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生命倫理・安全部会

2001/12/06議事録
第4回疫学的手法を用いた研究の在り方に関する小委員会議事録

   
第5回疫学的手法を用いた研究等の適正な推進の在り方に関する専門委員会
第4回疫学的手法を用いた研究の在り方に関する小委員会
合同会合議事録
   
1. 日時    平成13年12月6日(木)14:00〜16:00
           
2. 場所    厚生労働省省議室(中央合同庁舎5号館9階)
           
3. 議事    (1)地域がん登録事業の扱いについて
           (2)疫学研究に関する倫理指針(案)について
           
4. 出席者    
    (委   員) 高久委員長、石井委員、稲葉委員、大島委員、小幡委員、櫻井委員、 珠玖委員、高津委員、寺田委員、堀部委員、丸山委員、南委員、森崎委員、 安冨委員
    (事務局) 佐蛹生科学課長、中垣研究企画官、菱山生命倫理・安全対策室長   外
           
5. 配布資料    
    資   料   1    地域がん登録の現状と課題について
    資   料   2    「疫学研究に関する倫理指針(案)」とがん登録事業の取扱いについて(案)
    資   料   3    疫学研究に関する倫理指針(案)
    参考資料1    地域がん登録の現状と課題について(参考資料)
    参考資料2    委員から提出された意見
    参考資料3    「疫学研究に関する指針(仮称)素案」に関する意見書(案)
    参考資料4    医学研究からみた個人情報の保護に関する法政の在り方について【日本学術会議第7部報告】
    参考資料5    個人情報保護法案の5つの基本原則と疫学研究に関する倫理指針(案)との関係
    参考資料6    「疫学研究に関する倫理指針(案)」におけるインフォームド・コンセント等の具体的方法について
   
   
    【中垣研究企画官】   傍聴の皆様方にお願い申し上げます。傍聴に当たりましては、既にお配りいたしております注意事項をお守りいただきますようお願い申し上げます。
   定刻になりましたので、ただいまから厚生科学審議会科学技術部会疫学的手法を用いた研究等の適正な推進の在り方に関する専門委員会及び科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会疫学的手法を用いた研究の在り方に関する小委員会、この2つの委員会の合同会合を開催させていただきたいと存じます。
   本日は、位田委員、金澤委員、中尾委員、矢崎委員からご欠席という旨のご連絡をいただいております。その他、稲葉委員、櫻井委員、南委員、田中委員が、いずれにしても着席されておりませんが、おくれて来られるんだろうと考えております。
   まず初めに、会議資料の確認をお願い申し上げます。資料の欠落、乱丁等がございましたら、ご指摘いただきますようお願い申し上げます。
   お手元に議事次第と座席表がございます。議事次第の4番に配付資料というのがございますが、資料1:地域がん登録の現状と課題について、大島委員から提出された資料でございます。資料2:「疫学研究に関する倫理指針(案)」とがん登録事業の取扱いについて(案)というものでございます。資料3は疫学研究に関する倫理指針(案)でございますが、委員の先生方にはあらかじめお配りしたものとの修正を見え消してつくったものを配付させていただいております。次が参考資料1として、地域がん登録の現状と課題について(参考資料)ということで、大島委員から提出されたものでございます。参考資料2は、前回の委員会の後、先生方から提出されたご意見でございます。参考資料3は、疫学会の理事会から提出されました意見書でございます。参考資料4は、日本学術会議から報告されました医学研究からみた個人情報の保護に関する法制の在り方についてというものでございます。参考資料5は、個人情報保護法案の5つの基本原則と疫学研究に関する倫理指針(案)との関係についてまとめたものでございます。参考資料6は、「疫学研究に関する倫理指針(案)」におけるインフォームド・コンセント等の具体的方法について取りまとめたものでございます。
   以上でございますが、よろしゅうございますでしょうか。
   よろしければ高久委員長に議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
    【高久委員長】   最初に、地域がん登録事業の取り扱についての議論をお願いしたいと思います。資料1の地域がん登録の現状と課題について、大島委員からご説明よろしくお願いします。
    【大島委員】   それでは、説明させていただきます。資料1をごらんください。
   地域がん登録の現状と課題についてでございますが、まず地域がん登録の定義でございます。「一定地域に居住する人口集団において発生したすべてのがん患者を把握し、その診断、治療に関する情報、ならびに予後情報を集め、保管、整理、解析すること」でございます。2001年度には全国で、表1に示しましたように、32の道府県・市において地域がん登録事業が行われております。
   図1に地域がん登録における情報の流れを、大阪府がん登録を例にして示しました。右のほうにございますとおり、病院、診療所から、届出票が医師会を通じて大阪府立成人病センター調査部(中央登録室)にまいります。医療機関からの届出はボランタリーベーシスで行われております。届出の漏れをチェックするため、目的外利用の手続を踏んで保健所に保管されている死亡小票を閲覧しまして、がんの記載のあるものを選び出して登録する。こういう流れが左のほうに書いてございます。また、診断後、5年あるいは10年の時点で住民票照会をいたしまして、患者の予後調査をしております。
   これががん登録における情報の流れの典型的な例でございます。
   次のページをごらんください。
   地域がん登録では漏れをできるだけ防ぎ、長期間にわたる経過を知るために、多数の情報源から時期を限らずにデータを収集します。これを同一人物に由来するものか否かを正しく判断し、重複登録による罹患数の過大評価を避けるために、個人識別情報をあわせて収集しております。また、これらのデータを長期間保管し、整理することによりまして、同一人物における複数のがんの発生(多重がん)の分析が可能となります。また、先ほど申しましたが、がん患者の予後調査を行い、生存率を計測するためにも、個人識別情報が必要でございます。
   その次は、地域がん登録の役割でございますが、黒丸印をつけましたように、がんの実態把握、対がん活動の企画と評価、医療機関への情報還元と対がん医療の向上、疫学研究への応用、がん検診の有効性評価と精度管理などがございます。
   まず、実態把握のための指標、がん罹患率でございますが、一定の人口当たりの1年間に新たに診断されたものの率でございまして、このためには特定の地域の人口集団において診断されるがんを漏れなく把握する必要がございます。次のページの上の図2に、大阪府のがん登録によります主要部位のがんの罹患率の推移を示しております。
   もとに戻りまして、次はがん患者の生存率でございますが、通常5年生存率を計算します。地域がん登録による5年生存率の意味でございますが、一部の病院による生存率に比べまして地域全体の患者における生存率でございますので、偏りが少なく、地域全体のがん診療水準の評価の指標となります。次のページの下の図3に、大阪府がん登録によります主要部位のがん患者の5年生存率の推移を示しております。
   またもとに戻りまして、2ページでございますが、今までは大阪府のデータを示しましたが、厚生労働省がん研究助成金による地域がん登録の研究班では、研究班参加の登録室の共同調査としまして、1975年以降のがん罹患数・罹患率の全国値の推計を行いまして公表しております。この結果はJJCO(Japanese Journal of Clinical Oncology)という雑誌に定期的に報告するとともに、研究班の主任研究者の所属しております成人病センター調査部のホームページからデータを入手できるようにしております。
   次に、4ページまで飛んでください。
   国レベルでのがん対策の企画への寄与についてここに示しております。第4次悪性新生物実態調査、第5次悪性新生物実態調査、そのほかがん登録を使っての幾つかの仕事を研究班として作業をして、その結果を報告しておりますが、詳細は省略いたします。
   次は、5ページをごらんください。
   今度は国際共同研究でございますが、WHOの下部機関でございますIARC(International Agency for Research on Cancer)から、5大陸のがん罹患(Cancer Incidence in Five Continents)というデータブックが5年ごとに出されておりますが、これに参加しております。1997年に刊行されました第7巻、これは90年を中心とする5年の罹患データでございますが、宮城、山形、大阪、広島市、長崎、佐賀の6登録の成績が掲載されております。なお、この第7巻には50カ国、150登録室から183の人口集団についてのがん罹患成績が収録されております。
   現在、第8巻、1995年を中心とする5年間の罹患データをIARCでは編集中でございますが、先ほどそれぞれの登録のほうに編集途中の途中経過について連絡がありまして、宮城、大阪、佐賀については国際的な基準に照らしまして登録精度が低い。といいますのは、先ほどの図でも示しましたが、死亡情報と届出と両方からがんの登録はあるわけですけれども、死亡情報のみによる登録が10%を超えているということで、宮城、大阪、佐賀は国際的なレベルで見ますと登録精度が低いということで、これに注意を促す「*」つきという条件付き掲載であるという連絡がございました。今後、登録精度の向上に向けて、有効な手だてを講じていく必要があると考えます。
   しかし、現実には、5ページの下のほうに書いてございますが、個人情報保護をめぐります昨今の動きの中で、登録事業の支障が幾つかの県で出ております。6ページの上のほうですが、その具体的な事例としては、プライバシー保護を理由としての医療機関側の届出に対する非協力・躊躇ですとか、あるいは自治体の個人情報保護条例を理由にした自治体病院からの採録制約、あるいは届出への非協力というものがございます。
   このような問題を解決していくためには、地域がん登録事業に届出の義務規定などを含みます法的な根拠を与えることが必要ではないかと考えております。
   なお、現行のがん登録は本人の同意を得ないで行っておるわけでございますが、その代替案として、(1)の本人の同意を得て収集し利用する方法、あるいは(2)に書きましたように、opt out optionと申しまして、地域がん登録の仕組みを周知し、登録の拒否を申し出た者については登録しない方法というのが考えられますが、いずれも登録されたデータに偏りが生じまして、がんの罹患率あるいはがん患者の生存率は不完全なものになってしまうということでございます。
   7ページの6のところに欧米諸国での個人情報保護と地域がん登録について書いておりますが、きょうは時間の関係で詳細は省略いたします。
   一番最後8ページでございますが、今の日本のがん登録の現状を見て、今後あるべき方向というのを7のところに書いております。本日の会合は疫学研究指針を作成することが主要な目的であり、この指針を地域がん登録事業にどのように適用するかを検討することが主でございますけれども、地域がん登録事業に関係するものとして、先ほど言いましたような現状を顧みますと、我が国において国として欧米先進国と同じように地域がん登録の法的な整備を含む整備をぜひ進めていただきたいと考える次第でございます。その内容についてはここに書いてあるとおりですので、時間の関係で省略させていただきます。
   私が今説明したところに幾つか参考資料を書いておりますが、それは参考資料1としてつけてございますので、また見ていただければ幸いでございます。
   以上でございます。
    【高久委員長】   どうもありがとうございました。今の大島委員のご説明に質問あるいはご意見おありでしょうか。
   死亡情報のみによる登録が10%以上というのは、10%以上の市町村での登録がそうなっているということですか。
    【大島委員】   いやいや。10%というのは、届出がなくて、死亡情報でしか登録できなかったものの割合ということで、届出の漏れがかなりあるんだという指標になります。日本では25%ぐらい以下であればまずまずということで今日まで来たんですが、国際的な水準はこの数値はどんどん低くなりまして、第8巻におきましては、10%を超えていると「*」つきで、ここの登録の数字は精度が悪いから注意して見なさいということになっております。
    【高久委員長】   わかりました。ほかにどなたか。どうぞ。
    【堀部委員】   大島先生からは地域がん登録についてはこれまでにもお話を伺っていますが、きょうのペーパーの中で8ページの7にあります法的整備、これは今の法案でいきますと、11条の3項をもとにするということになるかと思うのですが、このあたりはかなり具体的に議論を進めていこうという状況にがん登録の関係者はなってきているんでしょうか。
    【大島委員】   8ページの上の2行目ぐらいに書いてございますが、EU指令を受けまして、欧州がん登録ネットワークという、ヨーロッパのがん登録の共同の集まりがございます。そこで現在、地域がん登録の法的整備の勧告を含めましたガイドラインを作成中でございまして、これをヨーロッパだけでなくて、アジアも含めて、国際がん登録協議会というIACR(International Association of Cancer Registries)というのがございますが、そこのガイドラインにもして、それを世界のがん登録関係者に示そうという動きに今なっております。
   ですから、それを受けて日本でも、がん登録というのががん対策を進めていく上で必須なものであるという認識であれば、そういう法的な整備も含めて整備を行っていくべきだということが勧告されるという、そういう状況です。
    【堀部委員】   勧告されることになりそうなのですか。その場合に、実は前から個人情報保護検討部会、個人情報保護法制化専門委員会で先生のご意見を伺って、今の時点では法的整備までするかどうか、するようなご意見もあったかと思いますけれども、それがきょう伺ってかなり具体化してきているように思えますが、いかがでしょうか。もちろん外国との関係もあろうかと思いますけど。そうすると、かなり日本国内でもそういう議論が熟してきているということなのでしょうか。
    【大島委員】   それにつきましては、議論としましては、参考資料1に示しましたような形で、幾つかがん登録の関係者以外のところでも、地域がん登録についてきちんと法として定めるべきではないだろうかという意見が出ております。地域がん登録を法的に整備しようということになりますと、厚生労働省が中心になってつくっていただかなければなりませんので、その辺を7番のところで私はお願いしておりまして、これからのことでございます。
    【堀部委員】   日本の個人情報保護の全体のデザインを描いてきた立場からしますと、そういう個別の領域で法的整備を図っていくというのは大変重要な意味を持っているかと思います。法案のほうがご承知のような状況なものですから、こういう具体的な問題で議論になるというのは、全体のレベルアップという点からすると、大変いいことではないかという印象を持ちました。
    【大島委員】   ありがとうございます。
    【高久委員長】   どうもありがとうございました。
   それでは、次に進まさせていただきます。資料2ですが、「疫学研究に関する倫理指針(案)」とがん登録事業の取扱いについて(案)。これは事務局のほうから説明をよろしくお願いします。
    【原口課長補佐】   これは事務局からの提案になる資料でございます。今までの指針(案)を検討いただきます際に、がん登録事業の取り扱いについては一般原則の後で議論するという整理をさせていただいてきました。一般の基本原則について指針の議論がずっと進んでまいりましたので、ここでこの倫理指針とがん登録事業の関係をどうするかという形でご議論をお願いしたいということで、提案の形で整理しているものでございます。
   1点目が趣旨でございまして、がん登録事業の取り扱いについては、本指針には位置づけないが、実施主体での運用に資するよう、専門委員会で基本的考え方を以下のとおり整理して公表することとする。
   その考え方を小さな字で書いてございます。
   がん登録事業は、都道府県が実施主体となって、管内の医療機関とともに全県的に実施するもの。がん登録事業が計測するがん罹患数・率やがん患者の生存率は、がんの実態把握や対策に必須の指標である。また、地域がん登録資料は、がんの予防のための疫学研究に有用である。
   本指針は、一般的な規範を定め、研究機関がみずから指針に基づき研究計画の適否を判断するという仕組みになっております。このため、がん登録事業の場合を特出ししまして、あるべきインフォームド・コンセントの方法等を示すことは適当ではないだろうということで、上にありますように、本指針に特出しして位置づけるということはしないということでございます。
   しかし、指針の策定に当たり大きな論点となったことから、実施主体での運用に資するよう、専門委員会で以下のとおり整理し、公表してはどうかということで提案をさせていただいております。
   2以下は、整理し、公表してはどうかという内容でございます。
   がん登録事業は、医療機関からデータを収集して整理するという保健事業であるが、分析して仮説を立て、検証する段階を含む場合もある。分析して仮説を立て、検証する段階を含むがん登録事業には、本倫理指針が適用されることとなる。
   まず1つ目ですが、がん登録事業は医療機関からデータを収集して整理するという保健事業でございまして、データを収集し整理するというだけであれば研究に該当しないということは、この倫理指針の適用がないということになろうと考えます。
   しかし、得られたデータを分析して仮説を立て、検証する段階までを一体として実施する場合もある。こういう場合がむしろ多いかもしれないということでございまして、こうしたがん登録事業は研究に該当すると考えなければいけないと思われます。そうしますと、本人に指針が適用されることになるということでございます。
   なお、前者については本指針は適用されないわけですが、個人情報保護等の要請は同じでありますので、前者についても事業主体の判断で本指針を準用することが望ましいということになるのではないかというのが1点目でございます。
   次のページにまいりまして2点目でございます。
   がん登録事業の計画の審査については、実施主体である地方公共団体が定める審議会等が行うことが考えられる。
   このようにしております趣旨ですが、がん登録事業は都道府県が実施主体となって、管内の医療機関とともに全県的に実施するものでございますので、一般の研究とは規模や性格をやや異にするところがある。そこで本指針を適用、準用します場合に、計画の意見を聞くべき組織はどんな組織であるべきかという論点があろうということでございます。
   現状でございますが、現在、がん登録事業の計画については、個人情報保護条例に基づく審議会で、これは個人情報保護の要請からですが、審査して承認を得て、実施される。こういう例が見受けられるようでございます。
   そこで、本指針に基づき計画について意見を聞く組織につきましては、実施主体である都道府県の判断によるわけですが、新たな組織を設けていただいたり、あるいは既存の審議会、例えば個人情報保護ですとか健康福祉を担当する審議会といったものを活用し、倫理審査委員会の要件を充足する部会を設けて審査を行うということなどが考えらるのではないかということでございます。
   次の点でございますが、本指針が適用または準用される場合、がん登録事業におけるインフォームド・コンセント等の扱いは、指針の原則に従えばおおむね(2)2アに該当するが、この(2)2アとございますのは、インフォームド・コンセント等について情報公開を行い、拒否できるものとするというものでございます。これに該当すると考えられますが、計画の審査に当たる審議会等の判断で緩和、免除または代替することがあり得るというふうに考えられるだろうということでございます。
   その趣旨でございますが、がん登録事業は患者の受療情報が医療機関から実施主体に提供されまして、実施主体またはその委託を受けた者が集計等を行う仕組みであるということでございますので、基本的に診療の際の医療情報を資料としており、研究のために特に資料を採取するものではないということでございます。
   したがって、指針の原則に従いますと、おおむね(2)2アに該当すると考えられるということでございます。
   ただし、がん登録事業には次のような特色がございまして、そこで実施主体が倫理指針の(2)2アに定める、ここはそのまま今引用しておりますが、「情報公開をし、かつ研究対象者となることを拒否できるものとする」という取り扱いを行うことができないと判断する場合には、計画を審査する審議会等の承認を得て、本指針6ただし書きに基づいて、インフォームド・コンセント等の方法を緩和または代替することができると考えられるのではないかということでございます。
   その特色でございますけれども、1つ目にはがん登録事業の必要性ということでございまして、がん登録事業が計測するがん罹患数・率とがん患者の生存率は、がんの実態把握、がん対策の評価・モニタリングのために必須の指標であり、地域がん登録資料はがんの予防のための疫学研究に有用ということでございます。
   2点目は、公衆衛生上有意義な成果を得るために、全数調査を目標としているということでございまして、この点、現在の日本では、国際的に比較すると死亡以外で把握できる率が大変低い状態にあって、これをいかに上げるかが課題になっているというご指摘があったところでございます。
   3点目でございますが、重複登録を避けるための照合作業を行うため、また長期にわたり患者の予後を調査するため、匿名化できないということでございます。
   次のページ、4点目でございますが、多数の患者を対象とし、しかも事業の過程を通じて実施主体自身が事業の対象者に接する機会がないため、個別に同意を受けることが困難であるという事業の仕組み上の問題がある。
   5点目でございますが、がん告知を行っていない等の場合には、事業について説明できない。こういう場合もあるということであります。
   6点目でございますが、適切な情報保護が行われる限り、事業の対象者に不利益を与えることはないと考えられるということでございます。
   最後の点でございますが、なお脳卒中等の疾病登録事業についても、2から4までに準じて取り扱われるものである。ここはがん登録事業について整理をいたしましたが、その他の疾病登録事業が行われます場合も、同じ考え方で整理がされることになるということでございます。
   要点としましては、4にありますことが一番重要かと思いますけれども、こうしたがん登録事業などとこの指針との関係についての考え方を整理して、公開させていただいたらどうかということでございます。
    【高久委員長】   どうもありがとうございました。今の説明について何かご意見ありますか。
   2ページ目の一番上にがん登録事業の計画の審査についてはとありますが、計画の審査というのは1ページの2のほうの場合ですね。そうですか。1ページの2番目の「分析して仮説を立て、検証する段階を含むがん登録事業には本倫理指針が適用されることとなる」という、そのときの計画の審査は公共団体が定める審議会等が行うと。そういうことですね。
    【原口課長補佐】   その点に関しましては、まず2ページ目の3の下の1つ目の丸の3行目に、「本指針が適用又は準用される場合に、計画の意見を聞くべき」としているとおり、適用の場合と準用の場合と。それは前のページでご指摘のとおりでございます。
    【大島委員】   今、説明していただいたこの(案)については、私も途中見せていただいてはおるんですが、2点ございます。
   1点目は言葉遣いなんですけれども、1ページの1の2番目の丸の3行目のところですが、「がん登録事業の場合を特出しして」という、今まであまり気がつかなかったんですが、今、聞いてみますと、「特出し」という言葉は業界の専門用語かしらと思いまして、一般的にこういう言葉は使うのか。がん登録に限定してとか、がん登録を特定してということかなと今思いましたが、それが1点目でございます。
   2点目は、2ページの4番の2番目の丸の下から2行目、「インフォームド・コンセント等の方法を緩和又は代替」になっていますが、一番上のもとの4番の4行目は「緩和、免除又は代替」になっておりますので、免除が抜けているのではないかと思いますので、両方あわせていただきたいということでございます。よろしくお願いします。
    【小幡委員】   ちょっとお伺いしたいんですが、がん登録事業は今法律上届出が義務づけられてないということですが、そうすると都道府県がそれぞれ独自にやっている。法律的にぎりぎり言うと、例えば資料提出要求みたいな形に対して、まとめているのはどこかに上がっているわけですね、最終的には。それは厚生労働省がまとめていらっしゃるというわけではないんでしょうか。そうすると、国が今はかかわっていないで、自治体がやっているという状況ですか。
    【大島委員】   ええ。
    【小幡委員】   そうすると、多分、私がかかわっている神奈川県でも出てきているのだろうと思うのですが、個人情報保護条例を持っているところは収集作業がございますので、そういった形でまず審議会を通していると思います。分析して仮説を立て、検証する段階を含むがん登録事業がこの倫理指針の問題になると思いますが、それをやっている主体は国でもなく、さっきおっしゃった研究者の団体という理解でよろしいですか。
    【大島委員】   それでは、お答えしますが、今、神奈川県の話が出ましたが、神奈川県も大阪府もそれぞれ府県の個人情報保護条例を持っておりまして、この事業自身については承認を得て継続しております。
   そして、がんの罹患率とかがん患者の生存率というのを年報に出す、そういうルーティンワークとしての作業は、最初の私の資料の中央登録室、例えば大阪ですと大阪府立成人病センター調査部、神奈川県ですと、神奈川県立がんセンターでそういう年報を出しておるわけです。
   もう1つのがん登録資料を使って疫学的な研究をするという場合には、大阪の場合ですと、がん登録資料を利用する部会を大阪府立成人病センターの倫理審査委員会に設けまして、そこにかけて承認が出れば使えるという形をとっております。
    【高久委員長】   そうすると、そのときには大阪府ではなくて、今の大島先生のお話ですと、地方公共団体が定める審議会等の中に含まれるわけですね。大阪府立成人病センターの中の倫理審査委員会というのはそうなりますね。大阪府立成人病センターが研究の主体になるわけですか。
    【大島委員】   成人病センターの研究者が使うときもありますし、それ以外の研究者が使う場合もございます。
    【高久委員長】   それ以外のときにはどこに審査を依頼するのでしょう。
    【大島委員】   基本的には研究そのものは、研究者の所属する施設の倫理審査委員会をクリアした上で大阪府がん登録資料を利用するという点で、中央登録室のある大阪府立成人病センターの倫理審査委員会のがん登録資料を利用検討部会もクリアする。こういう形になると思います。
    【高久委員長】   ケース・バイ・ケースですね。
    【小幡委員】   ですから、がん登録事業という言い方がどこまで含まれるかということが多少不明確ですが、データを収集・整理するというのが都道府県でやっている事業としてある。それを利用させるところで多分チェックがかかるはずなんですね、医療機関。大阪府立であればそれは大阪府がカバーできますけれども、私立の普通の医療機関であったり大学であったりという場合は、そこにデータを提供するときにおそらく審議会でチェックしているということですね。
    【大島委員】   今の話は、まさに疫学研究に関する倫理指針が今できようとしています。それができた段階にはすべてそうなるんじゃないかということで、現在の状況は、それぞれの施設で疫学研究について倫理審査委員会をクリアしているかどうかについては私はわかりませんが、がん登録資料を利用する場合には、中央登録室の倫理審査委員会のがん登録資料利用検討部会をクリアしている。これは現在でもしております。
    【高久委員長】   ですから、むしろ2のほうはがん登録事業と言わないほうが良いのではないかと思います。がん登録事業を利用する場合ということで、それは事業ではないというふうにしたほうがクリアではないのかな。要するに分析して仮説を立て、検証する段階までがん登録事業に含めるのか。がん登録事業というのは事業としてやって、その結果を分析し、仮説あるいは検証する段階では本倫理指針が適用されるとしたほうがすっきりはするのですが、だめなのですか。
    【中垣研究企画官】   頭の中では確かにそのとおりだと思います。問題は、がん登録事業という言葉は流布している言葉だと思いますので、大島先生とか、そういう携わっている方の中に混乱を招かないのかどうかだけが心配です。
    【高久委員長】   わかりました。
    【大島委員】   実態としては、ここに書いてありますように、私どもは一体としてやっている部分がありますので、それを一々、これはルーティンワークをしているか、研究をやっているのかと分けるのがやや困難な場合もございます。
    【高久委員長】   精神としてはそうですね。わかりました。
    【森崎委員】   今の分けるという考え方は非常にいいとは思うんですけれども、登録事業を活用して研究をするということは、登録がなければもちろんできない話でございまして、となると登録をすること自体は研究ではない、ただ単に収集をするという理解でよろしいとは思いますが、その時点でよろしいということで、一番問題は、そこで個人識別情報がないときちんと登録できないということが指摘されたところです。
   となりますと、研究を目的とするかしないかということは、その時点では当然わからないということになって、切り分けると非常にわかりやすいんですけれども、次に研究段階、あるいはそれを仮説を立て検証するという段階になったときに、最初の時点では集めるだけだから、よろしいというふうに切り離すことがほんとうにできるのか。あるいは実際に個人情報はそこからついていかないんだから、仮説を検証するといったことも例外になるのかどうかというところが一番の問題ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
    【高久委員長】   そういうことになったと思うのです。今の中垣さんのご議論と大島委員のご議論でそこのところはクリアに区別できない点があるから、こういう表現でやむを得ないということになったと私は理解しています。ですから、森崎委員のおっしゃったとおりだと思います。
    【寺田委員】   そうしますと、結論といたしましては、資料2の1の文章、「本指針には位置付けない」じゃなくて、位置づけるんですよね、結局すべて。2のほうがすべてここに入るのであれば、1のほうもここに全部入るんじゃないですか。
    【高久委員長】   基本的には位置づけないけれども、「分析して仮説を立て、検証をする段階を含むがん登録事業には適用」と書いている。
    【寺田委員】   それじゃ、もう1つ伺いますが、そういうことを分析して仮説を立て、検証する段階を含まないがん登録ってあるんですか。
    【大島委員】   含まない場合はまずないんじゃないかと思います。がん登録の発展段階で精度があまり高くない場合には、利用はできないという段階がございますが、所期の目的の登録精度まで達したら、それは疫学研究にも使うという目的ががん登録事業にはあると考えております。
    【高久委員長】   せっかくここでは含まないとなっているのですから、何かうまく整理できないですかね。
    【小幡委員】   ただ、主体は違うわけですよね。データを集めるところが都道府県になっているのです。公衆衛生に役立てるためにデータを集めるというのは当然目的利用ですから、入っていると思いますが、疫学研究のみに使うかどうかというのもまたちょっとわからないわけですね。ですから、主体が違って、データとして集めて収集しているところは都道府県である。それからの利用という、一体的になっているというところもおありだというのはわかりますが、全部イコールではないのかなと思うのです。
    【高久委員長】   そうですね。ですから、これは分けたほうがいいのではないかな、事業と。
    【寺田委員】   そういう解釈のもとで分けられるんだと、それでもいいと思いますが、その場合は議事録に残るような形でして頂ければと思います。
    【櫻井委員】   僕も基本的にこれは分けおいたほうがすっきりするような気がします。近いところでいけば、1ページの2の文章の「分析して仮説を立て、検証する段階を含むがん登録事業」と言うからいけないので、がん登録事業が分析して仮説を立てて、検証する段階に進む場合には本倫理指針が適用されるのではないでしょうか。そういう意味ですよね。「含むがん登録事業」としてしまうからまたもとへ戻っちゃうので、がん登録事業において分析し仮説を立てて、検証する段階においては本倫理指針が適用される。そういうことなので、そこまでは適用されないという意味なんじゃないですか。そうしておけばこのままでいける。集めるところまでは保健事業でいいと。その段階で本倫理指針が適用されるという段階論の問題なんじゃないかなと考えます。
   だから、ここを「含むがん登録事業」と言わないで、がん登録事業が分析、仮説を立てて、検証する段階においては本倫理指針が適用されると言えば、後は全部直さないで済むような気がします。どうですか。
    【高久委員長】   そうなのですね。ですから、私も結果の利用というのと同じような考えだと思うのですが、一応頭の中でそう区別をしておかないと、大島先生、困るのではないですかね。
    【大島委員】   ですから、先ほど申しましたように、がん登録資料の活用といった場合に、例えばあるコホートスタディでがんの罹患をエンドポイントとして見る、がん登録と照合したい。こういうがん登録資料の利用の仕方におきましては、当然、その研究は今つくられようとしている疫学研究の倫理指針に基づいて、それぞれの施設の倫理指針審査委員会にかけられるというふうに私は理解しております。
   ここの「分析して仮説を立て、検証する」というのがそういうことを意味するのであれば、櫻井先生がおっしゃったように、それは別にまたそれぞれの倫理審査委員会にかけるんだということであるかと思います。
    【高久委員長】   だから、地方自治体が行う事業が基本的にはがん登録事業であって、これは研究ではないと整理せざるを得ないですね。よろしいでしょうか。
    【堀部委員】   その辺どうですかね。研究でないかどうかというのは、地方公共団体のほうで言えば、先ほど小幡委員が言いましたように、それぞれ審議会等があり、また個人情報一般について議論していきますから、例えば神奈川県でも神奈川県立病院が持っているデータをがん登録センターに提供するのを審議会としてどう考えるのか、承認するかしないかという話になってくるわけです。
   前から伺っているところでは、先ほども幾つかのところで、むしろ提供すべきではないという意見の審議会もあるわけで、今、都道府県で今年の4月現在、31団体で条例を制定しています。
    【高久委員長】   ただ、先生、審議会で決めるというのは、この指針に合うかどうかというのが研究の場合ということであって、がん登録事業に協力するかしないかということは各自治体の決めることでですね。ですから、指針の適用の話を今している。
    【堀部委員】   ですから、その指針の適用は条例とはまた別なので、そこを区別して考えていかないとならないですね。
    【高久委員長】   そうだと思います、当然
    【堀部委員】   ほかの疫学研究の場合、がん登録のような形で全件登録という要請がおそらくないので、今のところ自治体の側からすれば、ほかの疫学研究に対して、神奈川県でも県立病院のデータをどうするかということについては、具体的にはかかってきてないですね、今、正確には記憶していないのですが、県の審議会としては非常に重要な問題になっきます。
    【大島委員】   今、堀部先生がおっしゃった、現段階で府県とか市町村が個人情報保護条例を持っているわけですけれども、それはかなり幅があって、ばらばらなところがあります。ですから、国レベルで個人情報保護法案が晴れて法となれば、それなら自治体の条例も整理されていくのではないか。
   その場合、第三者提供につきましては、先生ご承知のように、公衆衛生の向上のため特に必要がある場合という適用除外の文章ががん登録にも適用されるという形で、今の段階では自治体の条例に縛られて、自治体の病院ががん登録に協力できないというところがありますけれども、個人情報保護法が成立した段階ではその辺はもう少し整理されるようになっていくんじゃないかと私は考えております。
    【高久委員長】   先に進みたいのですけれどもが、きょうはもう1つ重要なことがありますので、これで議論していたら2時間も3時間もかかってしまいますので、がん登録事業については事務局と大島先生とよく話をしてもう少し整理して、もう1回出していただけますか。できればきょうは資料3の疫学研究に関する倫理指針(案)について、ご議論を主にしていただきたいと思います。
   資料3について事務局のほうから説明していただけますか。
    【原口課長補佐】   それでは、資料3のほうをご説明させていただきます。
   委員の方には事前送付したものからの変更のものを別に1枚だけお配りしておりまして、これは内容そのものを必ずしも変えたものではございませんけれども、書きぶりといたしまして、単にこの指針の形式を示すような感じがあった文章を、どのように研究者に対して期待されるかという文章に変えるという趣旨で少々変えさせていただいております。
   ご説明は、資料3のほうの変えました後の資料でご説明をさせていただきます。
   まず、題名に関してでございますが、題名の倫理のところに下線がございますとおり、ここのところは先般の議論を踏まえまして、倫理という言葉を追加させていただいております。
   1ページ目の前文に関しまして新たに前文を加えるべきというご意見がございましたことを受けて、このように(案)をつくらせていただいております。なお、丸を段落ごとにつけておりますが、これは指針として策定されるときにはとるものだというふうに思っております。
   初めのところで疫学研究の性格や重要性といったことについて書いてございまして、3つ目の段落では、指針が必要になった背景について、疫学研究自体に問題が生じて、それでということではなくて、むしろ対象者の権利と研究の必要性のバランスをとる必要が必要が出てきた。社会の成熟といったようなご指摘もありましたが、そうしたことに伴って指針を策定する必要が出てきたという趣旨のことをまとめさせていただいております。
   4つ目の段落では、指針を策定するに当たって背景となった考え方ということで、ヘルシンキ宣言とか個人情報保護法制にかかわる論議などを示しているところでございます。事前に配付させていただいてお配りさせていただいた上でございますので、この前文を朗読するようなことは避けさせていただきまして、先をご説明させていただきます。
   2ページ目でございますけれども、2ページ目で変更がありますのは、まず1つ目には2の本指針の適用範囲の3のところでございます。ここは前回は123という形で列挙しおらず、文章としてつなげておりましたけれども、修文によって長くなりましたので、列挙の形にいたしております。
   3の下線部について新たに追加をさせていただいております。前回の審議の際に、患者の診療を直接の目的として行われるような疫学研究であれば、これについては適用除外とする必要があるのではないかというご指摘があったことを踏まえまして、「その他特定の研究対象者の疾病の予防又は治療を直接の目的とする疫学研究」を除外に追加させていただいております。
   次に、細則の2といたしまして、適用対象になるもの、適用対象にならないものにつきましての整理をさせていただいております。ここのところはご専門の立場から正確な、あるいは特に問題になるものが別途あるということであれば、ご意見をいただければと思っている部分でございます。
   1つ目には、診療と研究との境界ということでございます。
   左側の指針の対象となるものの1つ目には、特定の患者の治療を前提とせずに、ある疾病の治療方法等を検討するための行為というものを掲げております。これに対して右側には、特定の患者の疾病について治療方法を検討するため、当該疾病を有する患者のカルテ等診療情報を調べる行為と。これを踏まえ、当該患者の治療が行われるということで、特定の患者の治療を前提としているのか。そうでなくて、特定の患者の治療を前提とせずに行われる行為かということが基本的なメルクマールであろうと思っております。
   指針の対象となるものの2つ目には、ある疾病の患者数等を検討するめに複数の医療機関に依頼し、診療情報を収集・集計したり、解析して新たな知見を得たり、治療法等を調べるといったもの、典型的な研究ではないかと思いますが、そういうものを例示しております。
   なお書きのところに書いておりますけれども、既存資料や既存資料から抽出加工した資料の提供、単なる集計のみというものは研究に該当しない。これに関しましては、研究ということでありませんが、この本指針(案)の10のところで資料を第三者提供する場合の規定があるわけでございまして、そこについては適用があるということでございます。また、指針の対象、右側の欄の※印のところには、特定の患者の疾病について治療法を検討するということを行った場合でありましても、得られた健康に関する事象の頻度、分布、これに影響する要因についての結論をまた別途、治療から離れて論文化するということがあわせて行われる場合には、その限りでこれは研究に該当することになるんだろうというふうに整理をさせていただいております。
   3ページ目でございますけれども、医薬品と食品の関係ということでございます。
   指針の対象になるものとしまして、被験者(患者または健常者)を2群に分け、一方の群には特定の食品、健康食品などでございますが、これを摂取し、他の群は通常の食事をとるということをして、当該食品の健康に与える影響を調べる行為というものは疫学研究に該当するであろう。これに対しまして、食品ではなくて、医薬品を投与するということを行った場合については、これは医療的介入を伴う研究ということで、知見等でございますが、これは適用対象にしないという整理になっているということでございます。
   連結不可能匿名化されているデータを用いる研究の例ということを次に書いてございますが、例えば患者調査と国民栄養調査を組み合わせて、年齢階層別の生活習慣病の発生率とカロリー摂取量を調べるという研究を行う場合には、典型的に連結不可能匿名化されているデータだけを用いた研究になるだろうということでございます。
   それから、地域保健でございますけれども、適用対象になるものとしまして、住民の健診データまたは生体試料を用いて行う特定の疾病の予防・治療法等についての研究ということでございまして、これが適用にならない場合としましては、地域保健の本来の目的として使われる個別指導の場合とか、当該地域の住民の健康状態についての地域診断を行うということにとどまる場合には、これは適用されないことになるであろうということでございます。
   産業保健の場合でございますけれども、適用される場合といたしまして、地域別に特殊健康診断により得られた個人の健診結果を収集し、職業性疾病の地域特性、地域分布の状況などを調査する研究ということであります。これに対して適用されないものといたしまして、既に地域別に集計されている職業性疾病発生状況を入手して、これに基づいて職業性疾病の地域分布の状況を調査する場合には、これは適用対象にならないということでございます。
   学校保健のほうでございます。ここも一部記述を誤っていたのを事前送付しておりましたのを訂正いたしておりますが、学校医の業務の範囲を超えて、疾病ごとの患者数や地域分布について調べるものが指針の適用対象になる。それに対して対象にならない本来の学校保健の業務としましては、学校医の業務として、疾病ごとの患者数、その動向について調べて、その結果を学校など、などとありますのは、例えば学校保健の範疇としては、PTAの方々にお知らせして注意喚起するというところまでは学校保健の保健事業に含まれることになりますので、そうした限りで報告して活用されるということであれば、これは本来の業務になるということでございます。
   こうしたことでひとつ整理をさせていただいております。
   それから、次の変更点でございますが、5ページをごらんいただきたいと思います。
   5ページの上のほうに細則を追加してございます。ここのところは、倫理審査委員会に関しまして、特定の研究に関して複数の共同研究機関が倫理審査委員会を置くようなことも考えられるのではないか、そうしたことも可能だということを明記したほうがよいと前回の議論でご指摘がございましたので、1つにはここに記載させていただいております。
   ここの上の文中のただし書きで規定する倫理審査委員会、これは研究機関が小規模である等により設置できない場合に、共同研究機関、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会でございますが、この倫理審査委員会については複数の共同研究機関の長が共同して設置する倫理審査委員会が含まれるということで、そのような設置ができることを明確にしています。こちらはただし書きの文章の性格上、単独で倫理審査委員会を設置していない研究機関が共同で置く場合がここに規定されているという形になります。そのほかの場合については、後ろにまた別途規定をさせていただいております。
   次に、その下(3)の細則の部分でございますが、ここのところは文言の整理をさせていただいただけでございます。
   6ページでございますが、6ページの1行目の「倫理的観点及び科学的観点から」というところは、倫理的観点と科学的観点の順を入れかえさせていただいております。前文を書くに当たりまして、倫理的観点を先に立てるべきと考えましたので、そろえたものでございます。
   それから、中ほど(2)の3の本文のところで文言整理をしましたところ、下線が引かれております。
   3の細則について、もう1つここに共同設置の倫理審査委員会について追加をさせていただいております。ここは既に倫理審査委員会を置いている研究機関がさらに別途共同で倫理審査委員会を置かれる場合についてでございます。細則の書き方は一緒でございますけれども、ここに規定いたしました場合には、3の文章をごらんいただきますと、「倫理審査委員会は、研究機関の長が、学会等に設置された他の倫理審査委員会に付議できる旨を定めることができる」。このようにしているわけでございまして、既に倫理審査委員会を置いている場合に、別途共同で倫理審査委員会を置くことについては、既に置かれた倫理審査委員会の了解をとってやっていただく必要があるだろうと。つまり研究機関の長が、既にある倫理審査委員会に諮られて、なかなかそこと意見が合わない場合に、その研究について別途倫理審査委員会を置くということがみだりにあってはいけないだろうということで、この場所に規定するのが適当だろうと考えております。
   4でございますが、4の2行目に「その他迅速審査に係る規定」という言葉を追加させていただいております。ここのところは、疫学会からいただきましたご意見の中で、倫理審査委員会に付議して認められなかった等の場合に、不服を申し立てる道を考える必要はないかというご指摘がございました。そうしたことについては、倫理審査委員会がそういう手続を定めるかどうかご判断いただけばいいだろうと考えられますので、そうしたことを含めてご判断いただけるということを明確にするために、迅速審査に係る規定を定めることができるという形をとっております。
   4の後段でございます。「迅速審査の結果については、その審査を行った委員以外のすべての委員に報告されなければならない」。これは前回の議論を踏まえて追加をさせていただいたところでございます。
   次に、細則の3を追加させていただいております。これも前回の議論の際に、迅速審査の対象になる範囲の例示としまして、研究対象者に対して最小限の危険を超える危険を含まない、そういったものを例示として追加すべきというご意見がありまして、これを追加させていただきました。
   次に、7ページをごらんいただきたいと思います。
   7ページの下に下線を引いた部分がございます。「インフォームド・コンセントを受ける手続を緩和し若しくは免除し、又は他の適切なインフォームド・コンセント等の方法を選択する」と言っておりまして、ここは文言整理のためご指摘を踏まえて追加をしたところでございます。
   以下、8ページからインフォームド・コンセント等の方法について具体的に分けてございますが、この原案におきましては、(1)(2)で大きく、人体から採取された資料を用いるかどうかでまず2つに分けて、以下区分しておりますけれども、この点につきまして、疫学会のほうからの、疫学研究に関しては、まずは大きく介入研究と観察研究に分けられるのだから、まずは介入研究と観察研究に大別した上で、以下分けていくべきではないかというご指摘がございました。
   そこで、そのような分け方をする場合にはどうなるかということで、別案を14ページからおつけしております。内容的には同じものをそのように整理の仕方を変えておりまして、まずは(1)の介入研究、(2)の観察研究に分けた上で、それぞれ人体から採取された資料を用いる場合、用いない場合と分けていくというやり方をとりました。
   内容的には同一でございますが、実はこの指針の中でのインフォームド・コンセント等の方法に関しましては、人体から採取された資料を用いるかどうかということが大きな要素であろうということで、人体から採取された資料を用いる場合で、中でも侵襲性を有する場合は特に厳重な手続で行おうという考えでつくっております関係上、8ページのところの原案以下は細かく6つに分けて記述しておるわけですが、14ページからの部分につきましては8つに分けなければいけなくなっておるということがございます。事務局としては両案用意させていただきましたが、原案としては、細かく分けた区分が少なくて済むほうを本文に入れさせていただいております。
   それから、最後になりますが、11ページをごらんいただきたいと思います。
   11ページには介入研究の定義の部分がございまして、11ページの(2)介入研究の定義の部分でございますけれども、下線部、「その他の健康に影響を与えると考えられる作為又は不作為」というものを追加させていただいております。これも前回の議論でございまして、定義の中で治療方法、予防方法の割り付けを行うというふうに書いてあるけれども、治療や予防を目的とするものが適用除外になっているのを見ると、介入研究の定義としてこれは十分書き切れてないんじゃないだろうかというご指摘等がございまして、ここは治療、予防その他健康に影響を与えると考えられる、そのほかの行為、あるいは不作為が行われ得るものと考えられますので、そのようにここは記述を直させていただきました。
   以上、変更した点をご説明させていただきました。
    【高久委員長】   どうもありがとうございました。今の案につきまして、順次ご討論いただきたいと思います。
   最初の前文について、訂正すべき点、その他ご意見がおありでしたら。これは一般論でして、今までにご意見があった点を事務局のほうでまとめたことになりますが、どうぞ。
    【丸山委員】   前文の2つ目の丸ですけれども、疫学研究では多数の患者などとなっているんですが、この指針では医療については中心的な対象としないということですから、多数の患者などというのは要らないんじゃないか。
    【高久委員長】   多数の人ですか。
    【丸山委員】   そうですね。患者でなくて人。だけど、人とするとちょっとごろが悪いので、そこはちょっとお考えいただきたいと思うんですが。
    【高久委員長】   患者だと、確かに丸山委員がおっしゃったように言葉を考えていただけますか。
   ほかにどなたか。
    【丸山委員】   3つ目の丸ですけれども、第2パラグラフ、「そこで、研究対象者の尊厳と人権を守るとともに、研究者がこれに従い研究を進めることにより円滑に研究を進めることができるよう」と。「研究を進めることにより、研究を進めることができるよう」というのが重なっているので、あるいは「これに従い研究を進めることにより」というのをとったほうがいいんじゃないか。
    【高久委員長】   そうですね。「研究者がより円滑に研究を進めることができるよう」で良いのではないですか。確かにちょっとくどいですね。おっしゃるとおりです。 ほかにどなたか。
    【櫻井委員】   細かいことなんですが、4つ目の丸の3行目の「また」という接続詞が、ちょっと読んでいて気になる。「また」というのはどういうときに使うのかよくわかりませんけれども、「また」じゃないんじゃないかなと思います。むしろ「しかし」とかではないでしょうか。5つ目の2行目のは確かに「また」なんです。「また、同時に」というのはわかるんですけど。
    【高久委員長】   わかりました。ほかによろしいでしょうか。
    【寺田委員】   これも細かいことなんですけれども、一番下の5番目の丸ですね。そこで、「健康の増進」とございますが、これは「健康の維持増進」が入る。
    【高久委員長】   そうですね。
    【寺田委員】   それから、そういう言葉を使うところと、一番最初のところでは疫学が公衆衛生の向上云々とあります。公衆衛生の向上と健康の維持増進とは同じなのかどうかということがよくわからないところがある。要するに最初の言葉で、公衆衛生の向上に大変大事であるということが書いてあるんですが、一番下は一般の国民にはわかりやすい健康の維持増進という言葉が書いてあるんですけれども、これは一般の国民に協力を求めるというんだったら、そのほうがいいのではないですか。
    【高久委員長】   国民の健康の維持増進に多大な役割を果たしていると。そのほうがいいでしょうね。
    【寺田委員】   というほうがいいのではないかなという感じが私はしたんですが、いかがなものでしょうか。
    【高久委員長】   わかりました。よろしいでしょうか。またほかにお気づきの点があれば言っていただきます。2ページ目の表の指針の対象と対象外というのを具体的な例を少し挙げてもらいたいという皆さんのご意見で、私もそう申したのですが、事例を挙げていますが、ちょっとわかりにくい点もあるような気がするのですが、「特定の患者」というのはどういうことでしょうか。
    【丸山委員】   私も高久先生がおっしゃったのと同じだろうと思うんですが、この表の冒頭の「特定の」というのは要らないんじゃないか。患者の疾病について云々でよろしいんじゃないか。
   それから、上のほうの本文の中ほどですけれども、2の3の下線部「その他特定の研究対象者の疾病」と。この「特定の」というのも、これまでの議論を踏まえますと、やや限定し過ぎかなというふうに感じます。
    【高久委員長】   そうですね。「特定の」が要らないのではないかな。
    【中垣研究企画官】   「特定の」がいいのか、「個別の」がいいのか、「目の前の」がいいのかだと思いますけれども、これを除いて広い意味での治療ということになると、かなりの数の疫学研究が患者の治療、予防という形になりますので、そこはいかがなものかなと思います。
    【高久委員長】   「個別」のほうがわかりやすいかもしれませんね。どうでしょうか。わかりました。
   それから、この表は医薬品と食品を分けておられるのですが、特定の食品、例えば食塩の投与量と血圧の関係というと、これは薬ではなくて、食品になってしまうので、困ったなと思っているのですが。
    【中垣研究企画官】   ご承知のとおり、医薬品については、薬事法の場合にはGCP(GoodClinicalPractice)がございますし、厚生科学研究費補助金等補助金を交付するときには、GCPを準用することを条件といたしておりますので、一応、補助金の範囲、すなわちアメリカで定めているような補助金の範囲では、そこは担保できるんだろうと考えております。
    【大島委員】   その下の地域保健のところですが、ここに健診のデータを用いてということでの個別指導はこの対象外だということが書いてあるんですが、特にがん検診の場合ですと、スクリーニング検査では精密検査を必要とする、あるいはそれは必要でないという判定をするだけでありますので、精密検査の結果、あるいはその結果手術が必要になると手術の結果を把握する等の、あるいは追跡調査も含めまして、精度管理の事業というのが非常に重要で、それをしないがん検診はスクリーニング検査のしっ放しということで、私たちはそれを非難してきたわけですけれども、健診には当然のことながら精度管理事業は含まれるという理解でいきますと、今、申しました精検結果、手術結果、追跡調査をするという作業は個人情報のやり取りが伴うわけですけれども、この指針の対象外というふうに理解していいのかどうか。確認ですが。
    【中垣研究企画官】   がん検診をやって、そのがん検診の結果、精密検査を受けたほうがいいとかいうようなことを個別の住民に連絡をするというのは、当然この指針の範囲外だと思います。
   ただ、先生がおっしゃっている追跡調査とかいうことになりますと、どういうぐあいに何が進められるのかもう1つイメージがわきませんので、必要があればその点は先生方のご了承を得た上で大島先生と詰めさせていただいて、ここに追加をするかどうかさせていただければと思っております。
    【丸山委員】   今、大島先生がおっしゃった精度管理のための作業については、私も右側の対象外のほうに含めるべきだと思います。
    【櫻井委員】   同じ意見なんですけれども、精度管理というのは健診というものの中に含まれているんだというふうに理解しています。精度管理があって健診ですから、当然、健診でいいと思います。
   だから、後の追跡調査というところがもしかしたら引っかかる。それはさっきのがん登録のところと同じようなことで、健診データというのは確かにあるわけですね。行政なり、あるいは医師会が管理するような場合もあるんです。それを用いて後でいろんな調査研究をするとなると、確かにちょっと問題がある。むしろ、ここに書いてある左側のほうの特定の予防、治療方法を研究するほうに入ってきそうな気がして僕は読んでいるんですけど。
    【大島委員】   今がん登録と同じような心配が精度管理事業にも起こっておりまして、精密検査あるいは手術をした医療機関から手術結果、精検結果を健診機関、あるいは健診の主体である市町村に返すということにおいて、これは第三者提供であるから出せないというようなことで、精度管理事業が非常に危機に瀕しているということがあるんです。
   その関連で単に対象外ですよというのでなくて、これはこの委員会とは別かもわかりませんけれども、今までがん検診は老人保健課が所管していたということがありますので、老人保健課からかもわかりませんけれども、精密検査とか手術結果の把握のための作業、それに協力するというのは、公衆衛生の向上のために特に必要な場合という、今の個人情報保護法案の適用除外に当たるということをきっちり市町村や医療機関に言ってあげないと非常にぐあいが悪いと思う。
    【高久委員長】   ありますけれども、その議論はそこまでここの委員会で責任を持てませんので。
   稲葉委員、何かご意見ありますか。
    【稲葉委員】   今とも関連するんですけれども、その後の産業保健、学校保健も含めて、研究と書いてある部分と報告という部分がちょっと気になるんです。今の地域診断とか精度管理の事業に関しても、結構、学会発表として出されているものはあるし、論文になっているのもあるんです。そういう場合は一応事業としてはされていますけれども、まとめると研究という形になり得るんです。産業保健でも学校保健でも研究であれば左側で、事業であれば右側という、その辺の区別のあいまいさをもうちょっと整理する必要があるかなという気がしました。
    【高久委員長】   両方とも研究になっていて、そのほかのものはみんな行為とか、あるいは事業、報告と。両方とも報告になっているのがある。
    【稲葉委員】   今回、両方報告なんですね。
    【丸山委員】   今、稲葉先生がおっしゃったように分けるのは非常に難しい。特に産業医、学校医も同じだと思いますけれども、ある程度研究的な活動をして、それを踏まえて産業医なり学校医の仕事をするということがありますので、分けるのはこの程度で仕方がないんじゃないかなと私は思います。
   それから、産業保健と学校保健を比べてみますと、学校保健のほうは学校医の本来の業務であるか否かで一応難しい線引きをしているんですが、産業保健のほうは既存のデータを利用して行う研究を適用除外にしているように思えるんです。それでしたら、このページの上から2つ目の連結不可能匿名化されているデータに基づく研究であって、ここに挙げられているのは特に産業保健の適用除外の例として出すべきものじゃなくて、むしろ学校保健でなされている整理と同じようなものを産業保健でも出したほうがよろしいんじゃないか。産業医の業務内であれば適用除外。微妙なところなんですが、それを踏み出して研究的な要素が強くなるものについては、指針の適用という整理のほうがすっきり、学校保健と平仄が合うんじゃないかと思います。
    【高久委員長】   稲葉先生、それでいいですか。既存のデータというのは確かにありますね。 わかりました。ほかにどなたか。これでよろしいですか。
    【寺田委員】   2番の例のところで確認ですけれども、「特定」というのは「個別」にするというのはよろしいですね。
   そうしますと、その次に、大変難しいことですが、私のところの病院で、臨床の先生にこの指針について前もって聞きました。そうしますと例えば、自分たちが行う治療の効果とか、この手術法で良いのかというのを外科の先生方が自分達の過去のカルテで調べますね。この場合は適用外になるんですか。指針の範囲内なんでしょうか。どっちになりますかと質問を受けたんです。どうなるんでしょうか。
    【中垣研究企画官】   先生がご質問いただいているのが、例えば外科で、乳がんで保存のための1つの術式を開発した。これで次々と手術をしていった。ある時点で振り返って、それまでにやった100例を集めて従来のものと比較する。これは2の一番最初の例示でいうと、目の前にいる患者をどう手術しようかということと離れておるわけでございますから、これは左側の指針の対象という形になります。
    【寺田委員】   しかし、それは目の前の患者さんを診察するときに必要な情報ですよね。
    【高久委員長】   ただ、この場合、まとめてコホートスタディでもやる。例えば乳房の温存療法と完全にとる治療を比較するという研究をやった場合に、それを最終的にまとめて報告をする。個々の症例でやっていて、初めあまりプランニングしてない場合がありますね。それがヒストリカルコントロールみたいな場合のときにはどうなるのかな。
    【丸山委員】   私が先ほど「特定の」を外したほうがいいと言いましたのはその趣旨で、今、寺田先生が挙げられたような例は、適用にならない前提でこれまで話を進めてきたんじゃないかと思うんです。それで、先ほど言いました「個別の」も要らないんじゃないかと。中垣企画官のおっしゃった対象内におさめるほうがいいのかどうか、私はこれまでの経過を踏まえると、対象外にするということだったんじゃないかなという印象を持っております。
    【高久委員長】   「個別の」も外せという事ですが、どうですか。どうぞ。
    【珠玖委員】   ただいまの点というのは非常に大切で、一般的な臨床研究そのものをどう扱うかということであって、2項の丸の3に書いてあるものはいわゆる前向きの試験といいますか、準備をして、これからどう解析するかという、これが医学研究では非常に大切だろうというふうに位置づけられているんですが、片一方、後ろ向きの試験といいますか、後ろ向きへの研究、すなわちやってしまったものを集めて、それをどう解釈するかということ、これが研究の非常に大切な部分を占めている。それが全部この範囲の中に入っていてしまって、そしてまたインフォームド・コンセントのことも非常に振り返った形で集めていって、発表するときにはそのことが当てはめられていくとなりますと、かなりの臨床試験というものはそこの中に入り込んでしまうだろうと。
   途中経過でもいろんな議論があったんですが、基本的には治療行為等あるいは予防に関するものについては、最終的には除外をするという、少し大ざっぱな解釈ではあったんですが、そういう形でこの検討が進んでいるんじゃないかというふうに解釈をしていたんですが、いかがですか。
    【中垣研究企画官】   先生がおっしゃっているのは、プロスペクティブなものじゃない、後ろ向きの今までの診療行為を集計・解析するという例だと思うんですけれども、これを対象にしない理由というのがなかなか説明できないんじゃないでしょうか。
    【高久委員長】   ただ、インフォームド・コンセントをとれないことが多いでしょうね、レトロスペクティブなスタディだと。それができないということになるとかなり反発が出て来るでしょうね。今の臨床研究はかなりが統計的な部分を含んでいるから、難しくなってしまいます。
    【中垣研究企画官】   臨床研究の基本は前向きの研究で、前向きの研究だからこそインフォームド・コンセントどうのこうのという議論が出てくる。
   後ろ向きの研究の既存資料についてどうするかというのは、指針で申し上げると、9ページのイに議論が出てくる。要するに既存資料を用いているのは、いわゆる観察研究に当たるのではないか、こういうふうに考えておるんですが。
    【高久委員長】   例えばずうっと患者さんを何十人か診てみて、非常に病歴があるとする既存資料とみなせばいいわけですか。
    【丸山委員】   既存資料とみなしても、ここはインフォームド・コンセントの要件はかなり緩くなりますけれども、倫理審査委員会に出すことが求められるんです。その要件を先ほど寺田先生のお出しになったような例までかぶせると、臨床医の側も非常に大変だし、倫理委員会の側も非常に大変になるんじゃないか。
   それと、今も話に出ましたけれども、それと個別の患者に対する医療というのは、EBM(Evidence Based Medicine)といわれるように非常に密接に結びついておりますので、あらかじめプロトコルを書いてなされる本来の研究とは違うんじゃないか。先ほど言いましたように、適用除外とするほうがとりあえずはいいんじゃないかと考えます。
    【珠玖委員】   垣企画官がおっしゃったように、基本的にはこういう臨床研究というのは前向きのもの。それはそのとおりだというふうに思います。
   ただし、現実には現在いろんな領域で行われている臨床研究のかなりの部分というか、それから、また実際にはそこで対象としている解析対象が1人の場合から、そういう意味ではいわゆる特定のケースレポートという形から数人、それから基本的には科学的には母数が多いほうが信頼に値するという一般的見方はあるとしても、そこは随分とたくさんの形で存在していまして、しかもそれが各学会で発表されている研究内容の、大部分とは申しませんが、かなりの部分を占めているという現実の中で、もしそれをここに含めるとすれば、そういうものをどう扱うかということは少し別個にでも検討していただく必要があるんじゃないかと思います。
   前向き試験で、とりわけ医療的な介入が入るものは除外する。これはよくわかりました。それから、それを直接のことにしないものについての定義の仕方というのもわかるんですが、これは改めて少し強調させていただきたいと思います。
    【櫻井委員】   関連ですけれども、3ページの医薬品。知見に関するところの除外がありますね、右側に医薬品と食品で。医薬品を外したというのは、GCPとかほかに規則があるから外したということであれば、ほかにあるからということが今の話にも出てこなきゃいけないので、この文章を例えばこのまま手術に書きかえたら、患者を2群に分けて、一方の群にはAの手術を行い、他方の群にはBの手術を行うことにより、当該手術の病気に与える影響を調べる行為と書き直すとそっくり同じで、薬ならよくて、手術はだめだというのが理論的に難しくなりますよね。薬はほかに規則があるから、ここでは外したんだというのであれば、今おっしゃったように、ほかのことについてもほかの規則をつくるかどうかということを議論しなきゃならなくなりそうな気がしますが、どうでしょうか。
    【中垣研究企画官】   今、櫻井先生がおっしゃった医薬品のところは、この指針との関係から申し上げますと、医薬品だけでなく、すべての医療的介入を含む介入研究は指針の対象外だということを言っておりますので、医療行為を入れても対象外という形になってまいると思います。要は研究を前向きにこれからやるものと、診療データを収集し、統計学的、推計学的手法を用いて分析したものをどうするかという議論だろうと思います。
   簡単に申し上げますと、既存のカルテ等を分析する行為については、倫理審査委員会という問題が出てまいりますが、これはヘルシンキ宣言等でも倫理審査委員会は言われているわけですから、実態をそう大きく変えるものではないのではないかと考えておりまして、当初から議論があった、新たに投薬等の医療行為をやるものとは異なるんだろうということで、今回整理をしてきたところでございます。
   そういう整理でこのペーパーというのは一応貫いたわけでございますが、先ほど来臨床研究というところで疫学研究と区分けができるのかできないのかというところのご指摘をまたいただいているんだろうと思います。疫学の教科書を見ると、臨床研究もほとんどすべてが疫学の中に含まれるというふうに整理されておるわけでございまして、そういう疫学の専門家の目というのと疫学以外の方々の目の違いがそこに表面化してきているんだろうと思うわけでございます。
   したがいまして、いわゆる臨床研究をここから除くということでございますと、先ほど来丸山先生が提案なさっているような治療という形で既存のカルテの情報というのも除いてしまうという形になりますから、そういう意味で申し上げますと、丸山先生の案というのが先生方のご主張と一番近いのかなと思います。それでここは整理できるのかなというふうに考えております。そういう形で整理させていただければと思っています。
    【稲葉委員】   今の確認ですけれども、そうすると指針の対象外の診療と研究の※印はなくなると考えますか。これはこのまま残しますか。
    【中垣研究企画官】   】先ほどの具体的な修文で申し上げますと、指針の適用範囲の3のところの「特定の研究対象者の」というのを削るんだろうと思います。「疾病の予防」を入れてしまいますとすべてが入りますから、予防は削らざるを得ないと思いますが、「治療を直接の目的とする研究」とか、そんな感じになるのかなと思います。
   研究事例のほうを申し上げますと、指針の対象の最初の丸を指針の対象外の右側に持っていくことになるんでしょうし、その次の丸、「ある疾病の患者数等を検討するため」というのも、基本的にはカルテ情報を収集・集計するということになると思いますから、そういう意味ではこれもまた指針の対象外になるのかなと考えております。
    【丸山委員】   そこまで私は言わないんですが、2ページの2の3ですけれども、「研究対象者の疾病の予防又は治療を特定の目的とする疫学研究」なんですね。「疾病の予防又は治療を直接の目的とする疫学研究」でしたら、これは疫学研究のかなりの部分が除去されてしまいます。ですから、私がとってほしいと申しているのは「特定の」だけなんです。
    【高久委員長】   そうすると、これは疫学研究ではなくて、臨床研究とするといけないのですか。そのほうがすっきりするんじゃないかな。
    【櫻井委員】   その定義はできないから、そうしておくよりしようがない。一番最初からこの委員会で議論しているんです。臨床研究はこれから外して、疫学研究ならこれを入れるという定義だけにしておくしか。しようがないんじゃないですか、それは。定義できない。
    【丸山委員】   臨床のものでも疫学的になされるものはあると思うんです。ですから、臨床のものをすべて除くとすると、やっぱり除き過ぎになると思うんです。ですから、メディカルドクター、臨床医の先生が自分の患者を念頭に置いてなさるものは除くという趣旨で、「特定の」という言葉は除いたほうがいいんじゃないか。しかし、本来の疫学研究としてカルテ研究をするというのもあると思うんです。この指針はまさにそういうものも対象としている。個人情報保護の観点から、まさにそれを念頭に置いてこの指針をつくってきたと思いますので、臨床研究をすべて対象外とするというのは、今度は除き過ぎになるんじゃないかと思います。
    【寺田委員】   臨床を対象外にしますと、臨床研究の定義というのは、要するに人を直接対象にする研究、あるいはアメリカのNIHみたいに疾病を対象にする研究、これはすべて入ってくるかと思うんです。その中に手法として疫学研究も用いますが、これは違うカテゴリーにはできないと思うんです。だから、臨床研究を外してしまうと疫学は全部外れてしまって、人を対象にする研究が疫学からなくなっちゃうわけですから、それはちょっと無理じゃないでしょうか。
    【高久委員長】   だから、手術、投薬等の医療行為を伴う介入研究は外れるわけですね。はっきり初めから外れているわけですね。そういうことではないのですか。医療行為を伴う介入研究は適用範囲の対象としないと書いていますから。レトロスペクティブの臨床研究も当然対象としてないのでしょうね。介入研究でさえも対象としないわけですから。治療には手術、投薬以外に何かあるのかな。治療を直接の目的とする。
    【櫻井委員】   医療制度よりは治療のほうがいい。医療という言葉はまた広くなってくる。
    【高久委員長】   医療は広くなりますね。だから、3のほうはこれをどう解釈するかですね。
    【中垣研究企画官】   1点だけ確かめたいんですが、珠玖先生あるいは寺田先生、丸山先生、櫻井先生から言われている中で、2つのことをおっしゃっておられると考えておりまして、珠玖先生あるいは寺田先生がおっしゃっているのは、過去の医療行為の結果を収集・分析する行為を除いてくれとおっしゃっている。
   丸山先生はそこに2つあるんじゃないか。過去の、例えばカルテ情報を1万人分集めて、大規模に何かの目的で分析するという、そこで疫学という言葉を使われるので、みんな理解できなくなっているんですが、そういういわゆる疫学という行為と、いわゆる臨床家の方が学会で発表するために10例分析しました、20例分析しましたという行為の2つがあるんだろうとおっしゃっておられて、こちらの臨床家の方が10例あるいは20例を分析される行為というのは、丸山先生のお言葉をかりると、研究対象者の治療を直接の目的としているという言葉を使われているんですが、研究対象者というのは既に結果になっている方ですから、その治療を目的としているわけでないので、いわゆる疫学と疫学ではないというところを何というふうに切り分けられるか、そこの言葉の定義の問題なのかなと思っているんですが、いかがでございましょう。
    【丸山委員】   だから、「特定の」をとっていただきたい。「特定の」にしますと、過去の具体的な患者になるわけですね。その「特定の」をとると、将来の患者を念頭に置いたものを含めることができるんです。将来の患者を念頭に置いた過去のデータ整理、将来の自分の患者、あるいは自分の病院に見える患者の治療のためのデータ整理であれば、これは今中垣さんがおっしゃったように微妙な区分けになって、区分けがほんとうはできないかもしれないんですけれども、医療、診療のほうに入る。それが学会発表を目指すものであれば、これは研究のほうになるんだろうと思います。だから、一次的な目的が学会発表なり論文投稿なりのものであるか、今後の診療に役立てるためにやっているか、その違いで分ける。それで、「特定の」というのをとってほしいと言っているんです。
    【珠玖委員】   医療行為そのものは、もちろん個々の患者さんを対象として、そこから出発をしているわけですが、あるときから研究という発想を持ち出したときにそれが研究になるというのは、形ではなかなか分けにくいんだろうなという気がいたします。
   それからもう1つ大切なことは、少ないときは1症例から、そしてそれが複数の症例になるということが、ある意味ではすべての臨床医学研究の根幹となっている。少し大げさな言い方をすれば、医学研究はそれで出発をしてきたという過去の経緯がございます。それで、それを時には小さな学内の発表会から地方での学会なり、あるいは全国的なものとか、学会誌とかそういうものに発表するというのは、揺るがせない臨床医学そのものの根幹的な研究のスタイルだと思います。
   それで、もちろんより明確にエビデンスを出すために、前向きの研究を考え、ある研究設定をしていって、一番いい場合にはランダマイズスタディというのをやるわけですが、にもかかわらず大きな臨床研究の発展のもとになっているというのは、個々の患者さんのためにということでやってきたことをどう後で観察していくか、そしてそれを集積していくかということだと思うんです。
   問題は、そういう発表になっているもの1つ1つは、例えば※にありますような形で、それに影響する要因についての結論を論文化する。これは当然の行為であって、それでなかったら研究にならないわけですから。その場合、1つ1つに研究の正当性を書いて、ほんの少々の思いつきのレポートもございましょうし、それは多々あると思うんですが、倫理審査委員会でそれの審査を受けていく。あるいはいろんな患者さんにつきましてインフォームド・コンセントをとるということが前提となりますと、これは臨床研究そのものが、少し極端な言い方をすると、成り立たなくなってしまうかもしれないというふうに非常に危惧を感じるんです。
   ですから、あいまいな形での定義ではなくて、これははっきりとやっていただくべきだと思います。
    【高久委員長】   それから、指針の対象としない手術、投薬等の医療行為を伴う介入研究といったときに、介入研究には当然疫学が入ってくるわけですね。臨床の場でも疫学に入らない研究というのはほとんどないと思うのです、数は別にして。そうすると、これは除外にしているんだから。
    【珠玖委員】   途中経過のことなんですが、当初は疫学的手法を用いたものを途中で疫学研究にという形で提起されたところに、やはり考え方としては広くいわゆる疫学というふうに識者や関係の方、あるいは関係の学会領域の方々がとらえているものに少し限定した指針という形で提起され、検討されてきたと思うんです。その手法に疫学的手法、これは統計的な手法で処置をしていき、解析していくことはすべて疫学的手法になりますから。しかもそこに複数の対象がありましたら、必ずそうなるわけですから。
    【高久委員長】   ですから、疫学的手法は外したわけですね。
    【珠玖委員】   ですから、これはそういう意味での従来から考えられている、もちろんあいまいな領域はございますが、疫学研究に関する倫理指針としてつくっていきつつあることかなというふうに私は理解していました。
    【高久委員長】   そうですよ、もちろん。
    【中垣研究企画官】   珠玖先生がおっしゃるとおりだと思うんです。そこは先生方のご意見は一致しているんだろうと思います。
   問題は、過去の診療情報を収集・解析して行う疫学研究がある。例えば患者さんの状態とかを診て、そこの地域特性であるとか、病気の特性であるとか、そういうものを見る疫学研究があるんだろうと思います。よってカルテ情報、あるいは過去の診療の結果を収集・解析する研究は除くとは書けない。そこに苦しみがあるので、そういうことで一応のご理解を願えれば、珠玖先生、丸山先生、稲葉先生とご相談をしながら案をつくり、先生方にお送りするということでよろしゅうございますか。
    【高久委員長】   今のやつは9ページの既存資料のみを用いる観察研究に当たらないのかな。
    【中垣研究企画官】   現在の案はそこで取り扱うとなっておったわけでございますが、そうじゃなくて、指針そのものから外せということでございますから、そこを何とか改めねばならないと思います。
    【高久委員長】   インフォームド・コンセントを受ける受けないではなくて、指針そのものから外せと。
    【稲葉委員】   倫理審査委員会にかけるかどうか。
    【高久委員長】   ということですね。
    【森崎委員】   関連するんですが、先ほどちょっと例に出された、例えば手術の術式を区別してということがどういうふうに今後は利用されるかということがさっき出ましたが、その研究を例えば手術をする外科医がまとめられてということになると、先ほどのような考え方がとれるわけですけれども、例えば50例、50例あるいは100例、100例というものを、手術を実際にされない方が疫学的観点ですれば、同じものであってもこれに入るという考え方もまたできるような気がしています。すなわちその辺の切り分けというのは非常に難しい。臨床側からすれば、疫学というのはすべてそういう研究であるということは私自身も思っているところですけれども、その辺を除外するかどうかというのは逆に言うと、インフォームド・コンセントの手続と照らし合わせて、手続をどうすべきかという点ではないのかな。
   つまり考え方として、概念としては含めてもいいけれども、そういう手続やそういった研究を振興させるには、医学の進歩のためにはなじまないのではないかということじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
    【高久委員長】   れは必ずしも手術をする人がまとめる、あるいは別な人がまとめるという問題ではないと思うのです。要するに今まであった臨床データをまとめるときに、この案ではインフォームド・コンセントは要らないとしたのをこの審査の対象としないということで、森崎先生、だれがまとめるということはあまり問題ではないと思いまです。それでよろしいなら。
    【稲葉委員】   それでいいと思うんですけれども、もう1つ追加で、先ほどの医療行為を伴う介入研究というのはここでは対象外になっていますけれども、実際にはそれぞれのIRBにかけざるを得ないわけですね。だから、そういう意味では抜け道というか、別なルールがあって処理できるけれども、過去のデータに関してはどこにもそれはないわけです、今のところは。それをつくるのか、これに入れるのか、あるいは全然除外するのか、その辺がちょっと気になる部分だと思います。
    【高久委員長】   そうですね。確かに介入研究については、特に投薬でも手術でも必ずインフォームド・コンセントはとるわけですね。患者さんからとらないとできませんから。特に手術の場合には100%そうですけれども、既存のものについてはどこも審査にかけないとするとIRBもかからないから、それはどうぞご自由にということになるんでしょうね。
    【櫻井委員】   患者さんの情報というのは、患者情報に関する刑法上の守秘義務があるわけですから、わかる形では既存だろうと何だろうとどこかからも出てこないですよね、絶対。それで抑えられるんじゃないでしょうか。もちろん全く匿名化された情報として既存のものであれば、それは全然問題ないんでしょう。Aさんということがわかる形で、それは主治医であろうと主治医でない人がやろうとしても、それは主治医が漏らさない限りは漏れないはずなので、漏れたらもともと刑法違反になっちゃうんじゃないかなと思うんですけれども、どうなんですか。そうじゃないですか。
    【丸山委員】   ですから、おっしゃるとおりだと思います。だから、自分の治療の向上のために使う分には構わないけれども、広く患者情報を使っていいということには決してならないと思います。
    【中垣研究企画官】   大体、言葉とか概念整理をどうするかというところでございますけれども、あとは言葉の整理だと考えておりますので、もしよろしければ稲葉先生、珠玖先生、丸山先生にご相談させていただいて、座長のご判断ということでこの点を修正するということでよろしければ、そのような形にさせていただきたいと思います。
    【高久委員長】   もう大分時間が押し迫ってまいりましたが、ほかのページで線を引いているところで何かご意見おありでしょうか。
    【堀部委員】   このところ欠席していたものですから、内容については、それぞれ医学の専門の方が議論されてこういうことになったのでよろしいのですけれども、それをより明確に表現するとなると、若干字句の修正なども必要なのではないかと思います。
   例えばということで言いますと、きょうの前文にもあるのですが、1ページの一番下の丸のところに「疫学研究に携わる研究者」という概念と、その後の2ページにいきますと「疫学研究にかかわるすべての研究者」、3ページにいくと、3で「すべての研究者等」と出てきて、この「研究者等」というのは後ろの定義規定にあるのですが、「すべて」というのが要るのかどうか。「研究等」の定義の11ページのところも、「研究責任者、研究担当者その他の疫学研究の実施に携わる関係者」なのか、それとも「疫学研究の実施に携わる」というのを前に持ってきて、「研究責任者、研究担当者その他の関係者」なのかというようなところの整理がどうなるのかということもあると思います。
   さらに、12ページの第6の細則という13の見出しがありまして、ここの細則というのは今かなり議論になりました、例えば2ページの細則ということで研究事例で指針の対象か指針の対象外かという、こういうところに細則という言葉が使われているのですが、この細則と別に定める細則というのはどういう関係に立つのかとか、整理したほうがよろしいものがあるように私には感じられます。
   それは事務局でやっていただくことになると思うんですけれども、そういったことをもう少しやられたほうがいいのではないか。そのように思います。
    【高久委員長】   どうもありがとうございました。少し整理していただくものもあります。他にどなたか。
   今後の取り扱いということになるんですが、きょうは専ら過去において臨床的に集められたデータをどうするかということにかなりな時間を費やしたんですけれども、どうぞ。
    【丸山委員】   インフォームド・コンセントの規定の仕方、内容は同じなんですが、どちらにするかお決めになったほうがよろしいんじゃないかと思うんですが。
    【高久委員長】   8ページと14ページですか。どうもありがとうございました。この8ページと14ページは、疫学の学会のほうからは14ページのほうに介入研究と観察研究を分けろというご意見がありまして、事務局のほうでは人体から採取された資料を用いると用いないという、この2つが少し簡単ではないかという意見があるんですけれども、どうぞ稲葉先生。
    【稲葉委員】   疫学会の立場から疫学研究の分類という形で言うと、介入と観察という形でどうしても頭に入っていますので、人体の資料を用いるか用いないかよりは、人体の資料を用いなくても、個人情報に関しては介入で使う場合には注意しなければならない情報がかなりありますので、そういうことを考えると介入のほうが厳しいという意味で介入研究と観察研究を分けたほうがいいという理解で疫学者としてはお薦めしたい。文章がちょっとくどくなるかもしれませんけれども、人体の資料に関してが二度出てくるということになりますが、ここは少しまとめることができるかもしれないと思います。私の意見としてはそういうことです。
    【高久委員長】   稲葉委員と、田中委員はきょうご欠席ですが、日本の疫学会の理事からこういう文献が出ていまして、それを無視すると稲葉先生と田中先生の立場がなくなるでしょうから、少し面倒くさくても14ページのようにするということでよろしいでしょうか。もしご異論がなければ。
   今後どうしますか。もう1回開くのか、それともきょうのご意見を事務局でまとめて、それを皆さんにお送りして少し訂正していただいて、パブリック・コメントのほうに移っていくかということで、できればきょうのご議論で狭められてきていますので、それを事務局のほうで整理していただいて皆さんにお送りして、ご意見をいただいて、それをもとに修正したものを、私のほうでまとめさせていただいて、できればパブリック・コメントにかけたいと思うのですが、いかがでしょうか。もしよろしければそうさせていただきたいと思います。どれぐらいかけるのですか、パブリック・コメントを求める時に。
    【中垣研究企画官】   通常1カ月程度を予定しております。また、その前に、今、高久先生からおっしゃられましたように、整理していく上で先生方のご意見を伺いたいと存じますので、年末年始にかかって恐縮でございますが、よろしくご協力いただきますようお願いいたします。
    【高久委員長】   そういう方向で、特に疫学関係の先生、あるいは丸山先生もいろいろご意見をいただきましたが、皆さん方のご意見を伺って事務局でまとめて、そして私のほうでもう1回まとめたものについて検討させていただいて、それをパブリック・コメントに出したいと。ですから、1月7日までぐらいに出すことになりますかね。
    【中垣研究企画官】   何を意味するのかというのは大体わかっておるのでございますが、それを書くのが難しそうな宿題でございますし、堀部先生からもっとよく整理をするようにということをいただいていますので、これからまた予算の時期でもありますので、場合によってはある程度時間をかけてという話になるかと思いますが、仕上げを年度内に行いたいと思いますので、できればそういうスケジュールに、例えば遅くとも1月の半ばぐらいからパブリック・コメントに入れるような形で考えたいと存じます。
    【高久委員長】   ということで進めさせていただきたいと思います。
    【中垣研究企画官】   申しわけありません。参考資料5と参考資料6については大体整理させていただいていますが、こんなものでよろしいのかどうかご意見を賜ればと。簡単に1分、2分で説明させてください。
    【原口課長補佐】   申しわけございません。説明を落としておりまして恐縮でございます。
   まず、参考資料5でございますけれども、個人情報保護法案の5つの基本原則とこの指針との関係ということの整理をしたものでございます。この個人情報保護法案は疫学研究の倫理指針を検討する1つのきっかけにもなったことでございますが、個人情報保護法案におきましては、ご案内のとおり、研究に関しては基本的には適用が除外される形にはなっておりますけれども、法案で規定しております4条から8条までにございます5つの基本原則は、適用除外になる事柄につきましても、この基本原則はかかわってくる。この基本原則は踏まえながら行われることが期待されているということでございます。
   そこで、それぞれの法案に書かれている中身を簡単に左に整理しておりますけれども、それに対応するような内容が今回の疫学指針ではどのように盛り込めているかということを整理させていただいたものでございます。
   簡単に申しますと、1つ目の利用目的による制限ということに関しましては、この指針(案)でそもそもインフォームド・コンセントを原則として何に使うかということを研究対象者に説明をするということが基本原則として求められているということがございまして、そこで利用目的が明らかにされ、その範囲で使うということを立てておるわけでございます。
   次の適切な取得ということに関しましては、インフォームド・コンセント等を得ること自体が適正手続として要求されているということのほかに、法令、本指針、研究計画に従って適切に実施するという項を盛り込んでいるところでございます。
   次の正確性の確保ということに関しましては、これは研究の性格上、研究が終了しました後にそのデータをフォローアップするようには必ずしもなってないわけでございます。ただ、科学的合理性を担保するということになっております範囲で正確性を確保することができるようになろうと思います。
   次のページでございますが、安全性の確保ということに関しましては、個人情報の保護に関する規定が上にありますような形で原則として盛り込まれている。倫理審査委員会の機能としまして、研究対象者に不利益が生じないように配慮するということなど、あるいは資料の取得、保存についての規定を盛り込んでいるのがこれに該当するであろうと。
   それから、透明性の確保という要請がございまして、これもインフォームド・コンセントということで研究対象者に対して理解されるようにするということと、それから資料の取得、保存のところでも研究対象者の同意を得るという形で配慮がされているということで整理できると考えております。
   引き続いて参考資料6のほうをご説明申し上げたいのですけれども、位田委員から個別にご指摘をいただいた事柄でございまして、倫理指針におけるインフォームド・コンセント等の方法に関して具体的にどのように行われる必要があるのかということは細則などで規定する事項ではないだろうけれども、今までの議論を整理しておいて、明らかにしていく必要があるということのご指摘をいただきまして、それで整理させていただいたものでございます。
   例えば1といたしまして、インフォームド・コンセントを文書でとる場合に関して、その説明については個別面接が必要なのかということ等については、これは説明会を開催し、集団でご説明いただくということですとか、十分な内容の説明文書をいただいて、郵送いただくというやり方が文書による場合は可能であろうと。これに対して、2点目にありますが、文書でよることを求めていない場合には、個別の面接の必要はないとしましても、ほんとうに説明会に来て説明を聞いていただいたか、あるいはほんとうに同意をしていただけたかということの個別確認の方法は必ず講じていただかなければいけない。こうしたことになるだろうということを今までの議論も踏まえながら整理させていただいたもので、きょう参考としてお配りさせていただいております。
   これに関しまして、さらに加除などご意見があればいただいていって、これ自体は指針ということではございませんのですが、必要があれば中身にさらに手を入れましてフォローアップしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
    【高久委員長】   ばっと説明されてもよくわからない点があります。
   それでは、これで本日の委員会を終わらせていただきます。
   どうもありがとうございました。
       −了−

(研究振興局ライフサイエンス課)

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