人材委員会 研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ(第2回)議事録

1.日時

令和6年5月28日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省15F局1会議室及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. ワーキング・グループの論点整理に向けた検討事項(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

 川端委員、狩野委員、川田委員、樋口委員、宮崎委員、安田委員

 

文部科学省

 生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会
研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ(第2回)

令和6年5月28日


【川端主査】  では、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会人材委員会の研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ(第2回)を開催させていただきます。本日の会議は、冒頭より傍聴者の方々に公開しておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、6名の委員に御出席いただいており、定足数を満たしております。
 それでは、議事に入る前にまず、いつもどおり、本日の委員会のオンライン開催に当たって、事務局からの注意事項と資料確認をお願いします。
【對崎人材政策課長補佐】  事務局、對崎でございます。よろしくお願いいたします。
 本日、会場に5名の先生にお越しいただきまして、オンラインでは安田先生に御出席いただいております。
 対面での御出席の方は、質疑応答の際は、挙手等で主査に御示唆をいただき、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。また、機材の不具合等ございましたら、対面の皆様は、事務局のほうに手を挙げていただくなどお声がけいただきまして、オンラインのほうでは、事務局の連絡先に御連絡いただければと思います。
 資料につきましては、Zoom上での共有も行いますが、対面で御出席の先生方には机上にも配付をしておりますので、お手元の資料も御確認いただければと思います。
 続いて、資料の確認ですが、本日は、資料1、本ワーキング・グループの論点整理に向けた検討事項について(案)と、参考資料1が本ワーキング・グループの名簿、参考資料2-1が、先日3月に公表いたしましたポストドクター等の雇用・進路に関する調査、参考資料2-2が、昨年度令和4年度の調査として公表いたしました研究者・教員等の雇用状況に関する調査、ポスドクガイドラインの部分に関するものを含めて全体を公表していますが、事務局の説明でページ等はお示ししたいと思いますが、こちらと、参考資料2-3といたしまして、研究者・教員等の雇用状況に関する調査の調査結果となっております。
 事務局からは以上でございます。
【川端主査】  ありがとうございます。
 では早速、議題1、ワーキング・グループの論点整理ということで、検討事項についてです。これから、まず事務局のほうから全体像について少しお話をいただいて、皆さんで議論したいと思います。では、對崎さん、よろしくお願いします。
【對崎人材政策課長補佐】  続きまして、事務局からの説明ですが、資料1が本ワーキング・グループの論点整理に向けた検討事項です。
 まず1ページ目は、前回第1回にお示しした資料からの抜粋でございます。検討の視点として、1つ目の丸ですが、全体像の把握に基づいて、今後の改善方策や留意事項等をまとめて関係機関に周知するような形、あるいは2つ目のポツとして、個別大学や研究機関の具体例を把握して、優れた取組について全国的に普及する等の取組を検討、また、2つ目の丸として、ポストドクターも含めた研究者のキャリアパスのための人事評価制度やキャリアパス支援を促進するための具体的方策を検討するべきということがございます。
 また、ワーキング・グループの共通認識という4ポツですが、下線部のとおり、科学技術・イノベーション政策の観点から、研究力向上に資する研究者支援をいかに行うかという視点で対応策を検討すべき、また、本ワーキング・グループの検討の対象は、任期つきで雇用している研究者及びフェローシップ等の制度により受け入れている研究者であって、おおむね40歳未満の者を主な対象のスコープにしております。また、アウトプットのイメージとして、若手研究者を取り巻く環境を整理して、研究力強化に資するような活動を支援するような方策をまとめていき、大学等にも展開していくという形にしております。
 次のページです。そのような中で、第1回から第2回の中で個別機関のヒアリング等も実施はしてまいりましたが、論点整理の構成(案)というところでまず柱を示しております。1ポツ、背景・経緯、2ポツ、現状、3ポツ、課題、4ポツ、対応策という構成になっております。本日はこちらの柱立ても含めて御意見をいただければと思います。
 まず、検討の背景や経緯としては、2020年12月に、人材委員会として、「ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドライン」を整備しております。こちらの状況から4年ほどが経過している中で、どのような形で事象の変化が起きて、それをどのように捉まえていくのかというところが必要です。その上で、2023年4月には労働契約法の10年特例の実施からちょうど10年を迎えたという経緯もあります。また、この間、各機関においては、若手研究者支援に関する取組の推進や、産学連携による人材の交流促進や、博士人材のキャリアパスも次第に多様化してきたという背景や経緯があります。
 そのような中の現状として、若手研究者の任期つきポストは増加している一方で、若手研究者の割合やポストドクターの数は相対的には減少しているという中で、有期雇用・無期雇用に関しても、その流動性・安定性に関してはそれぞれ雇用の形態によってまた流動性をもたらす要因等も変わってきます。その中で、国でも様々なファンディングの仕組みを整備して雇用財源の多様化や充実を図ってきたということもあります。また、10年特例については、昨年度も調査を実施しましたが、今後の状況についても引き続き確認をする必要があるだろうという現状でございます。
 このような中の課題として、詳細はまた後半でお示ししておりますが、事項としては大きく4つ掲げております。1つ目が、若手研究者の流動性と安定性の両立を図りつつ、成果を上げてステップアップするキャリアをどう形成していくべきか。その際に、若手を含む研究者の適切な競争環境の下での多様なキャリアパスをどう形成・支援できるか。また、大学や研究機関ごとに研究者の雇用戦略がそれぞれあるわけですが、その偏在についてどう考えるか。課題や現状にも関わってきますが、2020年につくったポスドクガイドラインの達成状況や、引き続き課題となっているものについてのフォローアップも課題として整理が必要ではないかということです。
 4ポツ、対応策として、今般、論点整理の構成として考えておりますのは、ポスドク等の若手研究者のキャリアパスのあるべき方向性を示すべきということで、さらに分解すると、流動性とステップアップのモデルについて、あるいは任期つきとキャリアパスの関係、10年特例の状況とキャリアパスの関係といった事項が挙げられるかと思います。また、そのようなあるべき方向性を示した上で、ポスドク等のキャリアパスの構築や多様化に向けた各機関や文科省の今後の取組はどうあるべきか。そしてまた、まだ深掘りできていない点やさらに深掘りすべきところについても留意事項として記載すべきということで、このような構成にしております。
 次のページでございます。こちらは課題の詳細として、まず参考資料2-1の関係ですが、これは大部のため、また先日既に公表しているもののため、個別の御説明は控えますが、その中で課題と思われる部分として、現在ポストドクターであって前職もポストドクターである者が比較的多いこと、また、次年度もポストドクターを継続する者も多い傾向にあることで、この期間が適切なステップアップとなっているかの詳細についても把握する必要があります。
 また、昨年令和4年度に実施した調査の中で、2020年のポストドクター等に関するガイドラインのフォローアップも調査をしておりまして、こちらの調査結果のほうからは3つほど主なものを挙げております。1つ目が、競争的研究費においてプロジェクト実施のために雇用されているポストドクター等の専従義務の緩和という制度がありますが、こうしたものはあまり活用されていないという状況で、さらに活用を図るべきではないかという点です。
 また、2つ目は、ポストドクター等に関する研究活動支援についても様々な項目を調査していますが、例えばPI等に対するポストドクター等の指導や評価に関するトレーニング機会の確保、ポストドクター等の評価に関し第三者を加えて客観性の担保を図る仕組み、日常的にポストドクター等の支援を行うメンター等の配置などは引き続き取り組むべきではないかという点です。
 また、4つ目のポツですが、ポストドクター等に関するキャリア開発支援に関しては、例えば産学官のポストのマッチングの促進(求人情報の紹介)や、産業界と連携したインターンシップ等を通じた企業経験を積ませる取組、あるいはURA等の研究開発マネジメント人材をキャリアパスとして定着させるなどの取組の実施があまりされていない状況のため、こうしたところも場合によっては図っていくべきではないかという点です。
 次のページからが論点整理のまとめ方で、これまで個別機関等のヒアリングの中でいただいた好事例等も含めて記載をしております。1つ目の(1)のポスドク等若手研究者のキャリアパスについてのあるべき方向性として、まず、1点目の流動性やステップアップのモデルとしては、取組例一つ一つの御紹介は時間の関係で省きますが、例えば年齢層を踏まえた有期と無期の戦略的活用や、テニュアトラック制の活用、また、機関間の移動の際の処遇の保障等を通じた研究者の育成・確保が図られているという状況でございます。
 御議論いただきたい点としては、各大学それぞれ取組が行われていますが、その上で、独自の取組では解消し切れない課題について、国が取り組むべき制度改善や取組、その対象者の範囲等についてです。
 また、2点目、任期つきとキャリアパスの関係です。こちらも個別事例は幾つか挙がっておりますが、原則無期雇用とするような大胆な政策もありつつ、雇用期間の上限を一律に設定せずに柔軟に対応する場合など、各機関の取組が挙げられております。御議論いただきたい点としては、これも各機関においてそれぞれ、人事雇用戦略が取られていますが、国がどのような点でそれを後押しできるか、その対象者をどう考えるかといった点です。
 3点目の10年特例の状況とキャリアパスの関係につきましては、昨年度の調査結果の状況からは、昨年度時点においては、特例対象者の8割が無期労働契約を締結または締結する権利を得ていることが分かりましたが、こうした者のフォローアップも含めて、今年度に関しては、昨年度における無期転換申込権や無期転換申込みの状況を把握する予定ですが、次回調査で詳細に分析・検証すべきことは何かという点を特に御議論いただきたく思います。
 (2)のキャリアパスの多様化に向けた各機関と文科省の取組です。こちらも個別に事例を幾つか示しておりますが、特に若手研究者に対して研究費を重点的に配分する等、キャリアパス構築のための取組が行われていますが、その上で、各機関の取組を踏まえて、文部科学省が今後ポスドク等の若手研究者向けにどんな取組を行うことが効果的かという点を特に御議論いただきたいと思っております。
 その他留意事項として、機関の規模や特性に応じて、例えば大規模な研究機関は流動性が高く、中小規模の機関は無期雇用による人材の確保が必要とされているという声もあります。また、大学では教育エフォートがある一方で、国研では割と研究に集中しやすい環境が整備されているという声もあります。また、国内だけではなくて国際的な研究者の流動性の状況を踏まえて、社会課題の解決に携わるなど、研究者のキャリアの多様化に向けて、そのような状況が固定しないほうがいいのか、あるいはある程度そのようなすみ分けがされていくのがいいのかといった点でどのような検討が可能かという点を記載しております。
 また、ここではまだ深掘りし切れていない点は、先ほど申し上げたとおり、引き続き必要なデータ等があると思いますので、そうした点も御議論いただければと思います。
 事務局からの説明は以上ですので、よろしくお願いいたします。
【川端主査】  非常に網羅的な話になっていて、1回目から少し時間が経っていて、様々なヒアリング、あるいは個別の話をお聞きしていて、いま一度全体を見渡して、再開第1回のような感じなので、しばらく自由に話し合っていこうかなと思います。
 まず、お気づきの点から、どこから始めてもよいのですが、論点整理と言われている、先ほどの資料で言えば2ページほどにわたって並んでいますが、このようなキーワードも含めてどこからでも声を上げていただけると、順々に広がっていくかなと思います。いかがでしょう。
【狩野主査代理】  では、口火を切ります。
【川端主査】  狩野先生からどうぞ。
【狩野主査代理】  今日傍聴しておられる方々の中にもきっと、有期雇用はやめにしないかということについての話が出るのかと期待しておられる方もいるかもしれません。そこが難しいというところについて、場合によっては改めて事務局から、どのように難しいか、もう一度リマインドしていただいて、だからこそ、それが制度としてそのままである中で何ができるかということにフォーカシングされているということをリマインドいただくのもいいかなと思ったのですが、いかがでしょうか。説明しにくいお願いで申し訳ございません。
【川端主査】  無期雇用と有期雇用の人数の大きさから始めて、それが一体、どこに起源があってというような話を始められると、後の添付で分厚いのがあって、こちらのほうにはそういう有期雇用とか無期雇用の人数的な話もあるので、だから一概に簡単に全部を無期になんてできないという話が出てくるかと思いますが、對崎さんいかがでしょうか。
【對崎人材政策課長補佐】  そうですね。無期雇用に関しましては、口頭での御説明で恐縮ですが、学校基本調査で大学等の教員の人数は把握しております。教員全体で申し上げると18万8,000人ぐらいの大学の先生等がいらっしゃる中で、その中でも毎年1万人ほどが採用されて、定年退職を含めて1万3,000人ほどが出ていくというフローの中で、その中でも転職や外に出ていくような方が一定数、9,000人近くはいるという状況でございます。
 それと有期の場合を本来であれば詳細に比較すべきところかと思いますが、例えば昨年度実施した雇用調査では、それに対する有期雇用の全体の人数が、特例対象者という意味で申し上げると、全年齢層を含めて11万人です。参考資料2-3でございます。有期雇用というよりも、特例対象者の人数の把握になっておりますが、これは法人に関しては文部科学省以外の法人も含まれているので、必ずしも18万人とパラレルに対応する人数ではありません。
機関全体の労働者数の内訳、【2】のページのところですが、無期労働契約者が40万人で、有期が35万8,000人で、そのうち特例対象者が11万人という状況です。これは昨年度の調査ですので、昨年度の時点では、1年度単位で特例対象者だった人数が、【4】のところの年度単位ですと、この年度の場合は1万2,397人の方がちょうど10年特例で10年を迎えた方というスケール感でございます。
 先ほど申し上げたとおり、教員全体の学校基本調査の中では、一部の方が、無期雇用であっても転職その他、外にフローとして出ていくという流れがある中で、それが有期の方はより人数の規模は多いわけですが、必ずしも有期雇用の人だけが流動しているわけではないというところは、現在データがなく、正確なところはお示しできないのですが、このような状況ではございます。
【狩野主査代理】  ありがとうございます。ということで、私どもが議論しているのが万人単位の方々に関わる内容であるということは一つ念頭に置くべきかと思いました。
 あと、関連して、ヒアリングの中で出てきた一つのデータにあった内容で、ここであまり拾われていないことは、ちょうどこの対象の時期の方々が家族を形成するというような時期に差しかかっているということです。子育てを経験すると分かるのは、子育てというのは全然思いどおりになるわけでない内容だということです。それと研究自体も先が見えにくく、思いどおりにならない時期と重なっているということです。それがこういう有期になることによって非常にストレスフルに感じておられる方々が少なくないということを改めて実感したところです。そのようなことも少し念頭に置きながら内容を見られたらよいかと思います。網羅的なのですが、その内容が今回は入っていなかったので、一応それをリマインドしてみようかということを思いました。
 以上です。
【川端主査】  そのような感想辺りから始めてもいいかもしれないですね。あまりにも広いので、どこを取り上げてもかまいません。
 今の話でいうと、1点、この資料は、資料ごとに数字が大幅に違っているからどう見ていいかよく分からないのですが、例えば今の参考資料2-3で出ている2ページ目、無期雇用全体が40万人というのは日本全体の労働者ですか?
【對崎人材政策課長補佐】  国立、公立、私立、共同利用機関法人と研発です。
【川端主査】  最初に對崎さんは、国立大学等は18万人と言っていて、あれとこれのずれはどこから生じるものですか
【宮崎委員】  私立等が入っているということですか?
【髙見人材政策推進室長】  いや、事務職員が入っています。
【川端主査】  やはり事務職が入っているのですね。
【髙見人材政策推進室長】  はい。これは機関ごとの労働者全体で見ていますので、教員・研究者以外も含んでいます。
【川端主査】  その中の有期雇用がさらに35万人いるということですね。
【髙見人材政策推進室長】  そうですね。
【川端主査】  およそ1対1の割合という規模感というように見ればよいのですね。だから、教員職にしてもやはり同じ程度のサイズがあるということ。
【川田委員】  やはり教員だけを見たデータが得られるのであれば、そちらのほうが望ましいと思います。恐らく、大学の事務職員を含めると、各研究室の秘書の方等で大学特有の働き方もあると思いますので、一般的な企業の働き方と同じようには見られないかもしれないですし、いずれにしても、我々が検討していることとの関係で言えば、教員の方のデータが欲しいですね。
【川端主査】  そうですね。それから、もう1点、そんな前向きかどうか分からないのですが、参考資料2-2等、この辺で年齢分布が入っており、有期雇用といっても、若手だけではなく、中堅より上にもたくさんいることがわかります。この年齢層では若い人たちは状況がかなり違っています。先ほど、ちょうど家族を形成されたという若いゾーンと、それから、もう家族は持っているがこういう状況かという話です。各大学で事情は違うでしょうが私の所属している大学を少し見てみると、シニアのほうの有期雇用というのは、若手に多く存在する外部資金の期間に連動した有期雇用とはことなり、教員全員に基本的に任期を全部つけて、定期的な業績評価を行うが、更新は何度でもできるという、そのような有期雇用の形も存在しています。この場合は組織としてのアクティビティを保ち緊張感を持つことのためなのかと思います。
 だから、そういう意味で何が言いたいかというと、若手で本当にプロジェクト型で動いていてここで雇用を止められる者もいれば、シニアのほうで、部局の活性化も含めて任期がつけられている場合もある。ただし、後者の任期付きに関する運用としては、時限で終わりがあるものではない。他方、任期雇用とは全く別次元に、無期雇用の教員であっても、教授が辞めたためにラボが整理され刷新されていくとかいうことは、研究機関の組織としての分野戦略を行うということは、学術の性格上当たり前のように起こっているとも思います。だからと言って首にするわけではありません。
 思いついたところから始めましょう。
 どうぞ、宮崎さん。
【宮崎委員】  どこからなのか分からないですが、今、対象が40歳以下というところをボリュームゾーンとして考えているということなので、その方たちをもう無期と有期は分けざるを得ないということであれば、有期の方を無期に流していくラインをもっと活性化させないと流動化は図れなくて。そうすると、無期になっているある上のゾーンをどうやって活性化するかというところがなければ、多分下が上がっていくというパスは出来ないというのが現状だろうということで、多分そこの上のボリュームゾーンを壊すのがすごく難しいというか、家庭を形成するのではなくて、今度は家庭がもう出来上がってしまっていて、養っていかなければいけないような人たちがいるというところを壊すのはかなり難しいと思います。
 逆に、何となく聞く話では、上の無期雇用の中のある一定数で、やはり流動性がないためにアクティビティが担保できないというケースもあります。有期雇用だからアクティビティを担保できているというケースもあるということですが、そう考えると、そこを変えないと下からの上がりはないというのは感じるところです。難しいのですが、そこの上のボリュームゾーンを少し変えていくような施策を打つことによって、有期雇用を無期にうまく流す。流せていないと思います。ポジションがないから、結局10年で切れてしまうから、次がないという。そのビジョンのなさが、やはり今、家庭をつくっていくような世代の人たちに、夢がなくて、キャリアパスが見えなくて、結局どこかほかを探さなければいけないということになると思います。だから、やはり夢のあるキャリアパスをつくるためにも、実は本当は手を入れなければいけないのは、無期の上のボリュームゾーンを流していって、下が上がることができるという、特に有期の方たちはアカデミアに残っていきたいという気持ちがあるでしょうから、選抜はあってもいいと思いますが、そこを何か手当てしてあげないと難しいと思います。
【川端主査】  この議論になったときに、對崎さんが先ほど少しお話しされたこの話を共有したほうがいいように私は思います。そうしないと、本当にどれほどふん詰まりになっているのか、なっていないのか、流れているのか、流れてないのかというリアル感を数字的にみる必要があると思います。そうでないとアカデミアの現状が悲惨なのだという話と、何の問題もないという話とが行ったり来たりしている感じがあって。少し理解するためにも紹介はできますか。
【對崎人材政策課長補佐】  無期雇用に関しては、ある種、学校基本調査のようなデータがありますので、そこはいかようにも整理できるのですが、有期の場合と比較してどうかというところが難しいです。
【川端主査】  そこはまだ置いておいて、無期雇用にしてもどれぐらいの人数が動いているかというような話は、まず出発点として全員で理解してもよいと思います。
【對崎人材政策課長補佐】  それは先ほど口頭で申し上げた数字ではありますが、テクニカルな問題で今、資料が共有できない状況です。
【宮崎委員】  流動で抜けていく人数で、有期から上がっていく枠があるかという感じですよね。
【川端主査】  對崎さんからもらった資料をベースに個人的におおざっぱに考えると、無期雇用が今約19万人います。29歳ほどから65歳までの間に19万人が金太郎あめのように流れていくと考えます。実際は年度によって採用数や退職数に変化があるので各年齢の在籍者数は大きくなったり、小さくなったりします。
金太郎あめの塊の30歳付近(最初の部分)に新採用?された教員が加わり、同人数の65歳付近(最後の部分)の人々が退職する。こうやって毎年金太郎あめの年齢が進んでゆく。全く中途退職しなかったら、これがこのまま流れて行きます。その中に、中途退職する人が金太郎あめの真ん中辺に現れます。辞めたら採らなければといって採ってくるという中途採用の人事がおこっています。すごく単純化するとこれらの動きで19万人の動的平衡ができているのが今の無期雇用の状態となります
 このように単純に考えると、金太郎あめの長さを1年ずつの輪切りにすると、1年分が5,000人になります。年がたてば5,000人が順々に高年齢側にずれて、最終的に退職で5,000人が金太郎あめから外れます。その分30歳付近で新採用的に入ってくるのが5,000人ぐらい。中途採用、転出がどうなるかというと、最初と終わりを除いて全年齢を合わせて8,000人ずつ毎年入って出ていくというのが、学校基本調査に書いていることをそのまま数字にするとそういう。
【宮崎委員】  真ん中辺というのは何歳ぐらいのところですか?
【川端主査】  29歳から65歳の間です。
【宮崎委員】  どことは言えないのですね。
【川端主査】  例えば30代だと2,300人、40代だと2,300人、50だと1,200人で、60だと1,000人ほど入ってくる。毎年、最初のほうが少し多くて、後ろのほうが次第に少なくなっている。
【宮崎委員】  そこが抜けると、こうはいかないのですね。抜けると、入っていくのですね。
【川端主査】  入っていく。だから、抜けて、入って。
【宮崎委員】  抜けて、ずれて、入るのではないということですね。
【川端主査】  それはあります。世代によっては、2,300人入っていったら3,800人出ていくとかね。世代によっては多く抜けて少なく入ったり、多く入ったり。とはいえ、そんなフローが無期雇用でも起こっているということです。
【宮崎委員】  でも、その無期雇用の動きがないと、有期の人が無期には入れないではないですか。その流れは、知りたいのは、入っていく人は無期から入っているのか、有期から入っているのかなのです。
【川端主査】  それは分からないですね。
【宮崎委員】  だから、そこは有期から入っているのであれば、それで有期の人は流れているということになるのではないでしょうか。だから、無期の人が出ていくのを無期からの転換で補っているのだと、有期の人が入るところはもう最初の入り口の金太郎あめの入り口しかないということではないですか。
【川端主査】  という話で、さっき言われた、無期雇用のフローの流れに次の有期雇用の集合体がいて、それが無期雇用とどういう関係にあるかというのが今、宮崎さんの言われた……。
【宮崎委員】  そう、どこに入るかが重要。
【川端主査】  どこにくっついているか、くっついていないか。
【宮崎委員】  だから、どこに入れるところがあるのだということが分かれば、有期の人もビジョンは開けるわけですよね。だけど、そこが自分の周りしか見えないし、公募情報というところでしか見えないから、将来に対する不安感というか、それがあるのではないでしょうか。自分が10年後どうなるかのようなところが、ある程度のこういう実績を上げていれば皆さん無期のところの入れ替わりで入っているというのか、やはり29歳のところから入るところに入らないといけないのか。自分たちはもうそこは違いますよね、有期というボリュームゾーンは。だから、その人たちがどこならそこの中に入っていけるのかというのを明示してあげるだけでも気分的には違いますよね。
【川端主査】  というような定量的な数字を拾うためにも、有期雇用の動きと無期雇用の動きの連動というのをある程度定量的に見られると、安心される人たちが出てきたり……。
【宮崎委員】  はい。出てきたりしますよね。
【川端主査】  悲惨だと思う人たちが出てきたり……。
【宮崎委員】  そう。これだけしかないのだと思ったら、そこで自分がそっちに行かないと思ったら、違うキャリアパスを早くに考えるし。だから、10年待たされて、10年後には何となく無期になるのではないかと思っているのと違って、自分での選択肢を、有期の中でも選択肢をある程度見定める。例えば5年ぐらいで、民間に行きましょうとか、その選択肢をその人たちに持たせるためにも、そのフローはとても重要ですよね。
【川端主査】  というようなことをある程度みんなで共通認識みたいなものを持つことで、アカデミアの今の状態が大変なのかある程度楽観できるのかの出発点ができるのではと思っています。ただ、なかなかこれを取るのは大変というのが最初から言われている。有期雇用の入って出ていく先とかいう、そういう話。
 特に、僕もそんな分からないですが、少しだけポスドクか何かを見たときに、ドクターのキャリアパスと同じで、行方不明がたくさんいます。返事しない人たち。ポスドク支援の最初の頃は、統計データの分類に行方不明じゃなくて死亡というのも入っていて、誰も死んでいないのに死亡みたいな欄があって、これはおかしいという話があったぐらいでした。みんな自分の行った先を、アンケートを取っても返事しない人たちがとても多くて。それがベースにあったりするから、なかなかこれのフローがどれぐらい押さえられるかというのは分からないですが、でも、おっしゃるように、ぜひ何らかの形で少しでも、分かるところだけでもいいから、こういうフローの全体像が見えたらなとは思います。
【宮崎委員】  数字だけでなく質的なところだけでもよいのです。だから、このぐらいでこういうふうにして民間企業に行く人がいる等。有期で大学の中にいると、その選択肢さえも見えてないのではないかと思います。
【川端主査】  産業技術総合研究所は結構、有期雇用で終わって民間に行く人って現れますか?
【宮崎委員】  うちは今、有期雇用がほとんどいないので。
【川端主査】  言われていましたよね。
【宮崎委員】  でも、民間に行く人もいます。いますが、やはり少ないですかね。
【川端主査】  でしょうね。
【宮崎委員】  民間から来る人はたくさんいます。
【川端主査】  比較的シニアでしょう、民間から。若い人が民間からやって来るというよりは。あるか。それはあるな。
【宮崎委員】  いや、それは若い人も今。今年から修士採用を始めているので、ドクターに行かず、修士を持って就職している人たちがいますよね。その人たちが民間を辞めて応募してきています。修士号しか持っていなくて、産業技術総合研究所に来ると業務で博士を取れるという制度が始まったので、それで応募してくるのは民間から来ます。だから、大学院のドクターに行きたかったが、経済的にも安定したいし、将来が見えない、博士を取った後の将来が見えないからといって、民間から若手でも来ます。だから、結構、大学も民間から採ろうと思ったら採れるのですが、多分大学の中でアカデミアで上がっている人たちがいるから、大学はそこで採るのはかなり難しいとは思います。
【樋口委員】  産業技術総合研究所の場合は、仕事をしながら、給料をもらいながら博士が取れます。
【宮崎委員】  はい。
【樋口委員】  大学は多分それができなくて、企業を辞めてから取ろうと思うと、一旦大学生にならないといけないので、そういう意味で少し違う。大学もそういうことができればまた選択肢が増えるかもしれません……。
【宮崎委員】  大学もそういうことをすればいいんですよね。
【宮崎委員】  どこかの大学でやっていたみたいに、大学の経費で修士からどんどん上に上げていくとか、それで博士を増やしていって。だけど、博士を増やすだけだと次のパスが見えないので、今の流動性をどんどん見せていくというのが重要なのでしょうね。
【川端主査】  産業技術総合研究所らしいパターンという。
 安田先生、何か声を上げていただけますか。
【安田委員】  はい。こんにちは。今の議論を聞いていて、最近思っていたことを少しお伝えしたいのですが、若手の、博士に行くかどうかをまず迷っている、ポスドクに対する不安があるという点に関して、省庁の国家公務員試験を受けて、それに一旦合格すると5年間その権利を保有できるように最近変わったようです。あの制度は結構学生に大きな影響を与えていると感じております。
 できれば博士進学を希望しているが、博士に行くその先の就職にといろいろと不安があるという中で、一旦公務員試験に合格しておいて5年間は就職のセーフティネットがあることは心強いです。しかも修士2年生のときにそれに合格してしまえば、博士を取り終わった後に、例えば学振等を取ってあと2年間ほどポスドクとしてさらに研究の世界で研鑽を積んだ後にでもそれまでに培った知識を生かして省庁に行ける道筋になりえるということです。実査に私の身の回りにもポジティブにこうした可能性を考えている人がいます。
 省庁のこうした取組も非常にありがたいと思うので、民間企業でも類似するシステムがあればさらに魅力的だと思います。1度民間に行くと、その後、博士を取るというのは、企業からしても相当なコストになってしまって大変だと思うのですが、例えば修士の段階でこの子はすごくいいなと思っている人を、例えば取り置きという、博士を取った後にもしよかったら来てもらうという採用の仕方が民間にも増えてきたら、当人にとっても企業にとってもよいのではないでしょうか。国としてそうした採用にインセンティブをつければ、博士を取った後にその人を採ったら、会社にとってもメリットとなり、その結果社会のイノベーションにさらにつながればよいのではないでしょうか。そんなにコストにもならなくて、よい人が採れたという採用にならないかというのは最近思っていました。
どのライフステージでも自分の職がいきなりなくなる危険性を抱えているということは非常に不安なことだと思うのですが、特にまだ社会人にもなっていない人が、そのあとに職がないかもしれないというのは博士人材育成において一番のネックだと思います。加えて、狩野さんが初めに少しお話しされていたように、博士課程にまで行く場合は、やはりライフイベントと重なる時期であることも大きなネックになっています。
 その上で、しかも自分の職も3年後どうなるか分からないというようなところで結構不安定になっているので、志のある人が、でも、一応5年間ほどは自分がもしこちらのよいと思った企業、あるいは省庁に行こうと思ったら、専門で培った知識を生かしてそちらで働くことができるというセーフティネットがあれば、セクター間の人材の流動性もポジティブに起きると思います。時が来たらポジティブに自分が選んだところに行く、自分がアカデミアにどうしてもこだわりたかったら、アカデミアを選ぶという形で何かもう少し選択肢が増えるというようなことを少し思っていたので、ここでコメントさせていただきました。ありがとうございます。
【川端主査】  ありがとうございます。聞いていてつい会話したくなるのですが、私、実はドクターの頃に民間の奨学金を取りました。まずアカデミアより民間のほうが魅力的だったので進路をそのようにぼんやりと考えていて、そのうえで、結婚して子供が出来たから、良いタイミングだったのでそれをもらいました。それで、その後、セレクションで、大学に行くか、民間に行くかで最後に民間を取ったのですが、その頃からずっとこういう制度はあって。ただし、ドクターの中でも奨学金を選ぶ人がとても少ないかった時期がありました。
 何がというと、DC1とか修士で自分の将来をある企業に決めたくないという感情が強かったと聞いたことがあります。今はどうか分からないですよ。今、だから、学生はどんなメンタリティーなのかというので、学生のメンタリティーに安田先生が一番近そうなので、というので、要するに、自分の将来はもう少し先に決めたいといって、なかなか企業の奨学金を取らない、あるいは、公務員試験は、なかなかそのための勉強をしなければならず面倒くさいといって受けないというバランスでいうと、安定を目指すならそういうものをがんがんやりましょうという道があったときに、やはり今の若い人はそれを目指されるのでしょうか。
【安田委員】  私の研究室の学生は実際にそのようなことを考えており、私は彼らからそういったシステムがあることを教えてもらったくらいです。民間の第一志望の企業に決まった学生がさらに公務員試験に合格だけしておいて軌道変更できるようにしたいと言っているくらいなので、選択肢を多く持っておいて、セーフティネットを持っておきたいと思っている人は結構いるのではという印象を受けています。
 日本の国力が落ちてきている中で、昔よりも若者の考え方がある意味堅実になっており、より保守的な価値観へともしかしたら少し変わってきている可能性もあると思います。
【川端主査】  少なくとも、全員がそうでないにしても、ある割合いるとすれば、今、先生が言われたみたいに、例えば民間からの奨学金の数、あるいは国家公務員の5年間の数、そういうポストが毎年どれぐらい存在するのかというのも調べてみるのも手かもしれませんね。
【安田委員】  そうですね。実際、企業の奨学金については、皆意外と知らないのではないかと思います。周知する、あるいは情報をまとめる等して発信し、選択肢を示すとよいかと思います。
【川端主査】  宮崎さん、どうぞ。
【宮崎委員】  奨学金制度は結構制約が。樋口先生、よく御存じではないですか、その辺り。
【樋口委員】  私自身がちょうどドクターの頃に、少し上、少し下にそういうのを言っている人が多かったのですが……。
【宮崎委員】  民間の奨学金。
【樋口委員】  はい。それはやはりおっしゃるように、そこに就職するということが前提だったというので、行きたい人と行きたくない人がいました。ただ、最近は少し減っている気はします。
【川端主査】  そういう奨学金自体が?
【樋口委員】  はい。ドクターを対象としたものが。それは製薬系の話になるのかもしれないです。薬学部なので。
【川端主査】  そういう意味では、だから、そういう数字を拾ってみるというのもよいかもしれないですよね。
【狩野主査代理】  あと、伺っていて思ったのは、そういう情報が集まったならば、文部科学省的な、つまり、信頼感が置けそうなサイトにそれを一括して置いておくことによって、あそこを見れば皆さんに関係する情報が見えるというふうに持っていくのは非常に一つ大事そうに思えてまいりました。
【川端主査】  今は分からないけれども、昔は結構そういうのは、指定校制がありました。この大学に流す、ほかには流さないという。向こうの効率を上げるために、ここだったらそういう人がいるかもしれないといって落としているのかもしれないですが。だから、JREC-INのようなものにボーンという話ではないのかもしれないです。民間にしたら民間の人事上の戦略があるし。分からないですけどね。でも、それも含めて少し実態を、安田先生が言われるみたいにやはりある程度数値的にみんなで理解しないと、何か話がふわふわふわふわあっち行ったりこっち行ったりしていると思いますね。
【宮崎委員】  有期の方の流動性を上げるために、例えば文科省が主導的に、転職サイトと言ってはいけないのですが、情報サイトをやはり明確に提示してあげるべきなのでしょうね、大学単位でやるというよりも。例えば大学に有期雇用でいたが、5年後に民間企業に行ってこうなった等。今、結構、人を採る戦略って、うちも人事部のような部署はとても頑張るのですが、そういう立ち位置で個別の大学に任せていると、非常に粒度がそれぞればらばらになってしまうので、例えばこういうパスもある、またこういうパスもあるといって、昔、ダイバーのときによく女性活躍の例をいろいろロールモデルで見せるというのがありましたが、有期雇用の人たちのロールモデルケースをやはり紹介してあげるということを、そこに行けば、自分の選択肢って、今見ているアカデミアでこのまま突き進んで何とか無期を取らなければいけないというような視野の狭さを、もう少し情報として提供してあげるというのは何かできるかもしれないですね。
【狩野主査代理】  そうですね。やはり学校生活の延長としてのアカデミアという、そういう感覚の人が陥りがちなのがきっとその辺りで、ほかの世界をまだ多くは見ておられないので、そこしかないと思う方々もおられるでしょう。また、学校生活の延長で褒められているからそのまま行きたくなるが、実際そのまま生きていけるかどうかについてはよく分からないものの頑張っている人もいるのかということを思います。であれば、1回そうしてまとめてある情報を見るようにという施策はありかと思いました。
【川田委員】  今の話を聞いていて思ったのが、労働政策の分野だと、例えばメンタルヘルス、あるいは正規・非正規の同一労働同一賃金など、政策分野ごとにポータルサイトを作って関連する情報を一覧性のある形で示しているようなことを結構やっていて、今の話も、個別の求人情報、あるいは奨学金についての情報提供ではないにしても、ある程度関連する政策等の情報を一覧性のあるサイトで示すというようなやり方は考えられると思いました。
【川端主査】  ポータルサイトもそうだし、次の有期雇用の人が無期のいいポストを探すって、昔は、ある意味では、そこのボスが紹介する、あるいはドクターのキャリアパスのときも、一時、あるエージェント、要するに、中途採用と同じだと思えば、エージェントが間に入ってドクターを企業に紹介していくという、そんな話だって可能だという話もあったのですね。ただし、マスが小さ過ぎてエージェントが商売として成り立たないという話で壊れていきました。
【川田委員】  やはり分野によるのでしょうか。とても直感的に言うと、そういうものを院生の方が使おうとすると、場合によっては指導教員からよく思われない等。
【川端主査】  そういうのもあったが、今はかなりそれはもう解除されていて、よかったというような、頼むから就活をそんなに長くやらないでというような。
【川田委員】  私も法律分野以外の研究領域のことはあまりよく分からないので。もしかすると、自分でキャリアを開ける可能性があるというのであれば、それを伝えてあげるというのはあるかもしれないと思います。
【川端主査】  今、民間だと、中途採用、Iターン、Uターンといった業者がたくさん出始めています。それが紹介する、あるいはプールを持つ等。だから、要するに、アカデミア側から民間に動くような、そんなエージェント的なものがそこに現れてくると、民間ももっとやるのかな。
【樋口委員】  今、ただ、専門ではないのですが、普通のエージェントが助教やポスドクの人を企業にというのは結構あるみたいです。
【川端主査】  そうですか。やはり製薬企業はやっている?
【樋口委員】  どうでしょう。私が知っている若い助教の人たちで、そのままアカデミアに進むのではなく、1回企業に行ってみたいと。さらに、一旦企業に行ってみた後、実際また大学に戻った人もいます。そういうエージェントに相談してみると、企業のニーズとつないでくれる、あるいは支援してくれるというのを身の回りで数件聞いたことはあります。
【川端主査】  やはりそういうものは発達し始めているのですね。
【樋口委員】  なので、もしかしてそういう数がどれぐらい増えているのかというのを、年を追って情報を集めるとよいかもしれません。
【川端主査】  そうですね。
【樋口委員】  私の回りだけでアカデミアから企業への異動を数件聞いたことがあります。逆に企業からアカデミアに異動した人も、例は少ないのですが、あります。ただ、大学に異動するときに難しいのが、助教、准教授というそれぞれの枠でどのくらいの業績と年齢という、年齢は書いていないのですが、目安はやはりあります。その辺の採用する側の何というのでしょう……。
【川端主査】  メンタリティーですね。
【樋口委員】  理解等があると、流動性が動いてくるような感じは受けます。
【狩野主査代理】  昨今思っているのは、やはり親と子供の数の比が、子供の数の比が減ってきているので、勝手に試せる人生を歩める人の数が減っているのだろうという気が、印象ですが、あります。昔の人に聞くと、2番目、3番目に生まれた人たちは比較的自由にさせてもらったけれどという話があって、それが最近そういう順番で生まれてくる方が減った、という話があるのですが、その結果として親子ともに「線路」から外れないことに対する希望が強い可能性は考えられると思うのです。
 であれば、どんな「線路」が今存在するのかということをどうやって知らしめるかということが、それにもし対応するのであれば必要な気がしています。そうすると、その中に多様性が幾らあるので、したがって、あなたがもしこの選択をした場合にも、その先もまだこれだけ多様性がある、可能性があるということを実例とともに示すことができるとよいと思いました。ただ、その情報の置き場所が、文部科学省というプラットフォームが本当によいのか、あるいはほかのところがそういう人たちに対してより信頼性が高くできるのか、ここは少し検討の余地が一つあると思います。
 あとは、同じ意味で、親役あるいは教師役をやっている人が自信を持ってそういうことを推してあげないとまた次に伝わらないという側面もきっとあるでしょう。そうした支える側の人たちも何か自信を持って支えられるような情報源がきっと必要だと思います。それは大学の先生に実は限らなくて、例えば高校の進路指導の先生方にもそういう情報が本当は行く必要があるでしょう。ですが、なかなか1か所で働いていると、そういう、今おっしゃったような情報等、そういうことが伝わりにくいというところがあるので、上手にやりたいですね。今ここで驚きが起きていたし、私も「そうなんだ」と思っていました。多分それが、ここに書いてあるいろいろな、御議論いただきたい点の根底に流れる一つの気がしますし、人材委員会でやっている博士人材を増やす話も、こういうことが根底にあるということを今聞きながら思っておりました。
【樋口委員】  異動について、私たちは理解していて、その先生も自分がやりたくて動いているのですが、それが若い人にどう見えるかというのは少したまに気になる部分もあります。その先生方が自由な自身の選択であるということも一緒に学生に届けたい。
【狩野主査代理】  自発的であって、強制されたわけではないと。
【樋口委員】  そうですし、例えば何かの期限が来て行ったわけではなくて、期限の途中だが、やってみたくて行っていると。逆に企業から入ってくる人が増えると、そういうふうな見え方が少し変わってくると思うので、今、大学から出ていくほうは何となく見えているのですが、大学への入ってきやすさのようなことは、少し大学の現状のルールで、さきほど言った年齢と業績のようなところの理解、例えば企業での業績を大学でどう活用してもらうか、のようなところが少しうまく動くとよいと思います。それはもしかしたら分野あるいは、文系と理系でもまた状況が違うかもしれません。
【川田委員】  法律の議論としては、自由な意思に基づく選択ができているかどうかというときに、有利なことと不利なことをしっかりと分かった上で判断ができているかどうかというのを見る、重視するというような考え方があって、何か今の話はうまくはまると思います。要するに、こういうところで有利な面があるので、こういう移動をしているということがしっかり分かるような形になっていることは、その選択を尊重することにつながるということです。
【川端主査】  今の話で、大学が昔みたいに学問だけをばんばんではなくなってきて、大学の機能自体が、産学連携もそうだし、地方創生もそうだし、いろいろなものが起こってきて、教育系だと実務家教員だとかいろいろなものがもともとから制度としてあったのですが、最近だんだん産学連携とか地方創生やり始めると、研究者が頑張って地方創生をやろうといっても、その間に入る人間がいないと無理なのです。そうすると、そういう実務的な人たちを大学の中で抱えるようになってきて、その割合が、今まではとてもマイノリティーだったのが、ある程度の数字、塊になり始めているという。
 そういうランだってあるわけで、そうすると、先生がおっしゃるように、民間から、論文だけでなく、本当に実務としてこういう事業を立ち上げた、あるいはこういうものをやっていたという、シニアだけでなく、もう少し若い人たちだって入ってこられるという、そんな姿がより露わに出てきても、流動性を高めることにもなるだろうし、形にもなる。評価の基準自体も、もうそっちのほうは完全に論文数でなく実務の話で今やっていますから、そんな道もある、あんな道もあるというのを示すのはそのとおりのような気がしますね。
【宮崎委員】  1年半ほど前に、転職サイトを使って産業技術総合研究所の職員を探そうとしていたことがありました。今の若い人は安定を希望はするのですが、転職に全然ちゅうちょしないですよね。だから、多分、今ボリュームゾーンとして考えなければいけない人たち、30代の人たちって、実は転職マインド。友達を見ればみんな転職をどんどんしているから、本当はできるはずなのですが、転職サイトを見るときに、大学の教員の人が登録しているケースなんてほとんど見ないのです。
【川端主査】  そうかもしれない。
【宮崎委員】  片っ端から調べました。我々は、候補者がいないかというので一生懸命探していったときに、たまたまある所から使ってみるかと言われて、見たのですが、転職サイトに出てくる人たちはことごとくもう民間です。民間の人たちは書くのですが、大学の人で書く人はいなくて、今海外にポスドクでいるが、戻る先を探すのに登録している人が1人いたぐらいで、アカデミアの人はほとんどいません。逆に、有期で、自分が替わろうと思っているパス等が見えていて替わるのであれば、転職サイトにどんどんかければ、今、人手不足なので、民間でも雇用はあると思います。でも、そういう選択をあえてしないカルチャーみたいなのが大学の中にはあって、それは上の先生のせいかもしれないですし。暗黙のね。アカデミアはすばらしいというようなカルチャーとか。転職サイトって、転職するとは何ぞや等、でも、民間にいる人たちはそれを平気でみんなやっていますよね。だから、そういうこともやれると思うと、実は案外すぐ仕事が見つかると思うのですが。
【川端主査】  さきほどの学校基本調査等やると、えいやで言うと、4%ほどが転職している。本当にそれが本当だとして、毎年4%転職していたら、10年たったら半分変わっているという話。だから、アカデミアは民間に比べれば、もっともっと転職が昔からずっとやりながら来ている。それを転職サイトを使わずにやってきています。
 知り合いのところの知り合いの知り合い、それがJREC-INというのが出来上がって、もう少し公開される格好になって。でも、確かに、民間に向かって転職サイトというのまでなかなか思いが行かないのか、あとは、この資料の中にあったポスドクはポスドクを繰り返す。ポスドクから2回目、3回、昔から同じようなことがずっと起こっている。いまだに起こっているという。よいか悪いか分からないですが、こんなような話もあるとは思います。
 安田先生、どうぞ。
【安田委員】  ありがとうございます。研究者が地方に入っていく、地域創生に行くのはなかなか難しいという話は、実際そうだと思うのですが、研究分野によっては精力的に行っていることも事実です。都市工学関連や生物多様性などの分野でも、結構長期で現場に住みついて現地の人たちとやりながら、町自体の価値観などが変容していくという現象が実際に見られています。ただ、場合によっては、若い人がそれを一生懸命やろうとすると、かなり時間と労力がかかることで、アカデミアでの論文業績に偏った評価では不利になりやすいという課題があります。この社会貢献へのプレッシャーは特に地方大学は強いため、地方大学で地域貢献への負担が大きくなりすぎることは、その後の異動がしにくくなるために地方と中央の人材流動での分断を強めていると思います。
 アカデミアにおける評価というものの在り方も、考えていく必要があるのではないかと思います。研究者自体の多様性をどのように把握し評価するのかというのはとても大事かと思いました。
 以上です。
【川端主査】  ありがとうございます。今の話、せっかく言ってもらったから。僕もそう思っていて。ただ、今、大学の教員にいろいろなことをやらせ過ぎていると私は思っています。とてもマネジメント能力の高い人もいれば、そうでない人もいます。その代わり研究がとてもできる人等いろいろなキャラクターがあって、それに一律にマネジメントしろ、地方創生しろというのは、それは合っていないと思っています。だから、僕は教学と経営は分離して協働する必要があると思っています。
 みんなが寄ってたかって、地方創生、産学連携とやる必要は毛頭なくて、それに非常にキャラクターが合っている人や能力がそっち側もある人はそっちに向かえばよいのですが、全員がやれというようなマネジメントの仕方をすると、不幸な結果になっている。
 時間はたくさん食われているのに、教育する時間も研究する時間もないのだが、結局そんなことをさせられている。本人も幸福になっていない状態というのが、今、大学の中で公平性ではないが、変な、不思議なそんなことが起こっていて、全員にやる必要があるといった話をしているから、そこはもっと特化していくようなマネジメントが起こって、それに特化したら特化した分だけ評価される。先生がおっしゃるような評価のされ方が出てくるような気がしますけれども。
 今、大学の機能自体が非常に多角化し始めているから、そういう人を大学として持つ必要がある。全員が研究者ではないという時代に入っているのではないでしょうか。それがいいかどうか分からないけれども。
【樋口委員】  博士を取った先ですよね。アカデミアの中でもいろいろなニーズがあるし。
【川端主査】  そうです。今のアカデミアの中のスタッフに対する話。
【樋口委員】  社会でも様々なニーズがあるし、大学の中でも博士を取った人のニーズは様々見せていくというような。
【川端主査】  そうだと思います。
【狩野主査代理】  なかなかこの有期雇用の場合それが難しいであろうということを思う点は、その人が有期の期間終わりを迎えるまでの間に、そうした自分がその時に追ってみたくなった新たな価値軸、例えば論文化よりも社会貢献の要素を優先するような生き方が、本当に有期雇用の先で自分の職を選ぶのに当たって評価に活用されるようになるかよく分からない状況があるということです。評価に活用されていない価値軸と思っているものにもし邁進した場合に、自分の将来はどうなるのだろうと思ったときに明快な答えがないという、そこがまた不安な人がいるのだろうと思ってはいます。
 それを一体どうできるかというと、例えば、選び方として、今の主流とは異なる評価の価値軸を掲げている大学、あるいは、ほかの職場がこういうのがありますよという情報がやっぱり要るのかもしれませんし、その辺りは考えてもよいかなと思いました。
 もう一つだけ、大学にいる人として思っているのは、多様であるべきことを僕も非常に言いたいのですが、多様であったときに、何で「ピン留め」するか、つまり何だけは共通である必要があるか、というところがまた必要な問いだと思っております。これも並行して考える必要がありそうな気がしています。つまり、例えば「科学者」といったら、ここだけはとにかく共通にしておかないといけない、ピン留めしておかないといけないが、ほかは何でもよくて多様がよい、というやり方が、きっとこれから必要なのだと思っています。が、それは一体何だろうかという。
 以上です。
【川端主査】  その辺は、博士というものの価値観みたいな話にもなっているかもしれないですね。こんな専門性だけでなく、クリエイティブさといったいろいろな話。いや、分からないですよ。分からないですね。
【宮崎委員】  でも、流動するときに、違う大学に移るということを考えたときにも、結局今の時点では論文しか評価ポイントを示せないではないですか。例えば、どこかの大学からある大学に移ろうとしたときに、審査にかかったときに何で評価するかって、間違いないのは、論文を上げておけば俎上に上がるというような。結局、社会貢献をこんなにしたということが、その応募がそういうものであればよいのですが。
 だから、評価軸もある程度大学の間でコンセンサスを得た評価事項を与えておかないと、ある大学は地方創生、貢献を十分判断するが、首都圏の大学で地方創生と言われたときに、いやいやと、うちは論文1本できる、あるいはサイエンスができる等というところがあったときに、やはり流動できないわけではないですか。
 だから、そこのところの評価軸というのはある程度そろえるというのだったら、まだ文部科学省としてやる政策としてはあるのかもしれないですが。
【樋口委員】  あとは、人数を決めておく。大学の中で今までどおりの論文で評価をする人数、あるいは、何か特別入試のような別の軸で評価する人数でもよいですが。
【宮崎委員】  AO入試のような。
【樋口委員】  様々な実務をできるような人の割合をある程度決めておいて、あとは大学ごとで決めるようにというような程度だと、実現できそうな気はします。
【川端主査】  ある意味、昔話と関係ないのですが、今、大学というのは安全パイを採りすぎている気はしますが。常識的な人、業績も外部資金も人当たりも、常識的な人を何となく採りやすい。そう思いませんか? 
【狩野主査代理】  「やばい」人を起用したいのかどうかについても、いろいろ議論が違いますね。
【川端主査】  一芸に秀でた本当に「すごい」というような人というのを、なかなか採るときついという。つい、おっしゃるように論文もそうですが、外部資金は取れていかと見るではないですか。結局オールマイティ型の普通の人を採っていく。つい、裏を見たら、これはボスがやったのだと思いながら、いろいろなことを見とおすわけですね。
 さっきの話ではないですが、有期雇用だとなかなか、地方創生は時間もかかるし人手もかかる、そんな短期間で成果が表れない仕事はできないということですが、同じことは植物分類学だってそうですよ。分類学等、フィールド系等ものすごく時間がかかって論文がなかなか出ない学問、ほかにも装置開発系など科学技術の発展にとって不可欠なものが消えていっているのも確かだとは思います。有期雇用が増えていけばいくほどいろいろな分野の弱体化が起こっている。今度、アウトカムの話に移していきます。
 有期雇用が外部資金で動けば動くほど、そういう話は、人を替えながら長期間やっているのかもしれない。ボスがやっているのかもしれないですが、本人にしてみると、なかなかその経験が積めないのかもしれないとは思います。
【狩野主査代理】  関連して、差し支えない範囲で宮崎委員に伺えればと思っているのは、この「その他留意事項」の最後のところにある内容です。
中小規模の機関においては人材を確保し続けておきたい、他方でより人材の側が「有名さ」か何かの理由で「集まりたい」ところは、流動性を「高めて」おきたいというような話がありました。これとさきほどの専門の話も関係はしますが、他方で、伺ってみたいのは、中小規模の機関において無期雇用にもしもっと増やしたいと思われたときに、宮崎先生が経験された内容で何か共有してもよいことはあるでしょうか。
 つまり、多くの職が有期雇用であるという、多分、しなければいけないと思って、みんながみんな有期雇用にしているという面もあると思う状況にある中で、一種逆行して、組織としてはほとんど無期にするということを進められたと理解しています。その御経験を通じて、こういう「人材をとどめておきたい組織」が職を無期雇用にしたいと思った場合に何か難しいことが起き得るかというのを情報として出しておいてくださると、そうした雇用形態の意味でも多様性が生まれそうですが、どうでしょうか。
【宮崎委員】  例えば、先ほどから議論になっているような、皆がオールマイティでなく、こんなことをやる人って、ある意味、人材ポートフォリオだと思います。各大学が持つ経営的視点でのポートフォリオで、この程度のプールとこの程度のプールというふうに言っていて、例えば、今、あえてそういう全てオールマイティで研究もやり教育もやりということをするよりも、得意分野、不得意分野を併せてポートフォリオを組んで、例えば、当面は、あえて人が行きにくい部分は無期雇用にする等。
 もっと研究活動でアクティビティを、競争力を発揮する必要があるところは有期雇用で回していくが、一方で、時間がかかる、あるいは人が行きにくいところは無期転換にすると、逆に有期から無期に、そちらがよくて、そっちのことをじっくりやるという人をとにかく無理やりにでも流動させる。一つの手としてはそういうこともあるかなというふうに思います。
 実は、有期雇用があった頃に、修士採用枠だけは無期でした。最初は人が来ないので。特に知的基盤みたいないわゆる標準化、あるいは法定計測、それから地質図を作るというところは人が来にくいです。研究者で、競争領域でないので。そこの部分はあえて修士で無期化で採っていました。そうすると、そこに流れる人が出てくる。
 一方で、アクティビティを担保したい研究競争領域のところは有期で、その実績が上がればポジションがアップしていくというような仕組みを分けてあえてつくるとすれば、経営的な視点からいけば、あり得る制度かと思います。
【狩野主査代理】  大学の中でいろいろな分野の方にお会いする仕事をしての印象は、それぞれが当たり前だと思っている慣習が、実際にはローカルルールであるのに、誰か、例えば大学本部や監督官庁が決めているからそうなっていると信じておられる方々が比較的結構おられるということです。
例えば、そういう意味でいうと、若い人の職は全員を有期にしなければいけないと思っている方々が、それが例えば文部科学省の指令であると信じて疑っていない、あるいは、大学全体の方針であると信じて疑わないということがありえると思います。
 しかし実はそんなことはなくて、随意である、あるいは、意図をすれば何とかなるということを、それもまた知らしめることができれば、あるいは、そういう内容がどこかの信頼できる発信源に載っていると、今おっしゃったような動きも進み得ると思った次第です。
【川端主査】  今のお話で、例えば、産業技術総合研究所の中だと、パーマネントでその部署に入ったが、もう少し経って、いやいや、この人そちらだと思って違う部署に異動させるという、それはやりますか。
【宮崎委員】  はい、やります。
【川端主査】  そこが大学と違うところなのですよね。それは本人が望まない限り動かない。
【宮崎委員】  難しいですが、でも、それは丁寧に、丁寧に。
【川端主査】  それは民間と似ていますよね。動かし方自体が。
【宮崎委員】  あなたはここに行きなさいという上からの命令だけではなくて、一応、説得というか。
【川端主査】  それはそう。
【川田委員】  説明して打診して、最終的に本人に同意してもらうということですか。
【宮崎委員】  説明して打診して。そうです。
【川端主査】  それは当然そうなのですが、大学ではなかなかあり得ないですもんね。
【樋口委員】  あなたは向いていないと、他者が決めるのではなくて。そう思ったときに、こういう道もあるというのを相談できる場所があるとよいのでは。どこかの大学にあったような気がするのですが、そういう相談できる場所、全然雇用に関係のない立場で助言できるというような。
【川端主査】  カウンセリング。
【宮崎委員】  キャリアカウンセリングは、うちは所内にありますよ。設置しています。
【川端主査】  でしょうね。
【樋口委員】  そういう窓口があると、大学内でも多分流動性が起こるのは……。
【川端主査】  起こるのでしょうか。
【樋口委員】  もしかしたら、本人も向いていないと思い始めたがどうしてよいか分からなくて、このままやっていこうと思っているケースもあるかもしれないので。そういうきっかけづくりのようなものはできるような気はしますね。
【川田委員】  ヒアリングしていて、そういう研究者の方に対するカウンセリングと、あと、職域を広げるための……。
【川端主査】  キャリア教育のようなものですね。
【川田委員】  それと、考えられる就職先でまだ人を雇っていないようなところに、こういう機会があると働きかけるような雇う側への働きかけと両方が課題としてあるというふうに思います。
【川端主査】  その話で、ポスドクを繰り返す人たち、それが悪いとは言っていないのですが、初期の頃にポスドクを何回か繰り返すと、気がついたら40を超えているという。それはその人にとって幸せでないのではないかとみんなが思い出して、あるところから、ポスドクは何歳まで等いろいろな話が出ました。それは単にその人たちを制限したいのではなく、その人たちが新しいキャリアを探してくれるために。
 キャリア相談室、あるいはドクター向けのキャリアのマッチングの会のときにポスドクも入るようになる等いろいろなことをしたが、ポスドクの人たちが動かなかったのです。やはりそちらは興味がないと。私はアカデミアだというような話の、何かとても、どこでできたか分からないですよね。分からないけれども、何となくそういうものがものすごい定着していて。
 だから、今の時代はもう少し変わっているのかもしれなかったら、先生が言われるようなカウンセリング等が機能するかもしれない。何度もやってみればいいと思いますが。
【樋口委員】  だから、成功例というか、こういう人もいるというのが、身近にはいないが、どこかに情報が集まっていると、知ることができる。こういうキャリアパスを積んでいる人も世の中にはいるという情報発信は大事な気がします。
【川田委員】  結構やるべきこと、できることはあると考えています。今回の参考資料の2-3の5-3で。無期転換者の雇用の状況を研究機関の側に聞いた回答として、機関として状況を把握していないという答えが圧倒的に多いというデータです。この辺の状況、実態の把握等、また、今のようなカウンセリングはその先の話で、現状、どういう人がどういう状態でいるというのを把握した上で、その先を考えるという話だと思うので、この辺りはまだ結構できることがあるのではないかと思います。
【川端主査】  この数字、そんなに詳しく見ていないですが、年齢層が上のほうの人も全部交ざっているのですよね。
【川田委員】  そうそう。その辺は確かにもう少し丁寧に。
【川端主査】  若い30歳代の人たちには、我々にしても、ぜひ何かしてあげたいと思います。50歳ぐらいになると、もういいかなという気がします。自分の考え方で来られているから、その人にごちゃごちゃ……。
【川田委員】  ただ、やはり雇用政策として見ると、40歳以上の年齢層で期間が満了で行き先がなくなってしまった人に対してどうしたらよいかというのは、ヒアリングした印象としては課題になるように思います。
【川端主査】  このアンケートを取ってもよく分からなくて。
【川田委員】  確かに年齢は分からないですね。
【川端主査】  10%しか返ってきていないし、一体、本当のところどう困っているのか。40歳あるいは50歳代の人たちの中で有期雇用の方々のこの動き方という。
 だから、このワーキングはゾーンとして40歳以下にしているので、交ぜるとまた訳分からなくなるから、比較的若い人ターゲットだったら、ぜひ手を差し伸べたいし、いろいろな支援をしたいし、もっと活躍してほしいしという。そこは間違いなく。
【川田委員】  ただ、つながっている話ではあると思います。要するに、実際に生活の問題が起きているかもしれないのは、もう少し上の層かもしれないが、40歳よりも前の段階でどういうことをするべきか等、現状プラスアルファのサポートとしてどんなことができるのかという話は。
【宮崎委員】  若干人材のポートフォリオの話をしましたが、うちは全部無期なので、あまり有期転換とかは関係ないのですが、やはり研究からポートフォリオ、力加減を変えるところで、今回、たまたまこの春にやった例として、所内公募というのをかけます。研究職の人たちで、研究現場で研究をしている人なのですが、職種転換をしませんかという公募を全体にかけます。それで、やはり応募してくる人がいます。そういうチャンスがあれば。
 こういう職種です。今回は広報活動だったのですが、広報活動に研究者の方のキャリアチェンジ、新しいキャリアパスをつくろうとしてそういうのをやったのですが、研究現場にいるのですが、結構若い人、40歳ほどでも手を挙げてくる人がいます。自分でいろいろな今のシチュエーションを考えて、今後を考えたときの違う職種として。
 なので、例えば、学内で、雇用費の問題は少し今置いておいて、人材活用していくという意味では、そういうのもありですよね。学内で今度はTLOをこれから勉強しながらプロになっていきませんかと、職種を公募しますよとあげると、手を挙げる人が出てくるような気もしますし。
 そのままの研究、先ほど樋口先生がおっしゃったように、どんなものがあるかが見えないので、そういうのを見せていくという、そのチャンスがあったとき、手を挙げないと、またある期間しかないので、なのですが、そういうチャンスをあげると、手を挙げてくる人がいるという現状は研究所でもやはりあるので。
 ということは、大学の学内でも、前おっしゃっていましたが、こういう職種で配置転換を希望しませんかというのをあげて、手を挙げてくる人をどんどん流していくということで流動というか人材ポートフォリオを変えていくというのは、大学でもやれるのではないかと思います。
【川端主査】  そういう点、URAやUAなのですよね。
【宮崎委員】  そうですね。
【川端主査】  だから、その人たちは、ドクターを出てぽっと入ってくるというよりは、ポスドクを何年もやりましたとか、助教、特任を何年かやって、もうよいと思いましたと言ってやってくる人たちだとか。それはやはり職種転換、自分でそういうものを。しかも、そういう人たちが活躍できるようなマネジメントというのも、今、大学に求められている部分であったりするので。
 だから、もっと大がかりになっていく。やはり事務職員のある割合をUA職に変えるべきだと思っています。大学は。大学のマネジメントこそ、教員だけが改革だと言っていなくて、事務職員だって同じように高度化して、だからこそ面白いアウトプットやアウトカムをつくることができる。
 こう思うと、すごい経営人材の集合体を大学の中につくるというのも面白い世界だと思って今やっていますが。でも、そういうもので、いろいろな価値等が大学の中でも見えるようになってくる。ただ支援者じゃなくて、本当に企画をして、戦略広報をやったり、国際をやったりという、アドミニストレーションをやる人たちというのがあってよいと思います。
【樋口委員】  ポスドク等でなく、場合によっては、一旦助教か講師程度まで行った後にそういうところに行ったほうが、大学全体のことが見える場合があるように思います。40歳を超えた人でも、もしかしたらとてもそちらで能力を発揮される場合もあるかもしれないですね。
【川端主査】  今採っている人の中には、コンサルの会社に勤められて帰ってきた人、あるいは、事務職だけれども入って、逆に言うと大学院に行く、UA職になりながら大学院に行くという人たちが現れる等、いろいろなパターンが生まれ始めていて。だから、新卒よりはそちらのほうが豊かになる。
 かといって、本当に出来上がった人を今採ってくるというのは、それはまた争奪戦になっていて、それよりは中でしっかり育てられるようなキャリアパスや育成を持って、そんな像も大学の中にはできつつあるような気がしますが。
【狩野主査代理】  行政と一緒に働かせていただける機会が多い者として考えることは、行政ができることは、仕組みや運用ルールなどを変えていくところと、それに関係したお金をつけて誘導するところがしやすいわけです。そうであれば、今の話をもし更に進めるとすると、どういうやり方でどういう対象の人に進めたらうまくいくだろうかというのは、多分、今日話をするとよさそうな気がしています。
 例えば、今、川端先生がおっしゃったようなことをやっている大学に何かの傾斜配分のインセンティブをつけるというやり方が最近はやりのやり方の一つだと思います。それから、何か新しい取組を始めるに当たって、幾つかのところを先行事例とするために公募的なことをやってというやり方がまた次にあるのだと思いますけれども。
 そういうのにうまく乗りそうな今日のアイデアは何でしょうか。例えば、さきほど、無期に変えていくところが誰かが決めたことかどうかということを聞いた理由は、それはつまり、そうやって仕組みあるいは決まりを変える対象なのかどうかということを知りたかったというのが一つあります。が、多分そうではないですよね。もはや個々の機関が実施すればよい話だと思っています。
 だとすると、個々にやることをより進めていくのであれば、そういう取組をしたことに対して、こういう成果を期待してやるのであれば、例えば、何かしらの補助はしますというような話になるのかもしれないです。
 あるいは、さきほどのキャリアサポートセンターのようなものをつくるという話だとすると、人件費をつけるというような話になって、でも、ありがちなのは、そんなに大きい額はつけられない、1人、2人等ぎりぎり採ることができるというお金がつくような話になっていくのだと思います。
こうした感覚で、どういうふうにしたら進むかはどうでしょうか。
【宮崎委員】  インセンティブというと、案外、マスの大きい大学はやりやすいのですが、小さい組織だとやりにくいのだろうと思います。結局、だから、大きい大学の人なんか、強者勝ちという感じになってしまうので、何となくそれでよいと思います。
【狩野主査代理】  何か工夫として内容が立っていれば、規模が大きいよりも小さいほうがやりやすいというか、試しやすいところはきっとあると思います。だから、その意味を強く捉えるような選び方ができればよいのだろうと思います。
【樋口委員】  新しい仕事を定着させていく期間というのは、どうしても一定期間、人件費を投入する必要があると思うので、インテンシブよりも人件費を投入するのが効果的のように思います。それは多分一定期間で、ある程度移行してきたら終わるのかもしれません。やはり年上の人が活躍しているのを若い世代の人たちが見るというのが、一番流れができるので、一定期間、どういう部署なのか、あるいは事務の人なのか、いろいろなパターンがあると思いますが、そういう新しい職に人件費をつける必要があると思います。
【狩野主査代理】  例えば、さっき宮崎先生がおっしゃったような所内公募か学内公募か分かりませんが、そういうものをする対象を新たにつくりたいので、それを人件費を学内かどこかで保証するのは難しいから、それゆえ新しい職をつくるということで、補助していただいたお金を活用してそれを実施するというような、そういう考え方ですかね。
【川端主査】  別に否定するつもりなくて、今、そういう活動って、基本的に外部資金型なのです。外部資金型で雇用するということは、有期雇用になってしまう。
【宮崎委員】  有期になってしまうのです。そうなのです。
【川端主査】  これを無期雇用にひっくり返すためには、事務改革が必要なのです。事務のポストをそういうものに振り当てていくという、その事務改革が入って初めて、それに無期雇用のそういう人たちがたくさん現れる。二、三人はどうにかなります。それを20人、50人、100人というオーダーにしようとすると、そこをいじらないといけないという。
 そこに行くためには、最初は、さっき言われた有期雇用でもよいから、お試しではないがいろいろな活動をし始めて、成果やアウトカムが出てきて、徐々に事務改革と連動し始めて、全国的な動きが出来上がっていく。それは一つの政策にはなるとは思います
【狩野主査代理】  非常に。だから、本気でそれをやるとすると、制度改革をするためのインセンティブが強力に必要ということになるのでしょうね。
【川端主査】  大学の機能が多様化しているということを受けたら、当然、そういう世界観でアカデミアが動いていかないといけないという、そういう気はしますよね。
【狩野主査代理】  あと、ここの対象は大学だけなのか、あるいは国研その他の研究機関も含まれているのかということも実はそこに関係してくる話で、どうしても大学に所属していると大学のことばかり頭に浮かんでしまいますが、そういう辺りはどうか、というのも考える必要があると思います。
 最初に、この議論の対象は万人単位だと、冒頭に言ってみたのはそういう意味もあります。インセンティブというか、プル型のようなやり方をやったときに一体何人が裨益するのかと考えると、あまりたくさんの数ではないとすれば、どういうところからどれだけ手をつけられるかということも少し思いました。
【川端主査】  話題を振ってみたいのですが、私の大学で調べた話があって、有期雇用は、5年間で採用されたとすると、何年間そこに所属しているかという調査です。それはすごく大切なポイントだと思っていて。
 5年任期だといったら、3年終わった頃から次のポストを探し始めるとこうやると、あ、できたと言ったら退職します。事業期間はあと1年半余ります。これどうするの。空けておくの? いやいや、人がいないとまずいと言って人を採ると、そうすると1年半の有期雇用のポストができます。だから、任期期間はどんどん断片化していきます。5年間ポストだったら、結構な割合でそこには1年間のポストが生まれる、あるいは1年半が生まれる等しています。またそれを採用すると、1年半の短期の有期雇用が生まれる等。このような断片化した1年半のような短期ポストでは何もできないはずなのにというような話をどこかで整理できると。
 例えば、5年なら5年走って、終わったら、セーフティネットか何かで次のキャリアパスを探すための1年間は面倒を見る等。その後3年もごろごろされても困るのですが、最長1年間はいろいろな資金だとかである程度の面倒を見て次のポストを探す。散り散りに断片化する任期というのがもう少し解消される方策も重要と思います。
 それはうちの大学でも起こっている話だし、多分、皆さんの大学でも、みんないろいろなところで有期雇用をやったら必ず起こっているのではないでしょうか。
【樋口委員】  経験者なので分かります。
【宮崎委員】  基金化のように次のときに送れないのでしょうか。
【狩野主査代理】  経験者的には、どうするとましだと思いましたか。
【樋口委員】  本当に何も分からず、そういうものだと思って、とりあえず2年でと言われて、はいと言って。
【川端主査】  ないよりましみたいな。
【樋口委員】  そうなのですが、それも若い間はよいのですが、年齢が上がって、周りが皆安定してくると、いつまでもこれサインしてよいのかというような不安はあったので、気持ちはとても分かります。また、5年というと、その前に辞める方が結構、実際見ていて多かった。
【川端主査】  絶対そうです。
【樋口委員】  私自身も経験から分かりますが、いつ次のキャリアのチャンスが来るか分からないので、来たときに乗っておかなければというのはどうしても発生します。
【川端主査】  義理と人情で5年までいますなんて、そんなことやっていたら大変。
【樋口委員】  5年後に必ず約束があるというのは絶対難しいのです。向こうも待ってくれない。
【川端主査】  向こうも空いているから。
【樋口委員】  というのは、どうしてもだぶついてしまうというところはあるかな。うまく研究費や人件費を次につなげる……。無論セーフティネットもそうですし。
【宮崎委員】  プールして次のプロジェクトのところに……。
【川田委員】  結局、やはり途中でもいい条件がある等動くのは、そういうものだと思うので、何とかしようと思ったら、結局、任期いっぱいまでいるほうがよいキャリアになるような状況をつくり出すしかないですね。
【狩野主査代理】  そこを、有期プロジェクトで雇用される方々、その人件費の考え方について変革が必要だという議論かもしれない気がします。では代わりにいい案があるかというと、今すぐには思いつかないのですが、しかしながら、何かしらそういうことは必要ということですね。
 つまり、プロジェクトの部品として人を考えるのではなく、人は人でまず生きているのだから、その人の力を活用させていただく期間が一定あったとして、プロジェクトが終わったときに、その人は次にどういう活躍をしてもらえるかということを考えるようなお金のつけ方が必要だという意味ですよね。きっと。
【川端主査】  有期雇用もいろいろなサイズがあると同時に、何となく5年とか3年とか奇数年のようなものが多くて。偶数年より。要するに、そういうマネジメント、事業自体が3年事業であったりプロジェクトであったり、5年プロジェクトであったりと、こういうような短めのものをどうハンドリングするのか。
 本当だったら、事業は事業の5年なら5年で成果をしっかり出すような、人も含めてやる必要があるし、一方で、人に立ってみれば、1年でできる仕事って、そんな大変なものはないぐらいだけれども、5年だったら、どうにか面白い仕事、論文を書ける等いろいろなことができると思うと、やはり3年以上のプロジェクト期間はそういう有期雇用には確実にあるべきという、そんな話も整理ができたらいいような気はするのですが。
【樋口委員】  先ほどプラスアルファ1年という話があったと思いますが、それは5年の人にプラスアルファ1年もよいのですが、例えば、5年のうち3年終わって2年やった人に、その2年の人にプラスアルファ1年でも3年になるので、両方の意味でよいと思います。
【川端主査】  おっしゃるとおりですね。
【狩野主査代理】  一種の費目間流用みたいな感覚で、プロジェクトの趣旨としてはあまり、説明が難しいが、でも、人の活用という意味で見ると、プロジェクト間で人件費だけは少し流動性を持たせられる可能性があります、というような決まりがもしあれば、少しよいでしょうか。
【川田委員】  何か1つ、前任者がいなくなって短い任期にならざるを得なくなったとき等そういう場合には、何とかならないか……。
【川端主査】  それってプロジェクトを回している人間にも楽になります。悲壮感漂いますものね。大きいプロジェクトを回していると、これ切れてしまうというような。ここに雇った人どうしようというような。
【狩野主査代理】  はい。せっかくすてきな人が来てくれたのに。
【川端主査】  そのときに、あと一年例えば隙間が空いてもいいですと言われたら、少し楽になるのですが。
【狩野主査代理】  それは一つ行政側に考えていただき得るポイントかもしれない。
【川端主査】  制度論としてね。
【狩野主査代理】  特出ししてみました。
【川端主査】  一方で、学内でそういうお金をどうマネジメントできるかという。基金化にしても何にしても、何かそういうものがあっても。有期雇用はなくならないし、えいやで言えば、無期雇用と同じ人数程度有期雇用がいるという、今の、それは大半が外部資金が大きくなっていっているというものを受けた人の動きであって、だからこそ、そこでも十分成果が出るし、渡り歩くことのすごい経験を若い人を中心にできるのであれば、そのときに、安田先生が言われるように、不安だとかそういうものをできる限り払拭できるような環境をつくってあげるための制度って幾つどんなものができるという話にこれからなっていくのだと思います。
 その一方で、最初の宮崎さんが言われたみたいに本当にフローとして成立しているか。無期雇用の行った先が崖だったという話でなくて、確かに、フローとして若い人のフローが行ったときに、次第にパーマネントに移っていくことができる。パーマネントのポストがある程度あって。どこかがあまり大きく膨らむのはおかしい話なのです。変に膨らますと、先がなくなるのに、一気通貫のストーリー、もしくは、多様化するための外に出ていくストーリー、そんなもので全体が、マスがバランスしている必要があって。
 もっと言えば、それが若い人たちにも見せたい姿ですよね。安心して。あなたはどうか分からないけれども、全体として安心してという。
【川田委員】  まさにそうですね。雇用期間としては有期だが、キャリアがつながっていくのかということを、まず、実態として把握するのが最初ではないかと思います。
【川端主査】  なかなか難しいのは確かなのですが。
【川田委員】  そこのところは、研究者という、かなり高度な専門性がある働き方の話だということで、この議論の最初のときにも、有期だが一般的な正規雇用の労働者とは少し違うところがあるということがありましたが、キャリアをつくっていくことの大切さは、恐らく一般の有期雇用以上に大きいところがあると思いますので、その辺りが雇用期間としては区切られていても、あるキャリアがこう描けるのだということを示す必要性はより大きいところだと思います。
【狩野主査代理】  そうですね。プロジェクト雇用に関係しては、プロジェクトの中に所属している個々の人について、その人たちのプロジェクト目的とは別の自発的な、チャレンジングな活動を奨励・支援できるような方策というところにも関係していると思います。そういう議論が幾らかあったので、エフォートの割き方をプロジェクトのみでなくてもよいという言い方になっていますが、そこも考え方が、今の話で要するに、人を軸として見たときに、どういうやり方がよりよいか、というのは考える必要がありますよね。
【川田委員】  確かに。さっきライフイベントへの対応という話が出ましたが、恐らく年齢的には、研究者としてのキャリア形成についても同じようなことで、まさに、自分の従事しているプロジェクト以外にも研究の幅を広げる機会があるというのは1つだと思います。分野による違いはあるのだとは思いますが。
 キャリアの可能性はありうる選択肢を見せてもらいながら、自分なりの選択をしていくことができるようにということかと思います。少し話としては抽象的ですが。
【狩野主査代理】  確かに。そうすると、調査の方向で、統計的な調査のほかに、そういう事例研究的な調査が多分必要なのだろうということを、今、きっと話に出ていた気がします。どの時代か分からないけれども、どこかの「常識」とされているものではない生き方がどれぐらいあり得るかということ。それから、一体何が常識かというのは、否定するだけでないかもしれませんが、でも、自分が常識的でないと思っている人の事例を集めていけばよいかもしれません。
 あるいは、プロジェクト目的に縛られたことによって何かが制限された気持ちがある例が一体どういうところに存在しているか。そういう人が一体何の制約条件がもう少し変われば、よりクリエイティブになれるか。要は、何か新しいことを考えつくのが研究組織の仕事の一つの重要な役割だとすれば、その役割にどういうときにブレーキがかかるのかということを調べるというのも、もしかすると越え方としてあるのかもしれないということを今思っておりました。
 樋口先生、どういうときにブレーキがかかった気がされますか?
【樋口委員】  お金のかからない短くて結果のでる研究テーマと長くやりたいものを常に2つ抱えていないと生き残れないのではないかという気持ちを、若い頃に長い間持っていました。今思ったら、もう少しひとつのテーマに専念できればよかったという気はします。
 自分自身の研究費を継続しつつ、雇用されているプロジェクトで求められることも進めないといけないので、両方抱えることになります。個人の研究費とプロジェクトとしての成果報告の両方をうまく回さないといけないという塩梅を常に考えないといけない状況だった気はします。
 雇用されるプロジェクトは変わっても、職場は、私はたまたま運よく同じ研究室だったので、ラッキーなほうではあると思います。本当に雇用が切られたということはなくて、一応、1年半等短い期間のプロジェクトであっても次があったので。ただ、そのたびごとに研究テーマはぶつぶつと切れていた印象はあります。
【狩野主査代理】  そういう意味でいうと、安田先生はより移動をたくさんされたし、ライフイベントも経験された方ですけれども、せっかくですから何か追加ありませんか。
【安田委員】  私は、出産が任期なしのPIになってからで本当によかったと正直思っているところがあります。生物学的にはリスクの高い高齢出産にもなったのですが、身分が不安定なままですと妊娠中、産前産後の精神的に不安的な時期に自分の就職のことまで考えるのは非常に酷でつらいと思いました。実際、今、若手の30歳前後でポスドクをやっていて、有期雇用でお子さんがいる女性研究者の人たちからお話を聞いていると、本当に不安で、自分が先に子供を産んだこと自体が、自分の選択肢として間違っていて、自己責任で悪いことをしているのに、キャリアも続けたいが、能力も自分は足りていないのではないか、あるいは業績も上がっていないのではないかと本当にすごく深く悩まれている人が結構いるということを思って、見えないところで苦しまれ、道が閉ざされてしまっているというのを強く感じました。私もPIゆえに出産イベントは、周囲の先生方や研究室の学生にかなり負担をかけてしまった部分などは非常につらかったですが、就職が閉ざされる心配がないことは救いでした。
   先ほど、セーフティネットとしてのプラス1年の話も少しありましたが、精神的な安心感というものをもう少し与えてあげられるようにしたいというのは強く思っております。多分、安心できないような状況になると、研究自体に集中できなくなってしまって、それ自体でその人の能力が発揮できないという状況は起きているような気がすると思っています。
【狩野主査代理】  ありがとうございます。安田先生が今おっしゃったようなことをヒアリングで聞くタイミングというか、そういう御経験のあるかたを呼びそびれたところもあって、今の話をしていただくとよいと思ったのですが。
 医療出身者として知っていることとして、もし子供を持とうと思ったときに、生き物としての上限の年齢は当然ありますよね。それで、それとの兼ね合いが今のような状況で邪魔されるというか、うまくいかなくなってしまうというのは非常に社会の構造として問題であると僕は思っています。それをうまく越えるために一体ここの委員会として何ができるだろうというのは非常に思っていたところなのです。
 それを代表できる方になるべく入っていただこうと思ったのもあったのですが、そういう意味で、ぜひ、今の感覚が少しでも改善するような政策的な動きができるとしたら何かというのは、お考えがあったら教えていただきたいわけです。どうでしょうか。
【安田委員】  私ですかね。
【狩野主査代理】  ほかになかなか代表できる人がいないので、よろしければ。
【安田委員】  私が長い間地方大学にいたときに感じていたことは、特に近年、若い人は都会から離れたくなくて、都会の私立大学のほうが地方大学よりも人気な傾向があります。研究者の世界になるとさらに、情報が集まりやすい都会、あるいは研究環境が中央の大学に集中していて、地方大学で特に旧帝国大学ではない大学で公募をやっても、15年前と比較しても、ほとんど人が応募してこないということが起きています。
 一方で、私は宮崎大学でテニュアトラックをさせていただいたのですが、テニュアトラック制度に育ててもらったと感じています。
 テニュアトラック制度で、地方大学が若者を育ててくれる場を提供してくれていることを認識されるように制度を持っていくのも、私はとてもよいのではないかと思っております。一方、地方大学は、地域貢献しなければ地方大学の存在がなくなってしまうということにとても焦りを感じているので、地域貢献をしてくれそうな人を選ぼうとする傾向があります。地域に住んでいることで地域貢献は自然と生まれてくることもあるので、少なくとも入口では、自由な研究をやらせてくれる環境をあえて地方に投資してつくるというのは1つよいかと思います。
 さらに、若手の研究者をペアで連れていけるようなデュアル雇用が実現するとよいと思います。それをもう少し地方大学で推進できるようにバックアップというか、システムや制度があると、地方でも研究職をし続けていきたいという人たちが地方にも積極的に移り住んでくれて、地方大学や地方そのものを盛り上げるきっかけになるのではないでしょうか。 無論パートナーが研究者とも限らないので、それで全部の人が救われるわけではないことは課題として残ると思います。
【川端主査】  安田先生、もう少しお話……。今のパターンというのは非常によく分かると同時に、もう一個、働き方自体がもっと多様な格好になったらいかがなのでしょうか。要するに、一旦職を辞してもまた戻る、あるいはあるタイミングはもっと軽い仕事をしていて、それが動けるようになったときに、もっと頑張れるようなフェーズでそういうポストがある。
 それはパーマネントか有期雇用かは、それは分からない。全部が無期だったらよいのですが、時限的なお金の話まで考えると、いろいろなタイミングで活躍の場が提供できるということが、地方で例えば非常に起こっていたらというのはいかがですかね。暮らし方……。
【安田委員】  それは1つだと、非常にありだと思います。実際に宮崎大学にいたときにも、非常に優秀な研究者の方が、まず夫がテニュアトラックで入ってこられて、早上がりしてテニュアになって、その後、ちょうど子育てをしていて1年半ほど研究職から離れていた妻が、優秀な方だったので、またテニュアトラックに入るという感じで、2人とも優秀な方を採ったというような例もありました。
 個人的には、研究職は、分野にもよりますが最先端のことから1回外れて1年間、2年間とブランクが出てくると、技術も知識もどんどん更新されてしまっていて、焦ってくる部分もあると思います。この辺りは個人によっても感じ方が違うと思いますが、選択肢としてそうした仕事への緩急を調節できることはありがたいと思います。
 この焦りなどの部分は一般論でなく個人的な意見だと思います。
【川端主査】  いえいえ。いろいろなパターンがあってよくて。先ほども少しお話ししたように、大学自体が多様になっていて、中での活躍の形も、いろいろな形がこれから出てくると思います。今まで一本道のような話が多かったのですが、1本でなく、いろいろな道があって、フラクタルではないですが、時々現れたり消えたりという話もあってもよくて。
 その人の中に1本の道さえあれば、それが大学に現れる、あるいは企業に現れるという、それを受け取る大学側のキャパシティのような、一律の採用試験の何たらでないやり方というような話があると、若い方にとってはそれも安心な道につながるのでしょうか。
【川田委員】  今の話は多分、育児・介護休業法の制度が大学にも適用されるので、休業は無論できるし、あと時短勤務等最近はいろいろな両立支援の仕組みがありますが、それと研究者としてのキャリアを両立させていくやり方、場合によっては法律で定めている一般的な制度とは何か違うやり方があるのかということと、いなくなった部分をどうカバーしていくのかということを併せて考える必要があるということかと思います。けれども、実際、ライフイベントの中で特に出産や育児で研究キャリアを中断される事態を防ぐというのは大事なことだろうと思います。
【川端主査】  僕はそんな言える立場でもないのですが、つい昔――昔っておかしいですね。私は昔で、あなたはまだお若いのですが。つい一本道で考える。これしかない一本道という。なんだけれども、年を重ねていくと、いろいろな道の在り方が見えてきたり、いろいろな生き方があって、そこに楽しさが起こったり。僕みたいに研究一本だったのが、マネジメントに入ってまた研究に戻って、またマネジメントをやって、最後、営業をやっているような気がしますけれども、それがまた楽しい世界観を持っていたりと、年を追うたびにいろいろなものが出てきたり消えたりしている。でも、それがまた活躍できるような場がないと。
【川田委員】  今の育児・介護休業法の話って、女性だけの話ではなく……。
【川端主査】  男性もね。
【川田委員】  男性の育休を進めていこうという。男性にとっても。
【川端主査】  安田さん、どうぞ。
【安田委員】  ここで言う話ではないのかもしれないですが、学会の男女共同参画のシンポジウムで衝撃だったのが、女性研究者は出産・育児を経ると、9割近くが自分の専門を変えざるを得なくて変えているという事実がありました。かなり制約が大きくなって、生き残っている人は、皆それなりにフレキシブルにやっているというのもあるのかと思います。政策を考える上では、男女問わず育休やその前後の働き方の量と中身の両方を見ていく必要があると思います。
【川端主査】  ありがとうございます。
 今日は再開というところで、皆さんからいろいろな機軸でお話をしていただいて、今一度整理した上で、今後どう展開するかという話につなげたいと思います。今日は時間的にこんなところですが。
 事務局より最後に事務連絡をお願いします。
【對崎人材政策課長補佐】  本日も御議論いただきましてありがとうございました。
 次回のワーキングについては、6月12日を予定しております。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成の上、委員の皆様のお目通しの上で、文部科学省のホームページに公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【川端主査】  それでは、これをもって閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
 

―― 了 ――

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