令和7年4月18日(金曜日)10時00分~12時00分
文部科学省15F局1会議室及び Web 会議(Zoomウェビナー)
梶原委員、狩野委員、川越委員、重松委員、永井委員、登本委員、原田委員、桝委員、水口委員
井上科学技術・学術政策局長、福井大臣官房審議官、先﨑科学技術・学術総括官、奥人材政策課長、髙見人材政策推進室長、髙橋人材政策課課長補佐、滝沢人材政策課課長補佐、白川人材政策課課長補佐、井上人材政策課科学技術社会連携係長
科学技術・学術審議会 人材委員会
次世代人材育成ワーキング・グループ(第1回)
令和7年4月18日
【狩野主査】 それでは、これより会議を公開といたします。今日はたくさんの傍聴の皆様にもお越しいただきまして、ありがとうございます。
改めまして、私は、科学技術・学術審議会人材委員会の主査から、次世代人材育成ワーキング・グループにおける主査の指名を受けております狩野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
冒頭一言ご挨拶を申し上げます。私が信じるところでは、やはりいろいろ仕組みがあっても、あるいはいろいろ内容があっても、あるいはいろいろな組織があっても、結局、人が柱でございます。人が柱と思ったときに、では、どんな人をよく支えてあげて、よく伸ばしてあげればよいのか、特にこの科学技術政策という目線でというところが大きな問いであります。このワーキング・グループでは、ぜひこうした問いに基づいて、それをどういうふうにしたらよいかという皆様の御知見に基づき、どうやって政策にして実現したらよいかというところについて特に御意見をいただき、よりよい政策の基にしていきたいという趣旨でございます。ぜひとも闊達な御意見をいただきたいと思っております。
それでは、引き続きまして、ただいま私より指名をさせていただきました川越主査代理からも一言御挨拶いただければと思います。
【川越主査代理】 ありがとうございます。主査代理を仰せつかりました東京大学の川越でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、主に初等中等教育を対象としたSTEAM教育や科学技術コミュニケーションについての実践的な研究を進めているところでございます。このたび、こちらのワーキング・グループを通しまして、未来社会をデザインできるような人材育成、また、そういった人材育成の政策について、皆様と議論を進めることができればと思っております。なかなか至らないところはあるかもしれないですが、どうぞよろしくお願いいたします。
【狩野主査】 ありがとうございました。
では続いて、事務局を代表して、今日は局長の井上様から最初に御挨拶いただけるということで、よろしくお願いいたします。
【井上科学技術・学術政策局長】 ありがとうございます。科学技術・学術政策局長をしております井上でございます。
先ほど主査からもお話ありましたように、この科学技術がますます重要になっている中、もう人が柱でございます。支える人材をいかに育成、また活躍していただけるかということと思いますが、一方、日本の研究力は、ずっと相対的に低下の一途でございますし、実はいろいろなデータを見ますと、この科学技術の活動というのは国境がない世界だと思うのですけれども、世界の中でますます日本の人材の顔が見えなくなっていっているということで、非常に危機感を持っております。ただ一方、我々、この人材をめぐる課題というのは、もう大体分かっているのだと思います、ずっと変わっていない。だからぜひ、もう日本もいよいよ変わらなければいけない、変わっていくための具体的な施策というのを、ぜひ先生方との御議論の中で我々も考えていきたいですし、この場でも御議論いただければなと思っております。
進化論のダーウィン先生も、生き残っていくのは、強いやつでも賢いやつでもないと、変われるやつだと言っていますので、ぜひ我々も、日本が変わっていくための具体的な施策をこの場を通じて検討していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【狩野主査】 大変ありがとうございました。変わり者の自覚があります私としては大変うれしい御挨拶をいただきました。誠にありがとうございます。ほかにもぜひ変われる人を増やしていきたいということで、そのための政策を考えていきたいということになると思います。ありがとうございました。
では、議題の2番に参ります。「博士後期課程学生支援等に関する現状と課題等について」ということであります。先に事務局より、内容を資料2-1、2-2に基づいて説明をお願いしたいと思います。後ほど御意見を、せっかくワーキング・グループのメンバーになっていただいたからには、1人必ず1回以上は発言いただきたいという趣旨でありまして、何をおっしゃりたいかを考えながら聞いていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
【髙橋人材政策課課長補佐】 人材政策課の髙橋です。よろしくお願いいたします。
それでは、資料2-1及び2-2について御説明いたします。
まず、資料2-1です。こちらは博士後期課程学生支援に関する現状・課題・今後の方向性(案)を一つにまとめた資料です。全体の構成としましては、1、基本的な考え方、2、現状と課題、そして最後、3、今後の方向性(案)という構成にしております。
まず、1、基本的な考え方ですけれども、1つ目の丸のところに書いてあるとおり、今後ますます複雑化・多様化する社会の中で、深い専門知識や汎用的能力を持って社会全体の成長・発展を牽引することができる科学技術人材が大事であり、特に博士人材の育成や活躍の促進を図っていくことが重要であるというふうに考えております。
2つ目の丸ですけれども、博士人材は、深い専門知識や国際性、課題設定・解決能力などの汎用的能力を備えた高度専門人材であり、アカデミアのみならず、社会の多様な場で活躍することが期待される人材です。一方で、我が国では、いまだに博士はすなわち研究者というイメージが強いということもありまして、人口100万人当たりの博士号取得者数を他国と比較しても、その数は減少傾向が続いているということです。一方で、研究の実質的な担い手として先端研究の現場を支えています。さらに、博士号取得者数というのは、企業に入ってからも高い生産性を示して、企業の研究開発にも大きく貢献をしています。
最後の丸ですけれども、こうした観点から、昨年3月、文部科学省において、博士人材活躍プランというものを取りまとめました。そこでは、2040年における人口100万人当たりの博士号取得者数を世界トップレベルに引き上げるという大目標を掲げておりまして、今後、優秀な博士人材育成を重点的に行うべく、具体的な取組を推進することが必要と考えております。
この基本的な考え方に立ちまして、2、現状と課題を以降で書いております。
(1)これまでの取組と現状であり、ローマ数字の1のところで、博士課程進学への不安を解消する経済的支援などについて、いわゆる入り口の支援ということをまとめています。
1つ目の丸ですけれども、優れた研究能力を有する博士後期課程学生が、経済的に不安を感じることなく研究に専念をして、研究者としての能力を向上できるよう、特別研究員DCという事業を通じまして、1人当たり年額240万の研究奨励金を支援するとともに、科研費として、おおむね平均約80万円を支援してきております。採用率は約20%弱ですけれども、令和6年度においては少し低下傾向になっています。
次の丸、この事業に加えまして、令和3年度より、次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)を開始しまして、経済的支援と多様なキャリアパス整備を合わせて、1人当たり年額290万を支援しております。そして、研究奨励費として平均約220万円と、あと研究費、平均約40万円を支援しているところです。こちらは大学を支援する事業ですので、今約90大学を採択していまして、その採択大学における学生数というものは、日本の全大学における約8割となっています。令和6年度については合計約1万人を支援しています。大学における採用率、応募できる者に対しての割合としては約80%でして、採用者に占める外国籍留学生の割合というのは約40%となっています。
2ページ目をお願いします。こういった事業に加えまして、創発的研究支援事業などを通じて、博士の学生をリサーチアシスタント(RA)などとして雇用するという形で適切な水準の対価を支払うという支援や、あるいは、国からの支援に加えまして、民間企業や財団などの奨学金、あるいは大学独自の支援というものが実施されております。
次の丸で、こういった様々な取組を行ってきていることもありまして、ここ数年、博士後期課程への入学者数は微増傾向です。令和4年度1万4,382人のところ、令和6年度には約1,000人以上増えまして、1万5,744人となっております。特に直近の令和6年度においては、令和5年度との比較において、社会人が30人、留学生は少し減りまして118人減り、全体が増えているということから鑑みると、修士課程からの進学者が主に増えているのではないかというふうに考えることができます。
次のローマ数字2の博士人材の社会の多様な場での活躍促進。博士後期課程学生、入学してから及びその後のキャリアパスの支援ということですけれども、1つ目の丸、特別研究員DCにおいては、先ほど申し上げたとおり、科研費での措置をしておりまして、独立して行う研究計画を支援しています。一方で、研究専念義務というものがありますため、アルバイトや起業などに一定の制限がかかっています。また、個人の支援に加えて、フレンドシップミーティングなどを開催することで、DCの間の人的交流というものを促進してきています。DCの終了後のキャリアパスとしては、常勤の研究職やポスドクフェローとして就職する学生が多いということになっています。
続いて、SPRINGの事業ですけれども、こちらは大学を通じて支援していまして、大学においてSPRING学生を対象としたキャリアパス整備を実施しています。民間企業への就職が約3割と高くなっていまして、全大学における就職率より、このSPRINGの支援を受けている大学の就職率は約10%高いという結果になっています。一方で、大学における追跡調査の最適な方法というのは検討する必要があるという状況です。
また加えて、特別研究員PDという事業において雇用支援事業を実施するなど、ポストの拡充や処遇向上というのを国としても図ってきておりまして、また、民間企業も含めた多様なキャリアパス整備としては、文部科学省と経済産業省が共同で、手引であるとかロールモデル事例集を作成し、周知をしております。
続いて、(2)主な課題・指摘事項等です。
まず、総論ですけれども、先ほど申し上げた博士人材活躍プランの大目標の達成に向けて、これまでの取組、経済的支援に加えて、さらなる取組が必要ではないか。2つ目の丸、事業が複数存在していることに対して、それぞれの事業の目指すべき方向性を明確化する、差別化するということが必要である。
続いて、博士課程進学への不安を解消する経済的支援などについてということで、1つ目の丸ですけれども、先ほど申し上げたとおり、日本では学生というイメージが強い一方で、次のページをめくっていただきますと、やはり研究者という側面もあるということを改めて認識することが必要であると。
3ページ目、次の丸ですけれども、先ほど直近の博士課程入学者数の話をしましたが、少し遡って長期的なトレンドを見ますと、10年前の平成26年度と比較すると、社会人は約7%増加、留学生は約35%増加、そして修士課程からの進学者は約12%減少しているという、こういった長期的なトレンドも踏まえた上で支援の見直しが必要であると。さらに、その2つ下の丸ですけれど、海外からの優秀な留学生の受入れや、日本人学生の海外への挑戦を促進するためには、大学及び課程修了後の就職先である企業などの国際化も必要である。そして最後の丸、SPRINGについては、大学における優秀な博士後期課程学生の確保・育成に戦略的に取り組む事業であるとして、それを改める必要があるということと、優秀な博士後期課程学生には上乗せ支援をしている大学なども一部あるのですけれども、多くの大学においては区別なく一律支援になっていると。また、制度として社会人ドクターへの支援というのも原則対象外となっていますけれども、対象に応じて戦略的に最適な支援を行うことが必要である。
次、ローマ数字の3、博士人材の社会の多様な場での活躍。1つ目の丸ですけれども、博士の学生は研究室以外の交流機会が少なくなってしまい、ネットワーク形成に困っている学生が多い。また、研究室によるかもしれませんが、企業との交流機会も少ないと。そういったこともありまして、やはり国内外のネットワーク形成不足に対するサポートを充実するべきではないか。また、先ほど申し上げましたが、修了後のキャリアパスの追跡調査をやはりしっかりと実施するべきであると。
最後、3、今後の方向性(案)です。こちらは総論と各論というふうに書き分けています。
(1)方向性(総論)です。博士人材活躍プランの目標達成に向けまして、5か年計画である第7期科学技術・イノベーション基本計画の中の目標を検討する。そして、複数存在する事業の目指すべき方向性を明確化、差別化する。特に科学技術・学術政策としての博士支援は、優秀な博士後期課程学生への支援であるということを改めて強調する。
4ページ目をお願いします。事業制度の見直しを行うとともに、日本人学生、留学生、社会人ドクターのそれぞれの対象に適した支援方法へ見直しを行う。
これが全体の総論で、(2)から各論になります。
ローマ数字の1ですけれども、博士後期課程学生を雇用する大学というのも出てきていることから、独自の取組を推奨する。その中で施策・取組例として、1と2、DCとSPRINGを書いていますけれど、DCにおいては、主にアカデミアで活躍する優秀な研究者を育成する事業として引き続き実施し、学生への支援を充実・強化する。丸2、SPRINGは、大学における優秀な博士後期課程学生の確保・育成に戦略的に取り組む事業として見直す。特に日本人学生、留学生、社会人ドクターなど、対象に応じて戦略的に最適な支援を行うことで、社会での多様な活躍を目指す。
次、ローマ数字の2、進学への不安を解消する経済的支援などについて、1から3を書いています。1、DCについては、優秀な修士課程学生をアカデミアに引きつける取組を実施する。丸2、SPRINGは、優秀な日本人学生の支援内容を拡充する。優秀な修士課程学生を博士後期課程に引きつける取組を実施する。また、優秀な留学生を確保するための国・地域の多様化に向けた取組をさらに促進する。日本人と留学生の支援内容を見直す。そして、優秀な社会人ドクターを支援する。また、丸3、競争的研究費によるRA雇用については、適正な対価の支払いを推進する。
最後、ローマ数字の3、多様な場での活躍促進について。丸1、DCについては、優秀な研究者としての活躍を促進する環境を充実する。また、現在実施されているSPRING学生に対するキャリア支援プログラムに、DC学生も参加できるようにする。
5ページ目ですけれども、DCについて、研究を基にした起業について、一定の条件の下で認める。
最後、SPRINGですけれども、学会での研究発表に対するさらなる支援や、ジョブ型研究インターンシップへの参加をさらに促進するということで、資料2-1は以上です。
続いて、資料2-2についても、簡単に御紹介したいと思います。
まず1枚目、第6期科学技術・イノベーション基本計画における目標ということで、今年度が最終年度ですけれども、左の赤枠にあるとおり、生活費相当額程度を受給する博士後期課程学生の目標として、優秀な博士後期課程学生の処遇向上に向けて、2025年度までに生活費相当額を受給する後期課程学生を従来の3倍に増加するという目標を掲げております。そういった目標がありまして、次の2ページですけれども、これまでやってきたDCに加えて、SPRINGであるとか、様々な事業をこれまで展開してきております。
その結果として、3ページ目ですけれども、令和3年度から今年度までの支援の人数、生活費相当額を受給する学生の人数ということで、令和7年度は2万2,500人というところの目標達成をできるだけの予算、体制を整えてきております。
4ページ目、こちらは、中央の部分だけですけれども、特別研究員制度DCに関する情報を載せております。
続いて6ページ目、こちらは事業名が出てきていないですけれども、SPRINGのポンチ絵です。大学を支援することであるとか、年額290万円を基本とするといったことなどを記載しています。
続いて、11ページ目、こちらが昨年3月にまとめました博士人材活躍プランの概要で、先ほど申し上げた目標というのを右下に書いております。
続いて、12ページ目、こちらも先ほど簡単に申し上げましたが、経済産業省と昨年から検討会を立ち上げて議論してきまして、先日3月末に、この3つの文書、「民間企業における活躍促進に向けたガイドブック」と「博士人材ロールモデル事例集」、あと「ファクトブック」というものをまとめて公表しております。
あと幾つかデータとして、15ページ目には、学部から博士課程に進むに当たっての進学率などの情報を載せております。
また、17ページ目、最後ですけれども、入学者数の推移ということで、先ほど来申し上げましたが、直近増えてきているということが分かるかと思います。
説明は以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。大変要点を押さえた説明をいただきました。
事前に話をしていた中では、先ほど御説明いただいた、特に今後の方向性のところ、ここについて意見が欲しいということでありました。
では、まずは挙手で口火を切っていただける方からお願いしたいのでございますが、どうでしょうか。
では、登本先生、どうぞ。
【登本委員】 東京学芸大学の登本と申します。私も日本がこの先進んでいくには人をどのように育てていくのかということがますます大切だと思っております。特にこういった修士、博士は、日本はまだまだ足りません。海外では当たり前になっているのに、狭い意味での学歴を意識し過ぎてしまって、大学で学びが終わってしまうところは大きな課題だと思っております。
ここをどのように変えていくかということにあたっては、大学を卒業したら学ぶことが終わりという文化を、相当強く変えていく必要があると考えます。海外のように、修士課程に進学し、その後博士号まで取るということも一般的になっていくように、意識を変えていく必要があります。しかし、現状では博士号を取ったとしても、よいことがあるというのが見えにくいので、いろいろな支援があったとしても、学位を取得した先に魅力がないと、小学校、中学校、高校、大学と学んできて、まだその後に5年間も学ぶのかという道はなかなか見えづらいでしょう。
先ほど説明していただいた資料の11ページ右上「博士課程進学ではなく就職を選んだ理由」の「経済的に自立がしたい」66.2%、「社会に出て仕事がしたい」59.9%の結果が気になります。このように、「経済的に自立がしたい」「社会に出て仕事がしたい」以上に博士課程に進むメリットが見られない現状は残念です。博士号を取ると自分のキャリアが魅力的になるという文化を作っていかなければなりません。でも日本は依然として早く就職したほうがよいという文化が根強いので、こういったところを変えていかなければならないなと思います。
では具体的にどうしたらよいかということになりますが、第一に修士課程、博士課程に進学するという具体が、高校生、大学生にももっと情報が発信されていくとよいと考えます。「経済的に自立がしたい」のに、金銭的な不安を抱えるのであれば、普通に就職しようと考えるのは当然ですので、早い段階から、修士課程、博士課程に進学した際の支援や進学するメリットの情報を発信できたらと思います。
第二に、小学校から大学院までずっと学校で学ぶということはとても長い期間になりますので、社会に出た後に、また学ぶ選択肢がある社会にしていくことも、大切だと考えます。今、育児休暇は、まだまだたくさんの課題があるものの、随分進んできて、男性も女性も休暇を取ることができるようになってきました。同じように、社会に出たあとも大学院に進学できる制度をもっと推進していきたいです。人生100年時代、大学を出てから退職するまでの期間がとても長くなります。途中でお仕事から少し離れて、一定の期間学ぶことが当たり前になると良いと思います。
今、学び直しが必要と言われていますが、私は「学び直し」という言葉はあまり好きではありません。学び直しではなく、人生いつのときも新しく学びたいです。本来人間は学ぶことは好きなのだと思います。でも今は、一度仕事に就くと、職を離れることは許されにくいところがあります。働いている人が学ぶために2~3年仕事を離れることは、企業にとって一見デメリットに思われるかもしれませんが、日本全体のパワーということで考えましても、しっかりと学んで、また次の仕事に生かすということが、よい影響につながると思います。
最初から長々と発言しまして申し訳ございません。ありがとうございました。
【狩野主査】 いえいえ、ありがとうございました。一つは、大学院も含めての学歴、あるいは学びだけ、という考え方から、もう少し、進学した場合も仕事であるという感覚が得られるかどうかということが、例えば制度の進め方としてあるなと思いました。あとは、社会人になってから、自分のスキルをより向上させたくなったときに、それに対する資金面の支えがあると、例えば親の役目になってから、あるいは孫ができるぐらいからそういうことを経験したことによって、今、企図しておられた若い人への影響が、そういう方々からもたらされるようになっていくといいな、と思いながら聞いておりました。ありがとうございます。
では、永井先生、お願いします。
【永井委員】 永井です。どうもありがとうございます。
御説明や資料を拝見いたしまして、まず、ここまで手厚い博士学生支援というのが行われてきた、これが実現していることは、すばらしいことだと思っています。これまでもいろいろな問題が指摘されていて、特に海外と比べて支援が薄いのではないか、というような意見があった中で、では日本の現状でどこまでが可能かということでは、かなり最大限のところまでの支援をされている、かつその成果も各大学に伝わっていて、例えばSPRING事業等への応募も増えてきていると思われます。修士課程からの進学率ではまだちょっと難しい面もありますが、実際かなり多くの学生たちがこの事業支援を受け、人材として成長しつつあるということが、次の日本社会への、何らかのポジティブな社会インパクトになると見込まれると思います。
まだ結果が明らかに見えるわけではないですが、このような制度を踏まえた上で、やはり全体を見ていますと、もう周りがとにかく一生懸命支援しようとしているのがわかります。SPRING事業に関わっている各大学の先生方は年齢層が高い方たちで、マネジメントに回っている方たちが一生懸命そういう事業に取り組んでいるという実情があります。一方で、今ものすごく研究力を伸ばしているような若手の先生方は、そうしたマネジメントのほうには通常就かれないので、SPRING事業の学びの環境というのが研究者としての先鋭化ではなく、かなり人間力強化というような一般化された話になっているようです。基礎力の向上には貢献するのだけれども、例えば世界で今どんなことが起きていて、研究の場面で何が行われているかというような議論がその中に組み込まれているのかというところは、少し疑問符も残るというような印象を我々共通で持っています。
これはアカデミアとかノンアカデミアという志向と関係なく、今自分が生きている世界の最先端を見ていこうという主体としての意識が必要だということです。未来を見ていこうということと同時に、その未来を見るために、きちんとこれまでの社会の在り方などを、教えられるのではなくて、自らの目で見ていこうとすることが学びであり、以前、狩野主査の下で、議論したときにあった、正解のない問題にどんどん自分でチャレンジする自発力を高めていかなければいけないものですから、そこがきちんと育っているのかということをモニタリングする必要があるなと思いました。
もちろん今の状況を肯定的に見た上で、次の段階についての意見を述べたいのですけれども、このままだと博士学生は、支援される、優遇される、期待される、優秀な若手として育成されるという、される、される受け身の人になってしまう可能性があります。本当に育てたいのは行動力とか突破力、社会の中で自分はパートナーを見つけて、自分と課題を共有できる人たちと一緒に共に歩いていくような能動的な人であり、ポジティブな提案力が必要になってくると思うのですよ。もちろんスタートアップ事業などに興味を持っている方たちは、あるいは、企業で若手を提案者・事業構想者としてみなしているような企業でインターンシップを受けた人たちは、そうした能力が身についていくと思いますが、これを仮に大学の中で育てていこうとすると、大学院生イコール社会人なんだぐらいの意識でみなして、大学と社会の間の壁というものを可能な限り取り払う、アカデミア、ノンアカデミア関係なく、大学をオープンにしていくということと関係していくと思います。
まとめますと、ここで育てるべき高度専門人材は研究者ではないと単純に言うのではなくて、研究者という言葉をもっと広く捉え、社会の中で活躍できる研究者、研究能力を持つ者、特にこれからは国際的な「きょうそう」――「きょうそう」は2つ意味がありますけれども、共にという意味と、ある程度コンペティティブな競の状況、いずれもあると思います。そうした国際的な環境で自分の伸び代というものを強みとできる人材です。博士学位を取っていますイコール優遇されるという話ではないということも支援する側は認識しつつ、よりポジティブな成果が出るような取組を行うべきだと思っています。
最後に、やはりそういうことをする上で、各大学が個々にやるというよりも、いろいろなところが連携し合って、育成する環境の側も互いの間の壁を取り払っていく必要があるのかなと思っていますので、そうしたことを次に展開していくのがよいのではないかと思っています。
【狩野主査】 ありがとうございました。永井先生、国外での博士号取得の御経験もあると把握しておりますが、その経験を踏まえて、例えばさっきおっしゃった行動力、突破力みたいなものをどうやったら測れるか。例えば今のSPRING事業も、その他もそうなんですけれど、「優秀な」と書いてあるんですけれども、今おっしゃったことに対する優秀性はどうやったら測れるかというのは、何か案がありますか。
【永井委員】 少し誤解を招くかもしれませんけれども、行動力というのは、何もかも成功していくという意味とは違うんですね。いろいろな実践を行いながら、失敗しつつ、自分をリフレーミングしていくことなので、そうしたよい経験を積ませる。その「よい」という定義が難しいという話がありますけれども、そこは議論しながら整理していきたいと思いますが、プロジェクトなどで、単純に産業界ではなくて、様々な地域課題や社会課題というものを明確に自分の課題として捉えて、実践力を育てる試練や、プロジェクト的な社会参加の実践は、海外の大学の場合、実施しているところが多いと私は認識しています。そういうことがなくても学位が取れるところはもちろんあると思うのですが、そうした選択肢があります。私が存じているのは、学位認定するときに、インドの大学の博士審査はよくやるのですけれども、論文だけ書いて学位を出せるところはもう少なくなっていて、プロジェクトで学習させる。リアルなプロジェクトに参加させるのですが、学生はインドの国内プロジェクトに限らず、海外プロジェクトにも参加する。ただ、それができるのは、やはり指導者たちがそういう環境にあるからだと思うのですね。
だから今みたいに各大学で、マネジメントの経験がある年齢層の比較的高い人たちが、上手に、きれいに組んだ仕掛けの中でやっていっても、その方たちが想定している社会課題が狭い範囲になってしまうので、大学の常識を超えるぐらいの質の高いプロジェクトというものを想定してあげると、日本の中に新しい課題が入ってくると思うのですよ。研究テーマとなる課題そのものがクリエイティブな種ですから、それを持っていることが重要になると思うので、端的に答えるとしたら、仕組みそのものにもう少しチャレンジングな要素を入れ込んでいくことになるかと思います。
それで、成功することばかりを期待しない。失敗したり、リフレーミングが必要になったりしたときに、それを支援できる構造で博士学生が育つ環境とするということが重要。難しいけれども、そのくらい真剣にやらないと、何週間企業で研修しました、はい、これで単位がつきますというようなことは、今までの日本の大学をあまり変えることにはならないかなと思っています。
【狩野主査】 ありがとうございました。
【永井委員】 ただ、海外だからといって、出羽守的な発言ではつまらないなと思っているので、やはり日本社会の中で一番実効性の高い実践プロジェクトを探すといいなと思っています。
【狩野主査】 ありがとうございました。今は結構支援がきちんとされているのだけれども、支援するばかりだと自分が育たないのではないか、という内容。それからあと、メンタリングする人たちの頭の中にあるよりも、今の社会が違う可能性があるので、それを伝える機会がつくれますかということ。そのためには、もしかすると各大学の連携あるいはプロジェクトの参加というような経験を積ませるような仕組みも、この政策の中に要るのではないか。ということかと受け止めました。ありがとうございます。
では続いて、原田委員、お願いいたします。
【原田委員】 ありがとうございます。東京大学の原田と申します。私からは3点ほど。
今、資料1-5を拝見しているのですけれども、主な論点・検討課題の博士後期課程学生支援の方向性についてです。博士後期の支援というのは、先ほどの御説明にありましたように、非常に手厚い経済的な支援がなされてきているなと実感しています。ここに加えて、博士前期課程の学生たちへの支援がパッケージになっていると、すごくいいと思います。優秀な人材を早い段階からアカデミアに引き込んで、育成したいと思っているので、修士もセットで経済的支援がパッケージになっているといいと思います。
それからもう一つ、実現させるのは難しいかもしれませんが、私自身は北極・南極の極域研究をしておりまして、10日ほど前に南極から帰ってきたところですけれども、南極観測は国のプロジェクトなのですが、そういう極域の現場に学生たちを連れていって、大人と一緒に仕事をさせると、猛烈に成長して帰ってきます。南極は一つの例で、国がやっているいろいろなプロジェクトに関わることができる現場体験が制度としてあると、進学の魅力がさらに増すのではないかと思いました。
それからもう一点、精神面の支援の充実も大事です。先の見えない不安を払拭し、ドロップアウトすることなく研究に打ち込めるように、メンター・メンティー制度があると良いと思います。従来は研究室の先輩や秘書の方々が実質的には担ってきた部分かと思いますが、適任者がいない研究室もあるかと思いますので、研究者コミュニティー、あるいは若手研究員などに、メンターになってもいいですよという人を募って、リサーチマップとか、そういったウェブを活用しながらマッチングできるような支援の仕組みや制度の充実を望みます。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。大変明快にお話をいただきました。まず1つ目は博士前期もセットでぜひということ。現場体験を広めること、あるいはそれを経験してもらえるような仕組みをつくるのがよいのではないかということ。それからメンタリング制度について。お話をいただいたと思います。永井先生のお話と比較的通じるところがあるなと思って伺っておりました。
では続いて、重松先生、お願いします。
【重松委員】 よろしくお願いします。基本的に、今、修士から博士への魅力という話があるわけですが、実はもっと前からつなごうと思います。私は、初等中等教育段階とも関係があると思っています。特に高等学校でのスーパーサイエンスハイスクールにおいて、先ほどの博士人材の活躍として、博士教員というのを大事にして、そういったところにも就職をして後輩を育てようということに関わって、博士を取ろうということをPRをされているわけです。それをもう一つ進めて、1つの学校に就職するだけでなくて、各管理機関に対してコーディネーターというものがあるのですが、科学技術人材を育成する、あるいは次の新しい教育課程を開発するモデルを検討する等々も含めて支援をしていただいていますが、そういったコーディネーターに博士人材も配置いただいて、そういったことを積極的に支援するといったような制度的なプッシュをやっていただくと、より効果が発揮され、また高校生にとって博士人材というものが一つのいいロールモデルになるのではないかなということを期待して、提案してみたいと思います。ありがとうございました。
【狩野主査】 ありがとうございました。そうですね、高校生、あるいはもう少し若い人たちに関わる現場が、今似た現場を共有できるような博士号を持っている経験者をつくることによって、魅力がもっと伝わるのではないかという御提案だったかと思います。これをやるとすると、お金をもらって学ぶからには、その後何かの仕事をしてください的な設定というのがありうると思います。そういうことまでするのか、あるいは、何かそれに関わるとどんな楽しいことがあるかという内発的動機付けだけでいけるかどうかというところ、どうだろうか、と思いながら伺っておりました。ありがとうございます。
桝先生、お願いします。
【桝委員】 ありがとうございます。本当に様々なお話があったと思うのですけれど、個人的に今回のワーキング・グループで議論したいなと思っているのは、この「優秀な博士後期課程学生」というものの定義を、もう少し整理しておければなと思っております。現在、DCとSPRINGという2つの具体的な支援施策があると思うのですけれども、DCというのはアカデミアでの活躍を前提に評価するという明確な指針があると思うのですけれども、恐らく今回言っている優秀な博士後期課程学生の定義というのは、もう一つの軸があるかというふうに思っているんですね。それがやっぱり社会での活躍や、社会実装も含めた社会との接続の強さというところがあると思います。そこの部分というのが、評価軸を持ったSPRINGは既にそういう方向性だと思うのですけれども、もう少し明確にそこを評価するんだというような支援施策であるということを打ち出したほうがいいのではないかというふうに思っております。
先ほど永井さんと狩野さんの議論でもあったと思うのですけれども、突破力とかチャレンジ精神といった、そういった将来の科学技術・イノベーション人材に必要なものというのが、どう育成して、どう評価すればよいか難しいというふうにおっしゃるのは私もそうだなと思ったのですが、一方でアカデミア内ですと、DCみたいに明確な論文数とか研究成果といった評価軸があるのに対して、そっち側は、企業ではそういう評価軸、評価制度、失敗の仕方を評価するようなシステムというのが既にあると思いますので、そこの部分の評価制度を組み込んだ支援施策というものを、それはSPRINGを変えるのか、あるいは新たな支援制度を構築するのか分かりませんけれども、あってもいいのかなというふうに感じます。なので、博士学生としても、私はDCのほうの評価されるような3年間を送るという人もいれば、私はSPRINGのほうの評価を得るような3年間にしますというふうに、もちろんつながってくる部分はあると思うのですけども、明確に分けられるような、博士学生が理解できるような施策というものを考えていければなと思っています。
もう一点、少し広く長い話になるのですが、先ほどこれもお話ありましたが、博士後期課程って、もう教育の一ステップではなくて、キャリアの一つなんじゃないかなというふうに個人的には思っていて、これは学生側も大学側もなのですけれども、多分、修士から後期課程に進む学生というのは、大学に残ったのではなくて、ファーストキャリアとして博士後期課程を選んだという感覚だと思うのですね。だからこそ、逆に社会人になった後で、途中のキャリアパスに博士後期課程を加えるかというレベルで、リスキリングという言葉に今なっていますけれど、そういう感覚というものがもっと醸成されるべきだというふうに思っていますし、改めて、学生側もそうですし、大学側もそういうふうに考えてほしいと思っています。
ただ、これは具体的な施策は、登本先生からもありましたけれど、社会の価値観を変えるレベルの話なので、やはり近道というのは結果的に若年世代へのアプローチなんだろうなというふうに思っています。先ほど重松さんからSSHとの接続の話がありましたけれども、やはり中高生の年代の教育カリキュラムに、この価値観、博士後期課程というのはキャリアの一つなんだよというふうに。つまり、修士を出て博士後期課程に入った時点で、もうあなたはキャリアを積み始めているんですよというふうな価値観というものを中高生の年代の教育カリキュラムに組み込むという施策も具体的に議論していければなというふうに思っております。
以上、2点でございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。軸として社会接続というのを、アカデミアという軸のほかに挙げてはどうかということが1つ。それの参考として、企業内にそうした軸があるのではないか。ということでした。これは、すみません、私、不勉強で、あんまりきちんと分からないので、ぜひ教えていただければと思います。
【桝委員】 僕も分かっていないので、逆に、企業の方も入っていらっしゃいますので、ぜひ御意見を伺えたらと思います。
【狩野主査】 それからもう一つが、やはりキャリアという考え方ではないかと。確かに、学費を払わなければいけない状況にある人以外で、そうではない状況の人たちについては、これは就職も同然であるという、そういう見方ができるような何か制度設計というのはあるかな、ということは思いました。つまり、奨学金という呼び方じゃなくて……。
【桝委員】 まさにそうです。
【狩野主査】 いろいろな呼び方の問題ですけれども、ということは思って伺っておりました。ありがとうございます。
水口先生、どうぞ。
【水口委員】 ありがとうございます。私自身はSPRINGの前身となるリーディング大学院のプログラムで、10年前、大変お世話になりました。このプログラムにおける博士課程の学生に対する経済的支援は非常に充実しており、学生にとって非常によい取組だなと思っております。ただ一方で、課題のところで挙げられていたとおり、一律的な支援になっているため、先ほどの議論でもありましたが、優秀な学生をどう定義していくかはポイントになってくると思っております。また、頑張っている、本当にやる気のある学生を引き上げていくということが大切であると思っておりまして、そういった頑張っている学生が報われる社会にできるといいなと思っております。
加えて、大学には様々な研究成果が眠っていると思いますが、それを社会に実装していく上で、ディープテックベンチャーとしての経営者人材が圧倒的に不足していると感じております。研究者であり、経営の素養もあり、それを実行できるような突破力を持っている人材は今後ますます重要となってくると思います。そういった人材を育成できるような仕組みがあると非常にいいなと思っております。
私自身は修士課程のときに起業しまして、博士課程は経営と自分の研究を両立しながらやってきました。経営については、当初は右も左も分かりませんでしたが、走りながら学習することで、異分野でも徐々に理解が深まってきました。博士の学生は学ぶ素養はあると思ので、初動のところをサポートし、学生のうちにインプットしてもらえれば、その先は自分で学びながら実行して、走りながら武器を拾っていく形でできるだろうと思います。研究も分かり、経営も分かり、それを社会に実装していくというところを一気通貫でできるような人材になっていくと、日本の経済を回していく人材にもつながってくるかなと思いますので、そういった人材を育成していく仕組みが今後実行できるといいなと思っております。
【狩野主査】 ありがとうございました。やる気あるいは頑張っているという側面も何かうまく、一律的でない支援の中に測り方として入れられるか、というお話だったと一つ思いました。そして経営者人材になれる素養をつけられるか、ということだったと思います。
この経営者要素というのは、水口先生は独習だと今おっしゃいましたけど、何か仕組みとして入れるとしたら、どんな要素があったら、それが実現されるでしょうか。
【水口委員】 そうですね、起業家と出会うのは重要かなと思っております。どういうふうに会社を立てるのか、どういう社会をつくっていきたいのか等、まずは起業家マインドに触れることが重要なのかなと思っております。もちろんその後の経営面も重要ですが、それは会社を回しながら、こういうものなんだと体感しながらアップデートしていけばよいかなと思っております。
また具体例として、我々の企業のインターンに来る学生は、自らで会社を立ち上げる人が多い印象です。なので、起業家の背中を見ながら、自分で学んで自分で会社を立ち上げるというようなサイクルを回すことができると、より多くの研究者が起業の道に進んでいくところにもつながってくるかなと思いすので、そういう仕組みができるといいなと思っております。
【狩野主査】 ありがとうございました。先ほどから人に出会える機会も大事ではないかという話が幾らか出てきていると思います。人材政策課のほかの事業でのことですが、大学に任せた後で起きていることかもしれないのですけど、その資金を使って出会う場を立てる試みをしているケースを知っています。その結果として、例えば異分野の研究者同士で若い人がつながれて面白そうだとか、それから、今のような機会がつくれるというようなのも見たことがあるように思いました。ですので、そちらの方向にそのお金を使わなければいけないという設定の政策にするかどうかというのは次に考えるところかなということは一つ思いました。
梶原先生、どうぞ。
【梶原委員】 ありがとうございます。
人材をどうするというのは、とても時間のかかることですので、やはり政策的にも継続的にやっていっていただきたいというのが本当に思うところです。1回やって、あまり成果が出ないから次に行こうみたいなところよりも、良いものはもっと継続できるような形。ただ、やはり不確実な環境変化が起きている今の時代なので、そういったところに対して少しアジャイル的に変更が利くようなものとか、少し自由度を持たせるとか、柔軟性が利くように。あまり制約をつけ過ぎてしまうとがちがちになってしまうところを、少しオープンにしておいて、実践側がうまく使えるように、政策をアジャイルに、あまりがちがちにならないほうがいいかなと思います。やはりスピードを求めたいというのがあって、企業から見ると遅いと感じていて、何かやろうとすると、実現するのに結構先に行ってしまうと。それだと世の中また変わっていますよというところがあるので、スピードとアジャイルを少し強調したいと思いました。
いいなと思ったページ、資料2-1の3ページの4つ目の丸の後半のところに、一律支援というよりも「対象に応じて戦略的に最適な」と。どうしても日本人は平等を重んじたりするので、全て平等になってしまう。もう少し、一律ではなくて、どちらかというと平等ではなく、公平に。公平って、その人々に応じてというところがあると思うのですけれど、戦略的にここを張るんだとか、戦略的に何々するんだというタイミングであると思いますので、ここは、私はとてもいいなと思っています。
あと方向性について、割と留学生のことが書かれてはいるのですけれど、国際頭脳循環という視点でいうと、日本に来る人のほかにも、当然日本から海外に出る人の政策をもう少し充実させるだとか、それをエンカレッジする。行ったらおしまいではなくて、帰ってきた後も充実させる。国際頭脳循環という、その場の中にしっかり日本人が入っていけるというためには、日本で留学生に接すること以外に、当然海外に出て行くということを奨励する必要がある。そのトーンがあまり見えなかったので、そこを少し強調されるとよいのではないでしょうかと思いました。
それで、文化の話とかいろいろ出ていましたけども、変革をするには、ああそうだと自分で腹落ちしなければいけないところがあって、政策を変えたときには、どうしてこういう政策にしたんだというところをしっかり伝えて、現場が腹落ちして実践できるようなアプローチを取っていただきたいというのは非常に思います。そういう意味ですと、科学コミュニケーションという枠の外かもしれませんけど、社会との対話、あるいは社会へ伝える、あるいは先ほど初等中等教育の現場の先生方にも博士人材の良さを伝えるとかありましたけれども、そういったところで社会に見せていく、博士人材のビジビリティーを上げていくようなことをどうするかというのを強調されてもよいのではないか。
その中では、やってきた施策の効果、今までずっと低迷の話がある中で、博士人材、実はここ数年で増えている、増えてきたんですよということは、しっかり伝えていっていただきたいなと。やっている効果がちゃんと出ているじゃないですか、それをもっとブーストするにはどうしていけばよいかというのを、みんなで知恵を絞って考えるフェーズに入っていくべきと思うので、データで推移を見せて、一律で話をするのではなくて、少し解像度を上げて、ある特定の分野はとても伸びているとか。当然反対に伸びていないというところがあると相殺されて、プラマイ・ゼロみたいなところがあるかもしれませんけれど、そのなぜよいかというところの話はもっと強調して見せていっていただけるとよいと思います。
そういうことでは、先ほど、事例集を作りましたと。経産省と文科省と共同でやっていらっしゃるすごくよい取組だなと思います。その成果を、今度はそこからのフィードバックをいただいて、何が不足かだとか、もっとどうしたらよいかだとか、タイミングごとに追加の事例を入れる、もしくは視点を変えた方向で見るとか、常にそうやって見せていくということが重要と思いますので、よろしくお願いいたします。ロールモデルの事例、パターンが多様になって、ここを見てよかったと思うフィードバックの情報が増えていくという形がいいかなと。当然、これじゃあ無理、自分のところではできないというのが出てくるかもしれませんが、そういう意見も、逆に、ではどうすればいいかというところに振り返ると思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【狩野主査】 ありがとうございます。ちょうど国境をまたぐ人の話題をいただいたので、ちょっとだけ深めさせていただくとすると、国税を使ってというか、それを元手にして支援、就職みたいなことにするときに、国の外から入る人たちにどういうふうな支えをするのがよいのだろうかということが最近議論もあるわけですけれども、ここについて何かさらに、いろいろ御経験されてのお考えがあれば、ぜひ加えていただけますか。
【梶原委員】 私には、どうしても一律的にやっているように見えている、それが平等だという形の日本のやり方でやっているように見えていたので。個別具体的に、実はこっちに振れるとこんな問題があって、反対に振れるとこうなると、そこまで詳細に分かっていないのですけれど、先ほどの一律ではなくてだとか、戦略的にというのは考え方によって、今までと同じパターンでいくケースもあるでしょうし、中身を見ていくと、こういうケースのことを考えるとこのケースは実は一律ではない、ここのレベルでやるだとか、そういうことをもっと丁寧に考えていってよいのではないかと思います。
確かに国税を使っても、留学生はすぐ帰ってしまう。えっと思う一方で、逆にその人たちは、日本にいて、日本のよさを理解して帰っていただくので、その帰った先で、日本はいいよね、国際頭脳循環の流れの中でいいよね、日本の研究力とか日本人そのものに対しての影響力もあるからいいよねという話ももちろんありますから、どちらに軸足を置きますかというのはケース・バイ・ケースで違うとは思うのですけれど、そういう一方的に変えてしまうというのも語弊というか、弊害はあるかもしれないけれど、ある一定の考え方に基づいて、今までやっていたような一律ではなくす。
前に聞いたときに、日本人よりも留学生のほうが、あれもこれもそれもの支援をもらって来ている。自国から出るときに支援をもらい、日本にいるときも支援をもらっている。でも日本人はそうなっていないということは聞いたことがあります。何が実態なのか事実を知らないので、軽々に言うべきではないと思うのですけれど、一律ではないというところは、やっぱりポイントはあるかと思うので。
【狩野主査】 そうですね。今の点はもう少し、もし御意見がほかにもあったらいただきたい点ではあります。例えば、国境を行き来している方では永井先生とかですか、あるいは原田先生もそうかもしれませんけれど、何かまた加えていただければと思います。梶原先生、ありがとうございました。
川越先生、お待たせしました。
【川越主査代理】 ありがとうございます。私からは、3点お話しできればと思います。
まずは、こういった博士支援を進めていて、博士後期課程の入学者数が微増傾向というのは、本当にすばらしいなと感じています。非常に様々な支援がある一方で、やはり経済的に厳しいから博士に行かないと言っている学生も多いなという実感もあります。そういった学生は、一度、企業とかに就職をして、給与をもらい、自分でお金をためて、そして博士課程だったり大学院に入り直すといいますか、大学院に入るということをキャリアの一つとして積み上げるという、前向きな形で進めている学生も、多く私の周りでも見ているところです。
一方で、学部生でも大学院を知らないというケースが結構あります。学部生であっても大学院は自分事ではなくて、その先、優秀な人が行くのかなとか、物好きが行くのかなというような、そういうふうに思っている学生もいる中で、そういった学部生に対しても、就職以外、就職のもう一つの選択肢で大学院、それから博士課程があるということをもっと示す必要があるかなと感じています。
また、仮に博士課程に進んだとしても、博士課程の学生、博士の学位というのは学部と違って、何年で卒業できる、就職できるというわけではないので、学部生や修士課程の学生のように足並みそろった就活が難しいなというのを感じるところです。そうすると、個別に就活をしなければいけない、自分で切り開かなければといった不安感を抱えているのではと。特に、アカデミアのほうに進む場合には何となく見えているけれども、企業の就活のサイクルにうまく入れないという不安感を持っている学生もいるかなと思います。
既に様々な、博士人材のロールモデルであったり、民間で博士人材が求められているというのが発信されていると思うのですが、これを博士課程の学生だけではなくて、学部段階から知る機会であったり、もしくは学部の就活で、企業の人たちも、博士人材も求めていますと、だからここで就職せず、博士課程まで行った後もう一回来てくれませんかぐらいな、そういった枠組みがあってもいいのかなと。そういうアピールをするような機会があるといいのかなと感じました。
そして2点目ですけれども、DCやSPRINGはいろんな観点があるのですけれども、DCの学生が企業に就職となると、結構周りが、せっかく支援まで受けているのに企業に行くのはどうなのかだったりとか、国のお金を使っているのに大学の研究者にならないんだ、もったいないとか、そういうことを教員サイドが言うというケースもあったり、学生同士でも言っていたりします。例えば、自分が支援を受けていなくて、支援を受けている学生がその後企業に就職すると、妬みといいますか、自分はそうではなかったのに、こんな頑張っているのに、お金だけもらって外に出るのか、といったことを言うような人もいたりします。そうなると、隠れて就活、博士課程の学生さんもいたりするので、そういった印象をアカデミア、大学の中でも払拭していくという、私たち大学側の意識の変革も必要なのかなと感じております。
あと3点目が、博士後期課程の学生さん、研究はもちろんしていただきたいところですけれども、研究者という一つの社会人として扱うとすると、社会に出た後に必要な知識といいますか、社会課題はどういうところにあって、先ほど少し狩野先生の話もありましたけれども、唯一解のない課題だったり最適解を求めていく必要が社会にはあるというところだったり、問いなき問いに立ち向かうといいますか、そういうところを博士課程の学生でも、意識だったり知識というものを身につける必要があるのかなと。仮に学部、修士、博士と上がってきた学生が、30歳近くになって突然社会人ですと言われ、周りの人たちは比較的、社会で何年も過ごしてきた人たちの中に、いきなり新卒として、出ていくとすると、不安感みたいなものもあるのではないかなというふうに思います。
博士課程の学生さんには、社会的課題に立ち向かうというのはどういうことなのか、どういった意識で向かっていくのかであったり、科学と社会の接続、科学コミュニケーション的な観点といったことを知る場だったり学ぶ場、もしくは必修の授業ではないですけれども、そういったことを一度は経験してから卒業して、博士を取って社会に出るというような、そういうステップが大学の中に制度としてあってもいいのかなと感じております。
長くなりましたけど、以上です。
【狩野主査】 いえいえ、ありがとうございました。やはり行き来ができることとか、あるいは梶原先生がいつもおっしゃっているんですけど、産学の流動性というのが全然ないけれど、それでアカデミアは流動性とか言っているんですかみたいなお話とか、そういうことを少し思い出して伺っておりました。
それをやれるということは、多分、アカデミアという場が学校の延長であるという気持ちが一つ大きく存在していて、そこが何かあるなと思っております。他方で情報共有の方法として、今ですと、経産省のホームページに行って初めて資料が発見できるとか、文部科学省のホームページの深いところに行って、人材政策課に入って、そこから向こうへ行くとやっと何か出てくるものがあるとか、そういうところで、せっかくまとめたものが活用され切っていないような印象もあるときはあります。例えば博士人材ポータルか、よく分かりませんけど、そういうものをつくって、それでその結果、まとめたものを文部科学省様から各大学に通知か何かのメールを出していただいて、そうするとみんな見るとか、そういうような取組もあってもいいかなと、今聞きながら思っておりました。
やっぱりどうしても各大学だけだと、今のようなところまで意識を高めていくのになかなか難しいときもあると思うのです。こういう委員会に出させていただくと、いろんな情報が入りますので、その結果、意識が高まって、必要だねというふうになる人も多いと思います。ここをうまくギャップが埋められるといいなということは思いました。ありがとうございます。
先ほどの国内外の人材の流動に関するところで、何か、もしかして、追加してくださる方がおられたら。よろしいですか。では、また次回以降深めるということでお願いしたいと思います。
それでは、議題2について、いろいろ御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。より今後深めていけたらということで、よろしくお願いいたします。
では続きまして、議題3に参りたいと思います。後半もぜひ活発な御意見をいただきたいと思います。
議題3については、「初等中等教育段階での科学技術人材の育成に関する現状と課題等について」ということで、まず、先ほどと同様に、資料3-1と3-2に基づきまして、白川さんから御説明いただきたいと思います。お願いします。
【白川人材政策課課長補佐】 白川でございます。それでは、私のほうから、特に資料3-1を中心に、初等中等教育段階での科学技術人材の育成に関する現状・課題、そして今後の方向性の案ということで御説明をさせていただきます。
まず基本的な考え方ですけれども、1つ目の丸にございますように、将来にわたる経済・社会の持続的発展を図る上では、次代の科学技術・イノベーションを担う多様な人材の育成・確保が重要ということで、こうした人材の育成のために、初等中等教育段階からの継続的・体系的・総合的な取組を推進することが求められると考えております。
このため、小・中・高等学校の教育課程の中で、各教科・科目や探求的な学びなどに関する資質・能力を育みつつ、科学技術人材育成の強化の観点からは、これに加えて、1つ目として、科学技術に関し高い意欲・関心を有する児童生徒の才能を引き上げ、将来国内外で活躍する科学技術人材の育成につなげていくこと、そして2つ目として、各技術に興味・関心を有する児童生徒の裾野を拡大していくこと、この両面で取組を推進していく必要があると考えております。また、その際、知識・技能を深く習得することだけではなく、それらを活用しながら自分なりの問いを立て、立証し、発信していくという探究力の育成、そして、あらかじめ与えられた正解のない課題にチャレンジすることのできる人材の育成を目指していくことも重要であると書かせていただきました。
現状と課題でございますが、少しかいつまんだ形で御説明をさせていただきますと、1つ目の先進的な理数系教育の充実・強化に関しましては、2つ目の丸にございますように、スーパーサイエンスハイスクール――SSHというふうにも略されますけれども――事業において、全国230の高等学校等を指定し、取組を進めていただいているほか、科学技術コンテストへの参加、そして、次世代科学技術チャレンジプログラム――STELLAという略称をつけておりますけれども――による大学などでの高度な教育プログラム・研究活動などへの参画を支援しているところでございます。
こうした取組に関連した我が国の現状といたしましては、資料の3-2にも参考資料をつけさせていただきましたが、国際科学コンテストにおいて優れた才能を有する生徒の活躍が見られているということのほか、2つ目、2ページ目に参りますけれども、SSH事業やSTELLA事業への参加を経て、現在、大学、研究機関、企業などで研究者として活躍される方、そして大学院博士後期課程で研究活動に取り組まれている方の事例が出てきており、事業への参加経験が現在の活動に生きているという声をいただいているところでございます。
課題や指摘事項のところに移らせていただきます。事務局としてこれまで、次世代科学人材育成に関わっていらっしゃる方にヒアリングをしたりしながら、そして、お聞きした内容を踏まえながら事務局としてまとめさせていただいた考え方でございます。
1つ目、トップレベルの科学技術人材の育成に関して、学校の先生方のみで育成をしようとするのではなく、高等教育機関などとの連携や、専門家・博士人材によるメンタリングなどにより、初等中等教育段階から大学における研究活動に触れたり、専門家の指導を受けたりする機会の提供が必要であるという指摘がある一方で、トップレベルの次世代科学技術人材の育成規模については依然として十分ではないという指摘もあり、高い意欲・才能を有する児童生徒を取りこぼさず、そうした小学生、中学生といった生徒さんの移動可能距離なども考慮しつつ、より多くの児童生徒に対するアプローチを推進していくことが必要であるということ。そして、SSH事業に関しては、事業を開始した平成14年以降、指定校が増加をする中で、指定校及び指定校による取組の多様化が指摘をされているところ、平成27年の人材委員会の作業部会において、育成すべき次世代の科学技術イノベーション人材を見据えた上で、高度かつ先進的な取組を行う学校には支援を重点化するなど、めり張りをつけることが重要であると指摘されているように、各指定校の特色を踏まえつつ、こうした方向性をより推進することも考えられること。
また、トップレベルの人材の育成に当たっては、学校外に出て様々な経験を積む機会を提供すること、より高度な課題研究をしていただくために、実験・分析機器の整備・更新なども必要であるものの、そのための費用を十分に賄えていない指定校もあり、特に経費支援を伴わない認定枠の指定校について、今後の取組の縮小が危惧されること。そして、SSHやSTELLAからのほかの学校へのノウハウの横展開、また、各取組への参加を経た児童生徒の追跡、こういったところについても一層取組を進めていく必要があるということを書かせていただいております。
3ページ目に参りまして、次に、小・中・高等学校段階における理数系教育の充実についてということで、これまでの取組と現状については、またかいつまんで御説明をさせていただきますが、1つ目と2つ目には、これまで学校教育において、理科・算数・数学教育の充実を推進してきたこと、そして実社会・実生活の中から問いを見いだし、自ら課題を立てて情報を収集・分析してまとめ、表現するような探求的な学びを推進してきたことを書かせていただきました。また加えて、3つ目の真ん中ぐらいからですけれども、理工系の分野への学部転換や情報系分野の増員を行う大学を支援するとともに、高等学校段階におけるデジタル等成長分野を支える人材育成の抜本的強化に向けた取組、女子中高生の理工系分野への進路選択支援などの取組の推進に着手をしてきたところでございます。
こうした取組に関連した我が国の現状といたしましては、PISAあるいはIEA国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)などの国際的な学力調査の結果において、日本の児童生徒が科学技術に関する高い素養を有している状況が見受けられます。また、TIMSS調査によれば、算数、数学、理科への興味・関心についても、以前は大きく下回っていた国際平均に近づきつつある状況となっております。こうしたデータについては3-2の参考資料につけさせていただきましたので、後ほど御覧いただければと思っております。
一方で、課題・指摘事項等でございますけれども、理系の学科、特に理工系の学科への入学者比率は諸外国の中でも低位にあり、特に女子の理工系進学率が低い状況でございます。女子の理工系進学率、直近の足下数年においては上昇基調にございますけれども、依然として諸外国との比較では低位にあり、現在の上昇基調を維持、そしてさらに向上していくことが必要であること。また、TIMSS調査によれば、算数・数学・理科への興味・関心や得意意識は、小学校の段階で既に男子のほうが女子より高いという結果が出ており、より低年齢から理工系進路選択支援のアプローチを行うことも必要ではないかと考えられること。
そのまま4ページに進めてまいりますけれども、男子については、女子に比べて理工系分野の学科への進学率は高いものの、横ばいの状況が続いていること。科学技術に興味・関心を有する児童生徒の裾野を拡大するためには、小中学生の段階から様々なものに触れ、好奇心を高めることができる機会の提供が重要と考えられるものの、小・中・高等学校の授業の限られた時間の中のみでは対応することに限界があり、大学等がそのノウハウをもってアウトリーチ活動を実施することも期待されること。そして、狭義の理系分野に限らず、STEAM教育などの分野横断的な学びを促進し、ふだんの実生活における気づき、問いの発見を促す教育活動を実践することなども重要であること。こうしたことを課題・指摘事項として挙げさせていただきました。
最後に3番として、今後の方向性ということで、先ほど御説明をしてまいりました現状、そして課題などを踏まえて、今後必要と考えられる取組の案を書かせていただいております。
1つ目、先進的な理数系教育の充実・強化のところでは、科学技術に関する高い意欲・能力を持つ児童生徒が国内外で切磋琢磨し、その才能を一層伸ばしていくための機会の充実を図ること。具体的には、大学などの最先端の科学技術や高度な研究活動などに早い段階から触れることのできる機会を充実するとともに、科学技術コンテストの推進も図っていくこと。また、スーパーサイエンスハイスクール事業について、将来国際的に活躍する科学技術人材の養成のための優れた取組を行う指定校については支援の重点配分を行うなど、支援の強化を通じ、各指定校の先導期に至るまでの取組の高度化・深化の加速を促すとともに、各指定校の取組の他校への波及を推進すること。
(2)の小・中・高等学校段階における理数系教育の充実としては、まず、学習指導要領に基づき、日常生活や社会との関連を重視した学習と科学的に探究する学習の充実を推進すること。科学技術に高い興味・関心を持つ児童生徒の拡大に資するよう、大学・高専等による学校への出前授業の実施や、5ページに参りますけれども、教育プログラムの提供を推進していくこと。女子生徒の理工系学部への進学率の一層の向上のため、女子生徒の理工系進路選択の後押しとなる取組を、より多くの拠点において展開していくこと。その際、小学生時点において既に科学技術に関する興味・関心の男女差が一定程度生じていることにも留意すること、こうしたことを案として挙げさせていただきました。
前半の博士課程に関する御議論の中で、小・中・高等学校の段階におけるアプローチについてもお話をいただきまして、この書かせていただいた取組の、例えばロールモデルとの交流であったり、出前授業であったり、こうした様々な機会で博士課程人材に関わっていただくということも大事なのかなというふうに前半の議論を聞かせていただきました。こうした資料に関して、委員の皆様からの御意見をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【狩野主査】 御説明ありがとうございました。私の理解では、資料3-2の9ページとか14ページとか17ページに現行の政策の内容が書いてありまして、これを見た結果として、今考えているようなことが一体どこを変えれば実現していくのかというような視点でお話しいただけると、非常に取り入れていただきやすくなるのではないかということを思います。そんな気持ちでお願いできたらと思います。と、言うのは簡単で、やるのは大変ですが、よろしくお願いします。
重松先生が早速手を挙げていただいています。お願いします。
【重松委員】 御説明ありがとうございます。なかなか皆さん自身がSSH、スーパーサイエンスハイスクールの御理解が十分でないかもしれませんが、少し説明を加えながら、方向性というのを議論の俎上に上げさせていただければというふうに思っております。
SSHは、本物に触れる、よりよいロールモデルとして、大学や企業・自治体との連携も含めて、そういった非常に高度な学習ができるというよさもあるわけです。現在、SSHは23年目を迎えております。御説明にありましたように、全国で230校の指定校があるわけですが、その中にはいわゆる認定校といった学校も含まれております。少し御説明しますと、文科省からの指定が、少し金額の多寡は違うのですけれども、最大26年間の支援をもってSSHの指定校が運用されます。ところが、実際には、学校によって多様な取組がございます。しっかり特色を持って、他の高等学校、あるいは中学校、小学校、あるいは幼児教育等々にもよい影響を与えることを期待し、そしてその事業を展開しているわけですが、実際は学校の取組の中では全国いろいろと違いがございます。
というわけで、1点皆さんにぜひ御議論いただきたいのは、23年目となって、少し重点化というのでしょうか、このままこの成果を期待できるかどうかということも含めて、何かお互いによい提案がないかということに関わって、少しこの制度について、より高度な科学技術人材を育成するための取組としての議論を展開できればというふうに思っています。
2点目は、この成果ができるだけ国民の皆さんに役だつ成果として継続することを願っていますが、実際には26年目の後は、大体基本的には認定校という形になって、特段の予算的措置をするわけではございませんので、どれだけ事業が継続できるかが不透明です。認定校としての認証を与えるわけですけども、非常によい成果を持った学校が認定校に最大26年後になっていく方向に向かっておりますけども、認定校がこの成果を持ち腐れとして終わってしまうのではなくて、さらに他の高等学校等々によい影響を与え、あるいは社会的にも活用できる成果の提供ができるような認定校になってもらうために、どういうふうな仕組みがよいのかということをぜひ一緒に議論できればというふうに思っております。
3点目は、今、成果の普及という話を繰り返ししておりますが、SSHは外部から多少批判がありまして、お金があるから、あるいは教員の加配があるから、だからできるんだという批判があります。そうではなくて、学校の先生方の御努力、学校そのものの御努力というのが非常に大切ですので、ぜひこういったものを社会的に認知していただきたいと思うわけですけども、同時に横展開として、その成果がなかなか普及しないのはどうしてだろうかということに関わって、せっかくの科学技術人材育成としての面を、他の普通高校、あるいは専門高校においても、その成果を生かしていければというふうに思っているわけです。そのために、学校単位の指定だけでいいのか、あるいはもう少し、学科とか、あるいは教員の、例えば研究者には科研費がありますけども、そういったことも含めて、何か制度的にもう少し、小さな横展開としても、その成果が普及できるような仕組みというのもあってもよいのではないかなということを考えております。
最後の4点目は、「リケジョ」と言うのですが、女子の理工系の学部への進学がなかなか難しいという問題ですが、これは一つには保護者との関係が実は大きくあります。その点において、社会との連携、社会へのアピールというのが非常に大事になってまいります。これはSSHにおいても非常に大事にして、保護者に対し説明会を開いたりいろいろしています。あるいはロールモデルとして先輩方の、それこそ博士の人材を含めて学校へ来てもらって、いろいろと講演してもらったりするわけですけども、なかなかそれがうまく浸透していきません。そういった意味で、社会へどういうふうにアピールするか、特に保護者にどうアピールするかということに関わって、皆さんと一緒にさらに議論を深められればと思っています。
簡単に4点ですけれども、提案を含めてお話しさせていただきました。ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。重松先生は長くにわたって関わられてきたと伺っておりまして、大変いろいろな、裏表教えていただきまして、ありがとうございました。
今の内容で伺っていて思ったのは、やはり、始められるけれども、ほかもできるような業にしていくにはどうしたらいいか、というのは結構大事な視点だと思っております。ここを推すような政策の設定にできるのか、というのは一つあるように思いました。
あと最近、「吹きこぼれ」教員という言い方をしている人がいるのですけれど、要するにパワーがあって、いろいろ新しいことにチャレンジできるのだけれど、その結果として、周りの普通の教員から、何この人って思われて困るという、そういう人たちがおられるようです。そういう人たちをネットワーキングすることによって、重要な人材なので、元気を出してもらおうという試みをしているNPOだったかのかたの話を見ました。多分何かそういうことを政策で推していけるのも一つ重要なのかなと思ったりしながら伺ったところです。
最後の女子のことは、私も同じことを言おうと思っていたのですけれど、保護者皆様の考え方というのは極めて重要で、そこに、前半に出てきました、社会人として学術の関係のことも新しいキャリアとしてもう一回チャレンジする、いろいろなジェンダーの方が出てくるといいかなということも思った次第でありました。
すみません、勝手な返事を先にしてしまいましたが、ほかにどうぞ御意見お願いいたします。
川越先生。どうぞ。
【川越主査代理】 ありがとうございます。私のほうから幾つかありますが、まず政策のところで、裾野を広げる取組と、高い意欲をさらに伸ばす取組、両方大事かなと思っております。その両方が大事な上で、取組としては異なる部分かなとも思っております。個別最適な学びと言ってしまうと簡単ですけれども、それぞれ、広く生徒さんへの教育をするというところと、高い意欲をどう伸ばしていくかというのを、整理をしながらやっていくというのは必要かなと思っています。
先ほど重松先生から御説明のあったSSHに関しても、SSHも全校生徒に対する取組と、意欲のある生徒さんに対する取組というところがあるかなと思いますが、実施している学校の中でもうまく整理することで、ほかの学校に伝えるときに、こういうケースであればこういう指導、教育があるし、裾野を伸ばすのであればこういう手法があるというふうに、うまく伝えられるのではないかと思います。波及効果というところでも、取組をきちんと体系化するということは必要なのかなと感じております。
あとは、先ほど少しだけ出てきていた移動可能距離ですけれども、東京大学では先ほどあったSTELLAという事業をしていて、それは小・中・高校生を対象にした取組です。高校生は全国から集めて実施して、場合によっては飛行機に乗って大学まで来るというケースもありますが、小学生、中学生は、その取組のために1人で来るというのはなかなか現実的ではなくて、保護者の付添いが必要であり、保護者の付添いで交通費が2人分となると、経済的なところで難しくて参加を断念するというケースもあります。そういった児童生徒に対しては、拠点が少なくとも各都道府県に必要なのかなと思いますし、教育委員会であったり、SSHの高校などが核になりながら、小学生、中学生に対する支援、理数系教育を、より広げていけるとよいのかなと思います。各地の高校ぐらいであれば、小学生でも多少移動できる距離になるかと思うので、より裾野を広げるというところで、小中連携もあると思いますし、ここに高校が入っていたりとか、そういった連携の強化につなげられるとよいのかなと感じました。
もう一点は、女子の理工系進学のところですけれども、私自身も、バックグラウンドが宇宙物理学で、当時進路を決めるのが30年前ぐらいなのですが、その頃から女子は少ないと言われていて、増やさなければと言われていたかなと思います。海外でもその頃は比較的少なくて、日本も海外もいろいろ取組をした結果、海外の女性の理工系の進学率だったり研究者は増えているかなと思います。一方で、同じ時期からやっている日本に関してはなかなかまだ増えていないというところで考えると、日本と海外の取組として何が違うのかを精査したり、取組自体を抜本的に変える必要も出てきている、検討する段階にあるのかなとも感じています。
今出していただいているデータ、あとは理工系進学率のデータというのは、年ごとの変化が出ていますが、その年度年度で、例えばこういう女子中・高生事業が始まりましたというとき、それ以降で変化率がどうなっているのか、微分した結果、数字がどうなったかではないですけれども、その変化率を見たり、こういう取組をした後に増えている、減っているというところを少し整理しながら、こちらも体系化の一つとして丁寧にデータを見て、取組にうまく反映し、これをやると微増しているからそれを強化するとか、これは取り組んでいるけどあまりまだ成果が見えてこない、というところを整理して、どこに注力するのかを整理していく必要はあるかなと感じています。
もう一点、先ほども出ていますが、女子の進路には保護者の影響も大きいですけれども、進路指導の先生の意見も非常に大きいなと感じています。特に進路指導の際に、理学部は理科の延長で分かりやすいですけれども、工学部は、工学という教科が高校にないので、工学部を勧めにくい、何をしているか分からないと言われるケースもあります。そういったところに、先ほどの博士人材など、ある程度、理工系のバックグラウンドを持った人が入ることによって、進路指導のところから変えることができるのではないかなというふうに感じました。
少し長くなりましたけれども、以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。多分軸が複数個あるのではないか、裾野、あるいは持ち上げる、しかもそれは個人であっても組織であってもそうだし、及びもう一つ聞きながら思ったのは、やはり前半も出てきましたけど、学術的インパクトなのか社会的インパクトなのかという軸もきっとあるような気がしております。これらをうまくこの政策の中の象限に分けて何か設定していく必要があるのかもしれないということは思いました。
それからあとSTELLAの場合は、この移動可能距離のことはどうやってここの中に入れたらいいか、聞きながらまだよく分からなかったのですけれど、及び最後におっしゃったのがストラテジックインテリジェンスみたいな気持ちだと思いますけども、要するにデータを見て政策の介入効果を測りながらということだと思います。これもこれでなかなかデータと、どういうふうに取れるかが大変だなと思いながら聞いておりました。とはいえ、ぜひ今後実現できたらというところだと思います。ありがとうございました。
続いて、原田先生、お願いします。
【原田委員】 ありがとうございます。私からも2点あります。
裾野を広げるという視点に関して、学協会との連携による仕組みづくりも重要ではないかと思いました。私が今現在、副会長をやっております日本地球惑星科学連合という学会があります。ここでは高校生セッションを設けて20年になります。最近、NHKで「宙わたる教室」というドラマが放映されたのですけれど、定時制の高校の科学クラブの生徒たちが協力して、学会に科学クラブの成果を発表しに行くというドラマで、ドラマのモデルになった学会です。
高校生が気象、地震、地球環境や太陽系、そういった様々な地球惑星科学分野で行った学習活動、研究活動をポスターで発表する会です。ポスター発表には地球惑星科学分野の第一線の研究者たちが聞きに行って、学生と議論をするという場になっているんですね。これは2006年からの取組なのですけれども、参加校はSSHだけではなくて、科学クラブを持っている全国の高校生たちが毎年全国から集まってきています。今年の登録件数は130件ほどです。1件当たり3、4人ぐらいの学生が関わっていますので、4、500人の高校生が大きな会場に全国から集まって議論をするという場になっているんです。
この高校生セッションに参加した高校生たちは、大人がほかの部屋でやっているセッションも見に行くことができ、一線の研究にも触れる機会が与えられています。この例のように高校生が、自分がやってきた活動を発表して、それを一線の研究者たちと議論することができる場づくりを学協会と連携しながらつくっていくというのが大事かと思います。
それから、リケジョなのですけれども、先生方おっしゃったとおりで、なかなか増えない理由には家族に賛成されない、理解されないなどの理由が背景にあると思います。首都圏、大都市圏は最近増えてはいますが、地方の優秀な女子学生たちが周囲の反対に遭って、地元の大学の医学部に行ってしまうなど、他の理数系を選ばない。
理数系でも、医学部とか薬学部ですと将来設計を立てやすいというのですか、自分がどういう職業に将来就いていくかという見通しが立てやすい分野ですが、先ほど川越先生のお話でもありましたように、工学部、それから理学部も、そこを出た後に自分がどういう職に就いていくのか、将来の見通しが立たないところが進学に二の足を踏ませる要因になるのではと思います。積極的にロールモデルとして、特に地方出身の高校に、大学院生を派遣して講演活動をして「自分はこういう道を目指そうとしている」など、具体的な進路を示しながら、活躍している姿を見せていくのは重要です。職業選択、人生設計などと結びつけながら、リケジョを増やす仕組み、制度づくりがあるとよいと思います。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。この後、12時に頑張って終わろうとすると、若干巻いて発言をお願いしなければいけなくなってきてしまったのですが、今のお話は、学協会との接続も大事だし、それからあと地方の方々に、より姿が見えるとよいなということがあったと思います。ありがとうございました。
では続いて、永井先生、お願いします。
【永井委員】 では、短く言います。私、自分の専門がデザインで、どっちかというと社会デザインみたいなことでやるので、現状の課題を解決していくという方法ではなくて、バックキャストによって、いずれ必ずこういう社会像になるんだというところへの移行のスピードを速めるという手法で考えると大学みたいな人材を扱うところが中心となり周りを巻き込む役割を果たして、エコシステムというのは進んでいくと思うのですよ。科学技術分野においても、エコシステムが場となる。もちろん企業や民間、いろいろな方たちが入ってくるのですが、SSHは、実はシビックテックのすごく重要な駆動力というか、動因になっていくと思っています。シビックテックというのは本当に科学技術の中で大きな役割を占めるようになって、現状でもここでは非常に女性が活躍しやすい状況にあると思います。
ここに民間が入ってくることや、例えば、今の教員のジェンダーバランスというのはかなりよいと思うんですよ。高校教員のほうが大学よりよほどよいと思っていて、今後の科学技術の動向は、フェムテックはともかく、ジェンダーイノベーションというのは必ず重視されていくと。これはもう世界的な市場がそこにあると産業界も見ていますので、そうして世の中が向かっていく方向にもうある軸にして、そこに移行するスピードを速めるためにどこに力を入れれば加速するのかというところを割り出したら、結構、縦つながり循環がいいと思うんですね。SSHは、卒業生たちもいっぱいいるし、活躍しているし、そこを活用するのがよいのではないかなという意見です。
以上です。
【狩野主査】 ありがとうございました。シビックテックを具体的にどうやって政策に落とし込んだらいいか、一つぜひ後で教えていただきたいのと、それからあと卒業生の活用ですね。これはぜひということを思いました。ありがとうございました。
では、水口先生、お願いします。
【水口委員】 ありがとうございます。SSHに関連して、私は高専出身で、理数系に特化した教育を受けてきましたが、SSHと重なる部分が結構あるのではと思っております。ただ一方で、SSHと高専の連携、例えば、学生の教育や研究指導のノウハウの共有等がなされているのかが気になりました。もしも現状なされていないのであれば、相互に学べる点も多いのかなと感じましたので、見当違いのことを言っていたら恐縮ですが、そういう場もあってもよいかなと思っております。
【狩野主査】 ありがとうございました。違う組織、あるいは違う組織の所属同士でつながって、何か意見交換をしばらくやっていくのも大事だということでございました。
登本先生、お願いします。
【登本委員】 私は、優秀な人をしっかり育てるということと、裾野を広げるということがあると思います。時間が限られているので、今回は裾野のことだけお話しすると、SSHが今まで担ってきたことは本当に皆様の御尽力で、これはもうとてつもなく理系人材の育成に寄与してきたものと思います。さらにここから一歩となると、裾野を広げるということになると思います。私は中高の探究的な学習にずっと関わってきておりまして、大学の卒論のようなものが、高校に下りてきているようなイメージを持っております。そうしたときに、高校は予算も環境も人も十分でない中、実現を求められると苦しいものがあります。先ほどもお話がありましたが、SSHだけではなく、一般の高校、中学校でも十分実施できる予算が必要です。
また、高校と大学との連携はよいことですが、一方では、もう大学の手を借りないとできないようなところにまできているという見方もできます。このことは問題だと思っていまして、日本全体の理系人材を高め増やしていこうとしたときに、大学の先生は本当はもっと大学の学生を育てたほうがよいのに、高校に手を取られてしまうことになります。教員のアップデートも不可欠です。結局、教員がアップデートされてないと、古いままで教えてしまうので、底上されず、悪循環を生んでしまいます。これは最初の修士・博士人材の育成にもまた戻ってくる話で、例えば教員になったら、しばらく仕事を離れて途中で大学にまた戻って学べるですとか、十分に学ぶ機会が持てるですとか、やはり教員自身に楽しく学ぶ経験があってこそ、児童生徒の学びの充実につながります。これだけ教員離れが起きているのは、もう先生たちもあっぷあっぷで、生徒を育てたいと思っていても、自分が学習する余力は全くない現状です。先ほどキャリアの指導において、教員が足を引っ張ってしまうという話もありましたが、教員自身が新しい学びを体験していないと、指導もできません。また、科学人材の理系分野の話が中心になっていますが、突き詰めていくと、人文分野もしっかりと育成していかなければなりません。やはりまずは分野を問わず、修士課程に進むことを当たり前にしていくようなことが、最初のところにも戻りますが、次の一手になるかと思います。
【狩野主査】 大変ありがとうございます。予算がないとということなのですけれど……。
【登本委員】 予算と環境がありません。
【狩野主査】 あるいは委員の皆様のアップデートにも予算を使わないとということと、それからあと、登本先生と御一緒にそういう場を見ていると思うのは、論文あるいはポスターということにこだわりがあり過ぎていて、裾野を広めるときに、それができる人しか育てていないような気もするときがあるんですね。あれもうまくやってきたいなと。
【登本委員】 初等中等教育におきましてはアカデミックさよりは、まずは好奇心をしっかり育めたらと思います。
【狩野主査】 どちらかというと向き合う姿勢を育てたいはずであるところ、実際はどうなのか、というような。
【登本委員】 はい。ありがとうございます。
【狩野主査】 ありがとうございました。
梶原先生、どうぞ。
【梶原委員】 ありがとうございます。リケジョに焦点を置きますと、資料3-2の16ページ、女子中高生理系進路選択支援プログラム、これを見ていて、ここでプログラムを組んで参加されている女子中高生延べ9,981、皆さんすごくよいと回答している。全体の対象の何%に当たるのかってありますけれど、これはもう純粋に広めるしかないと思うので、ここを面的に広げましょうよと。
そのときに、14ページのところに、ここは基本的には大学とあるのですけれど、大学が企業人を生かしてというか、企業人と連携してやるプログラムをつくっているかどうかというのは結構ポイントかなと思います。全員そういうところに入っているのかもしれませんけれど、なぜそう思ったかというと、特に最後の19ページの入学者比率を見ていると、一番差があるのがやはり工学系ですね。工学系の女子が18%という状態において、工学系こそまさに、どこに行くんですかというと、企業。企業はこういう人材が欲しくて、なぜかというと、企業は本当に女性を増やしていくという流れにあるので、高専の女子生徒ってすごく売行きいいんですよというのを昔聞いたことがあって、多分それは変わっていないと私は思っていますので、工学系がこういう形で偏重はあるけれども、もっともっと企業を使って欲しいと思います。
企業は、出前学習のところも無償で行くはずです。もっと企業人をいっぱい使ったほうがよいと思います。工学系もそうですし、STEAM教育をやるときにも、やはりSTEAMの重要性ということは企業も分かっているので、特にAの部分でそういう人材が欲しいということに対して、先生がどう教えたらよいか分からないとか、工数が非常に足りないということに対しては、企業の人をいかにうまく入れてやっていくことで機会が増えるのではないかと思います。
あと思ったのは、これはもしかして文系と理系の学校の定員の数が比例して、理系の女子が少ないのではないかと思う部分も。割と文系に行ってしまう率というので見ていくと、多分理系と文系の大学の定員で見ると、そこを反映しているのかなと思って、もっと理系の定員を増やすとか、逆に何かを縮小するとか意外とあったりするのかもしれませんねと。いろいろ工学系の女子の枠を増やしている大学に対して賛否両論あるやにも聞きますけれども、一つのドラスティックな動きも、流れを変えるという意味ではあるかなと思っていますので、参考にしてください。
【狩野主査】 ありがとうございました。産学連携的教育と、それからあと定員管理も併せていかがですかという御意見だったと思います。ありがとうございました。
桝先生。
【桝委員】 でも本当に、まさにSSHはすごくよい取組だなと思った一方で、科学技術・イノベーション人材育成という意味でいうと、SSHは一つのトップ人材の育成という意味ではすごく効果があると思うのですけれども、もう一側面の部分というのはまだこれからなのかなと思っていますので、今、科学技術に興味を持つ子供と書いてあると思うのですけれど、科学技術の研究に興味を持つ子供と、科学技術の利用に興味を持つ子供という、2つを明文化してもいいかなというふうには少し思いながら、言葉の問題ですけれども、見て思いました。
以上です。
【狩野主査】 つくる人と使う人ですよね。
【桝委員】 そうですね。
【狩野主査】 ありがとうございます。
ということで、一巡できました。ありがとうございました。
では、これからの文部科学省の方々の一巡をしたいと思うのですけど、まず先﨑さんから、ぜひお願いいたします。もしかして何か言わなければいけないと思って、ずっとお待ちだったかもしれません。ぜひ溜められた内容をお願いします。
【先﨑科学技術・学術総括官】 今年度もよろしくお願いします。また、新しくお迎えした委員の方々もいらっしゃいますけれども、人材政策は科学技術・イノベーションの中でも、人材という形で全ての科学技術・学術の政策の事象を捉えるという、難しいですし、抽象的ですけれど、極めて重要な分野でございます。今日、局長も最初に申し上げましたけれども、大体論点は出尽くしていて、あとは具体的にそれをどう踏み出していくのかという段階でございますので、ぜひとも御知見、御所見をお貸しいただければというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。
あと、委員の方々の手元に配らせていただきましたけれど、博士人材に関するガイドブック3種類、置かせていただいています。こういう資料が、まさに大学も企業も、それから学生さんも困っているような状態が博士人材で起こってきているということで、みんなそれぞれが一歩ずつ前へ出てやろうというふうに動いてきたということから、結局この3種類、切り口は違うんですけども、いずれにしてもガラス張りにする。自分以外のアクターが何を考えていて、どんなことを実際にやっているのかということを見ることによって、逆に自ら、大学だったら就職というものをどう捉えていくのとか、あるいは学生さんというのはどういうふうに動いていったらよいのかというようなことで、企業さんは企業さんでもちろんですけども見ていただくという形で、データもそうですけれども、それぞれの社会人の方がどんな取組をしているのかというようなことも、あるいは年収まで含めて書かせていただいているので、私どももこれから頑張らないといけないと思いますけれども、周知を図っていきたいと思いますし、お手に取っていただけるレベルになったかなと思っておりますので、ぜひとも活用いただきたいということと、それから、これに参加できない企業です。つまり、博士人材は別にいいやと思っている企業さんとか、あるいは博士人材は、うちはとてもとてもと思っているような企業さん、そういう方々にもぜひ手に取っていただいて、それで一歩前へ出ていただくというような意味合いも実は込められておりますので、ぜひとも御活用いただければと、我々も頑張らないといけないと思いますけども、どうぞよろしくお願いします。
【狩野主査】 ありがとうございます。
逆順でお願いして恐縮ですが、福井審議官、お願いできますか。
【福井大臣官房審議官】 皆さん、活発な御意見ありがとうございました。意見聞いていて、人材育成って、つまるところ、すごく個人的なことというか、各人の資質に影響するところが非常に大きいなと思っておりまして、今日聞いた意見の中では、そういった若手の人の思いを受け止めて指導するメンターみたいな話というのは非常に重要かなと思いましたし、私自身のこれまでの経歴を踏まえましても、要所要所でどんな人と出会って、そういう人から影響を受けて、最初に思っていたキャリアとは全然違うキャリアを歩むということも非常に大きいと思いますので、何かそういう触発される人と出会える場というのも大変重要かなというふうに思いました。
あと今後の議論については、AI時代を迎えまして、スーパーブルーワーカーみたいな話もありますけれども、そういった観点も踏まえた中でのお話も伺えたらありがたいなというふうに思いました。
すみません。以上でございます。
【狩野主査】 ありがとうございます。手も頭も動く人ということですね。
では、井上局長、お願いいたします。
【井上科学技術・学術政策局長】 今日いろいろいただきましたけど、結構具体的な話、特に博士の話をいただいたと思っていまして、支援の在り方一律でなくというときの軸、これをどんな軸でやるか、これは具体的に真剣に考えないといけないと思いましたし、支援の在り方も、精神面のことや就活なども含めたことと、あと海外に行って帰国後の支援というお話もいただきまして、そういったことを本当に具体的にやらなければいけないと思いましたし、やはり博士の価値を認める社会文化の醸成ですよね。キャリアの一つとして考えるということで、もう社会に博士の価値をきちんと認めて、普通に博士というものが社会で活躍していくように変革をしていくこと、本当にどんな仕掛けができるのか考えたいと思いました。また、SSH、これも恐らく、結構中を見ると一律な支援になっているんですね。SSHはもう230ぐらいあるのですから、これは特色に応じていろいろな軸で支援をしていくことを考えねばいけないなと思いました、認定校も含めてです。
あとリケジョの問題も、今日いただいたものも踏まえて、いろいろ考えたいと思いますので、ぜひ引き続きよろしくお願いいたします。
【狩野主査】 ありがとうございました。奥課長、ほかの皆様も頑張ってくださると思いますので、ぜひ意見を申し上げ、我々からも具体的な提案を出して、うまく前に進めていきたいということで、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
では最後に、白川さんから事務連絡をお願いします。
【白川人材政策課課長補佐】 委員の皆様、本日は活発な御議論ありがとうございました。
次回のワーキング・グループは、5月15日を予定しております。本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただき、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
以上でございます。
【狩野主査】 大変活発に議論いただきまして、誠にありがとうございました。あと二、三回あると思いますが、ぜひよろしくお願いいたします。
では、これで閉会いたします。ありがとうございました。
―― 了 ――
科学技術・学術政策局人材政策課