令和7年6月25日(水曜日) 14時00分~16時17分
Web会議
厚生労働省共用第9会議室
森座長、有江委員、石井委員、神里委員、楠岡委員、佐々委員、佐原委員、田代委員、土屋委員、徳永委員、戸田委員、長神委員、花井委員、日置委員、別所委員、前田委員、三浦委員、三成委員、武藤委員、山内委員、山本委員、横野委員、吉田委員
木村安全対策官、佐藤専門職、工藤専門職
江田推進官、西田専門官、舩冨補佐
飯村室長、新井専門官、八百野技術参与
小野企画官、沼澤係長
個人情報保護委員会事務局
厚生労働省医政局参事官(医療情報担当)付医療情報基盤推進室
内閣府 健康・医療戦略推進事務局
【森座長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」を開催させていただきます。
本日は、お忙しいところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
最初に、事務局から本日の出席状況と配付資料につきまして説明をお願いいたします。
【西田科学技術・イノベーション推進専門官】 厚生労働省大臣官房厚生科学課事務局、西田でございます。よろしくお願いいたします。
委員の皆様には、御多用の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は、森座長をはじめ、24名の委員が御出席されております。玉腰委員は御欠席、神里委員、戸田委員は15時頃まで、石井委員は15時半頃まで、三浦委員は15時50分頃までの御出席の予定となっております。
なお、阿部有生委員におかれましては、役職の変更に伴い、前回も代理出席いただいた日本製薬工業協会研究開発委員会副委員長、土屋由美委員が今回から御出席されます。
また、第2回合同会議に続き、議事(2)の議論に当たって東京大学大学院法学政治学研究科教授、米村滋人参考人にもオンラインで御参加いただいております。
事務局につきましては、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省より関係課室が参加するとともに、オブザーバーとして個人情報保護委員会事務局と内閣府健康・医療戦略推進事務局、厚生労働省医政局参事官(医療情報担当)付が参加しております。
なお、事務局等のメンバーは参考資料1―2を御覧ください。
本日の合同会議はWeb形式で実施しておりますが、森座長のみ厚生労働省会議室にて現地参加いただいております。
議事の開始前に注意事項を御説明いたします。
委員の皆様は、発言の際は挙手ボタンを押していただき、座長に指名された後にミュートを解除して御発言ください。発言されないときはマイクをミュートにしておいてください。また、ライブ配信を行っておりますので、御発言の際はできるだけゆっくり、はっきり御発言いただくようお願いいたします。
続いて、資料の確認をいたします。
委員の皆様は、事前にお送りした資料を御参照ください。
議事次第のほかに、「資料1 武藤委員発表資料」、「資料2 長神委員発表資料」、「資料3 倫理指針の見直しについて」と参考資料1-1から5をお配りしております。
なお、資料は随時投影させていただきますが、通信環境が悪くなった場合は、通信負荷軽減の観点から資料の投影を中断し、音声配信を優先するなどの対応を取ることがありますので、御了承願います。
以上でございます。
【森座長】 御説明どうもありがとうございます。
それでは、議題(1)「倫理指針の見直しに関する委員からの意見」に入らせていただきます。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
【西田科学技術・イノベーション推進専門官】 厚生科学課事務局、西田でございます。
前回の第3回合同会議において、倫理指針の見直しの方向性(案)について御議論いただきました。その中で、被験者保護などの基本方針についての認識を共有しつつ、全体の議論を進めることとなり、関係する委員などの見解を伺った上で倫理指針への反映について検討する方向性で御了解いただいておりました。
今回、武藤委員より「人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策について」として患者・市民参画に関する御見解、長神委員より「我が国のバイオバンクとその倫理指針上の位置づけを巡って」としてバイオバンクに関する御見解をプレゼンテーションいただくことといたしました。
それぞれの委員の御発表の後、10分程度ずつ質疑応答の時間を設けます。
それでは、武藤委員よりプレゼンテーションをお願いいたします。
【武藤委員】 東京大学医科学研究所の武藤と申します。よろしくお願いいたします。
次をお願いいたします。
令和5年度から令和6年度までの2年間、厚生労働科学研究といたしまして人を対象とする生命科学・医学系研究における患者・市民参画の推進方策に関する研究というのを採択していただきました。本日はその活動内容の概要を御紹介いたします。
本日のプレゼンで私が用いる用語については、暫定的に日本語のほうは患者・市民参画、それから、英語で略称で使うものとしてはPPI(Patient and Public Involvement)を用いますが、これ自体が絶対的な表現ではないということも含めて、今日は仮置きで聞いていただければと思います。
この研究班の活動計画といたしましては、海外での患者・市民参画の推進状況、それから、国内でのゲノム医療研究などに関連したPPI活動のレビュー、国内でのPPI活動経験者への調査、この3つを中核といたしまして、研究会の開催やヒアリングなどで外部の意見もお聞きしながら、医学研究に関する指針等での論点整理と提言をするというものでございました。
この計画においては、千葉大学の東島仁先生、国立健康危機管理研究機構の高島響子先生、神奈川県立保健福祉大学の中田はる佳先生に分担研究者として加わっていただきました。
次をお願いいたします。
まず、人を対象とする研究の倫理に関する国際的な指針での書きぶりについてです。2016年に国際医学団体協議会(CIOMS)が示した指針において、研究参加者や関連コミュニティーの参画を研究から得られる利益の享受、それから、脆弱な立場・少数者を排除しないという観点から推奨しているものがございます。
CIOMSは、特にコミュニティーの参画に関して、提案されている研究計画がその影響を受けるコミュニティーに関連して確実によいものであるということを保障するべきであるという観点、それから、特に少数民族や社会的に阻害されている人々を対象とする研究の場合には、コミュニティーの参画が特に重要だと指摘しております。
それでは、次をお願いいたします。
こちらは第1回の合同会議の資料をお借りしたものですが、世界医師会のヘルシンキ宣言でも同様の指摘が入っているということの御紹介です。ヘルシンキ宣言は昨年改訂されましたが、被験者という呼び方をやめることとか、あるいは緊急事態においても倫理的な原則が尊重されることに加え、研究における不平等や脆弱な立場とされる方々に対する画一的な対応に対する注意喚起というのを行っております。
次をお願いいたします。
このヘルシンキ宣言の中で、新たに研究参加者やコミュニティーによる有意義な関与というものが追加されております。これはCIOMSと同様に、研究参加者や関連コミュニティーの優先事項や価値観の尊重を強調しているという点が特徴であります。
また、臨床試験に影響力がある医薬品の臨床試験の実施に関する基準ガイドラインというのが今改訂中で、パブリックコメントが日本でもなされたところですけれども、この文書の付属文書において、患者、患者支援団体、患者コミュニティーの関与を得ることは重要だとされております。こちらはより実務的な利益があるという趣旨での記載となっております。
次をお願いいたします。
今度は国ごと、地域ごとの状況で調べた結果をお話しいたします。
最も施策が細かく進んでおりますのは英国、カナダ、オーストラリアかなと思っております。政府が主導して目指すべき患者・市民参画の在り方、理念、重視すべき点が患者・市民を含む包括的な議論を経て法令・指針の形で示されている。それが一度示しただけではなく、かなり頻繁にアップデートされているという特徴を持っております。
また、3番目に記載しておりますように、研究に関する情報発信やコミュニケーションなど全体に底上げすることというのがセットで求められていて、4番や5番にありますようにかなり細やかな説明、FAQ、手順書、それから、謝金などの実務的なガイドライン、ツールなどが整備されているのが特徴となっております。
次をお願いいたします。
EUにおきましては、行政、研究機関、企業、患者団体などが協力して大きい協業の団体をつくったり、そのプロジェクトを運営したりという特徴がございます。その中で研究における患者・市民参画の普及や、特に患者人材の育成というところに力を入れております。ここに挙げておりますIHI、EUPATI、PFMDの3つが主立った団体ですけれども、EU各国からここに集っている患者さんや市民が研修を受けたり、登録されたり、そういった形で人材が育成されているというところや、あるいは品質保証に関するガイドライン、これは患者・市民参画に関する品質の基準ですけれども、そういったルールが公開されたりしております。
韓国については、国として統一された推進方策はございませんが、日本では行われていないユニークな取組が行われています。例えば日本では今般の新型コロナウイルス感染症対策の後に国の行動計画に加わった感染症のリスクコミュニケーションに関して、このアドバイザーの公募というのは韓国では2016年から始められております。また、日本では本格実施されていない医療技術評価に関しまして、医療技術評価に関する研究のアイデア出しから実際の運営への参画といったところを公募で患者さんや市民の方々が協力しております。
次をお願いいたします。
そのように海外でいろいろなやり方があるのですけれども、御注意いただきたい点として、この患者・市民参画を推進している国においても用語や定義は多様、特に英語圏でも多様であるという点であります。
PPIという用語が日本では普及しておりますけれども、例えばこれは英国でもともと政府の戦略などに入っていた用語ですが、今は政府は患者という言葉を取りまして、Public Involvement in Researchという言い方をしております。英国での定義は「市民に対する、市民についての、市民のための研究ではなく、市民とともに、または市民によって実施される研究」という定義になっております。
カナダは患者参画(Patient Engagement)という言葉を使っています。患者参画とはという定義がございまして、患者が研究の管理、優先順位の設定、実施に有意義かつ積極的に協力する場合に行われるものだとまとめられております。
オーストラリアにおいては、消費者・コミュニティー参画という言葉が充てられています。Consumer and Community Involvementです。この消費者というのは日本だと特別な意味を持つ、とてもここから患者を想像するのは難しいと思うのですけれども、オーストラリアにおいては、医療に関する様々な政策の文書で患者が登場するときにConsumerという言葉がよく使われております。研究のガバナンス、優先順位の設定、研究の実施及び知識の移転において、研究者と消費者が積極的に連携することという定義がなされております。
次をお願いいたします。
英語のInvolvement、Engagementはいろいろあったのですけれども、この使い方も明確に意味を分けて使っている国もあれば、EngagementがInvolvementを包含するような言い方もあって、なかなか悩ましく感じたところです。
最近の学術論文ではPatient and Public Involvement and Engagementとこれを全部つなげて呼ぶような形で包摂しようとしております。重要なのは意味のある参画になっているかどうかという点でありました。
私どもとしましては、日本語の総称としては既に通じております患者・市民参画を推奨したいと思っておりまして、ただ目的や対象に応じて、患者の参画が必要な場合、あるいは市民の参画が必要な場合、障害者の方々の場合には当事者という言い方もあります。そういった使い方もあるだろうと思いますが、大きくは患者・市民参画でよいのではと感じます。
英語の表記は、現在のところ、PPIEというのがありますので、国際的な表現に合わせる、それから、プロトンポンプ阻害剤の略称としてのPPIとの混同を防ぎたいという趣旨から、PPIEではいかがでしょうかと考えています。
次をお願いします。
日本では研究開発の領域以外で患者・市民参画は進んできたと思います。患者にとって分かりやすい疾患や治療の情報発信とか、医療安全、あとは都道府県での医療政策の策定過程、診療ガイドラインといったところが2000年代の後半から今日まで進んできたところかと思います。
次をお願いします。
研究開発における患者・市民参画は、政策として入り始めたのは2010年代の中頃からであります。最初にゲノム医療実現推進協議会、その後、がん対策に関するもの、それから、AMEDがガイドブックを出し、臨床研究・治験の推進に関する方向性の文書、免疫アレルギー疾患研究10か年戦略などで書かれるようになり、PMDAでも患者参画ガイダンスというのを出されています。
次をお願いします。
この近年が法律も関わって大きいと思いましたのが、2024年の認知症施策推進基本計画におきまして、アウトプット指標として国が支援・実施する認知症の人と家族等の意見を反映させている認知症に関する研究事業の数が評価の対象となっています。
日本の状況をまとめますと、2010年代からAMEDが主に主導する形で認知が広がって、自主的な取組も増えていると思われます。施策としては、海外とちょっと違うのは、研究開発あるいは疾患の領域ごとに導入が進んできたという点ですので、そこの領域に入らなかった疾患や研究領域については取組に差があるというところと適切な実施に向けた支援が不十分というところが課題かと思われます。
次をお願いします。
というわけで、研究開発への患者・市民参画には、研究の透明性の確保とか様々な利点がある一方で、研究者にとって都合のよい利用、形骸化、患者・市民協力者の搾取といったことについては警戒感も高まっております。
また、生命倫理の観点から論議を呼ぶ技術の利用においては、これを患者・市民参画をもってのみ解禁の根拠として使うことは適切ではないとも言えます。
ですので、幾つかまだ議論は国際的にも動いておりますが、日本でも、人を対象とする研究の倫理の観点から、この研究開発への患者・市民参画の意義、位置づけを整理する必要があると考えました。
次をお願いいたします。
研究成果の一部を御紹介します。分担研究者の高島響子先生が中心になって、国内外の様々なPPI事例を、特にこれは厚生科学課のお仕事でありましたので、ゲノム医療研究やAIなど中心に調べております。
この中では事例収集を行い、右側の図にありますAMEDのガイドブックで研究の8段階というのを示しているのですが、この8段階ごとにどれぐらいの事例があるのかということに加え、英国が示している類型があって、PPI活動の種類別の類型があるのですけれども、こちらを横目で見ながら国内の活動を精査しています。
次をお願いします。
結果としては、まず文献として出てきたのは、国内のPPI実践のうち、報告があるものは医学系研究の24件ということでありました。AMEDのガイドブックの類型でいきますと、衛生研究の早期の段階でのPPI実施が多いということが分かっております。また、英国の活動上の分類でいきますと、文書などの査読が最多であるということが分かりました。
ただ、活動が行われていても、文献として報告が上がっていないものが結構あるのではないかということで、様々な調査を追加して行った結果、いろいろな形態のものが分かったというのが、字が小さくて恐縮ですが、二次調査のほうに表れております。御紹介は時間の関係で割愛させてください。
次をお願いいたします。
また、参画の形態として、ボード設置型と活動内容による個別募集型というのがありました。ボード設置型というのは、研究機関や研究プロジェクトのほうで委員会をつくって、特にPPI活動に特化した委員会の中で様々な活動や運営をともに進めるというタイプです。個別募集型というのは、こういう活動をやりたいので協力してくれる人を募集しますという形で、実施コストが小さめ、短期間で終えられるような軽い作業も多いというタイプのものがございました。
では、次をお願いいたします。
もう一つの主な結果が国内でのPPI活動経験者の調査とそのインタビュー内容を動画で公開するという取組であります。この中では、国内でPPI活動を実施した経験がある研究事業で、異なるステークホルダーが参画しており、研究者、PPIのコーディネートをする仲介者の方、また、PPIの協力者の方がそろってインタビューに応じていただける事例を優先し、右の表にあります4つのプロジェクトから御協力をいただきました。
次をお願いいたします。
分かったこととしては、このPPIのコーディネーターという方が非常に重要な役割を果たしているということであります。研究者が作成したセミナー資料に助言をしたり、あるいは患者・市民と研究者の意見をすり合わせをしたり、両者の間に立って活動されている方というのがいらっしゃるということであります。こういう仲介者がいらっしゃることがまず発見の一つ、それから、PPIに協力することの価値は人によって様々だったということがインタビューの結果分かっております。さらに、研究者がPPIを主導していくということが非常にうまくいく秘訣であるということも分かりました。
次をお願いいたします。
以上のような中核的な研究3つを踏まえまして、私どもから、今回の倫理指針の改正におきまして、もし倫理指針での記載を追加、検討していただけるのであればこんな形はいかがでしょうかということを2枚のスライドを使って御説明します。
まず、前文において、国際的に人を対象とした研究への患者・市民の参画が求められるようになってきたという認識を示していただけないか。さらに、国内でも様々な取組が進んでいるということも追記していただいてよいのではないかと思います。できればガイダンスにおいて、背景となる理念が、例えばRRIであったり、シチズン・サイエンスであったり、あと、DEIもそうですね。そういったものがあるので、複数の文脈から後押しされているのだということを書いていただくと、なぜこれをやることになったのかということが分かりやすいかと思われました。
次に、原則の中に患者・市民参画の観点を追記していただくということで、8つある原則のうちの1つ目に「患者・市民の視点を尊重し、」ということを加えていただいてはどうかということを提案いたします。
3つ目、用語の定義ですけれども、呼称は先ほど申し上げたとおりです。この定義としまして、国際的なものや様々なものを踏まえて、「本指針における患者・市民参画とは、患者・市民の経験や知見・願いを、研究者等との緊密な連携のもとで、人を対象とする生命科学・医学系研究に活かしていこうとする取り組みのことである」というのはたたき台としていかがでしょうかということを提案したいと思います。
また、「患者・市民」の定義につきましては、患者、家族、元患者、未来の患者、研究参加経験のあるもの、その他研究によって影響を受ける幅広いコミュニティーを想定しているが、研究によって参画を考慮すべき対象はしっかり検討すべきだということをたたき台として提案いたします。
次をお願いいたします。
次に、研究者の基本的な責務のところで、今回は研究代表者の責務に追加を御検討いただきたいと考えました。その書きぶりとしましては、研究代表者において、研究計画への患者・市民参画の要否を考慮し、導入する場合にはその目的を明確にし、適切な実施方針を検討すること。導入しない場合には、その理由を述べられるように備えておくことという責務の追加です。患者・市民参画をやるようにという責務ではなくて、やるかどうかよく考えて、やるのだったらしっかり計画を立ててやってほしいというのが私たちからの提案となります。
次に5番目、研究機関の長の責務のところですけれども、研究者や倫理審査委員に教育の責務があると思いますが、この中に患者・市民参画に関する研修についても言及していただけないか。これは「望ましい」という書きぶりではどうかというのを提案しております。
6番目、研究計画書です。こちらは特に変更はないのですけれども、ガイダンスの中でよくある誤解を解いておきたいということで、患者・市民参画そのものは倫理審査の対象にならないということを明記してはどうかと思います。実施方針を研究計画書に加えたい場合は研究方法の欄に書けばいいのではないかということを提案したいと思います。
7番目、倫理審査委員会の役割・責務について、一般の立場にある委員の方の役割として、この患者・市民参画の観点も意見を述べていただきたいということを追加したいと思っております。
次のスライドをお願いいたします。
倫理指針に入っていただくと、これからまたすごく変わってくると思うのですが、それで終わりではなくて、諸外国にもありますように実務的なツールを充実させていくことが普及の鍵で、よくない形での患者・市民参画、形骸化とか害というものを減らすということに役立つと思っております。また、経験者同士が交流を図っていくことや、委員を公募しているというときにはその状況が分かるポータルサイトなどを充実させることで、よりよい日本での患者・市民参画の普及につながっていけばと考えております。
以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【森座長】 武藤委員、大変詳細に御解説いただき、ありがとうございました。
ヘルシンキ宣言の2024年の改訂に取り込まれたコミュニティーの「意味のある関与」に関連して、今日の患者・市民参画への動きにつきまして大変詳しくお話しいただきました。
それでは、委員の先生方から御質問、御意見をいただくこととなっております。よろしくお願いいたします。挙手にてお願いいたします。
田代委員、お願いいたします。
【田代委員】 御説明ありがとうございました。
特に指針への入れ込みの提案のところなのですけれども、義務化して形骸化するということをかなり懸念しつつ、丁寧に考えていただいたと思います。
私のほうからは1点コメントと1点質問です。指針への入れ込み方をこれから検討していくことになると思うのですが、(2)と(7)はとても良いと思いました。患者・市民参画は研究の価値を高めるという観点で導入されることが重要なので、原則としてソーシャルバリューに関わる項目に入れるのは適切だと思います。あと、倫理委員会の一般委員の役割も最近だんだん良くはなってきていますが、ここに入るのは良いと思いました。なかなか難しいのが基本的責務のところで、ここに書かれているように、要否を考慮するというのは良い表現だと思ったのですが、導入しない場合に理由を説明せよというのは結構きつい感じもしました。特に現時点で進んでないところ、それこそ予防医学とか、高血圧とか、そういう領域の研究者にとってはなかなか説明しにくいところがあるので、この辺りはどうしていけばいいのかなと思った次第です。
質問としては、今の指針との絡みで、研究班でも検討されたかもしれないのですが、第4の1の(6)という、疫学指針から存在していた、要は特徴的な集団を研究対象とするときに事前に相談しましょうという項目があり、これは今の水準からすると書きぶりとしてはおとなしい感じなのですが、ある種のコミュニティーエンゲージメントとか、コミュニティーコンサルテーション的なものが含まれている気もします。そこで、これとの関係というか、例えばここの項目をアップデートするやり方もあるのではないか思ったのですが、(6)でのコミュニティーとの事前相談との兼ね合いで、もし研究班で議論したことがあれば教えてください。
【武藤委員】 田代先生、御質問ありがとうございました。
2つお答えしたいと思うのですけれども、研究代表者の責務の追加の件で理由を述べられるようにする。「備えておく」というニュアンスにしてあるのですけれども、これは導入しないことを例外的に釈明せよという趣旨ではなくて、率直に要らないと思っているということをどういう理由で要らないと考えているかということを言えるように、準備はしておいていただけたらいいのかなと考えました。ほかの割と強力に推している国でもそれは求めているという印象はありますので、日本語で書いたときにこれがすごく強く伝わってしまうようだったら考えないといけないのですけれども、なくてもいいのかな。分からないですが、どちらでもいいかとは思いますが、一応趣旨としては責めているわけではないということです。
あと、特徴的な集団の絡みのところは、脆弱な立場の方の研究参加について今回この指針でどうするのかに結構関わるかなと思って、実は触っていないという感じです。なので、この先、この指針における社会的に弱い立場の方の扱いが変わるようだったら、そこの中でヘルシンキ宣言の一部に出てきたりCIOMSにも出てきたニュアンスを込めるというのはあり得るかなと考えます。
以上です。
【田代委員】 ありがとうございます。了解いたしました。
以上です。
【森座長】 では、花井委員、どうぞ御発言ください。お願いします。
【花井委員】 武藤先生、ありがとうございます。
指針にこれに盛り込むというのは、ある種盛り込むことによって広げていくというニュアンスが現状から言ったら強いのかなと思うのですけれども、心配しているのは現場で研究をしている医師、特に臨床に近い先生だけれども実はよくこのこと自体認識していないというところもあるので、結構これは野心的な盛り込みなのかなという気がしています。
一方で、1つ心配なことがあって、薬機統制の関係で、企業が委託企業を挟んで行う場合があって、そのときに外部の問題をどう考えるかというのがテーマとしてあって、例えばコミュニティーの患者会とかが参加する場合であれば、血友病患者会は世界連盟が一応その患者会がちゃんとその国の患者の利益を代表しているかどうか審査するという仕組みがありまして、それでオーソライズして、その患者会は血友病患者の利益を守っている団体だとやるという仕組みがあるのですが、それが幾つか立っているときにどのコミュニティーが利益をちゃんと体現しているかというのが分からないときに、登録をするにしても教育システムといって、割とそこで裁かれているのですけれども、分からない形になっているので、そこはどう考えていいかというのが質問です。
あと、薬事関係で、完全な治験であれば完全に薬事なのですけれども、臨床研究であっても企業のスポンサーとかかなり大きなファンドがいろいろと委託企業を使って患者団体とコミュニケーションをして調査項目を反映するみたいなことをやっているのですけれども、そういうところも非常にこういうプロセスで進んでしまうと、患者会も誰でも彼でも参画ということになってしまうというところをどう考えていいかということが気になるところでした。
以上です。
【武藤委員】 花井委員、ありがとうございます。
十分お答えできるか分からないのですけれども、今回想定しているのは必ずしも患者団体の人たちに限らない、患者団体に入っていない人たちもぜひ加わってみませんかということが視点に入っていて、その際に個々の患者・市民の方が応募されたりするときに、利益相反の管理はさせていただくことになると思います。それは経済的なところと責務的なところ、役務に関するところではあると思います。
あとは、本当にその患者さんや家族や御遺族が研究対象となるコミュニティーのために活動されているかどうかというのは、一緒に活動してみないと分からないという面もあり、どこかでそれを研究者側も判断しなくてはいけない場面があったり、あるいは応募していただいたり活動する前に受けていただく研修なり事前知識というものの中でフォローしていくということになるのかなと考えています。
私の研究班としては、なるべく気軽に始めてほしいという気持ちもありつつ、一方で必要な手続、諸外国でやっているような人の手続についても両方見ていかなくてはいけないなというところで、バランスを取りながら提案したところではあるのですけれども、多分今おっしゃっていただいたことは、指針というよりもツール類ですね。患者・市民参画をどういうふうに普及させるかに必要なガイドやいろいろなところの中でぜひ反映していくといいのかなと思いました。
お答えになっていますか。
【花井委員】 ありがとうございます。
一つはコミュニティーベースの話と、それから、ここでいう市民というもので、手続も別だし、参加の仕方も別だということは理解しているつもりなので、そういう形で進めていくのはいいかなと思います。
よく議論になるのは、結局、主導権を取られている。研究者に使われているのではないかみたいなニュアンスのことがしばしば起こるので、かといってけんかするというわけではないのだけれども、リテラシーという言葉は好きではないのですが、同じ立場で参加しているのだという意識はやはり市民のほうも醸成しないとうまくいかないなと思いました。ありがとうございます。
【森座長】 では、続きまして前田委員、御発言ください。
【前田委員】 前田でございます。
資料の20ページについて2点、質問等をさせていただきます。
まず、(4)の研究代表者の責務への追加についてでございます。この点については、質問と申しますか、私がお尋ねしたかったことについては既に田代委員への回答としてお示しいただきましたので、私の考えを少し述べさせていただきます。患者・市民参画について規定することは、ヘルシンキ宣言の規定を含め、各国の取組の状況を見ても、意味のあることではないかと考えます。その上で、1つ目の矢印の部分でございますが、先ほど田代委員からもお話がありましたように、指針本文の中で、後段、すなわち、導入しない場合にはその理由を述べられるように備えておくこと、という規定を置くことについては、患者・市民参画の実施が実質上強制されているように受け止められて、逆に形骸化する、という懸念が生じる可能性もあるのではないかと考えたところでございます。
次に質問でございますが、20ページの(6)についてです。ここにはガイダンス案として、患者・市民参画については倫理審査の対象にはならない旨が示されています。しかし、研究計画書の記載事項については、その全てを審査対象とすると考えている倫理審査委員会が多いのではないかと思います。このため、患者・市民参画の重要性を示し、研究計画書に記載するようにするのであれば、審査の対象とすることも考えられますが、審査の対象としないということについて、武藤委員のお考えを教えていただけましたら幸いです。
以上でございます。
【武藤委員】 前田委員、御質問ありがとうございました。
今の2点は関係があることなので、まとめてお返事させていただきます。
まず、主に英国とかオーストラリアの例の中で、倫理審査委員会が研究計画を審査する際の審査対象として、必ず書かなければいけない項目として患者・市民参画の方針という欄があって、そこが埋まっていないと審査を受けられないという状況があります。ただ、それは埋めない場合があってもよくて、やらないほうがよい場合とかやりたくないとかできないときには、理由とか状況を説明してくださいということで審査の対象にしているというのが前提としてあります。
それとともに、もう少しよくある誤解として、患者・市民参画をやろうとすると、それ自体は研究ではないのだけれども、人を対象とした研究と混同されて、それ自体の倫理審査を通さないと患者・市民参画はできませんという例が起こりやすいということで、それは研究ではないから、それ自体を審査対象として審議するのはやめたいねというところから、この6番のガイダンスで書いてはどうかと提案をしたということがありました。
私どもとしては、日本でこれからじわじわちゃんと広めていこうというところで皆さんが真面目に取り組まれていくのかなと思うと、ただ、無理があるといけないので、研究計画書の中に患者・市民参画に関する実施状況というのを独立した項目として審査対象に置くことは今は避けてもいいのかなと考えましたので、研究方法の中で書きたければ書いたらいいのではないかという意味で(6)を置いています。
(4)のほうは、研究代表者にぜひ考えていただきたいということから、やらない場合があってもいいのだけれども、やらないときにはどうしてかということが言えるようになっていてほしいなということもあり、書いたのですが、ちょっと強過ぎるというニュアンスの御意見を複数いただいているので、少し考えなければいけないかもしれないと思いました。
以上です。
【前田委員】 ありがとうございます。
もう一点、よろしいでしょうか。
仮に患者・市民参画について規定を設ける場合には、ガイダンスや他の媒体で丁寧に対応しておくことが重要ではないかと考えます。
研究の内容も多岐にわたるため、患者・市民参画の実践内容をどこまで例示できるかについては、現実的には難しい側面もあるとは思います。しかし、患者・市民参画については、研究者についても、倫理審査委員会及び同事務局についても、理解が十分には浸透していないのが現状ではないかと思いますので、対応をしておかなければ、仮に倫理審査委員会や事務局、また、研究支援部門が研究者への助言を求められた場合においても、対応が難しくなるのではないかと考えた次第です。
本日は、時間が限られていますので次の機会にでも、諸外国の取り組みなどがあれば教えていただけましたら幸いです。
【武藤委員】 ありがとうございます。
今の点は大変重要だと思いますけれども、多分ガイダンスには書き切れないので、今、ツール類が散逸していろいろなところにあるのです。日本にもあるのですけれども、ひとところに集まっていないので、そういう参考資料の場所をガイダンスでちゃんと示すということはぜひやるべきかなと思いました。ありがとうございます。
【森座長】 では、続きまして別所委員、御発言ください。
【別所委員】 武藤先生、ありがとうございます。
お尋ねしたかったのは、資料の3ページ目とかにも記載していただいていますけれども、参画を依頼する研究参加候補者の帰属するコミュニティーの積極的で持続的な参画とか、その人々の地域の慣習や規範に対する敬意を表明する一つの方法でもあると記載してあって、非常にいいことだと思うのですけれども、この患者・市民参画を進めていくときに、やはりインフォームド・コンセントの関係でいうと、従来のインフォームド・コンセント以上に丁寧な説明というのが必要なのではないかなと思っていまして、倫理面での手続保証という観点からも、そこの参画していっていただくときの説明のアカウンタビリティーとかというところをきちんと加重するというようなことを考えなくていいのかどうかというところで先生の御意見を聞きたかったのです。
【武藤委員】 お答えになっているか分からないのですけれども、導入するとなったら、例えばどういう計画で患者・市民参画活動をやるかということについての説明は当然すると思いますし、それは実施方針の中に組み込まれているのかなと思います。そこで、こういった情報は協力する方には事前に伝えておきましょうという項目のある程度のリストは海外でもありますし、日本でもつくることはできると思いますけれども、インフォームド・コンセントとはまたちょっと違うかなという理解をしていまして、もう少し一緒に話し合いながらやっていく活動でもありますので、気軽に質問ができたり、分からなかったら分からないなりに情報共有をしたりというようなことで、対話を研究者側とあるいは仲介者としっかりやれる体制をつくるというところを軸にしながら適宜情報提供をしていくという順でやっていくのかなと考えていますが、イメージと合っていますか。すみません。お答えになっていますか。
【別所委員】 いえ、ありがとうございます。
気になったところは、単なるインフォームド・コンセントを超えた以上のプラスアルファのコミットメントというのがやはり参画者側には必要になってくるのではないかなと思っていて、そこの説明をきちんと補完していかないと、本質的な意味というのですかね。本来的な意味での患者・市民参加はなかなか難しいかなと思っていて、そのプラスアルファのコミットメントが必要になってくる部分の説明をちゃんとするというところはどこかでちゃんと触れといたほうがいいのではないかなと考えて質問させていただいたのです。
【武藤委員】 分かりました。この指針の中で触れられるのだったら、確かにそれは大事なことだと思いますが、あるいは実施方針の例の中に協力者の方にちゃんと説明をするということについて触れておくとか、あるいはこういう具体的な活動の負担とか想定についてしっかり触れるとかということがどこか読めるところがあるといいかなと思います。ありがとうございます。
【別所委員】 ありがとうございます。
【森座長】 ありがとうございました。
この後、お二方の委員からの御質問でこのセッションは一旦終了します。
では、有江委員、御発言ください。
【有江委員】 よろしくお願いします。
武藤委員、PPIとかにPEとかに関してとても詳しい情報をいただき、ありがとうございました。よく理解できました。
私は以前から患者・市民参画とか関与について基本方針に含めてはどうかという意見をこの委員会でもお伝えしておりました。少なくとも基本方針に加えるべきかどうかという議論を行ってほしいと前回もお伝えしたわけですけれども、まずはこれを基本方針に入れるかどうかという議論は確実にしていただいて、その上で、それをどういうふうに指針の中で規定に入れるのか、あるいはガイダンスとかでいろいろ触れるのかというところは議論すればいいと思いますけれども、どういうところでこういう患者・市民参画という概念とか考え方をどういうふうに盛り込むかというのは後でもうちょっと考えていただきたいと思います。私は先ほども申しましたように、もともと基本方針に入れてほしいという思いがありましたので、その立場から武藤委員からいろいろな案をいただいているスライド、特に19ページ、20ページのところに、質問ではないのですけれども、私の個人的な意見を述べさせていただきます。
まず、19ページの基本方針の中の1番の社会的・学術的意義を有した研究を実施することというところに加える形で入れていただくというのは、私はそういうアイデアはなかったので、9番目に持ってくるしかないのかなと思っていたのですが、こういうところに持っていくというのは一つの案としてよい案かなと思いました。
(3)の用語の定義につきましては、やはりこれは第1章の総則の第2に定義づけで入れるというよりは、例えば以前疫学指針と臨床指針が統合されたときに、弱い立場にある者への特別な配慮というところが基本方針に盛り込まれたわけですけれども、そのときに、基本方針のガイダンスの中で弱い立場にある者の定義について説明をされて、今でもそのまま記載されていると思います。患者・市民参画についても、そういうような形でガイダンスのほうに入れて説明してもいいのではないかと。それはもしかしたら将来的に定義の中、各規定の中で患者・市民参画ということがいろいろなところに出てくるのであれば、改めて用語の定義に上げていかないといけないかもしれませんが、私は少なくとも現時点では基本方針に入れていただいた上で、ガイダンスに解説というのでしょうか。説明するのでいいのではないかなとは思っておりました。
あと、スライドの20なのですけれども、ちょっと長くなって申し訳ありません。先ほどからいろいろな委員が御意見されていますけれども、(4)のことについても、導入しない場合にはその理由を述べられるようにしておくことということで、先ほどから武藤委員がいろいろ説明されたので、そんなにきついことではなくて、そういう趣旨でこういうふうに書かれたのだなということはようやく理解しました。ただ、導入しない理由についてはその理由を述べられるように備えておくことということは、裏を返せばそれを書きなさいというようにも聞こえなくもないかなと思いましたので、ここは慎重に検討するべきではと思いました。
(5)の研究機関の長の責務等に患者・市民参画に関する研修を受ける機会を確保することが望ましいということを追加することについては、それはとても重要なことなのだけれども、そうすると、先ほど言いましたような社会的に弱い立場にある者への特別な配慮についても特出しして本当は研修を受けたほうがいいのではないかという話にもなるのではないかと思いますので、このテーマだけに特化して研修することは望ましいと述べることについては、もう少し考えてもいいかなとは思いました。これは絶対に反対というわけではないのですけれども、ほかにも同様に重要なものがあるのにこのテーマにのみというところはどうかと思いました。
あとは、(6)の患者・市民参画は倫理審査の対象にならないということについて、その趣旨については先ほど武藤委員からとても丁寧に分かりやすく御説明いただいたので、審査の対象にならないという意味は理解したところですが、最初に説明があったように社会的・学術的意義に加える形で患者・市民参画を基本方針に含めた場合に、例えば委員会では学術的・社会的な意義についてもしっかり審査するわけなのです。そういうところを研究の始めにとか、背景で、あるいは科学的な根拠というところで審査することになるので、審査の対象にならないといったときに、それがどういう趣旨なのかというのは先ほど武藤委員が説明いただいたことがちゃんと伝わるようになればいいかなと思いました。
第7に関しましては、私はこの意見は賛同いたしますということです。(7)の意見については賛同いたします。
以上でございます。長くなりました。ありがとうございました。
【森座長】 有江委員の御回答につきましては後にさせていただきまして、15時に御退室予定の神里委員と戸田委員から御発言をいただきますので、神里委員、もし御発言がございましたらお願いします。全般に関しまして、どうぞ御発言ください。
【神里委員】 御配慮いただきましてありがとうございます。
私からは、本当は次のバイオバンクについて質問があったのですけれども、そちらについては事務局のほうにメールで質問をさせていただきたいと思います。
以上です。
【森座長】 ありがとうございました。
では、戸田委員からも御発言ください。お願いいたします。
【戸田委員】 私もバイオバンクについて意見等がありますので、退室するときにチャットで書いて出します。
以上です。
【森座長】 ありがとうございました。
それでは、議事に戻りまして、今の有江委員の御発言につきまして、武藤先生から御回答もしくは御意見はいかがでございましょうか。
【武藤委員】 いえ、特段ございません。御指摘ありがとうございます。
【森座長】 では、楠岡委員、御発言ください。
【楠岡委員】 楠岡です。
今回はヒト指針を対象にしている検討会ですので、ヒト指針の中に入れ込む場合ということで御提案いただいていると思うのですけれども、ヒトを対象とするいわゆる介入研究は、知見もあれば、特定臨床研究もあり、あるいは再生医療的な研究もある。そうしますと、従来からいろいろな新たなものが入るたびにそれぞれの規制ごとに少しずつ形が変わってしまって、統一性が取れていない。それがいろいろな混乱のもとになっているので、むしろPPIのように全てに共通するようなものであれば、別立てで一つ規制というまでいくかどうかとしてつくって、全てがそれを準拠するというような形のほうが、それぞれ何か変えるごとに各規制を変えなくてはいけないということがなくなるので、もうちょっとスマートで、また、逆にいろいろなことも言いやすいのではないかと思うのですが、その辺りは研究班の中で何か検討があったかどうか教えていただければと思いますが、よろしくお願いします。
【武藤委員】 楠岡先生、ありがとうございます。
研究班としては検討していませんが、先生がおっしゃるとおり、これはどの臨床研究に関わるルールでも同じだというところは私も認識しておりまして、それぞれのルールが変わるときにここもちょっとずつ変わっていってしまうと結構嫌だなというのは十分感じているところです。ありがとうございます。
【楠岡委員】 ありがとうございます。
【森座長】 それでは、続いて佐々委員、御発言をいただけますでしょうか。
【佐々委員】 ありがとうございます。くらしとバイオプラザ21の佐々です。
先ほど武藤先生のお話でも有江委員の御発言でも市民参画のところを基本方針に入れていただけると期待しました。これはまさに米村先生が言ってくださった理念のところに当たる部分だと思いますので、こういう方向で今後議論を進めていただけたらと思っております。ありがとうございます。
【森座長】 御発言どうもありがとうございました。
武藤委員の発言にございましたように、原則で患者・市民の視点を尊重するという視点から、この内容につきまして今後より詳細に議論してまいりたいと思います。
このセッションはどうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、長神委員より御発言をいただくこととなっております。よろしくお願いいたします。
【長神委員】 東北大の長神です。できるだけ手短にさせていただきます。よろしくお願いいたします。
最初に、本日は私の個人のプレゼンではありますが、東北大学東北メディカル・メガバンク機構で一緒にバイオバンクを運営している仲間と、あるいは日本中でバイオバンクを運営している多くの方々とも御議論申し上げた上で、本日のプレゼンに臨んでいることを一言申し上げさせていただきます。
次をお願いいたします。
委員会の先生方は必ずしもバイオバンクに明るくない方々もいらっしゃるかなと思いましたので、バイオバンクの定義をいろいろなところから多様なものをひいてきました。これら全部紹介する時間はありませんが、おおむね試料・情報を蓄積して、その上で広い目的に向かって使っていくということが定義になっていようかと思います。必ずしもヒトの試料・情報とは限らないというのがバイオバンクという言葉で、似た言葉にバイオリポジトリとかバイオリソースという言葉もあったりします。例えば植物であったり、菌であったり、いろいろなものをためているものもあります。今日これから私がこの委員会の中でお話をする範囲としては、ヒト由来の試料・情報のバイオバンクだということに限定させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。
バイオバンクの歴史と種類、これもいろいろありますが、疾患の方から、例えば手術で生じた検体の残余をそのまま保管するというところがおおむね最初のきっかけです。現在は健常な方々に御協力をお願いして採血をさせていただいて収集するということもあり、国レベルの大規模なものは2000年前後から多くの国で始まり、日本では東京大学医科学研究所のバイオバンク・ジャパンさんが草分けにあたります。一方、いわゆる希少疾患のサンプルを保管するというただそれだけに着目すれば、もうちょっと前から実施しているところもあろうかと思います。
国レベルの大規模なものはゲノム情報の蓄積をしていることもあり、特に国際ヒトゲノム計画によりドラフト版が公開された2000年前後、2003年の完全版が公開された頃からゲノムの情報の蓄積を始めたところもあります。
属性として、いわゆる診療機関併設型として診療機関で収集したサンプル及び診療情報等を集めているものなのかどうかという違い、また、疾患を対象とするものなのか、一般住民が対象なのか、家系情報を集めるのか、などいろいろな違いがございます。
用途・目的として、もともとは試料・情報を集める機関が自ら利用するという想定で始めた収集・保管という側面がありますが、現在は収集した機関が一切関わらずに第三者のみが使うということがあります。我々はそれを分譲という言葉で申し上げています。分譲先のみが研究に関わって、試料・情報を収集する機関はそこへの試料・情報の提供のみを行うというようなこともあります。
用途となる研究についてもいろいろな種類があり、特定の疾患の患者さんについて集めたのであるならば、その患者さんの病気に関することに限定する場合、あるいは疾患であれば全て広く使われる場合、あるいはさらに広く研究目的であれば例えばヒトのルーツの研究であっても含む場合、ということもあります。また、いわゆる研究だけではなくて開発の目的も含むのか、という違いもあります。また、日本では多くのバイオバンクは公的資金を基に公的に運用されていることがあります。
次に行ってください。
バイオバンクの建付け、同意の在り方についてお話します。既に本日の委員会での御発言の中で、包括的同意という言い方もありましたが、必ずしもここは用語が完全に定まっているわけではないと認識しています。広範な同意という言い方で、自分の発表の中では取り上げさせていただきます。英語で言うとBroad Consentといいます。
参加者から試料・情報を提供いただくに当たって、広い同意、広範な同意をいただいています。広範な同意をいただくに当たっては、いただくことについておおむね倫理審査が行われています。バイオバンクに蓄積された試料・情報に対して利活用申請が各研究機関、研究者からあり、利活用審査が行われて、その研究計画に対して承認がされると、公開やオプトアウトを伴う場合が多いですが、その後、利活用されます。そして、各研究機関における研究計画については、倫理審査が行われています。このプロセス全体の中で、倫理審査は、一番上の広範な同意を取るところと研究計画に対しての倫理審査の2か所、そして、審査という意味ではさらに利活用の審査、合計3か所であります。
広範な同意については、同意時点では、誰が使うのかを必ずしも特定せず、何に使うのかということを詳細までは検討せず、種別だけ規定するケースが多いです。研究内容についても、先ほど申し上げたようにどのレベルまでの研究まで行われるのかについて完全には特定せずにということがあります。
では、次に行ってください。
指針上の位置づけとして、試料・情報の収集・提供を行う機関というものが、第2の用語の定義の(14)にあります。試料・情報を研究対象者から取得し、または他の機関から提供を受けて保管し、反復継続して他の研究機関に提供を行う業務を実施するものをいうということです。そうすると、第7でそれを実施する場合の研究計画に記載すべき事項などの規定がきちんとあります。このスライドの記載はバイオバンクが参加者から試料・情報を受け取る際の規定がそれなりに存在しているということで、⑭等を少し引用させていただいている次第です。
次のところに行ってください。
では、提供するときの規定はどうなっているのかというところは、インフォームド・コンセントを受ける手続の中でそれなりに書かれようとしていて、他の研究機関に既存試料・情報提供しようとする場合で(3)の記載になります。(イ)の(ア)に該当せず云々という規定がございます。こちらの記載は必ずしもバイオバンクに限らない規定になっています。それから、何々に該当せず、何々に該当せずといった表記が長く続いたりして少し分かりづらい記載になっています。また、既存試料・情報の提供のみを行う者の手続という記載もあり、こちらの「等」の中身は不明瞭な形で書かれています。バイオバンクの利活用は、一体これらの記載の中でどこにどういうふうに該当するのかということが分かりづらいということはよく指摘されているところです。
次のページに行っていただきます
結果として、バイオバンクの利用者側、特に企業の法務や倫理審査委員会の関係者などがバンク試料の提供を受けるに当たって、この指針の第8のどこをどう読めばいいのか分からずに困惑されています。結局、個情法の規定を頼りにするべく、個情法の規定に立ち返られる、そしていろいろな形で検討された結果として、どのような適用になるのか不明瞭なので、コンプライアンス的な判断から安全を見ようということになり、利活用を回避されるようなケースがあることはよく伺っている次第です。
次のページに行っていただければと思います。
先回の合同会議の開催に対して、私は追加で意見提出させていただきました。指針第8の1(3)ア(ウ)マル1の要件を満たさず、学術例外が適用される指針8の1(3)ア(イ)に基づき広範同意を取得していれば、オプトアウトにより第三者提供ができる、その際、バイオバンクから試料・情報の分譲を受ける民間等の利活用側では、広範同意を満たしていないのではないかと慎重な判断がなされる。聞くところによれば、どこまで同意を取れば広範同意を取れていると判断できるのか、基準が明確ではなくて、コンプライアンスの観点で利用者側が不安になり、結局断念されるというようなことを何回か聞いている、ということを申し上げます。
また、その他、バイオバンクは試料・情報の収集・提供を行う機関として「研究者等」に該当するが、「既存試料・情報の提供のみを行う者」ではなくて、「既存試料・情報の提供を行う者」に該当するなど、似たような用語で区別が困難です。これらのことを意見として提出させていただいています。
次のページに行っていただきます。
審査の話をさせていただきます。審査の二段階性ですが、倫理審査があった上で利活用審査があります。倫理審査が当該の研究実施の妥当性を審査するために試料・情報の提供を受ける各研究機関側で行われて、利活用審査はバイオバンク側で行われます。バイオバンク側で行われる審査では、試料がどのぐらい貴重なのかといった事情から厳しさが変わってきたりします。こうした形で、2つ審査が行われるというのが基本的な建付けです。
次のページに行っていただきます。
一部のバンクでは利活用審査とともに倫理審査も行われているようなケースがあります。こちらは指針上では、こうしなくてはいけないということではないもので、利用者側から批判をしばしばいただいているところです。利活用審査とともに倫理審査が行われるのは、必ずしも明確な必要性を示す根拠がなく、二重になっているのではないかという御批判を浴びています。
また、バイオバンクを構築するところ、試料・情報を参加者から受けるところでの倫理審査が機能した上で、利活用審査がきちんと機能して、利活用審査の中で当該の利活用が当初の倫理審査をきちんと満たしているという審査が含まれるのであるならば、最後の倫理審査が本当に必要なのかという指摘があります。これは先回米村先生がおっしゃっていた出口規制の話とつながるところがございます。海外ではこの最後の倫理審査のところが不要なところも多く、むしろそのほうが主流なのではないかなと思います。
次のページに行っていただきます。
倫理審査のプロセスですが、バイオバンク利用における倫理審査は本当に必要なのかについてです。現状、指針の規定で、既に学術的価値が定まり云々という形での規定があって、これは多分HeLa細胞とかそういったものを想定している規定だと思いますが、これが審査対象から外れていますけれども、現状でのバイオバンクの試料・情報は該当するとは考えられておりません。ただ、海外の代表的なバイオバンクであるUK Biobankや、あるいはNIHの規定などでは、バイオバンクにきちんと保管されているものの利活用に際しては新たな審査不要と判断されるケースが多いように伺っております。
また、バイオバンク側の利活用審査にも倫理的にも意義があると考えた場合には、試料・情報の収集・提供を行う機関が指針の規定を遵守して運用されて、利活用審査が単純に枯渇の状況などを審査するだけではなく、提案された研究が当初の倫理審査事項の範囲内であるということを改めて確認して行われているということであるならば、こちらも妥当性があるのではなかろうかなと思います。
次のページに行っていただきます。
もう一つ違う話題で、海外提供のお話をさせていただきます。
こちらのスライドは製薬協さんのプレゼンの許諾をいただいて引用していますが、第2章の第8の1(6)のガイダンスの11のところで、国際的に提供する場合についてです。外国に対して提供する場合には、適切な同意を得る必要がありますが、再同意となると、バイオバンクにおいては実質的に不可能なのではなかろうかと思われます。この件を、ガイダンスで見ると、学術研究の例外に関しては明記してあるが、公衆衛生例外がきちんと適用されるのかあまりよく分からない記述になっています。書いていないことは安全を見て、結果として実施されない、となると、なかなか海外提供がうまく回らなくなるところがあります。実際は指針上の建付けも法律上の建付けも十分性認定を受けているEU・英国での扱いを考えるならば、基本的には国内対象のものと一緒になるはずだと思うのですが、いろいろな状況から、海外提供がきちんと進まないという現状に至っていると思います。
次のページに行っていただきます。
指針と個情法などの法律との関係と違いについて話題にさせていただきます。
先回の合同会議でもございましたが、試料に対しては個情法が適用されませんが、指針は研究における試料取得やバイオバンクなどが行う試料の第三者提供などにも適用されます。例えば、ヒト試料の取得や提供を研究以外の目的という形にすると、倫理指針の適用外となり、倫理面の担保は難しくなります。また、情報においては、倫理指針では、死者の件などに例示されるように上乗せの規定が存在し、目的を研究外とする、即ちこれは研究ではありませんとしたほうが、むしろ扱いの自由度が増して緩くなるというような状況があります。
これに対して、先回の合同会議で米村先生からプレゼンいただいた際に、私は、学術研究例外のように実施主体が学術研究機関であるかないかによる例外の規定ではなくて、目的によって規定することを考えられないのか、ということを申し上げました。本日の資料のこのページの最後に書いてあります。それに対して、なかなか難しい面もあると伺いましたが、改めてこの件のことを提起させていただきます。
それから、法律における用語概念と倫理における用語・概念と類似による混同が生じていることを指摘します。例えば倫理指針における研究機関というのは個人まで含めて適用されるのに対して、学術研究機関というのはかなり狭い定義が法律でなされています。この二つが非常に似ているがために混同されるケースもあります。
また、オプトアウトという言葉は、私も今回このプレゼンの中でも簡単に使っていましたが、指針や法律では直接「オプトアウト」という言葉では書かれてはいないかと思います。法律の規制で第27条第2項にいわゆるオプトアウトで得た情報をまたオプトアウトで提供することを禁じる規定があります。しかしながら、ここでいう法律のオプトアウトは、いわゆる届出を要するような狭い意味でのオプトアウトです。そのため指針に基づいて、あるいはインフォームド・コンセント等に基づいて行われているオプトアウトとは異なるのですが、後者のオプトアウトで得た情報を外に提供するに当たって、もう一度オプトアウトでということは違反になるのではないかということで心配を受けて御相談をいただくケースもありました。こういった概念の類似による混同も何とか避けるような手だてができないかと思いました。
次のページに行っていただきまとめます。
私の立場としては、試料・情報を提供いただいた方々は広く医学研究に貢献したいという意思を持たれていらっしゃるので、その意思を最大限尊重しながら、恣意的な運用を排して、かつ無用な規定や複雑な記載から来る誤解等によって利活用が進まないことを排したいという思いから今回のプレゼンをさせていただきました。
バイオバンクの立場から倫理指針の検討への意見として、適用の明確化と平易化、IC手続等でバイオバンクからの提供がどこに当たるのか、より分かりやすい記述をいただきたいということや、誤認されやすい用語や例外との関係などをどうにか整理していただきたいなと思っています。
また、広範同意を取得できる条件とその結果できることが不明瞭になっているので、そこの明確化もぜひと思っています。
更に、倫理審査の簡易化、定義の明確化等に関しても発言させていただきました。
バイオバンクは、公益に資する共通の研究インフラとして、透明かつ広い参画を受けた運用を行っていくので、ぜひこういったことを御検討いただければと思いました。
以上でございます。
【森座長】 長神委員より大変詳細にバイオバンクの国内での運用の実態についてお話をいただきました。また、倫理指針上の位置づけにつきましても様々な御提案いただいたところでございます。
では、戸田委員からチャットにて御意見を賜っています。事務局から御紹介をお願いいたします。
【西田科学技術・イノベーション推進専門官】 厚生科学課事務局、西田でございます。
事務局にて代読させていただきます。
研究機関での倫理審査はよいとして、その計画にバイオバンクでも倫理審査を行うところと行わないところがある。指針のガイドラインなどでその基準を明記したほうがいいのではないかと御意見をいただいています。
以上でございます。
【長神委員】 こちらの御質問は、11ページのところで申し上げた点です。バイオバンクでの倫理審査は必ずしも指針で必要とされているとはないものです。確かに戸田先生がおっしゃるとおり、いろいろなところからの批判も大きいところですので、明確な記述をしたほうがいいのではなかろうかなと思っています。
【森座長】 それでは、続きまして吉田委員より御発言いただきます。
【吉田委員】 ありがとうございます。
今の戸田先生の御質問と同じ11ページのところで、長神先生の御説明内容に確認なのですが、利活用審査の後にもう一回倫理審査をするのは不要だという意図ですか。
【長神委員】 利活用審査に当たって、各研究計画の倫理審査が本当に必要なのかどうなのかというところは議論に値すると思っています。
【吉田委員】 各研究機関の最初の倫理審査は要るけれどもということですか。
【長神委員】 各研究機関という言い方が混同を招きました。バイオバンクを立てるところで、どんな試料・情報を蓄積するのかについての倫理審査が既に行われています。その上で、どんなものだったら使っていいかということの基準も決められています。かつその上で、利活用審査が行われているとう場合に、研究計画を立てて、その研究計画について倫理審査を受けることが必要なのかどうなのかという点です。海外の事例ではそこの倫理審査は不要であるという判断をされるケースが結構あります。
【吉田委員】 つまり、個別研究についてはもう要らないのではという御意見ですか。
【長神委員】 はい。利活用審査についてきちんとしたものがあれば、この倫理審査は絶対必要だとは思われないという意味です。
【吉田委員】 ありがとうございます。
【森座長】 今の長神委員の御発言は、12ページの上の部分の内容と同じことで理解してよろしいでしょうか。
【長神委員】 おっしゃるとおりです。
【森座長】 ありがとうございました。
では、引き続きまして、有江委員、どうぞ御発言ください。
【有江委員】 ありがとうございます。
長神先生、とても分かりやすい御説明をありがとうございました。
11ページのスライドについて、先ほど最後のというところで吉田委員が質問されたので、どこを言われているのかが分かりましたけれども、私は利活用審査に加えて、バイオバンク側で試料・情報を他機関に提供するときの倫理審査について以前コメントしたことがあります。この審査の要否について検討していただきたいというところに私は意見を持っておりまして、例えばもともとバイオバンクでは倫理審査を受けて、これを構築してバイオバンクが運営されている。そして、試料・情報を他機関の研究計画に基づいて出す場合には、他機関のほうで倫理審査もされている。バイオバンクが研究者として他機関と一緒に共同研究を行う場合、自分たちも試料・情報を出すのだけれども、研究者としても利活用したい場合については、私は多分長神先生と意見はちょっと違うと思うのですけれども、これについては研究者として、共同研究者として倫理審査が必要なのだろうという意見を持っています。一方で、バイオバンクでは、もちろん皆さん御存じのように、既存試料・情報の提供のみを行う者にもなり得る。共同研究者ではなく、そういうような立場にもなる場合があると思うのです。そういう場合に、倫理審査が必要なのかというところを私は問いたいと思っているのです。というのは、倫理審査で、バイオバンクが試料・情報を提供するだけの者である場合、何を審査するのかといったら、要はオプトアウト、インフォームド・コンセントの手続の部分を審査するということになるのです。そうすると、それだけを見るということでかなり形骸化していると思いますし、実際にバイオバンク側ではなくて研究者側で一緒に審査をしてもらっていいというような規定があるのです。ということは、バイオバンク側が本当に既存試料を提供するだけ、情報を提供するだけのときの倫理申請は本当に必要なのですかというところはぜひ問いたいと思っているところではございます。
すみません。ちょっと長くなりました。
【長神委員】 戸田先生が先ほど書いてくださったことと同じことかなと思っています。有江先生が問題にされたのは、私のスライドで、倫理審査で右肩にはてなマークを付けて赤い枠から外れている、ページ上真ん中にある倫理審査のことだと思います。実際に例えば東北大の東北メディカル・メガバンク機構でもここの倫理審査は行っていませんし、多くのバイオバンクで倫理審査は不要という判断をされているケースも多いと思います。一方で倫理審査を別途されていらっしゃる方々もいて、運用上分かれているところです。ここに関しては実際に我々も不要ではあろうと考えています。
【有江委員】 今の御意見について、少しだけ追加して意見を言わせてください。
ただし、バイオバンクの情報というのは大体個人にひもづいているもので、個人情報を出すことになるので、そうすると、指針上は倫理審査委員会の審査を受けなければならないということは規定の中には明確な記載があるのではないでしょうか。ですので、今もし倫理審査をしていないとするならば、指針にのっとっていないような手続を行っているところもあるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
【長神委員】 それは、提供に当たって各研究機関が倫理審査を行っているわけですよね。
【有江委員】 いえ、情報の提供のみを行う者の場合も、個人情報であれば倫理審査が漏れなくついてくるような規定にはなっていたかと思いますので、そういうような規定を読んで、それに対応して、バイオバンク側でもそのような手続で事務局なども結構苦労されて体制を整えておられたところもあったかと思いますので、それも含めて、そこをもう一遍明確にしていただいた上で、かつ、本当に倫理審査は必要ですかというようなところをもう一度検討していただきたい。同意とかオプトアウトみたいな手続は必要であろうと私は思うのですが、倫理審査については本当に必要ですかと。なぜならば、審査自体が通常の倫理審査委員会の審査ではない、インフォームド・コンセントのところだけを見るという形にはなっているので、それでも必要なのでしょうかというところを問題提起したいと思います。ありがとうございます。
【森座長】 では、次は日置委員、御発言ください。
【日置委員】 ありがとうございます。
幾つか実務上スタックポイントがあるかなと思って伺っておりまして、長神先生の御意見をいただきたいと思っております。例えばバイオバンクと類似の仕組みをしながら試料・情報を収集して提供するようなところはあると思います。これは営利目的も含めてです。そのときに、医学研究として研究計画を立てて対応していく。例えばインフォームド・コンセントであれば、第8の1の(1)の手続をしなくてはいけないものというのは、バイオバンクとしてはこれも必要なのか、類似の手続を踏むべきなのかというところの御意見をいただきたいのが一点。
2点目は、今のところ、第8の1の(3)、ここは既存試料と要配慮個人情報の多機関提供のところが該当してくると思うのですが、そのときに原則は口頭ICを取りましょうとなっていて、先生が挙げていただいている例外規定は前提として口頭ICは困難という個人情報保護法の解釈上は公衆衛生例外ですとか生命倫理、ここの例外要件をまず満たさなくてはいけないということがあると思っております。そこのところは実務上非常に高いハードルになっているのではないかと思っておりまして、個人情報保護法とパラレルに考えることについては、バイオバンクというものから考えると必要なのかというところの御意見をいただきたいのがもう一点。
3点目が受け手側、先生が今出していただいているスライドで言うところの各研究機関と研究計画と言われているところについては、第8の1の(5)の手続を取らなくてはいけないということになっていると思うのですが、これをバイオバンク側の負担にして、ここについては簡素化するなどの手続を取られたほうが先生としてはよろしいと考えておられるのか、この3点についてお聞かせいただくことは可能でしょうか。よろしくお願いいたします。
【長神委員】 たくさんの御質問があったのですけれども、最初にまず2点目の話から御回答したいと思います。2点目については、要配慮個人情報等の提供の場合に、基本的に口頭でというのは難しいところですが、口頭ではなくてもいい、文書でもよろしいのだと思います。基本的に再同意を取ることが求められて、それが難しい場合にということで、例外規定等その他でいわゆるオプトアウト規定があろうかと思います。おっしゃるとおり、長期にわたるバイオバンクでリコンタクトしてということは全然現実的ではありません。現実的ではないので、そこでの再度の同意のために参加者の方々にコンタクトしていくことはあり得ないというのが現実です。そうすると、どうしてもオプトアウトに頼らざるを得なくなりますので、特に海外への提供に関する規定の話として、製薬協さんからも御意見をいただきました。例外規定を使わなくてはいけないのかどうなのか、そもそも最初にどんな条件であれば当初の同意で出してもいいのか、何でわざわざもう一度連絡をしなくてはいけないのかということについて、我々としては簡素化してもよいとはっきり読めるような規定にしていただければなと思っています。
それから、最後の件は第8の1(5)の話をしていただいたのはどんな話でしたでしょうか。
【日置委員】 手続で出てきた側が。
【長神委員】 どんな手続を行わなければならないのか、ということについては、実際に倫理審査の中でバイオバンクが実施すべきこととしてチェックを受けているということになろうかと思います。また、利活用側においては利活用審査の中で皆様がその条件を満たしていらっしゃるかといったところを審査の中で拝見させていただいて、お互い確認をしているというようなことになっているかとは思います。
【日置委員】 ちなみに、こういったところも当然所要の前提としてバイオバンク側で手続を履践することによって一定程度柔軟な(5)の運用をしたほうがよいのではないかと受け止めていたのですけれども、そういう理解で。
【長神委員】 すみません。ちょっと聞き取れなくて、申し訳ない。
【日置委員】 (5)のところの手続を確認したりする代わりに、(3)の手続等はバイオバンク側で一定程度何かハードルを設けることによって、一定フレキシブルな手続運用を考えていくという方向性なのかなと。
【長神委員】 もちろん例えば機関の名称とか住所とかその長とかといった個別の事項は申請書をいただくときに必ず書いてあったりしますので、そういった意味ではある程度既に担保されてはいます。例えばの話ですが、指針の規定において、容易に知り得る状態に置きと書かれていることについて、何と何と何を容易に知り得る状態に置くというところの規定があり、その全てを提供を受ける機関側でどうなっているかということの審査を行っていると、結局、それが冗長かつ二重になっていくかと思いますので、利活用審査で担保できているということであるならば、どちらか一本でできるのではなかろうかなと思います。
【日置委員】 ありがとうございます。
【森座長】 よろしいでしょうか。15時半で御退室予定の石井委員から御発言がもしございましたら、ここで伺ってよろしいでしょうか。議論中すみません。
【石井委員】 出ないといけないので、また別の機会に発言をさせていただければと思います。失礼します。
【森座長】 それでは、大変失礼しました。議論に戻りまして、日置委員、御質問の続きをよろしいですか。
【日置委員】 そもそもバイオバンク自体がこの倫理指針でいうところの医学研究として研究計画を立てて倫理審査を受けなくてはいけないのかと。要は、インフォームド・コンセントでいったら第8の1の(1)、新規の取得のところの手続を全部履践しなければいけないのかというところ、ここについては必要な場合とそうではない場合があると考えて対応されているという理解でよろしいでしょうか。もしそういった(1)の手続云々と考えることよりもバイオバンクというものは別のものとして考えたほうがよいと受け止めたほうがよいのか、先生の御意見をいただければと思います。
【長神委員】 現時点で、我々は、基本的にバイオバンクを立てるに当たっては、新規の試料取得なので、そこで倫理審査を受けて試料を取得しています。ただ一方で、診療の一環で取得された試料・情報等が何らかの形で蓄積されて、といったケースとまた違うかと思います。我々のように一般の住民に対して新規の試料をお願いする場合には倫理審査が必須だろうと思いますが、必ずしもそうではない別の形で試料が集まるときにはそういったケースには当たらないのではないかなと思います。
すみません。答えになっているかどうかよく分からないのですが。
【森座長】 それでは、時間の関係で、次は徳永委員の御発言に移ってよろしいでしょうか。
【徳永委員】 徳永です。
長神先生、ありがとうございます。基本的に先生の取り上げられたポイント、基本的な御提案に関しては私は賛同しております。
その上で3つほどコメントをさせていただきたいと思っていますが、まず第1に、先生が2枚のスライドを使われて、バイオバンクの定義とバイオバンクはどういったものかというのをあえて使われたということは、やはり必ずしもよく分かっていない方もいるのではないかという思いがあるのだろうと思いますが、私も同じで、自分がかなり以前の指針の改訂のときに経験したことなのですが、バイオバンクは私的なバイオバンクもあるということで、バイオバンクという言葉を指針から外したのです。その代わりに少し長い記述を使うことによってバイオバンクを示す言葉に変えてしまった。そこも一つの理由となった、指針の中でバイオバンク、それから、前回コメントさせていただきましたデータベースという用語も含めて、指針の中における記載が何だか分かりにくくなったという感想を持っていまして、ここで先生が説明されたような活動をしているバイオバンクとかデータベースの記載方法をもう一回考えていただきたいなと。明確にみんなが見て分かるような記載に考え直してほしいなというのが一つ。
それから、もう一つです。先ほども話題になっていましたけれども、倫理審査と利活用審査ですが、倫理審査はやはりそこに参加する研究者が研究計画を立てて、それを審査していただくという趣旨でございますから、もしバイオバンクに所属する研究者がその研究計画に参加しているのであれば、含まれた形で最初に代表者が所属する研究機関の倫理審査委員会の審査を受けて承認を得るということであって、バイオバンクの試料・情報を利用したいという申請があったときに、それに対して審査するのは利活用審査で十分であると。ちょっと言い方もまずかったかもしれませんが、研究計画について倫理審査を行うというものと、バイオバンクが利活用審査を行うというのは内容的にも別なものですし、役割も違うものです。それはきれいに分けられると思っていて、二重の倫理審査は必要ないと私は考えています。私の意見はそういうことです。それが第2番目。
第3番目は、残念ながら我が国における試料・情報の共有・利活用は海外、それも欧米のみならずアジアの国々にも劣っているのが現状であると言わざるを得ない。ですので、利活用がもっと活発になって当然ではないかと私は思っています。そういう意味で、たしか初回のこの委員会でも何人かの委員が御指摘されていましたけれども、個情法による定義とか個情法によるルールを一旦離れて、医療や医学研究の向上、あるいは人々の健康に役立てるための研究開発活動において、バイオバンクやデータベースに蓄積されている試料や情報をもっと活発に利用することに戸惑いとか躊躇が起こらないような指針の記述といいますか、指針の基本方針というのをもっと明確に打ち出すべきではないかと思っています。
私の意見なので、長神先生に質問しているわけではないのですけれども、一言、二言、もし長神先生からお考えをいただければありがたいです。
以上です。
【長神委員】 徳永先生、どうもありがとうございます。
特に最後のシェアリングのところでのご指摘ですが、基盤となる試料・情報が公的に構築されたら、それを多くの方々で使うことが、むしろ提供された皆様の意思にもかなうことであり、我々自身が発展させるべきことなのだと受け止めました。そのことをもう少し根本的なこととしてどこかで明記するべきなのではないかという御意見を拝聴して、それはまさにおっしゃるとおりだと思いました。私のプレゼンは今の規定に終始して指針の文言に落とそうとした面がございますが、おっしゃるとおりかと思います。ありがとうございます。
【徳永委員】 ありがとうございました。
【森座長】 すみません。座長の不手際で進行が押しておりますので、少し御質問の時間を短くしていただければと思います。
では、続きまして、土屋委員から御発言をいただきます。お願いいたします。
【土屋委員】 土屋です。
長神先生、バイオバンクの利活用の観点から貴重な御意見をありがとうございました。大変興味深く、製薬協としても共通の課題として認識している点が多々ございました。
本日の御発表に関して、製薬企業というバイオバンクを活用する立場のほうから2点コメントをさせてください。
まず1点目、同意内容の在り方の明確化について、御意見に賛同します。製薬企業の研究活動においては、個人情報保護法上、学術研究例外の適用を受けない、あるいは公衆衛生例外の適用は限定的であるということから、先生もコメントされておりましたけれども、コンプライアンス面の不安からバンクの利用が躊躇されるという事態が実際に起こっています。広範な同意については、民法、刑法、個情法の要求を満たした必要事項が指針に明記されるということを希望します。これはバイオバンクだけではなく、既存試料・情報の利用や研究計画変更の際の同意の在り方にも参考になると考えます。
続いて2点目、倫理審査の効率化についてですが、こちらについても議論を進めていただきたいと思います。バイオバンク側では、倫理審査に加えて利用審査が必要な場合がある一方、製薬企業では、さきに述べたように同意十分性について保守的であって、インフォームド・コンセントの説明内容、取得状況などの確認のために倫理審査に時間がかかり、研究開始までに長い時間が必要になっています。特に同意範囲やプライバシー保護については、バイオバンク側でしっかり審査いただいていますので、二重審査が避けられるのであればぜひ御検討いただきたいと考えます。
また、バイオバンク試料を含めた既存試料・情報の二次利用については、現状の日本の指針では欧米に比べて手続きが多くなっています。新たな侵襲・介入がある研究に比べると、患者さんの負担やリスクの小さいところでもありますので、国際競争力を強化するためにもシンプルな審査体制を望んでいます。簡素化によって得られるメリットは大きいと考えております。
以上です。
【森座長】 長神委員、どうぞ。
【長神委員】 ありがとうございます。
おおむね御賛同いただいた上で、さらに一歩踏み込んだ御意見をいただいたと承りました。どうもありがとうございます。
【土屋委員】 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【森座長】 今の土屋委員の御発言に関してですけれども、製薬企業の方が今のこのスキームに関わってくる場合は、研究機関を支援する形で関与、もしくは直接バイオバンクとのやり取りになるのでしょうか。どちらを念頭に置いていらっしゃるのでしょうか。
【長神委員】 研究機関のうちの一つとして、製薬企業さんが入っているバイオバンクに活用されるケースは結構あります。
【森座長】 指針の対象ということでしょうか。
【長神委員】 おっしゃるとおりです。
【森座長】 分かりました。
では、次に進んでまいります。佐々委員、御発言ください。
【佐々委員】 ありがとうございます。佐々です。
長神先生がご発表の中で、市民の立場や既存試料を提供してくださった方の御意思と尊厳を守るような流れをつくってくださって感謝しています。
今年、6月6日がバイオバンクの日に制定されました。こういう日を通して国民・市民にもバイオバンクというものの存在を知っていただいたり、既存試料を提供していただいた方への敬愛の気持ちを表したりするようなコミュニケーションもぜひ広げていっていただきたいと思います。そういう意味で、今回お示しいただいた「ご意思を尊重する」という姿勢を出していただいて、ありがとうございました。
【長神委員】 ありがとうございます。
コミュニケーションは非常に重要かと思いますし、バイオバンクに関しては試料を提供してから時間がたってから成果が出るようなケースがございますので、それもきちんと御説明する機会を持ったり、努力すべきことはいろいろあろうかと思います。ありがとうございます。
【佐々委員】 ありがとうございます。
【森座長】 では、続きまして、三浦委員から御発言いただきます。
【三浦委員】 長神先生、ありがとうございました。
先ほど来話題になっている11ページの最後の倫理審査は不必要なのではないかという部分で教えていただきたいのですが、確かにバイオバンクの試料・情報の利用に関してきっちりと審査されていれば、改めて最後の倫理審査は要らないのかと思いますが、ただ、試料を使ってどういう研究をするということについては、各研究機関において研究計画は倫理審査がなされるものかなと思っていましたので、海外でもそれが不要という部分をもう少し説明いただけますでしょうか。
【長神委員】 例えば我が国においても倫理指針において、がんの体細胞変異のことに関しては倫理審査の対象外であるという規定があると思います。あるいは、先ほど例に出しましたが、いわゆるコマーシャルに容易に手に入るような細胞だけを使うのであるならば倫理審査が不要となっているというケースがございます。それと同じように、バイオバンクの試料・情報の一部についても海外では不要となっているケースがそれなりにあります。もちろん全部が全部ではございませんし、今、アメリカではルールが変わりつつあるというようなところもあろうかと思います。現在のNIHの規定では、例えば我々のバイオバンクの試料・情報を使いたいという際に、向こうの研究機関での倫理審査はどうですかという問い合わせに対して、倫理審査事務局に問い合わせた結果、この使用の場合には倫理審査は不要であると判断されたという文書をいただいたというようなケースもありました。そういったケースも散見されるということを申し上げました。
【三浦委員】 そうすると、試料を使うことについてというわけではなくて、それを使ってこういう研究をするという研究計画そのものの倫理審査は不要ということですか。
【長神委員】 例えば海外では、IRBの審査については、生命倫理上の審査で承認を得ないと研究を進めてはならない、という規定からは外れるということだと思います。それ以外の、例えば日本においても各大学で研究の実施許可を取るということはありますが、そうした全然違う形で必要なのかも知れず、そういった議論はまた別の話かなと思います。指針で規定をして、生命倫理上の規定として規制の対象とするかしないかというときに、バイオバンクの試料・情報を倫理審査を必須として規制の対象とするかどうかというと、多くの外国でバイオバンクの試料・情報についてはいわゆる倫理審査の対象としていないと承っております。
【三浦委員】 ありがとうございました。
【森座長】 それでは、横野委員からの御発言をいただきまして、ここのセッションは最後になります。お願いします。
【横野委員】 簡単になのですけれども、これは御回答を求めるということではないのですが、今御質問があった件とも関係する内容として、私も審査を簡素化していくということは必要なことだと思っています。国内でも、指針の研究ではなくて、次世代医療基盤法の下で行われる研究については、指針上は法令の規定により実施される研究という枠組みで、利活用については認定事業者のほうでの審査に一本化されていて、倫理審査委員会による承認を個別の研究計画について各研究機関で受けるということについては必須とはされていないと理解しています。もちろんその場合には、情報のみの利用であるということであるとか、二次利用であるとか、入り口のところが丁寧なオプトアウトであるといった違いはあるのですけれども、法律の建付け等を無視した実質論にはなりますけれども、今、そのような形での審査でそれほど大きな問題が起こっているようにも思われませんので、そういったものを参考にしながら検討していくということはあっていいのではないかと考えています。
【長神委員】 ありがとうございます。
次世代医療基盤法の仕組みは、分かりやすい、いい事例をいただいたと思います。ありがとうございます。そのとおりです。
【森座長】 先生方、どうも御意見ありがとうございました。
では、今、11ページで御覧いただいていますこのスキームにつきまして、今回の指針の改訂の際に、その位置づけについて、改めて先生方の御意見を反映しながら考えてまいりたいと存じます。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、議事(2)「倫理指針の見直しについて」にさせていただきます。
事務局から説明をお願いいたします。
【飯村治験推進室長】 それでは、資料3「倫理指針の見直しについて」を御覧ください。
1ページ目です。
こちらは前回5月の合同会議の資料でございまして、主な意見マル1の個人情報保護法等との関係と、意見マル3のインフォームド・コンセント等の手続について御議論いただきまして、下段の見直しの方向性で、個人情報保護法との関係を整理し、研究の分類に応じた検討を進めるということにしております。
2ページ目を御覧ください。
こちらも前回の合同会議の資料でございまして、マル1として侵襲・介入を伴う研究、マル2として試料を用いる研究、マル3として情報のみを用いる研究の3つに分類し、この分類に応じたIC手続の見直しのイメージとしてお示ししております。既存試料を用いる研究と既存情報を用いる研究、マル2とマル3では原則としてオプトアウトだということを示した案を前回提示させていただいております。
3ページ目を御覧ください。
こちらは4月の合同会議での米村参考人からの説明資料の一部でございます。個情法の改正のために指針の改正を行って、頻繁な改正によって複雑になっている。そのため、現場が混乱しているということ。それから、個情法だけが重要、個情法さえ守っていればよいといった誤解を生んでいて、刑法や民法といった他法令が軽視されているような御指摘をいただいております。
4ページ目を御覧ください。
これまでの議論を踏まえまして、改めて同意手続の在り方に関する考え方を整理しています。
同意取得の方法については、1つ目の□のところで、現行の倫理指針では文書のICだけではなく口頭のICがありますけれども、20以上の説明項目を全て口頭で説明して、口頭で同意を受けるということはなかなか通常の研究においては難しいものではないかと考えています。
2つ目の□で、同意の在り方として、ICのほかに適切な同意があり、このICと適切な同意の違いが分かりにくいという指摘を以前からいただいております。
次に、試料・情報の研究への二次利用のための要件についてでございます。
1つ目の□では、医療行為では要配慮個人情報を含む試料・情報の取得では黙示の同意が得られているものとして成立していることが多く、侵襲が大きい手術とかの場合に関しては文書による同意を得ることが多いとの認識です。いずれの場合も、医療行為によって試料・情報を得る時点においては、具体的な研究への二次利用は想定されておらず、研究への二次利用に関する明示的な同意を受けていないということが多いという理解でございます。
2つ目の□のところ、このような状況においては、患者の権利・利益、例えば試料では所有権、情報ではプライバシーなど、こういったものの侵害にならないために、正しい利用目的の下で用いられることの明示が必要と考えられるとしております。
下段には参考として民法と刑法における考え方の米村参考人の御見解を記載しています。
マル1として、医的侵襲行為における同意について、例えば、もし緊急性のない状況下で同意なく注射をすれば傷害罪に該当する。研究における医的侵襲行為は、研究対象者の同意及び医学的正当性がある場合に認められる。
マル2他方、試料や情報を提供するという提供行為は、贈与契約または売買契約などと性質決定され、ヒト試料の提供を正当化できる要件は、有効な契約締結の要件及び契約内容に依存することとなる。
マル3当該契約がない状況下における提供においては、利用や提供の目的の正当化が求めるということを記載しております。
5ページ目を御覧ください。
これらを踏まえまして、改めて同意手続の見直しの方向性案を提示します。
上段の見直しの方向性の案でございますけれども、同意の手続に関しまして、口頭ICと適切な同意をなくしまして、文章ICのみとしてはどうかという提案でございます。なお、文書ICであっても、研究の内容によっては、倫理審査委員会が認めた場合には、引き続き説明事項等の簡素化を認めてはどうかと考えております。
2つ目として、現行、既存試料を用いて研究を実施する場合の例外要件、すなわちオプトアウトで可としている要件の、当該既存試料を用いなければ研究の実施が困難である場合という要件を既存情報にも課すことにより、既存試料・情報を利用、提供する研究においてはオプトアウト手続を基本としてはどうかと整理しております。
3つ目として、これらの同意手続の在り方に関する検討と同時に、倫理審査委員会の在り方についても検討する必要があるのではないかと考えております。
これらを受けて、IC等手続の見直しのイメージ案を前回の資料であります2ページでの提示から一部変更しております。
まず、口頭ICと適切な同意をなくして、文書ICのみとしております。
試料を用いる研究と情報のみを用いる研究のみの文書ICには注釈をつけておりまして、研究内容により説明事項や同意取得の方法の簡素化も可能とするとしています。
また、既存試料を用いる研究と既存情報を用いる研究でのオプトアウトのところにも注釈をつけまして、当該既存試料・情報を用いなければ、研究の実施が困難である場合ということに限るという条件を追加しております。
また、前回2ページに示した資料では記載のなかった匿名加工情報の扱いは、左下の注釈で、個人情報の保護法の規定にのっとることとし、情報のみを用いる研究での新規取得時には、右下の注釈のように簡略化(事後説明)も研究内容により可能としております。
今回の見直し案で文書ICに一本化するほかには、現行指針との運用が大きく変わるのは、1点目が、仮名加工情報を新規作成する場合には、現行ではオプトアウト手続を求めていますけれども、個情法の要求事項に従えばIC手続は不要とする案となっています。
また、先ほどの長神委員からのプレゼンにも関連するところですけれども、包括的な同意を得ている場合の外国にある者への提供時にも、現在では再同意を求めていますけれども、包括的な同意がある場合には外国提供でもオプトアウトで可とする見直し案となっています。
また、簡略化による手続も、要配慮個人情報ではない個人情報にも新規取得基準にも認めるということが変更点となっております。
続いて、6ページ目を御覧ください。
同意手続等と見直しの案を整理した資料です。
上段が現行の文書IC、口頭IC、適切な同意の説明方法の例と同意手続の例を示しています。文書ICでは、文書、すなわち書面あるいは電磁的方法として画面や動画等を用いて説明し、理解を確認した上で同意の方法として電磁的方法による同意の意思確認も可能ですけれども、基本的には同意書への署名を求めていることが多いとの理解です。
口頭ICでは、文書を用いる口頭のみでの説明でも可であり、同意手続も署名ではなく口頭による同意の意思確認をし、電子カルテ等に記録する等でも可としております。
適切な同意では、必要な事項を個情法の趣旨に沿った合理的かつ適切な方法によって明示すればよく、アンケート形式など文書の閲覧や配付による説明方法もオーケーで、同意方法に関しましても電子メール、同意確認欄へのチェック、ホームページ上の同意確認ボタンのクリック、こういったことにより同意の意思を確認すればよいということになっております。
下段が見直しの案でございまして、先ほど説明しましたように文書ICのみとするということでございます。文書または電磁的方法により説明をして、同意の方法は同意書への署名、電磁的方法による意思の確認、または研究のリスクに応じては口頭による確認の上、記録を残すということでも可とする案としております。
7ページ目を御覧ください。
こちらは現行の指針とガイダンスでのインフォームド・コンセントと適切な同意の定義と解説を抜粋している参考資料でございます。
8ページを御覧ください。
主な意見マル2の倫理審査委員会に係る意見についてでございます。前回5月の合同会議資料でございまして、下段にある見直しの方向性(案)にもありますように、一括審査を必須とする研究の範囲や留意事項等を検討すること、審査の手順の分かりやすい記載、免除等についても議論するとしております。
9ページを御覧ください。
倫理審査委員会に関する見直しの方向性の案として、先ほどの同意手続の見直し案に伴い、研究ごとの同意手続等との妥当性を適切に判断する必要があるため、審査の種別については以下としてはどうかとしています。
新規研究の審査については、侵襲・介入研究の場合には、軽微侵襲のみの研究を除いて通常審査かつ一括審査を必須としてはどうかと。その他の研究、すなわち軽微な侵襲のみの研究や観察研究等では、迅速審査と一括審査については原則とするという現行のままとする案でございます。
変更申請の審査については、軽微な変更を除く研究内容の変更や研究対象者に影響があるものについては新規審査と同様ということで、侵襲・介入研究は通常審査、その他の研究では迅速審査とする。研究機関の追加、利益相反がある分担研究者の追加、軽微な研究内容の変更等、一定程度の確認が必要なものは迅速審査としてはどうかと。利益相反の該当がない分担研究者の追加、氏名の変更といった審査の必要性がないものに関しては報告事項とするの案でございます。
中段の2つ目の●では審査の質のばらつき等の課題が指摘されておりますが、さらなる審査委員会の質の向上についての検討が必要となります。
下段の3つ目の●ですけれども、現行指針でも委員への教育・研修を求めておりますけれども、これを強化していく必要があると認識しておりまして、例えばガイダンスにおいて軽微な侵襲のみの研究を除く侵襲・介入研究を実施審査する倫理審査委員会においては、臨床研究中核病院が実施する委員向けの研修を受講した委員を複数名含めるといったことなどを求めていってはどうかと考えています。
10ページを御覧ください。
こちらは参考資料となりますが、前回お示しした倫理審査委員会に対するアンケートの結果についてです。集計項目はほかにないのかという御意見を前回いただきましたので、追加の情報をお示ししたいと思います。
11ページを御覧ください。
前回に追加する情報としては、右下の年間の審査研究数が平均が69.54件、中央値が31件と審査件数はばらつきが大きいということになっています。また、年間の審査委員会の開催数は平均8.09、中央値も8回となっています。
資料3の説明は以上となります。
【森座長】 御説明どうもありがとうございました。
それから、この説明に加えまして、参考人の米村先生からこの後御発言いただきますので、お願いいたします。
【米村参考人】 米村でございます。
私のほうから1点だけ補足的に説明させていただきたいと思います。
こちらの資料3の4ページ目、PDFだと5ページ目となりますが、そこの下の部分に、山括弧で<参考;民法と刑法における考え方>という見出しがあり、私の見解という形での記載がされているかと思います。この部分、事務局のほうでおまとめ下さったということもありまして、少し民法と刑法の考え方が混在した形で書かれておりますので、その点、若干説明を補足させていただければと思います。
マル1は医的侵襲行為、すなわち、研究対象者に対して侵襲が実際に行われる場合に関するものです。従来、一般的に医的侵襲行為に関しては、刑法の側での議論がされており、「同意」プラス「医学的正当性」によって正当化がなされるということが言われてきました。民法側でそれほどきちんとした議論があるわけではないのですが、通常、刑法側の議論をそのまま受け入れておりまして、刑法における正当化事由が満たされれば、民法側でも正当化されると考えているというところです。
他方で、マル2、マル3は、どちらも試料提供および情報提供の問題を扱うものです。試料・情報の提供に関しては、むしろ民法の側で議論が活発でありまして、刑法側では民法上正当化される場合は刑法上も正当化されるというのが一般的な理解であると考えられます。
民法側でどのような場合に提供が正当化されるかについて述べたのがマル2、マル3で、マル2は契約により正当化される場合、マル3はそれ以外の根拠により正当化される場合という振り分けになっております。
マル2契約により正当化される場合というのは、贈与契約や売買契約などの形で試料・情報が提供される場合ということになります。情報に関して、贈与や売買という言い方が適切かどうかというのは若干問題があるのですけれども、いずれにせよ、何かしらの提供契約が行われまして、それに基づいて法律関係が形成されると、提供後の利用も正当化されるという関係にあります。
契約がないと、試料や情報の利用が一切許されないのではないかとお考えの向きもあるかもしれないと考えまして、付け加えたのがマル3です。特に情報を中心として、契約がなかったとしても、一定の場面では利用を正当化することができるという考え方が、従来から採られてまいりました。典型的には、報道目的の個人情報利用などがそれにあたります。例えば、犯罪報道などでは、容疑者の実名はもちろん、容疑者の居住地や生活背景なども当然報道の対象になるわけですけれども、それは本人の同意がなくても公共性に資するということで認められている情報利用となります。通常、所有権侵害、物の利用というのは公益性を根拠にしてもそんなに簡単には認められないのですけれども、しかし、一定の法的な手続を経れば所有権侵害も正当化される場合はあるというのが従来の考え方でして、そのような場面の一つとしてこういった試料提供の場面を位置づけるということは十分可能であると考えられます。
そういった形で、マル1、マル2、マル3全体として、医的侵襲や試料・情報の提供が民法、刑法の観点からも正当化されるということを書かせていただいた次第です。
長くなりましたが、以上です。
【森座長】 大変詳しく御説明していただき、ありがとうございました。
では、この後御意見を承りますけれども、事前に日置委員から御質問があるということで伺っていますので、どうぞ日置委員、お願いします。
【日置委員】 ありがとうございます。まさか挙手をしていないのにこんな時間を設けていただけるとは恐縮です。
今、米村先生がおっしゃっていた試料とか情報提供のところの正当化事由があればというところかと思いますが、今のところ、実務上は、例えば試料であれば発生の端緒によってはどなたに所有権があるとかも整理しづらいものもあると思いますので、あまりそういったところは考えられないというところがある気がします。
情報については所有権概念の対象ではないようなもの、無形物ですので、これについてはライセンス契約のような形でフォローして得られるかと思いますので、実務上そんなに混乱しているところではないのかなという気もいたしますので、今の実運用を踏まえつつ、通説的なところがないのであれば、一般的なところで対応されていくというのがよいのではないでしょうかと思っておりますし、指針で今書き切れるところではないという話であれば、そこは所要のものと対応されればよろしいのではないかと思っております。
以上でございます。その他の部分についてはまた別途手を挙げさせていただきます。ありがとうございます。
【森座長】 よろしいですか。
では、続きまして、有江委員から御発言いただきます。
【有江委員】 ありがとうございます。
スライドの5、PDFでいったら6ページになるかと思いますけれども、このページについて質問というかコメントがございます。
まず、最初のほうの文章で、文書ICであっても、研究内容によっては、倫理審査委員会が認めた場合は引き続き説明事項の簡素化ができると書いてあるのですけれども、この簡素化について、これまで適切な同意で求めていたようなレベルの簡素化ということでしょうか。つまり、これまで適切な同意というところで、通知や公開レベルの事項は最低限説明するようになると思うのですけれども、そのようなレベルの簡素化も視野に入れられているというのであれば、私は適切な同意をなくすことについては賛同したいころですけれども、それくらいの簡素化も認めるということかどうかということを一つ確認させてください。
あと一点、口頭ICをなくすことについては、理由としてはあまり行われていないのではないかということであったり、あるいは説明事項20項目ぐらいですかね、それを全て口頭で説明するのはかなり難しいのではないかというか、負担がかかるのではないかということなのですけれども、ただ、電話でのインフォームド・コンセントのケースがこれまで私が倫理審査した中ではなかったわけではないですし、あとは説明を文書で行って同意を口頭で受けるというような研究もあります。これらの場合は、今まで口頭でのインフォームド・コンセントに該当していたと思いますけれども、そのようなやり方で研究をされるようなケースも実際にあります。ですので、そのようなケースがある中で、口頭でのインフォームド・コンセントというものを全てなくしてしまうということについてはもう一度議論していただければと思ってございます。
以上でございます。
【飯村治験推進室長】 ありがとうございます。事務局でございます。
まず1点目でございますけれども、特に試料を用いる研究と情報のみを用いる研究では、文書ICとした場合においても、当然、従来は適切な同意でも特に情報のときはオーケーでございましたので、そこの説明項目はもともとの侵襲・介入試験並みのフル項目ということはならなくて、これは従前どおりの説明項目で十分だということはガイダンス等でも示していきたいと思っております。
2点目でございますけれども、6ページ目の下のところで文書ICに一本化したときの見直し案で書かせていただいていますけれども、説明方法としては、何か文書を渡しておいた上で電話で説明するとかというのは当然オーケーでございますし、同意の取得の方法も、右下に書いておりますけれども、口頭で意思確認をした上で記録を残すことも可とするという方針で考えております。
【有江委員】 そうすると、結局は文書で説明し同意をやはり受けないといけないということになるのですよね。これまでの口頭ICで記録作成というものはできなくなってしまうということになるのですか。
【飯村治験推進室長】 口頭のみは駄目だということです。何か文書を配付した上で電話で説明するとかはオーケーなのですけれども、本当に電話のみで完結するというのはなくなってしまうということです。
【有江委員】 事後措置として後で文書を配布するということはできるかもしれませんけれども、口頭同意でまずは研究を始めて、後で文書を発行するということになると、これは文書同意には該当しないと思うので、いずれにしろ研究が始まる前には絶対に文書を渡しておかないと試料も情報も使えない、研究を始められないということにはなってしまうのですよね。ですので、口頭でのインフォームド・コンセントは今まで広い、いろいろなタイプの口頭でのインフォームド・コンセントがあったと思いますけれども、そういうものに該当するものは一切認めないという形になるのですよね。説明が難しいのですが。
【飯村治験推進室長】 今の事務局案ですと確かにそうなってしまっている状況です。
【有江委員】 もしかしたら、そこについては、実際に口頭でのインフォームド・コンセントによる研究例というのはあるので、そこを全くなくしてしまうことについては、もうちょっとほかの委員の先生方にもお伺いしたいところですけれども、本当になくしてしまえるかどうかをもう少し慎重に検討していただくことは可能でしょうか。
【飯村治験推進室長】 もちろんほかの委員の意見も伺って、そこは口頭を残すのであれば当然残すという方向にしていきたいと思います。
【森座長】 では、この後意見を伺ってまいりますので、進めてよろしいでしょうか。
続きまして、前田委員、お願いします。
【前田委員】 10ページからの調査結果について質問をさせていただきます。こちらは前回もご説明いただいた資料でございますが、当日は質問の機会を逃してしまいましたので、ここで質問をさせていただければと存じます。
11ページのマル1には一括審査の対応状況と示されていますが、これが具体的に何を意味しているのかを教えていただけますでしょうか。すなわち、一括審査を行う体制が整備されているかどうか、ということを示しているのか、それとも一括審査の結果で、すなわち個別審査をせずに、研究実施の許可・不許可の判断をしている、ということを示しているのかということでございます。
仮に前者としますと、11ページには、マル1、マル2の結果が示されていますが、マル2の赤色で示す数値と緑色で示す数値の合計がマル1の赤色で示す数値になるのではないかと考えましたが、そうなっていないため、何を意味しているのかをお尋ねした次第です。
それから、もう一点、この調査の結果でございますが、例えば設置主体別など、もう少し具体的に結果を知りたいときに、どこかでそのデータを見ることができますでしょうか。と申しますのも、例えば11ページの下段には、事務局員数や審査件数、委員会開催回数が示されていますが、最初の事務局員数については最小値が1で最大値が19となっており、次の審査研究数については最小値が0で最大値が700となっています。また、次の1年あたりの委員会開催回数については最小値が0で最大値が65となっています。例えば最後の委員会回数が65回ということについても、その値が具体的にどのような状況を表しているのか、を知りたいところでございます。いずれにいたしましても、実態調査に基づく検討、という場合には、どのような施設でどのような対応がなされているのかを、ある程度正確に把握しておくことが重要であると考えております。また、質問項目の内容や表現も、結果の解釈に影響を及ぼすものであるため、結果を検討するときにはそれらを把握しておくことが重要と考えています。このような観点から、詳細なデータ等にアクセスできる方法があれば、教えていただけますと幸いです。
以上でございます。
【飯村治験推進室長】 ありがとうございます。
まず1点目でございます。この11ページのマル1のところは体制ができているかということでございまして、手順ができているかとかそういった形でございまして、一括審査の依頼が来たときに受けるかどうかがマル1です。マル2が実際に受け付けているかという形でございまして、これは実績を聞いているという認識でございますので、受入体制はあるけれども1件も受けていない、一括審査の実績がないというときには、マル2ではいいえのほうの青になっているというような認識でございます。
詳細な資料の提示に関しましては、もう少し詳しく出すことはできるのですけれども、例えば施設の設置主体で出してしまうと、設置主体が小さいところは施設が特定されてしまうのではないかということもあって、あえて出していないというのが現状でございます。
【前田委員】 施設が特定されない形で構いません。例えば10頁には円グラフで設置主体別の割合が示されていますが、ここで用いられている種別で結果を示した際に、仮に施設が特定される恐れのあるグループがあるとしますと、その部分については、いくつかの種別を纏めて結果を示す、そのような工夫をするとよいと思います。先ほど述べましたように、事務局員数などの値にかなりのばらつきがあるため、すべての種別を一括りにして結果を示すと、有意義な検討が難しくなるのではないかと思います。
繰り返しになりますが、どのような施設でどのような対応がなされているかといったことを、加えて申しますと質問項目の内容等をできる限り具体的に把握することは、調査に基づく検討という観点からは、とても重要なことではないかと思いますので、御検討いただけましたら幸いです。
【飯村治験推進室長】 次回、質問票は用意させていただくのと、もう少しどこまで出せるかは検討させていただきます。
【森座長】 では、次は田代委員から御発言いただきます。
【田代委員】 御説明ありがとうございました。
私のほうから、スライドの5枚目、同意手続等の見直しの方向性案に関して3点意見がありますので、述べさせていただきます。
1点目は、先ほどの有江委員の質問とも関わるのですけれども、私自身は、事務局で検討していただいたように、口頭ICとか適切な同意とか文書ICというのをなくしていくという方向自体は賛同していますし、事実上、事務局で提案していただいたような中身についてはよいのではないかと思いつつも、これを文書ICと呼ぶのは誤解が大きくなる可能性が高いと感じています。基本的にこれはインフォームド・コンセントとオプトアウトの二本立てだと整理されたほうがいいと思います。実際、今のインフォームド・コンセントの定義の中には文書で署名を得るというようなことが入っているわけではなくて、むしろ文書で同意を得るというのは侵襲のある研究に限定されているわけです。大事なことは、要は同意の記録をどう残すかということで、先ほど有江委員からもお話がありましたが、例えば電話というケースもありますし、あとは事務局でも書かれているような、今だとメールで返事を書いていただくとか、ボタンを押していただくとか、いろいろな形で記録を残せますので、重要なことは同意の記録をきちんと残していただくということであって、それが書面であるということはやはり一部の研究に限定されるところかと思います。
また、これと関連して、説明項目が簡素化可能ということなのですけれども、これもこの説明項目全てを満たすことが要求される研究は限定的だということを明記していただかないと、全体として全て文書同意に合わせられるというふうに事務局の意図とは違う形で相当な規制強化だと受け取られる懸念が強いです。文書ICというよりはインフォームド・コンセントとオプトアウトの二本立てでいき、そのうちの一部に関しては、文書による同意取得を必須とする今の考え方を残すという、それがいいのかなというのが1点目です。
2点目は5枚目の2つ目の*のところで、ここは悩ましいところですけれども、当該既存試料を用いなければ研究の実施が困難という要件に関して、これを情報にかぶせるというのは、これも規制強化とみなされる可能性が非常に高いと思います。もともとは試料と情報を区別して、試料利用に関しては同意原則を強く効かせるその背景があって出てきた考え方で、これを課すということは、新たに同意を得て使えるのだったらそうすべきだという発想でずっと使われてきたもので、特に希少疾患だとかそういう場合だと通常は考えられてきたものなので、これをそのままかぶせてしまうというのはなかなか厳しいと思います。特に、例えば自施設の過去のカルテ情報を解析するだけの研究の場合に、これに該当するという説明をするのは難しくて、そういうリスクが小さくて非常に数が多いものにこの要件が全てかぶっていくというのは懸念をするところです。今回整理するのだったら、これは削除するというのも一つだと思います。
正しい利用を確保するためには、やはり研究方法や研究目的を倫理審査委員会で適切に審査されていることが大事で、その辺りは事務局でも書かれているように、倫理審査委員会の在り方について再考するということによってそこは手当てをするという形が私は良いと思いました。
次は3点目で、これは資料にない論点で申し訳ないのですが、最初の意見出しでもお伝えしましたように、どうしてもインフォームド・コンセントの手続は個情法との関係で議論されてきたことにより、それと関係しないような、例えばクラスターランダム化試験における同意の簡略化だとか、救急医療の同意免除の際の要件に関する課題というものがなおざりになっており、それに対しては対応していただきたいと考えています。
特に救急に関しては、「明白な生命の危険が生じている状態」という要件について、今、ガイダンスで心停止と重症頭部外傷だけが例示されていることによって、脳卒中の研究でこの規定が使えないという見解が日本国内では一般化しています。これは先ほどのPPIと同じく、本来はGCPや臨床研究法とも関わる問題なのですが、この規定は欧州では存在しておらず、米国では非常に詳細なガイダンスとともに導入されているものなのですが、日本ローカルの問題を生んでいます。この辺り、ガイダンスで対応していただければ、現場の研究がかなり前に進んでいくところがあると思いますので、今回、個情法との絡みあるいは試料との絡みではないところで、長らくあまり議論されていない論点についても、少し手当てを考えていただければと思っております。3点目は要望です。
以上です。
【森座長】 ありがとうございました。
田代委員、今の最後の御指摘についてですけれども、救急の現場における研究の手続というのは、今の共有しているスキームではどこに該当するのでしょうか。
【田代委員】 基本的にはこれは侵襲・介入を伴う研究です。指針の規定でいうと、エマージェンシーリサーチを規定するところがあって、それが基本的にはGCP省令と臨床研究法とそろいで入っているのですが、実は一番詳しくいろいろ書いているのがこの指針のガイダンスなので、そこのガイダンスの記載にいろいろな解釈が引きずられていくという現状があります。これは実際に国循の先生方が過去3年間かけてAMEDの研究班でいろいろ調べられていて、特に脳卒中に関しては「明白な生命の危険が生じている状態」だと理解されずに免除条件が使えないという事態が起きていると聞いています。そういったところで、現在いろいろな改正の谷間に落ちている研究があるので、その辺りも気にしていただければという趣旨でした。
【森座長】 薬剤で介入する場合も念頭に置いていらっしゃるのですか。
【田代委員】 薬剤で介入する場合だと、指針下ではないと思うので、そこは入ってこないかなと思います。それ以外のものです。救急の研究でこの指針に載ってくるのは、私自身が経験したようなものだとソフトな介入で、それこそアルゴリズムだとかトレーニングだとか、要するに薬剤以外の介入です。そういったものは、実はこの救急以外もそうなのですが、ソフトな介入を評価する方法論が広がっており、行動経済学的な研究も含めていろいろと行動変容を促すようなものが入ってきているのですけれども、その辺りはこの指針では扱っているのですけれども、なじみが悪く、それを念頭には置いています。
【森座長】 先生、よく分かりました。ありがとうございました。
事務局から何かありますか。
【飯村治験推進室長】 御意見ありがとうございました。検討させていただきます。
【森座長】 どうもありがとうございました。
では、続きまして、日置委員から御意見をいただきます。お願いします。
【日置委員】 ありがとうございます。
手短に。今のこの指針、主にICですけれども、IC手続を守ると例外も含めて個人情報保護法も一緒に守れるように書いているというところが指針の複雑化しているところの所要の要因だと思っております。今、事務局から出していただいている方向性は、私はこれで基本の方向はよいと思っているのですが、他方で、これをもって対応したときに、現場自体は別途個人情報保護法の適用に関して解釈して運用していかなくてはいけないという問題が残るのだと思います。ですので、指針と合わせて実運用を考えるのだとすれば、一つは今の公衆衛生例外、指針上でもいろいろな要件、IC困難ですとか、適切な同意取得の何とかに解釈上で使われていますけれども、こういったところのフォローとして、今の個人情報保護法の3年ごと見直しの改正の点ですとかそういったところでコメントを入れて、相互にフィードバックしながら対応を進めていかないと、運用上は支障が出るのではないかと思っておりますので、その辺りも事務局のほうでフォローしていただければと思います。
以上でございます。
【飯村治験推進室長】 御指摘ありがとうございます。
特にガイダンスでは、簡略化し過ぎてしまって個情法違反になってしまうことは避けなくてはいけませんので、最低限ここは示さなくてはいけないみたいなことは書いていこうと思いますし、指針本文のほうでは少し簡潔にしたいと思っているのですけれども、ガイダンスのほうでは個情法での留意事項に関してもなるべく記載していく方向に持ってきたいと思いますし、御指摘のように個情法の見直し等も十分考慮しながら進めていきたいと思います。ありがとうございました。
【森座長】 それでは、本日の議事は以上でございます。
最後、事務局からございましょうか。
【西田科学技術・イノベーション推進専門官】 厚生科学課事務局の西田でございます。
本日も貴重な御意見を多くいただきまして、ありがとうございました。
同意手続等や倫理審査委員会につきましては、本日いただいた御意見を基にさらに見直し案を整理してまいりたいと思います。また、武藤委員、長神委員からのプレゼンテーションやその後の御議論を基に、患者・市民参画やバイオバンクの観点も踏まえ、引き続き具体的な見直し案を次回以降にお示ししていきたいと存じます。
冒頭に御案内いたしました出席委員数に関しまして訂正がございます。磯部委員より急な御事情により御欠席との御連絡をいただいておりましたため、本日の出席者は23名でございましたので、御報告申し上げます。
また、本日、会議の時間が限られておりますので、お伺いできなかった御意見につきましては、本日から1週間以内をめどに事務局まで御意見をお寄せいただけますと幸いでございます。
次回の開催につきましては、改めて開催方法を含めて御連絡を差し上げます。
本日の合同会議はライブ配信にて公開させていただきましたが、後日公開する議事録が公式な記録となります。本日の議事録につきましては、委員の皆様にお諮りし、座長の確認を得た後にホームページにて公開させていただきます。
以上でございます。
【森座長】 本日も大変重要な課題につきまして、多くの委員の方からたくさんの御意見、御発言をいただきました。厚く御礼申し上げます。
また、米村参考人にも長時間の御参加をいただき、大変貴重な御意見をいただきました。御礼申し上げます。
では、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
――了――
電話番号:03-5253-4111(内線4108)
メールアドレス:lifseime@mext.go.jp