ヒト受精胚等を用いる研究に関する専門委員会(第6回)議事録

本委員会は下記の専門委員会と同時開催となります。
・厚生労働省 厚生科学審議会 科学技術部会 ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会
・厚生労働省 厚生科学審議会 科学技術部会 ヒト受精胚を用いる遺伝性・先天性疾患研究に関する専門委員会
・こども家庭庁 こども家庭審議会 科学技術部会 ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会

1.日時

令和6年11月18日(月曜日)17時15分~18時15分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の規制の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

久慈主査、井上委員、内田委員、大須賀委員、片桐委員、金田委員、神里委員、寺田委員、長嶋委員、藤田委員

文部科学省

木村安全対策官

5.議事録

【西田専門官】 定刻となりましたので、ただいまから第8回「ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。
 本会議は、こども家庭審議会科学技術部会ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会及び文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会ヒト受精胚等を用いる研究に関する専門委員会、並びに厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒト受精胚を用いる遺伝性・先天性疾患研究に関する専門委員会の同時開催となっております。
 委員の皆様におかれましては、本日はお忙しい中御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 オンライン参加の方は、御発言される場合にマイクをオンにしていただき、まずお名前をおっしゃっていただいた上で御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら再びミュート状態にしていただくようお願いいたします。
 私は事務局を務めております厚生労働省大臣官房厚生科学課の西田と申します。本日は座長御選出までの間、進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 初めに、本日の会議は会場とオンラインとの併用で開催をしております。会議の模様はユーチューブにて配信する形で公開させていただきますので、御承知おきください。なお、座長の選任などの人事案件につきましては、非公開とさせていただきます。
 続きまして、本日の出席状況を御報告いたします。本日は、こども家庭庁ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会から委員10名中8名、文部科学省ヒト受精胚等を用いる研究に関する専門委員会から委員12名中10名、厚生労働省ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会から委員15名中10名、ヒト受精胚を用いる遺伝性・先天性疾患研究に関する専門委員会から委員12名中11名がオンライン出席しており、会場からは五十嵐委員、久慈委員のほか、事務局が出席しております。なお、武田委員、小崎委員が遅れて入室、西山委員が開始40分後から退室いたします。
 本来であれば委員お一人お一人御紹介をするべきところですが、審議時間を確保する観点より、名簿をもって代えさせていただきます。
 それでは、本日は同時開催の委員会の開催にあたり、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の佐々木より一言御挨拶を申し上げます。
【佐々木危機管理・医務技術総括審議官】 佐々木でございます。4委員会が同時に開催する形ですので、私は4委員会の事務局を代表する形で御挨拶を申し上げます。
 改めまして、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の佐々木昌弘と申します。
 委員の先生方、皆様におかれましては、平素より政府の様々な政策に御指導、お力添えをいただいており、心からお礼を申し上げます。
 現在、ゲノム編集技術と言われる遺伝的改変技術の進歩が急速に進展してきており、様々な分野での応用が試みられているところでございます。20年前、平成16年、2004年に当時の名称ですが、総合科学技術会議におきまして「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」が取りまとめられました。それ以降、ヒト胚は生命の萌芽として尊重されるものとして、研究における倫理的ケアに関して総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)に生命倫理専門調査会、ここの場で科学的・社会的・倫理的観点から議論され、「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係る報告が取りまとめられております。
 6年前、平成30年に中国の研究者がゲノム編集技術を用いた受精胚から双子を誕生させたという事案が発表されました。これを受け、我が国でも臨床利用に関する適切な枠組みの検討が必要という声明が関係学会等から出されたところでございます。この報告を受け、生命倫理専門調査会から具体的な制度的枠組みが必要ということで、臨床利用における法的規制を含めた制度的枠組みの検討を私ども厚生労働省に求められたところでございます。これを受け、5年前、令和元年のあれは8月2日だったと思いますが、第1回の委員会を立ち上げて、そして関係委員会とも議論を進めてきたところでございます。
 今回、関係する専門委員会の先生方にお集まりいただき、このような形で委員会を開催させていただきますので、我が国の現状、海外の現状等を踏まえ、基礎的な研究への利用を含めたゲノム編集受精胚等の規制の在り方について御議論いただきたいと思います。様々な御意見をいただいた上で、具体的な規制の在り方を検討してまいりたいと思いますので、どうぞ忌憚のない御意見をいただきたい、そして審議をある程度まとめていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【西田専門官】 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。オンラインにて御出席の先生方におかれましては、事前にお送りしているPDFにて御覧ください。
 資料は議事次第のほか、資料1、参考資料1から参考資料13までとなっております。もし不足等がございましたら事務局までお申しつけください。
 なお、本日は会場とオンラインを併用していることから、オンラインで御出席の場合で御発言のある際は「手を挙げる」ボタンを押していただくか、カメラの前で挙手をいただき、座長から指名がありましたらお名前をお伝えいただいた上で御発言をお願いできればと思います。
 ユーチューブの配信は一旦ここで止めさせていただきます。
(配信中断)
 こども家庭審議会科学技術部会ヒト受精胚を用いる生殖補助医療研究等に関する専門委員会及び文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会ヒト受精胚等を用いる研究に関する専門委員会、並びに厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒト受精胚を用いる遺伝性・先天性疾患研究に関する専門委員会の同時開催の座長として五十嵐委員が選出された。
(配信再開)
【五十嵐座長】 事務局、よろしくお願いいたします。
 ユーチューブの準備ができたそうですので、議題1に入りたいと思います。議題1は「ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の規制の在り方について」であります。
 初めに、資料1につきまして事務局から御説明をお願いいたします。
【西田専門官】 事務局でございます。
 資料1について御説明いたします。
 資料1を1枚おめくりください。前回各専門委員会に対しゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚の臨床利用のあり方に関する専門委員会で取りまとめた報告内容を報告すると同時に、基礎的な研究におけるゲノム編集胚等の利用に関しては、指針において対応を行っており、規制の在り方と全体として整合的なものとなる必要があるとされており、基礎的な研究への利用を含めたゲノム編集胚等の規制の在り方について検討を行っているところでございます。
 これまでに出された主な意見についてですが、諸外国において罰則つきの法的規制が整備されていることに加え、WHOの諮問委員会による報告書においても臨床利用を現時点では禁止すべきとされていることから、早急に法制度の整備をするべきではないか、諸外国においては関係法令が存在するが、日本にはクローン技術等規制法しかなく、対応が十分でない状況、許容範囲を逸脱するゲノム編集技術の臨床利用に関しては、一部罰則つきの特別法を制定すべきかどうかを検討すべきではないか、罰則を伴う法律による規制とする場合、ガイドラインなど政省令による、より厳しい規制が実態となるような事態は避けねばならず、規制範囲がより明確になる記載が必要ではないか、現時点では少なくとも臨床応用は相当ハードルが高く、現時点では進むべきではない姿勢を堅持すべきである等、臨床利用の禁止を早期に法整備するべきことやその禁止の在り方等について御意見をいただいております。
 一方、人に投与しない基礎的研究については、ヒトの初期発生メカニズムの解明により、将来的に不妊症や先天性疾患の病態解明、発がん機構などの研究に有用であることから、科学的合理性、社会的妥当性が認められている場合、基礎的研究については容認するなど、技術革新に向けた研究に対しては柔軟な環境であることが担保されるルールづくりが必要ではないか、また、将来十分なエビデンスが集積され、容認される技術が生じた場合には、個々に研究申請を受け社会的妥当性も踏まえた検証を国に設置した審査会で行い、研究の可否を判断してはどうか、そのために基礎的研究から臨床利用まで総合的に取り扱うことのできる制度設計が必要であり、法的規制と関係指針が結びつく形が望ましいが、新規胚指針や提供胚指針、遺伝子指針等の現行指針の規定は複雑化しており、現行指針の見直しに関する検討も含めるべきであるといった御意見をいただいております。
 続きまして、おめくりいただいて、そのほか規制の適用範囲につきましては、ヒトiPS細胞などにゲノム編集を施し、分化誘導した精子や卵子を用いて作成されたゲノム改変受精卵等の臨床利用について規制対象とすべきといった意見、また、法律制定においては、今後の急速な科学技術の進歩と価値観の変化に対応できるように、5年程度の期間で見直しをすることを含めるべきではないかといった御意見もいただいております。
 続きまして、これらいただいた御意見を基に、法的規制の具体の内容について事務局で作成しております。論点1について、ゲノム編集技術等が用いられたヒト胚・ヒト生殖細胞については、人・動物の胎内への移植を禁止し、罰則を設けることとしてはどうかと考えております。具体的には、対象となる技術は「核酸や遺伝子の発現と密接な関係を有する物の構造又は機能に影響を及ぼすことで、遺伝子の発現に影響を与え得る技術」、また、ヒト胚は、人または動物の胎内において発生の過程を経ることにより一の個体に成長する可能性のあるもののうち、胎盤の形成を開始する前のもの、そして、ヒト生殖細胞は、精子や未受精卵のほか、それらに変化する過程にある細胞を含むもの、最後に、ゲノム編集等が行われたヒト胚・ヒト生殖細胞から生じるヒト胚・ヒト生殖細胞も含めるほか、ゲノム編集技術等が用いられたヒト生殖細胞から作成されたヒト胚も対象と考えております。
 次のページ、おめくりください。続いて、論点2についてですが、ゲノム編集技術等が用いられたヒト胚等に関して、クローン法を参考に、適切な取扱いのための取扱計画書の届出制度等を設けることとしてはどうかと考えております。具体的には、現行の指針を法律に基づく指針に格上げを考えておりまして、留意すべき事項や許容される用途に関して、生命倫理的な議論を行った上で定めることを想定しております。また、研究や目的ごとに、あらかじめ作成方法等や研究内容等を記載した取扱計画書の届出を行わなければならないこととし、届出後は60日間の作成や使用の禁止期間を設け、その間に主務大臣が審査を行い、必要に応じて計画の変更・廃止命令を行うことにより、適正な取扱いを担保すること、そのほか、クローン法と同様に、ヒト胚等の取扱いに関する記録をすることや、個人情報を保護することなどの規制を設けることとしてはどうかと考えております。
 事務局からは以上となります。
【五十嵐座長】 御説明どうもありがとうございます。
 それでは、論点が2つございますので、論点1から行きたいと思います。論点1、これは4ページを御覧いただきたいと思いますが、ゲノム編集技術等が用いられたヒト胚等の臨床利用の規制について御意見がありましたらお願いしたいと思います。
【眞鍋厚生科学課長】 事務局でございます。
 委員の先生方、失礼いたします。ユーチューブ配信の確認をさせていただきたいということで、1~2分お待ちいただければと思います。
(機器調整)
【五十嵐座長】 申し訳ありませんでした。ようやく再開できましたので、始めたいと思います。
 改めまして、論点1のゲノム編集技術等が用いられたヒト胚等の臨床利用の規制について御議論いただきたいと思います。
 藤田委員が手を挙げていらっしゃいますか。
【藤田委員】 ありがとうございます。
 技術が未熟な状態で一部のクリニックによって用いられることは回避しなければいけないということが趣旨の一つであったかと思いますので、ゲノム編集ベビーなどを防ぐということでこういったルールができるのは非常にいいことではないかと思っております。
 質問させていただきたいのは、臨床応用という点でいいますと、ミトコンドリア置換などが一番近いのかと思うのですけれども、それはここに含まれるのか含まれないのか、それとも今後それを含めて検討していくということなのか、この「ゲノム編集技術等」の「等」に含まれるのかどうかを確認のためにまずお伺いしたいと思ったのが質問した理由です。
 以上です。
【五十嵐座長】 どうもありがとうございます。
【西田専門官】 事務局でございます。
 委員御指摘のミトコンドリア核置換技術につきましては、こちらの技術に含まれ得るものと整理しております。ただ、4ポツ目の※4に書かれておりますとおり、一部ミトコンドリア核置換術につきましては、クローン法で読み込まれているものがございますので、オーバーラッピングするものにつきましてはクローン法で規定されるものと想定しておりますが、いずれにしても具体的な法案作成などのときにいろいろ調整して参考にさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【藤田委員】 クローン技術の規制に含まれないものをこちらで拾うという理解でよろしいでしょうか。
【西田専門官】 ありがとうございます。
 具体的には卵子間核置換技術等がこちらに含まれるものと想定しております。
【藤田委員】 ありがとうございます。
【五十嵐座長】 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 井田先生、手を挙げていらっしゃいますか。お願いします。
【井田委員】 慈恵医大の井田です。
 この問題はすごく大きな問題で、WHOでも有益性と有害性のバランスが一番すごく重要だということを主張されていますね。ヨーロッパの幾つかの国ではイギリスやたしかドイツなど、ゲノム編集技術を用いたヒト受精胚の臨床応用に関しては罰則規定を持った法律が制定されていると思うのです。日本はまだそこまで行っていないのですが、いずれにしろ有益性と有害性を考えたときに、私は先天代謝異常症というものをやっているものですから、最終的に患者さんの治療などに行くと思うのですけれども、その前の基礎段階で法的規制は必ずしておかないと有害性を除外できないので、法規制はもちろんもっと踏み込んでつくらなければいけないでしょうし、審査体制ですね。ここは確立をきちんとしていかなければいけないのではないかと思いますので、この会議がどこまで具体的に落とし込むのかどうなのか、この法的規制はイエスかノーなのか、そしてイエスであればさらに突き詰めて具体的なところまで行くのか、そこをお伺いしたい。どこら辺まで目標にしてこの委員会をやっていくのかをお伺いしたいのです。
【五十嵐座長】 ありがとうございます。
 事務局、いかがですか。
【西田専門官】 御指摘について、ありがとうございます。
 具体的にどこまでというのはなかなか難しい点かとは思うのですけれども、実際に法案を作成するときに参考になるような御意見をいただければと考えております。御指摘いただいた点につきましては、検討していきたいと考えております。
【井田委員】 そうすると、今は法的規制をするかしないかということが論点なのでしょうか。
【眞鍋厚生科学課長】 厚生科学課長の眞鍋でございます。
 今日は大きく論点を1と2に挙げさせていただいております。まずはこの論点についてコンセンサスを得られればと思っております。先ほどいただいたような細かい審査の体制などは、私どもは細部を詰めていく中でまたお諮りすることがあればお諮りをさせていただきたいと思いますし、こうすべきという御助言があればもちろんいただきたいと思っております。
 以上でございます。
【井田委員】 さっきどなたかがおっしゃったけれども、臨床応用はかなりハードルが高いので、基礎研究をどうやっていくかとか、そこら辺の規制が最初なのかという気はします。これは私見です。
【五十嵐座長】 どうもありがとうございます。
 外国の規制等につきましては、参考資料4の1ページに御紹介をいただいておりますので、これも御覧いただいていると思いますが、よろしくお願いいたします。
 加藤委員、お願いします。
【加藤委員】 大阪大学の加藤です。
 大きな枠組みとしてはこれでよろしいかと思います。罰則もないと力を持てない規則になると思いますので、また具体的な技術そのものはどんどん変化していきますので、それは恐らく法律の下の省令や指針ですか、その辺で決まっていくと理解して臨んでいます。ただ、技術は進みますので、これは安易に言うことではないのですけれども、もしも非常に技術が進んだ場合にどのようにするかが考えられるように、見直しの規定をしっかりと入れておくことは大事かと思います。それが1点です。どのぐらいの期間がよいのかはすぐには言えないのですけれども、それなりの頻度で見ていくことも大事だと思います。
 もう一つは質問なのですけれども、2つ目のヒト胚は胎盤の形成を開始する前のものというのはどのように定義されたのでしょうか。胎盤の形成を開始する前のものというのは、最近いろいろ長く培養できるようになってきたりするのですが、ヒト胚そのものについてどうこれで定義するのでしょう。
【西田専門官】 事務局でございます。
 ヒト胚の定義につきましては、クローン法の胚の定義が参考になるのではないかと考えており、こちらを踏襲し、ヒト胚の用語を定義することを想定しています。具体的には受精卵などがこの文言で読み込むことを想定しております。
【加藤委員】 体外培養をずっと続けていったものを、いいかげんな形の研究者が移植したということも含められるということでいいのですね。大ざっぱな質問で申し訳ないです。
【西田専門官】 事務局でございます。
 そちらにつきましては、一の個体に成長する可能性のあるものという形で、現時点想定しているヒト胚に含まれ得るものと認識しております。
【加藤委員】 その辺はヒト胚培養や研究の御専門の先生方に確認いただいたらと思いました。
 以上です。
【五十嵐座長】 御指摘どうもありがとうございます。
 確かに人工培養で今まで以上に長期間培養ができることが、これから想定されていますが、現時点では長期間培養することはむずかしいようです。ただし、技術が進むことによってそれが可能となった時には対応せざるを得なくなる状況になることは十分に想定しております。その点も考えた上で対応したいと思っています。ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 どうぞお願いします。
【久慈委員】 不妊症の医師の立場としてコメントさせていただくと、この原案では対象となる技術が「核酸や遺伝子の発現と密接な関係を有する物(ヒストン等)の構造又は機能に影響を及ぼすことで、遺伝子の発現に影響を与え得る技術すべて、と言うことになります。もちろん将来的にはこれらの技術がゲノム編集技術等に近い働きをするかもしれないのですけれども、恐らく諸外国で言っているゲノム編集技術等というのは、「恣意的に」DNAの配列を変えてしまうことによってその個体だけではなくてその個体から生ずる子々孫々全てDNAの配列が変わってしまうという、「遺伝する」技術を指しています。これは社会遺伝学の立場からも規制をかけるしかないと考えるのですが、その一方で、例えば不妊症の治療で今は具体的にはありませんが、精子や卵に問題がある場合に薬物なりを添加するあるいは注入して治療する技術は恐らくこれから出てくると思うのです。そういうものは例えば受精卵の間だけ、あるいはその一個体には、たとえば今は体外受精でも出生体重がちょっと大きくなることは言われていますけれども、それには関係するけれども、次世代には伝播しないものがたくさん出てくると思うのです。それまで移植を規制してしまうと、新しい技術が特に外国から入ってきたときにこの法律とどのように適合させるかという問題が出てくると思うので、そこは注意して、将来的には規制しなければいけなくなるかもしれないけれども、現実、今の時点ではゲノム編集技術等には入らないだろうというところを臨床応用できるような余地をつくっておいていただければと思います。
 以上です。
【五十嵐座長】 現場から要望がありましたので、これも十分考慮したいと思います。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 長嶋先生、どうぞお願いします。
【長嶋委員】 今、映っている画面の上から3番目に始原生殖細胞まで含むという記述がありまして、そうすると、将来的にヒトの始原生殖細胞に何らかのゲノム編集技術を適用して、その後の成り行きを見るために動物の精細管の中にその細胞を移植したいというような研究をやろうとする場面は出てくるのではないかと思うのです。私は罰則を設けることに反対しているわけではないのですけれども、一種の法律論というか手続論といいますか、そういう観点からお伺いしたいのですが、この罰則がついているような規定を、私が申し上げた始原生殖細胞を動物の精細管の中に移植する、大した問題が起こるような手技ではないと思うのですけれども、倫理上それほど大きな問題が生じるような実験内容ではないと思うのですけれども、それくらいのことをするためにこの罰則のついたルールを簡単に変えられるものなのでしょうか。そこが気になりました。ありそうな研究だと思いますので、そのときにすごく大きなハードルができてしまうのも考えものかと思いましたので、お伺いいたしました。
【西田専門官】 事務局でございます。
 1点目の精細管への移植についてですけれども、今回我々が想定している胎内につきましては、女性や動物の雌の内生殖器、具体的には膣、子宮、卵管、卵巣を想定しておるところでございますので、男性生殖器につきましては、直罰の罰則規定を設けることは現時点で想定しておりません。
 また、将来的な技術革新は特にゲノム編集技術に関しては成長著しいところでございますので、諸外国の状況や科学的知見に基づいて見直し規定については規定することも想定しておりますので、御指摘を踏まえて検討していきたいと思います。
【長嶋委員】 理解いたしました。ありがとうございます。
【五十嵐座長】 ありがとうございました。
 それでは、武田委員、お願いします。
【武田委員】 京都産業大学の武田です。
 基礎生物学の研究をしていて、特にエピジェネティクスの仕事もやっているのですけれども、前の前の御質問で範囲を配列だけにということもありましたけれども、実は私がやっているのは、個別の遺伝子にエピジェネティック情報としてヒストン修飾を変更するということをやると、かなり長期的にその影響が残るということと、生体で獲得したエピゲノムの変化が時として次世代まで伝わるという事例もたくさん報告されていることからすると、この対象技術に関してはもうちょっと慎重に議論したほうがいいと思います。
 確かに精子や卵子など、例えば特定の試薬につけることによっても実は核内のエピジェネティックな修飾が変わる可能性があります。一方、例えば特定の遺伝子の発現を長期にわたって制御するようなことは、結構ゲノム編集技術を使って特定の酵素を特定の配列に持っていくことができるので、それは基礎研究の上でもできているので、それを応用することになると、配列置換までは行かないけれども、特定の形質を強めるような技術につながるのではないかと思っています。ですので、この辺の対象となる技術のところを、今後基礎研究を阻害しないように、しかし緩過ぎないようにすることを考えていかなければいけないのかと思います。今、思ったのは、配列以外の操作で、特定の遺伝子を長期間にわたって制御する試みが恐らく一番危ないのかと思っています。
 以上です。
【五十嵐座長】 エピジェネティックな影響というのは、これは何世代も伝わることも分かっていますので、そういう観点も入れていきたいと思います。御指摘どうもありがとうございます。
 藤田先生、お願いします。
【藤田委員】 ありがとうございます。
 これまでの御議論と関連もあるのかと思うのですけれども、基礎研究がきちんと進むようなルールになって、臨床応用を大学で倫理委員会で審査をした上できちんと行うような余地も残しつつ、例えば大学などで行うようなミトコンドリア置換の臨床研究みたいなことでしたら海外でも承認されていたりもするわけなので、そういったものに門戸を完全に閉ざすことなく、ただ、適切でない治療として提供されることがないようにストップする、そこが非常に重要だと思います。
 その点でいうと、臨床応用といったときに、そこに研究と治療という2つの側面が含まれるので、これをきちんと分けて定義して扱えるようになるとよいと思います。あくまできちんとした臨床研究は研究として臨床応用の可能性を全くゼロにするのではなく、ただ、そこで研究中の技術が拙速に自由診療などのクリニックで提供されるようなことがないようにきちんと歯止めをかけるという2つが重要なのではないかと。
 そのときに、臨床研究と治療の区別、定義が必要ではないかということを申し上げたのは、最近再生医療でいいますと、自由診療のクリニックが研究と称して数百万で医療を提供していることがあったりしますので、そういった技術が拙速に自由診療などで提供されて、これは研究としてやっています、でも患者さんから数百万もらっていますといったことがちゃんと止められるように、臨床応用といったときの研究と治療を区別できるようなルールになればいいと思いました。
 以上です。
【五十嵐座長】 ありがとうございます。重要な御指摘をいただきました。
 事務局、よろしいですね。
【西田専門官】 はい。
【五十嵐座長】 どうもありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 それでは、基本的には論点1は皆さん大きな反対がなかったと思いますので、細かい対応の仕方があるということも御指摘いただいていますので、それを踏まえてやっていきたいと思います。よろしいでしょうか。
 続きまして、論点2に行きたいと思います。ゲノム編集技術等が用いられたヒト胚等の適正な取扱いのための規制について御議論いただきたいと思います。具体的には、クローン法を参考にして適正な取扱いのための取扱計画書の届出制度などを考えているところなのですけれども、いかがでしょうか。
 どうぞ。
【久慈委員】 今、新たな受精をさせる研究、ゲノム編集の研究、それからiPS細胞、ES細胞から生殖細胞をつくる研究、指針がございますが、これらの指針、皆さんこれまでたくさんの御意見をいただいていると思うのですけれども、一つ一つがその時々につくられていたものですから、包括的にどこまでが規制の範囲なのかを決めている指針が今はないのですね。なかなかそれをつくりにくい。具体的には、当然できるべき技術が容認されずに抜けている部分があったりします。せっかくこの法律の中で議論をするということでしたら、今までの指針をまとめて研究者にも社会にも分かりやすいような形で、一つの全体が見えるようなものにしていただければと思います。
 以上です。
【五十嵐座長】 これも重要な御指摘だと思います。どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 特にないようですので、取扱いを適正に行うためには、基本的には取扱計画書の届出制度などを考えていきたいというようにしたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、今日は2点、論点1と2につきまして御議論いただきました。事務局におかれましては、これらの御意見を参考にして検討していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ここまでのところで委員の先生方、何か全体を通しましてございますか。よろしいですか。
 それでは、どうぞお願いします。
【眞鍋厚生科学課長】 厚生科学課長の眞鍋でございます。
 御議論ありがとうございました。途中、ユーチューブ配信等の技術的なトラブルによりまして御迷惑をおかけしましたことをおわび申し上げたいと思います。
 実は配信トラブルはまだ続いているところがございまして、私どもとしては、この議論ですけれども、録画させていただいておりましたので、後日一定期間ホームページにて紹介するという対応を取らせていただきたいと思います。
【五十嵐座長】 ありがとうございます。
 委員の先生方、よろしいでしょうか。そのような対応をしたいと思います。御理解いただきたいと思います。ありがとうございます。
 では、意見交換は本日はここで終了させていただきたいと思います。
 事務局から今後の予定の説明をお願いいたします。
【西田専門官】 事務局でございます。
 活発な御議論をいただき、ありがとうございます。
 今後の予定ですが、本日御議論いただきました内容について頂戴した御意見を踏まえまして事務局で整理を行いまして、ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会については、五十嵐委員長に御確認をいただいた上で、厚生科学審議会科学技術部会へ報告したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
【五十嵐座長】 特に御異議はないようですので、ただいまお話しいただいた方針で、報告内容の確認につきましては、私に御一任いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議はこれで閉会とさせていただきます。活発な御議論をどうもありがとうございました。

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