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科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会

2002/01/29議事録
科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
試験研究における組換え生物の取扱いに関する小委員会(第1回)議事録

     
科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
試験研究における組換え生物の取扱いに関する小委員会(第1回)議事録
     
1. 日時    平成14年1月29日(火)10:00〜12:00
     
2. 場所    文部科学省別館11階大会議室
     
3. 出席者  
  (委   員) 吉倉委員、甲斐委員、加藤委員、鎌田委員、久保委員、杉山委員、広海委員、藤田委員、別府委員、水野委員
  (事務局) 坂田審議官、田中ライフサイエンス課長、菱山生命倫理・安全対策室長   外
     
4. 議題  
     (1)小委員会の運営方法について
     (2)バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書について
     (3)組換え生物に係る国内の管理体制について
     (4)組換え生物の研究開発・実用化の現状
     (5)小委員会の検討事項について
     (6)その他
   
5. 配付資料
  資料1−1 生命倫理・安全部会における委員会の設置について
  資料1−2 試験研究における組換え生物の取扱いに関する小委員会の運営について(案)
  資料1−3 バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書について
  資料1−4 組換え生物を環境中に放出した場合において想定しうる環境影響の例
  資料1−5−1 組換え生物に係る国内の管理体制
  資料1−5−2 組換え生物の取扱いに関連する主な現行法令
  資料1−6 組換え生物の研究開発・実用化の現状(例)
  資料1−7 検討すべき事項(案)
  資料1−8 今後の検討スケジュール(案)
  (参考資料)  
  参考資料1 生物の多様性に関する条約
  参考資料2 バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書(文部科学省仮訳)
  参考資料3 組換えDNA実験指針
  参考資料4 農林水産分野における組換え体の利用に関する指針
  参考資料5 組換えDNA技術工業化指針
  参考資料6 生物遺伝資源の収集・保全に関する取組み
 
6.議事
【菱山室長】   それでは、定刻となりましたので、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会の第1回試験研究における組換え生物の取扱いに関する小委員会を開催いたします。
   まず冒頭に、この小委員会の事務局となります私ども文部科学省研究振興局の審議官坂田より一言ごあいさつ申し上げます。
【坂田審議官】   おはようございます。研究振興局を担当しております審議官の坂田でございます。大変長い名前の委員会なんですけれども、第1回ということもございまして一言ごあいさつさせていただきたいと存じます。
   本件、非常に大事なテーマであると思いますけれども、各先生方には常日ごろ大変お忙しいところをこの委員会の委員をお引き受けいただいて、また、今日このようにご出席を賜りまして心より御礼を申し上げたいと思います。
   後ほどこの委員会の趣旨でありますとか、関連するいわゆるカルタヘナ議定書につきましては事務局のほうからご説明申し上げますけれども、ご存じのとおり一昨年の1月にモントリオールで、バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書でありますが、生物多様性条約のもとでの議定書という形で採択が行われて、現在批准を待っているという状態でございます。批准をした国ももちろん少しございますけれども、まだ発効はしていない状態にあります。
   この議定書の内容でございますけれども、これは生物の多様性の保全そのものと、その持続可能な利用ということに悪い影響を及ぼさないということを目的としましてできたものでございます。遺伝子の組換え、生物の安全な移動と利用を対象とするものでありますが、とりわけ国際間のやりとりに焦点を当ててルールをつくろうというものでございます。日本政府は実はまだ署名もしてございません。条約でございますので外務省が中心になって取り組んでおりますけれども、できるだけ早くこの議定書の署名と批准をしたいという考えでございます。これはまだ正式に申し上げるべきことではないかもしれませんが、外務省自身はできるだけ早く批准したいと思っており、そうなりますと当然、それに向けて批准のための国内的な措置をしっかりつくる必要があるわけでございますけれども、現在、私どもの役所を含めましてそのための検討を進めているという状況でございます。
   遺伝子組換えの技術がライフサイエンス分野の研究に必要不可欠でありますとか、あるいは実際に医薬品でありますとか農作物、こういったところに応用されることは言うまでもございませんけれども、ただ、安全の確保が前提として大変重要でございまして、ご存じのとおり関係各省庁、この遺伝子組換え技術にかかわる安全の確保についてかねてより取り組んできております。この技術の産業化あるいは実用化という段階につきましては、経済産業省、農林水産省あるいは厚生労働省で取り組まれておりますけれども、私ども文部科学省としてはいわゆる実験研究の段階について安全確保の基準を示すということから、昭和54年以来、組換えDNA実験指針をつくりましてその運用を図ってきているところでございます。
   ご存じのとおりこれまでは文部省と科学技術庁が分かれておりましたので、大学における実験指針は旧文部省がつくり、大学以外、産業界あるいは国の公的な研究機関における実験研究段階の指針は科学技術庁がつくってまいったわけでございますけれども、1年前に両省庁の統合が行われましたので、この指針の一本化のためにこの1年作業を進めてまいりまして、ようやくその一本化ができまして、たしか今月末ですから31日に一本化された指針を告示をすることができるようになりましたので、少し従来よりはこの分野の作業といいますか研究といいますか、現場にいる研究者のお立場からはやりやすくなるのではないかと思います。また、私どももそういう運用に努めていきたいという具合に思っております。
   それから、この一本化された指針の中にも今回のカルタヘナ議定書が対象といたします組換え生物の環境放出、あるいは研究所間のそういうものの移動、やりとりするケース、そういったものを想定した規定を当然置いております。これから遺伝子組換えに関する研究がおそらくどんどん進んで、それがまた実際に社会に適用されるようなケースもより多くなってくるということになりますと、このカルタヘナ議定書の中で求められていることを日本の国内できっちり制度化することがますます重要となってまいると思います。私どもの役割としては試験研究段階での制度づくりということになるわけでありますけれども、これからこういう分野の試験研究の動向をしっかりと見据えて、このカルタヘナ議定書に対する仕組みを国内でどうするのかということをつくっていく必要があるわけで、そういった検討をこの委員会でもしっかりやっていただきたいと思っているわけでございます。
   先ほどもちょっと言及いたしましたが、この分野でいわゆる国内措置に責任を持っております役所は先ほど申し上げたような役所以外にも環境省がいわゆる生物多様性条約の主管官庁という観点からかんでおりまして、それぞれの役所で今このカルタヘナ議定書への対応について検討を進めております。また、いろいろな役所が関与して縦割りでばらばらでやっているのではないかというご心配はきっとあると思うんですけれども、幸い比較的これは当初より外務省、環境省を中心に関係省庁連絡会議というのもきちんと設けて連絡を密にしてやっておりますし、この会議では文部科学省の責任の範囲をご検討いただくことになりますけれども、他省で検討されている内容も適宜ご紹介しながら議論を進めていただきたいという具合に思っております。またご注文がございましたら何でもおっしゃっていただければできる限り努力をいたしまして、ご検討いただく内容が実りのあるものになるように私どもも努力したいと思います。
   それでは、大変恐縮でございますけれども、ぜひ忌憚のない、また率直なご意見をこの場でお出しいただいて議論を深めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【菱山室長】   それでは、次にこの小委員会にご参加いただきます先生方をご紹介こせていただきます。
   まず主査を務めていただきます吉倉先生でございます。
【吉倉主査】   よろしく。吉倉です。
【菱山室長】   吉倉先生は国立感染症研究所長でございまして、あと今ご紹介のありました経済産業省でも同様の検討をしておりまして、そこの委員会でも主査をお務めいただいているところでございます。
   それから、上智大法学部の小幡先生ですが、きょうはご欠席ということでございます。
   それから東大の医科研の甲斐先生。
【甲斐委員】   甲斐です。よろしくお願いいたします。
【菱山室長】   それから三菱化学安全科学研究所の加藤先生。
【加藤委員】   加藤でございます。よろしくお願いいたします。
【菱山室長】   筑波大学の鎌田先生。
【鎌田委員】   よろしくお願いいたします。
【菱山室長】   株式会社オリノバの久保先生。
【久保委員】   よろしくお願いします。
【菱山室長】   理化学研究所の横浜研究所植物科学研究センターの杉山先生。
【杉山委員】   杉山です。よろしくお願いします。
【菱山室長】   あと東大の理学系研究科の武田先生と、独立行政法人の農業生物資源研究所の田中先生も委員でございますが、お二方とも今日はご欠席ということでございます。
   それから、国立遺伝学研究所の発生遺伝学研究部門の広海先生です。
【広海委員】   広海です。よろしくお願いします。
【菱山室長】   それから大阪大学保全科学研究センターの藤田先生です。
【藤田委員】   藤田です。よろしくお願いします。
【菱山室長】   日本大学生物資源科学センターの別府先生。
【別府委員】   別府でございます。よろしくお願いします。
【菱山室長】   独立行政法人農業技術研究機構の動物衛生研究所の水野先生。
【水野委員】   水野です。よろしくお願いします。
【菱山室長】   あと私ども事務局がこちらにおりますので、何かご注文ありましたらよろしくお願いいたします。
   それから、主査の吉倉先生から一言ごあいさつをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【吉倉主査】   あいさつをということですが、すぐ議事に入ったほうがいいのではないかと思いますが。
   さっき紹介あったように、経済産業省のほうの同じような委員会があるんですけれども、そこの主査もやっています。ひょっとしたら混乱してしまうかもしれないけれども、そういうことがないように気をつけてやります。
   それでは、まずは資料の確認をお願いします。
【事務局】   それでは、資料の確認をさせていただきます。4枚目にございます配付資料一覧に示しておりますように次の資料を配付してございます。資料1−1というふうな書き方がしてございますが、最初の1というのは1回目の会合という趣旨でつけさせていただいているもので、その後の番号が今回の会議の資料の番号ということになります。1−1につきましては委員会の設置について、2につきましては運用についての案、3につきましてはカルタヘナ議定書について、4は環境中に放出した場合において想定し得る環境影響の例、それから組換え生物に係る国内の管理体制、5−2といたしまして主な現行法令、それから研究開発の実用化の現状、7といたしまして検討すべき事項、8といたしまして今後の検討スケジュール。
   それから参考資料に1から6までございますが、生物多様性条約、カルタヘナ議定書の仮訳、それから、当初の組換えDNA実験指針、先ほど審議官のほうから申し上げました形ですが、今月末に告示いたしますバージョンのものを配付してございます。それから、4といたしましては農林水産省のほうの農林水産分野における組換え体の利用に関する指針、5といたしましては経済産業省のほうの組換えDNA技術工業化指針、6につきましては生物遺伝資源の収集・保全に関する取組みということでおつけしてございます。
   途中不足がございましたら随時お申しつけくださいますよう、よろしくお願いいたします。そのほか鎌田委員、藤田委員のほうからそれぞれレジュメをいただいておりますので机上に別途配付させていただいております。
【吉倉主査】   資料のほうは、もしもなかったら言っていただいたほうがいいと思います。
   それでは、まずは議題1からやりたいと思いますが、小委員会の運営方法について。これは資料がありますね。お願いします。
【事務局】   資料1−2をごらんいただきたいと思います。この小委員会の運営について(案)とございます。運営と申しておりますが、公開に関することのみ記述しております。
   1.として、会議及び会議資料の公開につきまして記述しております。「小委員会の会議及び会議資料は公開するものとする。ただし、審議の円滑な実施に影響があるものとして、主査が非公開とすることが妥当と判断した場合はこの限りでない。また、この場合は理由を明らかにしなければなならい」。
   それから、2.の議事録の公開につきましてもほぼ同様でございますが、「会議の議事録を作成し、各委員の了承を得た上でこれを公開するものとする」。ただし、1.におきまして非公開とした部分の議事録であって、主査が妥当と判断したものについては必要最小限の範囲で非公開とすることができる。この場合も理由を明らかにしなければならないといった内容でございます。
【吉倉主査】   よろしいですか。要するに原則公開で議論しましょうという、そういうことです。だから、そういうことで言えば、いろいろな方が傍聴されると思うので、なるべくわかりやすい議論にしていただきたいということだと思います。
   それでは、一応そういうことでこの小委員会の運営について(案)というのがついていますが、(案)を取って、こういう形で運営をするという了承を得たということで進めます。
   それでは、その次、議題の2ですが、バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書についてということで概況説明、これ、資料がたくさん入っていますが、事務局のほうからお願いします。
【菱山室長】   では、ご説明いたします。たくさん資料がございますが、まず、この会合の趣旨は一昨年の1月に生物多様性条約締約国会議というのが開催されまして、そこで採択されましたバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書の批准に向けて、この委員会ではその趣旨をどのような方法によって担保すべきかについて、文部科学省として特に試験研究の側面から検討していただきたいということでございます。先ほどの審議官からのごあいさつで申し上げましたように、各省庁でも検討しておりますけれども、私どもとしては試験研究のほうから検討をしていただきたいなというふうに考えております。
   それで、資料は1−3から5でたくさんありますけれども、ここではカルタヘナ議定書の概要、それから、その中で書かれている特に環境影響というのはどういうことなのか。それから組換え生物に関する我が国での管理体制はどうなっているのか、関連する法令がどんなものがあるのかとかそういったことを、きょうは最初の会合でございまして少々長くなるかもしれませんが、今申し上げましたことについてご説明をしたいというふうに考えております。
   それでは、まず資料1−3から郡のほうからご説明いたします。
【事務局】   資料1−3をごらんいただきたいと思います。これはカルタヘナ議定書について説明する紙でございまして、まず冒頭にカルタヘナ議定書の目的が書かれてございます。生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるモダン・バイオテクノロジーによって改変された生物の安全な移送、取扱い及び利用、特に国境を越えた移動について、その管理のための措置を講じるということが目的になってございます。あくまで生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼすといった可能性に着目した観点からの議定書の内容になっているということでございます。
   2番目にその策定経緯と今後の関連スケジュールが簡単に書いてございますが、まず生物の多様性に関する条約が1993年、平成5年の12月に発効してございます。その概要というのが、1枚めくっていただきましたところに記述しております。生物の多様性に関する条約につきましてはご存じの方も多いかと思いますが、生物の多様性の保全、それから、その構成要素、種々いろいろな生物種の持続可能な利用、それから遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分といったことに着目しておりまして、主な措置といたしましては、各国が国家戦略あるいは計画を策定すること、それから生物多様性に重要な要素あるいは悪影響を及ぼす要素を特定し監視するといった趣旨のこと、それから、いろいろな措置といたしまして、保全のための措置、あるいは構成要素の持続可能な利用のための措置、遺伝資源利用の利益配分に関する措置といったことがそれぞれ細かく規定されてございます。
   バイオテクノロジーに関する事項でございますが、保全のための措置の一部に下の3のところにあります第8条(g)というところなんですが、締約国は、バイオテクノロジーにより改変された生物であって環境上の悪影響を及ぼすおそれがあるものの利用及び放出に係る危険について、これを規制し、管理し又は制御するための手段を設定するということが書かれてございます。
   さらに19条のほうではバイオテクノロジーにより改変された生物の安全な移送、取扱い及び利用の分野における適当な手続(事前同意手続を含む)を定める議定書の必要性及び様態を検討するということが書かれてございまして、このカルタヘナ議定書に関しますこの議論の頭出しがここで行われたということになっております。
   その後、種々議論が行われてまいりまして、1999年にコロンビアのカルタヘナでこの議定書の採択を目指しましたが、なかなか最終的な論点が詰め切れず、この名称のみカルタヘナ議定書とすることが決まり、さらにその翌年の1月、モントリオールにおきまして採択されるに至っております。
   昨年の6月が署名開放期限ということでございまして、それは103カ国が署名した段階で期限は閉じておりますが、それで批准ができないというわけではございません。昨年12月現在で批准国が11カ国でございますが、発効は50カ国目が批准して90日後ということでございますので、まだそのスイッチは押されていない状態にございます。これは1月現在になりましても、ちょっと正確な数字はわりませんが、50カ国にはまだほど遠いかというふうに思っております。
   それから2002年4月、今年の4月でございますが、生物の多様性に関する条約の締約会合6回目がオランダのハーグで開かれるということでございまして、本来ここで第1回目のこの議定書の締約国会合をあわせて行う予定でございましたが、その発効がこれに間に合いそうもございませんので、むしろまた詳細な議定書の細部につきましていろいろ意見交換をいたします政府間委員会という形になっていこうという流れでございます。
   それから2002年、今年の9月に持続可能な開発世界サミットが南アフリカ・ヨハネスブルグのほうであるということが決まっておりまして、こちらのほう、いろいろ環境関連の条約につきましての今後のあり方等々いろいろ議論されていくものでございますので、この既存の議定書等への各国の取組みというのが非常に話題になってくる会議かというふうに思われます。
   それから、カルタヘナ議定書の概要につきましては3枚目以降に書いてございますのでちょっとお開きいただきたいと思います。議定書の適用範囲ということから始まってございます。先ほどこれは目的で申しましたのとほぼ同じことが書いてございます。ただし、ヒト用の医薬品は対象外ということで第5条のほうに書かれております。
   それから、生きている改変された生物、一番前には書いてあったんですが、Living Modified Organism、LMOと略称しておりますが、これの定義でございますが、その青く色をつけてございます部分を括弧を抜いてまず読ませていただきますと、「現代のバイオテクノロジーの利用によって得られた新たな遺伝物質の組み合わせを持つあらゆる生きている生物をいう」と。この生物にはウイルス及びウイロイドが入っていると。さらには、その現代のバイオテクノロジーというものがどういう中身を指しておるかといいますと、1つ目につきましては組換えDNA及び細胞または細胞諸器官への核酸の直接注入、それから、2番目としましては、分類学上の科を超える細胞の融合技術の応用であって、生理学上の普通の生殖または組換えの自然界での障壁、これは自然界で普通に起こっている組換えの状態を超えて、かつ、従来の交配・選抜で用いられるものではない技術を指すということになってございます。ちょっと複雑ではございますが、先生方はご専門の方が多いこともあり、大方ご理解いただけると思いますが、ほとんどの組換え生物あるいは細胞融合によって生じた生物というのが含まれてくるということになります。
   2番目といたしまして輸出入に関する手続を書いてございます。カルタヘナ議定書が特に国境を越えた移動に焦点を当てるということで、この枠組みが一番中心的な枠組みになるということで最も前に書いてございます。まず輸出入に関する手続につきましては、123で書き分けてございますように意図的に環境中に放出するLMO、それから封じ込めのもとで利用するLMO、それから食料・飼料に直接利用、または加工するLMOの輸出入に関しましてそれぞれ分けた取扱いが行われております。もっとも環境中への影響ということが主眼であります以上、1のものがこの手続としては一番重厚なものが求められているわけでございまして、事前の通告による同意手続を必要といたします。
   この事前の通告による同意手続というのは、下の絵にございますように輸出国または輸出者が環境中に放出することを前提としてLMOを輸出しようとした場合は輸入国に事前の通告をすると。輸入国は通告の受領の確認ということで90日以内に連絡を入れるとともに、270日以内に輸入の決定をすると。これは後にも出てまいりますが、その間に輸入国はこれを放出した場合のリスク評価をするという義務を課せられます。さらにその決定に基づきまして輸出国は輸出をする。あるいは、この3の輸入の決定におきましてこれを拒絶する旨がございましたら、この4の輸出が行えないというような手続が設定されてございます。
   上に戻りまして2の封じ込めのもとで利用するLMOにつきましては、この事前の通告による同意(AIA)手続を適用除外すると。
   それから、3の食料等に直接利用するLMOでございますが、これはLMOを国内で利用することを決定した国、そのある組換え大豆を国内で使うという決断をした国は、その決定をバイオセーフティー・クリアリング・ハウスといいまして情報交換を行う場がこの議定書内に定められておりますが、こちらにその趣旨を登録する。それを見て輸出国はそのOKとなっている物資を輸出するという手続をとっていくことになろうかと思います。輸入国はそのBCH(バイオセーフティー・クリアリング・ハウス)に登録されたLMOを輸入する際に、国内の規制に沿ったリスク評価等の手続、あるいは開発途上国にあってはAIA手続と同様の手続も可能ということになっておりますが、こういったものを求めることもできるということで、輸入国の任意の形が書かれてございます。
   それから、4につきましてはLMOの通過で、領土をトランジットするケースでございまして、これはAIA手続は適用除外とすると。
   それから、5につきましては簡易な手続というのが議定書の13条のほうに書かれておりますが、輸入国は通告と同時に輸入してよい場合、こう書かれています以上は事前同意手続が前提となっているかと思いますが、通告と同時に輸入してよい場合、それからAIA手続がそもそも免除されるLMOを上に書いてございますBCHなどを通じまして明示することができるという枠組みがございます。
   次に1枚めくっていただきましてリスク評価、リスク管理の実施ということが書かれてございます。さっきの表中にも少し出てまいりましたが、締約国は意図的に環境中に放出するLMOの輸入に際しましてリスク評価を実施するとともに、その結果特定されたリスクの管理を行う。このあたりどういった評価をし、どういった管理を行うべきかというのは非常にまだ詳細な議論が必要な点かと思いますが、こういった義務が書かれてございます。
   さらに別の項に規定してあるわけなんですが、LMOの国内でと明記してあるわけではございませんが、最初の放出に伴いましてリスク評価を実施するということが書かれております。ですから、国内で開発したものを国内に最初に放出するケースにつきましてもリスク評価を実施するというのが議定書の規定でございます。
   それから4番目、取扱い、運搬、包装及び文書の添付というのがございます。これも国境を越える移動に着目してという点に関連した形でございますが、締約国は意図的な国境を越えた移送に充てられるLMOが、要は輸出しようとするLMOが適切に取り扱われること等について必要な措置を講じる。ちょっと漠然としておりますが、要は取扱い、運搬、包装等についてしっかりとしたことが行われるように措置を講じると。それから、移送されるLMOは議定書に規定された情報を含んだ文書を添付するということが書かれてございます。
   ちょっと下を見ていただきたいのですが、LMO種類別の輸出までの流れということで、さきに申しました事前同意手続と、それから添付文書の関係等も含めまして、種類別にどういうふうに手続が必要かというのを簡単にまとめてあるものですが、意図的に環境中に出すもの、それから封じ込めのもとで利用するもの、食料・飼料等ほか加工するものと分けてみますと、一番上のものは事前同意手続が必要になります。そのほか安全な包装、運搬といった取扱いに関しての措置をちゃんと行う。添付文書につきましてはLMOであること等々のいろいろな記載事項を守りまして、その後に通関に持っていく。
   封じ込めのもとで利用するものに関しましては合意手続が要らないが、安全な包装、運搬、それから記載事項を守って、さらに通関に通すというのは変わらないと。ただ、記載事項に関しましてはそれぞれのものに関しまして個々議定書上求められているものが違います。
   極めて簡略化した書き方をしておりますのでわかりにくいかと思いますが、それぞれによって書き込む内容が違うと。あと、食用等のものにつきましては事前同意手続に関して輸入国の任意であると。それから、安全な包装、運搬並びに添付文書を添付するという点についてはこれまた変わらないということで整理されるかと思います。
   また上に戻りまして、5番、その他の規定ということで、意図しない国境を越える移動につきまして、というのは出すつもりはなかったけど出てしまった、さらに生物の多様性の保全等に悪影響を及ぼす可能性がある放出が起こってしまった場合、それを承知した場合、速やかに影響をこうむる可能性がある国、あるいはBCH等に通告するということが書かれてございます。
   それから不法な国境を越える移動ということで、締約国は国内措置に違反して行われたLMOの国境を越える移動を防止し、必要に応じて罰則を課すというようなことも書かれております。このあたり、要は国際手続に関しましては非常に厳しくこの規定を適用するような趣旨が書かれてございます。このようなごく大まかでございますが、カルタヘナ議定書の中身はこういった中身になっております。
   また最初の表紙に戻りまして、この議定書に関します政府の対応を簡単にご紹介しております。昨年の10月にカルタヘナ議定書に密接に関連する各省局長級によります会議を開催いたしまして、以下、丸が2つございますが、この2点を決定いたしております。
   1つ目につきましては各省の主な役割ということで、生物多様性への影響に関する横断的事項ということで、生物多様性への影響と一概に申しましてもなかなかこの概念が十分に整理されていない、あるいはどういったリスク評価等々のアプローチをしてよいかという点につきましても議論の余地がございまして、このあたりは環境省のほうで本年1月より検討を開始してございます。
   それから、個別プロダクトに関する安全性の確認というのがちょっとわかりにくい表現かもしれませんが、分野別に安全確認、あるいは安全管理に関する事項は各省分担してやりましょうと。農林水産分野につきましては当然でございますが農林水産省、昨年の11月より検討を開始しております。鉱工業分野につきましては経済産業省、これも昨年の10月より検討を開始しております。科学技術分野というふうに書いてございますが、試験研究の分野からの検討というのは我が文部科学省の役割ということで、それぞれの間で了解いただいて検討を進めようとしております。
   その中で輸出入管理に関することにつきましては、各省バラバラ検討するというのも不合理でございまして、特に貿易上の諸事項を所管しております経済産業省が中心となって必要に応じて、ほか各省が関係しながら検討していこうということになっております。
   それから、先ほど審議官のあいさつの中にもありましたように、各省庁バラバラではいけないということがございまして、適宜連携調整を行うことといたしまして関係省庁連絡会議を設置しまして、これは外務省が取りまとめということで検討内容の突き合わせでございますとか、今後どういうふうに進めていくかということを刻々と調整していこうという趣旨の会議を設置してございます。
   1−3につきましてはこういった内容でございます。
【吉倉主査】   ちょっといいですか。ここでこれはカルタヘナ議定書、それから、それの母体になるバイオダイバーシティー・コンベンションに関して一応説明受けたわけですが、何かコメントとか質問があればちょっとやっておいたほうがいいんじゃないかと思います。ここははっきりさせたいとか。
   要するにカルタヘナ議定書は国境を越えた移動に焦点が絞られているというところ、それから、ここは文部科学省の委員会なので、研究、開発に関してこれが一体どの辺でかかわってくるのかを考える必要があります。聞いただけでちょっとピンとこないところもあるかと思うんですが。
   例えば1つは輸出入に関するものですね。輸入する側でこの議定書を読む場合と輸出する側で議定書を読む場合でかなり読み方が、問題点の出し方が違う可能性がありますね。それから、輸入する場合でも、輸入したいというシチュエーションを考えた場合と貿易の自由化で輸入を迫られている場合と、これを読むとき、またいろいろニュアンスが違ってくる。輸入したい場合と輸入を迫られている場合では同じ条文でも片方は具合がいいし片方は具合が悪いという、そういうダブルスタンダードみたいな解釈にもなり得るという、そういうところはあるように思うんですね。このカルタヘナ議定書、それから生物多様性条約を私読んだのですが、なかなか頭に入らない。後、法律的な言葉ですね。shallとかmustとかshouldとか、あの辺の使い方、それからリーガルにどうかとかとか、レギュレーションの解釈とか、そういうことで条文を読んで必ずしもよくわからないところが出てくるんじゃないかというように私思っています。
   それから、ちょっと単純な質問からいくと、要するに輸出とか輸入という場合に定義はあるか。例えばどういうことかというと、研究の場合、ATCCから物を注文して買いますね、そういう場合、研究者同士で物をやりくりする場合、そのときにひょっとして送料を払うかもしれない。その辺のところをどこまでが輸出、輸入の範囲になるのか、その辺、この場合はこの委員会ではちょっと問題があると思うんですが、ちょっと説明して下さい。
【事務局】   参考資料2にバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書の仮訳がございますが、その第3条(用語)の中に「(c)『輸出』とは、ある締約国から他の締約国への意図的な国境を越える移動をいう」。それから、(e)には「『輸入』とはある締約国への他の締約国からの意図的な国境を越える移動をいう」ということで極めて一般的な書き方がされておりまして、これが商業ベースであるとか、あるいはどういった目的に限るというような趣旨が読み取れるものではないということから考えますと、すべての移動に適用されるものとして検討していかざるを得ないと思います。
【吉倉主査】   そういうことでこれは輸出・輸入という、普通の我々素人の考え方で言うと何か関係なさそうなんですが、実際は研究者同士のやりとりもかかわるという、そういうことなんですね。
【鎌田委員】   多分確認だけなんですが、先ほどの何かこれ複雑なんですが、環境放出を意図した場合と、それはAIA手続ですよね。実験室内利用の場合は必要ではないけれども、今のような条項は適用されるんですよね。
【事務局】   先ほど資料1−3の最後のページに見ましたように、安全な包装、それから運搬なり、あと添付文書をつけるという点などは明確にその規定がございます。そのほか一般的な努力義務と読めるわけなんですが、取扱いについてしっかりした方法をとりなさいというようなことも書かれている。これも特に意図的に環境中に放出するもののみを指しているとは読めませんし、ごく一般的な努力義務というふうに読めるんですけれども、そういった規定がある中でどういった管理をしていくべきなのかということを検討する必要があるかと思います。
【杉山委員】   1つよろしいでしょうか。この議定書の概要にはバイオセーフティー・クリアリング・ハウスというのがあります。これは注釈によれば、ある種の情報交換機構であろうと思われますが、どのような内容とファンクションをもつのでしょうか。
【吉倉主査】   事務局、お願いします。
【事務局】   ここで申しましたように、議定書の輸出入に係ります一部の必須の情報登録の場所というような側面がございまして、これは生物多様性条約の事務局のほうに設置されるというようなことになろうかと思います。もちろん、この議定書を担保するために必ずここに登録してくださいという情報もございますから、そういった限りのある機能を果たすという点がある一方で、さらにはいろいろな各国の国内規制の状況を登録し閲覧に供するですとか、あるいはいろいろな情報交換の場としての運用上のサポート機能みたいなものも持ち合わせているというふうに考えていただければいいと思います。
【杉山委員】   先程吉倉主査が仰っていました、受け入れ手とプッシュするほうでおそらくアンダースタンディングが違うということは十分あり得ると思います。ですから、その内容をよく知っておかないと問題が出るんではないかと少し気になるところです。
【吉倉主査】   これはわかっていますかね。私もこれ調べたけど、分からない。正確にそのバイオセーフティー・クリアリング・ハウスについては何か情報がありますか。そこに書いてあるだけですかね。
【事務局】   20条のほうに詳細なといいましょうか、その役割に関する規定が書いてございまして、これは読んでいただければそのとおりだと思うんですけれども、これ自身はやはり議定書の円滑な運用に役立つことを目的としたものでありますので、適宜、各締約国としてはこれをどのように使っていくかということは締約国会合等で提案するなり、いろいろなアプローチがある場というふうに一般的にはお考えいただければいいのではないかと思いますが。
【吉倉主査】   多分輸入国に回ったときのリスク評価というのが、これが私は相当クリティカルなものになると思うんですけれども、今のところ我が国としてはこういったものをどういう形でという、そういうプロトコールのようなものはもうでき上がっているんですか、もちろん暫定案でしょうけれども。
   いわゆる文部科学省としての範囲にとどまればそうでもないが、農作物とか食糧というようなことになりますと、ここのリスク評価というのは相当私はシリアスなものになると思うんですね。これについては今から関連省庁で検討されるべきものだろうと思いますけれども。
【事務局】   先ほど説明にもございましたように、例えば食品用として入れてくるもので、日本がある特定の系統の大豆を国内消費に供して差し支えないと判断した場合に、バイオセーフティー・クリアリング・ハウスのほうに登録する義務がございます。ですから、そういった形で実際上の利用に関する輸入のまさに重要な情報を提示している場という意味では非常な機能を持っております。これは先ほど申しましたとおりでありますし、20条のほうにその辺が個別記載されております。
   さらにまた、どういうふうに情報提供、交換をしていこうかという意味では、今現在、政府間委員会の中で運用方針等についても検討されておりますし、今、情報供与の場としてはどういうふうなフォーマットでどういうふうな運用をしていくのか、もう既にパイロット・フェーズみたいな形で試験的運用みたいなことを既に開始しております。
【杉山委員】   ああ、そうですか。
【吉倉主査】   多少ともこのプロトコールをつくるとき自体かなり難しかったということがあって、よく読むと第1回の締結国会合のディベートに残されているような、今のバイオセーフティー・クリアリング・ハウスもそうですが、難しいところを先送りしているのは多少ともあるような感じがしますが。だから、あんまり突き詰めて聞いてもわからないというところが結構このプロトコールについてはあると思います。
   ほかによろしいですか。はい、どうぞ。
【藤田委員】   植物の場合と、多分LMOのOには微生物も入ると思うんですが、もしかしたらこの後少しお話しする機会があるかもわかりませんけれども、実はこれ微生物を考えてきて、環境の定義とは何ぞやというのが少し引っかかり始めまして。というのは、今までずっと経済産業省ですとあんまり気にはしなかったのですが、実験室というか試験研究で環境というふうに考えてきたときに、実は微生物にとっては環境というのはいくら小さなスペースであっても大きな環境になるわけです、相対論の話なんです。そうすると非意図的に漏れたというその場がどのあたりまでを環境と称するのかなというのがちょっと引っかかってきたということ。
   ただし、この議定書そのものをおそらくつくられたとき、多分かかわられた方がもしおられればお聞きできると思うんですけれども、その人たちはおそらくもっと大きな、どちらかというと我々の目で見える生態系を考えて生物多様性を考えていたんじゃないかなという気はするんですね。それに対して微生物の場合ですと、やはりミクロの生態系とマクロの生態系の両方あると思うんですね。1つはいわゆる微生物の生態系というミクロの視点を持つ必要がある。しかし、それは無視して、見える生態系だけでいいのかもしれません。そのあたりのところちょっと最近考えて、どっちを考えるのかなということ。
   それはどういうことかというと、次にお話ししようと思うんですけれども、例えば廃水を処理するような一種の活性汚泥法なんかのタンクなんかありますね。あれ、我々は微生物の側から言うとあれは開放系なんですね。でも、よく考えてみると、ある人はおそらくそれはタンクだからいくらオープンであっても一種の閉鎖系ではないか、あるいは準閉鎖系ではないかという物の考え方もあるわけですね。そうなってくると、じゃあ、開放系とは何ぞやとか、何かだんだんと難しくなってきまして、その辺も後でよろしく議論をお願いしたいと思います。
【吉倉主査】   はい。次にいきたいと思います。今の先生の指導されたところは生物多様性条約の目的のところをちょっと読んだほうがいいんじゃないかと思います。要するに生物の多様性の保全、それから、その構成要素の持続可能な利用、それから遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分と、この辺に今の環境というものは関わるかということで解釈していくべきじゃないかと思うんですけどね。こういう議論はつきつめるとちょっとタリバンの理論みたいに考え出すとだんだん極端なほうへ行くこともあるので、よろしくお願いします。
   それでは次をお願いします。
【事務局】   引き続きまして資料1−4を簡単にご説明したいと思います。先ほど藤田委員のほうから環境とは何かというご提示もございましたが、さらには組換え生物を環境中に放出した場合の環境影響とは一概には申しましても、これがどういったものなのかというイメージがもう少し必要ではないかという観点から、稚拙ではございますが1−4のような資料を用意してみました。これにつきましては各種いろいろなところで検討が行われておりまして、その参考書から適宜ピックアップしてみたものでございます。
   まず3つほどに分けて見られるのではないか。それは組換え生物の中に入った目的遺伝子ですけれども、こういったものが拡散することに伴う環境影響、これは例えば植物で交雑をする、あるいは動物で交配していく、それから微生物などでは水平伝達によって遺伝子が移っていくというようなことによって在来種等でしょうけれども、伝播、伝達していくという過程を通りまして、その在来種のほうが抗生物質耐性であるとか、あるいは雑草性、除草剤あるいは殺虫剤の耐性を獲得するというようなことが起こるのではないか。あるいは普通の微生物が病原体の発生といいましょうか、これは抗生物質耐性などと分かれ目がはっきりしないかもしれませんが、今までの病原体とは違った薬剤耐性を持ったり、あるいはどこかで病原性が強化されたものが発生はしないかといった点。
   それから左下のほうの丸にいきますと、導入遺伝子の産物による環境影響。ある目的でもって入れた遺伝子ですが、その産物が思わぬ影響を示すということで、特に在来種に有害な遺伝子産物が影響するのではないか。食物連鎖等を通じましてその毒性物質がたまってある意味の影響が起こる。あるいは残滓やアレロパシー物質なども通じて土壌生態系ですとかそういったものに影響を及ぼすというようなことが考えられまいか。
   それから、右下のほうにございますが、組換え生物そのものによる環境影響ということで、既存生態系に入り込んでいって、それが在来種との競合につながり、場合によっては組換え生物というのは農産物ですとか、基本的に比較的に劣位のものが多いというふうによく言われますが、場合によってはそれが組換え体が優位になることによって組換え体が勝ち進んでいくようなことがあるのではないかということが考え得るということでございます。これらの結果として最終的に従来の生態系を攪乱するおそれ、その攪乱と一部同意かもしれませんが、在来種の減少なり絶滅といったことが結果として引き起こされるのではないかというおそれ、こういったものが環境影響の中にはイメージされておるかというふうに考えております。
   続きましてよろしゅうございましょうか。
【吉倉主査】   はい。
【事務局】   ここから話の趣旨が変わりますが、資料1−5−1、資料1−5−2につきましては関連規制の概要という意味で、まず第1のほうにつきましては組換え生物に係る国内の管理体制の直接的に扱っているものを中心に書いてございます。1枚目の紙に書いてございますように、日本国内におきましては先ほどから紹介しておりますように関係各省がそれぞれの段階におきまして組換え生物の管理に関連します規制を有しております。
   試験研究段階につきましては、先ほどから紹介しております組換えDNA実験指針が1979年、これはアメリカで組換え技術がつくられまして、それが1973年、昭和48年ごろでございますが、その後いろいろな議論を踏まえましてアメリカでガイドラインができ、それから日本でも昭和54年でございますけれども、DNA実験指針という形ででき上がりまして、その後、組換えDNA研究が盛んに行われるようになってきたということでございます。
   実用化段階につきましては農林水産省のほうの指針、それから経済産業省のほうの指針、厚生労働省のほうの指針がございます。それぞれ安全性の確保という観点から周囲の環境への影響等も含めましてその取扱いに関するルールを書いているものを集めているわけでございます。実用化段階では右と左に分けておりますが、左のほうは製造過程で組換え生物を主に利用するものとして書いてございます。これにはすべて指針の中に例えば農水関係で言いますと微生物、農薬等の製造、あるいは工業化指針で申し上げますと、その酵素、触媒等の生産、それから厚生労働省関係で言いますと医薬品ですとか食品添加物の生産にこういったものが使われていると。
   右のほうにございます組換え生物そのものの利用という点におきしましては農林水産省のほうでは例えば実験小動物、それから微生物でもそれをそのまま使う農薬、あるいは生ワクチン、それから植物が一番大きな枠組みになるわけなんですけれども、こういったものを現在対象としながらその安全性評価を行っていると。これは植物そのものを用いていくわけでございます。
経済産業省の工業化指針のほうにも微生物をそのまま環境中に放出し、環境浄化に用いるというようなケースを想定しておりまして、これは微生物に限らないかと思います、いかなる生物かもわかりませんが、そういったものそのものを用いて行うものということで想定されております。
   一番右のほうに点々で囲ってございますが、この試験研究段階におきましても、あるいは実用化段階におきましても、この環境中への意図的な放出が想定されるものがこういった形で存在するのではないかということをイメージしていただいております。試験研究段階はこんなに大きく囲うほどの部分があるのかどうか、これからまた見通しとともにご検討いただきたいと考えているわけなんですが、少なくとも組換えDNA実験指針の中におきましては、屋外隔離の区画、あるいは普通の屋外の区画、それから微生物等でイメージしやすいわけですから自然界にばっと散布するというような枠組みについても対象として取り上げておりますので、こういったものも意図的な放出が想定されるものとして見られるのではないか。これに関してはこういった指針がそれぞれ関係しておりますということをご紹介しております。
   下のほうにいくつか書いておりますが、これは基本的に人や動物が摂取する段階に至りましてその安全性を見るものが別途ございまして、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続、それから組換え体利用飼料の安全性評価指針、組換え体利用飼料添加物の安全性評価が厚生労働省の方で指針というのが農林水産省のほうでそれぞれ持たれております。
   1枚めくっていただきまして組換えDNA実験指針の概要でございます。これは多くの先生方、既にご存じかと思いますが、組換えDNA実験の安全を確保するための基本条件を示し、組換えDNA研究の推進を図るということを目的に掲げております。実験の種類といたしましては非常に幅広く、もちろんいろいろな研究すべてを見渡しておりまして、微生物であるとか、いろいろな培養細胞がございます。植物、動物もございますが、これを宿主とする実験。1のうち非常に培養規模が大きい大量培養実験というもの。それから動物を宿主とする、あるいは、できたトランスジェニックの動物を用いる実験、あるいは動物に組換えの微生物を接種するような実験といったものも範疇に入ってございます。植物においても今動物で申しましたような枠組みがすべて想定されております。
   先ほども申しましたように、実験区画といたしましても閉鎖系の実験室、それから温室や動物舎といったものも含めまして、さらには閉鎖系でない温室・網室、閉鎖系でないといいますのは窓にシールをきちっとしているほどではないが昆虫が入らないように、あるいは排水をある程度ちゃんと処理できるといったような配慮のみが行われている温室や網室。それから、そういったものではない、もう屋内から出まして屋外の一定に囲われた区画、それから全くそういう囲いも想定しない区画など、あらゆるものを想定した指針になっております。
   指針の手続等につきましては、封じ込めに関する事項ということと、組織・手続に関する事項ということで大きく分けてございますが、封じ込めに関する事項につきましては物理的封じ込めと生物学的封じ込めを適切に組み合わせて安全を確保しましょうという点。それから、組織・手続に関する事項につきましては、実験実施機関におきまして安全委員会を組織いたしまして、それぞれ実験責任者、それから実験機関の長をサポートする主任者などの位置づけを明記しまして、その機関内でのピア・レビューをしっかりやっていくということを規定しております。
   さらに実験内容に基づきまして、特に大臣確認実験(国のほうまで申請を上げてくる実験)、それから機関内でしっかり審査の上承認を出す実験、それから届け出を行うことのみによって行い得る実験という形で手続を分類しております。大臣確認実験に分類されますのは、非常にいろいろな組換え実験が想定し得る中で、安全性の評価に不確実な要素がまだあるというふうに考えられる実験、あるいは、すべての今後の実験を見通していく中で、ぜひこの実験についてはその実施結果をモニターさせていただきたい実験というのを含めることといたしまして大臣確認実験と位置づけ、その国への申請をいただいているということになります。
   さらに1枚めくりますと「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」ということで農水省のほうの指針の概要をお示ししております。これは農林水産分野等の健全な発展に悪影響を与えることのないように組換え体を適切に利用するための環境安全性の確認に関して定めたものということでございます。農林水産分野等ということで農林水産省の所掌に関連するものという意味合いが明記はされております。
   基本的な考え方としましては、一般環境での利用を目的とする組換え体、先ほど一番最初の紙でイメージしていただきましたように、組換え体そのものを用いて外の環境で使っていくことを想定しているもの、それから生産施設であるとか、せいぜい実験の小動物のように屋内でしか用いないということを目的としたもの、それぞれについて安全性の確認の枠組みがあると。
   一番上の一般環境での利用を目的とする組換え体に関しては組換え植物というふうなことで例示が挙がっておりますが、微生物なり生ワクチンに関しましても、枠組みそのものはあるということです。
   それから、主な内容につきましては、下のほうの安全性審査の手続でございますが、事業者が組換え体の環境に対する安全性評価がこの指針に適合しているかどうか、これの確認を農林水産大臣に求めることができるという、いわゆる自主的な形での求めを行って、それに対して農林水産大臣が適合性を組換え体利用専門委員会に諮りまして、一部はワクチンに関しましては薬事・食品衛生審議会ということになるようでございますが、安全審査を実施するということになっております。
   右のほうに組換え体の安全性確認の主な内容と書いてありまして、組換え体別に書いてございますが、組換え植物のほうにつきましては環境への影響に関しての審査を行っておりまして、これは9月末現在ということで整理されておりますが、申請の確認件数という整理でいいますと60件、それは環境中に導入するものとして一般圃場での栽培などを目的に申請が上がってきたものが34件、その下の括弧の中にありますものは輸入目的で入れようとしているものに関しましても、その漏れ出た場合のことまで考えまして環境中に出すものに準じた審査・確認をやっておりましてこれが26件あるということでございます。組換え微生物に関しましては、製造施設を中心とした安全性の確認がございます。これは今のところ20件あるということですが、すべて生産施設内での利用の確認ということです。それから、実験小動物は26件ございますが、実験小動物につきましては業として流通するケースにつきまして確認をしてきた経緯がありますが、ただ、実験小動物につきましてはその業者を通じてさらに実験実施機関のほうにまいりますと、これはまた我々の組換えDNA実験指針に沿った取扱いを行うというようなことになろうかと思います。それから、組換え生ワクチンにつきましては、今、動物用のものを主に考えているわけですが、今のところ審査実績がないということでございます。
   植物に関して申しますと、どんな内容を審査するのかという点でございますが、ここに書いてございませんが、組換える前のもとの農作物とか導入した遺伝子、それから作成された組換え体、導入される環境などに関する情報に基づいて雑草性ですとか有毒物質の産生性などを評価としているということになります。
   続きまして1枚めくらせていただきますと経済産業省のほうの指針でございますが、これも冒頭目的が書いてございます。鉱工業の産業活動に利用する際に安全確保のための基本条件を示し、自主的な安全確保に万全を期す。さらに技術の適切な利用を推進するということの目的が明記されております。
   この具体的な取扱いの対象なのでございますが、酵素でありますとか、触媒、試薬、アミノ酸生産などに微生物を用いる場合に、その生産物そのもの、あるいは設備、作業のあり方等に関する安全性評価の判断基準を提示していると。これも農林水産省のほうと似た記述でございますが、事業者の任意の求めに応じて適合しているかどうか、産業構造審議会の化学・バイオ部会組換えDNA技術小委員会における専門家の意見を踏まえて経済産業省が確認を行っている、こういった枠組みであります。
   下の左のほうにございます第1種利用というのが閉鎖系利用でありまして、培養タンク等を用いて酵素等を生産する場合が例示されております。これがほとんどのケースで、昨年の中ほど現在で三百数十件というような審査実績があるということでございます。これは先ほど申しましたように、組換え体そのものの安全性評価、それから施設、どういった施設でやるのか。安全性が高いものは比較的簡易なもの、安全性が低いと判断されるものは非常に機密性の高い高度な施設を使って行うというような、そういう基準を明示しているということになるかと思います。
   第2種利用につきましては明示されておりますが、汚染された土壌を遺伝子組換え微生物を用いて浄化する、こういったことでございまして、これは既にわずかではあるがこの審査実績があるというふうなことでございます。ここにおきましては明記されておりますように周辺主要動植物に対し非病原性であること、対象物質より毒性の高いものを残留しないこと、利用終了後に増殖する可能性が低いこと、周辺等に有害影響を及ぼす可能性が低いこと、こういったあたりを判断基準として明示しており、さらにこれを適合しているかどうかを経済産業省が確認するという枠組みをとっております。
   もう1枚めくりまして、これは組換え植物のみに着目いたしまして、基礎的研究から実用化への一般的な流れということで概略をお示ししております。一般的には日本の国内におきます流れといいますのは、実験室の中で組換え植物が開発されますと、そういったものも当然どういったキャラクターを持ち合わせるか、遺伝形質が入ったかどうかといったあたりを調べます。さらにそれをある程度実験室内のチャンバーから、あるいは閉鎖系の温室といったあたりに移しながら従来の作物との成分・性質の比較、あるいは環境リスクに関する項目なども徐々に調べ出すということになろうかと思います。
   それから、先ほど申しまたように非閉鎖系の網室・温室というのが実験指針のほうには、これは科学技術庁が旧来定めておりました指針に明記されているわけでございますが、完全に窓がシールされたようなものではないんですが、窓に網枠がはまっており、昆虫等の侵入がなく、さらには排水なりといったものにも一定の措置が加えられる温室・網室といった段階がございまして、こういったものを経由し、さらにここでより屋外に近い条件下における環境リスク評価をし、さらにその結果を踏まえて屋外隔離圃場に移し、さらにその屋外隔離圃場でいろいろなリスク評価等の項目を得まして一般の圃場に出していく、こういう段階を経ております。
   上のほうに青い指針、ずっと矢が伸びておりますが、この組換えDNA実験指針、文部科学省が運営しておりますものは、事実上はこの非閉鎖系の温室・網室ぐらいまでを今まで審査してきております。ただ、大学等のほう、旧文部省が運営しておりました指針に基づきましてこの屋外隔離圃場に出すという審査を行った経緯が2件ございます。ただ、さらに先に進もうということまで指針上は想定しておりますが、移った例はないということになります。
   では、その多くはどこへ行くかといいますと、下のほうに書いております農林水産分野における組換え体の利用に関する指針のほうに基づきまして屋外隔離圃場、これは向こうの指針では模擬的環境利用というわけなんですが、こちらのほうに行ってよいかどうかということを各種今まで閉鎖系なり非閉鎖系の温室で取り得た情報をもって確認申請をすると。そういうのがかつて76系統。それから国外で開発された系統につきましてこの隔離圃場に移してよいかどうかという点を申請した経緯が90系統でございます。さらに、その農林水産省の指針に基づきまして隔離されました模擬的環境利用から開放系の利用というところの一般の圃場ですが、こういったものにステップを進めようということで確認を終えているものが11月30日現在61系統ということに進んでおります。
   あと、先ほどもちょっと申しましたが、農林水産省のほうでは栽培目的でないもの、仮に加工するための輸入、あるいは飼料のための輸入ということであったとしても、こぼれ落ちにかかることも含めましてリスク評価をやっておりまして、それのみにかかるものが既に37系統について確認済みというのが現状でございます。
   それから、点々で食品と飼料というふうにつながっているんですが、必ずしもこのルートだけではありませんので点線になっておりますが、こういったものをさらに食品にしていくという点では厚生労働省のほうの指針に基づきまして審査を行うと。それから、飼料につきましては農林水産省のほうの指針に基づきまして審査を行う。これは農林水産省の指針、食品のほうは食品安全衛生法に基づきます指針、それから飼料のほうにつきましては飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律というのがございますが、まず指針によるいろいろな基準を満たした上で、先ほど申しました法律の枠組みに基づく判断をしているということでございます。こういったものが35系統あるというのが国内におきます組換え植物の開発から実用化への一般的な流れということでございます。
   ちなみに動物のケースで申しますと、この非閉鎖系の温室・網室というところに行ったケースが動物ワクチンに関しまして3計画ほど出た経緯がございますが、その先に進んだものというのはありません。
【吉倉主査】   それをちょっと簡単に言ってください、現行法令。
【事務局】   現行法令ということで資料1−5−2にまとめておりますが、これは必ずしも環境影響に関係があるということから取り上げているものではございません。試験用の組換え生物ということで何かしら関係がありそうなものをピックアップしたものでございます。試験研究における組換え生物の取扱いにも関連があるということで、別にそれだけではないわけなんですが、基本的に組換え生物の安全な取扱いに特化した法令というものは存在しませんが、組換え生物であるか否かにかかわらず適用される法令があるという趣旨で「にも」という言い方をとっております。
   一番上から外国為替及び外国貿易法、外為法と言われるものですが、これは輸出入の管理が行うことができることになっておりまして、これは特段、今のところ組換え生物云々に関して直接的に関連するところは少ないわけなんですが、例えば希少種に関することもありますが、ここでは軍用の細菌製剤の原料となる微生物等の輸出の許可が必要といったことなどが今現在は規定されている。もし例えばカルタヘナ議定書のようなことがありましたら、ここにどういったことが入るのかという検討もあろうかと思います。
   それから、家畜伝染病予防法につきましては、指定検疫物に関する輸入検査、それから相手国が必要としている場合の輸出検査の規制を規定しているということでございます。それから動物そのものではなく、家畜伝染病疾病の病原体の輸入は原則禁止となっておりますが、試験研究のために輸入する場合には農林水産大臣の許可が求められるということが書いてあります。それから、ある生物的材料のやりとりという意味だけでピックアップしてみますと、農林水産大臣の指定する動物用生物学的製剤は都道府県知事の許可を得なければ使用してはならないという規定がございますが、これは具体的には日本薬局方にない、さらには薬事法の承認がないものを用いる場合ということになるそうでございます。
   それから植物防疫法のほうは動物と似た枠組みでございますが、植物・検疫有害動植物を入れるときには輸入検査、それから相手に出す場合は輸出検査を行う規定がございます。それから植物を害する動植物の輸入は原則禁止ですが、試験研究のための輸入は農林水産大臣の許可が必要ということになっております。それから、国内の移動に関しましても規制される有害動植物がありますが、これは南西諸島からの例えばウリミバエとか、サツマイモノメイガといったような極めて数種類に限られております。
   次のページ、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律ということで、これはヒトの感染症に着眼したものでございますが、ヒト以外の生物をやりとりする、あるいは扱うという点で関係がありますのは、感染症を媒介する動物の輸入検査を規定しておりまして、具体的にはサルが指定されております。これはエボラ出血熱等の媒介を懸念してのことでございます。
   (5)、(6)、(7)に関しましては、これは組換え体の輸送に直接関係があることだと思います。航空法の中には病毒を移しやすい物質、あるいは組換え微生物につきましては、容器等が一定の基準に従うものに限り航空機で輸送できるということになります。緩やかな規定がございます。
   それから、船舶安全法のほうは、すみません、この記述は必ずしも正確ではないかもしれませんが、病毒を移しやすい物質、組換え微生物は容器が一定の基準に従わなければならないというような義務的な規定がございます。特に罰則等が見当たるわけではございません。
   それから、郵便法に関しましては、生きた病原体、生きた動物、死滅または変敗しやすい生物学上の材料を送付するに当たりまして郵便事業を利用する場合の規則が種々決まっております。例えば死滅または変敗しやすい生物学上の材料を書状によって送ろうとする場合、送ろうとする機関、受け取ろうとする機関は郵政事業庁長官の認可が必要になるというようなことが書かれております。これは国際郵便を用いる場合でございますが、そういったことが書かれていると。さらに国際郵便に係る容器等の基準は万国郵便条約施行規則に示されております。
   それから、(8)と(10)はちょっと特異なんでございますが、これは特に危険な病原微生物の人への危害防止という観点から書かれているものでございます。労働安全衛生法のほうは事業者が病原体により汚染された廃棄物等の適切な処理、排出及び廃棄をすること、病原体による汚染の著しい場所への関係者の立ち入りの禁止をする等の規定がございます。
   1つ飛ばしまして兵器の防止のほうですが、これは病原微生物等、まあ、最近テロが起こりましていろいろな面で注目されましたが、微生物を組換えてさらに強力にしたものなどといったようなもの、さらに人に危害を加えようというような行為に関しては別に組換え生物であろうがなかろうが、この枠組みによって厳しい罰則が適用されるということになります。
   1つ戻りまして動物の愛護及び管理に関する法律が書いてございますが、これは動物の愛護だけではなくて、動物の人への危害の防止を目的とした動物の所有者等が守るべき使用・保管の基準が各種動物ごとに定められておりまして、実験動物に関しましても総理府告示が出されております。実験動物に関しては実験等に関係のない者が実験動物に接することがないよう必要な措置を講ずること等の基準が示されているということでございます。
   もう1枚めくりますと実用化された組換え生物の取扱いに関連があるものということで4つほど記述しておりますが、要は流通するに際しましては表示を行う必要があるものがJAS(日本農林規格)法の中に定められておりまして(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)、今のところ5つの作目につきまして組換えDNA技術を用いた農産物に係る表示基準があります。
   それから、先ほどから申し上げている食品衛生法につきましては組換え技術応用の食品添加物の製造基準並びに安全性審査手続が定められている。
   13番につきましては先ほど紹介しましたように、飼料の安全性に関して審査し、場合によっては禁止することができる枠組みがございます。
   薬事法につきましては別に組換えに限らず人、動物、医薬品の製造について申請があったときの製造のみに承認を与えるとういうことが必要になってくる。業として製造する場合に必要になってくるということでございます。
【吉倉主査】   今のようなことで現在使われている指針、それから法律について紹介していただいたんですけれども、目的はカルタヘナ議定書の担保法ということで、1つは担保法をつくる場合に二重規制というものがやはり避けなければいけない問題、そういうこともあってこういう資料1−5−2のような現在関係する法律は一体どういうものがあるかというのを説明していただいたわけです。
   それから、すぐ藤田先生あたりにお話しいただこうとは思っているんですが、どこから開放系というかという、そこの辺の問題ですね。あと、この一番最後の5−1−1のこの悩ましい右側の辺をどうするかという、その辺が特に意図した開放系利用ということに関係してその辺が結構問題になると思います。これはもう少し探すと法律や省令はもっとたくさんあるような気がしますが。
   何かありますか。なければ時間もないので参考資料1−6をやっていただいて、それから鎌田先生、藤田先生にお話をいただくほうがいいと思います。お願いします。
【事務局】   研究開発の実用化の現状ということで事務局のほうから資料1−6を用意てしおりますが、これにつきましては非常に簡単な資料でございますのでさっとご説明した上で鎌田先生、追加的なご説明がいただけましたら幸いでございます。
   組換え生物の研究開発の実用化の現状でございますが、事務局のほうの資料では縦に植物とか生物の種類をいくらか分けまして、横に最終的にどういった利用環境を目指しているのかという点から3つの枠組みが決定を見たもので、それぞれにおいてどういった開発段階にあるのかというのを三角なり丸なり色をつけるなりでちょっと示してございます。植物に関しましては閉鎖系での使用を目的とするものとしてそういった有用物質産生のための培養細胞であるとか、そういったものが想定されるし、今、実験用としてはかなり広くやりとりされている。
   それから、実験用の植物、シロイヌナズナ、タバコ、ミヤコグサ等がございますが、基本的に今のところは閉鎖系で利用するものが多いのですが、今後いろいろな系統が蓄積される中で、一定の屋外での試験をしてみたいというようなことがあり得るのではないか。今のところ実験用植物としては非常にやりとりされておりますが、限定的な区画にいっているかどうかは別としまして多くのものがあると。
   それから、自然界への放出を目的とするものに関しまして、下の黄色がついている部分は既に実用段階にあるもの、これはご存じだと思いますが病虫害抵抗性の農作物とかペチュニアとかカーネーションなどがあります。そのほかいろいろな機能性のもの、あるいは環境浄化植物等のいろいろなねらいを持ったものが今現在開発中であると。
   それから、脊椎動物につきましてもいろいろございますが、閉鎖系での使用を目的とするものには例えば実験用のげっ歯類であるとか魚類があるのではないか。それから、有用物質を生産する培養細胞等があるでしょう。家畜に関しては逃げてしまうことを前提として家畜を飼うということではなくて、限定的な区画で放出するケース、最終的にはそういうものを想定するのでしょうが、今のところこれはまだ開発段階にありますと。それから、自然界に完全に放出してしまう、特に制限を設けない形で利用するものとしては愛玩動物等、あるいは魚類などが想定されるのではないか。これもほとんどが研究開発中であると。
   それから無脊椎動物、昆虫等ですが、これにつきましては実験用のハエ、線虫、そういったものがかなり多く授受されておりますが、そのほか有用物質を産生するカイコなども想定されるのではないか。一方、自然界へ放出することを目的としたものに、天敵昆虫であるとか、あるいは生態系の中での動態を調べるための昆虫、これは実験的要素を帯びるかもしれませんがそういったものがあるでしょうと。
   微生物につきましても有用物質産生微生物は先ほどから申しましたようにかなりのところで利用されております。一方、環境中に放出するものとしては環境浄化微生物等の開発が既に進んでおり、海外では例えば動物の生ワクチンなどもこれに当たろうかと思います。まだ開発中のものにつきましてもいくつかあるといったような現状でございます。
   2枚目、3枚目につきましては言葉足らずのところを他省庁の審議会で行われた資料を追加してつけさせていただいているということで参考に見ていただければということです。
【吉倉主査】   どうもありがとうございます。
【事務局】   すみません、1点だけ追加説明させていただきたいのですが、参考資料6というところに生物遺伝資源の収集・保全に関する取組みというのをちょっとだけ簡単にご説明させていただきたいのですがよろしいでしょうか。一番後ろについております。
【吉倉主査】   はい、お願いします。
【事務局】   組換え生物のことに若干関係する文部科学省等の取組みということで若干ご紹介しておく必要があるかと思いましたのは、遺伝子源の収集・保全に関する取組みということでございます。知的基盤の整備ということで、要は研究開発の基盤となるようないろいろなデータベースを持つ必要があるわけなんですが、これに関しまして科学技術・学術審議会のほうでは研究用材料の中で生物遺伝資源というのは非常に重要であると。2010年までには世界最高水準を達成することを目標として関係省庁は連携して取組みましょうということが書かれております。この中にはトランスジェニック系統を含むモデル動植物等も重要な位置づけにあるということになろうかと思います。3番は各種、今現在から10年後にどれぐらい増やしていこうかというようなことも計画の中には書かれております。これに関しまして文部科学省分としてどんな関連事業を持っているかということでご紹介しますと、ナショナル・バイオリソース・プロジェクトというものを着手いたしまして、国として収集・提供を行うべき生物種を選定し適切に整備を進めると。今その運営方針につきましてはライフサイエンス委員会というところ、別途の委員会において検討中でありますということです。
   2枚目に色がついております紙ですが、こういったいろいろな動植物からぐるっと回って、げっ歯類あるいはメダカ、線虫等々ございますが、こういったリソースの中にはそういうトランスジェニック系統というのもたくさん含まれると。こういうものを国内外から収集し、保存し、分配するというような事業が国の研究の中では基盤的な位置づけになってきている。このプロジェクトに関しましては文部科学省のプロジェクトですが、ほか関係省庁も含めまして行っていこうということが片や打ち出されているということも参考までにご紹介したいと思います。
【吉倉主査】   どうもありがとうございます。今のようなことですが、少しコメントします。遺伝研の菅原先生はOECDのバイオロジカルリソースセンターの議長をこの前までやっていらしたのですが、世界的にバイオロジカルリソースセンターをネットワーク化し、より大きいバーチャルなリソースセンターにしようという考えがあります。結局リソースが非常に増えてきて1つのセンターではもうまかないきれないので各国ネットワークをつくろうという、そういうことがあります。今の輸出入に関係してそういう世界的なネットワークのバイオロジカルリソースセンターをどういう具合に運営するかという、そういう問題もそのうち出てくるんじゃないかと思います。
   それでは、早速鎌田先生お願いします。それで最後に議論したいと思います。
【鎌田委員】   それではお配りしてある資料、きのうの夜バタバタしてつくったのでちょっと不適切な表現のところが若干あるかもしれませんが、できるだけ手短にやりたいと思います。
   今、郡さんのほうからご説明がありましたように、組換え植物に関しては世界中でありとあらゆる仕事がやられていまして、特にここですと基礎研究ですから基礎研究の分野の仕事は膨大な量があります。それの中の一部が組換え食品のような形で実用化されてきていると。それは国内でも全く同じ状況でして、大学等で基礎研究として組換え植物をつくって、将来使えるならば食品だとか、レメディエーションに使いたいということを目的に研究開発されている先生は非常に多いです。ただ、先ほど言ったように日本の現状からいくと隔離圃場まで大学として出たものは過去に2件しかない。その前の温室、いわゆる開放系温室という空気は通る、虫などは入らないという温室までは出ているのはそれなりに件数があるという状況です。
   きょうお配りしている資料のほうの1枚目、2枚目は諸外国のことはどうなんでしょうねということをちょっと聞かれていましたので、いろいろな法律、特に組換え植物に関してそれぞれがどんな法律をもとにどういうことをやっているのかということがただ単にずらっとまとめておりまして、いずれにしてもほとんど法律に基づくような許可制で動いているところが多いということで、細かい内容等については3枚目のところをちょっと見ていただければと思うんですが、ここの中で大事なことだけを言っておきますと、基本的には基礎研究、いわゆるリサーチユースであっても商業用のものでも全部事前審査をしているというのが現状です。それから、試験項目の内容の詳細は国によってかなりバラバラで細かい情報が手に入らないので私もわからないところが多いんですが、いずれにしても組換え体ごとに適切な項目を選んで試験をするというのを原則としております。
   例えば事例として3番目になります。国によっては花粉をつけるかどうかで区別をしている場合もあります。その一番典型的な例は木本、木ですが、木なんかだと花が咲くまでには場合によっては何十年もかかる。そういうものを花が咲くまで遺伝様式を調べなければいけないとなったら何十年先にならなくてはできない。そういうものについては花が咲かない間は簡単に普通の場所に植えていいよと。花が咲く前にそのかわり切り倒してくださいというような形での試験を実際にはやっているものもございます。
   それから、ヨーロッパはここのところの遺伝子組換え農作物の反対運動のあおりを食っている部分が多いんですが、ドイツはかなり昔から厳しかった。バイオ施設へのテロみたいなことも昔からありましたのでかなり厳しかった。フランスなんかはどちらかというとかなり緩くて、私は十何年前に行ったときには研究者に「おまえら組換え体どうやっているの?」と言ったら、「いや、実験室でつくったらすぐ研究所の庭に植えているよ」というようなことを平気でやっていたけれども、それがあったのでドイツあたりでつくられたものは逆にフランスに行って試験栽培をするというようなことをずっとやっていました。ただ、ここのところの動きとしては、昨年秋にフランスに行って聞いたら、いや、とんでもないと。今は全く逆になってしまって、いわゆる隔離温室という花粉も絶対飛ばないような状態の温室の中でやるときでも、人の出入りもそうですし、組換え体が一体どういう植物が何個体植わっているかまで全部きっちりと管理をして記録を残して、それを全部保存するというものすごいシビアな今は規制をかけて栽培試験というのをやっているというのが実情です。
   逆に日本の例で言いますと、これも変な事例かもしれない。例えば、さっきの木本なんかですと日本ではまだどうしたらいいかの規制案が現実にはない。例えば遺伝様式を調べろというような項目があるわけですが、さっき言ったように木本などできない。できない以上、日本ではできないとなってしまっている、規制からいうと。それでどうするかというと、しようがないので開発されたものの1つはアメリカ等、既に規制案が決まっていて、こういう条件でやっていいよというのが決まっているところに持ち出して、そこで試験をするということを現実にはやってきた。
   それから、大学でももちろんそういう規制では、まだ遺伝様式等を明らかにしないとできないということもあって、大学の先生が開発した遺伝子組換えのある種の木本植物は文部科学省管轄ができないということで農林水産省のほうの管轄に持っていって樹木用の巨大な組換え温室を利用していたんですが、そこの中でしか試験ができないという状況が今でも続いております。
   それと同時に最近のいろいろなEUとの間のやりとり、アメリカ等のやりとりの中で、先ほどもちょっと出ましたけれども、開放系に出してもいいよということにはなったとしてもちゃんとモニタリングをしながら順次段階的にいろいろなことをやっていこうねというのが、今、世界的にはそういう動きになっております。
   そこの下に書いてあるのは、例えばドイツだとこんなようなことを、試験項目としては、環境影響といったらこういうことを考えなければいけないんだよというようなことがずらっと並んでおります。
ごく簡単に、以上です。
【吉倉主査】   それでは藤田先生もついでにというか、続けてお願いします。
【藤田委員】   ついでだと思います。というのは、微生物は私の知っている範囲でもほとんど利用例がないと思います。少し参考ということで経済産業省、旧通商産業省が約6年間、千葉県君津市で環境浄化と称しましてトリクロロエチレンを対象にして微生物を導入して浄化実験を行っているわけですが、これは原則は一応実証実験ということになっております。しかし、現実にはある工場で汚染されたトリクロロエチレンが地下水に入りまして、その実際の地下水の浄化を行ったということです。
   使用した微生物はもちろん非組換え菌、すなわち自然界から分離した微生物ですが、一応経済産業省の先ほどの組換えDNAの工業化指針で第2種と書いてありますが、とりあえずそれを引用していくということで、その手順にのっとりまして経済産業省で審査を行って安全であるということを確認いたしております。
   それを実際の地下の汚染地下水の中に導入して浄化を行ったわけです。その地下は約20メートル、もう少し浅いかもわかりませんが、実際には地下の中ですので環境影響評価としましては工業化指針の中では人及び主要な動植物への影響ということを書いておりますが行っておりません。一方、周辺の微生物生態系、これは特に地下の微生物生態系については調べております。ヒト、動植物などには、ヒトにはもちろんわかりますが動植物につきましては特段何かで調べたというわけではなく、ましてや適用したところが地下ということですのでこれは省略しております。
   微生物生態系に及ぼす影響ということで2枚目に少し図を持ってきましたが、これは報告書からの引用です。一応その地下水からDNAを取りまして、制限酵素によって切断された増幅16SrDNAのバンドを調べました。Bは実験の前、12日ですから3日前、0から微生物を導入したということです。ちょっとコピーが見にくいですけれども矢印がありますのが、これが導入した微生物のピークです。図にAR2とAinj4というのがありますが、この4のところで微生物を導入しました。AR2というのはモニタリングの井戸なんです。それであと一応このデータでは18日後までを調べております。現実にはもう少し長期間このモニタリングは続けております。
   そうしますとB3、B12導入まえですと大体同じようなDNAのパターンが出てきておりますけれども、0日、2日、4日ぐらいになりますと導入した微生物が非常に大きなピークとして出てきますが、18日たちますと右側の導入していない土着の微生物のピークがどんどんと回復してきています。先ほど鎌田先生もモニタリングというふうなことを言われましたが、生態系に対するモニタリングをどうしていいのかというのは我々としてもどういうふうに説明していっていいのかわからなかったものですから、1つの手法としてDNAを使ったモニタリングの手法を採用しました。そのような形でやってきますとある程度微生物生態系そのものが復元しているということが読み取れそうであるということで、1つの手法としてはこれは使えるのではないかというふうに確認しております。
   現実に我々自身が例えばこういう組換え微生物を環境浄化に使うというふうに考えますと、例えば2の使用目的の中で1つの例としては我々がピックアップしたものなのですが、こんなような例があるのではないかということで挙げております。先ほどちょっとお話しさせていただいたのは、その中で下・排水処理とか生物脱臭などの特殊物質の分解が含まれます。例えばダイオキシンとかPCBとかというのは非常にホットなニュースとして、分解微生物を分離し、そしてできれば遺伝子組換えまでをして強力な分解菌をつくって環境浄化を行っていきたいという動きはあります。ただ、今のところもちろんまだ実用化のところまでは至っておりません。そういうことを含めますと反応槽内というのを閉鎖系と考えるか、あるいは開放系と考えるかというのは、ちょっとこのあたりを解釈する必要があるのではないかと思っております。基本的には例えば生物脱臭にしましても下・排水処理にしましてもずっと見ていけばどこかのところでは確かに普通のいわゆる環境とつながっているという意味では開放系なんですが、装置そのものを見ればかなり制御し得る反応槽だというふうに考えることができると思います。それ以外はかなり開放的な環境での利用ということだと思います。
   その一番上にちょっと組換え微生物を書いたのですけれども、これは各国でも微生物に対しまして特段その宿主あるいは挿入遺伝子の性質を上回るような微生物が出てこないというのは一応原則ですので多分そういう例はないと思います。そうなってくると一応宿主及び挿入遺伝子は組換え微生物と同等であるということから、それらを評価して人、動植物への影響ということを評価しているのが現状ではないかと思います。
   あと土壌の浄化などでも組換え微生物を使った実験の例はあります、ポット実験とか。しかし、現実にはおそらくフィールドで行われた実験というのは先ほど言いました一応実証実験という形であって、決して経済的な意味での実証は行っていないというのが現状だと思います。
   以上です。
【吉倉主査】   それでは、大体そういうようなことで藤田先生、鎌田先生に説明いただいたわけですが、何かご質問あればいかがですかね。
   鎌田先生のコメントに関係してですが、法律の場合、法律があるということと、条文がどう書かれているかというのはかなり違うところがあるので、その辺、法があるということ、すなわち厳しい規制ではないんじゃないかと思うんですね。だから、そういうことで言うとこの次のときでもいいですから、それぞれの法律について該当するところをできれば事務局で取りまとめてその条文を出していただくともうちょっとすっきりするのではないかと私は思います。
   それから、審査についてなんですが、事前審査に関してもしも法律というものがあった場合に、審査自体の責任はどうなるのか。エイズのこともあったし、この前も牛のやつもあったけれども、その辺のところをどうこの辺はクリアしているのか。というのは、もしも審査というものに法的責任が出てきた場合、審議会を引き受ける人はいなくなっちゃうかもしれないですね。そういうようなところもあって、外国の法的規制というものはやっぱり単にこういうあるなしということじゃなくて内容的にどうかという、その辺のところはかなり重要じゃないかなという具合に思いますが。
【鎌田委員】   ここで書いたのはそういう意図というよりも、日本が指針という形で今までやってきていたと。それに対して絶対に守らなければいけないようなある意味で罰則を盛ったような規則があるという意味で法律ということをここでは書かせていただいたと。内容については法律があるから厳しいというものではなくて、もちろん内容は先ほど言ったように国ごとに違いますし、植物個体ごとにどういう遺伝子組換え体であるからこういう項目が適用する・しないと。例えば花粉が出ないからもっと簡単に試験をやってもいいじゃないということがあるので、それは国ごとに厳しさだとかそういうのは全部基本的には違うということです。
   ただ、細かい条文のことについては、できたら次回までにまた用意しますが、じゃあ、だれが責任をとるのかということに関しては、これは法律全体の中なので私も詳しいことはよく知りませんが、ただ国によってはそれぞれの、日本もそうですが、ある意味では縦割り的な意味での部分があったり、国として1つの何か特別な審議会というか委員会を持っていて、そこがすべてを掌握してやるんだよというケースもあるので、責任のとり方は国それぞれだと私自身は思っています。
【吉倉主査】   個別法を使っているカナダとかその辺になってくるとちょっと内容は何となくわかるんですが、こういう遺伝子工学法とかそういうやつに使っていると一体どうやって法を運営しているかなという、よくわからないところがありますね。
   ほかに何かありますか。加藤先生、あるいは広海先生、何かコメントが特にあれば。
【広海委員】   これから審議することはもちろんなんですけれども、現在我々が行っていることがどのようにジャスティファイされているのかというのは私あんまりよく知らなかったので、例えば外国にショウジョウバエを送るとか、そういうことに関してもちょっとはっきりさせていただければ自信を持ってこれからやれると思う。
【吉倉主査】   そうですね。これは何かありますか、事務局のほうから今の件について。
【事務局】   今現在は、先ほど簡単に関係法令をご紹介しましたようなことになっておりますが、また後でどういった論点についてやっていくということもご紹介しますけれども、その辺、2回目、3回目以降あたりで輸送に関することですとか、その他単に試験区画をどういうふうに設定し、なおかつ、どういう確認体制をとればいいのかというところも非常に重要な論点ですが、その次のテーマといたしましてはそういう輸送に関すること、取扱いに関することというのも取り上げて、また詳細はそのあたりで説明させていただければと思います。
【吉倉主査】   多分、今の広海先生の話というのは、このカルタヘナ議定書を批准する段階において現在やられたことをどういう具合に位置づけるといいますか、そういうことではないかと思います。ただ、我々、指針その他、科学者としての常識、そういうことでやっていますよね。それが法の中でどういう具合に入り込んでくるのか、あるいは法的除外になるのか、先生方の議論の結果によると思います。
【鎌田委員】   今のお話というのは、例えば我々ですと組換えのシロイヌナズナの種を外国から手に入れようと。組換え体だと思う人と思っていない人もいるし、それから、こういう例えば国際法上で、国際郵便法ではやっぱり何か表示しなければいけないとなっているけれども、それをどれぐらい守っていますかというようなことが現実の今までの中でももちろん一部あったし、カルタヘナ議定書になるとそれがより厳密になって、例えばこういう容器に入れてやらなければ絶対にだめだというようなことがカルタヘナ議定書では決まってきますので、それを逆に日本も守らなければいけないし、我々が例えばだれかがほしいと言ったから送るときももちろん守らなければいけない。そこら辺が今まで、例えば容器なんていうのは我々の学者の中ではこれがあったら大丈夫だろうという程度でやっていたけれども、それは逆に規則が決まるともう許されなくなると。一定の形でやらなければいけないというふうに多分変わるというのが我々がやらなければいけないことなのではないだろうかと思います。
【吉倉主査】   鎌田先生の意見は鎌田先生の意見で、ほかには別の意見もあるかもしれないけれども、ただカルタヘナ議定書の場合は意図せずに放出されてしまった後、あるいは意図的に何か悪いことをしたという、かもしれないということに関しては、これは一言も触れてないですね。かもしれないというところに触れてないというところは十分議論する場合に注意したほうがいいと思います。それで、鎌田先生がさっきおっしゃったけれども、厳しくすれば外国へ出ちゃうというのは確かに、私も医療関係ですが日本で臨床試験がほとんどできないので外国でやるという、そういう状況。だから、こういう規制というのは非常に難しいというか、現実に難しい問題がある。
【事務局】   ちょっと補足させていただきたいんですが、輸送に関することとか包装に関することに関しましては、今、政府間委員会、あるいはその下に専門家会合などを設けまして国際的に共通したルールでなければ守れないわけでございまして、そのあたりどういったものになればいいのかという議論がこの3月にも会合が開かれますし、さらにはその先の政府間委員会などでも議論に上ってくるかと思いますが、そういった議論の中に例えば研究上こういった配慮が要るのではないかとか、事実上はこうだし、こういう枠組みにならなければならないんじゃないかというようなところでの一般的な議論があって、さらにはそれが国際的な場に供給できる、必要性があれば供給していくということが必要なのではないかと思っています。
【吉倉主査】   時間がだんだんなくなってきました。水野先生、何か一言あれば。
【水野委員】   私は動物の関係なのですけれど、動物用のワチチンなどに関していえば、やはり日本で開発するとなると大変だということです。現状では国内で開発したものを外国に持っていって、開放系の実験などをしたものを、日本にまた逆輸入するような型を取っていることを聞きます。そのことは何が原因なのか考えてみると、日本では一定のプロトコールがあるようでないのが現状なのではないでしょうか。たとえば組換えワクチンなどを申請しても、農林水産省にはそのような安全性の検討会というか、それを審議する場ができてない。だから、外国ではそのルールが出来ていて全部の実験が出来るのでしょう。その様なことも含めて、ルールはあまり厳しくしてもいけないけれど、日本としてのルール作りをして、そのルールの元で、 サイエンティフィックに環境に安全でさえあれば、製造承認を得ていけるようなシステムが出来るのであれば、日本の研究者として非常に研究がやりやすくなるのではないかと感じています。このような現状をふまえ考慮していただければよいのではないかと感じています。
【吉倉主査】   確かにルールがないというのは一番厳しい規制かもしれないですね。久保さん、何かあればちょっと。
【久保委員】   そうですね、私、植物をずっと扱っているわけですけれども、国内での取扱いについては環境放出も含めて、一応そのルールができていたが、輸出入に関しての国際的な統一したものがなかった。そこで、こういった議定書をもとにして、統一したルールによって全体の調和を保とうという趣旨かと私は理解しています。ただ、議定書で示された部分と、それぞれ国内の事情とが若干違っている気がします。とくに、今までのやり方はいわゆるリスクに応じた管理という考え方が十分には反映してないのではないかと思います。それが盛り込まれれば良いと思います。
   
【吉倉主査】   時間もだんだんなくなってきて、加藤さん、何か一言ありますか。
【加藤委員】   私自身も水野先生がおっしゃっていらしたと同じように思います。今まで縦割りで来ていてわかりにくい部分があるところと、それから、もう一つは道筋が見えていないから進めない部分があったりする。もう一つは研究者の方、かつては自分もそうだったわけですけれども、にとって法律というのは非常になじみの悪いところがありまして、もともと研究の自由というところがあったわけですけれども、そこでこの組換えのこういう規制が出てきたというのもある意味では歴史的な経緯があるんですけれども、これができてカルタヘナ議定書への対応ということで明確にそれが入らなければいけない状況が出てくるわけですね。それでどういう立場の人が、どういうふうに、どの段階で、何をしなければいけないかが全体像としてよく見えるようになることが、中にいる実際の研究したり商業化する人にとっても、それから外側にいる人にとっても、両方にとってメリットが非常に大きいだろうというふうに思っていまして、いいチャンスではないかなと思います。感想ですけれども。
【吉倉主査】   それでは、もうそろそろ終わりにしなければいけないんですが、資料がもう一つ、資料1−7と1−8が残っていますが、よろしくお願いします。
【菱山室長】   では、手短に資料1−7と1−8、両方一度にご説明したいと思います。
   まず資料1−7ですが、検討すべき事項で、今、先生方からご意見を承ったことが大体入っているのではないかなと考えておりますが、今後検討すべき事項をまとめたものでございます。1は研究がどんな方向に進むのかということでございます。それから2についてでございますが、2はまさにこの環境中に放出するということはどういうことで、どういう要件だったらいいのかという話でございます。3はどういう組換え生物のどういう管理が必要かということでございます。4としては輸送ですね。国際的に輸送する場合、どういうことを配慮すべきかということであります。5は最後として、今述べました2、3、4の諸点に関して試験研究段階における組換え生物の取扱いのあり方とそれ以降の実用段階におけるあり方との関係をどう考えるかということでございます。
   それを、今度はスケジュールでございますが、資料1−8でございます。1枚紙ですが、本日第1回開いていただきまして大体の問題点とか現状とかが明らかになったのではないかと考えております。次回は2月18日を予定しております。ここでさらに試験研究に関係する研究機関の意向、それから海外、先ほど鎌田先生からご紹介ありましたけれども、さらに海外における組換え生物の規制について検討していただいて、あと今後の試験研究及びその実証法について意見交換をしたいと考えております。第3回にはその輸送に関して特に議論をしていただきたいと考えております。それから、あと組換え生物の取扱いのあり方とか、あるいはリスクに関する考え方等についてリスク評価、意見交換をしていただきたいと考えておりまして、その後第4回、まだ時期はセットされておりませんけれども、これまでの議論を大体取りまとめをしていただきたいなというふうに、こんな感じで考えているところでございます。
【吉倉主査】   きょうは第1回でこういう格好だったんですけれども、文部科学省の委員会として結論をどこへ持っていくかというのをおそらくは次のときぐらいにわりとはっきりさせないと、ただ座談会で茶飲んで終わりになってしまうかもしれないから、その辺きちんとしなければいけないかもしれない。
   それから、委員会の回数も限られているということで、場合によっては電子媒体を使っての意見をいただいて、そういう格好で意見交換をやるという、そういうことも考えていただいたほうが効果的かと思います。
   何かありますか。大体そういうことでやることにしたいと思いますが、よろしいでしょうかね。
   それでは、ちょっと時間が過ぎてしまいましたが、事務局、あと何かあれば言ってください。
【事務局】   あと次回でございますが、今申し上げましたように2月18日でございまして、2時〜4時でございます。よろしくお願いいたします。
【坂田審議官】   一言よろしいですか。
【吉倉主査】   どうぞお願いします。
【坂田審議官】   ちょっと余計なことかもしれませんが、今後の検討すべき事項に関連して、先ほどからご議論があった中に、例えばルールが厳し過ぎて、それでいろいろ支障が出てもいけないということもおっしゃられましたし、その点は確かに考える必要もあると思っておりますが、他方でルールがないために結果的にできないというのは究極の厳しさかもしれないと思います。そういう点でルールなきところに今回のカルタヘナ議定書に対応するということを契機としてルールを入れていくことはやはり考える必要がぜひあるだろうと。それはカルタヘナ議定書に対する対応ですから一種国際的に整合するルールでなければいけないということは明らかだと思うんです。
   ただ、その際にやっぱりこれ白地でルールを考えるわけでもございません、これは当たり前のことでありまして、これまで積み重ねてきた一定のルールというのもありますし、それからルールのないところでの実績というんですかね、研究の実態というんですか、そういうのもきっとあるでしょうから、今後のご議論の中では、やはり文部科学省の委員会でもございますので研究実態というものが反映されるように、きっちりそういう立場からいろいろご意見を賜ることは非常に大事なんじゃないかと思うわけです。
   このルールというのは結局、生物多様性に対する悪い影響が出ちゃいかんとか、環境に対して悪い影響が出ちゃいかんというのが基本的な趣旨ではありますけれども、やはりそのことによってやたらと研究が進まないというのもこれまた大変困ったことになりますので、私どもとしては条約の趣旨をちゃんとまっとうする必要はございますけれども、研究というものが結果として新たなルールができることによってかえってきちんとやれるような体制になるといいますか、そういうことにしていただければ大変ありがたいなと、こういうふうに思いましたので、ちょっと余計なことではございますが感想を一言申し上げたいと思います。
【吉倉主査】   はい、どうもありがとうございます。あと、参考資料1から5まで、これ結構使うかもしれないので、次のときからは机の上に置けるようにしていただくとよいと思います。
【事務局】   では、ファイルにとじさせていただきまして、常に会場にセットしてある状態にしたいと思います。
【吉倉主査】   それでは、どうもきょうはありがとうございました。
(了)

(研究振興局ライフサイエンス課)

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