料といたしまして、議事次第、資料1から資料6、参考資料1から参考資料2でございます。議事進行の過程で不備等がございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上でございます。
【狩野主査】  ありがとうございました。今日も盛りだくさんでございまして、よろしくお願いいたします。
 では早速、議題1に入りたいと思います。議題1は、博士後期課程学生の支援等、それから初等中等教育段階での科学技術人材育成に関係するヒアリングということで皆様に御準備をいただいております。
 それに先立ちまして、まず、前回の第1回次世代人材育成ワーキング・グループ、本ワーキング・グループと、先月24日に行われました第107回人材委員会における本委員会関係の主な意見について御紹介いただくということで、白川さんから再びお願いいたします。
【白川人材政策課課長補佐】  かしこまりました。それでは、資料1を御覧ください。4月18日の第1回次世代人材育成ワーキング・グループにおける主な御意見、そして4月24日の人材委員会における主な御意見のうち、次世代人材育成ワーキング・グループ関係のものを資料1としてまとめさせていただきました。
 3ページまでは、前回の皆様に御出席いただいたワーキングでのお話でございますので、私からの御説明といたしましては、4ページからの4月24日の人材委員会での御意見の紹介をさせていただきます。
 まず、博士課程の学生支援関係といたしましては、1つ目、日本人の優秀な学生がなかなか博士課程に進学してくれない(→優秀な学生の博士課程への進学率が停滞している)という状況がある中で、トップ人材が博士課程に進学するような制度的な仕組みを産学官で考えていくことが必要なのではないかという御意見。また、3つ目、研究が楽しい、この研究をもっと突き詰めたいとポジティブに捉えられるような研究環境を提供できるかが重要であるという御意見。
 また、博士人材の多様な場での活躍促進についての1つ目、博士人材に対する産業界の受け止めはこの10年くらいで随分と変わっており、それを踏まえて、学生に対してキャリアやロールモデルを示すことができればよいという御意見。博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック、本年3月に公表したものでございますが、これを普及させることがまず重要であるという御意見。また、博士ではないと世界に立ち向かえないような分野が多くなっており、企業も含めて博士人材の増加を図ることが必要であるという御意見。そしてその下、ストレートドクターのみならず、どこかのタイミングで大学に戻り、博士号を取得するという形もあるため、その例を多く示すことも重要であるという御意見。地域や中堅中小企業で活躍している博士人材の方や人文社会学系の方の活躍例を示すことも重要であるという御意見などを頂戴しております。
 また、5ページに参りまして、初等中等教育段階における科学技術人材育成の関係といたしましては、子供が成長していく過程で継続して科学技術に触れ続けることができるような取組を大学などの高等教育機関と共に行うことを政策に盛り込むべきではないかという御意見。優れた研究者の育成は初等教育から始めるべきだということで、芽を摘むことなく、将来優れた研究者になれるような教育や環境整備に取り組むことが重要であるという御意見などを頂戴しております。
 また、最後、科学コミュニケーション活動関係といたしましては、ディープテックを社会実装するに当たり、新しい技術に対する社会の理解は不可欠であるということで、科学コミュニケーションはますます重要となる。その点を踏まえて科学コミュニケーション人材の育成ができればよいという御意見や、最後、初等中等教育の中などで科学技術と社会の関係についての意識を高める取組を政策に取り込むことは非常に重要であり、自身の将来のキャリアを考える上で、科学技術と社会との関係に関わる人材という道があるという意識を高めることができればなおよいという御意見などを頂戴いたしました。
 以上でございます。
【狩野主査】  ありがとうございました。では、この後、尾上先生と川越先生からのヒアリングに移りたいと思います。論点といたしまして念頭に置いていただきたいのが、博士人材活躍プランの目標達成にはどんなことが必要か、あるいはその際にDCという枠組みとかSPRINGという枠組みに対してどういう役割がよさそうか、あるいはその中でどういう支援をするのがよいか、ということで改めて見直しをしてみていただきたいということ、あるいは国の中であるいは地域で多様性がどういうふうに起きてくるかということの考え方を少し教えていただきたい、という論点がまずあります。
 それからまた、科学技術人材の育成のほうに関しては、SSH事業の資金分配の仕方、支援の在り方というところに何かよりメリハリがつくのかどうか、あるいは高大連携でどういうふうに広げていくかというような辺りを念頭に置いていただいて、その意味でのヒアリングということなので、いただける実例に関してはもちろんその疑義についてお聞きすることは構わないのですが、よりそれを通じて全国一般に何ができるかということを考える機会にさせていただければと思っております。
 前置きが長くなりましたけれども、それではまず、尾上先生から、大阪大学における状況、それから論点への御意見について、お話をいただければと存じます。
【尾上委員】  大阪大学の尾上でございます。私、大学では研究と情報推進を担当しておりまして、直接このいわゆる人材育成等の担務ではないのですけれども、SPRINGの運営委員等も仰せつかっておりますので、これらについて御説明させていただきたいと思います。
 次のページをお願いいたします。大阪大学の博士課程の支援状況でございます。SPRING事業をいただいておりまして、SPRINGの表が下にございます。このように、これは年次で様々な、例えばフェローシップとかそういうものから動いてきておりますので、今年度は入学生728名を支援しているという状況です。そのうち、留学生165名、社会人も22名という状況でございます。ここの左上に書いてございますように、研究奨励費と研究費ということで、これもJSTから指示されているとおりというか、さらに、後ほど説明いたしますようないろいろな事業により主体的に関わっていただく、例えば仕切ってもらうような学生については研究費の増額等を行っております。
 後期課程全体で見ると、23%が支援できているという状況です。社会人を除くと30%ぐらいという状況でございまして、留学生は23%というところです。これはJSTで、SPRING全体で見ると留学生が4割ぐらいという状況なので、大阪大学は比較的少ない状況になってございます。これは別に排除しているわけではなくて、面接等でやはりコミュニケーションをして、切磋琢磨していただくというような観点等を説明したりしている状況でこのような数になっているということでございます。
 その他、BOOST事業も、これは2年目で50名ぐらいの枠をいただいていると思うのですけれども、現時点で31名の支援、学振が223名、国費留学生243名と。こういうところを全部合わせると、支援対象になるような学生の大体半数ぐらいはこのSPRINGで支援ができているという状況でございます。そのほか、大学独自で全学での給付型の奨学金や授業料免除の枠等を1.6億、2億弱ぐらいやっております。
 このほか、これだけだと全員に行き渡りませんので、当然先生方が取ってきている研究プロジェクトとか、あるいは研究科で授業料の免除とか、奨学金等を出すような形で、ほぼ全員の学生が何らかの支援をいただいているという状況にございます。これをマネージするのが、右側にございますように、大学の学際大学院機構をつくりまして、これはリーディングプログラムとかフェローシップとか、そういうような国の施策を実行する部門と、さらに大学の中でやはり社会のニーズに合ったような免疫・感染症のプログラムとか量子のプログラム、こういうものをきっちり実行していく、あるいは大学院横断型でオナー大学院をマネージしております。この中のマネジメントオフィスの中にSPRING事業をマネジメントする部署がございます。
 次のページをお願いいたします。これはカリキュラムとかコンテンツの内容でございます。この左側にあるのが、これはSPRINGで要求されているようなものでございまして、学際融合、トランスファラブルスキル、産学共創・社学共創、さらに国際性涵養、これらをやるのと、さらにミキシングプレゼンテーションということで、こちらのほうで異分野の人たちの前でやはり研究をきっちり説明できるようにしていく。これは実際にプレゼンテーションのセッションを仕切るなんていうのも学生にやっていただいたりしています。
 右側に、これ以外にも様々な学生を支援するようなコンテンツを準備しております。これらが、これはSPRINGだけではなくて、小さい文字で申し訳ないのですけれども、実際には非履修生の人も一緒に入ってやっているということです。やはり履修生、非履修生にかかわらず、博士課程の学生が自分たちのキャリアをどう考えていくかということはすごく真剣に捉えているのではないかと思っております。
 本学はSAKIGAKEクラブという若い研究者のグループがございます。これは右に写真出ております栄誉教授の関谷先生が中心となって、若手の先生方で卓越した成果、SAKIGAKEといっているので、さきがけを取ったりとか、そういうような著名な賞を頂いたりとか、そういうような人たち中心に170名ぐらいでやっているのですけれども、そこの第一線で活躍する研究者とSPRINGの学生の交流会をやると、今、すごく議論が盛り上がっているという状況でございます。
 次のページをお願いいたします。博士人材がやはり躍動していくようなそういうような状況に向けて、阪大の現状と課題を幾つか御説明させていただきます。一つは、このBOOSTプログラムというのはAI、IT、データサイエンスとかの分野でございますので、産業界との取り合いということで非常に手厚い支援が得られているのですけれども、実際BOOSTの1期生で採択になった学生が、DCに採用されるとBOOSTを辞退していくということで、結局収入等は下がってしまうけれども、DCというのは権威・名誉があるということで、そういうことはいいのですけれども、本当に学生はハッピーなのかというのは少し課題だと思っております。
 また、研究室から履修生への追加支援、これはいろいろ、今まではこういうものをもらっているとほかからもらったらいけませんというルールが昔はありましたけれども、最近は非常にその辺りは緩和していただいているのですけれども、実際にはそれほどトップアップでもらえている学生が多くはございません。これはなぜかというと、先ほど申しましたように、半分ぐらいが大体一定量の支援をいただいているという状況なので、まずは先生方の考え方としては、あまりメリハリをつけるというよりは広く支援をするということが主眼に置かれているからかなと思っております。この辺のメリハリをどういうふうにつけていくかというのも課題かと思っています。
 留学生に関してですけれども、日本での就職を選択肢に入れる学生は一定数います。マスターを出る学生とかだと、マスターの授業は、英語コースもあるのですけれども、結構日本語で授業、座学をやっているケースがあったりするので、比較的就職していく人が多いのですが、博士課程でもう完全に英語だけでやっている場合は、なかなかその先、会社に行こうとしたときの選択肢がかなり少ないという状況になって、帰国していく、もしくは他国、欧米に行く学生が多いという状況でございます。国費が、国費というのは国費留学生じゃなくて、SPRINGも含めた国のお金が就学時3年間の支援だけに使われるというのはやはり非効率だと私は思っておりまして、日本への定着支援とか産業界での受入れ体制もやはりきっちり整備していく必要があるかなと思っております。
 社会人の学生は、これは当然なんですけれども、給料を頂きながら来られているので生活には困っていないのですけれども、やはり就学時の様々な課題に苦心しております。有休を取って行きなさい、これは当たり前なのかもしれませんけれども、そういうような状況があったりとか、会社の仕事にかかわらず、履修の自由度がどれぐらい担保されているか。授業料は当然自分で払ったり、通学費だったり、職場の理解というのがやはり、有給とかは当然取る権利はあるのですけれども、どうしても学校に行っているというのが、遊びに行っているとは言いませんけれども、少し変わった目で見られていると。こういう障壁をどう取り除くかという課題がございます。
 最後のページでございます。これは私見でございますけれども、やはり学振の特別研究員の支援を世界基準レベルに引き上げるというのは多分必要なんじゃないかと思っています。これは金額で世界基準と言っているわけではございませんで、当然国によってコスト・オブ・リビング、生活費等は変わってきますので、やはり精神的に、メンタルに大体同じぐらいもらえて、博士課程の学生でトップの人は、世界でも同じような感じできっちり期待されているというのが現れるようなレベルまでは引き上げるというのは必要なのではないかと思っています。
 日本人、留学生、社会人、これは、セグメントはございますけれども、こういう戦略的な支援で金額に差をつける、あるいは合わせるという状況だけではなくて、留学生も社会人も、いろいろな、例えば先ほどのSPRINGでありましたけれども、研究を実施する経費の支援というのは多分有効だろうと思っております。この辺りがきっちり準備できると、安心してドクターのコースに入ってこられるかなと。
 留学生のやはり定着を主眼に置いた施策、そういうところをきっちり支援していくというのが大事なんじゃないか、そういうことをきっちり考えるような大学のプログラムというのをうまく支援していくような形は要るのではないかと思っています。
 社会人の入学を増やすための施策の支援ということで、これはいろいろな民間企業の方々ともお話をすると、R&Dの部署でいうと、トップの部分というのは大体博士号ぐらい持っていないとという話が出るのですけれども、それだけではなくて、事業に関わる方たちでも、やはり博士号を持っていて、博士の様々なスキルとか知見を持っていると絶対プラスに働くと思うので、そういうような理解を深めるというのは大事なのかなと思っています。
 SPRING事業でやはり支援対象学生数が少ないというところがあったりするので、こういうところは、大学間の共通的なコンテンツの相互利用などで、やはりせっかくプログラム、授業としてやるわけなので、やはり有益な課程にするということが大事だろうということと、博士の人材を増やしていくという状況で、各大学3倍というふうな形ではなくて、やはり採れていない大学をたくさん採っている大学がうまく支援するような、そういう大学間の連携で一緒に博士人材を各大学、大学を選ばず育てていく、国内全大学の力を合わせて増加を目指すということが必要だろうと思っています。
 あと、最後に、産業界と学術研究機関の博士人材の流動性というのが、産業界から大学に来る人は結構多いのですが、大学から早いキャリアで行く人とかというのはあまりいないということで、そこの流動性が高まると、博士に行ったら、そのまま大学に行く、あるいはそこから遅れて会社に行くという、そういう単純なパスだけじゃなくて、多様なパスが見えると、博士課程がより身近に考えられるのではないかと思っております。
 私の御説明は以上でございます。
【狩野主査】  ありがとうございました。ちょうど10分でしてくださいまして、どうも、しかも鋭い私見もたくさん入れていただきまして、ありがとうございました。
 それでは、本当はここで質疑応答もいいのですが、今日は少し時間も押しているということで、先に川越先生にお話をいただいて、後にまとめて質疑ということにさせていただきます。では、川越先生、お願いいたします。
【川越主査代理】  ありがとうございます。東京大学の川越でございます。このたびはこのような機会をいただき、ありがとうございます。私からは、東京大学で研究を題材としながら取り組んでいるSTEAM教育について御紹介をさせていただきます。少し資料が多いため、かいつまんで御紹介させていただきたいと思います。
 最初に、社会的背景については、既にこのワーキングの中でもいろいろ御説明されているところと思いますので割愛させていただきますが、このような社会的な流れの中で東京大学では、文理を超えた教科等横断的な視点や、答えが1つとは限らない課題を解決するために必要な能力を育み、社会的価値の創造、そして新しい知の創造を通して、現代的な諸課題に対応できる人材の育成に取り組んでおります。
 そういった中で、東京大学生産技術研究所、私たちは生研と呼んでおりますが、この生研は東京大学の附置研究所で、工学を基盤とした多岐にわたる研究が行われている研究所になります。この中に次世代育成オフィスがございまして、ここで行っているSTEAM教育を中心に御紹介したいと思います。
 この次世代育成オフィスですが、未来社会をデザインできる人材育成を組織的、そして継続的に実践するということで設立されたものになっております。生研では、産学連携による研究活動を以前から行っておりますが、この産学連携を基盤として、教育にも生かしていこうということで、産業界のみならず様々な機関と連携して新しいSTEAM教育を創出して実践をしているオフィスになっています。この次世代育成オフィスは、Office for the Next Generationで、ONGと私たちは呼んでおります。
 このONGの教育活動としては、2本の柱から成っております。1本目は、研究者・技術者直接参加型活動というもので、ワークショップや出張授業を通して、研究者・技術者と生徒たちが直に接するような活動になっています。もう一つの柱が、ICTによる浸透・普及活動です。これは直接参加型活動を教育コンテンツ化することで、貸出教材や探究活動に向けたメソッドなどを開発して、それを学校に展開するというような活動を行っております。また、こういった活動を広く展開するために、教育委員会や高校等と連携し、また、コンテンツ作りには産業界と連携して行っていくというところで、こういった機関が参画しやすいシステムの開発も目指しております。
 ONGの教育プログラムを主体性と知識・技能という軸で私たちは整理をしております。そうすると、大きく分けてこの3つのタイプ、萌芽レベルと成長レベル、発展レベルというような形で私たちは分類しています。このように初等中等教育における教育活動については、体系的に、そして戦略的に行うことが重要ではないかと考えております。本日はこの中で、成長レベルに位置づけております産学連携でのワークショップの事例と、また、発展レベルにございますUTokyoGSC-Next、それから、こちらをもとに開発しました、萌芽レベル、また、成長レベルで使える教材を具体例としてお示ししたいと思います。
 まず産学連携のワークショップですけれども、こちらは産業界と連携してSTEAM教育を実践するということで、アーツを芸術及びリベラルアーツとして捉えております。そして、こういったワークショップをもとにして、コンテンツ化することを行っております。産業界と連携することで、科学技術が社会に結実する現場や本物を見てもらうことができ、科学技術と社会とのつながりを知ってもらうことを目的にしています。また、大学が入ることで、科学技術と学術分野、そして教科・科目とのつながりを伝える、STEAM的な視点を伝えるということも目的にしております。そして、現行の学習指導要領でも掲げられている主体的・対話的で深い学びを実現するべく、こういった産学連携で実施することで社会に開かれた教育課程の実現に向けても貢献できると考えております。
 次に、UTokyoGSC-Nextというプログラムについて御紹介いたします。こちらはJSTの助成で行っているものになりますが、小学校5年生から高校生が対象の3段階のプログラムとなっております。高校生対象の第2段階では、研究テーマや問いを具体化して、そして第3段階に進んだ高校生は、その問いを解決するべく東京大学の研究室でSTEAM型の課題研究活動を行っています。そして小学生から高校生までを発達段階に応じてシームレスに育成するべく、このような取組を行っております。
 体制としましては、生研が主体となっておりますが、東京大学内の15の部局が参画しておりまして、全学的に実施しているプログラムになっています。また、コンソーシアムには12の企業、18の教育委員会、5つの団体が参画して、このようなコンソーシアムをもとに実施しております。また、産業界にも参加いただいておりますので、様々な企業の方に御協力いただいてアントレプレナーシップ教育を実施しております。こういった活動を通して、5つの能力の習得と向上を目指して教育活動を行っております。
 このUTokyoGSC-Nextの特徴の一つとしては、受講生の半数以上が女性というところが挙げられると思っております。こちらは後ほどまたお話ししますが、科学技術分野のプログラムにしては女の子のほうが多いというのは非常に私たちも驚いており、特別何かをしているわけではないことから、どういったところが背景になるのかということを、今調査を進めております。
 また、このプログラムの受講生は、外部への積極的な発表をしておりまして、論文や学会発表に加えて、科学コンテストなどにも高校生が積極的に参加して、また、受賞をしている受講生も多数いるというところが挙げられます。
 また、こういった受講生がどのように変容したかについても調査を行っております。先ほど少し紹介した5つの能力を私たちは定めておりまして、こちらの評価指標を開発して、自己評価や他者評価を実践しております。このような結果は、教員側が研究という形で論文でも報告しておりますが、こういった指標をさらに改善し、データ取得なども含めて教育活動の評価も行っているところになります。
 そして、このUTokyoGSC-Nextでは、高校生が自ら研究テーマを設定していきますが、その手法を探究学習デザインメソッドとして開発しまして、高等学校の総合的な探究の時間等で使えるような形で展開をしております。
 実際にこれらの教育委員会と連携しまして、こういった高校や、SSHの学校でもこのメソッドを使っていただいております。
 このように、東京大学生産技術研究所では、未来を切り開きリードできる人材を育成し、全国の初等中等教育にこういったプログラムを展開するべく実践をしております。このUTokyoGSC-Nextや、産学連携ワークショップでは、高い意欲・能力をさらに伸ばすための取組になるかと思いますが、そのためには、科学コンテストや学会発表という、高校生が発表できる場の提供が大事ではないかと思っております。
 また、学内での体制の構築であったり、コーディネーターの登用により、より円滑に実施できるのではないかと考えております。さらに学内だけではなく、産学官民が連携するようなネットワークを構築することで、科学技術と社会とのつながりを伝えることもできるSTEAM教育の実践が可能になると考えており、社会に開かれた教育課程の実現につながるかと思います。そう考えると、こういった教育エコシステムの確立が重要ではないかと考えております。
 また、探究学習デザインメソッドの開発と展開というところで全国的にこういった教育モデルを普及させることも行っておりますが、いろいろな大学や様々な機関が行っている活動をモデル化して、そして全国にカリキュラムとして広めていくというところが重要ではないかと思います。
 また、先ほど少し申し上げました、UTokyoGSC-Nextでは受講生の半数が女性というところでいくと、女子中高生が理系へ進むというところにおいてはSTEAM教育が鍵を握る可能性も見えてきております。特に社会とのつながりというところに女子生徒は共感をして取り組んでいるというところがあるのではないかと考えており、こういったそれぞれの取組を分析して、発達段階や個々の興味・関心に応じてこういった教育活動を体系化して充実化することが重要ではないかと考えております。
 以上、こちらのスライドはまとめとして再掲になっておりますので、かいつまんでとなりましたが、私からは以上にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【狩野主査】  ありがとうございました。大変意欲的な取組をかいつまんで教えていただきました。ありがとうございます。
 それでは、あと15分強、質疑応答の時間がございます。発言の御希望のある方からどんどんお願いいたします。お一人二、三分程度ということですけれども、簡潔にお願いできればと思います。
 重松先生、お願いします。
【重松委員】  御発表ありがとうございました。博士課程のほうでお聞きしたいのは、留学生の状況についてさらにお聞きしたいです。留学生において、定着と流動する留学生というのが、どのように識別というのか、結果的にそういう結果になるのかといったこと。さらに、流動のカテゴリーに入られた留学生に対しては、いわゆる追跡調査についてきちんと行われているかどうかということをお聞きしたいのが博士課程のほうであります。
 それから、ONGのほうでは、どうしてもSSHでも連携等が非常に大事になってくると考えているわけですけれども、なかなか都道府県との連携というのは難しいものと思います。うまく希望者とマッチングはどうやっておられるか、ミスマッチがないのかといったこととか、あるいは逆に都道府県へうまく成果が普及されているのかといったことに関わってどんな状況かというのをお聞かせいただければと思っています。
【狩野主査】  ありがとうございました。どうしましょうか。ほかにもし御質問、御意見が先にあれば、承ってからまとめてという手もありますけれども、取りあえずなければ、簡潔なお答えをしていただければ。お願いします。
【尾上委員】  御質問ありがとうございます。定着と、流動だったらいいのですけれども、流動ではなくて帰国になっているというのが多分問題かなと思っています。流動になっているような人というのは比較的いろいろなところで羽ばたいて活躍いただけているかなという状況でございまして、どちらかというと、留学生の中で定着しない人は、もう帰国して、そこの国の中で探していくなんていう状況になっております。その後のフォローアップなのですけれども、これは研究室での専攻あるいは大学院の研究科等を中心に一応フォローアップはしていっているという状況でございまして、その後どういうふうに活躍していくかとか、その後にやはり共同研究を進めるなんていう、そういうような人もたくさんいると思っております。
【狩野主査】  簡潔にありがとうございました。川越先生、お願いします。
【川越主査代理】  ありがとうございます。SSHや、都道府県との連携というところでいくと、全てではないですが、各教育委員会との連携を図っているというところになります。そういった中でコンソーシアムを設けており、協議会なども行っております。そういった中で実際に教育委員会の方にも会議に出てきていただいて、都道府県の状況であったり、こちらからどういった支援ができるかというところをうまく進めていきたいと考えております。
 また、成果の普及のほうですけれども、都道府県の教育委員会に入っていただくことで、教育委員会主催の教員研修などに呼んでいただきまして、そういった教員研修を通して、先ほどのメソッドの使い方とか総合的な探究の時間をどうしたらいいかというところをお伝えさせていただいております。そして、その教員研修に来た先生方が各学校に持ち帰って実践していただくというような形で今、普及を進めているところになります。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございます。
【重松委員】  ありがとうございました。
【狩野主査】  永井先生、お願いいたします。
【永井委員】  質問させていただきたいと思います。お二人とも非常に緻密な御発表をいただきまして、大変参考になりました。
 まず、尾上先生に御質問さしあげたいのですけれども、こうした博士人材育成の優れた研究というか教育を行うためには、大学側も相当コストがかかっていると思うのですが、特に人的なものですね。大学教員って結局20代から70代までいるわけじゃないですか。そういう教員組織を、どういうふうな体制で、持続性を持ちながら偏ることなく、こうした博士人材育成に取り組むために、何か特別なマネジメント組織があるのかということと、一定の研究者にそうした教育負担が過剰にかかるというような問題が起きがちかと思うのですが、どのように回避されているのかということをお伺いしたいと思います。
 それから、川越先生のほうは、大学と、そうした教育の現場をつなぐ役割というのは、東京大学側にあるのか、それとも外部の例えばファシリテーションとか何かのコーディネーターのような方たちが関わるのか、またそのことでほかの事例にも展開可能なのかということを教えていただきたいと思います。全ての大学がそれだけの体制を組めるとは思えませんので、何か少し外の組織が関わることで日本全国に広がりやすいならば、そのヒントになるかなと思ってお伺いしたいです。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。私からも少し加えて伺いたいのは、尾上先生がいろいろ出してくださった御提案があるのですけれども、これ、それぞれに方法が思いつかれたらぜひ御示唆をいただきたいというのが一つです。
 それから、「これから伸びていけそうな人を伸ばす」という機能と、それから「既に伸びかけている人たちを放っておかない」という機能があると思うのですね。それぞれに対して、何かいいやり方をもし思いつかれたら、これはもちろん政策的な意味で、教えていただければということを思いました。
 質問に限らず御意見でも結構だということです。どうぞ尾上先生、お願いします。
【尾上委員】  すみません、僕、挙げたので。
【狩野主査】  ありがとうございました。お願いします。
【尾上委員】  よろしいですか。先に少し御質問させていただいた上で、先ほどの2つの永井先生と狩野先生からのお話に対してお答えしたいと思います。
 質問については、GSC-Nextのところで女子生徒が多いという、これはうちの大学でも小中高大接続みたいなのをやると、女子生徒がたくさん来てくれるのですが、今度こそ、この後ずっと待っていればたくさん入学してくれるというふうに言われて久しいのですけれども、なかなか増えてこない。減ってはいかないんですけれども。これはどこかでやはりそれを阻害、止まっている原因がどこかにあるのではないかといって、あまりこれ以上会議で申し上げにくいのですけれども、もし何かそういうところでどういうところだというのが分かっておられたら教えていただきたいというのがあります。
【狩野主査】  では、川越先生が答えを考えていただいている間にまずお答えをお願いします。
【尾上委員】  お答えですけれども、まず、永井先生からの御質問で、マネジメントのところでございます。これは学際大学院機構というところをつくって、そこにスタッフを本当はもっともっと入れていかないといけないのですけれども、かなり、これは教員もそうなのですけれども、職員の方々の頑張りはすごくあると思っております。そういうところを牽引しているのは、かなり意識が高いというかモチベーションが高い若手の職員の人がかなりいろいろなプログラムのマネジメントとかに関わっていただいております。それに乗せられる形で先生方も一緒にやっているというところでございまして、若いからとか年配だからというのが、そういうふうな差はあまりないのかなと思います。誰かこういうところを仕掛ける人がいたら進んでいくのかなと思いました。
 あと、狩野先生からのハウツーのところなんですけれども、お金の部分はなかなかハウツーの提案がしにくいのですけれども、やはり産業界とか大学定着というところとか社会人というところで見ると、もっと一緒に育てていく、博士課程の学生、博士人材を育てていくということができると理解が深まるのかなと思います。例えばリーディングプログラムとかでは、かなりいろいろな産業界の方々とかと一緒にやっていくと、もうそこで学生も見ていただけているというところなので、いきなり箱を開けてぱっと学生が入ってくるのではなくて、育っていく過程をきっちり見ていただくと、やはりその辺の定着とか博士の人への理解が深まるのかなというので、もっと大学に産業界の人が入ってこられるようにそういうことができないかと思っております。
【狩野主査】  ありがとうございました。それは政策の要件としてありそうな話ですね。ありがとうございました。
 川越先生、お願いします。
【川越主査代理】  ありがとうございます。それではまず、大学と教育現場とをつなぐ、コーディネーターやファシリテーターについて、私たちの中でやっているところもありますが、産学連携で学校現場に入る際でも、教育委員会の担当の方に入っていただくと、すごくスムーズに進んでいるという気がいたします。そうすると、学校教育の中で、フォーマルエデュケーションの中で実践できるかなと思っているので、こういった3者、大学と企業と教育委員会といった形でやっていくというところが、大学と教育現場をつなぐような機能になっているかと思います。
 そして次に、この先どんどん伸びていく人、ある意味、自分でどんどん伸びていくというような人であっても、その先といいますか、発表できる場とか活躍できる場が分からない人もいると思います。大学の先生であれば、こういう学会があるとか、こういう取組があるというのが分かりますが、それがなかなか高校生に伝わらないところなので、情報発信が必要かなと思います。これから伸びていく人たちに対してこそ直接的な関与、ワークショップなどを通してそういった取組が非常に重要になるかなと思いますし、様々な視点で企業の方に入っていただいたり、大学が入ることで、将来のキャリアパスも含めて考えるきっかけになるのではないかと思っております。
 最後の、女子が多いというところで、女子の進学率について、今、私たちもUTokyoGSC-Nextで追跡調査を行っているのですけれども、受講生に関しては、半数女子ですが、その女子は皆さん進学をされているというところです。本学に入ってくる受講生ももちろんいるのですが、その中の女子の割合というのが、全部のデータではないのですが、本学全体での女子の割合よりは、受講生のほうが、女子が少し多いというところになります。こういった取組などを通して受験する人数をどう増やすかというところだと思いますが、こういった取組自体が進学率にはしっかり寄与しているのではないかと思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。「場」の話は多分、尾上先生のところにも通じることかなと思いまして、やはりSPRINGのお金の使い方の一部は「場」の設定というのもいいのかなということを伺いながら思いました。
 どうぞ、お願いします。
【梶原委員】  尾上先生に伺いたいと思っていますのが、社会人の学生は必ずしも多くはないのですけれども、この方々が、多分リカレント教育という形でしょうか、入っていらっしゃると思うのですけれども、年代ごとというのですか、特徴だとか、業種とか職種みたいなところで、実はこういう人たちが多いみたいな特徴がもしあるようであれば、少しそこを教えていただきたいと思いました。
 それから、川越先生のところは、評価指標をもっていかに生徒たちが自己満足というか自己評価が上がったというのがあるのですけれども、これは6か月間たっての評価になっているのは、6か月かけてこのUTokyoGSC-Nextを行っているというわけでしょうか。という質問をしながら、この評価指標がどの程度汎用性があってほかに展開できるのか。いろいろなところでSTEAM教育はこういうふうにやるとか、短期間でやるのもあれば、1年単位かもしれませんけれどもやっているのがある中で、使用前、使用後でどう変わりましたかというのを何か標準的に持つほうがいいと言ってしまうのですけれども、実際にこれがほかでも使われているということなのか。もしそうであれば、私はこういうことを標準版としていろいろなところで広めていったほうがいいと思ったので、その辺の御見解を伺いたいと思いました。
【尾上委員】  ありがとうございます。この2ページ目の全学というところを見ていただくと分かりますけれども、全学で1年から3年生まで全部入れて3,235人いる中で、留学生が895で、社会人1,008人いるので、3分の1ぐらい社会人がいるという状況です。そういう面でいうと、社会人、留学生、日本人というのが、少し日本人と留学生のバランスがあれですけれども、1対1対1ぐらいになっているというところで、いつからでも入ってくれるということを考えると、もっと増える要素は多分あるのだろうとは思っております。
 実際に入ってきている社会人の人たちの層なのですけれども、これはほとんどが、昔は若手から中堅になるぐらいの人が多かったのですが、最近結構若手で入ってすぐにやはり博士に行きたいというのを会社でも許可していただけるようになっているところがありますので、結構大変だとは思うのですけれども、そういう人も1割2割増えてきてはいるという状況にあります。そういうところも増やしていきたいなと。
【梶原委員】  ありがとうございます。
【川越主査代理】  ありがとうございます。まず、評価について、評価の期間ですが、UTokyoGSC-Nextというプログラムは、第2段階に関しては大体4か月かけて行っており、このデータについては、7月から12月の間、定期的に月一、二回講座があるというようなプログラムになっており、皆さん同じ期間でやっているというところになります。
 汎用性というところですが、私たちもそういった標準版をつくりたいと思ってやっているところです。今ここに挙げている評価は、既に一昨年度データを取ってやったところなのですが、これでは少し足りないというところで、昨年度から少し指標を改善させまして、そういったものを使ってこのUTokyoGSC-Nextだけではなく、実際の高等学校での総合的な探究の時間であったり、私たちの実施している産学連携ワークショップとか、様々な場面で今データを取得しているところになります。そういったものの分析を進めて、標準版として出せるような形にしていきたいというところで、今オンゴーイングなんですけれども、それを目指したいと思っております。ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございました。いい時間になってまいりましたが、いかがでしょうか。
【登本委員】  具体的な事例を聞かせていただき、ありがとうございます。これから多くの方に博士号を取得して活躍していただくには2点必要だと考えます。
 尾上先生から、留学生が一定数いるけれども、帰国してしまう者が多いというのは、とても残念です。せっかく大学院で学びたいと思って日本に来てくれているのに、自国に帰ったり、ほかの国に行ったほうがいいと判断されてしまうのは残念です。日本で働きたいと思ってもらえるよう、そのためには在学中からもっと手厚いサポートや、大阪大学でということではなくて全体的な在学中の支援、その後日本で働きたいと思ってもらえるような支援が必要かと思いました。
 日本人に関しては、特に社会人の方に博士号を取得していただくために、前回の議論でもあったように、一つのキャリアパスとなっていくようなことが必要だと今日の報告から改めて思いました。
【狩野主査】  簡潔にありがとうございました。多分お答えは「そうですね」という感じだと思いまして、すみませんが、残りはまた後半でもう少し質疑の時間がございますので、そのときにまた思いつかれたことがあったら共有いただければと思います。ありがとうございました。
 では、後半の議題に入りたいと思います。議題2のほうですが、科学技術コミュニケーションに関するヒアリング、現状と課題等についてということになります。こちらは、まず事務局の井上さんから御説明をいただいた後に、三菱総研から今日来てくださっておりますので、委託調査の結果について御共有いただきます。その後に、オンラインにおられる桝先生から、題材を準備いただいておりますので、その内容についてお聞かせいただきたいということで、以上全部終わった後に、また意見交換にしたいと思います。
 論点としては、探究あるいはSTEAM教育と科学技術コミュニケーションの連携を図る上で、現場で活用しやすいコンテンツや情報の充実をどうやって図れるか。それから、大学・研究機関においてELSIに関する基礎的な素養をいろいろな人が身につけてほしいわけですが、どうしたらよいか。さらに、科学技術コミュニケーションに関係する人材にどうやって増えていっていただくあるいは育っていただくかということについて、どんな人たちを相手にして、どういう目標で進めたらいいか。というようなことを念頭に置きながらお聞きいただければと存じます。
 それではまず、井上さんからお話をいただければと思います。お願いします。
【井上科学技術社会連携係長】  承知いたしました。それでは、資料4-1に基づきまして、事務局としての科学技術コミュニケーションに関する現状と課題、今後の方向性について御説明させていただきます。なお、資料4-2につきましては、今回御説明しませんが、参考資料を掲載してございますので、必要に応じて御覧いただければと思います。
 まず、4-1につきまして、基本的な考え方といたしまして、科学技術に関しましては、もともと国民の理解増進を非常に重要事項として挙げておりましたけれども、2000年頃を境に科学技術コミュニケーションといった形でコミュニケーションが重視をされるようになってまいりました。それに求められる内容につきましても、双方向のコミュニケーションとか、研究者と国民の対話とか、あるいは国民が政策過程にも参画するとか、多層的な科学技術コミュニケーションといった形で、科学技術コミュニケーションに求められる役割が変化をしてまいりました。
 それで、今後も社会の在り方も大きく変わっていきますので、科学技術がもたらす倫理的・法制度的・社会的課題、いわゆるELSIといったものも含めました、時代に即したような科学技術コミュニケーションを推進していく必要があると考えております。また、これを推進していくことに加えまして、ELSIをはじめとする、科学技術と社会に関する様々な課題の研究開発を推進していくこと、また、科学技術コミュニケーションに関わる人材の育成を進めていくこと、これも重要であると考えてございます。
 2番の現状・課題に移りまして、このような考え方から幾つかの項目に分けまして、現状・課題を記載してございます。まず、(1)といたしまして、科学技術コミュニケーションの推進でございますが、これは幾つかの項目に分けております。
 まず、1つ目、対話・協働の構築と推進と記載してございます。これは例えば、国民が科学技術に関する政策の検討に参加する場をつくるとか、あるいは国民の意見を聴取して政策に反映するとか、あるいは研究費制度において国民との対話に取り組むことを記載することなど、あるいはJSTにおきまして、サイエンスアゴラといった取組とか、日本科学未来館といった取組を通じまして対話の場をつくっていくといった取組も行われております。また、中身に関しては、リスクコミュニケーションとか、次のページに行っていただきまして、ELSIといった課題に関しても対話が社会と行われているといった状況がございます。また、国の政策に関して、まさにこの人材委員会のような有識者会議なども含めまして、科学技術に関するコミュニケーションが行われているといった状況でございます。
 2番は多層的な科学技術コミュニケーションといたしまして、対話に限らないコミュニケーションといった形の整理をしてございます。例えば、国による科学技術週間の取組とか、JSTにおきましては、未来館のほかにも、「サイエンスポータル」といったウェブサイトを使って情報発信をしているなど、あるいは各機関において様々な形で独自に科学技術コミュニケーションを推進していただいているといった状況がございます。
 丸3ですけれども、こちらは先ほどのお話ともかなりつながりますけれども、STEAM教育との連携を強化するといった論点がございます。これにつきましては、文部科学省におきましても、2025年度から科学技術教育アドバイザーといった制度を開始しまして、地域と連携したSTEAM教育に関わっていただくといった取組を進めていたりします。JSTにおきましては、探究・STEAM教育に役立つ情報を提供する「サイエンスティーム」というウェブサイトを昨年開設したりとか、あるいは未来館などで関連する取組を行っているという状況がございます。また、競争的研究費制度の中におきましても、子供などを中心とした皆様へのアウトリーチ活動に関して例えば直接経費を充当できることを明記するなどの形で支援を行っているという状況がございます。
 丸4ですけれども、科学技術コミュニケーションに関する実態の把握とエビデンスに基づいた政策推進と題しておりますが、これはこのような場で検討するといったことでございます。もともと令和2年まで科学技術社会連携委員会というものがございまして、ここで議論を様々な形で行ってまいりました。また、国民の意識に関していうと、内閣府とか、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)などで様々な調査を行ってきているといった歴史がございます。
 3ページに移りまして、これらの課題につきまして課題・指摘事項として挙げられているものを簡単に御説明させていただきます。まず、丸1の対話・協働の場の構築と推進ですけれども、こちらは対話に関してはやはり特定の分野に限られていった状況がある、また、リスクコミュニケーションやELSIといった部分につきまして、最新の知見の反映とか対話が足りていない部分があるのではないかといった御指摘がございます。また、有識者会議等における科学的助言につきましては、特にリスクを伴うような様々な案件に関して科学者が個人的な攻撃を受けたりとか、訴訟の対象となったりするといったような課題も指摘をされているところでございます。
 2番の多層的な科学技術コミュニケーションの推進につきましては、まず、今、様々な活動がございますけれども、これが、SNSが台頭してきたりする中で、新たな情報環境に適応できていなかったり、あるいはターゲット層とかメディアの特性みたいなものを意識した戦略的なコミュニケーションをもっと推進する必要があるのではないかといった課題がございます。例えば科学技術週間がございますけれども、この認知度はある調査によると3%といった形でしか認知をされていないといった状況もございます。
 また、各機関の様々な取組につきまして、それらがもっと連携をする必要があるのではないかといったところがその次の丸になっております。連携に加えまして、そもそもそういったことに取り組むリソースも足りていないのではないかといった指摘もございます。また、研究者個人、個々の取組といったことでいうと、やはり様々な理由から科学技術コミュニケーションに取り組みたくても取り組めないとか、そういった課題もあると指摘をさせていただいております。また、社会としての課題としましては、例えば科学的根拠のない風説、デマみたいなものとかそういったものを客観的・批判的な判断をせずに受け入れてしまうといった社会の課題もございます。
 丸3のSTEAM教育との連携につきましては、探求・STEAM教育は様々な取組が始まってきているところですけれども、まだまだ広報や連携が不十分ではないかといった指摘がございます。例えば科学技術週間もそうですが、「サイエンスティーム」というJSTが構築しているウェブサイト、こちらも利用拡大を目指した取組を行っていますが、まだまだ世の中に知られているという状況ではないといった状況もございます。また、各機関の取組につきましては、もっとつないで情報共有・情報発信を強化していく必要があるのではないかと考えてございます。また、国が行っている取組で次世代人材育成に関する事業とかコミュニケーションに関する事業が様々ございますが、こういったものの取組がさらに連携していくことが重要ではないかということも指摘をされております。
 4ページに行きまして、各機関への支援もやはり大事なのではないかということです。特に地域などによって様々な科学技術の、例えば科学館へ行きたいといってもそもそもないとか、アクセスに格差が生じている可能性があるといった課題とか、大学・研究機関によっても様々な形で差が生じているといった状況をまずしっかり把握する必要があるのではないかといった指摘がございます。また、教育現場との連携という観点で申しますと、そもそも探究・STEAM教育というのはなかなか知見や人材が豊富ではないといった状況とか、そもそも教育現場の業務が逼迫しているといった状況も踏まえて、丁寧な連携が必要ではないかといった指摘がなされております。
 丸4の科学技術コミュニケーションに関する実態把握と政策推進につきましてですが、今回の人材委員会までの間、特にこの数年間、国として科学技術コミュニケーションに関する議論がなかなか行われていないというような問題がまずありまして、また、エビデンスも不足しているといった状況がございます。
 次に、(2)といたしまして、先ほど申し上げた中の2つの大きな柱の研究開発の推進がございますが、こちらにつきましては2つに分けております。まず、1つ目がELSIなどの科学技術と社会との関係で生じる課題への対応と題しまして、ここの中では、JSTの社会技術研究開発センター(RISTEX)という部署がございますが、こちらでプログラムを立ち上げまして、RInCAというプログラムですが、こちらの中で研究開発を実施しているという状況がございます。また、複数の大学、大阪大学や中央大学、広島大学などにおいてELSIに関する拠点が設置をされているという状況もございます。また、個々の研究開発事業でいいますと、ムーンショットなどの事業において、ELSIの実践に向けた取組も行われているといった状況でございます。
 丸2としまして、ELSI以外の部分で社会課題解決とかあるいはシチズンサイエンスみたいな形で研究者と社会との協働が必要ではないかというところです。こちらは同じRISTEXの中で社会課題解決を目指す研究開発を様々実施しているということと、シチズンサイエンスに関しましては、これは職業科学者ではない一般の市民によって行われる科学的活動のことを一般的に指しますけれども、そういった形の新しい形の研究開発が注目をされているといった状況がございます。
 これらにつきましても、5ページに課題・指摘事項を挙げさせていただいております。ELSIに関して申しますと、研究者の層はやはり不足していて人材が足りないといったこととか、それに取り組む上で大学の拠点というのは非常に重要な位置づけがあると思いますが、限られた大学における取組になっているということです。それもありまして、研究コミュニティー全体においてELSIへの取組が不足しているのではないかということとか、あるいは産業界との関係でも本来ELSIというのは非常に重要な概念ではあるんですが、なかなか産業界から見て、どういった方に相談していいか分からないといった課題が指摘をされてございます。
 丸2の研究者と社会との協働の部分ですけれども、こちらRISTEXの事業として存在しますが、様々な形で社会課題の解決を目指す事業はたくさんありますので、そういったものとの関係性をよく整理した上で、さらに、総合知を使って解決すべき課題というのは何なのかというのを適切に整理していく必要があるといったことが課題として挙がっております。
 最後に、(3)としまして、科学技術コミュニケーションに関する人材の育成という課題がございますが、こちら国としても過去、科学技術コミュニケーターというものの育成事業を実施してございますけれども、あと、科学館とか大学の一部においては、科学技術コミュニケーターを養成する講座も提供されている状況がございます。
 この課題と指摘事項でございますけれども、国として、人材の育成状況というのを定量的であったり体系的に把握できていないといった課題がまずございます。その上で、各機関の連携とか広報とかそういった部分の強化が必要ではないか。また、科学技術コミュニケーターなどの専門家だけではなく、より幅広い層に科学技術コミュニケーションの基礎を学ぶ機会を提供する必要があるのではないかといった指摘がございます。また、その学ぶ対象としては、理工系の人材だけではなく人文系の人材が科学技術コミュニケーションに関わることが必要ではないかといった御指摘がございます。
 ここまでの課題を踏まえまして、6ページ、7ページに今後の方向性を簡単に事務局としてまとめてございます。
 まず、(1)の科学技術コミュニケーションの推進、①対話・協働の場の構築と推進につきましては、市民と行政との対話やパブリックコメント等に関して時代に合った形で在り方を適宜見直しつつ、更なる活用を促進していく。また、国の科学的助言につきましては、科学技術の知見を適切に政策に反映する取組を行いつつ、科学者の適切な保護を検討する必要がある。
 また、サイエンスアゴラ、日本科学未来館といった取組を引き続き活用いたしまして、ELSIやリスクに関するコミュニケーションを含めた対話・共創活動を推進していく必要がございます。
 丸2につきましてですが、現状様々取り組んでいる事業に関してターゲット層を適正に分析しまして、科学技術コミュニケーションのアップデートを行っていく必要があるのではないかといったことがございます。また、2つ目のポツですけれども、各機関における科学技術コミュニケーションの状況というのを国としてもっと適切に把握した上で、各機関同士の連携を促進していく必要があるのではないか。また、市民が最適な選択や判断ができるような科学技術コミュニケーションを推進していくべきである。
 丸3のSTEAM教育との連携強化ですが、様々な機関で様々な取組を行っているので、そういった情報を集約して、もっと適切に発信をしていく広報活動を強化するとか、日本科学未来館につきましても、地域の科学館との連携を強化するなど、様々な形で国として貢献する必要があるのではないか。
 さらに、次世代人材育成事業と科学技術コミュニケーションとの連携を進めていく必要があるということと、競争的研究費制度の中でも裾野拡大に向けた取組を引き続き推進していく必要があるということを記載してございます。
 丸4のエビデンスに基づいた政策推進ですけれども、こちら各機関の状況を適切に調査・把握した上で、その結果に基づいて人材委員会等の場で適切に議論に反映していくといった形で、エビデンスに基づく政策を推進していく必要があると考えてございます。
 (2)の研究開発の推進ですが、こちらはELSIというのは本来、全ての研究者がある程度身につけておくべき素養であるという面がございますので、まずは、そういった基礎的な素養を全ての研究者が身につけることのできる方策を検討していく。さらに、RISTEXの事業などを活用しまして、人材育成や外部との連携等を図っていく。また、国の研究費全体として、例えば、競争的研究費の公募要領の記載などを使ってELSIの検討体制を強化していくといったことが重要であるというふうに考えております。
 また、社会課題解決、シチズンサイエンスの推進といったところでございますが、関連機関の連携をより拡大しまして、社会課題、どういったものへ取り組む必要があるのかというところを強化していく。その中でシチズンサイエンス等の新たな手法を適正に取り入れていくといったことが重要でございます。
 最後の(3)でございますけれども、人材の育成につきましては、まず、国として適切に育成状況を把握した上で、様々な大学や科学館などが提供している養成講座等の情報を適切に普及・拡大していくといったことが重要であるというふうに考えておりまして、その中で、取組の対象や内容とか、人材育成の成果とか、あるいはキャリアパスの状況とか、そういったものを適切に把握していくことが重要であるというふうに考えてございます。
 以上でございます。
【狩野主査】  御説明ありがとうございました。特に最後に御紹介いただいたこの後どうするかというところについて、ぜひ後ほどまた御意見をいただければと思います。ありがとうございました。
 では、続きまして、短い時間で恐縮ですが、三菱総研の小野様に内容の説明をお願いしたいと思います。お願いいたします。
【小野研究員】  よろしくお願いします。三菱総研の小野と申します。本日、このような機会をいただきましてありがとうございます。
【狩野主査】  そのうち共有されると思いますので、始めていただいて。
【小野研究員】  では、会場の皆さん向けに、表紙に記載したタイトルで昨年度委託調査を実施させていただきました。
 本日は、調査の概要を説明した上で、調査結果の概要を説明させていただきます。
 3ページは、本調査の目的です。こちら一番上の四角にございますように、この調査では科学技術人材に着目した調査を行いました。科学技術人材とは、科学技術に関連する職業に就いている方を定義しています。「科技人材」と呼ばせていただきます。
 この科技人材に対してモニターアンケート調査とインタビュー調査を実施いたしました。資料にそれぞれの概要を記載してございますが、アンケート調査は、こちらは10代から60代の一般の男女5,000人を対象にしたものです。こちらは必ずしも科技人材ではない方も含んでいる一般のモニターということになります。インタビュー調査のほうは、こちらは科技人材50名というところで、科学技術に関する職業に就かれている方というところに限ってインタビューを実施したというところになってございます。
 インタビューの視点としては、左のアンケートのところにございますけれども、アンケートとインタビューでおおむね共通のものを設定しておりまして、科学技術に関する現在の興味・関心、これまで経験された科学技術に関する体験、興味・関心と経験との関係性というところ、そして、最後に進路選択と経験との関係性というところをアンケート、インタビュー共通して伺ったという形になっています。
 続きまして、結果でございます。資料4ページは、アンケート調査の結果です。アンケート調査回答者5,000者の3割程度が科学技術への関心があるという回答をしています。左のグラフです。それを文系・理系別に見たというのが右のグラフになりまして、文系の3割程度、理系の6割程度が科学技術に関心を持っているという結果になってございます。理系の方全員が興味・関心があるという状況ではございませんでした。
 続きまして、5ページです。先ほどから関連する話も出ていますけれども、現時点で科学技術への興味・関心が低い方々というのがどのような方なのかというところになるんですが、こういう方々に小学生時点の興味・関心を伺った結果というのが左のグラフです。今関心がない方は小学生時点でも、関心がやはりなかったという結果であり、興味・関心のなさというところが継続される傾向にあるのかなというところが出てまいりました。
 また、興味・関心が小学生時点にあった方であっても、その以降、何かしらのきっかけがあって興味・関心が変わってきてしまったという方も一定数存在するという結果になってございます。
 続きまして、6ページです。こちらは興味・関心というよりも進路選択に関する分析となってございます。まず、理系の進路を選択された方が現在どのような興味・関心を持っているのかというところを把握した結果ですが、当然といえば当然なんですが、理系の方というのは全般的に、科学技術に関する活動への興味・関心が文系の方と比べると高いという結果になってございました。
 7ページです。理系の進路を選択された方々が、小学生の時点でどういった経験や体験をしてきたのかというところを伺ったところの結果がこちらです。理系の男性と理系の女性というところで回答に差異が見られたという結果になってございます。具体的には、科学技術に関係する活動また科学技術以外の活動とともに、全般的に理系の女性のほうが男性よりも体験や経験の頻度が高いという結果でした。先ほど関連する発表もありましたが、理系の女性は何かしら体験・経験と進路選択とに関係性があるのだなというところが示されました。
 続きまして、8ページです。こちらはアンケート結果の最後です。今回、文部科学省様などが実施されている国の取組の認知度を把握したところ、どれも知らないという方が67%いらっしゃったという結果になってございます。比較的SSHですとか日本科学未来館の取組というところは認知度が高いというところです。
 続きまして、9ページです。こちらは、インタビュー調査の結果になってございます。こちらは先ほど申し上げましたが、科技人材、職業に就いている方についてインタビューを行いました。
 その結果、科学技術人材の進路・職業選択というのはかなり多様なパターンがあったのですが、普遍的な一般化というのは難しい中でも、幾つかの代表的なパターンというのがあるということが分かりました。そのパターンは、6つ類型というところで整理させていただいておりまして、それぞれさらに上段のレベルでの整理も行いました。
 まず、1つ目の整理というところが、幼少期からの志向が進路・職業選択につながるパターンです。こちらに含まれる類型としては1と2がございまして、類型1のほうが、名前として「科技人材ネイティブ型」としているのですが、周囲に科学技術人材がいる等により、それがそのまま目指す人材となり、興味・関心、進路志向というところを継続された方ということになります。
 類型の2というところが、こちらは周りの影響というよりも、何か特定の分野についての興味・関心、例えば、幼少期から鉄道への関心が高い方がいますが、そういった興味というところを継続された方が類型2になってございます。
 続きまして、類型3と4というところ、こちらは幼少期の興味・関心というよりも、学問ですとか科目への興味・関心というところが職業選択につながったパターンです。類型3が学問そのものへの興味・関心というところに基づいて進路選択をした方です。類型4が、こちらは学問そのものへの関心というよりも、自分は理系の科目が得意だといった自己認識から理系を選択されたというパターンになってございます。
 実は、この中で類型4というところが最も割合としては多かったという結果になっておりまして、こちらも特徴的な成果だったと考えております。
 続きまして、類型5と6ですが、こちらは科目というところではなくて職業・社会的機能に着目して進路選択につながるパターンです。類型5は職業のほうで、類型6というのが社会的機能に着目したという方です。科学技術コミュニケーターは類型6の方が多いのかなというふうな印象でございます。
 類型については以上で、最後が結論です。いろいろと分析を行った中で、今回の結論と示唆というところはこの5点であると考えています。
 まず、1つ目が、幼少期のところから科学技術に関する体験ができる場というのを、環境を整備していくべきではないかという点。
 2つ目が、そういった体験は、幼少期からというふうに申し上げましたけれども、ライフステージが進んでいくに従って、いろいろと影響を与えやすい体験というのが変わっていくのではないかと思いますので、それを踏まえて提供というところがポイントというふうに思っています。
 3つ目が、「働きかけは中学生以前から」とありますが、こちらは進路選択に関する働きかけになってございまして、進路選択のタイミングの多くは高校生なのですけれども、それより以前から進路選択の検討というのを始められる方も結構多く、こういったメッセージにさせていただいています。
 4つ目が、職業への構築が重要ではないかというところです。最後に、5点目というところが、身近な人を通した働きかけが重要なのではないかというところになっておりまして、こういった進路選択に思った以上に周りの方からの働きかけが重要だったというところが指摘される回答というところが多かったということでございましたので、こういった提案をさせていただきました。
 発表としては以上でございます。ほかにアペンディックスとして参考情報をつけておりますので、適宜御確認いただければと思います。ありがとうございます。
【狩野主査】  小野さん、ありがとうございました。内容は大変興味深いもので、なかなか、現場にいてそうかなと思って仮説はあるのですが、こうやって証明されたのは初めてという感じがした内容もございました。
 ちなみに、前半の内容は、拝見すると1,000万人ぐらいが母集団にあるところからこの人数を抽出されたということかなと思います。クロスマーケティングさんのパネル登録者はどうも1,000万人ぐらいということだったので。
【小野研究員】  そうですね。その中で回答してくださった方ということですね。
【狩野主査】  という意味の母集団代表者だということが分かりました。ありがとうございます。
 では、続きまして、桝先生に移りたいと思います。では、桝委員から御準備の内容を共有していただければと思います。お願いいたします。
【桝委員】  ありがとうございます。お願いします。
 科学技術コミュニケーションに関する現状と課題と今後の方向性については、井上さんからもう既にお話がありましたけれども、これまで、20年以上にわたって様々な取組がなされてきて、当初の一方向的な、トップダウン的なコミュニケーションから双方向・対話重視のコミュニケーションというアップデートもされながら、本当に大学での教育システムを含めて様々な着実な成果が蓄積されてきたと感じております。
 ただ、一方で、前に進めば進むほど、新たな側面であったり現実が見えてくるものだなとも感じていまして、ここでは、次なる科学コミュニケーションの在り方に関して、少し異なる視点から現状を捉えてみて、今後の政策の方向性を決めるに当たって、議論の種を投げ込めたらというふうに思っております。
 今回、時間がないということもありまして、3つのトピック、先ほど資料にあった現状の課題、今後の方向性で様々なことを挙げられていましたけれども、そのうちの3つのトピックについて、現状の捉え方と再考すべき点についてまとめたいと思います。
 次お願いします。先ほど、まず対話・協働の場の推進というものに関してですけれども、そのゴールをどこに置くかという話です。先ほどからありましたが、対話・協働の場というものを今非常に強く推進しているんですけれども、対話・協働の場というものが一体どこまで追求していくのかというところが1つのポイントだと思います。
 次のページです。先ほどから、対話・協働というのは、もちろんサイエンスカフェを含めた双方向的な場の推進ということでありまして、様々なそういったサイエンスカフェの開催を頻度を多くするとか回数を多くするといった施策があったわけですけれども、一方で、こちらの2011年の内閣府の調査ですが、その対話・協働の場というのが科学情報と触れる、科学に触れる場になっているかどうかという点で見てみますと、御覧のとおり、これは8年前になりますけれども、結局のところ、まだ科学館・博物館とかシンポジウムのイベントといった場所というのは、なかなか科学情報を実際に仕入れる場にはなっていなくて、今なおテレビ・新聞やインターネットといったマスメディアがそういった場になっているということが分かります。
 直近の2020年のコロナ禍でも、次のページなのですが、随分と双方向を意識した科学技術コミュニケーション施策が行われてきたにもかかわらず、情報などに触れる媒体、接触機会というのは、結局のところ、既存メディアであったりとか新興メディアのインターネットといった一方向的な部分になっているということがよく分かります。
 そのため、次のページですけれども、改めて、対話・協働の場、今、現状の科学コミュニケーション、推進しようとしている対話と協働、双方向の科学コミュニケーションというものと、実際に市民全体が情報を共有して情報に接触する場というのは、これ当然なのですが、物理的に別物となっています。
 対話・協働というのをもし全国民にしようと思った場合には、1回20人とすると、1億人で何百万回のサイエンスカフェをしなければいけないということになりますので、ここで1点再考といいますか、今後について議論したいのは、対話・協働の場、双方向の科学コミュニケーションというのをこの後も更に推進・拡大して、全国民がそこに触れられるような方向性を目指していくのか。つまり、対話と協働というのが科学情報共有の場とイコールになる状態を目指していくのか。それとも、対話・協働と情報共有というのはいい意味で別物と捉えて、情報共有の上で一部が対話・協働へ流れていくといったような緩やかにつながった状態を目指していくのかという、今後の科学コミュニケーション施策の在り方に関しては非常に大事なポイントなってくると思いますので、ここの議論を今後進めていきたいと思っております。
 続いて、2つ目です。こちらは「多層的な科学技術コミュニケーション」という言葉が出てくるのですけれども、その範囲をどこに設定するかというところです。これは先ほどの三菱総研さんの調査結果とも少し重なるのですが、これまでの取組というのは、科学未来館さんも含めて、いわゆる科学技術関係の施設へのコミュニケーションの強化というものを図ってきました。さらに、大学や研究機関のシンポジウムであったりとか体験系というのが多くやってまいりました。
 ただ、次のページで、これも三菱総研さんが先ほど使われていましたけれども、VSEGというVictorian Segmentという、細かいところは割愛しますが、科学技術に対して「関心層」「潜在的関心層」「低関心層」というふうに分類する手法があります。「関心層」というのは、ただ関心があるだけじゃなくて、積極的に科学に関する情報を取りに行くというのも含めた「関心層」と定義されているのですが、これで分けてみるとまた違った一面が見えてくるわけです。
 次のページです。これはまだ未公開データも入ってしまっているのですけれども、日本国民全体では、「関心層」、すなわち科学技術に関心があって、かつ情報を自分から取りに行くような層というのが16%、「潜在的関心層」というのが60%、「低関心層」が22%ということが既に分かっています。
 先ほどから申し上げている、ここまでの施策で非常にプッシュされてきたサイエンスカフェや、あるいは科学館・科学博物館といったものの来場者というものは、人数は非常に多くなっているんですけれども、そこの内訳をこのようにVSEGで見てみると、御覧のとおりかなり偏ってしまっているということが、これはデータとして出ています。
 私自身はテレビの視聴者に関する科学コミュニケーション研究をしていますので、ちょうど民放テレビの視聴者に関するVSEGの結果も出ているのですけれども、「低関心層」全てをカバーできているわけではないが、現状のサイエンスカフェや、あるいは科学館・博物館と比較すると、比較的幅広い層に到達しているのかなという感覚があります。
 また、これは別にテレビがいいとかそういう話をしているわけではなくて、単純に日本社会のボリュームゾーンというのは「潜在的関心層」にあって、それが6割で、「低関心層」が次に多く、最も少ないのが「関心層」になってしまっている。一方で、第6期まで中心に据えてきたサイエンスカフェや博物館・科学館というのは、数字の上では最も少ない「関心層」に対して、いい意味でも悪い意味でも深くリーチしているということがデータとして出ています。
 そのため、今後に向けた議論になってきますが、次のページです。現在注力している手段、サイエンスカフェだったり博物館というものを更にもっともっと推進・強化して、「低関心層」の皆さんも参加してもらえるように進めていくという選択肢ももちろんあると思います。ですから、従来の未到達層も含めたいわゆる多層的なリーチを目指していくのかというところか、はたまた、ある程度サイエンスカフェや博物館というのは「関心層」にフォーカスした手段というふうに捉えて、より未到達層にリーチしている、あるいは、これからするであろう別手段の推進・強化に取りかかっていくのかというところを今後の科学コミュニケーションの考える上で1つ議論のポイントとしたいと思っています。
 更に言えば、そもそも「低関心層」2割いましたけれども、そこまで本当に隅々まで届ける必要があるのかというところも、ここはあえて、そこも含めて議論したいなというふうに考えております。
 最後は3番目です。3つ目は人材です。科学技術コミュニケーションに関する人材に関することですけれども、先ほど資料に科学技術コミュニケーションに関する人材がという話がありましたけれども、その人材というのは具体的にどういう人材なのかということを、もう少し解像度を上げていけないかという意見でございます。
 これは数字的なデータ、バックグラウンドがあるというわけではないので、全て私見になりますけれども、これまで科学技術コミュニケーションに関する人材というと、科学と市民との間をつなぐ人材というふうに解釈されることがとても多かったです。ただ、一方で、現状の社会としてのニーズというのは、一般の人々とのかけ橋よりもむしろ、政府や産業界とのかけ橋のほうにあるのではないかというふうな感覚を持っております。
 その中で、従来の科学館や博物館、大学によってコミュニケーション人材というのは育成されてきたのですが、どうしてもアカデミアに近い組織としての性質上、政府や産業界とのかけ橋を育成する意識であったり知見であったり、教育人材というのは欠けがちではないかという感触があります。
 そこで、ここは本当に私見といいますか、提案になりますけれども、今後、科学技術コミュニケーション人材を重視すべき育成対象というのは、科学を伝えるスペシャリストよりも科学を使えるスペシャリストではないかというところは、1つ議論のポイントとして投げかけたいと思っております。
 先ほど川越先生からも産学連携のSTEAM教育というのがあったのもかなり近いのかなと思っていたのですが、政府あるいは産業界のニーズから逆算した科学コミュニケーション人材の育成方針というのを明文化して打ち立てるべきではないかというような意見も持っておりますので、そこも今後の議論のポイントにできればなというふうに思っております。
 時間もないので、ここまでにしておきます。お願いします。
【狩野主査】  大変ありがとうございました。ふだんお持ちのお考えをしっかりサイエンスにもされてきているということが分かりまして、大変ありがたくお伺いいたしました。ありがとうございます。
 それでは、今のお話を受けまして、また御質問あるいは御意見を賜る時間にできたらなということを思います。残り30分程度ございます。今回は、できれば皆さんに一通り御発言いただきたいと思いますけれども、ぜひどなたか口火を切っていただければと思います。重松先生、お願いいたします。どうぞ。
【重松委員】  この科学技術コミュニケーションの問題につきましてお聞きします。私は数学と関わってやっているわけですけれども、特に数学に対して、もっとも関心が低いということがありまして、科学館あるいは博物館の展示にしても、ほとんど少ないという状況があります。
 それで、世界的に少し調査することがありました。古い時代の話なので少し違っているかもしれませんが、日本の場合は、小学校低学年は科学館とか博物館へ行くのですが、先ほど三菱の御報告があったように、高学年あるいは中、高等学校になるほど科学館・博物館に行かないという現状がございます。
 そういったものをどうやって改善するかということをいろいろ考えたのですが、細かい質問は置いておきまして、例えばこんなことが考えられないかということです。今、少し関心が皆さん持っておられるのに、防災のゲームというのが結構高等学校なんかで活用されているのですけれども、科学技術に関わってクエスト型のゲームを開発してみるとか、あるいは、VR型の空間でできるだけ国民への接点をつくってみるとか、そういったことの可能性はないだろうかといったことに関わって、少し御意見を賜れればと思って発表させていただきました。ありがとうございます。
【狩野主査】  大変ありがとうございました。私もゲームというのが若い世代に大変受けている中で、そこにうまくはめ込めたらという気持ちはあるのですけれども、どうやって楽しいものにするかというのは難しいなと思いながら、今まで時間を過ぎていました。ありがとうございます。
 桝先生、もし何かお答えになりたいことがあったら、幾らでもおっしゃってください。
【桝委員】  今、重松委員からお話があった防災というのは、本当に1つ実はすごく大きなキーワードになっていると感じております。先ほどテレビの関心層、低関心層を見ているという話があったのですけれども、実は科学館とかサイエンスカフェの難しいところというのは、科学をいい意味でもネガティブな意味でも前面に押し出しているがゆえに低関心層は届かないというところがあります。
 三菱総研さんの結果にもありましたけれども、まだ子供の頃というのは、実はあまり関心度に関わらず体験というのをしに行くのですけれども、私のこの結果というのは18歳以上を対象としていますので、大人になればなるほど、関心の有無によって真っ二つに分かれるということもはっきり分かっているわけです。
 その中で、先ほどクエスト系のゲームであったりといったのはお子さんたちにすごく効果的だと思うのですが、防災という意味で言いますと、非常に大人にも実は、ステルス・サイエンスコミュニケーションと私は呼んでいるのですけれども、科学を前面に押し出していないけれども実は科学が絡んでいるというコミュニケーションというのは非常に重要になってくると思っていまして。
 そこの部分というのはまさに、子供に対してはそうしたゲーム、参加型・体験型のゲーム、大人に対しては、防災というのは1つ、健康もそうなのですけれども、防災や健康あるいは気象といった、そういった科学というものを前面に押し出さないコミュニケーションの在り方というのは非常にこれから重要になってくるのかなというふうに私も感じております。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 ほかどうぞお願いいたします。水口先生、さっきまだ発言されていないので、よかったらいかがですか。
【水口委員】  これまでの御意見を踏まえて、私の意見を述べさせていただければと思います。
 科学技術コミュニケーション、科学技術を社会に浸透させていくという課題において、少し話がそれるかもしれませんが、例えば健康の意識が低い人に健康意識を持ってもらうこととよく似ているなと感じました。日本で言うと、自らサプリメントや健康食品を取り、意識的に健康になろうとアプローチを取る人は、先ほどの意識が高い層に限られ、アプローチ次第で潜在的関心層を取り込めますが、低関心層を動かし行動変容につなげていくことは非常に難しいといった課題があります。科学技術コミュニケーションの浸透における課題はこれと似たような現象だと感じています。 あるものを社会の当たり前にしていくには、例えば、健康食品の場合、1社だけである商品を広めようとしても、なかなか広まりません。多くの企業が、これ大事だよねと、一緒にその市場を広めていくようなアプローチにより、徐々に時間をかけて浸透し、市場が形成されていきます。
 例えば、「腸活」というワードは、10年前にはほとんどありませんでしたが、徐々に様々な人がそれを発信することによって、それが社会の当たり前になり、その重要性も伝わっていきます。この裏側にはサイエンスがあり、サイエンスと紐づきながらそれが社会の浸透につながっていきます。
 また、なぜ広まるかについては、そこに個人の課題があるかどうかにもより、例えば、新型コロナウイルス感染症のように、身近なところで自分に影響があるもの等、サイエンスも身近な課題から入るというアプローチも有効かと思います。先ほどゲームの話題がありましたが、無意識的に楽しいからやって、結果的にそれが浸透していくというような、そういった社会的なアプローチも非常に有効であると思います。
 それを踏まえて、こういった科学技術をベースに様々な身近な話題と関連させながら広めていくことができるといいのかなと思った次第でございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 今の話、前半の尾上先生の具体的にお金がなかなかというところにもつながる気がしていて、公金を入れてもいい内容だというふうに思っていただくには同じようなコミュニケーションが要るのかな、ということは、仮説ですけれども思うところです。だとすると、そこの工夫というのはつながってくるんだろうなということを思いながら伺っております。
 次いかがでしょう。登本先生、いかがですか。
【登本委員】  2点あります。まず、桝委員から報告をいただきまして、広げていくときに、上位層だけではなく中間層と下位層にももっと広げていかなければならないなと思いました。
 その際、資料4-1でまだ不足していて、でもすぐにできそうなことが、多層的な科学技術コミュニケーションの推進と考えます。SNSなどを使って広げていくということは、工夫次第では今すぐできて、いろいろな層に届くものになります。
 加えて、三菱総合研究所様からの今回の調査結果(資料5)では、今まで何となく思っていたことが調査結果として明らかにされました。例えば、「学齢期の体験・経験の男女差」が次の活動や格差への対応のヒントになったり、こうした情報発信がさらに科学技術人材の育成につながってくるものと思います。
 2点目は、「科学技術」と表現するときに、抵抗を持つ人もいるのではないかという懸念があります。私たちの生活がこれだけ科学技術に根差したものになってきているときに、(ここでは便宜上分けますが)人文社会分野で扱われる事象も確実に関係しています。でも、「科学技術」という表現によって、「自分は科学にはあまり関係していない」「貢献していない」と思う人が生じてしまうかもしれません。
 この辺りの巻き込み方といいますか、これだけ社会の分野が融合してきている中で、例えば先ほど「健康」というフレーズがありましたが、健康も科学ですし、ELSIの問題や、今や全てにおいて科学技術を無視することはできません。全ての基盤になっているところで広げていきたいときに、「科学技術」という表現でいいのかということを考えました。
 
【狩野主査】  ありがとうございました。
 「科学」という言葉自体が本当に理系の言葉だけなのかというところは問い直していいといつも思っておりまして。ありがとうございます。
 では、続いて、永井先生、お願いします。
【永井委員】  科学技術コミュニケーションがこういうふうにいろいろな可能性で、また政策的な取組で高まっていくということが相互的に進むんだと思ったのですけれども。1つ議論に入れておきたいのが、その中で怪しいものとかトラストを阻むようなもの、要するにインテグリティーの問題というのをすごく注視していかないといけないなと思っています。
 特にSNS等でいろいろな話が広まってしまったりすると、科学技術コミュニケーションの本来向かっていくべきところに、ちょっとした障壁も生まれてしまうことは、非常に政策上気にしなければいけないのかな。特にエコチェンバー的に、あるところで非常に不確かな情報や、間違った科学技術コミュニケーションが生じてしまう危険性――ただ、その間違ったというところの識別は誰にとっても難しいところがあるのですが、これは大学の中の研究インテグリティーの向上と同じで、科学技術は非常に人類にとって重要なものだというところをセット的でやっていかなければいけないので、科学技術コミュニケーションは政策として取り組むべきであると同時に、そうした倫理問題は切り離せないと思っています。その辺の議論も今後加えていっていただければいいなと。これは子供のときからだと思うんです。何をもって信頼すべき情報源なのかとか、その識別って、結局はその個人が持たないと、なかなか大変になってくると思います。
 以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。桝先生、今のはきっとお返事があるのかなと思うのですけれども、いかがでしょう。
【桝委員】  まず、今、永井先生がおっしゃったことの1つで、インテグリティーの部分というのは、科学技術コミュニケーション人材がまず、少なくともあらゆる場所においてインテグリティーを持っていくことが大事だと思いますので、今、科学技術コミュニケーション人材の育成の在り方というのに関して、そういった倫理感といいますか、そういったところというのは改めて強調しなければいけないし、できるかどうかというのも確認しなければいけないなというふうに感じたのが1つと。
 おっしゃるとおり、小学校、子供の頃の真贋を見いだす目という部分というのはすごく強いなというのは私も感じております。科学に関することというのは、全てについて詳しくならなければいけないのかなというふうに思う方が多いのですけれども、実際はそうではなくて、全く知らない分野だけれども科学的な思考ができるから真贋を判定できるというところがありますので、そこはややぼんやりとした話になりますが、正解があるかどうかというよりは、どれが最も確からしいか、正解らしいかということを判断する能力というのを、これは教育システム全体のことかもしれませんけれども、STEAM教育はまさにそこかもしれませんが、それは特に若年層から強調していくことが必要ですし、それも科学コミュニケーションの内だなというふうに改めて今、永井先生のコメントから感じました。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 振ってみた理由は、昔、映像メディアの人から、映像メディアの仕事としては、受け手に考えさせないで内容をそのまま直入させることだということを聞いたことがあったからです。科学技術はどちらかというと考えてもらうための仕事だと思うところがあり、SNSも少し似たところがありますよね。その辺りとどうやってうまく共存できるかというのは結構大きな質問だろうと思ったものですから、もしお考えがあったら聞いてみたかったところもありました。
【桝委員】  今おっしゃったのは、映像メディアの人間からすると、ちょうど今、映像メディア、テレビのメディアのクリエーターのヒアリングをよく今研究の間にしているのですけれども、川越先生がおっしゃったとおり、直感的にいかに響かせるかというところを重視してくるんですね。
 これはSNSもユーチューブもやはり同じロジックでして、基本的には直感的にというところを重視はしていますし、それが人の心を動かすというのも事実ですので、考えるよりも感じるというのが人を動かすというのは、これはもう間違いない事実だと思っています。
 だとすれば、間違った心の動かし方をさせないというところの倫理感というのが必要になってくると思いますので、ここはSNSもそうですし、あと、メディア側の発信者に科学リテラシー、科学倫理観と言っていいのでしょうか、それがあるような社会を目指さなければいけないと思っております。
 ちなみに、個人的にそれが映像メディアの方々には足りないのではないかというふうに思っている部分は、ちょっと公開でこんなことを言うのもあれなんですが、もっともっと強化したほうがいいというふうに思っているのが1つの私の感覚ではございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。ものは言いようで、ぜひもっと持っていただきたいと言っておきますが。
 もう一つ、今大事なことが私としては出たと思っているのは、情報の伝達というところの情報の中身が、既存の知識、既に立っている知識というだけじゃなくて、あるいは、それを最近AIに聞けばすぐ出てくる時代になったがゆえに、より、なおのこと、考え方という情報を伝えないといけないのかな、あるいは態度という情報を伝えないといけないのかなということを思うところです。それのための方策というのは、多分、今までの博物館・科学館がやってきたこと、あるいは教育がやってきたことと違うんだろうということが大きくあるなということは思っておりました。
 ほかいかがでしょう。どんどんお願いできたらと思いますが。重松先生、じゃあ再び。その後、梶原先生お願いします。どうぞ。
【重松委員】  重ねて申し訳ありません。かつて科学館・博物館を調査したときに、日本と一番違うなと思うのは、科学館・博物館が博士課程の学びの場になっているというのが海外にあります。日本ではどうも大人が行かないという状況で、先ほどお話ししましたけれども、そういった意味で、先ほどの博士課程との検討で、そういうところの連携も一層強めてもいいんじゃないかと。
 つまり、極端に言うと、科学館・博物館で博士の学位が取れるとかいうようなシステムも検討が大事じゃないかなというのが、かつて海外を視察したときにも1つの問題でありました。
 もう一つ。地域格差が多いという問題がやっぱり大きな問題ですので、SSHをやっている立場から言いますと、各高等学校を、単なる高等学校をよくするとかいうのでなくて、地域の拠点にしたらどうだろうか。例えば、科学をそういったところでより広める人というものを、高校生を中心に活用するということも含めて、拠点化をすることが大事じゃないかなということが、ひとつ検討されたらいかがかなというふうに思います。
 そして、もう一つの課題は、SSHでも課題になっているんですが、ELSIの問題も含めて、各公立の高等学校で倫理審査をどうしたらいいかという問題が残っております。大学と関係している附属等々は倫理審査を大学でやっていただけるわけですが、公立の場合は倫理審査の場所がありません。そういったことも含めて、ぜひ検討いただければというふうに思っています。よろしくお願いします。
【狩野主査】  ありがとうございました。拠点化の件は、SSHの傾斜配分についても重要な論点かなとひとつ思いました。
 前半、少しだけ教えていただきたいのですけれども、博物館あるいは科学館を大学院生の学びの場というのは、一体何を対象にして学びの場になっているということでしょうか。
【重松委員】  基本的には、科学館の目的によって違うかもしれませんけれども、博士課程の研究テーマによっては、先進的な内容を保存しているかもしれませんので、そういった意味で活用することも大事じゃないかと。もちろん、博士学位をそこで出すというのか、あるいは大学と連携するのか、その辺りは検討の余地はありますけれども、もっとそういう意味で科学館を、博物館を活用したらどうかということを、海外の事例を見て思いました。
【狩野主査】  ありがとうございました。フィールドになり得るということが1つだなということを伺いました。ありがとうございます。
 梶原先生、お願いします。
【梶原委員】  まず、資料4-1の冒頭で思ったことは、科学技術への理解がどうなっているのかということで、いろいろな変化があるので、それに応じた政策というか支援というか、やってきている。やってきてはいるのだけれども、結局、EBPMの話が出ましたが、それが指標的にどう変わったのかというのは一切取られていないので、時代が変わったから新しくこれをやるというアプローチをしてきているので、これからは、何がどう変わった、だから意味があるということにつなげられるように、EBPMとしての進め方として何を指標として見るのかという、そういう視点は持っていただけるほうがいいと思います。
 その上で政策をやった効果がどうなったかということを世の中にフィードバックしてもらう。ただお金を出して、以上終わり、新しいこともできますだと、どのくらい変化しているのかは分からない。まさに基本的な考え方を見て、すごく時代に合わせていろいろなことをされているということは理解できたのですけれども、それによって社会にとっての科学がどう浸透してきたのかというのは全く分からなくて、何も変わっていないみたいな状態のトーンになってしまっているというのがある意味残念だなと思ったので、EBPM、指標とか政策効果というところをよく追っていきましょうと思いました。
 それと同じように、科学コミュニケーションが重要だということで奨励するとか、入れてもいいと表現はしているのですけれども、現場の人たちにとって、奨励されたことがどのように評価されていくのかというのが結局見えていないので、私はそういうのは加点主義で加点してあげるといいと思うのです。現場の課題としては、活動が評価されないという形のところで終わってしまうと、やはり伸びない。
 文科省というか、政策側でやっていいですよ、使えますよというふうに言ったとしても、それがどうモチベーションとしてインセンティブになって出ていくかというと、なかなかそうはなっていないので、今後は、そういった観点の飴と鞭の飴を具体的に見せてあげていただけるようになるほうがいいかと思いました。
 あとは、MRIの方の最後の資料のところで、科学技術関連のポジティブな職業イメージ、これを見ていて思ったのは、医者だとか弁護士だとか、いわゆる士業、そういう人たちを題材にしたテレビ番組がとてもたくさんあって、すごく身近に、すごいな、憧れる。
 ある大学の女性の先生が、科学技術に携わる研究者の番組をつくって、こんなにポジティブなイメージだというのを見せるぐらいの取組をやったほうがいいですよとおっしゃっていたのを思い出して、私はまさにそれは、ポジティブなイメージという意味で言うと、メディアを使ってそういうこともできる。どんな番組ができるかはノーアイデアで申し訳ないのですけれども、思っていました。
 身近な人を通して働きかけがあることによって、身近な人から大きな影響を受けたというのが、まさにこれSTEAM教育で、ある意味、産業界の人がこういったところ、本物を若い人たちに触れさせてあげられる、経験させてあげられるということができるので、ぜひ産業界の人を活用してもらう形で、先生の負荷が大きくならないようにというふうに思います。
 そういった意味ですと、一般社団法人、これから、文科省の方に別途、後でも構わないので、検討というか、私見といいましょうか、意見を伺いたいなと思ったのが、STEAM教育についてとサイエンスコミュニケーションについて、特定の一般社団法人、私が1つ知っているのは「学びのイノベーション・プラットフォーム」で、東大の生研の年吉先生が理事になっているし、大阪大学の田中理事も、理事になっていて、そこは二、三年前にできていて、そういうところと連携するなどはどうか。
 課題感として、産業界の人たちが最初に起こしているのですが、産業界にとって人材育成が重要だ、STEAM教育をこれからの若い人たちに提供してあげないといけない、それは社会全体で取り組むイシューだから、一部の学校の人たち、関係者の人たちが携わるのではなくて、社会全体で担うほうがいいということで一般社団法人化しているのですけれども、多くの大学、77校ぐらい、それから、高等学校だと248校とか、自治体教育委員会だと43、そういった数が特別会員として入っています。
 結局課題は、どうSTEAM教育、学びを深めていくか、学びを変えていくかということで、同じ課題で動いているのがあるので、まさにSTEAM教育の取組をしているところをもっとサポートするだとか、全く新しいことを始めるというよりも、今やっていることの支援だとかそういうふうにしたほうが、広がりが早いんじゃないかと思っています。
 コンテンツを充実させるという話があったのですけれども、コンテンツもここのサイトで、少し見づらいですが、とにかく今やっていることを入れています。企業側からのコンテンツが入ったり、大学がやっているコンテンツが入ってたり、それから、国研がやっているようなSTEAM教育に関するコンテンツを入れていて。
 まだ充実していないのが、アクセスのしやすさだとか、それを使って高校の先生がどう教育に生かしたかというところが、まだ分かっていない部分があるんですけれども、とにかく課題認識が同じで動き出しているところがあるので、そういうところをもっと利用してうまくやるやり方、全く新しいことをやるよりもいいのではないかと思ったりして見ていました。
 同じように、サイエンスコミュニケーションなのですけれども、科学コミュニケーションって定義が広いなと思って、社会との対話をする機会、社会との接点とか対話が充実していないがゆえに、日本の博士人材のリスペクト感が諸外国と比べて低いというそういうところにもあるのかなと思ったりします。あるイギリスの方と科学技術をどのように社会に普及とか説明しているのですかを質問したときに、それはドクターとしての顕示は当たり前に社会に認められているというかリスペクトされているし、政策的にどういうことをやるみたいなところの話の流れの中で、サイエンスメディアセンターというのがある。日本では何で無いんだろうとそのとき私は思ったのですけれども。半年ぐらい前のことです。
 そうすると、サイエンスメディアセンターというのがイギリスにあり、それから、ニュージーランドかな、何か国かあって、社会に対する科学技術のコミュニケーションをつかさどっている、そういう母体があります。そこは、先ほどトラストの話が出ていましたけれども、多分そこに登録されている人が、見識のある人たちで、明確にそういう重要性が認識されている。
 サイエンスメディアセンターが何故日本に無いんですかと聞いたときに、15年ぐらい前なのか、あるんですよね。サイエンスメディアセンターをつくるというということで、文科省で支援事業として起きた。5年ぐらいたつと、事業の支援がなくなり、そこまでに自立する予算、費用がないので、しぼんでいく。その辺の課題感を持っていて話したことがあるのが、RISTEXの話をされていましたけれども、阪大の小林先生はよく分かっていて。
 日本の国としてサイエンスコミュニケーションをどうもって世界にお話しできるかというのが弱いという話は割と一般的に聞くので、そういうサイエンスコミュニケーションといったレイヤーってとてもたくさんあるなと思いました。国としてどうするという話もあれば、研究者個人という話もあれば、研究者をサポートする人たちの話だったり、あるいは、リスクコミュニケーションということで、リスクの要素の話をしなければいけない。まさに原子力がどうなのかいう話。これからフュージョンになるけれども、どうなのかとかいろいろあると思いますが、そういったいろいろなレイヤーがある、あるいは、いろいろな理解がある中でどういうところを進めていくのかというところを少し整理されながら、ここはこういうことをやっていくということでできるといいのではないかと思って聞いていました。
 両方とも課題意識を持って、一般社団法人が幾つかあったりするので、また新しいことやるのかと思って聞いてしまうところがありました。
 以上です。
【狩野主査】  たくさん具体的な内容が詰まっていて、ありがとうございました。ロールモデルに関しては、技術士の人も同じようなことを言っていたと思います。それから、メディアセンターに関しても、最近、大学はお金を取るためのコミュニケーションをたくさんしている結果として、どれがどのくらい確たる情報かよく分からないみたいな話を聞いたこともありまして、その意味では重要な視点かなということは思いました。
 ほかはいかがでしょうか。話題提供をしてくださった先生方が話題提供でもうお疲れでお話しできているかと少し心配しているのですが、何か御意見ございましたら、ぜひ追加でお願いします。
【尾上委員】  よろしいですか。尾上でございます。
 私、この辺の分野は詳しくないですけれども、今日のお話を聞いていて、私が御説明したような博士人材も含めてだと思うのですが、全ての技術者、研究者、技術に関わる人というのが、非常に多様なレベルで自分がやっていることとか内容を説明できる力というのが、なかなか日本の人たちというのはそこの評価はあまり実はされていないのかなというのをすごく感じました。
 一方で、我々、うちの大学も例えば3,000人ぐらい研究者がいるのですけれども、その人たちの中ですごいと思われる人は、そういう力を持っておられるんですよね。そういうのを全体的に評価するようなそういう力を、それはひょっとするとトランスファラブルスキルの1個なのかもしれませんし、アウトリーチの力なのかもしれないですけれども、そういうところがもっともっと認知度として上がるような形に全体を振っていくと、多分、単なる博士か大臣かのような博士じゃなくて、すばらしいけれども身近なことをやっておられる、そういうような人たちが育ってきて、全体的に理解度が上がるのかなというのは感想として持ちました。ありがとうございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。私も、DCのほうはともかくとして、SPRINGのほうのクライテリアの1つにそういうことも入っていてもよいかなということは思っていたところです。それが多様化ということかなと思います。ありがとうございます。
 川越先生、いかがですか。
【川越主査代理】  ありがとうございます。私も感想のようになってしまうんですけれども。
 桝委員から御説明があったときに、低関心層に届ける必要があるかというのは、私自身も何を届ける必要があるかと併せてすごく課題意識を持っております。ゴールをどう決めてやっていくかというのは必要かなと考えております。
 先ほどの議論の中で幾つかありましたが、科学館や博物館を活用して学位を取れるシステムというのは、実は日本にもありますよね。ただ、現在だと、私が知っているのだと総合研究大学院大学とか、まだまだ知名度がないかなというところなので、学部学生にそういった進路もあるというのを知ってもらうこともすごく大事かなと感じました。
 今のテーマの科学技術コミュニケーションですけれども、学生に科学技術コミュニケーションって聞いたことありますかと言うと、聞いたことないと言う学生のほうが非常に多いなというのが印象としてあります。それも言葉を知っている知らないではなくて、定義といいますか、これは何を意味することなのかということを併せて知ってもらったり浸透させるというのは大事かなと思っています。
 私自身も科学技術コミュニケーション実験実習という授業をしているのですけれども、それを履修する学生でさえも初めて聞きましたということもあるので、大学で学ぶ機会だったり、初等中等教育の中でもこういったものを学んだり知る機会というのがあるだけでも違うのかなと感じています。
 特に、科学技術コミュニケーションという言葉以上に、科学と社会のつながりというのをいかに知ってもらうかというところで、最初のお話と少し関連しますが、産学連携につながったりとか、そういったところをうまく活用しながら、いろいろな人に知ってもらえれば、科学技術コミュニケーション人材の育成というところにもつながるのかなと感じました。
 最後、1点、少し余談なのですけれども、個人的には、「一家に1枚」シリーズを作ったこともありますし、サイエンスアゴラにもいろいろ関わらせていただいているので、もっと知ってほしいなというのがあります。
 私からは以上です。
【狩野主査】  ありがとうございました。SSHの傾斜化のときに、今おっしゃったようなことの軸による傾斜化というのもあるなということも今思いながら伺いました。ありがとうございます。
 桝先生、あまり御自身の発表以外はお話しされていないような気がしますので、ほかに思いつくことがあったら、どうぞお願いします。
【桝委員】  いえ、もう十分に皆さんからいろいろな御意見といいますか、本当に参考になりまして。特に梶原さんがおっしゃったことが全て芯を食っているといいますか、本当に全て必要なことだなと思ったので、今回の今後の案に反映させていただければというふうに思いながら聞いておりました。
【狩野主査】  もう一個だけコミュニケーションの専門家にお伺いしたいことは、さっきの話題の中で、「既に学者になっている人に対するコミュニケーション」という話題も少しだけ入っていまして、ELSIをもっと広げたほうがいいのでは、みたいなことですね。ここは何かよい方策を思いついたりされますか。学者以外のご経験があるかたとして。
【桝委員】  ELSIに関して言いますと、一般市民レベルで言いますと、別にELSIという言葉は皆さん知らなくてもいいんじゃないかなと思っていて、むしろELSIというよりは、科学にはそういう倫理的、法的側面があるということが皆さん実感として分かっていれば十分かなと思っていますが。
 一方で、ELSIというものは、科学者レベルの皆さん、科学技術人材に関してはマストのものなのかなというふうに思っております。逆に言うと、ELSIがあるからこそ、人文系の皆さんも科学にかじってほしいではなくて、人文系の皆さんがいないとできませんよということがもう少し伝わったほうがいいかなと思っていますので。
 特に、人文系のアカデミアの方がELSIに携わっているという感覚はまだまだ少ないと思いますので、理系の人が少し足をはみ出してELSIに行くというよりは、人文系の方が足をはみ出してELSIに来てくださるというような、そういうキャリアパスといいますか、ルートというものはぜひつくってほしいと思っております。
【狩野主査】  ありがとうございます。それを実現するための政策ももしここにつけたら非常にいいなということを今伺いながら。
【桝委員】  ごめんなさい。個人的なことになりますけれども、学部からの科学技術コミュニケーション関連の教育だと個人的には思っています。どうしても今、大学院レベルでの科学技術コミュニケーション教育が多いですが、多分学部だと思うんです。本質的にはむしろ。
 特に東京大学などは教養学部がありますけれども、あまり文理ないしは専門性が分かれていない時点で、ELSIを含めた科学コミュニケーションの講義というのができれば、個人的には必修科目なのではないかというふうには思っていますので、そこは今後、先の長い話かもしれませんが、検討事項に入っていいかなというふうに思っております。人文系の皆さんも必修科目に入ったらいいのではないかという、語学に近いものかなというふうに個人的には思っております。
【狩野主査】  ありがとうございました。そういう意味で言うと、高校の教育で文理が分かれる前、分かれていいのかという議論は置いておいて、分かれる前にもしておいたほうがいいような気がします。
【桝委員】  そうですね。初等中等ぐらいでもいいかもしれません。
【狩野主査】  先ほど登本先生がおっしゃったように、身の回りにそういうものばかり今あるわけだから、全員知っておかなければ駄目でしょうという言い方もあるなということは今伺いながら思いました。
 小野さん、もし何か答えたくなったことがおありでしたら、一言どうぞ。
【小野研究員】  皆さんからかなり現場からの御意見いただいていましたが、今回当社で行った調査も、確かにそれを裏付けるデータが取れたのかなというふうに思っています。
 1点だけ、先ほどメディアの話がありましたけれども、メディアの影響というのは結構大きいと、インタビューを通して感じました。50人にインタビューを行う中で、幾つか共通するコンテンツの影響を挙げてくださる方もいました。例えばドラマ「科捜研の女」に影響を受けましたという方が何人かいました。ぜひ具体的なコンテンツを今後も積極的に考えていただけると良いのではないかと感じました。
 
【狩野主査】  ありがとうございました。まだテレビ業界に関わっておられる桝さんに大きな期待がかかっているという勝手なコメントをさせていただきます。期待だけです。失礼しました。
 それでは、一巡発言を皆様にいただけたように思いますので、これで今日は、そろそろ議論の時間は終わりにさせていただこうかと思います。もしまだお話しになれていないことがありましたら、文面化していただいて事務局にお寄せいただきましたら、もちろん反映させていただけるようにお願いを申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、いつもながら、先﨑さんに、一言勇気の出る言葉をいただきまして閉会に向かいたいと思います。
【先﨑科学技術・学術総括官】  今日も本当にあっという間の2時間でございまして、経産省と博士課程学生が就職されるときの会議のときにも申し上げたんですけれども、最近非常に興味深い会議に参加させていただくことが多くて、気持ちが上がっています。
 後期博士課程に関する御支援の御発表もございまして、改めて、経済的支援が必要な優秀な方に対する額の高さ、これでいいのかというのは改めて思いました。どうやってその高さを出すのか、財源論も含めて、数も含めて考えないといけないのですけれども、思ったということと。
 それから、少子化という社会構造の中で日本の科学力を上げていくということを考えると、社会人に対する学び直しという言葉でいいのかどうか分かりませんけれども、後期博士課程としてもう一度学んでいただいて、それを直に社会に還元するというような仕組み、その辺もちゃんともう一回、改めて考えていく必要があるのかなという気がいたします。
 あとは、STEAM教育に関しては、非常に興味深いですね。女性の割合が非常に高いというのは、川越先生とか大島先生とかが引っ張っていっているというのが大きいのか。あと、バイオとか天文とかそういう分野が多いのか。当然、理工とか工学もあると思うのですけれども。
 あとは、入試との関係とかというようなことも、東大の入試も最近はバリエーションが出てきていますから、そことの関係も、もちろん表には出せないでしょうけれども、追求していってもいい段階なのかなと。これだけの研究を高校生が積み上げられるのであれば、それは当然入試のターゲットとも合っているというところもあるので。
 あるいは、入学後、これだけのマインドなり潜在性を示しているのであれば、入学したらですけれども、入学後の単位とかそういったところの積極強化が出ると、よりボルテージも上がってくるのかなというふうに思って、非常に面白いな、関心を私も持ちました。
 あと、コミュニケーターの観点も非常に勉強なりました。理系・文系どうなんだというのはあるのですけれども、理系・文系の興味・関心の差異ですね。それから低関心層ということもありましたけれども、「興味・関心」という言葉に反応する、アンケートとかでですね、そのハードルの高さというのはやはりあるのかなと。この程度で自分は興味・関心あるなんて思ってはいけないよなというハードルの高さが、社会的バイアスなのか教育なのか分かりませんけれども、生んでしまっている。
 そこをもっと迎合感といいますか、そういうものを持ち出すために、例えば、科学というものを前面に押し出さない科学というところに対してフォーカスしたり、科学的思考も評価するといったようなそういった取組というのは、コミュニケーションを上げていく上でのベースとして重要になるのかなということで、これも非常に私自身にとっても気付きがございまして、勉強になりましたということでございます。ありがとうございました。
【狩野主査】  ありがとうございました。総括官の先﨑様でございました。
 私が思いますに、問いの答え方としての科学あり、エンジニアリングあり、テクニクスがあり、それからアーツもあって、要するに、STEAMは問いの答え方ですよね。ということで、どうやってそれぞれを高めていけるかということが非常に大きな問いだなと改めて思いまして、本日はそろそろ閉じたいと思いますが。
 その前に、白川さんから事務連絡をお願いいたします。
【白川人材政策課課長補佐】  本日も活発な御議論を本当にありがとうございました。
 それでは、最後に、次回のワーキング・グループでございますが、6月5日木曜日を予定してございます。
 本ワーキング・グループに関しまして、初等中等教育段階での科学技術人材の育成の充実・強化についても御議論いただいているところですが、そのうち特にスーパーサイエンスハイスクール事業に関しては、当事業に関する企画、それから指定校の審査・評価などを行うスーパーサイエンスハイスクール企画評価会議でも御議論いただく予定としておりまして、そこでの意見の内容についても、次回のワーキング・グループにおいて御報告させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しをいただき、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
 以上でございます。
【狩野主査】  ありがとうございます。
 これだけ詰まった日程であるにもかかわらず、これだけの詰まった内容が毎回あるというすばらしい立てつけに、奥課長以下皆様にしていただきまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。
 では、これにて閉会といたします。皆様、ありがとうございました。
 

―― 了 ――

 

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