用語解説

アウターライズ地震
 海溝から沈み込もうとする海洋プレートがたわむことによって海溝軸近傍の外側(陸と反対側)に形成される高まり(アウターライズ)の付近で発生する地震。

アセノスフェア
 地球表面を覆う固い層(リソスフェア)の下に存在する、上部マントル中の流動性に富む層。

アレイ観測
 地震計等の観測機器を比較的狭い範囲に数多く並べて行う観測。地震計アレイ観測では、それぞれの地震計の波形を重ね合わせることによりノイズが除去されて微弱な信号を検出することや、観測点ごとの地震波の到着時間の差から地震波の到来方向を推定することができる。

移流拡散モデル
 噴火によって噴出された火山灰や噴石の移動・拡散を予測するモデル。

演繹(えき)的手法
 一般的・普遍的に当てはまると思われる理論や事例から、個別の事柄について考察する手法。

応力
 物体内部での力の掛かり具合を示す、物体内部に考えた仮想的な面を通して及ぼされる単位面積当たりの力。震源域の応力が破壊強度より高くなったときに地震が発生すると考えられている。

応力場
 物体内部の応力の向きや大きさの状態を応力場という。

海域火山基礎情報図
 海域にある火山の地形、地質及び地磁気などの地球物理情報を盛り込んだ基本的な図面。

海溝型巨大地震
 海溝沿いで発生する巨大な地震の総称。2011年東北地方太平洋沖地震も海溝型巨大地震である。

火砕流
 高温の火山灰、軽石、火山ガスなどが混合し、それらが一体となって斜面を高速で流下する現象。

活断層
 過去に大地震を繰り返し発生させてきて、地表近傍まで食い違いを生じ、今後も同様の地震を発生させると考えられる断層。

火道
 地下のマグマ溜(だ)まりから地表へ至るまでのマグマの上昇経路のこと。火道でのマグマの脱ガスや上昇の仕方が噴火の様式を左右する。

カルデラ噴火
 火山灰やマグマなどを大量に放出して、鍋状の地形(カルデラ)を形成する巨大な噴火。

間隙流体
 土や岩石中の粒子間のすきま(間隙)に入り込んだ水などの流体。この流体の圧力を間隙流体圧または間隙圧という。

貫入(マグマの貫入)
 マグマの圧力の急増等により、地殻内のマグマが周辺岩体を割って入り込むこと。

帰納的手法
 さまざまな事例の研究から、ものごとの一般化、普遍化を試みるやり方。

基盤的地震観測網
 地震調査研究推進本部の「地震に関する基盤的調査観測計画」(平成9年8月)に基づく、高感度地震計(防災科学技術研究所のHi-net)、広帯域地震計(防災科学技術研究所のF-net)、強震計(防災科学技術研究所のK-NETとKiK-net)等。

強震動
 被害を及ぼす強い揺れを指し、各地点の揺れ方は、震源の大きさや断層の破壊の進行方向、地震波が伝わる経路、観測点の地盤の特性などによって大きく変わる。

共同利用・共同研究拠点
 文部科学省が、平成20年7月に科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会の報告を踏まえて学校教育法施行規則を改正し、国公私立大学を通じた、共同利用・共同研究を推進するシステムとして、新たに文部科学大臣によって設けられた認定制度。

緊急地震速報
 地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを直ちに解析し、各地での主要動の到達時刻や震度を予想し、可能な限り素早く知らせる地震動の予報・警報。

空振
 噴火に伴って火山ガス等が火口から大気中に放出されるために発生する空気振動のこと。桜島や浅間山などで発生するブルカノ式噴火では、空振によって火口から10km以上も離れた家屋の窓ガラスが破壊されることがある。

群発地震
 前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中して多数発生するような地震群のこと。通常の地震活動は、(前震-)本震-余震という時間順で発生し、規模の大きな本震の後に余震が続き、余震の発生間隔は時間の経過とともに長くなってゆくが、群発地震の活動は、消長を繰り返しながらやがて収まっていく。

ケーブル式津波計
 海底での津波観測を行う一方式。複数の津波計を海底ケーブルでつなぎ、津波計からのデータは海底ケーブルにより陸上局まで伝送され、実時間でデータ取得ができる。

考古データ
 考古学の調査・研究によって発見された地震や火山噴火などの痕跡、またそのような痕跡に関する記載。

構造探査
 ダイナマイトなどの人工震源を用いて振動を発生させ、その振動をいろいろな地点で観測して、地震波の伝播速度や減衰などを調べることにより地下の構造を明らかにする調査手法。

広帯域地震計
 主として周期約100秒から0.1秒までの地面の振動を観測できる周波数帯域の広い地震計。周期数秒より長い地面の揺れに対しては他の地震計に比べて感度が高い。

降灰予報
 火山噴火により広範囲に降灰の影響が及ぶ恐れがある場合に、降灰が予想される範囲を示して発表される予報。気象庁が平成20年3月31日に運用を開始した。

国際地球基準座標系(ITRF)
 国際地球基準座標系(International Terrestrial Reference Frame)は、GPS、VLBI、SLRなどの宇宙測地観測データに基づき国際協定によって決定・維持されている三次元直交座標系であり、地球の重心を座標の原点としている。これに準拠して位置を定義すれば、プレート運動による2地点間の相対的な位置の時間変化を容易に表すことができる。

国際レーザー測距事業(ILRS)
 ILRS はInternational Laser Ranging Service の略。各国が協力して人工衛星レーザー測距(「人工衛星レーザー測距」の項を参照)の観測成果を測地学や地球物理学の研究に有効に活用するため、国際レーザー測距事業が組織されている。ILRSにより世界中の衛星レーザー測距データが収集されて共通に解析が行なわれる。これにより、地球回転パラメータ、地球基準座標系などを決める基本的なデータとして利用される。

古地震シナリオ
 近代的な計測器を用いた地震観測が開始される以前に発生した地震の発生の推移を時系列的に整理したもの。

固着回復
 プレート境界では、プレート境界の固着領域に応力が集中し、地震の発生によって固着が解消されると考えられている。地震の発生後に、時間をかけてゆっくりと固着が再生することを、固着回復という。

災害素因
 災害誘因を受けた際に生じる被害・損失の規模、様態を左右する社会や構造物の脆(ぜい)弱性。

災害誘因
 災害をもたらす原因(加害力、外力)のこと。地震や火山噴火は災害誘因である地震動、津波、火山灰や溶岩の噴出などを引き起こす自然現象である。

山体崩壊
 山体が地震や火山噴火などによって大きな崩壊を起こす現象。

事象分岐論理
 ここでは、噴火事象の分岐とそれを決定する物理・化学過程の間にある法則的な連関のこと。

地震・火山噴火予知研究協議会
 地震及び火山噴火予知研究を行っている全国の大学・研究機関が、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」(科学技術・学術審議会 平成20 年7月17 日建議)で立案された研究を、連携と協力関係を強化して推進するために運営されている組織。

地震学的構造
 主に地震波の解析によって推定される、地震波速度構造や地震波減衰構造など。

地震考古学
 考古学の遺跡発掘調査で見つかる地震の痕跡(液状化跡、傾動など)の考察に基づいて、過去の地震の発生や被害などを明らかにしようとする学術分野。

地震シナリオ
 ある領域における地震の発生の推移を時系列的に整理したもの。

地震調査研究推進本部
 行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし、この調査研究を一元的に推進するため、地震防災対策特別措置法に基づき総理府に設置(現・文部科学省に設置)された政府の特別の機関。

地震発生過程
 広域の応力によって特定の震源断層に応力が集中し地震の発生に至る物理・化学過程。

地震発生サイクル
 地震発生後、断層面の強度が回復するとともに、プレート運動などによる広域応力により再びひずみエネルギーが蓄積され、次の地震が発生するまでの一連の過程。

地震発生層
 地殻のうち地震の発生する深さの範囲。地殻深部になると高温になり、地震が発生しにくくなるため、場所により地下の温度が異なると、地震発生層の厚さも異なる。

地震発生帯
 地震が特に多く発生する帯状の領域。沈み込むプレートに沿った地域や、内陸でひずみが集中している地域で見られる。

地震発生ポテンシャル
 中長期的観点から地震発生の可能性(切迫性、規模など)を表現する指標。

沈み込み帯
 プレートの収束境界で、一方のプレートが他方のプレートの下へと沈み込む地帯。冷たくて重い海洋プレートが、大陸プレートなどのより軽いプレートの下へ沈み込む。

自然素因
 災害素因のうち、地形・地盤条件など自然にかかわる素因。社会素因と対をなす。

実験観測
 課題を設定し、その解明のために、能動的な手法も含めて一定期間行う観測。

シミュレーション
 実際の事象を、その事象を支配している法則に基づいてほぼ同様となるように組み立てた模擬空間で再現試行すること。コンピュータを用いた数値シミュレーションを指すことが多い。計画では、強震動や地震発生サイクル等のシミュレーションが行われる。

社会素因
 災害素因のうち、人口・建物・施設など人間・社会にかかわる素因。

史料
 歴史時代の地震や火山噴火などの研究の素材となる、古文書、日記、絵図、建築などの総称。

震源過程
 地震は震源域内部で、ある種の破壊が発生することにより起こる。この破壊過程のことを震源過程という。

震源断層
 地震を起こした断層のことをいい、通常は地下にあり、大きな地震では複数の断層が連動して動くことがある。また、主要な断層面から枝分かれした断層を分岐断層という。

震源特性
 震源の持つ性質のことで、地震の規模、震源断層の形状、すべり量とその時間発展、破壊開始点の位置などのパラメータによって表わされる。

人工衛星レーザー測距
 軌道が正確に推定されている人工衛星に搭載したプリズムに対して、地上基地局からレーザー光線をパルス状に発射し、そのパルスの往復時間から衛星までの距離を高精度に計測する。それを繰り返すことによって、地上基地局の座標を高精度に推定する技術。1cm程度若しくはそれより良い精度で地上局の座標が求められる。SLR(Satellite Laser Ranging)ともいう。

水蒸気爆発
 水が加熱されて起こる爆発的な噴火のこと。水蒸気と粉々になった岩石が火口から激しく放出される。水蒸気爆発では噴出物にマグマは含まれないが、引き続いてマグマを含む噴火に移行することがある。

スラブ
 マントル内部に沈み込んだ海洋プレート。

スラブ内地震
 スラブの内部で発生する地震。プレート境界地震が起こらないような深部で大地震が起こる場合がある。

脆(ぜい)性
 固体の物体が力を受けたときに、あまり変形しないうちに破壊する性質のこと。固体の物体の変形には、力を取り除くと元の形に戻る弾性変形と、力を取り去っても変形したままの形を保つ塑性変形とがある。塑性変形をほとんど生じないで破壊する場合を脆性破壊という。

絶対重力観測
 基準となる点からの重力差(相対重力)ではなく、観測点における重力加速度を直接計測する観測。現在の絶対重力計は、真空中でプリズムなどの反射鏡からなる物体を、投げ上げもしくは自由落下により運動させて、重力加速度を計測する。測定精度は1マイクロガル(地上重力値の10億分の1)程度である。

先行現象
 地震や火山噴火の発生前に震源域や火山の周辺で発生するさまざまな異常現象。土地の隆起・沈降、地震活動の変化、電磁気異常、地下水の変化などがある。前兆現象と呼ばれることもある。

全磁力
 地球磁場の大きさ。磁場の観測量として、その長期的安定性が最も高い。磁気を帯びた鉱物の帯磁は、温度や応力によって変化するので、全磁力の変化は地下の温度、応力状態の変動を示唆する。

相似地震
 互いに波形がよく似ている地震群のこと。ここでは、波形の相似性が極めて高い地震群のみについて「相似地震」と呼んでいる。このような地震群は、ほぼ同一の震源域で繰り返し発生したと考えられている。

素過程
 地震や火山噴火における複雑な現象を支配する基本的な物理化学過程。例えば、「断層面上の摩擦」、「地殻流体の振る舞い」、「マグマの発泡」などがある。室内実験・理論・シミュレーションなどによる研究を通して地震や火山噴火に関する理解を深める上で大切な要素である。

即時予測
 地震が発生した直後に観測されたデータを利用して、地震波や津波が特定の地域に到達する前に、該当地域の地震動や津波高等を予め推測すること。例として、緊急地震速報や津波警報が挙げられる。

脱ガス
 マグマが地表に近づいた際に、圧力の低下のために、マグマ中に溶解していた水や炭酸ガスなどの成分(揮発性成分)がマグマから火山ガスなどとして分離し、周辺に拡散する現象。

脱水
 温度や圧力の上昇に伴い、鉱物や岩石に含まれていた水が放出される現象。

断層セグメント
 巨大な断層で地震が起こる場合には、断層全体がいちどに動くとは限らず、幾つかの区分に分かれた振る舞いをすることがある。このように、断層運動する際にまとまった振る舞いをする区分を断層セグメントと呼ぶ。

断層破砕帯
 断層の運動で破砕された岩石によって構成されるある幅を持った帯状の領域のこと。

地殻
 地球の固体部分を構成する大きな成層構造のうち、一番外側の層。地殻の内側はマントルと呼ばれている。地殻は海洋地殻と大陸地殻に分類され、海洋地殻は約6kmのほぼ均一な厚さであるのに対し、大陸地殻は平均的には30km程度の厚さであるが、場所によっては60‐70kmにも及ぶ場所がある。

地殻活動
 地震や火山噴火、およびそれを引き起こす地殻変動など、地殻内で発生する現象全般の総称。

地殻熱流量
 地球内部から単位面積・時間当たりに地表に向けて流れてくる熱量。

地殻流体
 地殻の内部に含まれる水やマグマ等の流体。

地震活動予測可能性共同実験(CSEP)
 Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability の略。米国・欧州・ニュージーランド・日本を中心として実施している国際プロジェクトで、厳密な客観的手法で地震発生の予測実験を行い、その結果を統計学的に評価し、地震活動予測やその評価方法を確立するとともに、地震破壊過程の予測可能性の検証を目指している。

地変
 地盤の陥没や隆起などの異変。

長期孔内観測システム
 掘削された孔(ボアホール)の内部において、長期間にわたって地震動や地殻変動などを観測するために開発された、地震計、傾斜計、体積ひずみ計等のセンサーによって構成された観測システム。

長期評価
 主要な活断層で発生する地震や海溝型地震を対象に、史料や地形・地質データなどによる地震発生履歴をもとにして、地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を予測したものを「地震発生可能性の長期評価」(長期評価)と呼ぶ。

長周期地震動
 地震発生時に通常の震動とは異なり、数秒~数十秒周期でゆっくりと揺れる震動。一般に、マグニチュードの大きい地震ほどゆっくりとした揺れの成分を多く含む。長周期地震動の周期が超高層ビル等の固有周期と一致すると共振しやすく、場合によっては大きな被害につながる。

超長基線電波干渉法
 クエーサー(準恒星状天体)から放射される宇宙電波を数千km離れた複数の観測点で同時に受信し、その到達時間差から観測点間の距離や位置関係を測定する方法。VLBI(Very Long Baseline Interferometer)ともいう。

津波計
 海面の水位(潮位)の時間変化を測定し、津波による水位変化を検知する観測機器。

津波警報
 地震発生後に津波による災害の起こるおそれがある場合に気象庁が発表する警報。各津波予報区の予想される津波の高さや到達予想時刻などの情報が併せて発表される。

津波堆積物
 津波によって運ばれた砂や礫などが堆積したもの。これを調べることにより、過去の津波の発生年代や規模を推定することができる。

低周波地震
 地震波の低周波成分が卓越し、相対的に高周波成分が弱い地震のこと。ここでは特に陸域の地殻深部やマントル最上部付近で発生する地震を指す。火山の深部に多いと言われていたが、最近は大きい地震の震源域の深部付近にも見つかるようになった。地下の流体 (マグマや水等)の挙動 に関係していると考えられている。

低周波微動
 同程度の振幅を有する通常の微小地震より低周波数成分に卓越する地震波が、場合によっては数日もの長い時間にわたって継続する現象のこと。低周波微小地震と似た現象だが、波の始まりが不明瞭でかつ長時間継続する特徴を有する。西南日本に沈み込むフィリピン海プレート境界面における巨大地震震源域の深部に沿って分布し、数カ月周期で発生する短期的ゆっくり滑りに同期する場合がある。

データ同化
 複雑な現象の高精度予測のために、数値シミュレーションの結果として得られる物理量が観測データをなるべく再現できるように、適切な初期値や境界値、各種パラメータを推定すること。

トレンチ(トレンチ調査)
 断層面を横切る方向に細長い溝を掘り、断面を観察して断層のずれ方や地層の年代を測定し、断層の動いた年代や周囲の環境を調べる調査。

内陸地震
 プレートの運動の作用による力(ひずみ)は、プレート境界から離れた陸のプレートの内部である日本列島の内陸部にも働き、ひずみが蓄積して岩盤を破壊する地震が発生する。このような理由で発生した地震を内陸地震という。

熱水系
 マグマから分離上昇した火山ガスが地下で凝縮したり、地下水と接触したりして生じる熱水の生成過程や移動経路などを指す。

粘弾性
 加えられた力の大きさに変形量が比例する性質(弾性的性質)と変形速度が比例する性質(粘弾性的性質)を併せ持つ性質。地下深部の高温下の岩石は粘弾性的性質を持つと考えられている。地震などによって大きな力を受けた時、この力を緩和するようにマントル等が粘弾性的に変形する現象を粘弾性緩和という。

ハザードマップ
 ある災害に対する危険な区域を示した地図。火山のハザードマップでは、噴石、降灰、火砕流、溶岩流、泥流などの災害を引き起こす現象が波及すると予想される範囲などが図示される。

発震機構
 地震の起こり方。地震波の放射パターンなどから求められる震源断層の走向、傾斜角、滑り角を指す場合が多い。断層に働いていた力の方向を知る手がかりになる。

非地震性滑り
 断層やプレート境界における、地震波を放出しないゆっくりとした滑り。その滑り量や滑り速度を指すこともある。

ひずみ
 岩盤(プレート)などが変形する際の、変形の大きさをひずみという。単位長さ当たりの変位で定義される、変形の度合いを表す物理量。

ひずみ集中帯
 測地観測や地形から推定される地殻のひずみが大きい領域。

ひずみ速度場
 単位時間あたりのひずみの変化率をひずみ速度と呼ぶ。ここでは、地殻のひずみ速度の空間分布のこと。

非線形
 線形でないことを意味する。例えば、物体の変形の性質が線形であれば、物体の変形量は加えた力の大きさに比例し、複数の力を同時に加えたときの変形量はそれらを別々に加えた場合の足し合わせとなる。このような関係が成り立たない性質を非線形と呼び、変形量を評価するための数学的な取り扱いは複雑になる。

非弾性変形
 外力によって変形した物質が、そのひずみを元に戻そうとする力を生じる性質を弾性といい、そのような性質でないものを非弾性という。非弾性で媒質が変形することを非弾性変形という。非弾性的性質には、力を加えると時間と共に変形が進行してそれに呼応して力が緩和する粘性や、極めてゆっくりした変形だけが進み力が緩和しない塑性などの性質が含まれる。地殻の上部は主に弾性的性質を持つが、深部になると粘弾性的性質や塑性的性質を持つことが知られている。

比抵抗
 単位断面積、単位長さあたりの電気抵抗値。電気伝導度の逆数。

不均質構造
 地球内部の物性定数が、空間的に均質ではない状態(構造)。例えば、組成の違いや空隙の分布状態、流体の含有などによって、物性定数が変化する。応力場も不均一になり、特定の場所に応力集中が生じる可能性がある。

物質科学的分析
 物質の組成、構成鉱物種、同位体比等を、組成分析や同位体分析などの科学的な手法に基づいて明らかにする分析(調査)。

プレート
 地球表面は、地殻と十分に冷却して固くなっている最上部マントルとを合わせた、厚さ100 km程度の固い岩石の層で覆われている。この固い岩石の層は、いくつかのブロックに分割されている。それぞれの板状(球殻状)のブロックをプレートという。

プレート境界地震
 プレートとプレートがその境界でずれ動いて発生する地震。震源断層がプレートの境界に一致する地震。

噴火警戒レベル
 火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」と住民や関係機関等の「とるべき防災対応」を5段階に区分した指標。噴火警戒レベルに応じた防災対応が地方自治体の地域防災計画等に定められた火山において、噴火警報・予報に付して発表される。気象庁が平成19年12月1日に運用を開始した。

噴火警報
 火山噴火に伴い、生命に危険を及ぼす火山現象の発生や危険が及ぶ範囲の拡大が予想される場合に、「警戒が必要な範囲」を明示して発表される警報。気象庁は、火山災害軽減のため、全国110の活火山を対象として、観測・監視・評価の結果に基づき噴火警報・予報を発表している。

噴火事象系統樹
 火山ごとに、複数の可能性のある噴火現象の時間的推移を分岐させて作成した、噴火の推移を示す系統樹。

噴火シナリオ
 火山ごとに、噴火で想定される現象の発生推移を時系列的に整理したもの。噴火の規模や現象発生パターンなどの分岐判断について示した噴火事象系統樹を指しているが、防災対応を目的としたより実効的なものを指すこともある。

噴火ポテンシャル評価
 これまでの噴火の履歴や中長期的な観測結果から噴火の可能性(切迫性、規模など)を評価すること。

噴火様式
 噴火時にマグマが地表に噴出する場合、噴火の様子はマグマの性質や破砕の程度などによって異なり、いくつかのタイプに識別される。その異なる噴火の様子を噴火様式という。

変動地形
 断層崖や尾根・谷のずれなどの断層変位地形、隆起・傾動した段丘面などの、地殻変動を反映した地形の総称。活断層の位置や地震発生履歴・塑性ひずみ速度などを評価する上で必要な基礎的情報を与える。変動地形を研究する学問を変動地形学という。

ボーリング
 一般的には、掘削して孔をあけること。ボーリングによる調査は、地表からの孔を掘削により土壌の柱状試料を採取する手法。掘削する場所を適切に選定すれば、トレンチ調査に比べはるかに長い活動時期の地質試料を入手することができる。

マグマ
 岩石物質の高温溶融体。マグマが地下で結晶化したり、地殻物質を溶かし込んだりして、多様な組成のマグマができる(分化という)。マグマが上昇すると、マグマの中に溶解していた揮発性成分が気泡となる。火道での気泡の離脱の仕方により噴火の激しさが変化する。

マグマ供給系
 地下深部から火口までマグマが供給されるマグマ溜まりや火道を含むシステム全体のことを指す。

マグマ溜まり
 火山活動の源であるマグマが蓄積されているところ。火山やカルデラの直下にあると考えられているが、その正確な形状や内部構造は分かっていない。

摩擦構成則
 断層面上の摩擦係数をすべり変位やすべり速度などの関数として記述したもの。

マントル
 地殻の下にある深さ約2900kmまでの固体層。その上部は、かんらん岩を主成分とする岩石で構成されている。

マントルウェッジ
 沈み込むプレートと陸域プレートに挟まれた陸側のマントル部分。この部分は、沈み込むプレートが数十度程度の角度で沈み込んでいるので、くさび状の形状をしている。

ミューオン
 宇宙線が大気中の原子核と反応して生成される二次宇宙線の一つで、地上に絶え間なく降り注いでいる素粒子。透過する物質の密度差によってミューオンの減衰が異なることを利用して、X線の透視撮影のように地殻内部の密度分布を調べる試みがなされている。

モホ面
 モホロビチッチ不連続面の略。地殻とマントルの境界面である。この境界面を境にして地震波の速度が大きく変わるために、屈折波や反射波などによって容易に検出できる。

誘発地震
 様々な現象が引き金となって発生する地震の総称。引き金となる要因としては、遠くで発生した地震や火山噴火、ダムの貯水・地下への水の注入等が知られている。

ゆっくり滑り
 地震波を放射しない、断層面やプレート境界面でのゆっくりとした滑り。ここでは、継続時間が数か月以上のものを長期的ゆっくり滑り、それ以下のものを短期的ゆっくり滑りと呼ぶ。スロースリップ、スロースリップイベント(SSE)ともいう。

溶岩流
 火山の噴火活動によって地下のマグマが溶けた状態のままで火口から噴出して地表に沿って流れる現象。

余効(よこう)変動
 地震の後に震源域あるいはその周囲で発生する地殻変動。

横ずれ断層
 断層面に沿って主として水平方向にずれた断層。断層を挟んで他方の岩盤を見たときに、右向きにずれていれば右横ずれ断層、左向きにずれていれば左横ずれ断層という。

ラドン濃度
 放射性元素ラドンの濃度。地震発生に先行して地下水や空気中のラドン濃度が変化する場合があることが報告されている。

陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)
 災害状況把握、国土管理、資源管理等を目的とする、2013年度に打ち上げ予定の国産衛星。地殻変動検出に適するLバンド(波長23.6cm)の合成開口レーダ(SAR)を搭載する。

リソスフェア
 地球の地殻とマントル最上部の固い岩盤を併せた部分の総称。地球表層部を占め、ブロックに分かれて水平移動しているプレートに相当する。岩石圏ともいう。

リモートセンシング技術
 遠隔観測技術の総称。様々な波長の電波や光を用いて、対象物の地形、温度、物質などを測定する。人工衛星や航空機から測定することによって広い範囲を速く測定できる。

レオロジー
 物質の流動と変形に関する科学。地下深部での高温高圧下での流動や変形に関する岩石の振る舞いを指す。

歴史地震・歴史噴火
 文献史料(古文書、日記など)に記述されている歴史時代の地震や火山噴火、またそれらによる被害のこと。

DGPS局
 GPSの信号を用いた相対測位方式であるDGPS(Differential GPS)を実施するために設けられた基地局のこと。DGPS局から発信される補正信号によって、観測局では即時的に1~2mの測位精度が得られる。日本周辺海域では海上保安庁が航海用にDGPS局網を運用している。

GEONET
 GNSS 連続観測システム(GNSS Earth Observation Network System)の略称で国土地理院が運用している。日本全国約1300点の観測点(電子基準点等)とデータ管理・解析処理を行うGEONET 中央局からなり、地殻変動監視と測量の基準点の役割を持つ。

GNSS
 全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)の頭文字をとった略称。位置や時刻同期を目的とした電波を発射する衛星群及び地上の支援システム、並びに比較的簡単な受信機で電波を受信して自分の三次元的な地球上の位置を知る目的で使用する利用者群を総称して用いられる。アメリカ合衆国が構築したGPSは現在最も実用的なGNSSであるが、他にもロシアが運用中のGLONASSや、ヨーロッパ連合(EU)が構築中のGalileoなどのシステムがあり、これらを統合して利用することで精度や信頼性の向上が期待される。

GPS‐音響測距結合方式
 海底の地殻変動を観測するための手法の一つ。海上の船舶やブイの位置をGPS(GNSS)によって精密に決定し、それらと海底に設置された基準点との距離を、海中音波を用いて測定することにより、海底の基準点の位置変化を測定する。

GPS
 Global Positioning System(汎地球測位システム)の略。地上高約20,000kmの高度を航行するGPS衛星からの電波を地上で受信し、三次元的位置と時刻を正確に計測するシステム。地殻変動計測には干渉測位と呼ばれる電波の位相を用いた相対測位法が用いられる。

SAR
 Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)の略。人工衛星や航空機などに搭載されたレーダーの移動により大型アンテナと同等の高い分解能を実現したレーダーシステム。SAR干渉解析(Interferometric SAR、InSAR)は、同じ場所を撮影した時期の異なる2回の画像の差をとる(干渉させる)ことにより地表面の変動を詳細にとらえる手法である。

ULF、 VLF、VHF帯
 電磁波の周波数帯域の区分。ULFはUltra Low Frequency band(極超長波) の略で、300Hz~3kHzまでの周波数の電磁波を指す。VLFはVery Low Frequency band(超長波) の略で、3~30kHzまでの周波数を指す。VHFはVery High Frequency band(超短波) の略で、30~300MHzまでの周波数を指す。周波数の低い電磁波ほど地下深くまで信号が到達し、地下深部の情報を持っている。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)

-- 登録:平成26年05月 --