第4章 水の特性を生かした様々な活用

 様々な資源的な制約等がある中で人類の持続的な発展を確保していくためには、循環型社会の実現を図る必要があるが、その実現のためには、水問題解決のための科学技術の振興を図るとともに、自然循環型資源であり、使用に際しての環境負荷が少ない「水」を、省エネルギーに配慮しつつ、その特性に着目して多様な分野で利用していくことが求められている。
 したがって、水に関する技術は、

  1. 環境への負荷の少ない技術であること
  2. 処理した水又は利用した水が再利用の対象になり得ること
  3. 水の潜在的能力を引き出した技術であること

 といった要件を満たす必要があると考えられる。
 特に、国土が狭く資源にも乏しい我が国にとって、比較的豊富に存在し、かつ、安価で、しかも、使用に伴う環境負荷が少ない水に関する科学技術の重要性は高く、他国に先駆けて取り組むことは極めて重要である。
 こういった観点から、ここでは、水の特性を生かした様々な活用に関して、特に注目に値する例として、新しい水処理、超臨界水、溶媒としての水、景観としての水の4つを取り上げることとする。

1 新しい水処理

(要旨)

 人類の持続的な発展を確保していく観点から、21世紀に求められる水処理技術は、

  1. 環境への負荷の少ない技術であること。水の再利用を図るには、大量の薬品を用いた水処理からの脱却を図ること
  2. 処理水が再利用の対象になり得ること。リスク管理とコスト管理との立場から評価を行い、再利用を前提とした水処理技術を開発すること
  3. 水の潜在的能力を引き出した技術であること。水が多くの物質を包含する能力を持つことや、物質の三態に応じて、様々な能力を発揮できることに着目した水処理技術を開発すること

 といった要件を満たす必要があると考えられる。
 これまでの水処理技術をみてみると、懸濁物質は沈殿、ろ過による分離除去が行われ、コロイドや溶解物質は薬品の注入による化学反応によりサイズを大きくし、沈殿、微生物や膜による吸着、ろ過プロセスでの固液分離されている。溶解性物質のうち有害物質については、微生物処理の前に分離または無害化措置を施しており、また、残存の溶解性物質は最後に活性炭による吸着処理が行われている。

 しかし、これらの水処理では、広大な沈殿池、長い処理時間、大量の薬品投入、大量の汚泥発生などの課題を抱えている。これらの課題を解決するために、現在、有力な新しい水処理技術として、強い磁場環境を利用した水処理技術が研究されている。この磁気分離による水処理の特徴は、小型で使い易い強磁場発生が可能な超伝導磁石を用いて、ほとんど薬品を使用せずに、各種の水溶液に対して物理的操作により水処理ができることである。合わせて純粋な物理処理であるので、薬品処理とは違って、処理前後で対象水の水質変化が少ない。その結果、様々な水質の水処理が可能になると共に、処理後の水利用も可能となる。

 今後は、こういった新しい水処理技術の研究・開発に対する支援や産学の関係者が協力して新たな測定器や分析装置を開発することなどが期待される。また、水の潜在能力を引き出す技術を開発する上で、様々な分野の研究者の協力も不可欠であり、そのためには分野横断的な研究組織が必要である。

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