3.第7次火山噴火予知計画の実施内容

1.火山観測研究の強化

すべての活動的火山の活動度を定量的に把握することを長期的目標として、第7次計画では、火山監視観測の一層の強化を進めるとともに、火山噴火予知の高度化を目指した基礎研究の推進を含む各種の実験観測を実施する。

(1)火山活動を把握するための観測の強化

(ア)気象庁は、火山噴火予知連絡会に関係する大学等の関係機関の協力を得ながら、火山の監視観測を強化する。連続的な監視観測については、既存の連続的な監視観測網に加えて、火山噴火予知連絡会による活火山の分類結果や、それぞれの火山の防災上の重要性に応じて、監視観測に活用可能な大学・地方公共団体等関係機関の観測データ、地震の基盤的調査観測網のデータ、火山機動観測等を活用して、火山監視・情報センターにおける監視観測体制を強化する。火山機動観測については、地熱観測や火山ガス観測、火口近傍での地殻変動、全磁力観測等を継続するとともに、必要に応じて震動観測や空振観測等を長期間実施するなど、その内容の高度化を図る。また、火山活動把握のため、大学・研究機関との共同観測・研究を進める。

(イ)国土地理院は、電子基準点を活用して活火山及びその周辺での地殻変動をリアルタイムで監視するとともに、必要に応じ活火山の山体等にGPS観測点を設置し、地殻変動監視を行う。特に活動が活発な火山においては、自動測距装置(APS)等による地殻変動監視を行う。また、活火山及びその周辺において、水準測量及び潮位観測により地殻上下変動を把握する。さらに、地下のマグマ活動をとらえるため、必要に応じて地磁気観測及び重力測量を行う。

(ウ)海上保安庁海洋情報部は、南方諸島及び南西諸島の海域火山について、航空機による定期巡回監視を引き続き行う。海域火山の活動が活発化した場合には、航空機や無人測量船等による機動的観測を実施する。さらに、地磁気、重力及び海底地震活動等については、繰り返し観測を実施し、海域火山の中長期的な活動を監視する。同時に、人工衛星によるリモートセンシングを活用し、火山活動の監視を実施する。また、験潮所及び火山島等においてGPSの連続観測、離島・岩礁等での定期的なGPS観測、火山周辺海域に設置した海底基準点における定期的な海底地殻変動観測を実施し、マグマ活動の推移を監視する。

(2)実験観測の推進

(ア)大学は、関係機関と連携して、多様な噴火過程の解明や予知手法の確度向上のために以下のような実験観測を行う。北海道駒ケ岳、安達太良山、雲仙岳等においては、噴火準備過程の定量的評価のために、坑井式地震計・傾斜計などから成る高精度の多項目総合観測点の整備・強化を図り、マグマや熱水の挙動を長期にわたり追跡する実験観測を行う。浅間山、伊豆大島、阿蘇山等においては、火山流体の移動・蓄積や供給率の時間的変化などの解明のために、広帯域地震計やGPSによる稠密観測の強化・整備を行うとともに、自然電位の連続観測や広帯域MT探査などの実験観測を併せて行う。阿蘇山、桜島、薩南諸島火山等では、衛星経由又は地上波テレメータ等の整備を行い、各種データから火山活動の即時的レベル判定・評価の手法開発を目指した実験を実施する。三宅島や北海道駒ヶ岳などにおいては、噴火後の活動推移等の定量的評価のため、絶対重力計と相対重力計を統合させた観測網を構築し、繰り返し観測を実施することにより火道やマグマ溜りの流体の挙動を調べる。また、地球化学移動観測班の整備を行い、草津白根山等の主要な活動的火山で火山ガス等の高密度観測を実施し、火山流体の活動とその変化の把握に努める。火山周辺に発生する群発地震活動と火山活動との関連性の解明のため、御嶽山等で地震観測、GPS観測に加えて、水準測量を繰り返し行う。
 大学は、関係機関と共同して、火山活動状況の把握や噴火ポテンシャル評価のため、御嶽山、有珠山等において、それぞれの火山の特性に合わせて、地震、重力、電磁気、火山ガスなどの多種目から成る集中総合観測を年次的に実施する。また、火山の浅部構造と状態を調べるため火山体構造探査を口永良部島、富士山などで年次的に実施する。この探査をより効率的に遂行するため、小型、軽量で操作の簡単な可搬型記録機器の開発も併せて行う。さらに、集中総合観測と連携して長期間の稠密自然地震観測を行い、マグマ溜りの形状等に関する深部の火山体構造の把握に努める。
 活火山で噴火発生が予測された場合、あるいは、突発的に噴火が発生した場合には、大学は移動観測班を活用し、噴火前兆現象の把握や噴火推移過程の解明に向けて、臨時の実験観測を総合的に実施する。

(イ)防災科学技術研究所は、マグマ活動の把握のため、富士山、三宅島、那須岳等において連続観測の維持・強化を行う。活発化した火山においては、広帯域地震観測等の短期的観測を実施する。また、空中赤外映像による火山体表面温度や火山ガス調査、衛星搭載SARによる地殻変動観測を実施する。

(ウ)国土地理院は、衛星通信を利用した多機能簡易型無人観測装置を用いて地殻変動の機動的な観測を行う。また、地殻変動の検出手法の高度化を目指し衛星並びに航空機搭載SARによる地殻変動観測を行う。

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