特定胚等研究専門委員会(第126回) 議事録

1.日時

令和7年6月3日(火曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省(オンライン開催)

3.議題

  1. 第13期科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚等研究専門委員会の運営について【非公開】
  2. 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)生命倫理専門調査会報告を踏まえた関係指針の見直しについて
  3. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

八代主査、尾畑主査代理、秋元委員、片野委員、小板橋委員、後藤委員、小林委員、藤田委員、山田委員、中村委員

外部有識者

阿久津参考人(国立成育医療センター研究所再生医療センター長)

文部科学省

木村安全対策官、橋本室長補佐、市原室長補佐、宮島専門職、中村係員

関係省庁

厚生労働省医政局研究開発政策課再生医療等研究推進室 伯井専門官
厚生労働省医薬局医療機器審査管理課 板垣調整官、渋井係長

6.議事録

【橋本室長補佐】  定刻となりましたので、ただいまから、第126回特定胚等研究専門委員会を開催いたします。
 委員の先生方におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 私は、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の橋本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の会議はオンラインを併用して開催しておりますが、議題(1)については非公開とさせていただきますので、議題(2)から、会議の模様をYouTubeによるライブ配信で公開させていただきますことを御承知おきください。
 初めに、本日の会議は、科学技術・学術審議会が第13期に入ってから初回の委員会となりますので、会議の開催に当たりまして、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の木村安全対策官より、一言、御挨拶申し上げます。
【木村安全対策官】  文部科学省ライフサイエンス課の木村と申します。本日は、御多忙の中、お集まりくださいまして、ありがとうございます。会議の開催に当たりまして、一言、御挨拶申し上げます。
 ライフサイエンスにおける生命倫理及び安全確保の重要事項に関しましては、生命倫理・安全部会という部会がございますけれども、こちらの特定胚等研究専門委員会につきましては、そういった重要事項の中でも、特に、クローン規制法に基づく人クローン胚の取扱い、あるいはES細胞やiPS細胞に由来する各種細胞の取扱い、そういったものにつきまして、指針の策定ですとか、あるいは、今ある指針の下での指針適合性への確認、そういった事項をこちらの委員会のほうで扱っていただいております。特に、ES細胞、iPS細胞を使ったような研究につきましては再生医療等を念頭に研究が盛んに行われていますが、ヒト胚や生殖細胞、そういったものに関連する研究分野につきましては、人の生命の萌芽であるヒト胚ですので丁重に扱う必要があるということで、国民一般からの御関心と研究のしやすさといったところをうまくバランスを取りながら、指針の改正、あるいは運用をしていく必要があるものと存じております。
 こちらの委員会を通じまして様々な御意見を賜りながら円滑な制度運用を進めてまいりたいと思いますので、忌憚のない御意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
 会議の開催に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げました。よろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、議事に先立ちまして、本委員会の委員を紹介させていただきます。
 本日は、10名の委員の皆様に御出席いただいており、定足数を満たしております。長嶋委員におかれましては、御欠席となっております。
 委員名簿が参考資料1にございますので、御覧いただければと思います。
 それでは、委員名簿の順に紹介させていただきますので、各委員におかれましては、簡単な自己紹介をお願いできればと思います。
 まず初めに、立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授、秋元奈穂子委員でございます。
【秋元委員】  立教大学の秋元と申します。英米法を専門にしておりまして、中でも、とりわけ英米の医事関係法について、比較研究をしております。どうぞよろしくお願いします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科教授、尾畑やよい委員でございます。
【尾畑主査代理】  東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科の尾畑と申します。専門は動物発生工学をしておりまして、特に、in vitro、卵母細胞形成過程を体外培養で行うというような研究を実験動物のマウスで行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、東京科学大学総合研究院再生医療研究センター准教授、片野尚子委員でございます。
【片野委員】  皆さん、こんにちは。東京科学大学再生医療研究センターの片野と申します。私は、20年ぐらいにわたりまして、遺伝子治療、再生医療を専門に研究しておりまして、この10年ほどは、再生医療の倫理委員会の委員、また、最近は委員長も務めております。そのような観点で、研究、倫理、制度といったところをバランスよく見ていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、日経BP総合研究所主任研究員、小板橋律子委員でございます。
【小板橋委員】  小板橋でございます。よろしくお願いいたします。私は、本当にすごい皆様の中にあって大変お恥ずかしいのですが、医療系の取材、バイオテクノロジーの取材を随分長らくしてまいりました。特に医療では臨床倫理の観点での取材も長らくしていた関係で、こちらに参加させていただいているのかなと思っております。最近は、精神疾患の社会モデルについて考えており、ニューロダイバーシティーの普及啓発というものに注力しておりまして、分野が大分離れてきてはいるのですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター理事長特任補佐、後藤雄一委員でございます。
【後藤委員】  皆さん、こんにちは。私は、もともと小児科医です。ミトコンドリア病の研究を30年ぐらいやってきておりまして、厚生労働省研究班の班長もさせていただきました。ミトコンドリア病は母系遺伝で、受精卵が病態に関わるところがあります。以前の委員会の審議事項にありました、ミトコンドリア病研究における生殖細胞の取扱いに関して、大変興味を持って関わっておりました。引き続いて、今回もまた委員をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、自然科学研究機構生理学研究所生体機能調節研究領域個体創生研究部門教授、小林俊寛委員でございます。
【小林委員】  どうも、生理学研究所の小林です。どうぞよろしくお願いします。専門は発生工学と幹細胞生物学で、ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞から、いわゆる動物性集合胚であるキメラ胚の作成や動物の作成を介して、臓器の再生、あるいは試験管内での生殖細胞の作成というのを様々な動物の細胞を用いて行ってまいりました。専門分野を生かして、少しでもこの会に貢献できれば幸いです。
 本日、私のスケジューリングミスで大変申し訳ないのですが、14時ぐらいには失礼させていただきますこと、御承知おきください。どうぞよろしくお願いします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、明治大学農学部専任教授、長嶋比呂志委員でございますが、本日は御欠席となっております。
 続きまして、理化学研究所バイオリソース研究センター細胞材料開発室長、中村和昭委員でございます。
【中村委員】  中村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私、本年4月より、今御紹介いただいた現職に着任をさせていただきました。前職、この3月までは国立成育医療研究センター研究所薬剤治療研究部の室長を務めておりまして、その当時、ES細胞を使った再生医療、ES細胞由来の幹細胞の移植等にも携わらせていただきました。現職ではES細胞の分配機関という立場でもございますので、そういった観点から本委員会に参画させていただいていると理解をしております。前任の中村幸夫先生から引き続きました。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門部門長・特定教授、藤田みさお委員でございます。
【藤田委員】  藤田みさおと申します。よろしくお願いいたします。私の専門は、もともと心理学をしておりましたが、現在は生命倫理学の研究をしております。主に、幹細胞を使った基礎研究ですとか、再生医療の倫理的課題について、社会科学的な手法を用いて研究をしております。よろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、藤田医科大学橋渡し研究支援人材統合教育・育成センター教授、八代嘉美委員でございます。
【八代主査】  藤田医科大学の八代でございます。私の専門といたしましては、幹細胞生物学と科学技術社会論ということになってございます。幹細胞生物学のほうでは、造血幹細胞の老化制御機構の研究と、間葉系幹細胞の製品原料としての規制科学的な研究をさせていただいておりまして、また、科学技術社会論のほうでは、再生医療の社会での重要性ということについての研究をさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、慶應義塾大学医学部准教授、山田満稔委員でございます。
【山田委員】  御紹介にあずかりました、慶應大学の産婦人科の山田満稔と申します。どうぞよろしくお願いします。私は、専門は生殖医学で、医師ではありますが、基礎研究と臨床の両方をさせていただいております。米国留学先での仕事になりますが、実際にヒト卵子を用いて、核置換という技術で、さきにお話が出ましたクローンES細胞技術や、ミトコンドリア病の次世代への遺伝を予防するという意味での治療法の開発といったプロジェクトに従事しておりました。今は臨床にも従事しておりまして、生殖医療への保険適用に際して、生殖医学会の幹事の立場でガイドラインの取りまとめを担当して、そういったことを経て保険適用のところに関しても従事して、実際に体外受精という技術にも従事させていただいております。こういった経験を通して、本会に貢献できればというふうに思っております。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございます。
 以上、11名の委員の先生方に御参画いただいております。委員の先生方、御挨拶、ありがとうございました。
 続きまして、本委員会の主査及び主査代理を紹介させていただきます。第13期の科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会運営規則の第3条におきまして、「委員会に主査を置き、当該委員会に属する委員等のうちから部会長が指名する者が、これに当たる」こと、また、「委員会に属する委員等のうちから当該主査があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」ことが規定されております。これらの規定に基づき、本委員会の主査につきましては、部会長から八代委員を御指名いただいております。また、主査代理につきましては、八代主査から尾畑委員を御指名いただいております。
 それでは、八代主査、尾畑主査代理から、一言、御挨拶をお願いいたします。
 まずは、八代主査から、お願いいたします。
【八代主査】  このたび、主査の御指名をいただきました。非常に重責を担うという形になりまして、皆様からのサポートというか、皆様からいろいろと御教示いただければと思っております。
 クローン法の成立以来、ES細胞の使用ですとか、胚の研究等、様々な議論が行われてきた委員会でございまして、先人の議論の蓄積というものを尊重しながら、再生医療研究ですとか、様々な胚研究も含めて、科学的な発展ということの助けとなるよう、そして、社会からの視線ということ、社会の価値観というものを尊重しながら、議論を進めていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございました。
 続きまして、尾畑主査代理から、お願いいたします。
【尾畑主査代理】  このたび、主査代理を拝命いたしました、尾畑と申します。八代先生をサポートできるように、なるべく尽力していきたいと思います。また、会がよどみなく進むようにサポートしていければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本室長補佐】  ありがとうございました。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。オンラインにて御出席の委員の皆様は、事前にお送りしたPDFファイルにて資料を御確認ください。
 配付資料は、議事次第に記載しておりますとおり、資料として5点、参考資料として7点でございます。御不明な点等ございましたら、事務局までお知らせください。
 また、会議の進行に当たってのお願いとなりますが、オンラインにて御出席の委員の皆様におかれましては、御発言時以外はマイクをオフにしていただき、御発言の際に、挙手ボタンを押していただき、主査の指名の後に御発言をお願いいたします。
 なお、本日ですけれども、国立成育医療研究センター研究所の阿久津先生に参考人として御出席をいただいております。また、先ほど小林委員のほうから14時頃に退席されるというお話がございましたけれども、八代主査も同様に、14時頃に所用のため退席される予定となってございます。八代主査退席後の会議の進行につきましては、尾畑主査代理にお願いすることになりますので、御承知おきいただければと思います。
 事務局からは、以上でございます。
 それでは、以後の進行は八代主査にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【八代主査】  よろしくお願いいたします。
 まず、冒頭ですけれども、私、14時ぐらいに退席させていただきます。大変申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

議題(1)について
 科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚等研究専門委員会運営規則を案の通り決定した。

【八代主査】続きまして、議題(2)の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)生命倫理専門調査会報告を踏まえた関係指針の見直しについてでございます。
 本議題は、第12期の最後の会議から検討を開始したところでございますけれども、本日は第13期の初回の会議でありまして、新たに着任された委員の方々がいらっしゃいますので、まず最初に、事務局からこれまでの経緯についての御説明をお願いいたします。
【木村安全対策官】  では、事務局より、参考資料4を参照していただきながら、これまでの経緯について、簡単に御報告をさせていただきます。1枚、おめくりください。
 近年、ヒト生殖細胞を用いることなく、ヒトiPS細胞、ES細胞等からヒト胚に類似した構造物であるヒト胚モデルを作成する研究が世界的に行われております。このヒト胚モデルの取扱いにつきましては、関係省庁において明確な方針はなく、研究者側から、今後、研究者が安心して研究できるよう、取扱いのルールの明確化について要望がございました。それを受けまして、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の生命倫理専門調査会のほうで御議論が進んでまいりまして、昨年11月7日に「ヒト胚モデルの取扱いについて(中間まとめ)」が取りまとめられました。1枚、おめくりください。
 こちらの報告におきましては、以下の整理から、ヒト胚モデルはヒト胚とは異なるものであるという結論が出ております。まず、ヒト幹細胞等から作成する分化誘導体がヒト胚モデルでございまして、胚のような特性を一部示す細胞集団である。ただ、ヒト胎児様の構造体と明らかに異なる。また、三つ目の丸ですが、現時点においてヒト胚モデルは、胚のような特性を一部示す細胞集団にとどまっており、ヒト受精胚とは同等と言えず、マウスなどにおきましても胚モデルから個体産生は報告されていないという状況にございます。よって、ヒト受精胚とは異なって、母胎にあれば胎児となり、人として誕生し得るような存在ではないということで、ヒト胚は人の生命の萌芽であると整理されている「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」や「クローン技術規制法」の適用対象とする必要はないという報告でございます。おめくりください。
 CSTIのヒト胚モデルの報告書におきましては、ヒト胚モデルはヒト胚とは異なりますため、ヒト受精胚と同等の規制は不要とされた一方で、ここに示すような懸念点や優位点があるとされております。一つ目としまして、将来的にはヒト受精胚との類似性が高まる可能性があるということ。二つ目といたしまして、ヒトの形態を模したものの出現により、社会的不安を惹起する可能性があること。三つ目といたしまして、人または動物の胎内への移植など、不適切な研究が行われる可能性があること。こうした懸念点がある一方で、四つ目の丸でございますが、ヒト幹細胞を由来とする試験管内モデルであるため、倫理的及び研究手技的な観点から、その作成及び使用において、生命の萌芽であるヒト受精胚を滅失することがないという優位性もあるということでございます。このため、ヒト胚モデル研究では、既存の指針を見直すことで、倫理審査委員会による審査、国への届出など、ヒト胚モデル研究のルールを策定することが妥当であるというふうにされております。おめくりください。
 ヒト胚モデルの報告書におきましては、具体的なルールとして、ここに示したようなものを規定すべきではないかとされております。1番目といたしまして、「ヒトES細胞の使用に関する指針」等と同様に、IRB、いわゆる機関内の審査手続を経ること。また、国への届出を行うこと。2番目といたしまして、許容されない研究、具体的には、ヒト胎内や動物胎内へ移植しないことですとか、ヒト胚モデルから個体産生しないこと、こういったことを規定すべきではないかということでございます。3番目といたしまして、個々の研究において研究計画書に科学的目的を達成するために必要な範囲で最小限の培養期間を設定してはどうかということでございます。4番目といたしまして、研究成果の公開をすること。また、あらゆる機会を利用して、研究に関する情報提供を行い、国民に対する普及啓発に努めること。最後、5番目ですけれども、iPS細胞等を由来とするヒト胚モデルにつきましては、生命・医学系指針にのっとった形でICを取得またはオプトアウトの手続をするということでございます。
 具体的に見直す指針につきましては、今、画面共有しているページにございますが、ES細胞の関連指針、生殖細胞作成指針を改定してはどうかということが検討されております。こういった御報告を2月のこちらの委員会で事務方からいたしまして、その後、しばらく時間がありましたが、この間、事務方におきまして、具体にどういった形で指針に反映していくかということを検討してきております。そちらにつきましては、この後の場で、また事務局から御報告をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
【八代主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明がありました生命倫理専門調査会の報告書に沿って検討を進めていきたいと思います。その検討に当たりまして、まず、本委員会としてヒト胚モデルについての理解を深めたいというふうに考えておりますので、本日は、生命倫理専門調査会におけるヒト胚モデルに関する議論にも御参加されておりました、国立成育医療研究センターの阿久津先生と、本委員会に御所属いただいております藤田委員のほうから、生命倫理専門調査会でのこれまでの議論を含めまして、ヒト胚モデルを取り巻く研究の現状ですとか、規制の状況等について、御発表いただきたいと思います。
 それでは、まず、阿久津先生のほうから、御発表をお願いいたします。
【阿久津参考人】  国立成育医療研究センター研究所の阿久津です。資料を共有させていただきます。
 それでは、貴重なお時間ですので、始めさせていただきます。「ヒト胚モデル研究の背景と研究倫理」ということで、お話しいたします。
 本日は、大きく3点でお話しいたします。まず、ヒト胚モデルのお話の前に、ヒト胚研究の進み具合の状況がヒト胚モデル研究への影響を大きく及ぼしておりますので、それについてお話しします。2点目に、ヒト胚モデルとは何か。3点目に、ヒト胚研究のための大枠での考え方というのを、私が感じていることをお話しいたします。
 まず、1点目の背景になります。そもそも、ヒト胚研究ですけども、なかなか進んできていないというのが、これまでの現状でした。こちらの資料は、多能性幹細胞等からのヒト胚に類似した構造の作成等に関する検討に係る作業部会、生命倫理専門調査会の下につくられました作業部会が、令和5年8月9日から全9回にわたって議論を行って報告書を作成して、生命倫理専門調査会へ提出いたしました。この作業部会で、ほぼほぼゼロベースから活発な議論が行われました。本委員会の委員であります藤田みさお委員と小林俊寛委員も作業部会のメンバーとして、当初からこの最終的な報告書のまとめに関わっていただきました。
 今回は、まず、東京大学の柳田先生の資料を御提示いたします。まず、ヒト胚研究がなかなか進まなかった大きな理由ですが、動物モデルではマウス等でかなり、生殖発生学、初期発生学の研究験が進んできたわけですけども、得られた成果が全てヒトへ展開できるかというと、現実的にはなかなか難しい。例えば、マウスとヒトでは、性周期ですとか、初期発生の組織の形態ですとか、遺伝子発現等々、かなり相違があるというところにあります。
 これはヒト胚発生の受精から初期の発生を簡単に示したものになります。大きく分けて二つ、着床までの間、これは試験管の中で再現できておりますので、そちらをベースに、生殖医療が発展していったというのは、周知のことと思います。ですので、着床周辺期、着床前ですと研究ができるということになりますけども、着床以降、つまり、通常ですと子宮の中で起こるダイナミックな発生動態というのは、ヒトの場合、なかなかといいますか、ほぼほぼ研究対象とするのが無理な状況になります。要するに、こちらが今回の重要な研究対象、ヒトでモデルとするには非常に難しい領域ということになります。
 一方で、多能性幹細胞の研究が、様々な展開を、広めにどんどん進化していく、それと、それぞれの研究テーマが進化していったというのが、昨今になります。まず、ここでお示ししているのは、例えば、多能性幹細胞ですので、ヒトのES細胞とか、iPS細胞、つまり、体の何でもなりますよということで、神経を作ったり、肝臓を作ったりという基礎研究から、最終的には臨床まで至る、再生医療で実際にヒトに対して行われるというところまで、世界的にも研究がどんどん進んでいったわけです。
 先ほど言いましたように、ヒトの臓器の発生ですとか、それぞれの組織・臓器の連関した細かな研究対象というのが試験管の中でもだんだんと可能になってきたというのが、最近になります。着床前のものをエンブリオイドと言ったりします。これは後ほど詳細に説明いたします。もう一つは、受精から14日目に原腸形成というのが起こるんですけども、この原腸形成の周辺期、あるいはちょっと以降に、ヒトの発生モデルを試験管内でも作成できるようになってきました。これをガストロイドと言ったりします。もう一つは、言葉として大分なじみが出てきたのが、ヒトの組織や臓器を試験管の中で作っていくというものになります。これは、疑似臓器ですとか、ミニ臓器と言ったりします。これはオルガノイドと言ったりしますけども、オルガノイドの研究も相当活発に行われているというのが、昨今になります。
 それでは、実際、ヒト胚を用いた研究ってどうなんですかねというところになります。大きく二つです。まずは、受精胚、例えば胚盤胞という着床直前の胚を試験管の中で育てるということは、これまではなかなか難しいことでありました。1970年代からずっと研究が行われてきたわけですけども、2016年までは、試験管の中で受精から9日目を超えるような研究というのは、ほとんどなされていませんでした。不可能だったと言っても過言ではないです。それが、2016年に、イギリスとアメリカの研究者、二つのグループが同時に、ヒトの受精胚を大体14日目近くまで、本当にヒトの子宮の中で育っているような状況を試験管の中で再現することができました。遺伝子発現も、相当、ヒトのものに、リアルなものに近いですよというのを報告しました。大分、ここで進展してきたということになります。一方で、分子生物学的な手法でシングルセルの遺伝子発現解析というのがこちらの分野にも展開されるようになってきて、大分、研究が進化していった。分子生物学的にも細かく分かるようになっていったというのが、大きな背景になります。
 そこで、もう一度、多能性幹細胞に戻ります。多能性幹細胞は、再生医療にも展開できるぐらい、未分化のところから各組織・臓器に分化したものを作っていくという研究もどんどん進んできました。一方、分化したというのとはちょっと視線を変えまして、いわゆる初期胚を、多能性幹細胞から初期胚様のものを作るという研究も、2023年のちょっと前、マウスではその数年前に成功するようになってきました。そして、2021年にヒトの多能性幹細胞からヒトの初期胚様のものを作ることができましたという研究が、世界でほぼほぼ同時多発的に、一気に報告がなされてきました。その一つの成果というのは、2023年に、Method of the Year、非常に注目されるべき研究成果ということで報告がなされています。これが大きな背景になります。
 それでは、今度は、ヒト胚モデルとは具体的に何でしょうというところになります。最初に事務局のほうから御説明いただいたんですけども、これは作業部会でまとめた報告書の1節を取り出してきております。ヒト胚モデルとはなんですかというところになります。この線は私が引いたんですけども、まず、大きな捉え方としては、ヒト胚モデルは、ヒト多能性幹細胞等から作成する分化誘導体ですよと。例えば、ES/iPS細胞から、神経を作ります、肝臓、骨を作ります、心臓を作りますというような、分化誘導する研究の一つであるという捉え方です。一方で、どういう意味かというと、幾ら胚様の構造体だからといって、生殖細胞、配偶子や受精卵から作っていないですよというのが、一つ重要な点になります。
 じゃあ、ヒト胚モデルとは、ここではエンブリオモデルを日本の中で共通理解として展開しやすいように私たちは胚モデルとしたわけですけども、要するに、胚様の構造体とは何でしょうということになります。ここで示しておりますように、胚とは、簡単に言いますと、着床を起点として、その前のものか、その後のものか、どっちともひっくるめたようなものだと思ってください。それに似たようなものがヒトの多能性幹細胞から作ることができていますとしています。つまり、胚というのは自律的に一つの個体を作成する能力があるものなんですけども、そういったところまでは行っていません。多能性幹細胞から作ったものの一部は、ヒト胚様のものに、遺伝子発現等、類似したものですということになります。これは、最初のスライドで示したように、柳田先生の資料を提示しております。要するに、ヒト胚モデルは、ヒト胚に一部似たような構造であったり遺伝子発現等をするんですけども、より細かく見てみると、通常、ヒトの胚には含まれていないような遺伝子発現をする集団をまだ含んでいたりしますということになります。つまり、形態はすごく似ているかもしれないけども、遺伝子発現等、細かく見ると同等なものではないですよというのは、1例になります。
 今までは、多能性幹細胞から作った胚モデルについて、説明してきました。もちろん、マウスの胚モデルという研究もどんどん進んでおりますし、一方で霊長類の研究も行われています。これは中国からの報告で、これが、今後、ガイドライン等々を作成する上でも一つ考慮する点なんですけども、中国の研究者は、サルから作った胚モデルを猿の子宮に移植をしています。どうなるかというと、着床はするんだけど、ごくごく初期で発生はストップしたというものになります。要するに、当然ながら母胎なんかを得るところまでは行ってませんし、例えば、心拍等々が見えるところまでは行ってませんというのが、この報告になります。
 「ヒト胚モデルとは」と、ここでちょっとまとめております。配偶子、受精卵から作られるようなものではないということ。実験動物、マウスや、先ほどの霊長類も含めまして、胎仔の発生まで至った例はないということ。当然ながら、同様に個体発生の報告はございません。一方で、一部、ヒト初期発生に類似した点があるので、有用性はあるでしょうということになります。細胞や組織レベルでの類似点、分子発生、遺伝子発現等々、発現動態なども初期発生に類似した点を認めるということになります。
 ヒト胚モデルの意義ですけども、通常、ブラックボックス状態で、ほぼほぼ知見が得られていなかった、検証する、解析するということがなかなか難しかったところに対して、試験管の中でヒト発生の理解と、研究が行われることで、発生の理解、医学・医療への貢献が大いに期待されるという、研究のモデルになります。従来、研究手段がなかった、着床周辺期、初期発生過程を試験管の中で検証・解析ができるということになります。ひいては、これが不妊症・不育症や先天性疾患の医学、医療、再生医療の発展に貢献し得るという、研究のバイオモデルということになります。
 最後に、ヒト胚モデル研究のための大きな考え方ということになります。つまり、有用性はあるとしたところで、今後、何が、どういうことが問題になってくるか。ヒト胚モデルというのは分化誘導胚なんですけれども、実際は、似ているところはあるけど、まだまだ違うところがあるということが分かると思います。じゃあ、この重なるところがどんどん進んでいったらどうなるんだというのが、遠い将来、想定されることになります。
 もう少し具体的に言いますと、何が問題になり得るかというところかもしれません。多能性幹細胞、いわゆる様々な分化誘導研究が行われているんですけども、これは、通常の発生・分化が進んだ状態というよりも、逆に未分化に近づくようなものを作っていくということになりますので、生体の胚盤胞により近いデータが蓄積されていった場合、これが、研究のルール、大前提として行ってはいけない研究の枠組み、それをつくった上で、研究者のみならず、社会も安心して研究を見守るという環境が必要なんじゃないかということが一つ。もう一つは、これは胎児様の構造も作るんですけども、今は細胞が一塊になった集団なんですが、これが少しずつ胚様の構造体になっていった場合に、果たしてこういうものをどこまで培養していいのかというような、随分先の話なんですけども、そういうことも想定され得るだろうということになります。
 その上で、これは最後のスライドなんですけども、私自身も研究を行っておりますので、一般の方々との、こういう先端の研究の説明だったり、皆さんはどう考えているかというのを対話するソーシャルダイアローグだったりがもっと大事になってくるだろうということで、昨年、JSTのサイエンスアゴラで胚モデルも一つのテーマとしまして、いろいろ意見交換することができました。これは、中学生から大人まで多くの人に参加していただいて、非常に活発な議論をすることができました。研究者側のアプローチとしても、こういったことというのは積極的にやるべきなのかなというふうに、個人的には思っております。
 長くなりましたけど、以上となります。どうも、御清聴、ありがとうございました。
【八代主査】  阿久津先生、御説明、ありがとうございました。
 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
 片野先生、お願いいたします。
【片野委員】  阿久津先生、ありがとうございました。
 幾つか興味のある点があるのですけれども、最後に出していただいた社会との対話の部分なんですね。今回のテーマの一つでもありますが、あらゆる機会を使って研究者が、普及というか、啓発というところに力を入れるというのがありましたが、こちらのほう、このような難しいテーマでされるときに、どのくらい機関のほうの協力は得られたんでしょうか。
【阿久津参考人】  ありがとうございます。こちらに対しては、私たちが行っているAMEDの再生・細胞医療・遺伝子治療中核拠点事業というのがありまして、そちらの御協力を得たというのと、あと、JHというナショナルセンターの研究事業があるんですけども、そちらからも得られました。ただ、実際にどういったものをやるかというのを考えるのは、現場の私たち研究者と、今回、サイエンスコミュニケーターなどの専門的に慣れた方が加わっていただいて、どうやったらよく分かるプログラムになるかというのは考えて、ちょっと時間をかけて行いました。
【片野委員】  ありがとうございます。研究者がするとなると、いつもの成果報告会のようなところから先に出るのはなかなか難しいと思いましたので、どのような力を得て行ったのかというところに興味がありまして、質問させていただきました。ありがとうございます。
【阿久津参考人】  ありがとうございます。
【八代主査】  ありがとうございました。
 そのほか、御意見、御質問等、いかがでしょうか。
 小板橋委員、お願いいたします。
【小板橋委員】  御説明、ありがとうございました。非常に興味深いお話で、昨今、ちょっと新聞記事とかも気になっていたところをすごくよく理解することができました。ありがとうございます。
 片野先生と同様に、最後のアゴラのことに関してお伺いしたいんですけれども、参加された方々からはどのような意見が聴取できましたでしょうか。共有いただけますと、ありがたいです。
【阿久津参考人】  ありがとうございます。今回、大きく二つのテーマで行っておりまして、胚モデルというのと、あとは、神経オルガノイド、脳オルガノイドですね。こちらも、テレビで紹介されたりして、意識を持つのかとか、あと、脳オルガノイドを使ってゲームをするみたいな、誤解を相当生むなという、大きな二つのテーマに対して行ったんですけども、まずは、今回のシンポジウムのスタート前に皆さんに、現状、どう考えているかというのポストイットに書いていただいて、終わった後に、その考え方がどう変わりましたかというのも皆さんに御協力いただいて掲示板に貼っていって、考え方が何割ぐらい動いたかというのを見ていったんですが、大分多くの方々が、それぞれの理解度はあるかと思うんですけども、誤解していた方々が多くいた割合のところを大分少なくしていけたなというのが、より可視的に分かったかなと。こちらも、やってよかったなと思いました。
【小板橋委員】  ありがとうございます。
 もう1点だけ。こういう技術が進んでいくと、将来的にはSF的な感じで、人工子宮で子供を産めるようになるとか、そういう発想に行きそうに思うんですが、そういうものを望む声というのはどれほどありましたでしょうか。
【阿久津参考人】  ほぼほぼないです。ほぼほぼないというのは、まず、研究者側がかなり丁寧に説明しています。想定はされることかもしれませんというのを、こうですよというのを、丁寧に説明したというのはあります。適切じゃない言い方で言うと、そのように考えるほうが面白そうなので関心が高まるかもしれないんですけど、それが大きくなると考え方がゆがんできちゃうので両方にとってあまりよくないなというので、ちょっとそこは注意しながらやっていきました。
【小板橋委員】  ありがとうございます。
【八代主査】  ありがとうございました。
 私のほうからも、1点、御質問をさせていただきたいんですが、最後のアゴラの前のスライドのところで培養の期間のお話が少しあったかと思いますけれども、これはもちろんやってみないと分からないというところはあるのでスペキュレーションになると思いますが、14日ルールを依拠してというところを無視する形で培養し続けると、vitroでどういうことが起こり得るというふうに、先生はお考えでしょうか。
【阿久津参考人】  ありがとうございます。実はこれ、二つは明確に分けないといけないと思うんですね。14日ルールは、自主的にも適用するのか。着床前の胚をブラストイドと言ったりしますけども、それを作るときが1点目。要するに、それを作ってから、接着、つまり着床様の解析をするといったときには、これまでの14日ルールがある程度適用されるだろう。なので、これまでの論文等々見ても、自主的に14日ルールを適用していることのほうが多いです。
 一方で、先ほどの胚様の構造体を作るというのは、胚盤胞様のものを作らないで、ダイレクトに作ることが可能になっています。つまり、胎盤というものは抜かして、胎児様の構造体だけ作るというところになります。そうなってくると、そもそも14日ルールの考え方って、これには適用できない。また、どれくらいの期間培養していいかをもし考えるなら、生命倫理専門調査会では培養期間を制限するというのはなくなっているので、そこの制限はあれなんですけども、研究がどんどん進んでいった場合にどうなるかというところになるかなと思います。ですので、作業部会の報告書でもそうなんですけども、この分野は日進月歩で研究がどんどん進んでいくので、国や当局は研究の進展状況をかなり注意深く見る必要があるんじゃないかというのは、部会の報告書の中でも明示しております。
【八代主査】  ありがとうございました。
 そのほか、御意見はございませんでしょうか。後ほどの質疑のところであればと思いますが。
 片野委員、お願いいたします。
【片野委員】  今の主査の御質問に続いてなんですけれども、14日ルールではなくて、日にちでなくなった場合に、もし阿久津先生がここまでというのを考えるとしたら、それは構造なんでしょうか、それとも機能から、あるいは両方の面から考えることになるのでしょうか。もしもお考えがありましたら、お聞かせください。
【阿久津参考人】  実は、その辺も作業部会の中で相当時間を取って議論しました。現実的には、今作られているものはどんなものかというと、細胞の塊に近いもので、一部は、臓器だったり、組織だったりに似たものができている。ただ、一方でマウスの研究は進んでいて、マウスですと心拍まで打つようなものが多分できていたと思います。じゃあ、ヒトはどうだと。これは、当時、作業部会の中でも藤田委員なんかが、四肢ができて動き出したら、それをどう捉えるかとか、考えがありましたので、もちろん、形態というのは大事かなと思いますし、機能というのは、実際、機能評価するためには対象物を結構細かく研究・解析しないといけないので、機能評価はもっと先かなというふうに思います。なので、そういった胎児様のものは、どんなものができるか、研究成果が出てくるかというのは、よく考える一つのターニングポイントなのかもしれませんけども、現実的には相当先だろうというふうには考えています。
【片野委員】  ありがとうございます。
【八代主査】  ありがとうございました。
 まだ御意見等あると思いますけれども、お時間等ございますので、こちらで終了とさせていただきます。阿久津先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、藤田委員のほうから、御発表をお願いいたします。
【藤田委員】  よろしくお願いいたします。私からは、「ヒト胚モデル研究の倫理的課題と規制の動向」について、お話をさせていただきます。
 ヒト胚モデルの倫理的課題ですとか規制についての議論は以前からありましたが、より本格化したのは、一昨年の国際幹細胞学会での報告が契機の一つではないかと感じております。国際幹細胞学会で、基調講演だったと思うんですけれども、統合胚モデルの長期培養、つまり14日相当を越えるか越えないかぐらいの発生段階までの培養に成功したということをイギリスの研究グループが報告しました。それをイギリスの大衆紙であるガーディアン紙がその日のうちに「合成胚の作成に成功」という非常にセンセーショナルなタイトルで報じました。国際幹細胞学会はこうした動きにすぐ対応して、合成という言葉に反応したわけですけれども、声明を出しまして、この研究を支持した上で、次のような文書を公表しております。「統合胚モデルは、合成でも胚でもない。これらのモデルは、ヒト胚の初期段階の発生を再現することはできるが、生まれた後の段階のヒトと同等の発生をすることはできないし、することもない」ということです。
 ここで、「統合胚モデル」ですとか、その他の用語について少し御説明しますと、2021年に国際幹細胞学会がガイドラインを改定しまして、そのときにヒト胚モデルを二つに分類しました。まず、非統合胚モデルというのは、胚外膜を含まないなど、胚の一部の発生を再現し、胎盤になるような部分は作らず、中身だけを作るとか、そういった胚の全体を模倣しないようなモデルを指しまして、こうした研究については、基礎研究としての適切な審査を受ければ、専門的なヒト胚とか幹細胞研究に特化した審査は必要ないとしておりました。代表的な例としましては、ガストロイドが相当いたします。一方で、統合胚モデルというのは、胎盤になるものを含め、胚全部の統合された発生を再現するようなモデルを指しまして、これにつきましては、ヒト胚や幹細胞研究に関する専門的な審査・監視のプロセスが必要としました。ブラストイドが、その代表的なものです。ただ、本発表ではこれらの用語を使う際にはこの意味で使いますが、後に御説明しますように、この国際幹細胞学会のガイドライン自体も、研究の急速な進捗に合わせて、近々、改定される予定であります。
 では、この統合胚モデルが、ヒトではないし、合成ではないし、問題ないとしたら、何が議論の対象になっているのかということであります。ヒト胚モデル研究の倫理的課題として、科学的意義と、懸念や課題について挙げましたが、まず、先ほどの阿久津先生のお話にもあったように、科学的意義としましては、ヒト初期胚の発生過程を模倣できるとか、不妊症、不育症、先天性疾患の解明及び治療の開発に貢献できるとか、あと、ヒト胚の研究、本物を使う場合には、規制も厳しく、入手も難しいので、倫理的課題を回避できる代替手段として、このヒト胚モデルは非常に大きな注目を集めて研究されているわけです。一方で、ヒト発生の精緻な模倣を目指して研究が進めば進むほど、本来だったらモデルであったものが、限りなく本物に近づいていく可能性があるわけです。そうなっていくと倫理的課題を回避できる代替手段とは言えなくなってしまうということで、こういったパラドックスがヒト胚モデル研究が本質的に持つ倫理的課題の特徴と言ってよいのではないかと考えております。また、現在の国内外の法規制においてはこういった新しい研究を想定してないわけで、法規制にヒト胚モデルをどのように位置づけるのかというのが課題になっておりますし、国内の既存の指針においてはギャップがあることも課題として挙げられると思いますし、あと、先ほどから議論になっております、研究期間、培養期間の設定、これについても海外では議論が進んでいるところです。本日は、主にこの三つの点と、海外の動向について、紹介をしていきたいと思います。
 まず、一つ目の国内外の法規制におけるヒト胚モデルの曖昧な位置づけについてお話をいたしますと、大体、2020年ぐらいからヒト胚モデルに関する各国の規制をレビューした論文というのが幾つか散見されるようになりまして、これによりますと、ヒト胚モデルに特化した、そのための法規制というのは、ほぼないのが現状です。僅かな例外がフランスでして、2021年に改定されたフランスの生命倫理法で、ヒト胚モデル研究を行う研究者は生物医学庁に申告するように、規定上、明記されたということがあります。ただ、その他のほとんどの国におきましては、法律やガイドラインでヒト胚モデル研究に関して明記された文書はなく、曖昧で、何が許され、何が許されないのか、不明確なままであるというのが現状であります。つまり、冒頭で御紹介しましたようなヒト胚モデルの研究というのは、どの国でも、既存の法規制の枠組みの中で、その解釈に基づいて行われているというのが現状になります。その結果、国によっては非常に複雑な状況も生まれております。なぜなら、既存の法規制というのは、ヒト胚モデルのような新しい研究を想定しておりません。そして、ヒト胚の定義というのは、興味深いことなんですけれども、各国の法規制によって異なるということがあります。ヒト胚というのは直感的にはそれ以上でもそれ以下でもないというふうに思っていたわけですが、法律上の定義が異なる。一つ一つ御説明はしないですけれども、この右の表というのは、各国の法規制におけるヒト胚の定義というのがこれぐらいバラエティーに富んでいるんですよというのをまとめた論文からの引用で、これによりますと、国によってはヒト胚モデルがヒト胚に該当するのかどうか、明確ではない。あるいは、極端な例になりますと、ヒト胚に該当すると法的に解釈されるといった事態も生じております。
 その極端な例というのが、オーストラリアの例であります。2021年にオーストラリアの研究者がブラストイドを作って『Nature』に報告したという研究です。彼らはこれをiBlastoidsと呼んで報告しているわけですけれども、このiBlastoidsは、オーストラリアの規制当局によって、Research Involving Human Embryos Actと呼ばれる法律上、「ヒト核ゲノムまたは改変ヒト核ゲノムを有する生物学的実体の…」云々という、ここの定義に相当するヒト胚であるとみなされたわけです。その結果、研究者と大学はヒト胚研究を行うライセンスの取得を求められることになりました。
 日本では、統合胚モデルは法律上ヒト胚には該当しないというのがこれまでに整理されたことであります。これは、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」に書かれた用語の定義をお示しするスライドであります。まず、胚の定義ですが、これは人や動物の胎内に戻すと一の個体に成長する可能性があるものという定義ですので、現時点でこれに該当するものではありません。あと、ヒト受精胚の定義というのは、ヒトの精子とヒトの未受精卵との受精を前提にしておりますので、これを経ないで多能性幹細胞から直接作成するヒト胚モデルは受精胚には当たらないと整理されるわけです。あと、人クローン胚の定義ですが、例えば、私の体細胞からiPS細胞を作って、そこからヒト胚モデルを作ったとすると、私のクローン胚モデルのようなものができるわけなので、一応、人クローン胚の定義を見てみますと、これも、ヒトの体細胞であって核を有するものがヒト除核卵と融合することでできる胚と定義されていますので、これにも該当しないと整理することができると思います。
 では、どういった既存の指針が適用されることになるのかといいますと、ES細胞からヒト胚モデルを作った場合にはヒトES細胞の使用に関する指針が適用されることになり、iPS細胞からヒト胚モデルを作った場合はいわゆる生命科学指針が適用されることになると言えます。ただ、サイエンティストの先生方は、ES細胞とiPS細胞からそれぞれヒト胚モデルを作って比較をするという研究を行う方も多いと思われますが、現状では次のようなギャップが生じてくるわけです。例えば、生命科学指針にのっとって広く入手が可能で評価が定まった細胞を使ってヒト胚モデルを作る場合に、そもそも倫理審査が必要でないという整理になってしまう可能性があったりとか、ES細胞を使ってヒト胚モデルを作った場合には国に報告・届出をすることが求められますが、生命科学指針にのっとって研究を実施した場合には国への届出が必要ないとか、そういったギャップが生じてくるわけです。ですから、生倫調が昨年秋に出した「ヒト胚モデルの取扱いについて(中間まとめ)」では、ヒト胚モデルを用いる研究のためだけに指針を新規に作成することは無用の指針の種類を増やすことになることから、規制方針が類似する「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針」ですとか、ES細胞に関連する指針といった既存の指針を改正し、ヒト胚モデルを用いた研究を適用することが適切と考えられるというふうに整理がなされたところです。
 次に、ヒト胚モデルをどの程度の発生段階まで培養してよいのかという、研究期間、培養期間の上限についてのお話をしたいと思いますが、その前に、モデルではなく、本物のヒト胚を用いた研究に適用される14日ルールについて、簡単に御説明したいと思います。14日ルールというのは、受精後14日または原始線条の形成以降、胚を培養してはならないというルールでありまして、大体、初出は1980年前後で、これは、体外受精技術の発展によりヒト胚研究のニーズが高まって、ただ、ヒトの胚、受精胚をどんどん培養していくとヒトに近づいていく可能性もあることから、どこかで上限を定めましょうということでできたルールであります。現在では、こちらの右のマップに青で示されてありますように、多くの国で法律ですとかガイドラインに取り入れられているルールであります。もちろん、ヒト胚モデルは本物の胚とは異なります。ですから、この14日ルールがヒト胚モデルに直ちに適用されるわけではありません。ただ、培養期間・研究期間の上限は必要ではないかというのが、現在、諸外国でも懸案事項となっている点であります。
 そこで、御紹介したいのは、2022年の秋に出版された論文で、これはヒトではなくマウスの多能性幹細胞を使ったものですが、神経チューブと心拍を打つ胚モデルができたという報告であります。非常にインパクトがあるんですが、ここで神経管、ここで心拍を打ちますよというビデオです。ここで心拍を打っているのが御覧いただけますでしょうか。ここが神経管です。これも、こちらが頭で、こちらが下なのかしら? 逆なのかしら? 神経管ができて心拍を打っているという動画であります。もちろん、これが私たちと同じ哺乳類の生命の萌芽なのかと聞かれますと、例えば、万能細胞から心筋細胞を作ると、ディッシュ上で拍動するということも起きるわけです。ですから、それの非常に精緻なバージョンと言えなくもない。こういった研究がヒトで実現し、報告されることも、時間の問題なわけです。ただ、培養期間の制限というのは、今のところ、明記されたルールはありません。実際、先ほどビデオでお示ししました研究を行いましたJacob Hanna博士は、イスラエルの研究者ですが、ベンチャー企業を持っておりまして、ヒト胚モデルを先ほどのように長期にできるところまで培養して、これを移植利用するということを目指しているのではないかということが報じられております。研究が進んでヒトの形態を持っているようなものができれば、ヒト胚モデルというよりも、ヒト胎児モデルになるのではないかということで、こういった動きに関しては懸念を示している研究者もおられるわけです。
 もちろん、ヒト胚ではないので、14日ルールは考える必要がありません。ただ、各国では規制当局ですとか政府の諮問委員会などで議論が進んでおりまして、培養期間については何らかの制限が必要ではないかというのが、おおむねコンセンサスとなりつつあります。しかし、その対応というのは多様でありまして、これはイギリスの国の報告書の一部を引用したもので、各国のまとめをしている表なんですが、例えば、オーストラリアでは、先ほど申し上げましたように、ヒト胚モデルはヒト胚と同等の扱いを受けますので、14日ルールが適用される。オーストリアとかイギリスは、特に上限は設定されないで、個別の判断が求められる。フランスとオランダについては、国の委員会が28日間という上限を設ければどうだという、提案を行っているようです。日本の方向性としましては、生倫調の報告書の方向性は、オーストリアとかイギリスの方向性と極めて近いのかなというふうに整理できます。
 では、ここで国際的なガイドラインが培養期間の上限についてどのように整理しているかということを見ていきたいと思います。2021年に国際幹細胞学会がガイドラインを出しておりまして、これはヒト胚や幹細胞を用いた基礎研究の審査の在り方について示した表になります。研究のタイプによって、通常の基礎研究としての審査を受ければヒト胚や幹細胞研究に特化した専門的な審査は受けなくてもよいというのがカテゴリー1で、AとBに分かれておりますのは、1Aは本当に基礎研究の審査のみ、1Bというのは、基礎研究の審査のみだけれども、専門的な審査委員会に報告はしておいてもいいですよという分類になります。また、ヒト胚や幹細胞に特化した専門的な審査が必要というのがカテゴリー2で、実施禁止というのがカテゴリー3になります。これもAとBに分かれておりまして、3Aというのは、研究の進捗によっては将来認められることもありますが、現在は禁止というもので、3Bというのは、これから先も絶対駄目という、そういう禁止になります。これによりますと、ヒト胚の一部を模倣するような非統合胚モデルは、基礎研究としての審査のみでよいという分類になります。また、統合胚モデル、胚全体を模倣するようなモデルについては、専門的な審査を必要とし、培養期間につきましては、研究目的、科学的目的の達成に必要な最低限の期間というふうに書かれております。そうして作ったヒト胚モデルを人や動物の胎内に移植することは禁止ということになっております。ただ、このヒト胚モデルにつきましては研究の進展があまりにも速いので、ここだけを特出しして改定作業を行っておりまして、その公開が近々なされる予定だと思います。
 では、どのように改定されることになるのかということですが、私も、国際幹細胞学会が出すガイドラインの新しい内容を具体的に拝見しておらず、今報じられている、アクセス可能な情報をまとめたのがこのスライドになります。結論から申し上げますと、非統合か統合かによって審査の厳しさを変えるという区分を廃止しております。まず、胚体外膜の有無に関わらず、3D構造を持つ全てのヒト胚モデルというのは、専門的審査を要するカテゴリー2という分類になるそうです。我々の体となる部分以外の、例えば、胎盤になるような部分を含んでいても、含んでいなくても、3D構造を持つ場合には審査をしてください、ただし、その審査の厳格さですとか培養期間というのは、審査対象となるモデルの複雑さによって決定しましょうとなっています。あと、バイオプリントされた二次元の分化モデル、ディッシュ上で培養するような平面的なモデルについては、これまで専門委員会に報告してもいいですよと言っていたカテゴリー1Bから、本当に基礎研究に必要な審査のみでよいですという、1Aに変わりました。あと、トロフォブラストと卵黄嚢オルガノイド、我々の体になるような部分以外の、胎盤になるような部分ですとか、それ以外の部分の作製については、基礎研究としての審査のみ。また、胎内移植と、あと、人工子宮の話も出てまいりましたが、こういった、胎内に移植しなくても、長期の培養が可能になる、生存可能になることも見越して、生存可能性を持つような試験管内の、ディッシュ上のシステムでの培養というのも禁止という整理がなされるようです。
 この内容は、昨年の夏に公開されました、イギリスのケンブリッジ大学のグループによる詳細なガイドラインとも非常に似ているものであります。これはどのような規定かと申し上げますと、ヒト幹細胞を用いたヒト胚モデルの作成と使用に関する実施規定というもので、ここまで詳細に記したものは初めてだということで、「Nature」のニュース記事でも大きく取り上げられたりしておりました。ただ、あくまでケンブリッジ大学の研究者グループがまとめたものでありまして、国レベルでのガイドラインではありません。特徴としましては、統合・非統合モデルを区別しないこと。専門的な審査を求めること。研究目的に照らして、最小限の培養期間を専門的審査で個別に判断すること。人や動物の生殖器官への移植を禁止するだけではなく、体外で成育可能な状態に発生させることも禁止すること。あと、倫理審査申請・承認の登録と、概要の公開を推奨しております。
 生倫調が昨年秋に出した報告書も、基本的にこうした海外の国際的な動向と整合するような内容になっていると考えております。繰り返しになりますけれども、「ヒトES細胞の使用に関する指針」などと同様の審査手続を求めていること。許容されない研究を、胎内移植だけではなく、ヒトの個体発生につながるような研究も禁止すること。あと、培養期間については、研究目的を達成するために必要な最小限度を設定して、審査すること。研究成果の公開を行ったりとか、インフォームド・コンセントの仕組みや規定をきちんと定めることなどが書かれております。
 最後のスライドになります。まとめです。ヒト胚モデル研究になぜ規制が必要なのかということですが、ヒト胚モデルに関する課題の特徴は、ヒト胚の模倣を目指す以上、研究の進展に伴って将来的にはヒト胚モデルがさらに本物のヒト胚に近づいていくというのは論理的な帰結でありまして、そういった将来に備えてルールを明確にしていく必要がある。ただ、既存の規制ではヒト胚モデルの位置づけというのが明確ではないから、これを明確にしていきましょうということかと思います。ですから、今のヒト胚モデル研究に何か大きな倫理的な問題があり、ルールがないから直ちにつくらなければいけないというよりは、将来に備えて今あるルールを明確化することが求められていると、そう整理できるのではないかと考えております。ただ、その際の規制の厳格さとしましては、本物のヒト胚ほど厳しくないにしても、ヒト幹細胞から、例えば、肝臓ですとか、腎臓ですとかを誘導するようなルールよりは厳しいものが求められるのではないか。あと、培養期間の制限を設ける必要があるのではないか。こういったことについては、海外でもコンセンサスになりつつあると言えます。ただ、ヒト胚モデル研究は非常に種類も多様でありまして、実施の可否を判断したり、研究目的に照らして培養期間を個別に判断したりする場合に、それを審査する倫理委員会の専門性ですとか、審査の質ですとか、役割ですとかが重要になってくるのではないかと考えております。
 私からは、以上です。
【尾畑主査代理】  藤田委員、ありがとうございます。
 申し遅れましたけれども、これより、主査に代わりまして、主査代理が進行を務めてまいります。
 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。
 いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、進めてまいります。ありがとうございます。
 ただいまの御発表も踏まえまして、関係指針の見直しの検討に入りたいと思います。事務局から、資料126-4-1に基づき、説明をお願いいたします。
【木村安全対策官】  それでは、資料126-4-1に基づきまして、説明を進めてまいります。1枚、おめくりください。
 先生方の御発表の資料にもございましたので詳細は割愛させていただきますが、CSTIの「ヒト胚モデルの取扱いについて(中間まとめ)」では、こちらにある五つについて具体的に指針に落とし込むようにということで、この間、文部科学省のほうではこれら五つの項目を、ES細胞の関連指針、iPS細胞から生殖細胞を作成する場合の指針、それらの2点にどういった形で入れ込んでいったらいいかというのを検討してまいりました。本日は、その内容の説明になります。1枚、おめくりください。
 まず、ES細胞使用指針のほうから、御説明をしてまいりたいと思います。左側は現状のES細胞使用指針の構成でございまして、右側に、どういった方向性で見直しをしていくのかということについて、書いております。まず、総則のところですけど、第1章第2条のところにヒト胚モデルの定義について規定する必要があると考えております。
 第2章第1節、使用の要件のところにまいりまして、ヒト胚モデル作成研究の要件、これはヒト胚モデル研究目的等になりますが、そういった内容ですとか、胎内移植とか個体産生の禁止、そういったものの要件をこちらのほうに書き込んでいくのではないかというふうに考えおります。
 第2節の使用の体制のところにつきましては、いわゆる機関内IRBですとか、機関の長の責任等について規定しているところですけれども、こちらにつきましては大きな改正は必要ないのではないかというふうに思っております。
 第3節、使用の手続にまいりまして、使用機関の長の了承というところは、現状もES細胞を何らかの形で使用する場合、使用計画書にどういったことを記載するか、その内容を使用機関の長が了承するか、しないか、そういったことが規定されていますが、こちらに、使用計画書の記載事項として、培養期間の設定について書いていただく。そうすると、この先の倫理審査委員会等の手続でそういったものが議論されるといった手続に流せますので、この第11条にマル3の内容を書き込むのかなと思っております。第12条、第13条は、IRBの意見聴取や文部科学省への届出でございますが、まさにそういった内容をこちらに規定していくのかなというふうに思っております。
 おめくりいただきまして、ヒトES細胞の分配のところでございます。現状も、ES細胞を使用している機関が他の機関にES細胞を分配する、あるいはES細胞から例えば生殖細胞を分化させた場合に、そういった生殖細胞を相手の機関において、要は、自分たちは守っていても分配先において要件に合わない形で使われると困りますので、そういったことがないように契約等で分配先についての行為もしっかり縛るべきではないかと、そういったところをヒト胚モデルについてこちらのほうにしっかり書き込んでいく必要があるのかなというふうに思っております。
 第20条、研究成果の公開というところが現状も規定されておりますけれども、そちらのほうに普及啓発等の事項を書き込むのかなと思っております。また、第21条、指針不適合の事案につきましては対応が必要であろうということで、そういった所要の規定についても見直しが必要だと考えております。
 ヒト胚モデル研究のインフォームド・コンセントに係る手続につきましては、本日はES細胞の使用指針の見直し方針のみを示しておりますけれども、ES細胞の樹立指針のほうにICに係る手続規定が一定程度書かれていますので、いわゆるハネ改正のような形での見直しが必要になってくるかなと思っております。また、指針間の整合性ということで、今回、ES細胞の使用指針とiPS細胞の関連指針の見直しを進めてまいりますが、研究の内容によって、場合によっては両方を使ってヒト胚モデルを作成するというような状況も想定されるかと思います。こういった場合に、指針と指針の間で表記揺れみたいなものがございますとどちらに従うのかという問題が生じてまいりますので、そういった表記揺れをなくしていく観点で、指針間の整合性をしっかり図っていく観点で、こちらにあるような条文の見直しが必要だというふうに思っております。
 次のページから、もう少し詳細に説明をしてまいりたいと思います。まず、第2条の定義規定でございますが、ES細胞から作成するヒト胚モデルの定義を規定する必要があると考えております。CSTIの報告書におきましては、点線の囲みの中でございますが、ヒト胚モデルは、ヒト胚に類似した構造体であること、また、胚の発生を部分的に再現する非統合胚モデルと、胚全体の発生を再現する統合胚モデルの二つに分類されるが、それらの区分は行う必要がないのではないかといったようなこと。さらに、ヒト幹細胞等から作成する分化誘導体で、胚様の特性を一部示す細胞集団であることなどが規定されております。また、点線囲みの最後のところでございますが、特定の組織・臓器様の構造であるオルガノイドとは明らかに区別されるというようなことも書かれてございます。こういった報告内容を踏まえまして、ヒト胚モデルとオルガノイドの違いを明確化しながら、定義規定を設けていく必要があるのかなと思っております。
 おめくりいただきまして、1案でございますが、上のほうにあります赤線のところですけれども、まず、指針本体にはこういった定義を置いてはどうかというふうに考えております。読み上げますと、「ヒト幹細胞を含む細胞から作成する分化細胞であってヒト胚の特性を示す細胞集団をいう」。その上で、オルガノイドとの違いなどにつきましては、CSTIの報告書なども踏まえましてガイドラインにしっかりと書き込んでいって、研究者の方々に分かりやすいような解説も必要ではないかと、そういったふうに考えております。
 おめくりいただきまして、第4条、使用の要件でございます。ヒトES細胞を用いたヒト胚モデル作成研究の要件をこちらの第4条のほうに書き込んでいく必要があるかなというふうに思っております。点線囲みの中ですが、CSTIの報告書では、生殖補助医療研究や、ヒトの初期発生時の仕組みを解明し、病気の予防・治療に結びつける研究を行うにはヒト胚を使った研究が必要であるが、倫理的な観点から大きな制約があると。一方で、ヒト胚モデルは科学的な検証に必要かつ十分な試行回数の実験を高い再現性で行うことが可能であるといったようなこと。また、人の生命の萌芽であるヒト受精胚を滅失することがないという優位性もあるといったようなことが書かれております。下の赤の囲みのところでございますけれども、こういったCSTIの報告書の記載も踏まえまして、ヒトES細胞を使用するヒト胚モデル作成研究の要件につきましては、現行指針の要件に含まれるのではないかと考えております。現行の指針をベースに見直しを考えていければというふうに思っております。
 第5条、禁止行為のところでございます。CSTIの報告書におきましては、ヒト胚モデルをヒトの胎内や動物胎内に移植しないこと、ヒト胚モデルから個体産生しないこと、こういったことが報告書の内容では求められております。こういった内容につきましては現行のES細胞の指針にはございませんので、こういった禁止行為について書き込んでいくことを考えております。また、一番下の赤線でございますが、体内への移植を行う場合におきましても、個体産生につながるような研究ではないということはしっかりIRBにおいて審査が必要ではないかといったようなことで、そういった内容につきましては指針のガイドラインのほうに明記してはどうかということを考えております。
 おめくりいただきまして、第11条、使用機関の長の了承のパートでございます。ヒト胚モデルの研究に関する使用計画書の記載事項について、検討する必要があると考えております。CSTIの報告書におきましては、必要な範囲で最小限の培養期間を設定し、倫理審査委員会で審査することについて規定をすることが求められています。このため、ヒト胚モデルの培養期間の設定とIRBにおきます培養期間の審査について、この第11条に規定してはどうかと考えております。下の箱の2番目のマルでございますが、現行指針では、使用機関の倫理審査委員会におきまして使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について審査を行うことになっておりますので、個々の研究において設定された培養期間を倫理審査委員会の審査対象とするためには、使用計画書の記載事項として、ヒト胚モデルの必要な範囲で最小限の培養期間に関する説明を書いていただく。そういった形が適切ではないかと考えているところでございます。
 おめくりいただきまして、11ページを御覧ください。IRBにおける意見聴取、また、文部科学省への届出についてでございます。CSTIの報告書におきましては、点線の囲みの中の2行目でございますが、ヒト幹細胞関連既存指針と同様の審査の手続と、既存指針等と同様に国への届出が必要ではないかということが書かれております。このため、ヒト胚モデルの研究を実施する場合に機関内IRBと国への届出について記載する必要がございますが、既にES細胞自体にそういったことが求められていますので、そこに乗っける形で指針の条文自体の見直しは必要ないのではないかということを考えてございます。
 続いて、18条、分配の要件についてでございます。一番上のところでございますが、現行指針では、使用機関は、分配機関へのES細胞の寄託や、他の使用機関、臨床医療機関、または海外機関へのES細胞の分配を行うことができることになっております。ヒトES細胞の分配を受けた機関における当該ヒトES細胞及び分化細胞の適切な取扱いを確保するため、使用機関からヒトES細胞の分配の要件を規定しているところでございます。先ほど御説明したように、使用機関が守っているようなことは分配先にもしっかり守っていただく、そういったことを契約に基づいてしっかり縛っていく、そういったことが書かれているところでございます。分配を受けたヒトES細胞から作成したヒト胚モデルの取扱いについて規定していく必要があるのかなと思っております。下の箱の中ですけれども、ヒト胚モデル報告書では、将来的には、ヒト受精胚との類似性が高まる可能性や、ヒト胚モデルの人または動物の胎内への移植など、不適切な研究が行われる可能性が否定できないことから、一定の規制と情報収集が必要といったようなことも書かれております。このため、使用機関からヒトES細胞の分配の要件として、ヒトES細胞の分配を受ける機関における、作成したヒト胚モデルの取扱いについて追記をする。具体的には、現行指針では、ヒトES細胞の分配の要件として、第5条に規定する禁止行為の遵守を求めているため、作成したヒト胚モデルの人や動物の胎内への移植及び個体産生の禁止について分配先にも求める、そういった規定を考えてございます。
 1枚飛んででいただきまして、第19条、分化細胞の取扱いについてでございます。現行指針では使用機関が作成した分化細胞を譲渡する場合の対応を規定しておりまして、特に譲渡する分化細胞が生殖細胞である場合には、適切な管理の観点から、譲渡先において確保すべき事項、目的の制限ですとか、禁止事項、そういったものと、使用機関における譲渡手続を規定しているところでございます。使用機関が作成した分化細胞にはヒト胚モデルが含まれることとなりますので、ヒト胚モデルの適切な管理の観点から、使用機関が作成したヒト胚モデルを譲渡する場合の対応の必要性について、検討する必要があると考えております。また、ヒト胚モデルにつきましても、使用の終了後に引き続き取り扱う場合の対応の必要性についても、検討が必要だと考えております。見直しの方向性は下の箱に示したとおりでございますが、使用機関が譲渡する場合や、使用の終了後に引き続き取り扱う場合の対応について、生殖細胞と同様に、ヒト胚モデルに関しても規定を設けてはいかがかと考えてございます。
 おめくりいただきまして、第20条、研究成果の公開のところでございます。上の箱の中ですが、CSTI生倫調ヒト胚モデル報告書におきましては、ヒト胚モデルの研究の国際的な枠組みへの貢献や、研究者自身がヒト胚モデルの科学的・社会的意義を社会に対して説明することが重要であるため、研究機関は研究成果の公開を行うこと。研究実施者は、あらゆる機会を利用して、研究に関する情報提供を行うとともに、国民の理解を深めるための普及啓発に努めることについて、求められております。このため、研究機関による研究成果の公表と、研究者によります情報提供・普及啓発について規定する必要があると考えております。こちらにつきまして、第20条の規定の見直しを考えてまいりたいというふうに考えております。
 おめくりいただきまして、指針不適合事案の公表でございます。こちらは、CSTIの報告書では特段、何も求めはございませんが、現行指針の中でも、ES細胞の取扱いやES細胞から作成した生殖細胞の取扱いにおいて、指針に適合していないと認めるものがあった場合には、その指針不適合について公表することを規定しております。念のために申しますと、これまでこういった重大な事案というのは特に生じていないという認識でございますが、仮にそういった場合があれば、こういった不適合への対応のルールがあるという形になっております。ヒトES細胞から作成したヒト胚モデルにつきまして、こういったルールから外す必要性はないと思っておりますので、指針不適合の公表の必要性につきまして規定を設けてはどうかということを考えている次第でございます。
 おめくりいただきまして、18ページ、ヒト胚モデル研究のICに係る手続についてでございます。これは使用指針ではなく樹立指針のほうでございますが、樹立指針のほうにICの手続に関して一定程度の規定が必要なのかなというふうに思っております。現状におきましても、ES細胞を使用してヒト胚モデルを作成する場合には現行のES細胞関連指針によるIC手続は適切に実施されているのかなというふうに考えておりますので、特段、条文を大きく書き換える必要はないのではないかと考えておりますが、例えば、ガイドラインの中でヒト胚モデルのICに係る手続を明確にしていくといったような対応があり得るかなと思っておりますし、上の箱の最後の丸でございますけれども、ヒト胚モデルを作成した後に、場合によっては生殖細胞様細胞がヒト胚モデルの中に構成要素として生じる場合なんかがあるのかなと。この場合のICの手続はどうなのかというのは、ちょっと明確化が必要なのかなと思っております。下の箱でございますけれども、指針の複雑化を回避する観点でまいりますと、ヒト胚モデルのICに係る手続の明確化までの対応は必要ないのではないかと考えておりますが、2番目の丸でございますけれども、先ほど申しましたヒト胚モデルの構成要素として生じた生殖細胞様細胞につきましては、生殖細胞自体の作成を目的とするものではないため、当該生殖細胞様細胞をヒト胚モデルから取り出してほかの研究を行う場合を除いて、ヒト胚モデルの中に何かあるよという状況のままなのであれば、わざわざそこを樹立されたヒトES細胞から生殖細胞の作成を行うという取扱いに準じた形のICを受ける必要はないのではないかといったようなことを考えてございます。
 続きまして、今度は、iPS細胞またはヒト組織幹細胞から生殖細胞の作成を行う研究に関する指針の大きな見直し方針について、御説明をしてまいります。左側が現状の指針の構成、右側が指針の見直しの検討内容となっております。
 まず、目的規定でございます。現状、こちらの指針は生殖細胞作成指針でございまして、ヒト胚モデルを作るよといったような目的が読めるような目的規定になっておりませんので、ES細胞の使用指針とは異なりまして、こちらのほうは目的規定について一定の見直しが必要なのかなというふうに考えております。また、定義を設けることにつきましては、ES細胞の使用指針と同じ対応が必要だと考えております。また、適用の範囲でございますが、こちらの指針、現状はiPS細胞等から生殖細胞を作成する研究に適用されますという適用範囲が明記されておりますので、こちらの適用範囲にヒト胚モデル作成研究を追加するような対応が必要ではないか考えております。
 第2章に参りまして、生殖細胞作成研究の要件というところがございますが、こちらも生殖細胞しか読めない形になっておりますので、ヒト胚モデル作成の研究の要件が読めるような形での見直しが必要と考えております。第6条の禁止行為や第7条の生殖細胞の取扱いについては、先ほど御説明したES細胞の関連指針と同様の見直しが必要と考えております。
 第4章、生殖細胞作製研究の手続でございますが、第11条、第12条、第13条と、機関の長の了承、IRBにおける意見聴取、国への届出、こういったところにつきましては、先ほどのES細胞使用指針と同様の見直しが必要と考えております。おめくりください。
 生殖細胞の作成の用に供することができる細胞の提供ということで、生殖細胞作成のために特別にICを取るといったような規定が設けられてございます。第16条、第17条辺りは大きな見直しは必要ではないかなと考えておりますが、ICの手続に関しましては、CSTIの報告書で生命・医学系指針にのっとった対応が必要だとされておりますので、必要があればそういった規定を設けていくということを考えております。
 また、第20条、成果の公表と、第21条、指針不適合の公表につきましては、先ほどと同様の内容になっております。
 一番下の箱でございますが、まず、指針の名称でございます。現状、指針の名称を生殖細胞とがっちり書かれておりますので、ヒト胚モデル作成研究にも適用される指針だよということが分かるようにするためには、指針の名称の見直しも必要ではないかなというふうに考えております。指針間の整合性につきましては、ES細胞のパートで御説明したとおりでございますので、割愛をさせていただきます。最後、デジタル原則に基づく対応となっておりますが、現状、こちらの指針なんですけれども、しばらく改正がなかった関係でICの取得が文書のみになっておりまして、電磁的手法によるIC取得というのが規定されておりませんので、他の指針に倣いましてそういった規定を書き込んでいくという対応が必要ではないかなというふうに思っております。
 お時間は限られておりますが、ES細胞の指針と異なるところだけ、詳細も御説明してまいりたいと思っております。
 まず、目的規定でございますが、次のページの下の点線の囲みの中でございます。「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針」の目的でございますが、御覧いただいてのとおり、生殖細胞作成のところは読めるんですけれども、ヒト胚モデル作成という文言がございませんので、目的規定がかなり狭く規定されているのかなと思います。ヒト胚モデルも読めるような形での改正が必要になるかなと思っております。見直しの方向性につきまして、お時間も限られておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 続きまして、定義規定はES細胞の指針と同じですので、割愛をさせていただきます。
 第3条、指針の適用範囲でございますが、現状、指針の適用範囲が生殖細胞作成研究に限定されておりますので、ヒト胚モデルにも適用されるんだよという規定の見直しが必要だと考えております。
 第4条の作成の要件、第6条の禁止行為につきましては、ES細胞の指針と同じでございますので、割愛させていただきます。また、第7条の細胞の取扱いにつきましても、同様でございますので、割愛させていただきます。
 ES細胞の関係と異なるポイントということで、37ページまで飛んでいただければと思います。下の箱の青色の縦の矢印があるところでございますが、先ほども申しましたけれども、指針の名称が「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針」となっておりますので、ここにヒト胚モデルというものが読めるようにということで見直しが必要なのかなというふうに考えております。
 この先、ES細胞の指針とこちらの指針の間の整合性につきましては、先ほど御説明させていただきましたので割愛させていただきますが、最後のページ、これも先ほど御説明しましたけれども、現状、こちらの指針ではICの取得が文書による取得に限られておりますので、電磁的手法による取得の可否について御検討いただいた上で、文書だけではなく、電磁的手法によるIC取得を認める形での改正が必要なのかなと考えております。
 すみません、時間の都合上、大分飛ばして御説明をしてしまいましたが、御不明点等あれば、御質疑いただければと思います。
 説明は、以上でございます。
【尾畑主査代理】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見などありましたら、お願いいたします。
 小板橋委員、お願いいたします。
【小板橋委員】  ありがとうございます。一般の人間を代表してお伺いしたいんですけれども、今回のこの指針というのは、いわゆる人工子宮的なものは、禁止、その方向への道は開かないけれども、いわゆるオルガンハーベスティング、移植用の臓器作成の道は開くという、そういう理解でよろしいでしょうか。
【木村安全対策官】  一番最初のページを御覧いただければと思います。御質問の趣旨を私が的確に理解できたかは大変恐縮でございますけれども、今回は、例えば、iPS細胞から肝細胞を作りますとか、心筋の細胞を作りますとか、そういうオルガノイドに関する取扱いについては我々のサイドで検討が求められているものではございませんので、先ほど阿久津先生からも御説明ありましたとおり、最近、ヒト胚モデルの研究が進んでいるということで、ヒト胚モデルの指針上の取扱いの明文化が求められているところでございます。こちらのマル1からマル5に書かれているような内容を、今、私どもが持っている指針の中に書き込んでいく作業をこれからしようというところでございます。将来的に、例えば人工子宮の技術がものすごく発展したとか、あるいはヒト胚モデルの研究が大いに進展をしてヒトの胚に近い存在になっていった場合には、改めてCSTIのほうで検討をした上で所要の見直しが入る可能性はございますけれども、現状はまだそういった段階にはないということで、それに合わせた形でCSTIの報告が出ておりますので、基本的には、機関の中で胎内移植等がない形、あるいは個体産生させない形で研究をさせていこうという形での指針の見直しをしております。すみません、ストレートなお答えになっているかどうかなんですけど、御懸念には答えられておりますか。
【小板橋委員】  分かります。そこは分かるんですけど、例えば、9ページの下の箱の一番下に赤字で人間の体内への移植を行う場合というのをわざわざ記載しているということは、こちらの方向性というのは……。
【木村安全対策官】  こちらは、どちらかと申しますと動物の体内を想定して書いておりまして。
【小板橋委員】  もちろん、もちろん。ただ、動物に移植するというのは何のためかというと、最終的には人への移植の可能性も念頭にはあるのかなと思うんですけど。
【木村安全対策官】  あくまで可能性の話でございますけれども、例えば、技術が進展をして、うまく分化するかどうか確認をしたいというような形で、動物の体内に一時的に移植して、ちゃんと分化するのかみたいのを確認する研究もあるのかなあということでこういった記載がございますが、現状、私どもの認識として、将来的な臨床利用を想定して直ちに何かルールを設ける段階にはないのかなあというふうに思っておりまして、先ほど申しましたとおり、技術が進展をして、よりヒトの胚に近いようなものができてきた段階で、恐らくCSTIのほうでまた改めて御議論があって、要すれば、基礎研究だけではなくて、臨床利用も含めたルールメーキングがあるのかなと思いますが、あくまで技術的な成熟度という意味ではまだまだはるかにその手前の段階で、私どもとしましては、基礎研究での利用を念頭に、今回、こういった指針の見直しを考えているということでございます。
【尾畑主査代理】  阿久津先生、何か補足ございますでしょうか。御質問とか。
【阿久津参考人】  今のやり取りでの補足です。まず、ES/iPS細胞から試験管内で分化誘導したものを動物の体内に移植して評価するということは、よくやられる手法になります。これについては、例えば、特定の臓器を人へ移植するために動物の体内で大きくするとか成熟させるというのが目的ではなくて、試験管内で分化誘導したものが本当に特定の組織や細胞種へ分化しているかとか、試験管内での成熟度より、体内に転嫁することで分化度が高いものが得られるんじゃないか等々の基礎研究の目的として行われることがメインというか、ほぼほぼその理由のためになりますので、恐らく、ヒト胚モデルについても、移植のためのというよりは分化誘導研究の一環としての評価のためというのが、ここでの背景なのかなというふうには理解しております。
 以上です。
【小板橋委員】  ありがとうございます。
【尾畑主査代理】  よろしいでしょうか。
 それでは、片野委員、お願いします。
【片野委員】  10ページ目のところで、一つ御質問いたします。藤田委員からもお話ありましたけれども、委員会の質の問題がありました。そこで、委員会が判断しやすいように書いていただく必要があるかと思うのですが、この見直しの方向性のところに「最小限の培養期間に関する説明」とありますが、この下の部分の黒字を見ますと「培養期間の設定」というふうに書かれておりますので、ここも、単純に期間をどうするという説明ではなくて、「培養期間の設定」という言葉を入れていただいたほうが分かりやすいのかなと。つまり、どうやってこの培養期間にしたという考え方の部分を書いていただくと、委員会のほうでも判断がしやすいのではないかというふうに考えました。
 以上です。
【尾畑主査代理】  ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、本日の御意見を踏まえまして、事務局において資料中の見直しの方向性の整理をお願いいたします。
 続きまして、事務局から、資料126-4-2に基づきまして、今後の検討予定について、御説明をお願いいたします。
【橋本室長補佐】  資料126-4、今、画面共有しているものを御覧ください。
 今後につきまして、こちらの委員会を、6月下旬、7月下旬にかけまして、開催を考えてございます。本日は指針改正の大きな方向性について御説明をさせていただきましたが、そちらにおきまして、より条文に書き込んだような形でお示しいたしまして、指針改正に係る主な項目、内容等の検討、指針改正案の検討、そういったところを進めていただければと思っております。また、今日、阿久津先生、藤田先生からプレゼンテーションを賜りましたが、引き続き、この分野で実際に研究に携わっている方からのヒアリングも実施していければということを考えております。
 また、ちょっと長い目線で見ますと、8月以降ですけれども、指針の改正案が整った段階で、上位の生命倫理・安全部会に対しまして指針改正案等をお示しして、さらに、パブリックコメントをして指針を改正していく、そういった流れを考えております。
 説明は、以上でございます。
【尾畑主査代理】  ありがとうございます。
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。
 よろしいでしょうかね。
 今までの説明も含めまして、もう一度改めて、御質問、御意見がございましたら、ここで時間を頂戴したいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。事務局から説明があった今後の検討予定のとおり、引き続き、具体的な検討を進めていきたいと思います。
 それでは、本日の議題は以上となります。最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。
【橋本室長補佐】  事務局から、連絡事項をお伝えさせていただきます。
 本日の会議はYouTubeによるライブ配信で公開させていただきましたが、後日公開する議事録が公式な記録となります。本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成した後、委員の先生方に御確認をいただいた上で、文部科学省のホームページにて公開させていただきます。
 また、今後の委員会の開催予定につきましては、改めて連絡させていただきます。
 事務局からは、以上でございます。
【尾畑主査代理】  ありがとうございます。
 それでは、本日は閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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