研究振興局 研究環境・産業連携課
科学技術・学術政策局 国際交流官付
◎ 海外の研究機関において研究に従事する皆様へ
海外において研究活動に参加する場合、研究活動に係るルールや手続等が、日本における研究の慣行と著しく異なる面がありますので、これから海外の研究機関において研究活動に従事する皆さんにおかれましては、所属機関の規定あるいは滞在先の国内法規等の把握・理解に努め、これらに違反することにならないよう、また、滞在先において周囲に誤解を与えることのないよう十分ご注意下さい。
なお、既に海外において研究活動に従事されている皆さんにおかれても、改めて所属機関の規定あるいは滞在先の国内法規等の把握・理解に努めるなど十分ご注意下さい。
例えば、以下のような点については十分な留意が必要と思われます。
例えば米国の大学、研究機関における研究開発成果の取扱いについては、以下のよう対応をしているところが多く見られます。
(1)研究成果物(特許、試料、ソフトウエアなど)は、全て研究者が所属する研究機関に帰属するとしている。
(2)研究の内容については、機関が供与する「ノートブック」に記載を義務付けられている場合がある。この場合、「ノートブック」とともに実験データあるいは研究成果を記載した種々の媒体なども上記成果に含められることもある。
(3)研究機関に帰属する研究成果物の移転及び情報の公開についても、所属研究機関の了承を必要とする。
(4)研究者が所属研究機関を去る時に、上記成果物を許可なく持ち出すことを禁じている場合がある。また、それらのコピーを取り持ち出すことも承認を得なければならない場合がある。
これらについては、各研究機関がガイドラインとして文書で規定しているので、研究活動をはじめるにあたっては、所属研究機関のこれらの規定を確認の上十分な注意をお願いします。
研究機関が研究者を受け入れる際には、前記研究成果の取扱いを含む合意書に署名を求められることがありますので、内容的に疑問があれば、理解できるまで質問する等十分内容を理解・確認した上で署名して下さい。
例えば、米国においては研究成果物を研究機関の所有としている場合、無断で持ち出したり情報を開示したりすると、研究機関と研究者の契約違反という民事上の責任を問われるのみならず、経済スパイ法違反として刑法上の罪を問われる可能性があるなど、国によっては日本と異なる法令の規定等を有するものもありますので、自分の滞在先の国内法規等の把握・理解に努めるなど、十分な注意をお願いします。
上記はあくまで事例であり、滞在先及び所属研究機関の事情により上記以外にも注意すべき点がある場合も考えられますので、海外において研究活動に従事される際には、研究活動に係るこれらの情報の把握に努めてください。
○ 米国MITの技術の所有、配分及び商業化についてのガイド
(Guide to the Ownership, Distribution and Commercial Development of M.I.T. Technology)
http://web.mit.edu/tlo/www/guide.1.html(~/guide.6.html)
○ 米国MITの発明と所有の情報に関する合意書
(Inventions and Priorietary Information Agreements)
http://web.mit.edu/tlo/www/propinfo.html
○ 米国経済スパイ法(別添参照)
○ 発効:1996年10月11日
○ 目的:外国政府機関が関係するスパイ行為及び個人または企業を利するためのトレード・シークレットの侵害行為に対する処罰
※ トレード・シークレットとは
秘密性を持つ経済的価値ある全ての科学的、技術的または経済的情報
○ 構成:外国政府機関が関係するスパイ行為(1831条)及び個人または企業を利するためのトレード・シークレットの盗罪(1832条)の2つのタイプのトレード・シークレットの侵害行為について規定
経済スパイ(1831条) | トレード・シークレットの盗罪(1832条) | |
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法で保護されている対象 (保護法益) |
トレード・シークレット | 同左 ただし、州際または外国通商のため生産され、または流通におかれる製品に関するもの |
法に抵触する客観的行為 | ・ 窃取、コピー、複製、スケッチ、模写、写真化、ダウンロード、アップロード等 ・ 許可なく獲得、譲渡等されたことを知りつつ、受領、購入 ・ 上記犯罪の企画、共謀、予備 |
同左 |
行為者の主観 | ・ 外国政府、外国機関または外国係官の利益になることを知っている ・ 故意 |
・ トレード・シークレット所有者以外の者の経済的利益のために横領、かつ、所有者を害することを知っている ・ 故意 |
法定刑 | 対個人: 50万ドル以下の罰金、15年の自由刑 対企業: 1000万ドル以下の罰金 (罰金額については不正取得者の得た利益or被害者のこうむった損失額の2倍以下の額と選択可能) |
対個人: 25万ドル以下の罰金、10年以下の自由刑 対企業: 500万ドル以下の罰金 (同左) |
※ その他 没収(1834条)、秘密保護(1835条)、民事手続きの仮処分(1836条)、合衆国国外の行為への適用(1837条)など規定
科学技術・学術政策局政策課
-- 登録:平成21年以前 --