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(1) |
遺伝子治療臨床研究(がん)審査ワーキンググループ審査概要
筑波大学附属病院(再発白血病)
東京大学医科学研究所附属病院(神経芽腫)
東京慈恵医科大学附属病院(大腸がん肝転移) |
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(2) |
遺伝子治療臨床研究(冠動脈疾患)審査ワーキンググループ(審査中)
九州大学医学部附属病院(冠動脈疾患) |
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(3) |
遺伝子治療臨床研究新規実施計画
神戸大学附属病院(前立腺がん)
北海道大学医学部附属病院(ADA欠損症) |
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(4) |
変更報告ならびに終了報告
千葉大学医学部附属病院他4機関(ベクター供給元の変更)
名古屋大学医学部附属病院(製剤の保存期間延長)
大阪大学医学部附属病院(プロトコール中の有害事象の明確化等)
北海道大学医学部附属病院(ADA欠損症) |
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(5) |
重大重篤事象の報告
千葉大学医学部附属病院(原病による死亡)
大阪大学医学部附属病院(脳梗塞の発症)
東京慈恵医科大学附属病院(自己都合による退院後死亡)
東京医科大学病院他4機関に係わる海外有害事象重篤事象に関する報告 |
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(6) |
遺伝子治療臨床研究新指針(案) |
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(7) |
その他
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5. |
配付資料 |
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資料1−1 |
筑波大学附属病院 遺伝子治療臨床研究 審査概要および
実施計画書概要 |
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資料1−2 |
東京大学医科学研究所附属病院 遺伝子治療臨床研究 審査概要
および実施計画書概要 |
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資料1−3 |
東京慈恵会医科大学筑波大学附属病院 遺伝子治療臨床研究
審査概要および実施計画書概要 |
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資料2 |
九州大学医学部附属病院遺伝子治療臨床研究実施計画書概要 |
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資料3−1 |
北海道大学医学部附属病院 遺伝子治療臨床研究
新規実施計画申請書 |
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資料3−2 |
神戸大学医学部附属病院 遺伝子治療臨床研究
新規実施計画申請書 |
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資料4 |
変更報告書および終了報告書 |
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資料5 |
緊急報告書 |
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資料6−1 |
遺伝子治療臨床研究新指針 |
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資料6−2 |
遺伝子治療臨床研究 パブリックコメント概要 |
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参考資料 |
遺伝子治療臨床研究(がん)審査ワーキンググループ委員名簿
遺伝子治療臨床研究(冠動脈疾患)審査ワーキンググループ委員名簿 大学等における遺伝子治療臨床研究ガイドライン |
6
.議 事
【高久委員長】 本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。ただいまから遺伝子治療臨床研究専門委員会を開催いたします。
最初に、事務局から配付資料の確認をよろしくお願いします。
【事務局】 お手元にお配りしました議事次第を1枚めくっていただきますと、配付資料の一覧がございます。
まず、資料1−1ですが、筑波大学附属病院の遺伝子治療臨床研究に関する資料でございます。
同様に、資料1−2、これは東京大学医科学研究所附属病院のもの。
資料1−3、これは東京慈恵会医科大学のもの。
資料2でございますが、九州大学医学部附属病院からの遺伝子治療の申請。
資料3−1でございますが、これは北海道大学医学部附属病院。
資料3−2ですが、これも神戸大学医学部附属病院からの申請でございます。
資料4、これはぶ厚い資料でございますが、変更報告書と終了報告書を合わせたものでございます。
資料5、遺伝子治療臨床研究の緊急報告書をまとめたものでございます。
資料6ですが、6−1として、遺伝子治療臨床研究に関する指針。
資料6−2ですが、新指針に関する意見募集の結果について。
参考資料1に、がん審査ワーキンググループの名簿、参考資料の2に、冠動脈疾患のワーキンググループの名簿。
それから、参考資料の3として、現行の大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドラインを添付させていただきました。
【高久委員長】 資料は皆さんお手元にあると思います。
本日の最初の議題は「遺伝子治療臨床研究(がん)審査ワーキンググループ」です。申請書などはあらかじめお送りいただいていると思います。また、ワーキンググループでの質疑概要なども事務局のほうからお知らせがいっていると思います。審議概要を事務局のほうからよろしくお願いします。
【吉澤学術調査官】 そうしましたらご説明させていただきます。
まず、第1題目、課題名でございますが、「同種造血幹細胞移植後の再発白血病に対するヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ導入ドナーTリンパ球輸注療法の臨床研究」ということで、資料番号は1−1でございます。
実施施設は筑波大学附属病院で、総括責任者は筑波大学臨床医学系血液内科の長澤教授から出ております。
本件に関しましては、平成13年9月17日に申請がございまして、最終的な回答日は本年平成14年2月8日ということになっております。
審査ワーキンググループ合同委員会における審議概要でございますが、第1回の合同委員会は、平成13年11月14日に開かれまして、総括責任者等より、計画の概要の説明及び質疑応答がなされました。
その件に関しまして、作業委員会として意見書を取りまとめ、質問として送るという過程がございまして、その回答を待って、第2回のワーキンググループ合同委員会は、本年1月29日に行われました。同様に、総括責任者より意見書に対する回答と説明がありました後、審議が行われまして、研究に関して基本的には妥当なものと了承されましたが、一部計画の内容について審議を引き続き行うこととなり、実施施設に対し、再度意見を提出し、回答を求めるということになりました。
なお、回答内容については、基本的に書面審査で対応し、特段重大と考えられることがあれば、作業委員会をやるということになったわけでございます。
この作業委員会における論点整理の経過及び結果でございますけれども、まず第1回目の作業委員会は、先ほど申し上げましたように、総括責任者等より説明を受けて、質疑応答を行ったわけでございます。
問題点としまして、ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子を用いる場合の問題点、エンドポイントの設定、あるいは移植片対宿主病やサイトメガロウイルス感染症発生時の対応。また、諸外国で行われている白血病に対するHSV−TK遺伝子を用いた臨床研究との比較など、実施計画の内容に関する質問事項をまとめて、指摘しました。
また、患者への説明と同意文書については、より一般の人に理解できる平易な記述に改めることと。また、ドナーリンパ球輸注療法が健康保険適用上認められていない急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病を対象とする場合の費用についての記述も改めなさいということで、あわせて指示を行ったわけでございます。
第2回目の作業委員会は、この第1回目の質問事項に対する回答を総括責任者よりしていただきました。
その結果、回答はほぼ妥当というふうに考えられましたが、実施計画において、一部副作用等の重大事象が生じた場合の対応について審議を引き続き行うということで、再度意見書を提出して回答を求めるということになりました。最終的には平成14年2月8日付で、「再意見に対する回答書」が寄せられまして、各委員の先生方にご意見を求めましたところ、妥当であるということになったわけでございます。
以上、すべての結果を資料整備に反映させた結果でございますけれども、本遺伝子治療臨床研究の対象疾患でございますが、これは治療として、ドナーリンパ球輸注療法が考慮される同種造血幹細胞移植後の再発白血病、並びに骨髄異形成症候群を対象とするということになっております。2年間の実施期間で、10症例が対象でございますが、5症例終了時に、本臨床研究の目的が十分に評価された場合には、その時点で終了ということになっております。
有効性及び安全性に関しましては、同様のプロトコールがアメリカ、フランス、イタリアで実施されておりまして、その中でも特にイタリアのプロトコールは本臨床研究とほぼ同一であるということで、その結果が報告されておりまして、16症例中、完全寛解6例、部分寛解5例ということで、さらに重大な副作用はなかったというふうな報告を受けております。また、GVHDは4例に認めましたが、3例はガンシクロビル投与によって完全に沈静化されておりますし、残り1例についても通常の治療法により沈静化したと。また、サイトメガロウイルス感染症を発症した2例では、ガンシクロビル投与でドナー細胞は消失しているということでございました。
想定される危険性としましては、このHSV−TK遺伝子発現細胞に対する免疫応答が誘導される可能性などが指摘されました。また、コントロール不能なGVHD等、重大事象が発生した場合には、その経緯、対応について審査委員会で検討し、本研究の継続も含めて判断するということが明記されております。
使用される遺伝子やベクターということに関しましては、これはHSV−TK遺伝子、及びマーカーとしての低親和性神経成長因子受容体の細胞外領域の遺伝子が組み込まれたレトロウイルスベクターということでございます。このベクターは、アメリカFDA及びヨーロッパ諸国の基準に合致したレベルで、イタリアのモルメド社によりGMP基準に従って生産されるということでございました。
これらの観点から、本実施計画の内容は作業委員会において、科学的に妥当というふうに思料されたわけでございます。
以上が筑波大学の第1例目でございます。
それから、次でございますが、資料番号1−2。課題名は、「再発性・治療不応性神経芽腫に対するサイトカインとケモカインを用いた免疫遺伝子治療」ということで、東京大学医科学研究所附属病院 、総括責任者が、先端診療部の山下教授から申請されております。
申請年月日は、昨年平成13年10月16日。最終的な回答日は本年、平成14年1月15日ということです。
同様に、審議概要でございますけれども、第1回目は、平成13年11月14日に、総括責任者の先生から、実施計画の概要及び説明を受けました。そして、その後、質疑応答があり、作業委員会としての意見書を取りまとめ、送付いたしました。
その結果を待って、第2回の審査ワーキンググループ合同委員会は平成14年1月29日に行われまして、同様に、総括責任者から意見書に対する回答と説明があった後、審議が行われて、研究を進めることについては妥当であるという事が了承されました。
その論点整理の経過及び結果でございますけれども、この第1回目の作業委員会におきましては、その説明の後の質疑応答で、特に使用する腫瘍細胞の採取方法についての判断基準、あるいはリンフォタクチンの副作用や腫瘍細胞遊走能など、幾つかの質問点が指摘されまして、それをまとめて指摘したという形になっております。
第2回目は、その審議の概要を踏まえた質問に関して回答をしていただきまして、その結果の審議によって回答は妥当であるとされました。
以上、すべての結果を資料整備に反映させた結果でございますけれども、本遺伝子治療臨床研究の対象疾患は、他に生存期間を延長させる治療法がない、再発あるいは進行性の第

期神経芽腫と診断された4歳以上16歳未満の患者で、原則として、自家骨髄移植後の再発例であるとされております。接種するリンフォタクチン遺伝子導入腫瘍ワクチン細胞数により3群に分けて各2例の合計6例を対象とすると。ただし、安全性検討のためには、12例に達する可能性があるということになっております。
有効性及び安全性につきましては、マウスに白血病細胞株を接種し腫瘍塊を形成したモデルにおいて、IL−2導入細胞及びリンフォタクチン導入細胞投与により腫瘍増大抑制効果が認められ、明らかな副作用はなかったということになっておりますし、また、本研究と同様の研究として、米国ベイラー医科大学においてIL−2遺伝子を導入した腫瘍ワクチン細胞を用いる治療法を再発神経芽腫10例に試みておりまして、6例に腫瘍の縮小が見られて、そのうちの2例は完全寛解したと報告されています。副作用としては、重篤なものはなくて、ワクチン細胞接種の局所反応、あるいは筋痛等が報告されているのみであったということです。
本遺伝子治療臨床研究におきましては、米国ベイラー医科大学で使用されたものと同一のウイルスベクターを使用するわけでございますが、対象細胞自身が、がん細胞であるということで、接種前に放射線治療を実施するということになっております。このベクターの件に関してでありますが、正常IL−2及び正常リンフォタクチンを導入したアデノウイルスベクターでありまして、これらは米国FDA基準を満たすレベルで、米国ベイラー医科大学遺伝子ベクター研究室により、GMP基準に従って生産されるということでございます。
以上、これらの観点から、本実施計画の内容は作業委員会において科学的に妥当であると思料されたわけでございます。
これが2番目の東大のものでございます。
次が、第3件目でございます。
課題名は、「大腸がん肝転移例に対するシトシンデアミナーゼ遺伝子発現アデノウイルスベクター及び5−フルオロシトシン(5−FC)並びに放射線照射を用いた遺伝子治療研究」ということで、東京慈恵会医科大学附属病院を実施施設としまして、消化器・肝臓内科診療部長の戸田先生から総括責任者として申請されております。
申請年月日は、平成13年10月19日でありまして、最終的な回答は平成14年1月31日にいただいております。
同様に合同委員会における審議概要でございますけれども、第1回目は、平成13年11月14日に行われまして、総括責任者等より実施計画の概要の説明がありまして、その後、質疑応答をいたしまして、作業委員会として質問を取りまとめました。そして、実施施設に送付し、その結果を待って、第2回のワーキンググループ合同委員会は、平成14年1月29日に行われました。
先ほどと同様ですが、意見書に対する回答と説明が総括責任者よりありましたが、その後、審議を行い、研究を進めることについて、基本的には妥当なものと了承されましたが、一部については審議を引き続き行うということで、実施施設に対して、再度意見書を提出し回答を求めるということになったわけでございます。先ほどと同様ですが、回答内容について基本的には書面審査で対応するということになりました。
その作業委員会における論点整理の経過及び結果ですが、まず第1回目の作業委員会におきましては、総括責任者等による説明の後の質疑で、まず第1番目として、対象症例の選定方法、あるいは5−FCの体内動態、大腸がんの肝転移巣に遺伝子発現アデノウイルスベクターを局所注入する際の播種の危険性に関してや、また本遺伝子治療の動物実験での有効性など、幾つかの問題点が指摘されまして、これらをまとめて指摘いたしました。
また、患者への説明と同意文書につきましては、腫瘍細胞播種の危険性についての記述を改めること。また、放射線併用療法の選択方法について説明することもあわせて指示しております。
これらに基づきまして、第2回目の作業委員会で、総括責任者より回答がございました。その結果、先ほどのように、回答はほぼ妥当と思料したわけでございますが、本研究で計画されている放射線併用療法における照射量の根拠について引き続き審議を行うということで、再度意見を提出し回答を求めるということになりました。
その最終的な回答が、本年1月31日付でまいりまして、各委員の先生方にご意見を求めたところ、回答は妥当であるとされたわけでございます。
以上、すべての結果を資料整理に反映させた結果でございますけれども、本対象疾患の選定に関しましては、まず臨床的に大腸がんの肝転移と診断されて、外科的に肝転移巣を治癒切除不能な症例を対象とする。特に治療効果、安全性を考慮して、肝転移巣が3個の症例を中心にしたいということでございます。
それから、放射線照射併用群と非併用群に分け、さらに肝転移巣に注入する遺伝子発現ベクター量を3種類に設定し、計6群。各群3例でございますので、トータル18例を対象とすると。当初は、遺伝子発現ベクター低用量で、なおかつ放射線照射を非併用群から開始し、安全性を確認しながら、高用量、放射線照射併用群へと移行していくということで研究期間を2年間を予定しているということでございます。
その有効性と安全性につきましては、ヒト大腸がん由来細胞を肝臓に移植したヌードマウスにおいて、シトシンデアミナーゼ遺伝子発現アデノウイルスベクターを肝臓に投与し、5−FCを投与したところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が認められたということになっております。また、同一の遺伝子発現ベクターを用いた臨床第

相試験が米国ニューヨーク病院コーネル医療センター及びロックフェラー大学病院との共同研究で既に実施されており、有害事象は認められていないということでございました。
想定される危険性としましては、遺伝子治療液の転移巣からの漏出、腫瘍を穿刺することによる播種などがあって、十分に注意しなければいけないということが指摘されております。
また、使用される遺伝子やベクターの品質に関しましてですが、シトシンデアミナーゼ遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いるわけでございますが、このベクターは、米国FDAの基準に合致したレベルで、米国バイオリライアンス社によりGMP基準に従って生産されるということでございました。
これらの観点から、本実施計画の内容は作業委員会において、科学的に妥当と思料されたわけでございます。
なお、本研究は、薬事法に基づく治験として実施されるということでございました。
以上でございます。
【高久委員長】 どうもありがとうございました。このがん遺伝子治療のワーキンググループの主査の寺田先生から何か補足はありますか。
【寺田委員】 つけ加えることはございません。
【高久委員長】 それでは、どなたか、ご質問、ご意見はおありでしょうか。
よろしいでしょうか。それでは、特にご意見がないようでしたら、この専門委員会として、がん遺伝子治療の3つの計画を妥当としたいと思います。ワーキンググループの皆様方、どうもご苦労さまでした。
では、引き続きまして、九州大学から出ています。冠動脈疾患遺伝子治療のワーキンググループの審査の状況について、これも事務局からよろしくお願いします。
【吉澤学術調査官】 それでは、ご報告をさせていただきます。資料番号は2でございます。
九州大学医学部附属病院から出されております課題は、変異型monocyte chemoattractant protein-1−−「MCP−1」と略しますけれども、この遺伝子プラスミドを用いた遺伝子治療臨床研究ということになっておりまして、総括責任者は九州大学循環器内科の竹下教授ということでございます。
既に、平成14年2月15日に第1回の冠動脈疾患審査ワーキンググループ合同委員会が開催されておりまして、総括責任者からの概要の説明と質疑応答がなされております。
この遺伝子治療臨床研究は、経皮的冠動脈血管形成術後の再狭窄を抑制するということを目的としまして、形成術後の患者さんに、ヒトMCP−1受容体を阻害する変異型MCP−1の遺伝子をコードしたプラスミドベクターを、局麻薬前処置後の筋肉内に投与するというものであります。これによって発現して、さらに血中に循環した変異型のMCP−1蛋白が、冠動脈局所でMCP−1系を抑制するということによって、再狭窄が予防されるということを期待しております。
計画では、使用されるプラスミドベクターの用量を3段階に徐々にドーズアップするということを付記しております。
第1回の合同委員会では、検討すべき点が多数指摘されましたが、とりわけ最近、本計画が対象の一部としております冠動脈ステント拡張術後の再狭窄に対して、薬物放出ステントと申しますものが使われるようになってきて、これらを用いることにより、有効にその予防ができるとの報告がありまして、冠動脈経皮的血管形成術後の再狭窄という問題を取り巻く状況が大きく変化しているのではないかということが委員の先生からご指摘がありました。また、近年、術後、再狭窄を生ずる頻度がかなり低くなっている可能性も指摘されまして、改めて頻度に関して情報を集める必要があるのではないかというご意見も委員の先生方から述べられました。
現在、このような第1回目の審議を終えまして、それらの点を含めた質問、意見などを取りまとめているところであります。以上でございます。
【高久委員長】 この遺伝子治療の申請に関しましては、ご出席の何人かの方にも、第1回目のワーキンググループにご出席いただきまして、さまざまなご意見をいただきました。主査は、東京大学の永井教授です。ワーキンググループで、この冠動脈疾患に対する遺伝子治療について引き続いて審議をお願いしようと思っています。何か特にご意見はおありでしょうか。ワーキンググループの結論が出るまでに、もう少し時間がかかると思いますので、その時点でまたご意見をいただければと思います。
それでは、新しい実施計画について。これも事務局のほうから説明していただけますか。
【吉澤学術調査官】 はい。それでは、新たに申請があった計画が2件ございますので、ご報告というか、ご説明を簡単にさせていただきます。
資料番号は3−1と3−2でございますが、レジュメに従いまして、資料番号3−2の神戸大学のほうから先に説明させていただきます。
まず、神戸大学医学部附属病院を実施施設としまして、医学研究国際交流センターの後藤助教授を総括責任者とした実施計画が申請されております。
課題は、「前立腺がん転移巣及び局所再発巣に対する臓器特異性オステオカルシンプロモーターを組み込んだアデノウイルスベクター」−−「Ad−OC−TK」と略されておりますけれども−−「及びバラシクロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」ということでございます。
本実施計画の対象は、1ページめくると、多分出てくるかと思いますが、根治的前立腺全摘術後の前立腺がんの再発症例、あるいは外科切除不能な進行性前立腺がん症例で、なおかつ内分泌療法抵抗性の前立腺がんと診断されていること。さらに、画像診断学的に評価可能な骨転移巣とかリンパ節転移巣、局所再発といった病巣を有するということを前提としている患者さんを対象としたいとのことです。
用いるベクターでございますけれども、これは単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ−−HSV−TKというふうに略されておりますけれども、この遺伝子の上流に、臓器特異性プロモーターでありますマウスオステオカルシンプロモーターを組み込んだアデノウイルスベクター、これが先ほどのAd−OC−TKというものでございますけれども、こういうものであるということでございました。
このベクターを対象となった患者さんのMRIあるいはCTで評価可能な病巣に、CTまたは超音波ガイド下で直接投与をし、その後に、プロドラッグであるパラシクロビルを連続投与することによって、前立腺がん病巣でオステオカルシンプロモーター下に特異的に発現されたHSV−TK、つまり、チミジンキナーゼでございますけれども、これによってアポトーシスを誘導するということを目標としております。その際の安全性の検討と治療効果の観察を目的としたいと伺いました。すなわち、臓器特異性プロモーターと、それから自殺遺伝子を組み合わせた治療法であるというお話でございました。
同様の遺伝子治療臨床研究は、米国のヴァージニア大学において第

相臨床試験が11例の前立腺がん患者に実施されているそうでございます。その結果では、現在までのところ、肝障害等の有害事象は報告されていないということで、神戸大学のほうの遺伝子治療臨床研究も米国のグループと共同研究であるというふうにお聞きしております。
これがまず第1例目の神戸大学のケースでございます。
それから、もう一つでございますが、資料番号が3−1でございますけれども、北海道大学附属病院を実施施設としまして、同大大学院医学研究科の崎山教授を総括責任者とした治療計画が提出されております。
課題名は、「アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症における血液幹細胞を標的とする遺伝子治療臨床研究」という課題でございます。
本実施計画の対象でございますけれども、これは、ADA欠損による重症複合免疫不全症に罹患した2症例の患児ということになっております。そのうちの1症例は、1995年の8月から1997年の3月まで、北海道大学附属病院において、酵素補充療法下に末梢血リンパ球を標的として、レトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療臨床研究が施行された症例と同じ症例であるとお聞きしております。
それから、もう1例は、一昨年誕生された方で、やはり本疾患に罹患した患者さんでありますが、本疾患の本来根治治療であるべき血液幹細胞移植を行うためのHLAが一致した血縁骨髄ドナーがいないということで、現在、酵素補充療法を行っているが、効果が十分でない患者さんであるということでございました。
使用するベクターは、ヒトアデノシンデアミナーゼcDNAをレトロウイルスベクターに組み込んだGCsap M-ADAというベクターであるということでございました。
方法は、患児の自己骨髄血より得たCD34陽性細胞を標的として、先ほどのGCsap M-ADAというレトロウイルスベクターを用いて、ex vivoにアデノシンデアミナーゼ遺伝子を導入し、その後その幹細胞を患児静脈内に戻すというものであります。幹細胞導入後に患児の末梢血単核球、骨髄細胞、これらにおける導入遺伝子の発現や免疫機能を評価して、導入遺伝子の発現が確認された場合には、続けて行っている酵素補充療法及び感染予防対策を漸減、あるいは中断して、その免疫能の効果を検討しようということを目的としているということでございました。
なお、本研究の遺伝子導入に用いるレトロウイルスベクター、GCsap M-ADAでございますけれども、これは米国FDAにより、ヒト遺伝子治療臨床研究に使用が許可されている、認可されているベクターであって、米国の共同研究者により供与を受けるということで了解を得ているということでございました。
以上が北大の計画の報告でございます。
【高久委員長】 どうもありがとうございました。今、神戸大学と北海道大学の遺伝子治療の研究実施の計画書の説明がありましたが、どなたかご質問おありですか。
ワーキンググループで検討しないとわからないことがいろいろあると思いますが、ガンシクロビルではなくて、バラシクロビルのほうが良いのですか。初めて聞いたのですが。同じようなものでしょうね。
【笹月委員】 ええ。なぜこちらを使うのかというのは、ちょっと資料だけでは不明ですね。
【高久委員長】
この北大の申請ですが、小澤先生、X−SCIDで、フランスのグループが成功したのは、何か特別な工夫をしたのですか。
【小澤委員】 あれは、遺伝子導入効率自体はそれほど大きく改善しているわけではなくて、正常遺伝子の入った細胞が体の中で次第に増えてきたためのようです。
【高久委員長】 グロース・アドバンテージ(growth advantage)があるからですね。このADAの場合も、それを期待しているわけですかね。
【小澤委員】 ええ、イタリアのグループが、既にADA欠損症に対する遺伝子治療を行っていて、それはうまくいっているらしいですね。
【高久委員長】 さい帯血からではなくてですか。
【小澤委員】 自家骨髄移植をベースにした方法でミニトランスプラント的に軽い前処置をかけているのと、それから何らかの理由で、PEG−ADAを併用しなかったらしいんですね。その二つの理由でうまくいっているのだと思います。北大の場合は、米国NHI方式で、前処理を行わないと思いますから、それでも効果が出るかどうかというところがポイントだと思います。
【高久委員長】 興味深いですね。
ほかにどなたか。
【笹月委員】 この第1例というののその後というのは、これはPEG−ADAを使っているからということなんですか。
【高久委員長】 値段が高価なのですね。研究費から出しているわけですね。本人に負担させられないし、おそらく保険もきかないと思いますから。PEG−ADAの量が少しは減ったはずなんですが。だけど、酵素補充療法を切れないというので、実施したいのだと思います。よろしいでしょうか。
それでは、このおのおのの申請に対しまして、審査ワーキンググループをつくらせていただいて、そこで審議することにしたいと思います。
次に、変更及び終了報告というのがありますが、事務局のほうから説明していただけますか。
【事務局】 はい。変更及び終了報告は、資料4をごらんください。
まず、説明を始めます前に、こちらにまとめました変更報告及び終了報告なんですけれども、事前にワーキンググループの審査委員の先生方に、1度ごらんいただいておりまして、問題ないと、了承いただいているものでございます。
では、まず、1件目。千葉大学医学部附属病院のものでございますが、1ページ目をごらんください。
千葉大学医学部附属病院では、食道がんに関する遺伝子治療でございますが、変更報告は、計画そのものというよりも、むしろベクター供給元が事業の整理を行った際に、ベクターの製造販売を他社へ譲渡移管したものによるものでございます。その他、変更の内容でございますが、治験から臨床研究へ移ったものでございます。プロトコールそのものに大きな変更はございません。
ベクターの製造方法及び検査項目ですが、変更前とほぼ同様でございます。
このベクターでございますが、p53遺伝子を導入したアデノウイルスでございまして、これは我が国では岡山大学ほか、肺がんの遺伝子治療臨床研究でも用いられております。岡山大学の変更報告は17ページにお示しいたしました。
岡山大学の肺がんに対する遺伝子治療臨床研究ですが、今も申し上げましたとおり、この研究で使われましたベクターが、製造元が変更されるということによるものでございます。この岡山大学の肺がんに関する実施計画は、東北大、東京医科大、それから慈恵会医科大との共同研究でございまして、これらの共同研究の変更報告については、31ページ以降にお示ししております。
ベクターの製造方法、それから検査項目については、変更前とほぼ同じです。
次に、名古屋大学医学部附属病院からで、悪性グリオーマに対する遺伝子治療の臨床研究でございますが、47ページをお願いいたします。
名古屋大学では、使用していた凍結製剤の有効期間を6カ月から12カ月へ延長する旨の報告が届いております。延長のために有効期間のチェックをしております。それは、56ページより載っておりますが、それぞれのロットで開始時から15カ月、あるいは12カ月までの検査をしております。ここで特段問題なしとして、12カ月の有効期間とするということでございます。
次に大阪大学の末梢血疾患でございますが、59ページにお示ししております。
主な変更点ですが、人事異動によるもののほか、有害事象について、その判定記録について明確化しております。
具体的には、63ページ、64ページ、65ページでございますが、有害事象の報告として、有害事象の判定とか記録の方法、それから重傷度の程度1から3度をどのようなものとするか。それから、処置、発現日、転帰、有害事象と臨床研究薬投与との関連性などについて、具体的に基準を設けております。
以上が変更報告でございますが、次に、終了報告が届いております。
終了報告は、73ページでございます。今お話がありました北海道大学医学部附属病院のものでございますが、これは日本で初めて行われた遺伝子治療臨床研究でございます。
その結果ですが、75ページの「研究結果の概要及び考察」という欄の下から5行目です。「本研究は酵素補充療法との併用下に、免疫機構の部分的再建を得て、臨床的に有用であることを示したと考えられる。しかし、遺伝子発現細胞は末梢血リンパ球のごく一部の成熟T細胞であることから、得られている治療効果の継続には限りがあり、酵素補充療法の継続も必要と判断される」という結果を得ております。
以上でございます。
【高久委員長】 四つの変更と一つの終了ですが、どなたかご質問はおありですか。吉田先生、何か追加……。
【吉田委員】 凍結剤でも1年以上安定だということ……。
【高久委員長】 それでは、次に、遺伝子治療臨床研究緊急報告ということで「重大重篤事象の報告」がありますので、これも事務局のほうからよろしくお願いします。
【事務局】 緊急報告でございますが、これも事前にワーキンググループの先生方に見ていただいております。
まず、千葉大学でございますが、千葉大学は4ページをごらんください。
重大事象として、「重大事態の内容及びその原因」という欄がございますが、そこの下から3行目の「見解」のところでございます。「臨床経過からがんの進行によるがん死と考えられる。治験薬の初回投与から3カ月以上、また最終投与から1カ月以上経過しており、治験薬投与との因果関係はないものと考えられた」ということで、原病による死亡としております。
次に、大阪大学医学部附属病院の実施計画でございますが、これは脳梗塞が起こりまして、その原因についてなんですけれども、7ページ。「重大事態の内容及びその原因」ということで欄がございまして、その下半分のところに、〈原因〉とございます。「合併症である心房細動、あるいはカテーテル検査に起因する脳塞栓の可能性が強い」と。それで、その欄の下から2行目。「11月13日に施行した頭部MRI検査にて両小脳半球に一部微小出血を伴う複数の梗塞部位を認め、脳塞栓の可能性がさらに強まった。よって本剤との因果関係はないものと考えられる」ということで、遺伝子治療の治療薬と因果関係はないという結論でございます。
次に、13ページですが、慈恵会医科大学の実施計画でございますが、これは、遺伝子治療臨床研究の途中で、患者から中止したい旨の相談がございまして、患者さんが退院後、連絡がとれずに他の病院で死亡したとの報告を受けたものでございます。
以上が国内からの報告でございまして、次に20ページでございますが、先ほども出てまいりましたアデノウイルスベクターにp53遺伝子を導入したものでございますが、これは海外で重篤事象を起こしたとの報告を受けております。
被験者が睡眠薬を過剰に内服したため、神経内皮症状等が生じたとの報告でございます。これは日本では起こっておりません。
このアデノウイルスベクターですが、先ほども申し上げましたが、複数の機関で使用されておりまして、お送りいただいた複数の機関の表紙について、24ページ以降にお示しいたしました。以上でございます。
【高久委員長】 どうもありがとうございました。この重篤事象の報告について何かご質問おありでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、一応ご報告いただいたものといたします。
次の議題ですが、遺伝子治療臨床研究の新しい指針。現在、遺伝子治療臨床研究の指針について見直しをしているところですが、その状況について、事務局のほうから説明していただけますか。よろしくお願いいたします。
【事務局】 資料6−1、それから6−2をごらんいただきたいと思います。ご説明は資料6−2に沿ってさせていただきたいと思います。
先生方は、すべてこの遺伝子治療臨床研究に関する指針、文部科学省では、今まで「大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン」なんですが、この見直し検討に参画いただいておりまして、その経緯は十分ご承知かというふうに思います。
発端は一昨年12月に議論を開始したわけで、当時の旧文部省、旧厚生省の段階から議論を開始しておったわけなんですが、省庁再編を経まして、さらに昨年春から、厚生科学審議会の専門委員会との合同委員会を行いまして、まず指針を統一していきましょうということ。それから、迅速審査の導入をしていこうということ。これは、新規性のないベクター、あるいは遺伝子導入法、プロトコールなどの場合には、複数の有識者の意見を聞いた上で、審議会等に付すことなく迅速に結果を返していくというシステムを導入しようということ。それから、薬事法に基づく治験に該当する臨床試験につきましては、今まで文部科学省、それから厚生労働省の臨床研究に関する指針、並びに厚生労働省のほうの遺伝子治療用医薬品の品質及び安全性の確保に関する指針という形での審査という形で、三重の審査を行っていたということでありますが、これについて、治験に該当するものにつきましては、審査について、この指針の対象から除外するという整理を行うと。それから、インフォームド・コンセント、あるいはIRB−−審査委員会でございますが、その規定につきまして、昨今の他のいろいろなガイドライン等の情勢を踏まえた見直しを行うというような観点から検討を進めてきたわけでございます。
それで、7月の委員会で、これら諸点につきまして、大体ご了解をいただいた上で、1点だけ行政上の厚生労働省、文部科学省の審査のシステムをどうするかという点のみペンディングになったまま高久主査のほうへの一任をいただきまして、その後検討を進めてまいりまして、行政サイドから、その結論を出したわけでございますが、文部科学省のほうは、これまでガイドラインを持っておりましたし、個別審査を行ってきたわけでございますが、この点につきましては、医療行為の安全性に関する部分が非常に多いということもございまして、厚生労働省のほうの審査に一本化すること。ただし、指針におきます基準の制定ですとか、あるいはこの報告を受領したりというようなことは継続して関与していくというような整理を行いました上で、各委員の了解を書面でいただきまして、パブリックコメントという形で進めてまいりました。
パブリックコメントにつきましては、今お示ししておる資料のとおりでございますが、平成13年12月13日から36日間意見募集を行っております。文部科学省といたしましては、医学部を有する大学のほうには別途情報を提供した上で、ホームページ上に掲載いたしまして、意見募集をさせていただきました。その結果、意見提出者数ですが、これは文部科学省と厚生労働省を合わせて、それぞれ5件ずつ出てきておりますが、1件は重複しておりまして、合計9件。その中で、意見数として内容別に仕分けさせていただきますと、29件というような意見数でございました。
意見につきましては、2ページ以降、かいつまんでご説明させていただきたいと思いますが、2ページの上から二つ目の意見にありますように、「審査の一元化、審査の迅速化、治験との整理など、実施者として理解しやすくなった」というような賛同意見をいただいております。
そのほか、個々有用な意見がございますので、特に修正に反映した部分について簡単にピックアップしたいと思いますが、その2ページ目と3ページ目の間にございます意見ですが、インフォームド・コンセントを得る際につきましては、平易な表現云々ではなく、被験者の十分な理解の上で研究を実施するというという趣旨が重要であるということのご指摘につきまして、「平易な用語を用いて説明する」と書かれていたところにつきまして、「十分な理解が得られるよう」という、ちゃんとした目的を明示しておるということでございます。
それから、3ページの中段にございますように、「守秘義務の対象者について、研究者だけでなく研究に携わった者全てを含むべきではないか」という指摘につきまして、この趣旨を踏まえた修正をしております。
それから、飛びまして、4ページの下段のほうにあります「臨床研究においてヒトに投与される物質の生産施設について、国際的なGMP基準に準拠するなどの基準を策定すべき」という意見をいただいております。これにつきましては、ご意見を踏まえまして、「ヒトに投与される物質については、その品質、有効性及び安全性が確認されているものに限られるものとする」という従来の規定を具体化いたしまして、「物質については、医薬品の臨床研究の実施の基準に関する省令」−−GMP基準の第17条第1項にあるわけなんですが−−「において求められる水準に達している施設において製造され」という点を追加し、基準を明確化させていただいております。この記述なんですが、要は最後のページにも書かれておるんですが、「治験薬の品質の確保のために必要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の方法がとられている製造所」であることが基準として明記されておりますので、そちらを準用したという趣旨でございます。
さらに具体的な基準等につきましては、厚生労働省のほうから通知という形で出されておるということでございます。
さらに、1点、5ページのほうに移りまして、下の大きな枠でございますが、薬事法に基づく治験に該当する研究をすべて抜いてしまうということではいかんのではないかというような、大きくいえばそういう趣旨だろうと思うんですが、それにつきましては、すべて抜いてしまったわけではありませんで、倫理性の確保、あるいは社会に開かれた形での適正な実施を求め、対象疾患の限定等を規定した第1章については治験にも適用されるという趣旨をご説明している。
それから、たとえその治験に該当いたしましても、先ほど申しましたような治療用医薬品の品質及び安全の確保に関する指針による個別審査を行っているという点。それから、さらにGMP基準の中にも被験者の選定や同意を初め、被験者に対するいろいろ法律上の義務づけなどが行われておって、被験者のほうの観点も十分に入っておるという点をご説明している。
さらには、治験の審査委員会につきましても、要件がないのではないかという指摘が書かれておりましたが、これについても、必ずしも同じものではないけれども、実施医療機関と利害関係を有しない者が治験審査委員会に加わること。それから、治験依頼者によるモニタリング、あるいは監査の制度を設けて、実施医療機関と並行して治験のチェックに当たる仕組みを言っておりまして、そういったことを総合いたしますと、その趣旨が満たされるのではないかという点をご説明しております。
ただし、1章のみ適用することとしてありまして、ずっとそれ以降の章の適用を除外しておったわけなんでございますが、第5章−−ちょっと資料6−1の6ページ目をごらんいただきたいんでございますけれども、「雑則」というのがございまして、こちらは記録の保存、秘密の保護、情報の公開、啓発普及という点につきましても、従来の案でございますと、すべて治験には適用しないこととなっておったわけですが、このうち、一と三、記録の保存、情報の公開につきましては、治験につきましても適用することが適当であろうと。記録のほうにつきましては、先ほど言いました臨床試験の実施基準に関する省令と、こちらのほうで3年という基準が示されておるんですが、今まで5年保存するというような形で運用してきた経緯もふまえて、こちらのほうは指針を適用させていただいて、5年間保存するという形を維持しようと。
それから、情報の公開につきましては、先ほど言いました省令のほうでは、特に記述がございませんので、これはできる限りこういうふうな形での情報公開をやっていくという努力義務を明らかにしておいたほうがいいだろうという趣旨から、適用除外からはずしたということで、適用されるということになろうかと思います。
秘密の保護につきましては、先ほど言いました省令の中でも一定言及されておることから、特に適用していないと、これでよいのではないかと。
それから、啓発普及につきましては、これは治験に該当する場合につきまして、研究者というのは、あくまで依頼を受けてやっておる立場の者でございますので、それが啓発普及に当たるというのは、ちょっとなじまないというような観点から、こちらも適用しないという整理になって、一と三を新たに治験にも該当させるという整理になったものでございます。
それから、もとに戻りまして、6ページの下段から7ページの上段の意見でございますが、意見のうち、下のほうに「胚及び胎児は、被験者とすべきでない」ということで書かれております。今まで生殖細胞及び受精卵への遺伝子的改変は行わないということで書かれておったわけなんでございますが、この「受精卵」という言葉が、昨今別途策定されておりますクローン技術規制法等の観点からも、もう少し技術的に明確化する必要があろうということもありまして、受精卵だけではなく胚ということを含めた記述とすると。その場合には、クローン技術規制法の中で用いておりますこの定義を準用いたしまして、その範囲を明確化したということになっております。
それから、7ページの中段よりやや下のところでございますが、被験者への説明事項のうち、「研究の目的及び方法」だけではなくて、意義を説明すべきという点についても修文させていただいていると。
このような各諸点を踏まえまして、指針を見直させていただきまして、最後の告示に向けた手続に進ませていただきたいというふうに考えております。
【高久委員長】 どうもありがとうございました。今の説明に何かご質問、ご意見おありでしょうか。よろしいでしょうか。
胎児は一応除外をしていないわけですよね。
【事務局】 そうですね。これは合意能力を欠く被験者というものとの同列で考えられる、とりあえずは広く戸を開いた上で慎重に検討するという枠組みに当てはめていくべきということで整理させていただいております。
【高久委員長】 そうですね。よろしいでしょうか。
それでは、次に、今後のスケジュールを説明していただけますか。
【事務局】 先ほどの指針に対する新しい指針の今後のスケジュールなんでございますが、今後、告示の手続を踏まさせていただきまして、できますれば、年度内に告示いたしまして、それから、できれば来年度早々からの施行ということを目指しております。
【高久委員長】 よろしいでしょうか。
それでは、きょう予定した議事は、これでおしまいです。予定より大分早く終わりましたが、事務局のほうから何か連絡はありますか。
【菱山室長】 それでは、本日はどうも多数の案件について、非常に効率よくご議論いただきまして、ありがとうございました。
今ご説明申し上げましたように、遺伝子治療臨床研究の指針の見直しが、もう間もなく終了しますので、審査にかかわる手続というのは厚生労働省に一本化するということになります。したがいまして、先ほどワーキンググループを新たにつくってということで、さらに議論いただくという整理をいただきました部分につきましても、厚生労働省の厚生科学審議会の中で単独で審査を進めるということになりまして、文部科学省のこちらの委員会でということはなくなります。ただし、文部科学省では、個別の審査は行いませんけれども、引き続き指針の制定とか運用とかで、見直しとか、そういったことの一翼を担っていくということになります。したがいまして、ここの専門委員会も当面このまま設置させていただきますので、先生方にもどのように指針を運用していくかといったようなことも必要に応じてご相談をさせていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いしたいと思います。
【高久委員長】 そういうことで、まだ解散しないそうですから(笑)、よろしくお願いします。
ということで、きょうの委員会は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
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