資料5‐1 科学技術・学術分野における国際活動の戦略的推進について(概要)

平成17年1月27日
科学技術・学術政策局

 科学技術・学術審議会国際化推進委員会(主査:池端 雪浦(せつほ) 東京外国語大学長)では、人材や技術など「知」をめぐる国際競争が激化する国際情勢を踏まえつつ議論を行い、次期科学技術基本計画に向け、科学技術・学術活動の「国際化」から更に踏み込んだ「国際展開の戦略的推進」の指針とするべく報告書を取りまとめた。

1.国際情勢の変化

(1)「知」をめぐる世界大競争の時代

 グローバル化の下、各国は科学技術・学術に基づく新技術、新産業の創出に競って取組むとともに、優れた研究人材の流出を懸念し、その獲得のために競争。

(2)世界共通の課題の増加

 国際競争激化の一方で、世界人口の急増等に伴い、地球規模問題をはじめ人類が協力して取組まなければならない新たな課題も増加。

(3)科学技術・学術の進展による国際展開の要請

 他方、科学技術・学術の振興に国際展開は本質的に不可欠。特に基礎研究の大規模化や研究開発コストの増大から、研究の国際分担をはじめとする科学技術・学術の国際展開が一層求められている。

(4)地域連合の発展とアジアの台頭

 グローバル化と同時に、EU拡大、経済連携の進展など、地域連合も発展。特にアジアでは経済面の成長が著しく巨大市場の出現が予想される。また、2004年11月には、「東アジア共同体」の構築に向けた議論がASEAN+3(アセアン プラス スリー)において行われている。

2.我が国にとっての課題

(1)科学技術・学術と社会・経済の発展

 欧米先進諸国等との連携、国際展開を通じた我が国の優れた先端科学技術・学術の持続的発展と、その成果に基づく我が国の社会・経済の発展が課題。

(2)世界共通の課題への対応

 地球規模問題や安全・安心な社会への構築をはじめとする世界共通の課題への対応に向け、我が国がリーダーシップを発揮することが課題。

(3)アジアにおける連携強化

 先進国日本対アジアの観点ではなく、アジアの一員として、東アジア科学技術コミュニティの構築に向けアジア諸国とのパートナーシップを強化することが課題。

(4)魅力ある研究環境の実現

 世界から研究者、技術等の知的資源が集まるような活気ある研究環境を構築することが課題。法人化した大学・研究機関や地域といった主体にはそれぞれの特長を生かした戦略的な国際展開を期待。

3.科学技術・学術分野における国際活動の戦略的推進方策

(1)国際戦略に基づいた活動の重点的推進

 科学技術・学術分野における国際活動に関して戦略化を図ることが重要。このため、以下のような取組みを進めていく必要。

  • 科学技術・学術の各分野等に係る国際動向の調査・分析を行う体制を強化。
  • 戦略的に目標を定めながら、科学技術・学術分野における国際活動を支援するためのファンディングの仕組みを充実・強化。

(2)アジアにおけるパートナーシップの構築

 アジア諸国の急速な発展や「東アジア共同体」構想等を踏まえ、科学技術・学術分野でアジアにおけるコミュニティ構築を進めていくことが重要。このため、各国の多様性に留意しつつ、以下のような取組みを進めていく必要。

  • 研究人材の交流を推進し、将来のアジアにおけるコミュニティを担う人材を養成。
  • 環境問題、自然災害、新興・再興感染症対策等地域共通の課題に協力して挑戦。
  • アジアにおけるコミュニティの活動を支えていくため、研究情報流通基盤、多層的な交流枠組み等プラットフォーム(共通基盤)の構築を推進。

(3)国際的研究人材の養成・確保・ネットワークの構築

 国際活動を通じて研究人材の充実を図るため、以下のような取組みを進める必要。

  • 国内外の優秀な研究人材の「知の出会い」の場の充実による知的触発の活性化、研究人材間の継続的な「ネットワーク」の構築。
  • 優れた外国人研究者等の受入促進。自国の在外研究人材を呼び戻すための取組。
  • 若手研究者の海外派遣の促進。

(4)国際活動基盤の強化

 以上の取組みを支える国際活動基盤の強化を図ることが重要であり、以下のような取組みを進めていく必要。

  • 大学における特色ある組織的な国際展開に向けた取組みの支援。
  • 海外拠点を核とした事業の総合的実施及び連携の促進。
  • 研究成果の国際的情報発信力の強化。

お問合せ先

科学技術・学術政策局国際交流官付

(科学技術・学術政策局国際交流官付)