資料4‐5 アルマ実施計画に関する評価について(報告)の概要

平成15年1月9日
基本問題特別委員会
天文学研究ワーキング・グループ

1.はじめに

天文学研究における大型プロジェクトの評価を任務とする本ワーキング・グループにおいては、国立天文台から検討中のアルマ計画への参加計画(以下、「アルマ実施計画」という。)に関してヒアリングを行い、その学術的意義や技術的可能性といった個別の観点に加えて、我が国の学術全般への効果、また、我が国の経済・社会情勢を踏まえつつ、文化、社会、教育、国際等の観点から総合的な評価を実施。

2.評価の経緯及びアルマ実施計画の概要

(1)アルマ計画及び検討の経緯

1)計画の経緯

○ 平成11年6月に欧米間においてアタカマ大型ミリ波干渉計計画(12mアンテナ64台のシステム)に合意。

○ 平成12年10月、日本の電波天文研究コミュニティが先行的に検討していたサブミリ波干渉計構想と欧米ミリ波構想との統合を提案し、構想検討に参加。

2)国内における検討の経緯

○ 平成12年12月の文部省学術審議会報告において、「早急に実現に向けて推進すべき計画」として学術的な意義の観点から評価。

○ 近年の我が国の経済・財政状況及び国際的な天文学研究における我が国の位置付けの観点から、我が国として適切な参加計画の在り方を検討するため、今回、追加的に個別評価並びに総合的な評価を実施。

(2)欧米及び日本における状況

○ 米国においては、平成14年8月に建設着手を最終的に承認(全米科学財団(NSF)運営協議会、総額376M$)。

○ 欧州においては、平成14年7月に建設着手を承認(欧州南天天文台(ESO)評議会、米国と同額)。

○ 日本においては、設計準備がされているアンテナをアルマ計画の統一設計モデルとして共同評価(平成15年度)するため、研究開発経費が平成14年度から予算措置。

(3)アルマ実施計画(国立天文台提案)の概要

1)計画の概要

○ 世界をリードする観測技術と高い技術力を背景に、サブミリ波に焦点をあて、観測精度の飛躍的な高度化を目標。

○ 欧米計画では不可能である宇宙の定量的研究の実現により、星・惑星系・銀河の形成や歴史、物質進化の研究を大きく前進することが目的。

2)主要装置

○ アタカマコンパクトアレイ(ACA)システム
7mアンテナ12台、12m較正用アンテナ4台で構成、欧米計画の視野の狭さを克服し、天体の定量的分析・解析を可能とするもの。

○ サブミリ波等受信機
未開拓の最短波長(約800~950GHz)域を含むサブミリ波帯域2バンド、ミリ波帯域1バンド。欧米計画では欠落する帯域をカバーし、人類未踏のサブミリ波天文学を実現するもの。

○ 高分散相関器
欧米計画では欠落する多数の弱い分子を検出し、物質の同定や新物質の発見を可能とするもの。

3.アルマ実施計画の評価について

(1)計画立案の考え方について(計画立案の正当性)

1)計画立案の考え方について(計画立案の正当性)

○ 欧米計画との整合性

○ 我が国の参加意義の明確性

○ 方針の一貫性(実施計画の強靱性)

2)我が国の天文学及び国際的な天文学に対する寄与

3)我が国の学術研究全体の発展にとっての実施計画の位置付け

4)我が国にとっての投資効率、投資効果の明確性

○ 天文学研究の国家的意義

○ 各国の天文学研究の規模、経済状況等の国際的な環境の中での効率性・効果

○ 人材養成に対する投資効果

○ 将来に向けての経済的な面での投資効果の展望

○ 国民への科学普及及び科学教育に関する投資効果

(2)総合的な評価に当たっての基本的考え方

1)天文学研究は、人類共通のより豊かな知を獲得する活動であり、「国民に夢と誇り」を提供する学問分野。

2)天文学は総合性の高い学問分野であり、日本の科学力の基層を形作る重要な分野。

3)文化の基盤を成す基礎科学の充実と学術の総合的な発展が日本の未来を決する重要な鍵。

(3)アルマ実施計画に関する総合的な評価

総合的な評価は、これらの問題意識の下、個別評価を踏まえ、実施し、以下の3点にまとめ。

○ アルマ計画は、人類未踏のサブミリ波天文学の創設、世界的な規模での共同事業の点において人類史的に大きな意義のある計画。これに日本が相応の規模で参加することは、国際的に日本のプレゼンスを高める重要かつ絶好の機会。

○ 実施計画は、観測所運営の対等性の確保、日本の持つ科学的・技術的実力を存分に発揮しプロジェクトの遂行に十分に貢献可能の二点を実現しうる上で、その考え方及び装置等の構成は適切。

○ 早急に正式参加を決定することが日本のプレゼンスを示す上でも、また観測にあたっての適切な対等性を担保する上でも特に重要。

4.まとめ

総合的な評価の下に、委員の総意として次の3点を指摘。

(1)日本が相応の規模でアルマ計画に参加することは、国際的に日本の学術的及び文化的側面からのプレゼンスを高める重要かつ絶好の機会になり、「国民の夢」及び「国民としての誇り」を実現するものであり、その実現に向けて最大限の努力をすること。

(2)参加の時期に関しては、日本のプレゼンスを示す上でも、また観測にあたっての適切な対等性を担保する上でも特に重要であり、早期の正式参加の決定を実現すること。

(3)参加の規模においては、観測所運営の適切な対等性が確保できること、および日本の持つ科学的・技術的実力が存分に発揮できプロジェクトの遂行に十分な貢献ができること、の二点が不可欠であり、本来であれば共同事業計画全体の三分の一程度を日本が担当することが望ましい。しかし、我が国の財政事情等を考慮し、共同事業計画全体の三分の一には及ばないまでも、この二点が実現しうる適切な規模による参加を実現すること。

5.留意事項その他

アルマ実施計画の推進に当たって、国立天文台に次の3点を要請。

(1)平成16年度に予定されている大学共同利用機関の法人化に当たって、計画を着実なものとするため、基礎研究開発や参加計画の運営に関して十分に、法人組織における理解と協力を得つつ推進すること。

(2)参加計画の柱となるアタカマコンパクトアレイシステム、受信機及び高分散相関器の研究開発、整備に当たっては、我が国の参加の意義を十分に踏まえて、研究開発の進捗状況、全体の運用計画も考慮しつつ、我が国の特色を活かした優先的整備を図ること。

(3)アルマ計画に参加するに当たり、計画の進展に並行して、将来的なアジア地域における運用・協力体制の構築に最大限の努力をすること。

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科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)