3.第7次火山噴火予知計画の実施内容

3.火山噴火予知体制の整備

第7次計画では、火山噴火予知の高度化を図るため、次の三つの体制の強化を図る。すなわち、監視観測の充実・高度化を図り、迅速かつ総合的な活動評価とこれに基づく実用的な情報の発信を行う体制、広範な基礎研究を推進するとともに、将来の火山噴火予知を担う研究者を育成する体制、火山噴火予知技術の体系化と実用化を目指した研究を推進する体制である。防災機関、大学、研究機関はそれぞれの役割分担を明確にして、これらの体制の強化・整備を進める。これらの体制の強化と併せて関係機関が連携し、火山噴火予知体制の機能強化、火山活動に関する情報の向上と普及、基礎データの蓄積と活用などに取り組む。

(1)火山噴火予知体制の機能強化

火山噴火予知の高度化を目指して、監視観測体制の整備を進めるとともに、基礎研究の進展のために、大学の法人化後も各大学の研究施設の機能確保に努め、さらに、火山噴火予知技術の体系化に向けた開発研究を強力に推進するための体制の整備を図る。また、火山噴火発生や活動推移の的確な予測に向けて、火山噴火予知連絡会の機能強化を図るとともに、研究者の育成・流動化の促進を図り、将来の火山噴火予知の展開に備える。

(ア)火山監視観測体制の強化
火山噴火予知の高度化を目指して、関係機関は確立された新たな予知手法を取り入れるなど一層の観測技術の向上と監視観測体制の整備を進め、噴火の発生予測や活動の推移を的確に把握するためのデータを収集する。

(イ)基礎研究を推進するための体制の強化
火山噴火予知の高度化を図るために、基礎研究の一段の進展が重要であることにかんがみ、関係する大学等は強い連携を保ち、共同研究や実験観測研究を推進する。特に、平成16年度からの国立大学の法人化により、各大学の研究組織については、原則として各大学の裁量にゆだねられることになるが、全国共同利用研究所を中心に、組織的に実験観測などの基礎研究や人材の育成等を推進するためには、これまで整備されてきた各大学の研究施設の確保と相互の連携強化や全国共同利用研究所の機能の充実・強化を図ることが重要である。法人化後においても、国は運営費交付金等により大学に対して所要の財源を措置する一方、当該大学においては、全国共同利用研究所及び研究施設等の目的が達成されるよう所要の予算を適切に配分すること等が重要である。さらに、大学等が連携して行う予知研究の企画・立案とその実施に当たっては、東京大学地震研究所に置かれた火山噴火予知研究協議会が中心的な役割を果たす。

(ウ)火山噴火予知技術の体系化・実用化のための研究体制の整備
社会が求める火山噴火予知に対応するには、基礎研究の成果を活用し、先史の噴火履歴も踏まえた噴火活動の長期的な予測と活動の推移を把握する火山噴火予知技術の体系化・総合的な評価手法の開発研究が必要であり、既設の研究機関を活用して、これを強力に進める体制の整備を図る。

(エ)火山噴火予知連絡会の機能強化
火山噴火発生及び活動推移の的確な予測のため、収集した各種の観測データ等情報の共有化を図るとともに、関係省庁、大学の研究者など専門家の知識を活用して、迅速かつ総合的に火山活動を評価する機能の強化を図り、その評価が実用的で分かりやすい形で情報に反映されるよう努める。また、事務局機能の強化を図る。

(オ)若手研究者の育成・研究者の流動化促進
将来の火山噴火予知の展開には、関係機関での研究者の確保が重要であることから、大学院生や若手研究者の育成は急務である。同時に関係機関は、各種研究員制度の活用も含め、育成した人材の受入れ枠の確保・拡大を図る。
また、基礎研究の一層の充実強化を図るため、他分野の研究者も視野に入れた研究者の流動的システムの積極的活用を図る。

(カ)研究者と技術者の交流促進
火山噴火予知の高度化のためには、基礎研究の推進と併せて監視観測の機能の向上が重要であることから、実験観測研究、共同研究、研究集会などを通して、研究者と監視観測に従事する技術者等との連携及び人的交流を進める。また、研究成果や新たな評価手法の監視観測への技術移転を進めるとともに、社会人入学制度などを活用して監視・評価技術等の質的向上を図る。

(2)火山活動に関する情報の向上と普及

予知計画の成果を社会に還元し、国民の予知計画への期待に応え、さらに、火山災害の軽減に貢献するため、火山活動に関する情報の質的向上を進め、正確かつ分かりやすい情報の迅速な提供を目指す。また、火山に関する情報を社会に効果的に活かすために、住民、防災関係機関等への解説・意見交換など、火山や火山活動に関する情報の理解を深めるための普及活動を推進する。

(ア)気象庁は、火山噴火予知連絡会に関係する機関の協力の下、火山活動に関する情報の質的向上を図るため、火山活動度を数値レベルで分かりやすく表現する対象火山を順次増やす。また、火山情報を社会に効果的に活かすために、地方公共団体等防災関係機関に対して、火山情報や火山噴火予知連絡会の活動評価結果を解説するとともに、適切な助言を行う。さらに、防災機関や住民が火山に関する情報をより一層容易に利用出来るよう、火山情報や火山活動の状況等をインターネット等を通じて積極的に発信する。

(イ)海上保安庁海洋情報部は、海域及びその付近における火山噴火等の情報を収集整理し、船舶の安全航行確保のため、航行警報による情報提供を行う。

(ウ)気象庁及び関係機関は、火山活動に関する情報の地域防災への有効活用を図るために、市町村などの防災担当者、更には工学及び社会科学等他分野の専門家を交え、適切な情報の在り方、適切かつ迅速に情報伝達するための手法等について検討する。

(エ)気象庁及び関係機関は、防災行政担当者、報道関係者、火山周辺の住民を対象に、火山活動や火山防災に関する研究会・勉強会を適宜開催するとともに、ハザードマップ作成等の防災施策に対して専門家として助言を行うなど、火山学や火山防災知識の普及活動を積極的に推進する。

(3)基礎データの蓄積と活用

火山活動の評価と予測において、その基礎となるデータの整備と活用は重要な課題である。このため、精密な地形図や火山地質図等の様々な地図情報の整備を、今後も引き続き推進する。また、噴出物量、岩石学的分析、年代決定等に関する精密で定量的な基礎データの整備を一層進め、より詳細な噴火史を明らかにする。
さらに、噴火の前兆現象をはじめ、特に社会対応で重要となる噴火開始後の活動推移の予測や終息の判断を支援する基礎データの収集と整理を行うとともに、それらのデータファイルに基づき予測データベースを開発し活用することを目指す。データベースの作成と活用においては、国際的な研究協力に積極的に取り組む。基礎資料の公表や活用においては、電子出版やインターネットなどの形態も活用する。

(ア)大学、産業技術総合研究所及び海洋科学技術センターは、関連機関の協力を得て、より精密な噴火史の構築や火山噴火発生場の比較研究のため、各種の基礎データの収集・解析を進める。特に、ボーリングやトレンチ調査を含めた地質岩石学的調査により、精密で定量的な噴出物量、岩石学的分析、年代決定等の基礎データの充実を図る。基礎データの活用のため、産業技術総合研究所は新たに火山科学図などを作成する。

(イ)気象庁及び大学等は、噴火ポテンシャルの評価、終息評価を含む噴火活動の推移予測、過去の主要な噴火対応などについての基礎データを収集しその解析を行い、基礎データの一層の活用を図る。データの収集と活用においては、幅広い国際協力により充実したデータベースの作成と活用に積極的に取り組む。

(ウ)国土地理院は、航空レーザ測量や衛星リモートセンシング技術等を活用し、大縮尺精密火山基本地形図、火山土地条件図の整備を順次進める。また、火山及びその周辺地域の航空磁気図の作成を行う。これらの基礎データは、インターネットや印刷地図による活用を図る。

(エ)防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、国土地理院、通信総合研究所等は、航空機や人工衛星によるリモートセンシング技術の活用を進め、火山活動の評価手法や時系列基礎データなどのデータベースの構築を図る。

(オ)海上保安庁海洋情報部は、海底火山及び火山島周辺海域における航空磁気測量や、測量船による地形、地質構造、地殻構造、地磁気、重力及び地熱に関する基礎データの収集に努め、海域火山基礎情報図などの整備を行う。また、必要に応じて火山島等において実施する移動観測により基礎資料の充実を図る。これらの基礎データは、航行安全情報に活用され、またインターネット等による社会での活用を図る。

(4)地震予知観測研究等との連携強化

火山噴火予知の高度化及び活動評価のためには、監視観測網の一層の拡充を図る必要がある。このため、予知計画による観測網の整備に加えて、火山近傍での基盤的調査観測網や地方公共団体等の観測網によるデータを有効利用し、火山の状態を把握する。また、地震予知観測研究等と連携して、火山活動と広域地殻活動との関連や火山体の深部構造に関する共同研究を推進する。

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