3.優秀な研究開発人材の確保方策に関する世界の動向

図 各国間で優秀な研究者の獲得競争が活発

(3)EU域内の人材流動性の確保

  • 人材流動化の狙い
     - 欧州を研究者にとって魅力的な場所することによる研究者数の増加
     (頭脳流出の防止と呼び戻し、域外研究者の引き付け)
    背景 就業者1,000人当たりの研究者数が、日米と比較して大幅に少ない
    EU-15 5.68人、米国 8.08人、日本 9.14人
     - 人材流動化を高め、大学から企業への技術移転の活発化
  • 科学技術以外の領域との政策協調における欧州委員会の取組み
     - FP6(第6次フレームワークプログラム時2002~2006)において、域外から帰国した後の研究活動を支援する制度の創設
     - 研究助成金、研究職ポスト等の情報入手を容易にするためのポータルサイトの開設

欧州連合(EU)“Marie Curie Actions”について

(マリー・キューリー・アクション(Marie Curie Actions)はEUの第6次フレームワークプログラム(FP6)で実施されている「人的資源と流動性」(HRM)活動の通称。概要、以下のとおり。)

1.目的:

 欧州研究圏(ERA)実現のための、研究者の国際流動性、教育訓練の促進
 国際協力活動の促進、欧州の研究競争力、研究の場としての魅力の向上

2.対象:

  • EU加盟国、FP6協力国(Associated State:アイスランド、イスラエル、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)(以下、「EU加盟国等」という)の研究機関、研究者。
  • EU加盟国等の研究者が、自国以外のEU加盟国等の研究機関で研究する場合を、主たる支援対象とする。
  • 幾つかの例外あり。

3.予算:

 15.8億ユーロ(約2000億円)(FP6期間中FY2002~FY2006の4年間予算)
 (FP5→FP6でHRM予算は50%増。FP全体では17%増。)

4.主なプログラム:

(1)ホスト研究機関対象プログラム

  • 若手研究者向けフェローシップ(EST)
    EU加盟国等に設置された、又は位置する、産学官のホスト研究機関が研究暦4年以下の若手研究者(博士課程学生含む)(※EU加盟国等以外の国籍の者も可)をフェローとして3ヶ月~3年間受け入れることを支援する制度。フェローはホスト研究機関が選定し、ホスト研究機関がEUに申請する。

(2)研究者個人向けプログラム

  • 欧州域内フェローシップ(EIF)
    欧州域内の研究者の訓練を目的。
    研究暦5年以上のEU加盟国等の研究者が、自国以外のEU加盟国等の研究機関で研究する場合を対象。支援期間:1~2年。
  • 欧州域内国際フェローシップ(IIF)
    欧州域外のトップクラスの研究者を欧州域内に招へいすることを目的。
    研究暦5年以上のEU加盟国等以外の研究者が、EU加盟国等の研究機関で研究する場合を対象。発展途上国(※豪、加、日、NZ、星、韓、台、米以外の国)の研究者については、自国の研究機関に戻って研究を行う帰国フェーズを付けることを前提。支援期間:1~2年(帰国フェーズが有る場合には3年)。
  • 欧州域外国際フェローシップ(OIF)
    欧州域内の研究者の国際経験を広げることを目的。
    研究暦5年以上のEU加盟国等の研究者が、EU加盟国等以外の研究機関で研究する場合を対象。自国の研究機関に戻って研究を行う帰国フェーズを付けること前提。支援期間:1~2年+帰国フェーズ1年。

(3)帰還推進制度

  • 国際帰還グラント(IRG)
    欧州域外で研究する研究者の帰還を促進し、知識を欧州に移転することを目的。
    EU加盟国等以外で5年以上の間研究に従事したEU加盟国等の研究者が、EU加盟国等の研究機関に帰還して研究する場合を対象。グラントは2年間以内。但し、ホスト研究機関は3年間以上の雇用義務。

【出典】EC研究総局D局“A rough guide to the Marie Curie Actions”(2003年1月)

(4)米国

  • 海外生まれの科学技術人材が大きな役割
    1999年 博士号取得者の27%、修士号取得者の20%が海外生まれ
  • 海外との人材流動は、かつての「頭脳流出」から「頭脳循環」へ認識が転換
  • 米国においても研究者を諸外国の人材に依存している現状に大きな危機感あり
    (NSF/NSB 科学技術労働人口に関する報告書)

注)(2)~(4)は、以下の資料等を参考に作成
基本計画の達成効果の評価のための調査 主要国における施策動向調査及び達成効果に係る国際比較分析
平成15年度調査報告書
平成16年5月 科学技術政策研究所、株式会社日本総合研究所

米国における理学及び工学の博士号を保有する外国人人数と全体に対する割合のグラフ

米国で理学及び工学の博士号を取得した外国人のうち、米国にとどまる予定者の割合のグラフ

米国で理学及び工学の博士号を取得した外国人人数の経年変化のグラフ

米国で理学及び工学の博士号を取得した外国人のうち、米国にとどまることを確実に予定している者の経年変化のグラフ

(5)フランス

  • フランス研究省
    2004年より、海外で活躍する第一線の研究者を仏国内の大学、国立研究機関に招へいする新制度を開始。初年度に招へいを行う研究者(15名)には、3年間で50万ユーロ(5名)、25万ユーロ(10名)が支給されるほか、研究チームに加えたい若手研究者、学生にも割当人数を決めて支援(奨学金支給など)が行われる。なおこの15名には、フランス人8名のほか、ドイツ人、アメリカ人等も含まれる。

(6) ドイツ

  • ヘルムホルツ協会
     2004年より、毎年20人のポスドクに12万5千ユーロを5年間提供するプログラムを開始。応募資格は、PhD取得後2~6年で、国際的な研究経験を持ち、36歳以下の者。同協会傘下の15の研究所か、連携する大学で研究することが条件。最終的な評価結果がポジティブであれば、テニュア職が与えられる。なお、同協会は2万4千人の職員、21億ユーロの予算をもつドイツ最大の公的研究機関。
  • ドイツ研究者協会(GSO)
     2003年に結成された民間非営利団体。ドイツから米国等に流出した若手研究者を、ドイツの労働・研究市場に結びつけ、頭脳獲得(Brain Gain)を行うことを目的。米国においてドイツの科学・産業に関する情報を提供するフォーラムを開催するとともに、流出研究者のネットワーク化を推進。

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科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)