2.第7次火山噴火予知計画策定の方針

1.第7次火山噴火予知計画の位置付け

予知計画の目的は、火山の活動度についての理解に基づいて、噴火の場所、時期、規模、様式及び推移を予測することである。このために、対象火山を「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」、「活動的火山及び潜在的爆発活力を有する火山」、「その他の火山」に分類し、火山観測研究の強化、噴火機構解明のための基礎研究の推進、火山噴火予知体制の強化を図ってきた。その結果、有珠山2000年噴火や三宅島噴火の例に見られるように、適切な観測体制がとられた火山では、火山活動の高まりを把握し、噴火時期をある程度予測できるまでになっている。しかし、噴火開始後の推移予測については、経験則に基づく予測が成立する場合以外は依然として困難な状況にあり、この解決のためには、火山観測研究を一層強化するとともに、火山体内部構造、噴火発生機構、火山流体の挙動などに関する基礎研究を推進する必要がある。また、こうした研究の成果を防災に役立てるため、大学・関係機関と地方公共団体等との連携を進めることも重要である。この認識に立って、第7次計画の方針を次のように定める。

2.第7次火山噴火予知計画の基本的方針

第7次計画では、これまでの予知計画の成果を踏まえ、監視観測や常時観測体制の強化整備を、火山の活動度や防災の観点から順次行うとともに、噴火機構の理解や噴火ポテンシャル評価の定量化を図るために、基礎研究を幅広く推進する。さらに、総合的な火山活動の評価に資するために、関係機関の連携強化・関連観測データの一層の有効活用を図る。
これまで、予知計画を推進する中で、火山体内部構造を理解することの重要性が強く認識され、火山体浅部構造把握のための観測研究が実施されてきた。このような火山体構造の解明は、火山活動の高まりを把握する上でも必須の基礎データであることから、引き続き継続することが重要である。噴火活動を定量的に予測するためには、それに加えて、浅部のマグマ供給系の微細構造や、マグマ溜りが存在する深部の構造を明らかにする必要がある。そのためには探査の高分解能化、探査深度の増大を図る必要があり、第7次計画においては、このための手法・機器開発を含めた研究を強力に推進する。また、火山体の構造に関する観測研究を火山噴火予知の高度化に結び付けるために、マグマや熱水、火山ガス等の火山流体の挙動や、噴火発生機構の定量的理解のための基礎的研究を推進する。さらに、これまで予知計画で基礎研究にかかわる実験観測や人材育成において重要な役割を果たしてきた大学が法人化を迎えるに当たり、関係大学機関の連携を強化する。
このような考え方から、次の方針により第7次計画を推進するものとする。

(1)火山観測研究の強化

火山防災の観点からすべての活動的火山の活動度を定量的に把握することを長期的目標として、必要な監視観測の強化や常時観測体制の整備を図る。さらに、噴火の準備過程や火山流体の移動・蓄積に伴う現象の発生過程の解明等の「基礎研究の推進」に対応するため、高精度の多項目総合観測点の整備を引き続き行い、各種の実験観測を実施する。また、火山体の構造や火山活動状況の定量的な把握及び噴火ポテンシャル評価のため、小型、軽量の可搬型記録機器の開発を行い、計画的に集中総合観測や共同観測を実施する。さらに、集中総合観測と連携した長期間の自然地震多点観測により、火山体深部構造の把握に努める。

(2)火山噴火予知高度化のための基礎研究の推進

火山噴火の定量的予測を目標として、マグマ供給系や噴火発生場の構造解明とその時間変化の把握、噴火発生機構の定量的理解に基づいた噴火の物理化学モデルの構築を目指す。このために、幾つかの火山において、地球物理学的観測や、地球化学的観測、地質調査などによる火山体の基本的構造を把握する研究を行う。特に、マグマ溜りの検出を目指した探査においては、深度の増大と探査の高分解能化を図る。さらに、噴火発生機構の定量的理解のために、各種観測、実験及びシミュレーションなどの基礎研究を行い、マグマや熱水などの火山流体の挙動を解明する。また、火山活動の中長期的な推移の解明とそれに基づく噴火ポテンシャルの評価手法の開発を行う。予知の高度化に向けて、新たな観測手法や機器・システムの開発を行うとともに、火山活動についての即時的なレベル判定・評価手法の開発を行う。また、多様な火山現象の理解のために、国際共同研究による国外の火山との比較研究を推進し、世界の中で我が国が火山噴火予知研究の拠点となることを目指す。

(3)火山噴火予知体制の整備

火山活動を迅速かつ総合的に評価する体制の強化など火山噴火予知体制の一層の整備を図る。特に、大学の法人化後も実験観測などの基礎研究や人材の育成等に関して関係大学・機関が強い連携を保てるよう、火山噴火予知にかかわる研究の企画・立案とその実施に当たる全国共同利用研究所の機能の充実・強化を図る。さらに、噴火活動の長期的予測や活動の推移を把握する火山噴火予知技術の体系化と総合的な評価手法の開発研究を行う体制の整備を図る。また、噴火活動やその推移の予測に資するため、過去の噴火履歴、事例の収集整理を進めるとともに、火山活動の予測の基礎資料となる各種の基礎データの整備を進め、その有効利用を推進する。総合的な火山活動の評価などに資するため、関係機関による各種観測のデータと併せ、基盤的調査観測網や地方公共団体等の観測網によるデータの有効利用も図る。国民や関係行政機関にとって的確で分かりやすく、火山災害の軽減に役立つ情報を提供するため、火山活動の定量的評価の早期実用化と評価対象火山の拡大を図り、かつ火山に関する情報を社会に効果的に活かすための普及活動を推進する。

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