資料2-4 総合政策特別委員会(第1回~第4回)における主な委員意見

1.社会経済の状況・変化

○ 少子高齢化と一括りになっているが、「少子化」と「高齢化」は全く別問題。少子化による人口減少は日本特有の問題だが、高齢化はグローバルに共通の問題。発展途上国でも医療環境が良くなれば高齢化は進む。少子化による人口減少を科学技術イノベーションで防ぐのは難しいが、高齢化は科学技術イノベーションで産業創出につなげることが可能。
○ 科学技術研究コミュニティが、世界的な研究ネットワークの中でマージナルになりつつあり、対応していくことが重要。
○ あらゆる問題について国際戦略を抜きに対処することはできず、国際戦略は横串的に入るべきもの。
○ 欧米の企業は相当以前から、オープンイノベーションでスピード・性能・効率レベルを上げている。日本企業は、もはや既存の技術・製品レベルでは国際競争に勝てない。いかにグローバル市場に勝てるレベルまで技術・製品のレベルを引き上げるか、スピードもトップでないと勝てない。オープンイノベーションはブームではなく、やらざるを得ない状況。
○ デジタル化の進展に対して日本の取組は非常に遅れている。産業界にも責任はあるが、コモディティ化がどんどん進んでしまい、商品のハードウェアには汎用部品しか乗っておらず、ソフトウェアの違いしかない。ところが、日本では、ソフトウェアの研究開発や教育がほとんど実施されてきていない。このままでは、部品・マテリアルは強いけれども、商品・製品では全く太刀打ちできない、となりかねない。

2.第4期基本計画の実績と課題

(計画の検証の重要性)
○ 第4期基本計画までをレビューし、継続すべきものと、非連続で尖らせる部分の見極めをすることが必要。
○ 20年間投資をしてきて、それがどれほど産業や経済や社会の変化に結びついたのか、振り返って分析することが必要。
○ 新しいプログラムを始めるのであれば、現在進めているものの成果・状況や過去のプログラムとの関係をしっかり総括した上で始めることが必要。
○ 数値目標が様々な点に盛り込まれているが、なぜその数値が選ばれたのかが分からない。例えば、なぜ「博士課程の2割が生活費相当額を受給」となっているのかなど。ポスドク1万人計画も含めて、数値目標の功罪をもう少し分析する必要がある。
○ 人材育成に関して、ポスドクやテニュアトラックに関して様々な目標値を作ってきたが、本質的な含意を考えるときにきている。

(主な実績)
○ 科学技術基本法の成立以降、科学技術基本計画による様々な投資によって、大学、研究所等の環境は大きく変わり、国際競争力は付いた。
○ 異分野融合・横断の教育研究プログラムや産学連携の場が大学でも増えてきた。
○ 産学共同研究の距離は以前と比較し、相当縮まっており、両者が膝を交えて議論することで更に大きな前進が図れるのではないかと考える。
○ 企業側も大学側と連携に関する包括的契約を結ぶなど、新しい産業共同のやり方に取り組んでおり、大学の研究シーズを活用する仕組みについて議論して欲しい。

(イノベーションの定義について)
○ イノベーションは、非常に大きな技術革新を伴う社会的変動力のあるアイデアや革新と捉えられているが、もう少しイノベーションの概念を拡大した方が良い。イノベーションは実はそこかしこで起きており、突出したアイデアというよりも、社会やコミュニティの中で普及をしていくといったプロセスの部分が重要であり、そこに光を当てて捉えてはどうか。
○ イノベーションの定義は、世界共通して理解されているようなものを踏まえるべき。「未来の当たり前をつくること」というのは、非常に良い表現。
○ イノベーションの定義について、科学技術の成果物であるアウトプットの社会的価値だけではなく、受け取る側の市民や政策決定者等が受ける価値も含めて、また、科学者の生み出す知的・文化的価値だけではなくて、国民としての知的・文化的価値まで踏み込んで考えるべき。

(社会構造に関する課題)
○ 日本では縦割り社会が根強く支配していて、異分野交流はなかなか難しい。縦割りの源流は大学にあり、文系、理系という区別や学部間の壁は結構高い。縦割り社会ではイノベーションが生まれにくく、異質との出会いを阻む高い壁をどう排除するかが重要な課題。
○ 省庁間の壁、大学間の壁が存在しており、新しいプログラムを作ったとしても結局中で縦割りというのが現状。第5期基本計画では、構造改革のための具体的な行動が必要。

(研究者のキャリアパスに関する課題)
○ 若手人材について、プロジェクト資金雇用と機関雇用のバランスの妥当性はどうなのか。
○ 研究人材を見ると、競争的資金の多くの部分が人件費に充てられている一方で、ほとんどが有期雇用という不安定な雇用になっている。投資をしている国民から見て効果的に活用されておらず、雇用されている人から見ても有難みが少なく、非常に無駄がある状況。
○ 産業構造が大きく変化している中で、その変化を大きく伸ばす人材が適材適所で力を発揮できるような配置がなされていない。そこには、若くて優秀な質の高い博士を戦略的に投入していく必要がある。
○ 一番深刻で、対応を急ぐべき問題は、学生が博士を目指さなくなったこと。博士課程に進みたくても、将来を考えると行くに行けない状況。研究者の道を目指すということが困難になってきている。これは、任期付ポストと任期無しポストのバランスが崩れてきているから。
○ 日本人が博士課程に進学しない理由は、行ってもメリットがないから。
○ 企業は博士人材に対してあまり期待をしておらず、社内で研究者能力を高めた方が良いという考えがまだ大半を占めている。
○ 民間企業が修士での採用を前提としている点について、5年先、10年先を見ると課題になるのではないか。
○ ポスドクは理学系、農学系といったバイオが多いが、企業研究者は工学系が多く、バイオが社会では活用されていない。不安定な職にある女性研究者が非常に増えていることは、バイオの問題ともダブっている。ここの人材をセクター間でつないでいくことが大きな課題。

(人材養成に関する課題)
○ 日本だと、TA受給額が低く、何の責任も発生していない。アメリカでは、TAを通じて、段階を踏んで教えることも研究も両方できるように研究者育成のプログラムができているが、日本では35歳になるまで授業で教えたことが無いというような研究者が育成されていることは問題。
○ 日本の学校教育で、教養としてマネジメントスキルを教えているところは少ない。
○ 大学の研究者は、学生として大学院を終わったら、多くはそのまま助教となり、社会人研修を受けたことが無いように思う。現実には多くの研究者が研究プロジェクトを運営しており、効率が悪く、失敗やトラブルに巻き込まれるリスクも高いと懸念している。経営能力の高い資質を持っている者が芽を出さずに埋もれている可能性もある。
○ サイエンステクノロジーのコミュニティでは、経営やリーダーシップが重要と考える人が少ない。学問の世界だけでなく、産業界の研究者も同じような傾向。専門性を深く追求すればするほど、視野を犠牲にして、ますます蛸壺に入ってしまう。マネジメント、リーダーシップを得意とする科学者を養成していくことが課題。研究費を出しても、受け手の経営力が無いと、非常に効率の悪い使い方になってしまう。
○ URAが研究支援にとどまっておりプロジェクトの主役になっていない。大学の中では、経営は雑用と考えている者がまだ多く、そのような教職員の意識をしっかり変える必要がある。
○ 大学のディシプリンの衰退は日本は危機的な状況。本丸のディシプリンの重要なところを高めていくという意識を大学人は持つ必要がある。本当にピュアな、ノーベル賞を取るようなサイエンティストに対して、マネジメント、知財等をきちっとバックアップするような人材が数多く大学の中にたまってこなければ、一番中心的なディシプリンが衰退していく。
○ 研究データのデータベース化に当たっては、データを分析するデータサイエンティストが日本は非常に少ない。日本ではこういう仕事が評価されないので、この分野に進むことを妨げている。
○ 博士課程は留学生が多く、工学系の場合は外国人を除くと充足率50%以下。留学生を増やすと、日本の技術が流れる可能性があるが、その辺りの考え方についてのコンセンサスがないことは問題。

(女性研究者に関する課題)
○ 女性の管理者層が我が国では増えていないが、海外では増えており、大学の総長、企業のCEOなどにも女性は多い。
○ 研究者の女性比率25%を達成している大学は、研究力強化で指定されている大学中には1か所しかない。また、30代の女性研究者を特任としておくことで女性研究者比率を保っている傾向にある。加えて、長時間労働、ワークライフバランスが達成できないような研究分野で女性がファーストオーサーで論文を書きにくい状況になっている。
○ 女性の問題に関して、企業が圧倒的に少ないことが問題。企業に女性の研究者を含めた採用を促進してもらう必要がある。

(産学官の人材流動化に関する課題)
○ 産と学の間の人事交流というものはほとんどゼロに等しく、これまで産学官連携を謳う中で、そこの仕組みが整備されてこなかったことは問題。
○ 社会人博士は、所属する企業、学生自身、教員が揃って苦労している。
○ 社会人博士は実体を伴わない人が多い。現状をきちんと把握しないと、単に抜け道を作ってしまうだけ。今のシステムでは、本当に優秀な社会人博士はなかなか来ないし、取れない。
○ 今広まっている社会人博士は質保証の点で多くの問題がある。新しいシステムを作る必要がある。

(産学連携に関する課題)
○ 日本の基礎研究から生まれてきたものを日本の企業がやってくれるのが一番良いのだが、そういう時代では無くなっている。日本の企業はどんどん海外に出てしまっているし、基礎研究の成果で社会に還元できるものは論文と知財しか無いのだが、知財の部分を日本の企業がやらなくなってくると、一体どこにやればいいのか、となってしまう。非常に悩ましい。
○ 海外の企業から研究生を受け入れたら、それは良いことか悪いことなのか、何をもって国益とするのか、その辺りが非常に分かりにくい。感情を交えずに、どうしたら良いか真面目に考えた方が良い。

(研究基盤に関する課題)
○ 産業界では、施設・設備の整備に当たっては運営コストまで含めて検討する。国の予算は最初の設備投資しか考えておらず、結果として十分使われないものになっている。この点は大きな問題であり、見直していくべき。
○ ライフサイエンスの研究では、先端機器等がほとんどアメリカのベンチャーから輸入されており、高額になっていることへの対応が必要。

(資源配分に関する課題)
○ この20年の投資が、国としての基礎力を付けるということに対して必ずしも有効に作用していない側面がある。
○ 国立大学においては、基盤的経費が削減される中で、大学の研究環境は悪化し、学術研究の推進はもとより、人材育成にも大きな影響を及ぼしている。
○ 大学、研究開発法人が、基礎研究ができない、人材がいないという疲弊した状態にあることは課題。
○ 様々な事業(女性研究者支援、リーディング大学院など)について、競争的資金のような形で応募して、支援はしてもらうのだが、一定の年限で終わってしまうことに問題がある。支援の中には大学院生に対する生活支援等も含まれているが、それも期限が来ると打ち切られてしまう。

(科学技術イノベーション推進体制に関する課題)
○ 研究データのデータベース化について、競争的資金でやることが多く、長期的な研究の保証がない。このため、アドホック的な、属人的なデータの収集になってしまい、オープンイノベーションとして利用することを妨げている。
○ 評価のための多大なコストがかけられているが、評価報告書が十分に活かされていない状況。データ化して機械が読める状況になっていない。
○ 新しい政策を出していく時に、大学や研究法人などの受け手側についての認識、又は分析というものがあまりなされていないということは大きな問題。
○ 政策の連動性を考えるべき。例えば、大学に大学発ベンチャーを活性化させるための資金を入れたが、大学院の教育制度と連動していないことは問題。

3.目指すべき国の姿

(長期ビジョンの重要性)
○ 国としての明確なビジョンが必要。グローバルになったのは比較的最近の話。グローバルになったということは、人間の活動の影響が大きく拡大し、地球自身は有限のものであるということが際立ってきたということ。その中で、国境や国家といったものも含めて世界の在り方を見直す中で、日本が国際的に認知され尊重され続けるために科学技術投資はどうしなければいけないか、という視点が重要。
○ 我が国の科学技術の方向について、どのような長期的パースペクティブとビジョンを持つべきか、今置かれている状況や歴史を踏まえた上で議論する必要がある。何故今、科学技術イノベーションをやらないといけないのかも押さえる必要がある。
○ 次の5年、更に10年を見据えて、どのような国の姿を描き、そのためにどのように基礎的な投資をしていくかを考える必要がある。
○ 現在の我が国の国際的な地位は、2000年の歴史で見れば高止まりしているが、10年くらいで見れば滑り落ちている。そういう状況の中で、過去の投資を活用する方法について、今後5年はかなり具体的な手を打っていかないといけない。
○ 今後20年間で我々はどこへ向かっていくのか、科学技術イノベーション総合戦略が示した「2030年の姿」の議論の背景や的確性を確認した上で、国の姿を共有していくことが必要。

(具体的な国の姿)
○ 社会からの信頼を獲得するには、国の施策は、日本人の雇用を創出し、日本人の所得がきちんと増え、経済力が維持できるような活動につなげていくものでなければならない。現在の産業活動は今のままでは駄目であり、資源、ストックを最大限活用しながら変えて、結果として投資している国民にきちんと還元されるシナリオが必要。
○ 無から有を生み出して新しいビジネス・雇用につなげていくことが非常に大事。そのためには、第1期基本計画開始から20年間で蓄積したストックを最大限活用していくことが必要。
○ 「目指すべき国の姿」の中に「国民が幸福を感じる国」を加えてはどうか。
○ 「目指すべき国の姿」の中で、最もビジネスにつながるのは「快適」である。
○ これからの東アジアの安全保障環境を考えると、「目指すべき国の姿」の中に「安全保障」という言葉は落とせないのではないか。
○ 国際化の中で、日本の強みを発揮するという視点のみならず、どこで日本が貢献できるのか、といった視点も世界の中で日本が尊重され尊敬を集める獲得していくためには重要。

4.イノベーション基盤力の強化

(人材システム改革)
○ 今後、人材資本と関連する知的資本が非常に重要になってくる。特に、我が国は非常に平等主義的社会だが、科学技術イノベーションを引っ張っていくのは事実上トップ10%の人材であり、そのような人材がどんどん伸びていかないといけない。
○ イノベーションの創出には人材の最大限の活用が必要。特に、産業のターゲットシフトで活用されていない民間企業の優秀な研究者、ポスドク、次世代を担う若手研究者の3者の活用が重要。
○  人材については、ポートフォリオの組み方も含めて、安定的なシステムを構築するための施策を議論すべき。4期までの投資で蓄積されたストック、場合によってはポスドクの滞留を、新しい価値創造につなげるための転換を図っていく必要がある。
○ 任期無しポストを若手にたくさん用意しないと、若手の研究者離れは止まらない。
○ 研究者の活用のためには、時限でも良いので、日本全体で研究者をプールするような仕組みを作り、運用していくことが効果的であると考える。
○ インターシップ経験があると、民間企業への希望者が増える。こういう工夫が、リーディング大学院で少し始まっているので、人材の滞っている流れを解決できるヒントとなる。
○ 重要なことは、キャリアパスの多様化と、セクターを越えた人材流動。
○ 若手を尖らせつつ、研究倫理を守りつつ、如何に自由活発な研究ができるようにするかが最も重要な課題。そのための仕組みづくりが必要。
○ 個々の人材の質を高めるためには、TAによって経済的支援と質の高い授業が行えるような指導ができるプログラムとを連動して行う取組が必要。
○ 博士課程学生に対する経済的支援に関する具体的取組が必要。
○ 大学院生の生活支援はしっかりしなければいけない。ただし、なぜお金をもらっているのか、意味合いをしっかりと伝えなければならない。
○ 個々のプロジェクトや機関に関する評価において、人材に関する取組がどのように行われているのかを評価することが重要。
○ 大学の教育者には、学者、研究者が決して特殊な専門集団では無く、あくまでも社会を構築する一つの職業集団であるという意識を強く持ってもらいたい。そのことが、マネジメントやリーダーシップに優れた人材を生むことや、どういう研究であっても、社会の中で支えられていて、また税金を使って研究しているという責任を、個々の研究者、学生が持つことにもつながる。
○ 大学院には、研究者を養成するという側面と、グローバルな視点を持って各地で働ける、いろんな局面でリーダーシップを発揮できるような人材を養成するという側面の二面性があり、現在の大学院教育をどういう形で扱っていくのかということも考える必要がある。
○ イノベーション創出には、非常に複眼的で多様な視点を持った人材を育てていかなければいけない。女性研究者、文系的なアイデアを持つ研究者、海外の優秀な研究者などが日本の研究拠点に入っていくことで、複眼的な視点を持った人材が生まれてくる、そのような取組に対する支援も必要になってくる。
○ 研究開発活動やイノベーション活動はチームでやるので、チームとしてどう力を発揮するかが重要。
○ あらかじめ社会がキャリアパスを設定して、それに応じて大学院や研究所が人材を養成するということが必要。よって、社会の様々なステークホルダーが博士課程教育や研究機関の人材育成にコミットすることが必要。
○ 博士課程教育について、産業界、大学、行政の3業界が議論を深めて具体例を積み上げることが必要。大学側が、企業に博士を送り、博士の力を見せつけるということをやる必要がある。
○ 一般の学生と社会とのリアルな接点について、インターンをもっと充実させ幅広く大人数に提供できると教育効果が格段に上がる。
○ 求めている人材像が聖人君子を求めるような理想論ばかり、科学万能主義に陥らないようにしないと、若い人たちが余りにも重荷を感じて、大学院へ進まないようになるのではないかと感じる。成果主義的な匂い、国としての焦りがあるように見える。
○ 学問を究めるのはそれだけで大変。最近は学問の進歩が速いので、それに対してキャッチアップしてかつ先端を切り拓くというのはそんなに甘くない。分野融合もそう簡単にできるものではない。現実の学生は個々の専門をやっていくだけで精一杯。
○ 様々なコンテストやスーパーサイエンスハイスクールなどが裾野の拡大に貢献しているのか、一度その効果を評価する必要がある。初等中等教育の現場として良い効果を生むのか不確かである。
○ 科学の魅力を、子供の教育の段階から浸透させていくことに加えて、社会において本当に科学技術が活用されているということを、もっと分かりやすく見せていくような場面が必要。本当に国際政策に貢献している研究者もいるが、そういう方々の役割を日本人は余りに知らなさすぎる。
○ 科学技術を文化として育むためには、小学校段階からの教育が重要。特に小学生を教える教員の教育は重要な課題。
○ 女子生徒が理系に興味を持ち続けるためには、理系の女性教員の養成を促進すべき。あるいは理系の女性教師の採用を進める必要がある。
○ 女性について、低年齢のうちは理系に興味があっても、高校生になると興味が薄れていく。そこの理由をひもといていくことが重要。
○ 女性研究者支援については、お金が無くなった途端にその事業の取組が大学内で無くなってしまうということが結構ある。恒久的に支援を継続していくという姿勢が見えなければ、女性研究者を支援していくという姿勢が見えないのではないかと感じる。
○ 高度人材が日本に定着するための移民政策を考えていくべき。
○ 外国人留学生の割合について、学部の中で留学生を増やしていくことは、ステークホルダーである国民の子弟を受け入れないことになってしまう、という問題も現場にはあるように思う。
○ 異動の促進のためには、給与制度、雇用制度のみならず研究費制度が重要。施設を移動した研究者を対象とする研究費や、留学から帰ってきた人のための研究費などが考えられる。
○ 社会で活躍する優秀なノンディグリーが多いと思うが、そのような人材に学位を与えて、産学連携の中で新しい産業を作っていく活動も重要。

(イノベーションの源泉としての学術研究・基礎研究の強化)
○ オープンイノベーションの前提として要素技術が存在していることが必要。このため、国全体で考えると、基礎研究をきちんとやるかということも重要。
○ 科研費については、応募区分や審査方式の見直し等、研究分野の融合・創出等に資する仕組みへの転換等のための改革に取り組むことが必要。また、基金方式を更に拡充することが必要。
○ 科研費の改革に当たっては、より多くの若手研究者が、能力と意思に応じて研究できる科研費という性質を大事にすることが重要。

(共通基盤技術、研究基盤の強化)
○ 運営費交付金が削減される中で、研究開発基盤、インフラ、データベース等をどう維持していくかが課題。
○  基礎研究と応用研究のどちらも支援することのできる基盤研究やデータベースなどに対する重要性への認識が十分でない。中長期的に見た場合、それらを支える人材は決して弱体化してはならない。
○ ビッグデータ関係が基盤技術としても、環境整備としても非常に重要であり、第5期基本計画では、「ビッグデータ」が重要なキャッチコピーの一つとなるべき。
○ コンピューティング技術が単にスパコンの開発だけに終わらないよう、ビッグデータのためのデータ収集・分析というようなシステムも是非視野に入れて欲しい。
○ 共通基盤的な技術と大規模プロジェクトの両方にまたがるような技術開発に当たっては、デュアルユースについてきちんと考えていくことが必要。
○ インフラの維持については、競争的資金や単年度の取組ではなく、価値を高めるためにも運営コストも考えた戦略的な投資が必要であり、それがイノベーションの基盤になる。
○ 共同利用の施設・設備について、多くの研究者の支持が集められるような施設・設備は残すが、そうでないものは検討を促すことも重要ではないか。
○ 多くの研究者の支持が得られないような施設・設備でも将来を考えたときに残しておくべきものはあるはず。そういうものをエビデンスベースで見ていくことが必要。
○ 共同利用やデータの共有について、大学や研究者にインセンティブがないとなかなか進まないのではないか。現状では、共同利用すると予算が削減されることがあるが、コストを減らすことに対してインセンティブが働くようにするべき。

(民間のイノベーション活動を支えるイノベーション・システム構築)
○ 本当にオープンイノベーションが起こるような新しい仕組みを作っていく必要がある。
○ 大学の中には多くの技術や知識がたまっているが、それを外部の者がなかなか認識できないことが問題。オープンイノベーションにより、そうした技術や知識を発見してくれるという側面が有り、そういう意味で非常に重要。大学を公的な、社会に役立つストックの場としてとらえ直し、その点を協調することにより、オープンイノベーションで大学の中に蓄積されている技術・知識を社会に発信していくというシステム改革が必要。
○ 産学連携でこれから求められるのは、企業、大学、公的研究機関が一緒になって、何をやるべきかという議論を行う場作り。従来のリニアモデルではなく、ユーザー起点の価値創造モデルにイノベーションの方法を変える必要がある。
○ 新しいイノベーション・システムについては、具体的にどのようなシステムを作るのか、あるいはどのようなシステムがふさわしいのか具体的議論を期待。その際、ユーザー視点でやるべきことを決めて、必要な技術はオープンイノベーションで探すということが非常に重要。
○ イノベーションは異なるアイデアが出会って交わって、初めて新しい社会的価値ができる。そのような場で議論がぶつかり合うと今まで考えてみたこともないことが出てくる確率が高く、イノベーションの量産化につながる。それを担保するような教育プログラムや社会の仕組みが必要。学生・教員が、外部との交流が無駄では無く重要だと思える環境ができると良い。
○ 産学連携に当たっては、新しいコンセプトの議論の中に、革新的な研究シーズとか要素技術の情報が盛り込まれると本当に新しいコンセプトが生まれる可能性がある。そういう仕組みをビルトインすることが重要。
○ 現在、ビッグデータの活用、すなわち大学や公的機関のデータを、匿名化し、ビジネスに展開していくかが非常に重要であり、産学官で流動性させる情報の中に、知識、技術に加えてデータも加えてもらいたい。
○ イノベーション・システムの構築に当たっては、大学は研究するところで、それ以降は民間企業にお任せという丸投げ的にならないようにするべき。
○ 高等教育は大学という単位が非常に強くなってきているが、研究というものは日本全国のストックを活かしていくことが重要であり、もう少し全国的観点でものを見ていく必要がある。
○ 産学官連携を考えるときに、大学病院の在り方を考えることが重要。諸外国では大学病院は組織的に大学本体と切り離されており、また、医療の現場には、ビッグデータの問題、産学官の連携の問題などが集約されているので、医療イノベーションを考える際には、大学本体とは別に考えるべき。
○ 産学共同研究に、産業界及び大学がそれぞれどのような動機で参画しているかという点は、これからの産学連携を考える上で大変重要。
○ 大学の知や技術をオープンにして使ってもらうという流れがあるが、それに係る業務を大学の先生だけで行うことはできないので、産学連携組織の小さい大学は対応が難しい。出てきている方向性とやり方がマッチしていない気がする。
○ 大学の企業の共同研究が平均200万円と小規模なものが多いということであるが、企業全体ではなく研究者レベルで取り組んでいるものが多いということだと考える。この点は、共同研究のステージが進行してくれば額が大きくなるものと考える。
○ 企業が寄付講座として大学に資金を提供している場合は、共同研究には含まれない。したがって、共同研究の額の多寡については、産学でどういうことを行っているか少し幅広く見ていく必要がある。
○ 基礎研究から出てきた成果のうち、論文は普遍的なものになって直接産業に行くわけではないので、知財が残る。知財に関して、日本の企業がまず手を挙げてくれれば良いのだが、日本のGDPが世界の10%以下であることを考えると、日本の中で実用化されるということの方が例外的になってしまう。また、日本の企業であっても必ずしも日本に税金を収めているわけではない。そのような場合に、知財をどのように扱うのか、国として国益の観点から真剣に考える必要がある。
○ 特許が他の特許に引用されれば、使われたこととほとんど同じであり、そうした点も含めて大学発の特許の価値を評価すべき。
○ 知財戦略を行うときに、アメリカは明らかに国家戦略の中で知財戦略を動かしている。バイドール法で、大学の中で出来上がった知財は、必ずアメリカのベンチャー企業に渡せと書いてある。戦略的にこの問題を考えていって、国家戦略の中に落としこむ視点がとても重要。
○ イノベーションの上流のところで、科学技術の先生とマネジメントの先生と企業の人間といった多様なパートナー、多様な人材が、イノベーションとその先の社会を考え、議論するような場が必要。技術経営教育もそこで施し、場合によってはプロジェクトが出てくるようなイメージ。イノベーション全体を俯瞰する、フロントから最後の出口までをフルラインで揃えたオープンイノベーションの場を作る仕組みが欲しい。
○ 産業界と大学の連携を現実的に進める場を作ることは重要。COIがその役割を担い始めているが、全国の各地の大学で、産業界に積極的に入ってもらって、教育やインターンシップもしながら、オープンイノベーションの場の形成を強化する必要がある。尖った分野をやる人材と、マネジメントをやる人材、知財を管理する人材、全体を束ねる人材などが仕事を分担し、組み合わさりながら有機的な組織体を作る試みが本当に必要。
○ イノベーションの創出にあっては、コンセプトを決めてからバックキャスティングで何が必要かを考えることが重要。そのためには、セクターを超えてアンダーワンルーフの基盤を整備することは重要。
○ 共創の場はどの大学でも作られていく必要がある。
○ イノベーションによって社会的・公共的価値を実現していく上では、人文学・社会科学の観点が重要。

(企業の研究開発活動の促進、ベンチャー・中小企業の支援強化)
○ ベンチャー支援について、成功しているベンチャーキャピタルも存在する。そういうやり方を良く研究し、ベンチャー支援に関する日本流の必勝パターンを作っていくことが非常に重要。
○ イノベーションが世に出ると、既存の社会の仕組みと対立し破壊しようとする。ルールをそれに合わせて変えないといけない。新しいルールの下、初めてイノベーションは合法的に社会に実装される。そこには政治のリーダーシップが求められる。サイエンティストも無関心ではなく参加・貢献すべき。

(イノベーション・システムを支える人材の育成・確保)
○ これまでもしかすると、発生しているイノベーションの種を我々は数多く見過ごしているかもしれない。そこをピックアップできる体制作りが必要。これまでの、新しいブレークスルーを発見しようとする人材への投資に加えて、今後は、それを発見し普及させていくようなプロセスに関わる人的資本への投資が必要。
○ オープンイノベーションで必要なリーダーシップや異分野を束ねる力を持った人材はそろっていない。そのような人材は、企業では必ずしも育成できない。大学でそのような博士人材育成ができれば、企業も欲しがるのではないか。
○ 異質な人たちが出会って交流をするヘテロジーニアスな場には、コミュニケーションスキルや、議論、説得、交渉といったマネジメントスキルが必要。医師や研究者の卵たちにマネジメントスキルを習得してもらうことが重要。
○ プログラムの運営に当たっては、研究者と運営側、さらに産業界や資金配分機関との間を上手く仲立ちできるような人材の重要性がますます高まっていくので、その育成・確保もきちんと行うべき。
○ イノベーションを起こすような人材を育成するのであれば、研究推進能力だけではなく、プロデューサー的な能力も必要。
○ マネジメント力を人事制度に反映・定着させていってはどうか。
○ 研究者を目指す学生に対して、早い段階から、英語教育と同様に経営に必要なスキルセット、経営マインドセットの教育機会を提供し、プロジェクト経営ができる経営者を育てるカリキュラムが必要。リーディング大学院はその走りであり、発展させることが大事。
○ 博士課程教育リーディングプログラムでは、新たなイノベーション人材を育てる取組を進めているが、今後更に加速して、博士人材に対するイメージが変わるくらいのことをしていかないといけない。
○ イノベーション人材、例えばリーダーシップ、調整力を持つ人材は、中等教育段階、高等教育段階と、幅広く教育していくことが課題。STEM(Scientific, Technology, Engineering and Mathematics)教育、特に中等教育段階の取組が必要。
○ イノベーションを支える人材やベンチャーマインドを持った人材の育成は、なかなか難しい。欧米ではそういう人材はビジネススクールの卒業生であり、日本でも有力大学がもっと真剣にビジネススクールの研究をし、研究拠点を作っていかないといけない。
○ 大学生は卒業した後一旦社会に出て、リアルワールドに触れてほしい。課題を自分で発見し、それを背負って大学に戻り、多様な人々とともにベンチャーマインドを育む教育を受ければ、自分で新会社を興すようなことができる。
○ 社会人はリアルワールドに経験があり、市場ニーズに対する研ぎ澄まされた感性を身に付けた上で、いろんな課題を抱え、その答えを探しに大学院に入ってくる。そういう目的意識がはっきりした者に教育と研究の機会を提供すれば、市場のニーズに応える研究が展開され、人材が輩出されるであろう。
○ 大学院の理系の教育の中に、大学発ベンチャーやベンチャーキャピタルを学ぶようなシステムを作ってみてはどうか。
○ リサーチ・アドミニストレーターは重要だが、資源配分が限られている中では、何かを行うのであれば、何かを捨てなければいけない。したがって何を捨てるか、例えばこの場合研究者のポストが減るとか、そういう点を明確にする必要がある。
○ 研究基盤をサポートする人材をどうやって維持していくかは重要な課題。研究者の研究時間の確保にもつながる。

5.科学技術イノベーションによる社会の牽引

(国内外の重要課題への対応)
○ 「科学技術イノベーション総合戦略2014」の中に「5つの課題」が設定されており、その中で欠けている視点、深堀すべき視点があれば追加していけば良い。
○ イノベーションを起こすためには、現在の社会の課題を解決するのではなく、社会の課題を先取りしていくことが重要。

(ICTの急速な発展がもたらす変化への対応)
○ ビッグデータについて、皆が使え、流通・処理できるようにしておかないと、諸外国に置いてきぼりをくらう。ソフトウェアの重要性を強調すべき。
○ 従来のコンテンツ以外に、ビッグデータということで様々なデータの活用が今後重要となるが、実際に商用に使おうとすると最初の許諾が問題になって活用できない場合が多い。既に集まっているデータ、これから集めるデータに関して、商用化を保証したデータの集め方を考えていく必要がある。

(コア技術の研究開発)
○ 国でないとできない科学技術投資は歴然としてあり、そういうコア技術について、国としてきちんとコミットメントすることが重要。
○ 国が実施すべき研究開発は、大規模なものだけではなく、小規模でも持続的に実施することが必要な分がある。そういうことも踏まえて、第5期基本計画でコア技術をどうするかを検討することが必要。
○ コア技術に属するものは、それぞれの政策領域で基本計画に相当するものがあり、それぞれに決まっていく面がある。したがって、科学技術という観点からこれらの技術の基本的な考え方を定めていくことは重要。
○ 第4期基本計画の国家安全保障・基幹技術プロジェクトの推進に当たって、戦略協議会のようなオープンな仕組みが適していなかったのではないかと考える。もう少し、実際的なアプローチを考えることが必要。
○ 国家基幹技術というカテゴリーに入るものは、数百億円以上の規模で、長期的な安定性と戦略性をもった計画と実行を、責任を持ってやっていく仕組みが必要。そうした中で、デュアルユースの問題やどのようなものが基幹技術かなどについても議論していく必要がある。
○ デュアルユースの定義も明確にしておく必要がある。日本学術会議では、デュアルユースを民間対軍事ではなく、人類の福祉という面と人類の脅威として悪用される面という観点で議論をしている。
○ 自然災害観測・予測技術や宇宙探査技術など、国のコア技術として適しているか疑問。また、コア技術を推進するのであれば、これまで国家基幹技術として実施してきたものについてどう考えるかという点も必要。
○ コア技術というものに入っていない技術は必要ではないものという受け取られ方をしないよう、その在り方については慎重な議論が必要。

(科学技術イノベーションと社会との関係強化)
○ 研究活動の不正行為への対応は避けては通れない。国際的に日本の科学技術が信頼を維持するためにも、人材政策の中で、倫理教育の重要性の観点からしっかりと位置付ける必要がある。
○ 研究倫理に関して、研究のようなクリエイティブな活動をする人に、一人ひとり倫理を意識して研究を行えと言うよりも、研究機関が倫理の指針をマネッジすべき。ガイドラインを付けて、研究者はこれらを守っている限りはあとは自由にやってよいと、研究の自由度を高めることも倫理規定の役割。研究者に個別の倫理観を押し付けるようなものであってはならない。
○ 情報技術やゲノム・創薬等については、科学技術イノベーションのシーズから社会的な影響が起こるまでの期間が非常に短くなっている。例えば、CSTIの下に委員会等を常設して、労働市場への影響や必要な法整備等の社会的影響について、不断に検討、予測を行うといった取組が必要になるのではないか。
○ 社会との協働の仕組みをもう少し新たに打ち立てる必要がある。課題の設定から、研究計画立案、研究推進、研究成果の社会実装に至るまで、全て社会のステークホルダーと協働で行っていくという仕組みを考える必要がある。
○ これからの時代、産学官というセクターだけではなく、市民が加わっていくことが非常に重要であり、科学技術イノベーションの取組も産学官民という形で整理していくことが必要ではないか。
○ 科学の位置付けを良く説明して、科学には良い点もあり、限界もあるという、文化としての科学を踏まえた上での具体的取組であるべき。

(「世界の中の日本」を意識した政策の推進)
○ イノベーションにおいて日本だけを意識するのではなく、産業界はグローバライゼーションということで、市場は日本だけに閉じていないため、グローバルな出口というシナリオを意識する必要がある。
○ 「世界の知を効果的に取り込む」「多様な人材を集める」というのは、ギブアンドテイクの「テイク」だけになっている。「ギブ」、つまり日本で研究開発や人材育成が行われて、そこから発していくというイメージがあると、自然に人材も集まってくると思う。
○ これまで20年間の投資によって蓄積された価値を更に高める、有効に活用するといった戦略が重要。
○ 国として、学術、産業の両面でどこで勝っていくのかを意識しないといけない。
○ 国全体としてのコンピタンスを確保し、持続可能な形で維持・発展させていくためのプログラムを政府全体で推進すべき。
○ 2020年の東京オリンピックを上手く活用し、それまでに具体的に何か実現するというアクセントを入れていかないと、粛々と記述するだけで、5年後にまた同じようなことになっているのではないか。
○ 東京オリンピック・パラリンピックを目指して、5年間で世界と模範となれるような科学技術を進めて、日本のプレゼンスを上げていくべき。

6.科学技術イノベーション政策の全体最適化

(大学と研究開発法人の役割)
○ 大学、研究開発法人それぞれがやっていくべきことは何なのかを分析してはどうか。
○ 研究開発法人の仕組みを変えることを踏まえて、産学間の連携について改めて仕組みをきちっと作った上で交流を図っていく必要がある。ドイツのフラウンホーファーのやり方は一つの参考になる。

(大学改革、研究力強化)
○ 個々の大学が自分のビジョンの中でやっていくことが重要。国が目標値を決めて、個々の大学にこれをやりなさいという形からの転換の時期に来ている。数値目標を作って、達成しなければ予算を減らしますよ、という政策はやめた方が良いと思う。
○ 大学間の競争を激化させる方向に政策を転換していくべき。人材の引き抜きが起こらない、博士に起業意欲の高い人材が行かないのは、おそらく日本の大学の中の序列制度が大きく影響している。アメリカのように、個々の大学、研究機関の競争環境を作ることで、博士課程の研究環境が改善し、人材の引き抜きが生まれ、人材育成のシステムが生まれてくる。
○ 国立大学の附置研究所についても、時代の変化の中で、制度的に最適化されているか見直すことが必要。この点について、個別法人の中の議論が先行しているが、本来は日本全体として最適化するという観点から議論し、その資源を有効に活用していくことが重要。
○ 附置研究所や大学共同利用機関について全体的な視点から考えることが重要。特に、それらの組織の保有する大型設備を年間通して運転できないという状況も出てきており、基盤的経費の強化は必須の課題。
○ 運営費交付金の減少で一番苦しんでいるのは地方国立大学で有り、その見直しに当たってはその点も考える必要がある。

(資源配分戦略)
○ 今後は、学術政策と大学政策と科学技術政策が連携してデュアルサポートシステムの再構築に取り組むことが重要。研究者を育てる上で、パーマネントなポジション確保や、大学の戦略的な取組を支える意味でも、基盤的経費の確保・充実は非常に大事。多様な研究者による質の高い学術研究支援を加速するという意味では、科研費は非常に重要であり、デュアルサポートシステムの再構築は人材育成にとって非常に重要。
○ 基盤的経費については、大学においては明確なビジョンや戦略に基づく最大化により、その意義を最大化することが必要。また、国が確保・拡充に努めることが必要。
○ イノベーションの源泉の強化は非常に大切であり、特に大学における学術研究・基礎研究の土壌を豊かに分厚くしていくということが大事。そのためには、大学の経常的な教育研究を支える基盤経費の削減を逆転させ、増額していくことが必要。
○ パフォーマンス評価と投資の連動の仕組みについても議論する必要がある。
○ 科学技術のファンディングはいろんなやり方があって然るべき。
○ 研究費に関し、間接経費の問題をきちんと考えるべき。間接経費は個々の大学の研究状態にマッチした研究費の配分の仕方であり、運営費交付金をある程度リプレースするものになり得る。
○ 間接経費については、競争的資金の拡充を図る中で確保・拡充するとともに、大学においてより一層効果的に活用することが必要。

7.科学技術イノベーション推進体制

(政策の企画立案及び推進機能の強化)
○ 国がこれこれを推進するというような計画では無く、具体的なアクターが何をやっていくのかが明らかとなった計画を作るべき。
○ これまでの政策は科学技術や学術の作り手側からの議論が主であったが、第5期基本計画を考えるに当たり、それを受ける側、ユーザー側についてもう少し踏み込むことが必要ではないかと考える。
○ 日本の科学技術を向上させるために必要となる基盤データは、機械可読な状態できちんと整備していくことが必要。
○ 第5期基本計画を出して検証する際に、アンケート調査だけではないやり方を考えておく必要がある。ビッグデータなどは解析に役立つ。
○ エビデンスに基づく政策作りを進めるに当たって、科学技術活動に関わる人材については、分野、年齢、職階、セクター別にどの程度の人材がどこにいるのか、今後の変化を見通した方が良いのでは。
○ エビデンスベースド政策は受け入れやすいが、本質的課題は表面に顕在化せず、エビデンスが余り存在しない。よって、有識者が英知を巡らせて深く掘り下げることと両方のアプローチが大事。また、エビデンスの中には使い物にならないものもあり、本当に信用できるのかどうかよく吟味することが重要。
○ 日本ではデータベースのようなものを整備するとき、最初5年間だけ予算が付いて、後は自助努力ということになることが多く、結局、実用になったものはない。日本初のデータベースを作るということを明確に規定していかないと、資金を投入しても何もできないということになる。

(PDCAサイクルの確立)
○ これまでの投資の活用状況を評価する際に、投資額全体が縮小傾向にある中で、ありとあらゆることに素晴らしい状況になって下さいと言っても無理がある。トップ1%論文、特許件数、産学連携回数などが全ての事業の報告書で記載を求められると、例えば人材育成で資金を投入したのに論文数で評価されるなど、一体何のために投資をしたのか不明確な状態になる。各プログラムについて、投資目的に沿った評価指標を明確化していくことが、投資効果を最大化するために必要。
○ 実は科学技術政策の外側の様々な制度が科学技術の在り方を規定している。どうしても局所最適化になりがちなので、そうではなく持続可能な形、具体的にはPDCAを組み込んで、機能するようにしないといけない。そのためにはデータの蓄積・活用等も必要。
○ イノベーションの実現に当たっては、プログラムについて、目的・目標を明確にし、デザインと運営をきちんとやっていくことが有効と考える。また、様々なデータにより、実際にイノベーションや研究システムがどのようになっているか見えるようにすることも重要。

(以上)

 

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-- 登録:平成27年05月 --