4.科学技術システムの改革等

 研究開発資源の重点配分に対応し、優れた研究成果が生み出され活用されるよう、科学技術システムの改革等を行う。

(1)競争的資金の改革及び拡充

 競争的資金については、科学技術基本計画に基づき、平成13年度からの5年間で倍増を目指して重点的に拡充する。これに併せ、競争的資金の効果を最大限に発揮させるため、各府省は、以下のとおり、積極的に改革に取り組む。また、総合科学技術会議は、改革措置が着実に実行されるよう、全体調整を実施する等必要な調整を行う。

  1. 適正な評価者の選任、厳正な評価の実施と評価コメントの開示等公正で透明性の高い評価システムを確立する。
  2. 研究課題管理者(プログラムオフィサー)の設置等プロジェクト実施体制を整備する。各配分機関は、実行計画を策定し、平成15年度概算要求時に総合科学技術会議に提出する。
  3. 研究課題に応じた研究費の規模の適正化を図るとともに、分野やプログラムへの配分が硬直的にならないよう、各配分機関は、配分額を科学技術振興の観点から、総合的、戦略的に検討する。
  4. 研究開発が切れ目なく実施できるよう、年度当初からの研究費の支給等について検討を進める。また加えて、研究費の弾力的運用のため、費目間振替、繰越についても検討を進める。
  5. 真に優秀な若手に対する資金を充実する。また、ポストドクター、大学院生等に給与を研究費から支出する方向で検討する。
  6. 大学改革の検討と調整を図りつつ、大学の給与制度を含む人事制度の見直しの中で研究費の人件費(研究者)への充当、基盤的経費の在り方、機関ごとの間接経費率設定等に関する検討を進める。

(2)大学等の施設整備

 国立大学等の施設については、第2期科学技術基本計画に基づき、5年間に緊急に整備すべき施設に重点をおき、計画的な整備を進めているところであり、平成15年度においても、計画的な整備を着実に実施する。その際、具体的な整備対象施設は、教育・研究の活性化状況等を考慮しつつ選定するとともに、施設整備費の効果的・効率的使用のため、国有財産処分、民間資金の確保等による収入確保やPFI(民間資金等活用事業)等の新たな整備手法の導入、整備費用の縮減等の方策も講じる。総合科学技術会議は、施設の着実な整備を引き続き把握する。
 また、上記と同様の考え方に立って、国立試験研究機関及び独立行政法人研究機関の施設についても着実な整備を推進するとともに、私立大学についても、その研究能力を活用するため、優れた研究施設整備に対する補助等について、重点配分を基本に充実する。

(3)産学官連携と大学改革の推進

 産学官連携を推進するため、以下のような改革を進める。

  1. 大学等において、経営に直結した産学官連携の専門部門の設置等体制を整備するとともに、契約業務に関し、当事者の自主性尊重の原則の下、柔軟で迅速な対応を確保する。また、産学官のマッチングによる共同研究や、中小企業と大学等との連携を促進する。
  2. 大学発ベンチャー創出のため、大学内外の創業支援機能の充実、資金的支援等の充実、ベンチャー起業者と支援者の交流組織の構築等を進める。また、資金調達に関し、間接金融から直接金融への移行を促すため、創業支援税制の見直しを検討する。
     さらに、倒産法制を見直し、倒産時に再起可能な資産を残す措置を検討するとともに、敗者復活を可能にするという観点から個人保証の在り方についての検討、見直しを進める。
  3. 研究開発をさらに推進するため、試験研究費税額控除制度の見直しを検討する。この一環として、産学官共同研究を促進する観点からの税制措置についても併せて検討する。
  4. 国の研究機関等は、「研究人材流動化促進計画」を策定し、任期制及び公募の適用を促進する。
     また、大学内の純血主義による教員人事を排し、人材の流動性・多様性を高めるため、各大学において、
     ○ 大学院学生やポストドクターへの他大学卒業者・修了者の入学、採用割合の拡大
     ○ 助手・助教授の任期制導入
     ○ 教員の公募制徹底と内部昇任の制限
    等について、具体的目標を定め推進する。
  5. 国立大学の非公務員型法人への移行とともに、学校教育法における助教授等の職務規定を見直す。
  6. 私立大学での研究開発を推進するため、学校法人に係る現行寄附税制の見直しについて検討する。

(4)地域科学技術の振興

 公共事業依存型の地域発展から、科学技術駆動型の地域経済発展へとの流れを一層推進するため、以下の点を中心に地域科学技術の振興を図る。

  1. 地域の中堅・中小企業等を中心とした、産学官連携等による多様で優れた実用化技術開発に対する国の支援を推進する。
  2. 企業と大学等の連携を仲介・調整する専門家の確保・育成や起業家育成施設の整備を図る。
  3. 「知的技術革新集積(知的クラスター)」及び「地域再生・産業集積(産業クラスター)」の両計画の密接な連携を図りつつ、知的技術革新・産業集積(地域クラスター)の形成を促進する。
  4. 地方公共団体と大学等の研究機関等とが協力して行う地域活性化に大きく寄与する研究開発活動を適時効果的に推進するための両者間の連携の在り方について検討する。

(5)知的財産の保護・活用

 国の先端技術分野等への研究開発投資の拡充に対応し、その成果を国際競争力の強化に結びつけるため、以下のとおり、独創的な発明の創造・保護・活用を最大限に支援する。

  1. 研究開発を進めるに当たり、知的財産情報の活用を図る。特許情報と技術文献情報を容易に検索できる仕組みを整備する。
  2. 大学等は、研究者への十分な還元を図りつつ、研究成果の権利の機関帰属への転換を進める。また、研究機関等における特許関連費用を確保する。
  3. 産業活力再生特別措置法第30条(日本版バイ・ドール条項)を、各府省の全ての委託研究開発制度に適用を拡大し、米国並みの仕組みを導入する。
  4. 先端技術分野の技術革新に対応し、審査基準や権利の保護について機動的に制度設計を行うため、産学官の連携体制を構築する。
  5. 知的財産に関する専門家の育成を図るため、理工系学生等に向けた知的財産教育の充実、法科大学院等の設置等を促進する。

(6)公正で透明性の高い研究開発評価システムへの改革

 各府省は、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成13年11月28日内閣総理大臣決定)に基づき、評価システムを見直すとともに、質の高い実効性のある研究開発評価を実施する。このため、特に以下の点について取り組む。

  1. 競争的資金等の配分機関における研究経験のある人材の配置等による、適切な評価プロセス管理の可能な評価体制の構築
  2. 評価に必要な知識をもった人材の研修等を通じた育成
  3. 評価業務を効率的にするための、総合科学技術会議及び各府省におけるデータベースの構築・管理並びに電子システムの導入

 また、総合科学技術会議は、大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発について、「総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について」(平成14年4月23日総合科学技術会議決定)に基づき、その目標や達成度及び効果等を評価し、推進体制の改善や研究開発資源の配分に反映させる。
 なお、国際熱核融合実験炉(ITER)計画については、総合科学技術会議が行った評価を基にした「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」(平成14年5月31日閣議了解)に沿って対応する。

(7)研究開発型特殊法人等の改革の円滑な推進

 研究開発型特殊法人等については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)に基づき、事業及び組織形態について、独立行政法人への転換等諸般の改革を行うこととされている。
 改革に当たっては、これまで研究開発型特殊法人等が果たしてきた役割の重要性を踏まえ、以下の措置を講じることにより、新法人への円滑な転換を図る必要がある。

  1. 「特殊法人等整理合理化計画」を踏まえつつ、研究開発型特殊法人等が担ってきた機能の十全の発揮と活動基盤の充実を図るため、法人等の実状を勘案し、研究開発の進捗に合わせた柔軟な予算執行を確保するとともに、累積欠損金の適切な取扱い、地方公共団体との連携の在り方、新法人への課税措置の在り方等について検討を行う。
  2. 分野別推進戦略上の位置付け、役割を検証しつつ、研究開発の一層の重点化を図るとともに、事業の見直しを徹底する。特に、統合により設置される新法人については、統合のメリットを十分活かし、研究開発の効率的かつ総合的な推進を図る。また、研究開発に関する評価を適切に実施し、その結果を研究開発資源の配分に反映させる。
  3. 設立時期については、「特殊法人等整理合理化計画」に沿って、原則として平成14年度中に、法制上の措置その他必要な措置を講じ、平成15年度には具体化を図る。
  4. 特殊法人等の役割の重要性を十分考慮し、研究開発のメリハリをつけつつ、その十全な実施を確保する。

(8)知的特区

 大学、病院、研究機関等に係る硬直的な規制の壁を破ることにより、産学官の連携を強化し、これにより科学技術の一層の振興と地域の活性化を図る、いわば「知的特区」構想を早急に検討する。

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科学技術・学術政策局政策課

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