独立行政法人改革等に関する基本的な方針(平成25年12月24日閣議決定)(研究開発型の法人への対応抜粋)
5.研究開発型の法人への対応
(1) 研究開発型の法人に共通に講ずるべき措置
○ 研究開発型の法人についても、他の独立行政法人と同様に「中期目標管理-評価」という枠組みが最適であると考えられるが、研究開発業務の特性(長期性、不確実性、予見不可能性、専門性)を踏まえると、当該法人に期待される研究開発成果の最大化という観点から、独立行政法人制度の個々のルールや運用を大胆に見直し、独立行政法人制度の下で、研究開発型の法人の機能の一層の向上と柔軟な業務運営を確保することが求められる。例えば、中期目標期間について、特に長期的な研究開発プロジェクトを踏まえた形での設定を可能とすることや、より研究開発業務の専門性を加味した目標設定・業績評価が行われる必要がある。
○ こうした点に鑑み、研究開発型の法人については、独法通則法の下、中期目標管理型の法人、単年度管理型の法人とは異なるカテゴリーの独立行政法人として位置付けた上で、研究開発成果の最大化を法人の目的とし、そのために必要な仕組みを整備する。この際、「効率的かつ効果的」という独立行政法人の業務運営の理念の下、「研究開発成果の最大化」という研究開発型の法人の第一目的が達成できるようにすることが必要である。
○ 具体的には、研究開発型の法人について、上記2.から4.までの中期目標管理型の法人に対する措置内容を適用しつつ、法律事項としてはさらに以下を規定する。
- 独立行政法人通則法の下、研究開発に係る事務・事業を主要な業務として実施する法人を研究開発型の法人として位置付け、中期目標管理型の法人、単年度管理型の法人とは異なるカテゴリーの独立行政法人であることを明確化する。
- 研究開発型の法人が、研究開発等に係る方針に基づき、大学又は民間企業が取り組みがたい課題に取り組む法人であることを明示するため、「国立研究開発法人」(仮称)という名称を付し、法人の目的は「研究開発成果の最大化」であることを明示する。
- 研究開発成果の最大化という目的に鑑み、主務大臣が定める中期目標に記載すべき事項として、研究開発成果の最大化に関することを追加するものとする。
- 研究開発業務に係る目標設定や業績評価については、総合科学技術会議が研究領域の特性や国際的な水準等を踏まえて指針を策定し、総務大臣は、当該指針を目標設定及び業績評価に関する指針に反映することとする。主務大臣は、総務大臣が定める目標設定及び業績評価に関する指針に基づいて、目標設定・評価を行う。
- 研究開発業務の専門性に鑑み、主務大臣が行う中期目標設定や業績評価、中期目標期間終了時における業務及び組織全般にわたる見直しの際には、主務大臣の下に設置する研究開発に関する審議会が科学的知見や国際的水準に即して適切な助言を行う。また、同審議会は、必要に応じ、外国人有識者を委員とすることも可能とする。
- 中期目標期間を長期化し、最大7年とする。
○ また、運用については、抜本的に見直しを行い、研究開発成果の最大化に資するため、以下の運用改善を行っていくこととする。
- 報酬・給与については、現行制度下においても、各法人の判断で、年俸制を含めた業績給など、より柔軟な報酬・給与制度の導入が可能であり、こうした業績給等の実施状況の公表により、その導入を促進する。
- 法人の長の報酬については、研究開発の特性を踏まえ当該人物が長に就任することにより法人の研究開発業務がより一層効果的かつ効率的に実施されると見込まれ、かつ、当該人物の能力・経歴・実績等にふさわしい水準の報酬を設定する必要がある場合には、事務次官の給与より高い水準の報酬を設定することも可能とする。ただし、主務大臣による長の任命に際して報酬水準の妥当性を十分に検証するものとする。また、毎年度の長の報酬額を法人が決定する際には、法人の業績評価を十分に勘案するものとする。
- 給与水準は、研究開発業務の特性等を踏まえ、当該業務がより効果的かつ効率的に実施されると見込まれる場合には、国家公務員より高い水準を設定することも可能とする。こうした柔軟な取扱いにより、透明性の向上や説明責任の一層の確保が重要となることに鑑み、給与水準を毎年度公表する際には、必要な人材を確保するために当該給与水準とすることが必要である旨を、研究職員の特性を踏まえながら説明する。
- 目標設定については、総務大臣が示す目標設定及び業績評価に関する指針において、課題解決型の目標設定も可能であることを明示する。業績評価についても、過去の活動の達成度評価のみではなく、そこまでの成果が更に将来どのような成果に結びつくのかという将来を見越した評価とするなど、必ずしも定量的実績にとらわれない評価も可能であることを明示する。
- 研究開発等に係る物品及び役務の調達に関する契約等に係る仕組みを改善し、各法人は、主務大臣や契約監視委員会によるチェックの下、一般競争入札等を原則としつつも、研究開発業務を考慮し、総務省が示す随意契約によることができる具体的ケースを踏まえ、随意契約によることができる事由を会計規程等において明確化し、公正性・透明性を確保しつつ合理的な調達を可能とする。
総務省は、特殊で専門的な研究開発機器の調達であり相手方が特定される場合や緊急的な調達など、随意契約によることができる具体的なケースを各法人に示して、調達の合理化の取組を促進する。また、現行の随意契約見直し計画の枠組みや契約実績の公表について見直しを行い、調達に関する新たなルールを策定する。
- 上記のほか、2.から4.において、効率化目標の設定や自己収入の取扱い、経営努力認定、中期目標期間を超える繰越し等について柔軟化を図ることとなっており、研究開発型の法人についても、研究開発の特性を踏まえた柔軟な運用を行うこととする。
(2) 世界的な研究開発成果の創出を目指す法人に対する措置
○ 研究開発型の法人のうち、国家戦略に基づき、国際競争の中で、科学技術イノベーションの基盤となる世界トップレベルの成果を生み出すことが期待される法人については、総合科学技術会議、主務大臣及び法人が一体となって科学技術イノベーション政策に取り組んでいくことが必要であり、そのためには、他の研究開発型の法人よりも、総合科学技術会議や主務大臣の関与を強めることが重要である。また、こうした法人に対し、その特性に応じた業務運営上の必要な配慮を行っていく場合、その指針等についてできるだけ法律で規定していくことは望ましい。
○ 一方で、こうした法人についても、他の独法と同様に、透明性やガバナンス・効率性を適正に確保していくことが重要であり、事業中立的な総務大臣による横串の視点からのチェックを行うことが必要である。
○ こうした観点から、科学技術イノベーションの基盤となる世界トップレベルの成果を生み出す創造的業務を担う法人を「特定国立研究開発法人(仮称)」として位置付け、総合科学技術会議・主務大臣の強い関与や業務運営上の特別な措置等を別途定めることとし、具体的な措置は、内閣府・総務省共管の別法によることとする。
別法の対象法人については、極力少数に限定することとする。
○ 別法には以下を含めた事項を盛り込むこととする。
- 研究開発の特性を踏まえた運用を行う。
- 主務大臣が法人と一体となった運営を可能とするため、主務大臣が、法人に対し、状況の変化に応じた的確な指示を出すことを可能とする。
- 主務大臣は、法人に対し、中期戦略目標(最大7年)を提示することとし、記載事項は、丸1 研究開発成果最大化に関する事項、丸2 法人の長のマネジメントに関する事項、丸3 研究開発活動の改善及び効率化に関する事項等とする。なお、主務大臣が中期戦略目標を設定する際は、科学技術基本計画等の国家戦略に基づいた目標を設定すること、「研究開発成果最大化に関する事項」については課題解決型の目標設定とすること、「研究開発活動の改善及び効率化に関する事項」については、研究開発の特性に配慮したものとすることが必要である。
- 総合科学技術会議は、主務大臣の中期戦略目標設定及び中期戦略目標終了時の見直し等に関して、国家戦略の実現の観点から、適切な関与を行う。
- 法人は自己評価を毎年度実施し、主務大臣に結果を報告する。
- 法人の長は、国際競争力の高い人材の確保を図るとともに、職員の能力を最大限発揮させるため、処遇を含め人事制度の改革、柔軟な給与設定等の必要な措置を講じ、研究開発成果を最大化できる研究体制を構築するよう努める。
- 法の施行状況等を踏まえ、特定国立研究開発法人の対象を含め、法制度の在り方の見直しを行う旨を規定する。