人材委員会 研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループ(第3回)議事録

1.日時

令和6年2月26日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

科学技術・学術政策局局1会議室及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. 研究開発マネジメント業務・人材に係るヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

 小泉委員、稲垣委員、桑田委員、重田委員、杉原委員、高木委員、野口委員、正城委員

 

文部科学省

 生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会 研究開発イノベーションの創出に関わる
マネジメント業務・人材に係るワーキング・グループ(第3回)

令和6年2月26日

 
 
【小泉主査】  では、定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るワーキング・グループの第3回を開催いたします。
 本日の会議は、冒頭より傍聴者に公開していますので、よろしくお願いいたします。
 本日は8名の委員に御出席いただいており、定足数を満たしております。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に、まず、本日の委員会の開催に当たり、事務局から注意事項と資料確認をお願いいたします。
【川村人材政策推進室長補佐】  事務局でございます。本日の会議は、対面とオンラインのハイブリッドでの開催となりますので、対面で御出席の委員は、御発言の際には挙手または名立てなどで御合図いただき、オンライン御出席の委員は挙手機能により挙手ボタンを押していただき、主査より指名を受けましたら、お名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等がございましたら、対面で御出席の委員は、会場の事務局にお声がけいただき、オンラインで御出席の委員は、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 資料につきましては、Zoom上での共有も行いますが、会場ではお配りしておりますので、各自お手元で資料を御覧ください。
 それでは、資料確認をさせていただきます。事前に送付させていただいた資料としまして、議事次第、資料1から資料4、参考資料1でございます。議事進行の過程で不備等がございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上でございます。
【小泉主査】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、ヒアリングに移りたいと思います。これまで、第1回でファンディングエージェンシーや日本全体の話をお聞きし、第2回で桑田委員をはじめ、大学における研究開発マネジメントの考え方、執行部サイドの話をお聞きしてきたところです。今回第3回ということで、産学連携、知財、オープンサイエンス・オープンアクセス、医療系URAという個別の観点で、業務と人材という観点で、4件ヒアリングをさせていただければと思っております。
 まず正城委員から、研究開発マネジメント人材が果たしている役割と人材育成、大学技術移転協議会(UNITT)さんの関連ということでお話をいただければと思います。
 では、早速ですが、正城委員、よろしくお願いいたします。
【正城委員】  では、お話しさせていただきます。今日は、主査にお話しいただいたように、大阪大学ではなく、UNITT関連のお話をしたいと思っております。
まず、大学技術移転協議会というところは、いわゆる共同研究や特許等を中心とした技術移転のところを担当しておりますが、そうしたことが何につながるかという話を最初にさせていただければと思っております。
 2ページ目、これは先日発表された第6回の日本オープンイノベーション大賞の資料です。最初、阪大の件で恐縮ですが、こちらは大阪大学や、例えばアース製薬株式会社や、あるいはベンチャーといったところが受賞対象になっています。もともと企業がお持ちの除菌技術について、どのような科学的根拠を基にそのような現象が起きるのかということを大阪大学と共同研究を始めたというところがきっかけです。その原理を解明したところ、様々な分野に使えるようになったということで表彰いただいたものと認識しております。その原理を解明できたことで、活性化具合、酸化の制御の強度を上げたり下げたりすることで、左下に記載したような感染制御から、環境・エネルギー分野としてギ酸を製造するといった非常に広範な応用範囲で使えるところまで行ったという事例でございます。
 次以降は他大学の事例なので、資料に書いてあること以上のことは御説明できませんが、科学技術政策担当大臣賞と文部科学大臣賞を紹介させていただいております。科技大臣賞は、企業でドロップした創薬の案件を、京都大学等のシーズを連携しながら、あるいは、AMEDや官民ファンドである京都大学のベンチャーキャピタル等もサポートして創出したという事例が表彰されています。文科大臣賞は、理化学研究所や医薬基盤・健康・栄養研究所といった研究開発法人の成果がソフトウエアとして、おそらく研究用のツールとしてつくられていたのだと思いますが、それをフリーソフトとして公開するとともに、さらに商用ソフトとして、おそらく様々なサポートがついているのだと思いますが、実際に使われるようになった例になっております。
 次のページ、UNITTでは年に1回、様々な情報、データを収集分析してサーベイという冊子として出しているのですが、そこでどのような製品がアカデミア・TLOの貢献で世の中に出たかということを書くページがございます。再生医療に使われるようなものや、右下にあるように背中のストレッチに効果がある枕といったものとか、左下にあるような照明の技術等、こういった実際に使われるようなところまで結びついた製品を紹介しています。
 ということで、研究開発マネジメント人材の中に、産学連携や技術移転の部門も関わってくると思いますが、アカデミアの成果が世の中に使われるという一般的によく言われていることの例としてお話いたしました。
 では、どのようなところをやらなければならないかということで、6ページに模式図的に書いたものがございます。一番下に、左から右に技術の成熟度という形で書いておりますが、製品・サービスになるところまでにその成熟度が上がるというふうに仮定すると、一般に基礎研究、応用研究の部分を含めて、狭い意味でのアカデミアの領域というのは、左側の初期のところにいるかと思います。論文や実験データはこれまでも様々なアカデミアから世の中に出されています。それらが、一番上の紫のところでいきますと、既存企業が論文の情報で成果として活用する場合もあると思いますし、共同研究という形で資金を投じて連携しながら技術を移転していって、最終的に製品・サービスにするというところもあるかと思います。その下にGAPというのが3つ書かれておりますように、既存企業でも、例えば論文や特許等々の情報だけではまだデータが足りないということがあるかと思います。そこに共同研究という形ではなくて、何かあと一押しが要るとか、あるいは企業も必ずしも開発をするところだけではないので、動くものとかPoCが取れたものを用意してほしいという場合もあるかと思います。新規のサービスの場合には、最下部のようにそもそも既存企業をベースにしないというところもあるかと思います。
 そうしたところを埋めなければ右につながっていかないので、中身として、7ページに記載した通り、GAP FUNDと呼ばれるようなものや、JSTやNEDO、AMED等を中心とするような様々な資金であったり、あるいはベンチャーという形で事業化を目指すものや、そこをサポートするTLO、先ほどの例でもあったようにベンチャーキャピタルのようなプレーヤーであったりというものが出てくるのかなと思います。こうしたところの活動が、狭い意味のアカデミアの領域に加えて、技術移転、TLO等の活動として、研究開発マネジメントの中に位置づけられるのではないかと考えております。
 次のページ、いよいよUNITTですが、正会員として機関を会員にするような形になっており、大学の産学連携の部隊や、研究開発法人、TLOが中心です。東工大の益学長に現在会長を務めていただいています。
 下に沿革を書きました通り、この団体は、TLO協議会という形で、当時、文部科学省の承認TLO14機関で設立されました。その後、名称変更があり、産学連携本部、知財本部等が整備されていった時期に大学も参画し、それとほぼ同じくして2004年に法人化されて、さらに名称変更等もあって、現在に至る形になっております。現在も大学だけでなくTLOも重要な会員機関として活動しております。
 10ページをご覧ください。委員会が中心になって様々な活動をしておりますが、全体を取り仕切る企画運営委員会の下に、人材育成を主に担当しているグローバル人材育成委員会と、アニュアルカンファレンスという年1回の大きなイベントや他機関との連携を担当しているネットワーキング委員会と、途中で申し上げたサーベイというのを出している調査広報委員会がありまして、それぞれ担当理事や委員長を置いて活動しております。
 今日は人材育成関連を中心に残りを御紹介したいと思いますが、文部科学省の産学連携等実施状況調査のデータも使いながら、さらにUNITT独自の調査を各機関に協力いただいているサーベイ関係から、今日は時間の関係で2つだけデータを御紹介したいと思います。
 11ページは大学の産学連携部門の役割別スタッフ数の年推移ということで、◆で示す事務から、一番下の×で示す大学発ベンチャー支援まで、それぞれが伸びていっておりますが、これは足すとおそらく2006年に比べて2倍ぐらいにはなっているかと思います。これだけ関連する活動がアカデミア間で必要とされてきて、かつ必要な予算も各機関が準備しながら整備していっているところが見てとれるかと思います。大学知的財産本部整備事業というのが2003年から5年間、各大学の人件費に使われたと思いますが、その後、共同研究や受託研究の間接経費、戦略的産学連携経費などを活用して、いろんな大学、アカデミアが体制を整備していっているということも背景にあるかと思います。
12ページは知財等の収入の合計が書かれていて、こちらも伸びていっていますが、この中で□で示したランニング・ロイヤルティーも特にここ数年、また伸びてきている状況です。ランニング・ロイヤルティーというのは一般的に、製品の売上高に応じて契約で定めた実施料率で支払われる実施料ですので、これが立ち上がってきているということは、取りあえず知財の契約をしたということではなく、アカデミアの成果が世の中に出ていっているという指標にかなり直接的に結びついている数値が増加しているということになります。
 これらのように、具体的に共同研究だとか知財の活動そのものの説明は割愛しておりますが、研究開発マネジメント人材の一翼を担うものとして実際に効果が出てきているということをグラフとして見ていただけるかと思います。
 ではここからは、実際どのような人材育成に関わることをしているかというのを幾つかの事例で御紹介したいと思います。
 1つはアニュアルカンファレンスということで、昨年は北海道大学で実際に対面のみで開催しました。右側にワークショップをご紹介していますが、10名ぐらいずつのグループに分かれて、知財や共同研究、ベンチャーといったところの具体的なディスカッションをするような会合をしているほか、14,15ページにあります通り、具体的な実務に関わるテーマごとに2時間ずつのセッションを16個設定しています。その年の重要なトピックについて、会員から募集したテーマに基づいてセッションを組み、大体1時間がスピーカーの話で、残りの1時間は全部質疑応答という構成でやっておりまして、1時間の質疑応答、質問が止まることがないという状況です。大学技術移転協議会という名前からも分かるように、これは学会ではないので、実務者が現場の課題を持ち寄って情報共有するという、人材育成的な側面が非常に強いかなと思っています。最近では、産学連携のトレンドとか、マネジメント系とか、あるいはベンチャーとかデータライフサイエンスのように、分野に特化したような議論もしております。次のページが2日目のもので、これまでにあったものでは、そのほかに利益相反とか間接経費の問題とか、新株予約権でライセンスをするとか、そのようなトピックも議論されてきておりました。
 16ページがLicense Associate研修ということで、これは大学で出てきた発明をどのように認定して、権利化を図ればいいかということを進めた上で、具体的に企業に提案していくところまで、ロールプレーの形で一連の流れが学べる2日間の研修になっておりまして、20名から30名ぐらいで開催しておりますけど、毎年好評いただいていている研修です。
 17ページが「契約のいろは」ということで、これは3年ぐらい前に始まったものになります。産学連携とか技術移転では様々な契約を締結していくことになりますが、下の表にあるような、契約の基本から始まって、秘密保持契約やマテリアル・トランスファー・アグリーメントと言われるものから共同研究、それから知財でいくとオプション契約や実施許諾計画といった様々な契約が必要になりますが、そうしたものを実際に契約の条文を見ながら研修するコースになっております。
 これらのように、例えば法律や知識に関することは、本や特許庁系の様々なセミナーもあったりすると思うのですが、UNITTに関していうと、実際の現場で必要になるプロセスを実際に担当している者同士で共有しながら進めるというのが、人材育成の特徴かなと思っております。
 18ページにはその他の活動を紹介しています。チームビルディングというベンチャー関連の研修や、「新:交流タイム」という定期的にざっくばらんにお話しするような会合等も取りそろえながら活動しています。
 最後になりますが、関連のお話として、国際的に競争力のあるアカデミアとして、質が高くて多様な研究を推進するということは大前提だと思います。その上で、研究開発マネジメントについてこれから議論するのは、「研究力強化」は狭い意味でのURAの最初の目的・範囲だったと思いますが、それのみでよいのかということや、では我々が議論するそれらのものはなぜ必要なのかといったような視点が必要かなと思っています。その上で必要な機能や仕組みが何かということを議論した上で、特に技術移転や産学連携は、大学の中で閉じている話ではなく最終的に社会に使われるという部分なので、社会との関係を考えたときに、政府やファンディングエージェンシー、産業界というのは議論されていたと思いますが、それ以外のここに記載したような属性の方や組織についても、意識しながら設計していく必要があるかなと思っています。
 最後のこのページは個人的な見解で、UNITTの見解ではございませんけども、私からは、主に技術移転、産学連携として、UNITT関連の人材育成のところを中心にお話をさせていただきました。
 以上です。
【小泉主査】  正城委員、ありがとうございました。
 今日は4件のヒアリングを予定していますので、このままもう1件聞いた上で質疑応答としたいと思います。
 では続きまして、コベルコ建機株式会社技術開発本部知的財産部知的財産部長兼知的財産グループ長の田中精一様から御発表をお願いできればと思います。「企業視点からみる、産学連携を推進する人材」というタイトルでお話をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  よろしくお願いいたします。
では、「企業視点からみる、産学連携を推進する人材」ということで、コベルコ建機の田中からお話しさせていただきます。本日はどうもお声がけいただき、どうもありがとうございます。
 簡単な自己紹介ですけれども、田中精一といいます。広島大学のほうでは学術・社会連携室の客員教授を務めさせていただいております。少し変わった経歴としては、20年ほど知財部門在籍後、10年弱ほど新事業推進部というところの立ち上げに関わりました。23年の4月に知財に戻ってきたところです。外部活動では、日本知的財産協会で、特にライセンス委員会中心に活動し、こちらの立場でも少し産学連携の議論はしておりました。他に経済産業省、文部科学省の「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン追補版」の委員を務めた他、直近では内閣府の大学知財ガバナンスガイドラインの検討会の委員を務めております。
 最初に、広島大学コベルコ建機夢源力共創研究所について簡単に紹介します。こちらは私がいろいろ考えてきたことの一部が具現化しているものです。
 初めにお伝えしたいのが、弊社が広島大学で最初に企業名を冠した共創研究所を立ち上げたというところでして、そのために、まず制度設計から検討、提案、そして議論させていただきました。もちろん客員教授の身分もありますので、その立場でということでございます。
 6ページ目、共創研究所の説明になります。組織対組織と書いていますが、あくまで地方国立大学と地方企業の連携といういう特徴的を活かした制度設計をしています。自転・自立性と旗印、産学両者にとってのブランドとなることを目指しています。7ページ目に書きましたが、設置目的として、下から2番目の「学問と教育の進展と産業を進歩させる」、ここに非常にこだわってきています。
 8ページ目、研究所の位置づけですが、全学組織の下に共創研究所がぶら下がっており、部局ごとに共同研究講座や共同研究は設置される形になっております。
9ページ目には契約スキームを記載しています。まず研究所設置契約のほう、こちらに紐づく知財契約もありますが、これとセットになって、産学連携契約で最ももめることの多い知財の扱い等を、全てあらかじめ決めてあります。両者にとってリーズナブルな条件で決めてあるというふうに思っております。その下に個別契約として共同研究講座契約等がぶら下がるのですが、こちらでは、研究する期間ですとか、費用ですとか、どんな研究者が参加するといったことのみしか定めませんので、ここでもめることはありません。下のところですけれども、Commitと書いてある部分が、先ほども申し上げましたが、こちらの共創研究所では、コベルコ建機としての目標、社会実装とアカデミックな成果の達成、この両立を絶対に守るべきものとしており、学術成果が創出できないような共同研究はやらないということも明言しております。これに基づいて、そのために必要な期間ですとか、人や設備等を先生方から提案いただき、弊社で予算化していくという形になっています。
 10ページ目、体制についてご説明します。所長は共同研究講座のカウンターパートの先生にお願いしています。実行性を考えてということです。副所長がコベルコ建機の開発担当役員です。今は常務執行役員となっています。運営統括責任者が私です。研究統括責任者というのは主に開発の責任者、現在は技術開発本部長がやっております。書き忘れたのですが、副所長の常務執行役員も実は広島大学の客員教授で、広島大学の所属を持ちながら、大学視点をもって運営するということにこだわっています。
 その下に共創研究協議会というのがあります。半期に一度とありますが、主に重要なのが年末から年明け頃に開催されるもので、共同研究をされる先生に、どんな研究をされるかということ、それによって得られる学術成果は何かということ、それとコベルコと調整した社会実装成果は何かということと、そのために必要な直接経費がこれだけありますということをきっちり書いていただいて、短いプレゼンをしていただきます。そこには、弊社の役員、大学側の役員、両方出ていますので、両視点でしっかり内容を議論、確認し、この結果を持ち帰り、間接経費等を加算した金額で経営会議に上程し、会社予算化して、次年度の産学連携経費に充てていくという形になります。
 さらに運営委員会というものがありまして、これは毎月、全体で共有すべきことなどの共有、年度内で発生した種々の議題を議論しています。
 広島大学との共同研究経費は結構山谷もありますが、こちらの研究所、いろんな設備を大学の中に設置しており、一番大きな施設としては、多分日本中でほかにないのではないかと思いますが、広島大学のメインキャンパスの中に油圧ショベルが3台動かせるぐらいの広さの技術検証フィールドを設置しているなど、これらの設備、工事の費用発生時に山が立っています。そのほか、研究所では割とおしゃれな部屋を用意して、先生方、我々社員、また学生さんが集えるような場所というところを目指しています。
 共同研究講座が今4つあって、共同研究が5つ、同時で9テーマ、10テーマぐらいを走らせているような状況でございます。次のページ、11ページ目は、こちらは人材交流という視点でまとめています。共同研究講座には、広島大学の場合、専任の教員が必要ということで、弊社からの出向者を共同研究講座助教ということで充てています。この者は全員が博士課程後期の学生という立場も持っていきます。3年間の出向期間中で学位を取得して、コベルコ建機に帰ってくるというプログラムです。もう既に7名ほど学位取得しております。
 帰任後ですが、例えば最初に出向した者は今、産学連携研究をもっとも行っている開発部門の部長になっているなど、よい循環が生まれております。これによって研究成果の実装も道筋が見えてくると思っております。また、共同研究に関しては、学生がコベルコ建機に入ったら、本人の希望ももちろん聞きますが、何年か社会人経験をした後にもう一度広島大学に帰して、そこで学位を取得するというプログラム、こういったサイクルも回しつつあります。客員については記載の通りです。
 12ページ目は全体の相関関係です。コベルコ建機の中の主な部署としては、産学連携の運営所掌部門として、今は知的財産部のほうで見ており、広島大学の学術・社会連携室、それと研究所と連携しています。共同研究を推進する所掌部門としては、開発部門の各部になります。
 次に、マネジメントというお話をさせていただきます。14ページをご覧ください。
 言うまでもないことですが、マネジメントというのは、経営のトップが経営目標を立てて、指針・ビジョンと、それに伴う数値目標を示して、事業部目標、さらに部門の目標に落とし込まれ、最終的にはそれぞれ個人の目標に落とし込まれます。左に記載している通りです。次、右を見ていくと、経営層というのは、外部からの情報によって、持続・成長するために必要な目標、そのための施策を示していきます。それに基づいて、事業部や部門のほうで具体的な目標と活動計画に落とし込んで、さらにそこから個人の目標に落とし込まれていきます。この計画、目標、予算を、個々人、部署は達成して、経営に貢献していきます。そうすると評価・報酬が受けられて、これはポジションですとか給与・賞与に影響してきます。こういったところもあるので、個人のほうでは、さらに左の「情報」ですね、具体的な課題や、諸々の経営判断のための情報を下から上に上げていくという流れもうまく回っていくということです。これは大学も企業も基本的には一緒だと思いますが、企業の場合はこれが成果や報酬に結びつくため、よりこの辺りがクリアなのではないかと思います。
 15ページ目は、客観的に見た、マネジメントに対する大学の事情です。教員というのは、成功のモチベーションとしては、研究者としてのアカデミアの中での評価であろうと思います。また、産学連携をしている事務方のほうを考えてみると、上から落ちてきた上位目標、この数値を達成することが目標になってくるのではないかと思います。今回いただいたテーマで考えると、改めて思うところが、やはり有期間雇用の方たちです。コーディネーターやURA等、大体5年、3年というところでしょうか。雇用目的に応じた職務遂行をされますが、仮に5年とすると、1年目で慣れていって、2年目で力を発揮しはじめ、3年目で実力を発揮する頃になると、もう5年が見えてくるので、自分の次のポジションは一体どこなんだろう、この大学にはないから別の移動先を考えないといけないということになってしまうのではないかと。これは自分の人生を気にかかわる話ですので、この後離れていくかもしれない大学に対する愛情は、無期雇用の方とは違ってくる部分もあることは想像できます。
 16ページ目、お願いいたします。大学というのは客観的に見て、多様な価値観と目的を持った「個」「組織」の集合体と言えます。企業は共通の目的、すなわち持続しないといけない、拡大しないといけないという、こういったことに基づく強力なガバナンスが発揮されています。大学と企業の間には、この大きな違いがあるということを、私も最初の頃よく分からなくて、うまく行かないところがありました。今では、そもそも違うということを踏まえた上で産学連携は考えていかないといけないと、それらの経験を経て思っているところです。
 これは例えばの話ですが、シーズを活用した具体的な技術課題を解決するということであれば、これは共同研究でいいだろうと。「人」という右側のところを見ていくと、ニーズに通じた専門性を有するコーディネーターが必要だろうと思います。社会課題の解決、また学術寄りの先行研究をしっかりやろうと思うと共同研究講座となって、こちらは、弊社の場合は出向教員がそこで力を発揮しているのではないかと思います。要は大学側の事情と企業の事情、両方知っているという強みです。それと、両組織の共通目的を設定してということになると共創研究所で、ここまで来ると、大学の既存の仕組みとか体制を容易に頼ってしまうとうまくいかないので、マネジメント体制を研究所の中でしっかり取っていかないといけないだろうと思っています。
 17ページ、こちらは先ほどとかなり重複するので、右側の①から②、③というところを次以降のスライドでお話しさせていただきます。
 18ページをご覧ください。①の共同研究ですが、大学委託という言い方が正しいかどうかは、ちょっと置いておいていただいて、こちらの研究マネジメントのスタイルとしては、コーディネーター等により、共同研究を行う教員と企業を仲介して調整していく。ただ実態を考えると、学会等に参加した企業から先生に対してアプローチして、コーディネーターは受動的に対応するということが多いのではないかと思います。私もそういうアプローチをしたことが何度もあります。課題としては、コーディネーター等の理解、使命感とか専門性とかスキルによって本当に品質に差があるなと、企業目線では感じています。ちょっと乱暴な言い方で恐縮ですけれども、当たり外れが大きい部分じゃないかなと。また、結果として、先生方と企業との間で、どういうゴールに持っていくのかということや、成果の取扱いをどうするかということがきっちりと伝わっておらず、調整し切れないまま走っていて、途中でもめてしまうような事例が起こっているというふうにも伺っております。
 次は共同研究講座です。これは講座設置に関係ない場合もありますが、産学連携部門にスタッフとして企業から出向しているような事例も多々あるかなと思います。先ほど申し上げました共同研究講座教員としての出向というのもあります。課題としては、産連部門にスタッフが出向した場合、情報管理の負担が起こり得るのではないかなという懸念が若干ございます。もちろん守秘義務を負われていると思いますので、危険性という言い方は正しくないと思いますが、ただ情報管理負担は結構大きいのではないかなと思います。また、共同研究講座教員ですが、文化の違う大学と企業の間に立ってしまうので、両方からぐりぐり押されて、結構精神的につらいということになってしまうこともよくあります。
 次は共創研究所の場合です。マネジメントのスタイルは先ほど説明したとおりなので割愛しますが、共存共栄が大前提になっています。共創研究所の中で体制も取っていくし、専任の事務補佐員や研究補助職員も雇用していくという形を取っていますので、よく言う戦略的産学連携経費にも近いところがあるかもしれません。大学の経営目標と企業の経営目標を踏まえた上で、研究所としての目標を立てて活動していくということにしています。ちょうど今、共創研究所が今年6年目に入っており、10年契約の残りの5年をどうするかという目標を、5年後を見据えて立ててバックキャストしていっている状況です。
 報告会、協議会等では、大学基準の評価と企業基準の評価が両方できるように説明をしております。
 次はマネジメントの課題です。22ページ目の図についてざっと説明させていただくと、大学のマネジメントのトップから、部門・部署、そこから教員へ、あるいは産連部門から専門部隊やコーディネーター等へそれぞれの達成目標が落ちてくる。そうすると、これらの部門間に隙間が生じるケースがあるように思われます。企業はそういった事情は大学の事情としてとらえて、自分の目の前に立っている人を「大学」として話をしていくから、なかなか話が通じない。左で聞いた話と右で聞いた話が微妙にずれるとか、右で言ったら、それはこちらではないから左と話をして欲しいととか、そういうことも起こってしまいかねないようなところもあります。
 このような状態が続くと、企業としては、、話が通じないとか、ガバナンスがないとか、責任感がないとか、そのような捉え方が生じてしまう場合があります。しかし、大学の事情を理解して、企業側も、どこに何を聞けばよいかいうことをよく整理して大学側に接触すれば、実はそんなに難しい話ではないと思っています。
 23ページ目、ここも文字が多いので読みませんが、下のほうにまとめて書いております。ここではモチベーションということでまとめていますが、モチベーションが上がり難い要因として、上位職から業務範囲・役割に対する指示とコントロールが不足している場合、組織全体の目標実現のための体制・人材配置が不明瞭である場合、組織の責任所掌や役割が不明確である場合などがあるようです。勝手なことを言っていると思われるかもしれませんが、これは実は、2019年度の産連学会で、大学の不特定の人にヒアリングをして、コメントを集めた結果です。そういう意見が実際にあったというふうに聞いていただければと思います。逆に大学で働くということは、事務員であっても教育の機会を非常に得られやすいというメリットがあるという声も聞いていますし、評価がきっちりと伝達されている人であれば、給与に反映されないにしても、そういった評価の報酬系が満たされて満足されているというお話も伺っております。
 結局のところ、上位目標が思いとして共有されにくい構造になっていて、部門や職掌によって、最重要と考える目標、課題が違って見えている。多様な就業・雇用形態であるがゆえに、同じレベルで目標が伝わらず、認識されていないようなケースがあるだろうと。企業のようなガバナンスというのは構築されにくく、結果として部門間の連動や歩み寄りというのが企業よりは弱いかなというふうに思います。目的達成に必要な業務について隙間が生じてしまって、誰に聞いたらいいか分からない状況が起こってしまうということもあります。
 一方、企業としては、大学がこんな感じだからといって待ってはいられないので、どんどん進めていきます。共創研究所というところは、そのためにチームとしての目的を設定、共有していくこと、チーム内でガバナンスをつくっていくというところで意味があるのではないかなというふうに考えております。
 最後のスライドには、まとめに代えてということで、先ほど来お話ししたこと、していないこと含めて、今回いただいたテーマを考えるなかで感じたことを書いています。結局のところ、人材育成はもちろん大事ですが、実は人の問題よりも組織の問題というのが結構大きいのではと、客観的に見て感じます。だからなかなか人も集まりにくく、来ても定着しないという問題があるのではと思います。これは地方国立大学の場合、流動人材が多くなく、また待遇面で一般企業よりもよいとは言いにくい面があるため、より顕著ではないかと思います。
 一番大きなところでは、有期間雇用の壁というものがあります。コーディネーターや知財マネージャーと言われる人たちは有期間雇用です。先ほど申し上げたような問題があるかなと。また、さらに部長クラスの方も有期間雇用であったり、出向者であったりということで、組織、大学自体の成長とかブランド価値の向上に、恐らく一般企業ほどコミットできていないだろうと思います。
 必要なときに必要な人を集める場当たり的なやり方をしていると、産連人材というのは恐らく育たないだろうと思います。産学連携で一番大事なのは、結局、「愛」だと思います。こんな場で愛という言葉を使う人間は私ぐらいしかいないかもしれませんが、ここで言いたいのは、やはり所属する組織への愛着や帰属意識、また自組織のブランド価値向上が個人の価値向上につながるということ、またそれがきっちりと評価、給与とかに結びついていく状態、こういうのが、企業とそこに働く人にとっての、愛の状態なのではないかと思うところです。テクニックはもちろん重要ですが、これがないと、なかなかその組織で力を最大のパフォーマンスを発揮できないのではという気がしているところです。
 次に、ガバナンスの弱さです。教員に対して事務組織の立場が相対的に弱いとに感じます。組織連携には事務方のほうが重要、という言い方すると怒られるかもしれませんが、とても重要なポジションにあると思うんですね。結局大学の中のことをおおよそ分かって全体調整されるのは事務方だと思われるので、そこがこういう立場にあるというのは、ちょっと残念だなという気はします。全てが全てそうだとは言いません、そんなふうに見えるということです。
 最後に、ちょっとこちらは爆弾的かもしれませんが、大型競争的資金というのはすごく矛盾をはらんでいると、客観的に見て思います。大型資金を取ってくるときには、お金があるから、そのために必要な人材を集めます。もちろん資金の限界があるので、これは有期間雇用です。これらの人材というのは、学内の事務方や先生方との調整が自分ではできないところもありますので、結局既存の事務組織の負担が大きくなっていきます。そうすると、どんどん運営費交付金も下がって人も減らされている状態のためリソースは限られているから、結局企業連携に手が回らなくなってくる、という状況が生じてしまいます。企業側としては、だからといって手を止めるわけにいかないので、企業主導で勝手に動きます。だから、何か見た目ではうまくいっているように見えるかもしれません。でもそれはかなり企業の都合のいいように動いている可能性があるのではと思います。私はそうならないように気をつけてはおりますが。
 ということで、私のプレゼンを終わります。ありがとうございました。
【小泉主査】  田中様、ありがとうございました。
 正城委員や田中様の発表で御質問等あれば、いかがですか。
 高木委員、何かありそうですけど。
【高木委員】  よろしいでしょうか。高木でございます。
 まず正城委員に質問をよろしいでしょうか。ライセンス収入の年変化で、ランニング・ロイヤリティーの収入が最近増えてきているというお話がありました。2016年、17年くらいから増えておりますが、この2016年は、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインが策定された年です。正城委員とは、それを策定するための産学官連携深化ワーキング・グループで御一緒しましたが、2016年の段階では、共同研究で生まれた特許がほとんど活用されていないということを正城委員が発表されたと思います。実際に企業が活用しているのが16%で、そのうち大きなビジネスに成長しているのがさらにその6%、全体では1%しか大きなビジネスにつながっていないということです。
 実は、2016年の春、経団連の委員会でもそのような議論を行い、問題認識をもちました。ガイドライン策定のバックグランドになる問題認識の一つでした。2016年以降、比較的増えてきていますが、この要因は先生から御覧になって何でしょうか。例えば文部科学省がいろいろ施策をつくり、それが影響して伸びてきているのか、定性的で結構ですが、大学におられて何か変化したことがもしあれば教えていただきたいと思います。
【正城委員】  ありがとうございます。私学、学校法人は以前からTLO機能を学内でお持ちでしたが、国立大学の場合は法人化を機に特許の権利を出願人として持つようになっています。そこから数年たって出てきた知財が、企業へライセンスをして、企業の中でさらに追加の開発などをして製品・サービスにつながるというように、かなり時間がかかります。応用研究であれば数年ということもありますけども、特に基礎研究の成果であればあるほど時間を要します。このため、タイムリーにこの時期の施策がここに反映するというよりは、それまでの蓄積が徐々に立ち上がってきているということかとは思います。
 創薬に関しては、さらに時間がかかりますので、まだ立ち上がってきていないものも多くあって、後ほど飯田先生からも話があるかもしれませんが、ようやく治験のフェーズ2まで行ったとか、そうしたものもこれから出てくるかと思います。繰り返しになりますが、タイムリーな施策が、というよりは、それまでの蓄積が時間をかけて立ち上がってきているのかなと思っています。
【高木委員】  ありがとうございます。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。どうぞ、稲垣委員。
【稲垣主査代理】  正城委員の11ページ目の資料ですけども、これはあくまでも大学の中のスタッフの推移ということですか。外のTLOの方とか、そういう人たちの推移は入っていないものでしょうか。
【正城委員】  ここはたしか大学(内部TLOを含む)、TLO(単独型、広域型)、公的研究機関とも合わせたグラフになっていると思います。
【稲垣主査代理】  ではもし分かれば、TLOに関わるような方々の人数は増えているというふうに捉えてよいのでしょうか。
【正城委員】  すみません、すぐ出てこず、お答えになってはいませんが、一つ特徴的なところを言うと、先ほどの田中様の話とも逆の意味で関係するかもしれませんが、大学の技術移転を引き受けるようなTLOの中には、新卒を採用して、何年も雇用するような形をとっているTLOが増えてきております。技術移転機能を持つTLOが昔よりは若干減っているというのもあるので、人数はひょっとしたらそんなに増加していないかもしれませんけど、実際に技術移転で活躍する人材に関して言うと、新卒とかも含めて、若い方も活躍する現場にはなっていると思います。
【稲垣主査代理】  なるほど。ありがとうございます。
【小泉主査】  ありがとうございます。今まさにその辺で思ったのが、田中様の御発表で、大学、産学連携の愛という話をされて、僕も愛という言葉は大好きですが、そういう意味で前回、杉原委員から信州大学、やっぱりテニュアトラックでテニュアにして、しっかりと雇用していくというところが重要だという話がありました。もちろん有期雇用で、自分の成果だけでいい、何年かしたら職を変えなきゃいけないという方たちに愛をと言ってもなかなか難しいところがあって、そこは大学としても体制を整えて、もうテニュアトラック、テニュアにしてというところが重要だなと感じているところです。
 杉原委員、前回の発表を踏まえてこの辺いかがですか。
【杉原委員】  恐らく任期つきの方は、かなり近未来的に成果を出さなければならないというところに思考が向きますので、個別の案件の、目先の本当にすぐ成果が出るところにマネジメント活動の重心が行くと思います。しかし、テニュアトラックをクリアして、テニュアになると、今日のご発表で続いたような一対一の案件よりも、もう少し組織的に、より大きな社会課題を解決するためには、大学1校と1社だけではなくて、自治体も入ったり、大学が複数入ったり、企業もたくさん入る中でのマネジメント活動になってくると思います。
 なので、テニュア化する中で、視点がどんどん広くなって、俯瞰した大きな戦略が練られるような人材ができると思うので、テニュア化の先には、大学の意識改革ともなる、本当に根本的な広い社会課題解決のようなところまでつなげることを意識できるのではないかと、ちょっと聞いていて思いました。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 田中様、何か付け加えることはありますが。広島大学だけの問題ではなくて、確かに全国的にこういったところが課題になるなと思いながら聞いておりました。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  私は広島大学中心にお話をしましたが、必ずしも広島大学だけとは到底思えなくて、どこの地方大学もそうかなというふうに思います。産連のための立派な組織を持っている大学と話をしていて、そのトップの人や、そこで活躍されている方にすごく能力があって、いろんなことが調整できる方であれば非常に我々やりやすいのですが、人が替わった瞬間にそこがまた破綻し始めるというようなところもあります。外からの人材が多く有期間雇用だからなのか、そうでなくて単に異動されているのか分かりませんが。運営費交付金が下がっていることがこういうことに直接つながっているのかどうかは、私は外部の人間なので分かりませんが、産学連携を地方大学でしっかりうまくやっていこうと思うと、基本になる資金をある程度しっかり持っていないと難しいだろうなと思います。
 あとは大学の中、客観的に見てまた言わせていただくと、産連部門の土台をつくるためにお金がこれぐらい必要だから、企業はちゃんとお金出しなさいよということを大学がしっかり説明してくれれば、企業側としても、その費用負担はできる可能性が高いとと思うんですね。その費用は連携が終わればなくなるお金かもしれませんが、企業なんて将来の約束も何もない中で人や組織に投資して事業を行っている、経営しているわけですから、ある程度の覚悟をもって、リスク踏んで、人をきっちり雇用してやっていくということに踏み出していけば、多分変わってくるのではないかと思います。場当たり的とまでは言いませんが、何となくその場その場でのベストモードを踏まえ過ぎるからこうなってしまうのかなというような気はします。ちょっと生意気で申し訳ありませんが。
【小泉主査】  いえ、すごく重要な指摘です。やはり競争的資金で自転車操業の中で、人も使い捨てのような形でやっていくのではなくて、やはり長期間ちゃんとしっかりとした雇用をする、またしっかりとした意識を持つ、先ほどの杉原委員のお話ではありませんが、大きなビジョンも持つ、そういった中で人材を育て、しっかり確保してやっていかないと、やっぱり企業からの信用も得にくくなるということですよね。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  不安なんですよ、結構。ずっとおられる方というのは安心してお話もできるし、信頼感を伴うつなりができてきますが、そうでない方の場合、頼り切れないところがあります。また、そういう人は大学に根づいてないから結局学内調整もうまくいかないので、結局、昔から大学にいる人に頼ってしまうというところはありますね。
【小泉主査】  ありがとうございます。その辺やはり課題だというのがよく分かりました。
 高木委員、お願いします。
【高木委員】  今のお話に関連して、文部科学省の事業でオープンイノベーション機構の整備事業というものがございます。これは直接経費に対して、もともと10%程度であった間接経費をリーズナブルな値にしていただき、このオープンイノベーション機構ではプロフィットセンターを目指す取り組みです。最終的には概ね30%の大学が多いのですが、その間接経費の一部をオープンイノベーション機構のほうに配分していただいて、機構で運用していくという取り組みです。
 それから、ここで言うとコーディネーター、URAになりますが、さらにこれに加えて研究者の付加価値分についても、大学によっては、その価値分の費用をさらに積みあげていき、それで機構の自主的な運営をしたり、研究者に対する産学連携のインセンティブとして配分するということが趣旨です。今このような取り組みを一部の大学で進めておりますということを、参考に申し上げさせていただきまました。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  そういうのはぜひやっていただければと思います。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 では野口委員、よろしくお願いします。
【野口委員】  どうもありがとうございます。私からはコベルコ建機の田中さんに2つ質問させて頂きます。
1つは、共同研究講座の3年間の社員出向の取組、すばらしいと思います。もう7人も実績があるということで、人件費のみならず学費も支援し、戻られたら幹部候補生ということで、かなり内部でも人気がある制度ではないのではと思いますが、社内セレクト、選考はどのようになさっているのかというのが1点です。
 もう1点ですけど、大学内で事務組織の立場がやっぱり相対的に低いというのは、御指摘のとおりのところがあると思います。だから組織のガバナンスができていないというのも御指摘のとおりで、例えば組織に大きな権限を与え、高い地位の者を組織の役職につけるという手法もありますが、客観的に見られて、田中さんが考える処方箋としてどういったものがあるのかお聞きしたいと思いました。
 以上2点です。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  ありがとうございます。
まず出向者の選定基準については、若干過去において失敗もありました。この社員なら大丈夫かなと思って、若い人を入れてしまうと、若いがゆえに、先ほど申し上げた企業と大学の狭間に挟まれるストレスが大きくなってしまい、精神的にしんどくなってしまうというところで、ちょっと失敗したこともありました。そういう反省も生かして、今は割と、個人の希望ももちろんございますが、それよりは、この人は大学に入れてしっかりとアカデミックな研究をすることによって成長できるなと思うような人間をセレクトして入れていくという方向に、徐々に舵を切りつつあります。帰ってきて特に成功しているなと思うのはそういう人材なので。
 もう一つの質問は非常に答えづらいところもありますが、外部から来られていきなりポジションを与えられても、それまでに大学と企業間で培ってきたものもありますし、既存の大学組織との連携もある程度できていると、その方との話は議論が上滑りしているような感じがします。もちろん、既存の産学連携組織との連携がしっかりと取れるような仕組みづくりがされていればよいのですが、そうでなければ、話には付き合うけれど、自分で動いた方が確実かな、と思ってしまいます。
 何が言いたいかというと、結局の話、プロパーで産連やっている人が、しっかりとした既存の産連部門の組織の中でしっかりポジションを確保して座っていただくということが一番、企業から見て安心感があるかなと思います。なるべくそこから異動しない人が何人かいていただきたいです。もちろん成長のために異動していただければいいですが、何年かたったら計画的に戻ってきてくれると嬉しいです。
 やはりお互いの信頼関係でしかないと思うので、その信頼関係を築くのであれば、そこが一番重要なことかなと思うところです。このような回答でよろしいでしょうか。
【野口委員】  はい、よく分かりました。前者はやはり弾力的な御判断されているということと、後者は異動施策と信頼関係を押さえることが非常に大事だということ、よく分かりました。ありがとうございました。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  ありがとうございます。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 では、続いて重田委員、お願いいたします。
【重田委員】  ありがとうございます。まず、正城委員にお伺いしたいのですが、例えばアントレプレナー教育であるとか、あるいは桑田委員のお話でも話題に出ました学生の起業マインドをどうやって醸成していくか、あるいはこういった人材をどうやって若い人から育成していくかという、そういった観点について教えていただけますでしょうか。
【正城委員】  UNITTの中で、今御指摘のところのワークショップやセッションはそれほどなかったと思います。ベンチャーという仕組み自体が、大学、アカデミアの成果を世の中に生かすために重要というのは皆さん認識しているところで、ベンチャーの経営層やチームビルディングといった議題は出ているのですが、実務者側の議論が中心のため、直接的に教育に関わるような、例えば大学院の学生等へのアプローチというのは、少なかったと思います。ただ、会員になっている大学の中には、そこの重要性を認識している大学はかなりたくさんあるので、それぞれの取組として、学生が入る起業部をつくられているような大学もありますし、何らかの講義という形でされている大学もあるので、活動としてはあると思いますが、特に私が今日お話ししたところでは、学生に対する企業マインド醸成は必ずしも多く取り上げてこなかったかなと思います。
【重田委員】  ありがとうございました。
 田中様に1点お伺いいたしますが、コベルコの広島大学と組織対組織ということで、企業と大学の間で人の循環ができているというのは非常に良いシステムで、こういったものが真似できればいいなと思いました。逆に、例えば産連系の方々は企業を辞めて大学に来られる人がいるのですが、ちょっとシニアの方が多かったりします。中堅層が企業と大学を行ったり来たりできるようなシステムを設計するとすれば、どういうところが重要かという点について、何か御示唆があれば非常にありがたいです。例えば企業としては、大学にいたメリットとしてこういうところがあるので、こういうところを伸ばしてくれると、企業で上位層として雇いたい、等といったことがあれば教えていただければと思います。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  それは主に産連人材という理解でよろしいですか。
【重田委員】  そうですね。あまり広げ過ぎると困るので、産連人材に限ってお伺いできればと思います。
【コベルコ建機株式会社(田中様)】  今の御質問をいただいて、仮に私がもう少し若くて、どこかの大学に来ないかと誘われたとして、何が不安かというと、知ってしまっているがゆえかもしれませんが、私がこういう性格をしているので、ワーッと自分の考えを言ってしまうと思うのですが、多分大学の中で浮くだろうな、と。広島大学なら知り合いも多いので、少し聞いてもらうルートもあるかもしれませんが、ほかの大学で同じことをしてしまうと、「外からきて、何を考えているんだ」と言われそうな気がしてしまいます。
 では、どうあればいいかというと、やはりそれなりに組織をきっちりつくっていただくということと、周辺に、大学人材だけではない仲間が少し欲しい。私が今やるのであれば、下に企業的な視点を持つ仲間も欲しいし、大学の中でも産連に対して非常に外向きに活動されているような人がおられるかと思うので、そういう方も欲しいし、それと学長につながるルートをきっちり持たれている人材が欲しいです。数は要らないですが、それぐらいあれば、何かしらやりたいことができるかなというような気はします。あとは先生方に対しては、じっくりと関係を築いていくしかないかなと思います。そんな答えでよろしかったでしょうか。
【重田委員】  ありがとうございました。
【小泉主査】  ありがとうございました。議論が盛り上がったところで、次に行きたいと思います。また2件聞いて、全体をまたディスカッションできればと思います。
 続きまして、東京医科歯科大学統合イノベーション機構教授の飯田香緒里先生からお話しいただければと思います。「医療系産学連携の現状と課題-医療系研究開発⼈材(URA等)の役割や⼈材育成を中⼼に-」ということで、飯田先生はこれに限らず、UNITTの話も含めて幅広く御知見をお持ちなので、お話しいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
【東京医科歯科大学(飯田様)】  本日は貴重な機会いただきまして、ありがとうございます。私から医療系のお話をさせていただきたいと思いますが、今までの中では、応用編の話になるかもしれません。医療系は特殊なところがあるので、その特殊性を中心にまずお話をさせていただいた上で、業務の在り方あるいは人材確保をどのようにしていくのかということを話したいと思います。
 今日のお話ですが、私自身、医科歯科大学の立場と、medU-netというネットワークを運営している事務局長の立場があるので、その2つの視点から、これまで行ってきた調査等も踏まえて御紹介していきたいと思います。
 まずmedU-netの御紹介を簡単にさせていただきます。この組織は、医療系の特殊性に対して、全国のアカデミア、大学、公的研究機関が整備しにくい体制等について、ネットワークを組んで、各種機能を共有していくことによって底上げをしていこうという思いで2010年に立ち上げた組織になります。
 これは小泉主査も運営委員に入っていただいていますが、現在、1,000人近い会員組織になっていて、アカデミアからは、産学連携の実務者、産学連携を志向する研究者が中心に構成されています。
 この組織では定期的に、医療系の産学連携の実態調査を行っています。文部科学省で行っている調査結果を活用しながら、医学部の実績だけ切り出して解析等しているので、その結果なども後ほど御紹介していきたいと思います。
 4ページ目をご覧ください。私ども医科歯科大学の話で言いますと、現在、URAは研究系、産学連携系、あるいは臨床研究系といったような形で活動しています。後で出てきますが、医療イノベーションプロセスは長いので、そのプロセスに応じて、必要な最適な人材がチームを組んで、支援体制を形成しています。
 医療系産学連携の現状と課題ということで、6ページ目をご覧ください。新規の医薬品や医療機器の創出が望まれているところですが、このグラフの通り、輸出超過の状態が続いています。こういったことも踏まえて、健康・医療戦略はじめ、さまざまな戦略が立てられているところですが、その方策として医療系アカデミアの研究開発力、さらには、医療系の産学連携の期待というものが寄せられているところになります。
 7ページ目、お願いします。しかしながら、冒頭から申し上げている通り、この分野は非常に特殊性がございます。何が特殊かということで、3つの切り口で少し整理してみました。
 まず1つ目が医療イノベーションプロセスの特殊性ということで、先ほど、長いグラフ、時間軸をお示しましたが、基礎研究から実用化までにかかる時間が長い。さらにはプロセスも複雑で、それらに伴うコストの大きさも特徴です。さらには、人を対象とする研究によって安全性を確認する必要があり、規制への対応、極めて高い倫理感等が求められる領域であるというのがまず1つ目の特殊性になると考えます。
 次に、医学系・医療系の研究者の特殊性というのもあると思います。この分野の研究者は研究者であると同時に、医療者として臨床にも従事し、医薬品や医療機器のユーザーにもなる立場にあるということです。この立場の特殊性が研究時間の確保を難しくし、さらには法令遵守、利益相反への対応含めリスクマネジメントの必要性が高い領域といえます。
 さらに、医療系産学連携活動自体にも特殊性が存在すると考えます。後でも御紹介しますが、創薬系を中心に知財管理というものが、出願戦略・導出戦略を含めて特殊です。また、産学連携のスキームもほかの領域と異なる部分がありますし、先程述べました通り医療系特有のリスクマネジメントへの配慮も必要になります。これら3つに限りませんが、こうした特殊性を踏まえた支援が必要ということが、重要なところだと思います。
 8ページ目、プロセスが特殊だというところを少しだけおさらいしたいと思うんですが、一般的な工業製品に比べて、医薬品・医療機器・再生医療等製品は、これだけプロセスがあって、時間もこれだけ時間が必要になります。そうなってくると、規制とかそういうところに対応するのもそうですが、医療分野ではこのプロセスの流れの中であらゆる局面で企業からアカデミアへの連携ニーズが寄せられ、関わっています。
9ページ目をご覧ください。続いて、医療系の特許の特殊性です。一つは、特許の権利範囲、通常、低分子医薬品は、一製品一特許と言われるので、最終製品をカバーできるような権利範囲を確保しなければいけません。それを実現するには、研究初期段階から知財戦略を立てて、どういう特許を取るのかということも考慮する必要性が高まるといえそうです。また、国際特許の必要性です。先程申し上げた通り、医薬品開発にかかるコストを回収し、次のイノベーションへの投資を担保するためにも、国際市場を対象に回収する必要が出てくる。そのため国際特許出願が重要になってきますが、それにはお金がかかるという課題が付随します。さらには、特許出願のタイミングも重要であります。医薬品/医療機器は最長20年プラス5年の25年間の特許権による保護が得られる可能性がありますが、あまり早く特許出願してしまうと、開発途上で特許が切れてしまうという事態になりかねないので、出願のタイミングを図る難しさがあると言われています。
 10ページ、お願いします。ここからはアカデミアの実態をご紹介していきます。2019年から20年にかけて、medU-netと日本製薬工業協会、AMEDで、共同で実施した実務者アンケートの結果等を御紹介いたします。まず下のほう、特許が活用されたタイミングについて、医療系の特許と、それ以外の特許を比較しています。非医療系の特許は、全体の57%が特許登録後に活用されているのに対して、医療系は70%が登録前に活用されていました。さらに上のほうのグラフですが、そのような医療系特許は実際どのように活用されているか見ていくと、調査に参加した31機関の2018年度の実績に基づくに調査した結果にはなりますが、特許出願の比率に関しては全体の60%が非医療系であるのに対し、活用されたものは医療系のほうが上回ったという結果となりました。
 続いて、医療系の産学連携の現状について、11ページ目をご覧ください。文部科学省1件当たりの共同研究費の受入額が多い機関30位を示していますが、30機関中の10機関が医療系の単科系大学であることが分かりました。すなわち医療系では大型共同研究が多いということを示している結果と理解しています。ということは、大型共同研究の組成への支援や大型プロジェクトに対するマネジメント支援が必要になると理解できそうです。
さらに次のスライド、1特許の価値が医療系では他の領域よりも高く評価されていることや、ノウハウやマテリアル――マテリアルというのは基礎研究から生まれるような細胞抗体とか実験動物、あるいは臨床現場から生まれてくるものもございますが――これらについても他の領域より価値が高く評価されており、活用率が高いという結果になりました。
 続いてのスライドで、実務の状況を御紹介していきたいと思います。
 2021年に、医療系の産学連携に関わっている実務者102名に対するアンケート調査結果をご紹介していきます。医療系の産学連携の実務に関して、自分の組織で不足している機能について、回答者の5,6割が選択したのが、「プロジェクトの作り込み」、「プロジェクト推進のマネジメント」、「リスクマネジメント」、「広報活動」、この辺りについて足りていないと回答しています。
特に「プロジェクトの作り込み」について製薬企業のニーズをアカデミアサイドが十分理解できていない可能性が推察される分析結果が生じているのでご紹介します。15ページをご覧ください。こちらは、製薬企業の方100人に、医療系アカデミアとの産学連携で重視するものはなんですか、と聞き、さらに医療系のアカデミアに対して、製薬企業が医療系アカデミアとの産学連携で重視しているものは何だと思いますかと聞きました。どのような結果が出てきたかというと、製薬企業サイドは創薬の早期ステージに必要となる基礎研究機能をアカデミアに期待しているという回答が主であったのに対して、アカデミアサイドは製薬企業が創薬の中盤以降のステージに対して期待を寄せていると捉えているという結果になりました。これはアカデミアの医学系産学連携の実務者が、企業の産学連携のニーズを十分認識していない可能性があり、結果として医療系アカデミアのポテンシャルを存分に活かせていない可能性もあるのではと捉えております。
 16ページは医療系知財業務体制についてです。先程医療系知財は特殊だと申し上げましたが、当該業務への専門人材配置状況について、医療系出願担当者「配置済」と答えたのが全体の55%、「配置済」と回答した機関へは、当該担当者のバックグラウンドを尋ねたところ、医療系知財実務経験があると答えたのが全体の52%という結果となりました。
 この点、下のグラフで、特許活用実績の高い組織と低い組織をそれぞれグルーピングして、人員体制との相関を確認したところ、特許活用実績上位機関では、平均2.6名の医療系の担当者を置いているのに対して、下位期間では1.2名と2倍の差があるということが分かりました。
 さらに、知財実務担当者の経験者配置状況に関しては、上位機関では50%、下位機関が38%の機関が経験者を配置していることが明らかになりました。これらの結果から、経験を有する医療系出願担当者を配置することで一定の効果につながると分析しています。
 以上の結果を踏まえ、医療系URAの確保・育成に関する展望について、個人的な私見も含みますが、御紹介したいと思います。
 4つの観点で御説明いたします、まず①医療系URAの機能・役割として、これまで御紹介したとおり、他の分野と大きく異なる医療特有のURA業務が求められていること。特に医療特有のイノベーションプロセス、さらには研究者の立場の特殊性として研究時間がないということは、より一層研究者に対する支援を手厚くしなければいけないということも踏まえた業務が求められるということが挙げられると考えています。次に、②医療系URAの確保ですが、医療分野に精通した高度専門人材、既に経験がある人を即戦力として持ってくるということがもちろん重要ですが、長期的な観点からは組織内での人材育成、スキル強化、さらには、働きがいを担保する人事制度が重要と考えます。
具体的には、③医療系URAの人材育成・スキル強化の観点から、医療系研究開発に特化した教育プログラムをしっかりと提供していくと。この辺りは、私たちの大学やmedU-netで既に行っているので、そういったものを活用いただくのと同時に、オン・ザ・ジョブで、組織内部でしっかり教育していくことも必要で、セットで実行することが重要かなと思います。この部分は、即戦力という形で外から人を引き抜いてきた場合でも、刻々と変化する産業動向や技術動向のキャッチアップしという意味では、質向上のための教育プログラムは提供していかなければいけないと考えます。またスキル強化の観点では、自分たちが抱えている様々な課題を解決するためのケーススタディーのような形で、他の大学とネットワーキングをやっていくことも重要と考えます。
 最後の④人事制度のところは特に重要と考えており、医療系は中長期のプロジェクトが多いのでそれらを継続的に支援することはもちろん、安定雇用によって人材確保することで最適な人材確保につながるのではと考えます。他方雇用の安定とともに働きがいを確保するようなインセンティブ設計、キャリアアップのための仕組みも必要と考えます。それには透明性高い人事評価制度が核になると考えます。次の最後のスライドになりますが、今申し上げた点は、実態調査をかけておりますが、医療系マネジメント人材のポジションに関して、2020年度の時点で、事務職員を除く77%が有期雇用であったと。さらには、キャリアアップ制度を設けている期間は1割でありました。医療イノベーション創出は、プロジェクト創出を推進するだけでなく、大学組織内の人材含む体制整備とセットで長期的な観点で推進すべきと考えておりますので、私自身もこの点肝に銘じて貢献して参りたいと、思っております。
 以上になります。御清聴いただきまして、ありがとうございました。
【小泉主査】  飯田先生、ありがとうございます。数字をもって、かなり説得力のあるお話をいただき、ありがとうございました。医療系URA、スキル、先ほど来のお話にもつながりますが、人事制度、安定雇用がやっぱり重要だと改めて認識したところです。質疑応答はまた最後まとめてと思いますので、よろしくお願いします。
 では、もう一つ、今、2月16日に、国のオープンアクセス方針も決まりまして、オープンアクセス、オープンサイエンスというところが非常に注目されておりますし、イノベーションという点で、その辺の重要性、大学に対する期待も高まっております。その辺りを京都大学附属図書館事務部長、オープン・アクセスリポジトリ推進協議会運営委員長でもあられます杉田茂樹様からお話しいただければと思います。杉田部長、よろしくお願いします。
【京都大学附属図書館(杉田様)】  よろしくお願いします。本日はお声かけいただき、ありがとうございました。私、図書館の事務の責任者をしておりますが、図書館というのは大学の中で非常に古くからありまして、そういうこともあって、古い設計、古い仕事の部分も結構残っております。
 本日ここまで3名の先生がお話しくださった研究開発、産学官連携、社会実装といったリアルな話とは毛色の違った話になるかと思いますが、この時間では、前半では、我々図書館が、長い歴史を持つ組織として現在の状況をどう状況認識しているかということを少しお話しした上で、今どちらの方向に向いて、何を課題と考え、何に取り組んでいこうと考えているかということについてお話ししたいと思います。
 少し冗長な話になるかもしれません。歴史認識として、私たちは2ページ目のような形で見ております。左のほうが過去、右のほうが現在です。図書館にとって大変大きな出来事が、15世紀の印刷術の発明でした。それから200年ぐらい経った後、学術雑誌が生まれました。技術が出来上がってから200年ぐらいを経て、それに対応したキラーアプリケーションが生まれたということになります。現在の図書館はこの時代に設計されて、そのまま現在に至っているわけです。当時は紙でした。「いまココ」と黄色く書きましたが、電子情報通信により、オンラインの、よりリアルタイムのコミュニケーションへと世の中は移り変わってきています。紙と電子の一番大きな違いとしては、知識がパッケージングされて流通するか、そうではなく断片的に、知識が生まれるそばからどんどん共有されていくか、ここが決定的な違いだと考えております。
 3ページ目をご覧ください。私は勤めて30年ぐらいになりますが、勤め始めた頃が一番左です。この頃まではまさに図書館は知識受容の拠点でありました。研究者は、毎週あるいは毎日、最新号の雑誌を見に図書館に来て、どんな新しい論文が出ているかということを確認していました。平成になって、状況ががらりと変わります。中ほどに「電子ジャーナル」という言葉を書きました。これが研究活動に非常に大きいインパクトを与えました。研究環境は劇的に向上するとともに、研究者は図書館に足を運ばなくても最新の研究に触れることができるようになった。
 それとともに、こういったコストをどのように賄うかという議論もあります。今回、オープンアクセス/オープンサイエンスがテーマの一つと伺っております。オープンアクセス思潮が生まれたのがこの頃です。図書館はこの時期から機関リポジトリと言って、所属教員の論文を社会に直接、大学のホームページから発信するという仕事を始めました。
 一方で、電子ジャーナルそのものにもオープンアクセス化がすすんでいます。昔、紙の時代に図書館がやっていたことは蔵書構築・供用、つまり、先行研究の調査に必要な蔵書を整備することが図書館の仕事だったのだと思います。ンターネット時代になって、この研究の入り口のところも電子化され、研究の終点のところにおいても、出版社のジャーナルに論文を発表する以外に、大学のホームページから直接社会に論文を届けるようにもなってきた。昨今は、始点と終点だけでなく、研究の過程をトータルに相手にすることに取り組んでいく必要があると考えています。
 図書館の機能の再設計にあたって、今回の研究開発イノベーションというテーマとは別の文脈からの要請ですが、内閣府から「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」というのがつい先週ぐらいに公開されました。それから、研究課程のデータを共有し、あるいは公開していこうという動きも、データ駆動科学という文脈の中で出てきています。図書館はもともと科学情報流通を機能としてきておりますが、これらについては、図書館だけで全てができることではもちろんない。私たち図書館、得意なことも、また、不慣れなこともたくさんあります。ですので、学内のURAの方、情報の方、研究推進の方、多くの関係者と一緒に取り組んでいかなければいけないと思っております。こういうことを実際の事業として設計していく上で、どのような種類の人材が必要であって、どのような分担で共同作業をしていくのがいいのか、あれこれの場で考えられておりますが、私としましては、こういうのはやってみないと分からないだろうなという感覚で見ております。
 6ページ目は、京都大学で考えている試案です。京都大学では、ついこの方、データ運用支援基盤センター、データ駆動科学の基盤となり、データの管理、運用、公開、これらを司るセンターが出来上がりました。これは、情報環境機構という情報センター的な部署と図書館、あと他の関係部局等もここに集結して、研究グループの支援をしていってはどうかということを考えているところです。
 真ん中に「コンサルチーム」と書きました。とても少人数のチームとして考えております。データ専門家、キュレーター、ライブラリアンと書いているのは単なる例示で、幾つかの専門的なスキルを持った人をチームにし、この小チームを一つ一つの研究グループにアサインする。チームとして研究グループを支え、データ管理計画立案の支援、データポリシーを決めることの支援、メタデータ形式の決定、オープンアクセス化のサポート、こういったことをやっていく中で、どのようなタイプの人材が研究過程のどの部分のどの仕事をうまくやれるかというのを、実践しながら解き明かしていく。やっていく中で、最初は思いもしなかった仕事も出てくるかと思いますので、課題を発見して解決し、ノウハウを蓄積して、誰が何をやるのか、それぞれ何が得意なのかというのを見極めながら、スキルの獲得と、良好な分担というのを考えていきたいと考えています。
 もちろん京都大学は非常に大きな大学で、大勢の研究者がたくさんの研究をやっているので、あくまで試行的にやってみるところから始めるしかない。また、この図には9人のコンサルチームのメンバーを書きましたが、研究グループの数だけこういったスタッフを雇えるわけでもありませんので、同じ人がこちらのサポートもして、こちらもサポートするという中で、このコンサルチームの中でもお互いを知り、仲よくなり、協働する関係を築ければいいなと思っています。
 こうした方向に向かうことについて、私が少し気になっているところとしては、図書館というのは、既存の紙時代の巨大な物理的な空間、物理的な蔵書を抱えており、そこには非常に膨大な現業仕事がありますので、これらとどう折り合いをつけていくかということが一つ。また、オープンアクセス/オープンサイエンスというところ関連して言いますと、オープンアクセスといっても、学術雑誌の出版流通という、あくまで既存の古い出版流通体制を前提としています。電子ジャーナルは、紙の時代の学術雑誌の模倣でしかない。そ私どもがやっております機関リポジトリというのも、研究者が抜刷を交換し、多くの人に見てもらうということの模倣でしかない。そうではなくて、電子情報流通にふさわしい、新しい大学発のパブリッシングの可能性を模索していかないと、情報流通の次の段階へ進むことはできないのではないかと考えております。オープンアクセス/オープンサイエンスという言葉の、今、持たされている意味の次をこういった活動の中から見つけ出していけると良いのではないかと思っております。
 少し短いですが、以上、図書館からの御報告でございました。
【小泉主査】  杉田部長、ありがとうございました。お忙しい中、オープンアクセス方針も決まり、そして、100億円の話もあり、お忙しい中、ありがとうございます。特にまた6ページ目に示していただいたような、「検討中試案」と書かれておりますけれども、新しい提案もいただいてありがとうございます。
 僕のほうからちょっと付け加えますと、ライブラリアンというのは、各大学にもおりますが、先ほどの飯田先生の話にあった医療系URAと同じように、かなり特殊な世界の特殊な人たちで、特殊なスキルを持った人たちだと思います。ただ、決定的に違うのが、ライブラリアン、実はかなり安定した雇用がされています。なので、実は杉田部長の先輩、後輩がどんどん育っていくんですよね。それでオン・ザ・ジョブ的に学んでいくので、先輩から後輩へオン・ザ・ジョブ的に知識やスキルがどんどん伝わっていく。出版社交渉にしても、本当に先輩方を見習ながらということができていて、そこはやはりライブラリアンは安定的な雇用がされているということで、一つ大きなところかなと思っています。
 その一方で、今、杉田部長からお話があったように、長い年月の中で、特にここ数年の動きの中でライブラリアンに求められるスキルというのは大きく変化しようとしていて、では逆に言えば、新しいスキルをどうやって学んでいくのか。多分、ライブラリアンだけでできることはもう限界を超えるので、まさに杉田部長の6ページ目のように、ライブラリアンだけではなく、ほかのいろいろなスキルを持った専門家と大学の中で協働しないと研究開発マネジメントを実施することができない。または、ライブラリアンのスキルそのものもアップデートしなきゃいければならないというところに至っているのかなと思います。
 杉田部長、僕が間違っていたら、ご指摘いただければと思いますが、そういった状況だと思っています。ライブラリアン、安定的雇用がされている一つの例ではありますが、それでも、それで終わりではなくて、スキルのアップデートや、今の研究開発マネジメントという意味では、チームを組んで、いろいろな専門家が集まっていかないといけない段階というのが、杉田部長からの6ページ目の提案ということだったと思います。
【京都大学附属図書館(杉田様)】  そのとおり思っております。
【小泉主査】  ありがとうございます。では、少し、飯田先生と杉田部長のお話を聞いて、または全体でもいいですが、ディスカッションをしたいんですが、いかがでしょうか。
 正城委員、お願いします。
【正城委員】  御説明ありがとうございます。杉田様にお伺いしたいのですが、このオープンサイエンスという考え方、学術、アカデミアの発展に非常に重要な概念だと思っておりますが、産学連携ではデータを有償で使ってもらうといった話もありますが、学内の産学連携や技術移転の部隊と、何かやり取りをされているのでしょうか。
技術移転のところだけ区切っても、共同研究をすることとベンチャーと、どちらを取るかといった、完全な二律背反ではないですが、ある程度の調整をしないといけないところがあったり、どの競争的資金を取っていくかということも、実は本来調整しないといけないところだったりします。前回、杉原委員からお話あったように、本当は大学全体として捉えて、それぞれのところを最後、設計、あるいは活動していかなければならないと思っています。その問題意識があるのでお伺いしたいのですが、オープンサイエンスという概念と産学連携のところで、具体的に調整なり、意見交換をされているのか、またされていないとしても、どういうことがオープンサイエンスの立場から必要かというのを質問させていただければと思います。
【小泉主査】  杉田部長、お願いします。学内でのライブラリー関係と、産学連携部門等との連携も含めてお話しいただければ思いますが、杉田部長、いかがでしょうか。
【京都大学附属図書館(杉田様)】  実例として京都大学のケースをお話しできるだけの材料をすみませんが私は持っておりません。考え方として私が思うのは、オープンサイエンスという議論の中で、オープンアンドクローズド戦略と言う言葉がよく言われております。できる限りオープンに、必要な限りクローズにということですね。公的資金の入った研究についても、オープンアンドクローズドと言われているくらいですので、産学連携という文脈で言えば、もちろん必要な部分はクローズにし、あるいは有償にするということは大いにありうることと考えております。そのためにどのようなシステム基盤で何ができるかというのはこれからの考えどころだと思っています。
【小泉主査】  ありがとうございます。やっぱり学内での連携が重要ですよね、正城委員。
【正城委員】  そうですね。
【小泉主査】  杉田部長、ありがとうございます。
 野口委員、お願いします。
【野口委員】  御説明ありがとうございました。私から飯田先生に2つ質問があります。医療系独特の3つの困難性、研究時間の確保、成果創出までの期間、あと、特許を取る範囲というのは非常によく理解できました。その上で、文中でも飯田先生が、これは医療系もそうですが、大型共同研究に対するマネジメントの重要性を指摘されたと思います。その大型共同研究に対するマネジメントの重要性の重要と思われる部分はどこなのかというところを、主観で結構ですのでお教えいただきたいというのが1点です。
もう1つは、人事制度の重要性のところで、インセンティブが重要というのは、これもそのとおりだと思っています。普通は3つを考えますが、いわゆる終身雇用、つまり雇用の安定、職階のアップ、給与の向上という3つがあると思うのですが、それ以外で、モチベーションや定着率を高めるようなインセンティブについて、何かお考えのところがあればお聞きしたいと思いました。
 あと、杉田部長に1点ご質問です。コンサルチーム、本当にうまく組成されていると思います。ただ、一方で、なかなか人材の確保が難しい部分があると思っています。例えばキュレーター、いわゆる収書等の専門人材を考える場合、人材に取って代わるという観点から生成AI等をコンサルチームに生かしていくというようなお考えがあれば、少しその点をお聞きしたいと思いました。
 以上です。
【小泉主査】  ありがとうございます。まず、飯田先生に大型プロジェクトマネジメントのお話、それからインセンティブ設計のお話ですかね。飯田先生、いかがでしょうか。
【東京医科歯科大学(飯田様)】  ありがとうございます。まず、大型共同研究を組成する中で、やはり期間が長いので、マイルストーンで区切りながらマネジメントしていくということが重要と日常的に感じています。企業と共同研究するときにも、研究費一括ではなく、マイルストーンの達成状況を見ながら研究費を入れていく、といった形でのプロジェクトも存在します。また、大型・長期のプロジェクトについては、特許だけではなく、ノウハウやマテリアル含む知的財産管理が重要になるので、アライアンス、知財、契約等の専門家がチームを組んでプロジェクトマネジメントを推進することが重要と考えています。
 2つ目のインセンティブのところについては、雇用の安定性と報酬に加えて、URAスキル認定機構で検討された認定制度等で質保証していくことも重要と考えます。彼らが自信を持って業務に当たること、インセンティブ、学内、学外に対する信頼性の獲得につながるのではないかと思っています。
 以上です。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 それから、杉田部長への質問で、コンサルチームの中に例えば人だけではなくAIのよう技術も使うということに関して、いかがでしょうか。
【京都大学附属図書館(杉田様)】  大いにあると思います。今回、このデータ運用支援基盤センターというのは情報の部署が中心となっておりますので、そういう技術も入れていくことが考えられると思います。
その一方で、私は現在の生成AIに少し物足りないところも感じておりまして、普通、図書館に聞かれるようなことをAIがどう答えるのかなと思って聞いてみると、非常に生ぬるい玉虫色の回答しか得られないことがあります。何がしかの行動判断、価値判断をするときには、人間の頭で考えた思い切った判断をすべき場面がたくさんあると思いますので、AIが行う回答では、ちょっと物足りない場面もたくさん出てくるのではないかと、これはまだやってもみないうちの想像ですが、そのように思っています。
【小泉主査】  杉田部長、ありがとうございます。
 全体を通して、何か御意見や質問があればと思うんですが、いかがでしょうか。
 最後、医療系の話も、オープンサイエンス、オープンアクセスの話も、特殊な世界の話であるがためにスキルをアップデートしつつ、加えて学内でのチームもしっかりつくっていかないといけないというのは、非常に感じたところです。
 重田委員、お願いします。
【重田委員】  はい。おそらく今、小泉主査がおっしゃろうとしたことかと思いますが、やはり今の医療も図書館も、要は今までにないチーム体制を築くというのが重要であるという御指摘だと思います。さらにそのチームをビルドするときに、やはり物理的な空間も共有していないと、情報の伝達や新しいものを見つけていく上でかなり難しいかと思うのですが、今、東京医科歯科大、あるいは京大附属図書館でこうしたチームをつくるときに、物理的空間を共有しているのか、それともバーチャルで週に何回か集まったりするのかという、そのあたりについて教えていただけますでしょうか。
【小泉主査】  飯田先生、いかがでしょう。
【東京医科歯科大学(飯田様)】  ありがとうございます。実は私たちの大学では、今、産学連携、知財、契約、リスクマネジメントを担当するURAと関係する事務組織が、同じ場所で業務当たり、多様な業務担当者の交流を促進するために、オフィスをフリーアドレス化しました。また、週に1回、産学連携業務に関わるメンバー全員が集まるミーティングを開催し、情報共有に務めています。現在はオンラインでのコミュニケーションも円滑になっているので、必要な時にすぐにコミュニケーションが取れる環境も重要と考えています。以上です。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 杉田部長、何かありますか。
【京都大学附属図書館(杉田様)】  京都大学は、先ほど示した図は今検討中の試案で、まだ実際動いていないのですが、もし動くとしたら、同じ場所に勤務するとかミーティングを行うというつながり方よりも、一緒に研究グループのところへ参上するとか行動を共にするというような、場面、場面で顔を合わせて、密に連携するような形がよいのではないかと思っています。
【重田委員】  ありがとうございました。
【小泉主査】  ありがとうございます。
 ほかに何か。杉原委員、お願いします。
【杉原委員】  飯田先生に質問です。薬等であれば、基本的に大学単位ではなくて、診療科なり学会単位で研究開発に入るケースが非常に多いと思います。特殊な分野であるからこそ、個別大学ごとにそれぞれの仕組みを用意するのではなくて、やはり有力な大学が薬の研究開発も引っ張っていると思うので、そういったキーになる大学でこういう人材をある程度そろえていただいて、それ以外の大学は少し分担というか、キーになる大学とうまく協力させていただくような仕組みというのはできないものなんでしょうか。
【東京医科歯科大学(飯田様)】  ありがとうございます。まさにmedU-netが、今、先生がおっしゃってくださったことを目指していました。やはり限られた貴重な人材を共有しながら、大規模な臨床研究に参加する機関全てが、多様な専門人材を置くことは困難なので、人材を共有する仕組みは重要と考えますし、その実現に向けて引き続き努力したいと思っています。
【小泉主査】  すばらしい。東京科学大学でぜひ。ありがとうございます。
 ほかにございますか。正城委員、お願いします。
【正城委員】  「東京科学大学」という言葉が出たので、また飯田先生に伺います。私はずっと阪大にいるので、当たり前に思っていることが実は当たり前ではないと気づく機会は少ないのですが、まさに今、統合されようとしている中で、URAとか産学連携の部隊に限っていいと思うのですが、「これはなぜこうなっていたのだろうか」と気づかされる機会等はありますでしょうか。こういった研究開発マネジメント人材を必要とすることの意義であったり、あるいはその制度、仕組みについてであったり何でもよいのですが、統合に向けて改めて気づかされた点があれば、今後の議論に非常に参考になるかなと思いまして、答えにくいと思いますが、お伺いできればと思います。
【小泉主査】  ありがとうございます。実は初めに正城委員が言われた、研究開発マネジメントは研究力強化のためなのかという質問は、そうじゃないなと思いながら聞いていて。前回、桑田委員からの発表で、研究開発マネジメントは、対研究者のためのもの、組織中のマネジメントのためのもの、対外・渉外の部分、そういった3つのフェーズがあるという話をされていて、まさに研究力強化という一面だけではなく、全体的に見なければいけないというところ、正城委員の発表からも思ったところです。桑田委員、お願いします。
【桑田委員】  ありがとうございます。飯田先生もありがとうございました。今日、全体的に拝聴していて、長期的なスパンで物を見てマネジメントをしていくためには、URAもそうですが、研究のマネジメント人材のいわゆる定着化とか、雇用していく、あるいはずっと専門性を育てていく、そういうことの重要性というのを、主張されていたケースが多かったと思います。
 ところが、最後にまた飯田先生が、みんなで少し人材をシェアしようじゃないかという話もされました。今回、研究力の強化の観点から、また大学自身の財政の問題、あるいは研究者自身をもっとサポートしていくという部分も含めて、長い間、先ほども企業の方との信頼関係の話も出ていましたが、長い間の積み重ねた信頼関係のために、定着していく人材を育成していくという制度が一つ議論にあったと思います。それは私も賛成で、ぜひとも無期雇用等々、雇用条件や制度も整えながらやっていくべきだし、強化していくべきだと思っています。ところが、先ほど、最後に出てきたように、実はもう1点抜けていたのは、人材の流動化の意味みたいなものが、少しまだ私の中では混沌としていて、今日の議論の中にもそこのところは、多くは出てこなかったような気がします。
 きちんと整理ができていないのですが、場合によっては、フェーズや課題、目的によっては流動化していったほうがいいものもあったりするということを、もっときちんと整理することによって、流動化を推し進めるべきものはこういう領域で、専門性をぐっと育てるべきはこういう領域で、というある種のクライテリア、心のよりどころのようなものを持つことができれば、もっとクリアな施策、政策をつくることができるのではないかと思っています。大学が統合するということに関しても、専門性が高いURAと、私の所属の東工大も専門性が高いURAを育てるんですけれども、そうではなくて前回私が話したようなVC、ベンチャーで外へポッと出ていって、パッともうけてきて、サッと出口に行ってきて、そして、一花咲かせて、また、新しいシードを求めて旅立つというような方たちもいて、こういうのも実は経済の循環のためには非常に大切だと思っています。なので、この2つをやはり偏らずに議論していくというのがこの場ではいいかなと思います。統合の場でも、そういうことが断片的に何となく理解できたので、飯田先生にたくさん教えていただきながら、よりよい形を模索していきたいと思っています。
 今日はこの程度ですが、とにかく2つあるんじゃないかというのが私の課題意識です。
 以上です。
【小泉主査】  全ての大学が、全ての業務を担う、全ての人材を雇うということはあり得ないですものね。
【桑田委員】  あり得ないですね。
【小泉主査】  それをどう日本全体で考えていくのか。安定した雇用を求める部分もあれば、スキルを求める部分もあれば、いろいろな多様性があるというところです。ありがとうございます。
  それでは、今日のところはこれで終わりにできたらと思います。ありがとうございました。今日のヒアリングも踏まえまして、研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材について、今後も議論を深めていきたいと思っております。
 では、最後に、事務局より事務連絡をお願いいたします。
【川村人材政策推進室長補佐】  事務局からの御連絡ですが、次回のワーキングの開催日時につきましては、3月14日(木)を予定してございます。本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただき、主査に御確認の上、文部科学省のホームページを通じて公表させていただきます。
 以上でございます。
【小泉主査】  それでは、本日はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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